マイオカイン(IL-6)

「月刊スポーツメディスン9・10月号 No.194」の特集は「運動、運動、運動! 誰にも運動が必要という事実と科学的根拠」がテーマです。一つめは、「安静は麻薬、運動は万能薬 -病気でも運動。誰でも運動が不可欠な理由」という、和歌山県立医科大学リハビリテーション医学講座教授 田島文博先生の寄稿でした。
そして、読み初めてまもなく出てきたキーワードは「マイオカイン」でした。これは数ヶ月前、健康番組かニュースで耳にしたもので、その時も調べようとネットにアクセスしたのですが、その時は
特に印象に残るような情報は見つかりませんでした。それ以来、ほとんど忘れた状態になっていたのですが、内容が「筋肉から健康に良い物質が分泌している」という大変興味深いものだったため、すぐに思い出しました。
ただし、今回のNo.194は2013年のNo.154の続編であり、特にマイオカインに関する詳細な内容は、そのバックナンバーに掲載されていることが分かりました。
一瞬「えっ」と思いましたが、あまり迷うことなく購入できるサイトにアクセスし発注しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月刊スポーツメディスン

出版:ブックハウス・エイチディ


バックナンバー154号の特集は、「筋肉解明! -新知見が運動・スポーツ・リハビリにもたらすもの」で、田島先生の寄稿のタイトルは、筋肉は内分泌器官である -「安静臥床は麻薬」「運動は万能薬」というものでした。
今回は「マイオカイン」を理解することが目的でしたが、3つのことが明らかになりました。

1つは、マイオカインはサイトカインの一種であること。

もう一つは、筋(myo-)で産生されるため、マイオカインと名付けられたこと。
そして3つめは、マイオカインの正体はインターロイキン-6(IL-6)が主であることです。
最初にやるべきことは、サイトカインとは何物かということですが、これについては「人体の正常構造と機能」から引用させて頂きます。(一部加筆)

 

サイトカインは細胞間情報伝達物質であり、造血・炎症・免疫・発生において活躍する
『サイトカインは、種々の細胞によって産生される分子量数百万以下の可溶性蛋白質の総称である。その多くは一過性に産生され、ごく微量で生理活性をもつ。
リンパ球が産生する生理活性物質(ホルモンも生理活性物質である)が最初に発見され、リホカインと命名された。次いで単球/マクロファージが産生する生理活性物質が見出され、モノカインと名付けられた。その後、線維芽細胞や内皮細胞、上皮細胞をはじめとして非血液細胞も同様の生理活性物質を産生することが知られ、現在ではこれらのすべてをまとめてサイトカインと呼んでいる。
サイトカインには多くの種類があり、さまざまな名前が付けられている。しかも、個々のサイトカインが多彩な作用を示す一方、複数のサイトカインが同じ作用を重複して持っている。さらに、サイトカインどうしは相乗的あるいは拮抗的に作用したり、他のサイトカインの産生を促進あるいは抑制することで、複雑なネットワークを形成している。そのため混乱しやすいが、作用によって大まかに分類すると次のようになる。
1)炎症や免疫応答の調節:IL、IFN、ケモカインなど
2)アポトーシス誘導:TNFなど

  ※アポトーシスとは、個体をより良い状態に保つために積極的に引き起こされる、管理・調節

   された細胞死
3)造血因子:GM-CSF、G-CSF、M-CSF、ILなど
4)成長因子:EGF、NGF、PDGF、TGFなど

インターロイキン(IL)は白血球間の情報伝達を行うサイトカインで、きわめて多彩な作用を示すが、多くの炎症や免疫応答の調節に関っている。また、一部のものは造血因子に属する。

 

画像出展:「人体の正常構造と機能」

出版:日本医事新報社

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

化学伝達物質による細胞間情報伝達の様式としては、

①化学伝達物質がそれを産生した細胞自身に作用する自己分泌オートクリン)、

②近傍の細胞に作用する傍分泌パラクリン)、

③血流に乗って遠隔の細胞に作用する内分泌エンドクリン)がある。

ホルモンの伝達様式は③である。これに対し、主として①と②の様式で伝達され、産生局所で効果を発揮する化学伝達物質をサイトカインと呼ぶ。

画像出展:「人体の正常構造と機能」 出版:日本医事新報社

整理すると、リホカイン、モノカインが生まれ、その後その範囲が広がり、総称してサイトカインと呼ばれるようになった。一方、新たに筋からも生理活性物質(サイトカイン)が発見されることになったが、これについては産生場所が異なることから、サイトカインではなくマイオカインとした。ということだと思います。

インターロイキン-6(IL-6)の貢献
田島先生は、「筋肉が内分泌器官である」ということはいつごろからお考えになられたのですか?

という質問に対し、次のように回答されています。


『研修医のころに遡ります。車いすマラソンに挑む重症障害者の方が見違えるようにアスリートになりますし、ベッドで弱っていた患者さんに訓練室で運動療法を行うと、どんどん元気になるのです。その理由を求めて、運動時の免疫応答の研究や、障害者スポーツの研究をしていると、骨格筋そのものが司令塔的な役割を果たしてような印象をもちました。運動している骨格筋からホルモンが出ると考えると、パズルのピースがカシャッとはまる感じがありました。しかし、何がそのホルモンの役割をしているのかわかりませんでした。われわれは、初めはプロスタグランジンがそのホルモンだという仮説をもっていましたが、実はIL-6でした(コペンハーゲン大学医学部 Dr. Bente Klarlund PedersenがIL-6が発見し、マイオカインと名付けた)。その後、われわれは障害者を対象としてその研究を進め、学会などで発表したりしました。あまりに反響があり、むしろ私の方が驚いています。』

これは、Pedersonが2000年に行った実験です。片脚で5時間運動させて、動脈血から運動している脚と運動していない脚の両方から静脈血を採血してIL-6の濃度差を比較すると、運動している方だけがIL-6が徐々に増えていきます。
筋肉に関しては運動後にIL-6のmRNA(メッセンジャーRNA)の発現が確認され、筋肉が直接IL-6を作っていることが証明されました。画像出展:「スポーツメディスンNo.154」

 

サイトカインの説明の中で、サイトカインは細胞自身に作用する自己分泌(オートクリン)、または、近傍の細胞に作用する傍分泌(パラクリン)であるとお伝えしていますが、Pedersonはマイオカインは、ホルモンと同様に「血流に入って遠隔臓器に作用する(エンドクリン)ものであると主張されています。

画像出展:「スポーツメディスンNo.154」

IL-6の炎症に関する作用は、炎症を引き起こす“bad guy”なのか、それとも炎症を抑える(抗炎症)“Good guy”なのかが議論となっていました。
それは、糖尿病やメタボではIL-6が増えているのが原因でした。これについてPedersonは、炎症性サイトカインの主たる原因はTNF-αであると説明しました。

画像出展:「スポーツメディスンNo.154」

不活動や脂質異常、高血糖、高血圧、インスリン抵抗性は全部TNF-αが上げてしまい、それを何とか収めようとしてIL-6が分泌される、いわば消防士のような役目と考えられています。
運動はTNF-αの炎症性物質を増やさないで、筋肉から直接IL-6だけを出すという意味で非常に重要です。

画像出展:「スポーツメディスンNo.154」
 

Pedersonが2000年に行った実験負荷は、片脚で5時間というハードなものでしたが、田島先生が行った健常者の上肢運動の実験では20分で増えるということが確認されています。

画像出展:「スポーツメディスンNo.154」
 


IL-6の効果について、田島先生は次のように説明されています。

『図19のように、運動すると糖尿病がよくなる、高脂血症がよくなる、高血圧症がよくなるというように、何かインチキ薬みたいですが、それを一元的に説明する何かがないと釈然としなかったのです。運動して筋肉が収縮する物理的な刺激でIL-6をつくるメッセンジャーで発現するのですが、この仕組みはだいぶわかってきています(図20)。それがたとえば脂肪細胞では、脂肪の分解を促進する。さらに肝臓に行くと糖代謝を促進するのです。さらに血管の内皮細胞も新生していくようです。』

田島先生の和歌山県立医科大学では、積極的な運動をリハビリに採用しています。それは「Intensive Exercise and Mobilization」と名づけ、「iE-Move」(アイ・イー・モブ)と呼ばれています(下段図23、24参照)。これは激しく運動し動かすという意味です。

和歌山県立医科大学のリハビリの取組にご関心があれば、左の図をクリックしてください。


付記

ハードな運動というと活性酸素が気になりますが、注意すべきは時間ではなく強度です。息が苦しくなるような無酸素運動は活性酸素を増やします。また、活性酸素は運動以上にストレス、紫外線、大食などが大敵といわれています。従って有酸素ベースのリハビリをストレスを感じることなく前向きな気持ちで取り組むことができれば、特に問題にはならないように思います。なお、これは私見です。