自己炎症性疾患

自己炎症性疾患は1999年に発見提唱され、わが国でも近年研究が始まった新しい概念の疾患です。
特徴的な臨床所見の中には、「幼少時に不明熱などの前兆がある」とされています。そのためか、2009年11月に開催された第41回日本小児感染症学会シンポジウムで取り上げらていました。タイトルは「自己炎症性疾患の診断と治療」であり、産業医科大学の楠原浩一先生の執筆によるものです。
以下はその文献の中にあった表です。


また、最後の「むすび」として、次のようなご指摘がありました。
『自己炎症性疾患は、わが国ではまだ広く認識されるには至っていないが、common diseases のなかに紛れている可能性がある疾患群である。特に周期性発熱症候群は、日常臨床のなかでよく経験する原因不明の発熱と炎症反応上昇のエピソードを繰り返す患者において、感染症、自己免疫疾患と鑑別すべき重要な疾患の一つであると考えられる。』
自己炎症性疾患が新しいもので、感染症や自己免疫疾患との鑑別が難しいということから、小児障害を考える場合、その存在を知っておくことは重要であると思います。

なお、今回のブログは以下の2つのサイトの内容に基づいています。

「自己炎症疾患友の会」家族性地中海熱・TRAPS・PFAPAを中心とした患者と家族の会

サイト運営組織 : 京都大学大学院医学研究科発達小児科学

自己炎症性疾患の概要と問題点
自己炎症性疾患は自然免疫の異常によって、自己免疫や感染症の直接的な関与なしに全身性の炎症が起こる疾患です。「自分で勝手に炎症のスイッチが入ってしまう疾患」なので「自己炎症性疾患」と呼ばれています。
炎症発作のきっかけは運動・日光・外傷・疲労・月経・ストレスなどがあるとされています。「勝手に炎症を起こし、自然寛解する」という病態が周囲の人には理解されにくく、急な炎症発作のために社会的信用を失う原因にもなります。なお、寛解とは病状が落ち着いており、臨床的に問題がない程度にまで治ったことを意味します。
また新しい概念の疾患である為に医療の現場では自己炎症性疾患を経験している医療関係者もまだまだ少なく、以下のような問題点を抱えています。
「診断までに長い時間がかかり治療が遅れた」
「自己免疫疾患として診断され治療を受けていた」
「詐病・心気症と診断されていた」
「診断確定後の治療・経過が上手くいかない」
「ガイドライン通りの経過ではないのでこれ以上診れないと言われた」
等、

診断が確定した後も治療や診察の場において苦労しているという話は後を絶ちません。
各疾患のガイドラインでは炎症継続の平均的な日数や症状が報告されていますが個人差が大きく、全てガイドライン通りの典型的な症状を示すわけではありません。炎症発作期間、症状の経過は個人差が大きいため長期による経過観察と各自のパターンの把握が重要となります。

 

自己炎症性疾患の特徴的な臨床所見
1. 血液の炎症反応が高値になり39度以上の発熱を繰り返す
2. 発熱期間や症状が毎回似ている
3. 薬を飲まなくても解熱したり症状が改善する
4. 発熱発作のない時には症状がなく健常者と変わりない
5. 自己免疫疾患が否定される(ただし合併することはある)
6. 抗生物質が効かない
7. 家族や血縁者に同病者がいる
8. 幼少時に不明熱などの前兆がある
9. 外傷、疲労、運動、月経、飲酒、日光、ストレスなどがきっかけになる

 

自己炎症性疾患の診断
各疾患は発熱期間、周期、発熱に随伴する症状、家族歴、薬への反応、検査結果、遺伝子検査によって総合的に診断されます。各疾患により原因遺伝子が異なる為、臨床診断では確定できない場合遺伝子検査が確定診断に用いられます。しかし各疾患特有の症状があるのに遺伝子変異が検出されないという症例もある事から現在では臨床診断を元に総合的に診断されます。

 

広義の自己炎症性疾患
自己炎症性疾患と類似の病態が考えられる病気には、以下のようなものがあります。全身型若年性特発性関節炎、成人スティル病、ベーチェット病は現時点では自己免疫疾患に分類されていますが、自己抗体や自己反応性T細胞が認められないため、自己炎症疾患に近い病気である可能性が考えられています。
・全身型若年性特発性関節炎(sJIA)
・成人スティル病
・ベーチェット病
・クローン病
・遺伝性血管性浮腫
・ゴーシェ病
・痛風
・偽痛風

 

遺伝子診断の有効性と注意点
生まれつきある遺伝子に病気の原因となるような構造がある場合、臨床的遺伝子診断が有効となります。また臨床診断がはっきりついていない場合は、遺伝子検査が診断確定への補助となります。
遺伝子解析の結果は患者・家族・血縁者に大きな影響を与えうる為、事前の説明に当たっては患者本人が検査の特殊性を十分に理解し、同意・承諾した上で行われることが重要となってきます。

 

京都大学大学院医学研究科発達小児科学さまの取りくみ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『平成24年度から、「自己炎症疾患およびその類縁疾患に対する診療基盤の確立」がスタートしました(25年度終了)。その成果の1つとして、自己炎症性疾患の診療フローチャートが作成されました。同診療フローチャートは、小児リウマチ学会に承認され、たくさんの専門家の意見を反映した日常診療における指針と考えております。』