ケトン体エンジン

1ヵ月以上前だと思いますが、ニュース番組か健康番組の中で、「脳を栄養する物質はブドウ糖だけではなかった!」という放送を耳にしました。そして、その物質は「ケトン体」というものでした。
「え~!?」と思ったのは、専門学校の授業では、「脳の栄養はグルコース(ブドウ糖)のみ」と繰り返し教わっていたためです。
単糖類の小さなグルコース(ブドウ糖)はグルコース輸送体を使って、脳を守る血液脳関門を通過し、脳に到達して栄養します。一方、多糖類のグリコーゲンは大きく、血液脳関門を通ることはできません。このようにグリコーゲンが脳のエネルギーにはならないことを理解させるため、あえて「脳の栄養はグルコース(ブドウ糖)のみ!」と強調されていたのかもしれません。
ケトン体についてはほとんど知識はなく、ネガティブな印象を持っていましたが、ネット検索でいくつかのサイトに目を通してみると、どうやらそうではないことが分かってきました。そこで、『ケトン体が人類を救う』という本を読んでみることにしました。著者は宗田マタニティクリニックの宗田哲男先生です。

 

著者:宗田哲男

出版:光文社

 

血液脳関門は他の毛細血管に比べ、強固な構造になっており、通過させる物質を厳しく限定しています。これにより、中枢神経系の恒常性を高度に維持します。

画像出展:「人体の正常構造と機能」

内容は次のようになっています。
序章 本書で伝えたいことのあらかじめのまとめ
第1章 私が糖尿病になったころ
第2章 妊婦の糖尿病に、はじめての糖質制限
第3章 ケトン体物語・前編―学会での非難から、新発見へ
(1)簡易ケトン体測定装置との出会い、そして江部先生からの手紙
(2)私たちのケトン体研究
(3)翌年の学会発表会は、まるで戦争だった!
(4)日本産婦人科学会での発表(2014年3月、東京)
第4章 ケトン体物語・中編―さらに勇気のある妊婦の登場!
第5章 ケトン体物語・後編―こんなにすごい「ケトン体エンジン」
第6章 栄養学の常識は、じつは間違っている!
(1)栄養指導は間違いだらけ
(2)コレステロール悪玉説の終焉
第7章 妊娠糖尿病とはいったい何か―妊娠期の人体が教えてくれること
(1)妊娠糖尿病とはどんな病気なのか?
(2)では、妊娠糖尿病とはなぜ起こるのでしょう?
第8章 さらば、白米幻想!
(1)ヒトは何を食べてきたのか?
(2)白米中毒から脱出せよ!
第9章 学会というおかしな世界―糖質制限批判を考える
(1)日本糖尿病学会誌からのなさけない告発状
(2)糖尿病治療の不思議―マッチポンプの医学
第10章 「たくましき妊婦たち」と「ケトン体」が日本を救う!《体験談》
最終章 ケトン体がつくる未来
(1)ケトン体が人類を救う!―認知症、がん、…etc.への効果
(2)ケトジェニックな医師たち、ケトジェニックの達人たち
(3)Facebookグループの活躍と発展、人気ブログやHPからの発信

ブログでは、主にエネルギーのエンジンとしてのケトン体について書いており、妊娠糖尿病糖尿病
あるいはケトン食など、栄養に関する件については特に触れておりません。そのため、お役に立つを思われるホームページをご紹介させて頂きます。クリックすると該当するサイトに移動します。


宗田哲男先生
宗田マタニティクリニック 
いい、お産したい 

 

江部康二先生
ドクター江部の糖尿病徒然日記  
人類史からひもとく糖質制限食(毎日新聞 医療プレミアムより)

 サッカーファンには、興味深い記事も載っていました。 
 ・長友選手が目指す「ケトン体体質」の利点

 

その他
中鎖脂肪酸サロン(日清オイリオ)

糖質とは
主に生命活動のエネルギーとして働きます
グリコーゲンとして貯蔵されます(グリコーゲンの貯蔵量は数百g。1日で枯渇)。
余った分は脂肪に合成されて貯蔵されます(中性脂肪は数kg。数週間生き延びられる)。
・糖質は3つに分類されます。単糖類は最小単位のグルコース(ブドウ糖)など。二糖類は単糖類が2個結合したもの。多糖類は単糖類が多数結合したもの、グリコーゲンなど。

 

グリコーゲン量算出
・少し脇道にそれますが、retu27.com というサイトに「体内貯蔵エネルギー(グリコーゲン貯蔵量)推測ツール」というものを見つけましたので、ここでグリコーゲンについて補足したいと思います。

体重56kg、体脂肪20%として、計算すると下記の数値が算出されました。
 筋肉量: 22.4kg
 グリコーゲン量: 436g
 グリコーゲン貯蔵エネルギー: 1744kcal
 マラソンに必要なエネルギー: 2363kcal
 [貯蔵エネルギー] - [必要エネルギー]: -619kcal
フルマラソンは42.195kmですので、手持ちのグリコーゲンでは足りず、途中の給水に加え、糖質の補給が必須であることが分かります。
レースでは、たまに35km過ぎあたりで、バテバテ状態となり完走が困難な選手を見かけることがありますが、あれはグリコーゲンが枯渇した状態だと思います。

左の写真は、JogNote(走るなら食べよう!)さんから拝借しました。こちらも素晴らしいサイトです。

栄養素の流れ
以下の図は糖質に脂質、蛋白質を加えた三大栄養素が消化・吸収を経て、どのようなものに変化するのかを説明したものです。
・摂取された栄養素は分解され、エネルギー(主にATP)になります。
・グリコーゲン、中性脂肪、蛋白質などに合成され、エネルギー源として貯蔵されるほか、細胞を構成する成分などになります。
・栄養素などの高分子化合物を単純な低分子に分解してエネルギーを産生することを異化(下図では左→右)、エネルギーを使って物質を合成することを同化(右→左)といい、異化と同化をあわせて代謝といいます。

 

画像出展:「病気がみえるvol3 糖尿病・代謝・内分泌」

ここで大きな疑問が浮かんできます。
①「グリコーゲンは1日も持たないけれど、中性脂肪があれば安心ということ?? 中性脂肪は生活習慣病に関係している悪役だが問題だろう。」
・中性脂肪は運ばれる先によって「皮下脂肪型」と「内臓脂肪型」の2つの肥満タイプに分かれますが、問題となるのは内臓脂肪です。内臓脂肪では、動脈硬化や生活習慣病に結びつく「悪玉」の生理活性物質が分泌される一方、「善玉」のアディポネクチンの分泌は低下します。従って内臓につく中性脂肪は健康にとって明らかに望ましいものではありません。

 

画像出展:「病気がみえるvol3 糖尿病・代謝・内分泌」

②「数百年前の粗食な庶民は、メタボに通ずる大量の中性脂肪など、体内に持ち合わせてはいないだろう!?」
・過剰に摂取した中性脂肪は、エネルギー消費が追いつかないと、脂肪細胞に貯蔵されます。現代では精製された白米やパン、お酒(日本酒やビール)、スイーツ、ソフトドリンクなどにより、糖質は過剰摂取されやすく、その一方で、交通網の整備やエレベータ、エスカレータ、歩く歩道などにより、エネルギーを消費する機会は減りました。
カロリーを燃焼する褐色脂肪細胞運動が活発で、太らないタイプの人も中にはいますが、多くの現代人は糖質過剰に加え、運動不足などの不摂生、過度なストレスなどにより中性脂肪が増加傾向にあり、メタボ予備軍が増えています。それに比べ、質素な食生活に自分の足で移動していた大昔の庶民にとっては、中性脂肪など無縁の話だと思います。


以上のことから、健康にとってマイナスな中性脂肪とは別に、持久力のある健康的な、正統派のエネルギー供給システムがあると考えた方が自然だと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらの画像は、東京の新宿にある「ともながクリニック(糖尿病・生活習慣病センター)院長:朝長 修先生」より拝借しました。こちらのサイトも非常に充実したものになっています。

糖質、脂質、蛋白質の代謝
これは、上の「栄養素の流れ」に関し、主な物質と異化同化の流れを現わしたものです。
・図の下部右側にある「アセチルCoA」から「ケトン体」の表記が確認できます。
・左上部の脂肪酸から赤線が出ています。これは、「β酸化」とよばれ、アセチルCoAという物質を経てケトン体を産生します。なお、「β酸化」はミトコンドリアで分解され、回路が一巡するごとに脂肪酸から2個の炭素が除去され、アセチルCoAが1分子産生されるという仕組みです。

 

画像出展:「病気がみえるvol3 糖尿病・代謝・内分泌」

「アセチルCoA」⇒「ケトン体」については、もう少し詳しい図がありました。

 

画像出展:「人体の正常構造と機能」

ケトン体とは
下記の内容は【脂肪が燃焼するとケトン体ができる】に基づいています。2つの図もお借りしました。なお、こちらを書かれたのは、銀座東京クリニックの福田一典先生です。

①肝細胞では、脂肪酸が分解されてできたアセチルCoAの一部はアセトアセチルCoAになり、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA(HMG-CoA)を経てアセト酢酸が生成されます。そして、一部は脱炭酸によってアセトンとなり、一部は還元されてβヒドロキシ酪酸へと変換されます。このアセト酢酸、βヒドロキシ酪酸、アセトンの3つをケトン体と言います。なお、アセトンについてはエネルギー源にはならず呼気から排出されます(アセトン臭) 。

 

グルコース(ブドウ糖)が枯渇した状態で、脂肪酸が燃焼するとき肝臓ではケトン体(アセト酢酸とβ-ヒドロキシ酪酸)ができます。ケトン体は水溶性で細胞膜や血液脳関門を容易に通過し、骨格筋や心臓や腎臓や脳など多くの臓器に運ばれます。これらの細胞内でケトン体は再びアセチル-CoAに戻され、ミトコンドリアのTCA回路と電子伝達系で使われ、エネルギーとなるATPを作り出します。特に脳にとって、ケトン体はグルコース(ブドウ糖)が枯渇したときの唯一のエネルギー源となります。


絶食時やインスリン欠乏による糖尿病などで、グルコースが利用できない場合、ケトン体が重要なエネルギー源となります。体重60kg、体脂肪率20%の場合、約12kgの脂肪があるので総カロリーは108,000kcalになります。仮に1日の消費カロリーを2,000kcalとすると50日以上生活できるという計算になります。


ケトン体は一部の脂肪酸だけでなく、アミノ酸からも産生されます。

この図は[細胞質]内を表したものです。

画像出展:「銀座東京クリニック

 

こちらの図は[ミトコンドリア]内を表したものです。

ケトン体の安全性
ケトン体のアセト酢酸とβヒドロキシ酪酸は酸性が強いため、ケトン体が血中に多くなると血液や体液のpHが酸性になります。このようにケトン体が増えて血液や体液が酸性になった状態をケトアシドーシスと言います。そして、最も問題となるのが糖尿病性ケトアシドーシスだと思います。
しかしながら、ここで注意すべきは、糖尿病性ケトアシドーシスの原因はケトン体ではなく、インスリン作用の欠乏にあります。断食や糖質制限に伴うケトン体産生の亢進の場合は、生理的なものであり、インスリン作用が正常であれば何の問題もないと言えます。
「病気がみえるvol3 糖尿病・代謝・内分泌」には「糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)」に関して、次のような説明がされています。
高度なインスリン作用不足に、インスリン拮抗ホルモン上昇が加わって生じる代謝失調状態である。糖利用低下、脂肪分解亢進に起因して、高血糖と著しいケトン体の蓄積が生じる。これを受けて生じる脱水とアシドーシスが本態であり、意識障害(重症では昏睡)をきたす。1型糖尿病に多いが、2型糖尿病患者のソフトドリンク多飲によって生じることもある(ソフトドリンクケトーシス)』
そして、以下のような図を使って説明が加えられています。

 この図は、上部には原因となる問題が明記され、[糖はあるが末梢組織は全く取り込めない]という問題が発生。下部にその事態への緊急対応が示されています。

 

エネルギー欠乏に対応すべく動き出すのは肝臓です。シンプルな反応としてグリコーゲン分解が起こりグルコースを増やします。また、興味深いのは脂肪がFFA(遊離脂肪酸)に分解され、さらに「β酸化」とによりケトン体が産生されるルートです。

また、グリセロールも脂肪から分解されたものですが、こちらは「β酸化」ではなく「糖新生」という働きによりグルコースが産生されます。ただし、この緊急対応によって血液酸性化→ケトアシドーシス、および血症浸透圧上昇→脱水というトレードオフの問題点が発生します。

 

注目すべきは「ケトン体」と「グルコース」が並列に明記され、ともに緊急事態へのエネルギー供給で上昇している点です。

 

画像出展:「病気がみえるvol3 糖尿病・代謝・内分泌」

 

宗田先生は著書の中で次のような説明をされています。
『インスリンが不足してグルコース(ブドウ糖)をエネルギーにできない火事の現場で、ケトン体は自らがエネルギーとなって必死に体を助けていました。ケトン体は火事を消そうとしていた消防士だったにもかかわらず、その後もずっと犯人にされてしまったのでした。「糖尿病ケトアシドーシス」とは、本来「インスリン不足高血糖制御不能状態」というべきであって、インスリンを投与して高血糖を抑えればケトン体は消えるが、これは消防士が引き上げて正常任務に戻ったのであり、「ケトン体さんご苦労様でした」というべきところです。』
きれいな例ではないのですが、「便秘」と「胃腸のはたらき」の関係にも似ているように思います。溜まった便は原因ではありません。出るに出られない被害者とも言えます。最初に考えるべきは胃腸の状態です。


残暑の季節

マンション駐車場のうち、私が使っているのは1台だけのスペースなのですが、そこでセミの抜け殻を見つけました。下はコンクリートなので、上から地上に這い出して、このポジションを選択したと思われます。写真上部の土っぽい所が半円状に散らかっている辺りが怪しく、そこから登場したのかもしれません。7月~9月上旬は普通に見られるようなので、少々で遅れ気味ですが、この夏に何とか間に合ったということだと思います。