側弯症は治る

今回のブログは「側弯症は治る!」の内容に基づいています。

著者:大塚乙衛、青木晴彦
「側弯症は治る!」

著書:大塚乙衛(大塚整体治療院院長)

監修:青木晴彦(青木整形外科院長)

出版:マキノ出版

本は図書館から借りて読んだのですが、「側弯エクササイズ」を理解し、活用したいと思ったため、中古本ですが購入しました。

「側弯症は治る!」より
ウサイン・ボルト選手は先天性の側弯症

ウサイン・ボルト選手は196cmの長身に加え、先天性側弯症のため背骨はS字状に曲がっており、アメリカ合衆国のようなスポーツ理論の発達している国であれば、短距離選手になることはなかったと言われています。
ジャマイカにおいては、常識に縛られない新しい発想で、背中、おなか、腰、お尻、そして足の抗重力筋を独自の方法で徹底的な筋力強化を行い、新しい走法を編み出し、100m・200m走で、オリンピック3連覇を達成しました。

画像出展:「側弯症は治る!」(マキノ出版)

特発性脊柱側弯症は治る
これは[「側弯症は治らない」という常識がくつがえった瞬間]の冒頭部分の引用です。
『側弯症(特発性脊柱側弯症)で曲がった背骨は、いったん進行すると、何をしても元には戻らない。医学書にはそう書いてあります。医師はもちろんのこと、多くの医療従事者たちも、みなそう信じています。
1997年8月27日。おそらく、私も側弯症の専門家だったら、そうした知識にしばられて、不安そうな面持ちで私の前に座っていたY子さんに何もしてあげられなかったでしょう。しかし、幸いなことに、私はそうした知識とは無縁の存在でした。治す方法がないとされている難病を前にして、素直に考えることができました。「背骨がねじれているのなら、そのねじ曲がっている背骨を真っすぐに伸ばせばいいじゃないか」と。

もちろん、この場合のねじれた背骨を伸ばすというのは、背骨を支えている背中やおなか、お尻の硬くなった筋肉のバランスをよく整えるという意味です。これが私の行っている整体の理屈だからです。背骨を乱暴に押したり、伸ばしたりということでは決してありません。』

これを拝見すると、大塚先生の施術は骨や関節に直接アプローチするのではなく、筋肉にはたらきかけるものであることが分かります。これは「手技のみ」と「道具(鍼・灸)を使う」の違いはありますが、本質的には現代鍼灸と同様です。ただし、後から出てきますが、大塚先生は施術に加え、患者自らが行う体操、「側弯エクササイズ」を真剣に取り組むことが重要であり、装具についても十分な配慮が必要であると指摘されています。


医療の現場の問題点
これは[側弯症は手術でしか治せないと思い込んでいる]からの引用です。
『M子さんの話は、決して特殊な例ではありません。状況は多少異なるでしょうが、進行性の側弯症であれば、ほとんど例外なくM子さんと同じコースをたどって、最後に手術を受けるか否かの決断を迫られるのです。実際、私の治療院へ全国から訪ねてくる患者さんの多くがこのパターンでした。
これらの経過を見ていくと、最終的にどこに問題があるのかが明瞭になっていきます。それは、側弯症の治療が「手術の好きな医師」の手にゆだねられていることです。側弯症の場合、整形外科の中でも、背骨の手術を専門としている脊椎外科が治療を担当しているのです。
たとえば、アトピー性皮膚炎や気管支ぜんそくなどの病気は子供に多いので、小児科でも診てくれます。実際、小児科にはそれらの治療の得意な医師がたくさんいます。
ところが、側弯症は子供に発症するのが大部分ですが、小児科で治療されることはなく、主に大きな病院の整形外科のみが担当しています。もし、側弯症が整形外科に限られず、他の科の医師も診ることができたら、状況は大きく変わっていたのではないでしょうか。
整形外科では、保存療法を手術と同等の治療法とは見なしていません。保存とは現状維持のことであり、もともと体操や装具などの保存法は側弯症を治すための方法だとは考えられていないのです。側弯症を治せるのは手術だけというのが、日本の整形外科の基本的な考え方です。』

側弯症は一時的な「機能性側弯症」と不治とされている「構築性側弯症」に分かれています。この本で取り上げられている、「特発性側弯症」は「構築性側弯症」の中の原因不明の側弯症になります。しかしながら、この「特発性側弯症」こそが80~90%の圧倒的多数を占めています。
ところが、現在の医学では、原因が特定できる10~20%の「構築性側弯症」が主役であり、原因不明であるが故に脇役にされた80~90%の「構築性側弯症の中の特発性側弯症」は、十分な調査、研究がなされることなく、通例的に主役と同じ脊椎外科に任されているという印象を持ってしまいます。
従いまして、大塚先生がご指摘されているように、特発性側弯症については小児科でも治療をできるようにすることが有効な対策になると思います。また、特発性側弯症は小児だけでなく、小学校高学年や中学生にも多いとされるため、理想的には、「特発性側弯症専門外来」ができ、優れた保存療法や中長期に渡る装具計画を含めた、個別かつ総合的な治療とリハビリが提供されることがあるべき姿ではないかと思います。


側弯エクササイズの心得
「側弯エクササイズ」は「リラックス体操」と「ドリル体操」から構成されています。詳細は本をご購読頂きたいと思いますが、ここでは「七つの心得」の各項目をお伝えします。

 1.家族で行う
 2.手軽にできる体操ではないことを自覚する
 3.楽しくなるように導く
 4.時間を確保する
 5.体の伸びる力を育てる
 6.継続する
 7.身長を測る
繰り返しになりますが、特発性側弯症の治療において、側弯エクササイズは施術と同等以上に重要なものとされています。

そして、効果に関しては冒頭にある[体の「伸びる力」を育てる]をご紹介します。
『本章では、側弯症(特発性脊柱側弯症)治療のために私が考案した体操「側弯エクササイズ」をはじめとする方法が、高い成果をあげている理由を説明します。ただし、これまでの医学ではほとんど考察されていないことにあえて踏み込んで話を進めていきます。これは、すべて私が3500人を超える患者さんから教えていただいたもので、決して独断から生まれたものではありません。
まず、これまでのおさらいをしておきましょう。
私が行っている側弯症治療の目的は、若い人の場合では、ひとことでいえば「体をきれいにする」こと。ゆがんだ体形を改善して、薄着ができたり、水着になれたりするような美しい体に戻すことです。具体的には、肋骨隆起(背中の盛り上がり)や腰部隆起(腰部の盛り上がり)を改善することです。これらの隆起が改善すると、左右の肩の高さが同じになり、ウエストラインの非対称もなくなっていきます。これは多くの症例によって証明された事実です。
ただし、美しい体形に必ずしも背骨の弯曲の改善が伴うとは限りません。もちろん、若い患者さんでは背骨が真っすぐになることも多いのですが、背骨の変形の大きな改善がなくても、肋骨隆起や腰部隆起がなくなると、体形は美しくなります。
一方、中高年の場合、治療の目的は体の痛みから解放されること。その場合、肋骨隆起や腰部隆起などが目に見えて改善されることもありますが、そうならないこともあります。しかし、いずれにしても腰や背中の痛みは大幅に改善されます。また、中高年は背中に隆起があると、隆起のある部分が痛んで、あおむけになって寝ることができなくなります。ところが、側弯エクササイズを実施している人では、隆起のある部位が軟らかくなり、あおむけになって寝られるようになります。
では、これらの目的を達成するにはどうしたらよいのでしょうか。現代医療では、その手段を手術による背骨の矯正に求めています。つまり、背骨を鉄棒でつないで真っすぐにさせようとするわけです。
それに対して、私たちは背骨そのものを真っすぐさせようとはしていません。側弯エクササイズによって、体の伸びる力を育てているのです。背骨の弯曲の改善はその結果の一つだと考えています。
私たちの体を支えている体幹筋(腹直筋、腹横筋、広背筋、脊柱起立筋など)は、重力に抵抗して体を地面に立たせている抗重力筋です。これらの筋肉が伸びたり縮んだりしてバランスよく働くことで、私たちは重力に抵抗しながら、天に伸びるように真っすぐに立つことができるのです。
もちろん、背骨は体の支える支柱として大事な役割を果たしています。しかし、私たちの体を支えているのは背骨だけではありません。抗重力筋の働きも大きな力になっているのです。
ところが、抗重力筋のバランスがくずれ、筋肉が真っすぐに伸びることができず、さらにその働きが衰えると、本来真っすぐ伸びるはずの背骨がねじれてくると考えられます。加えて、脊柱起立筋や肩の僧帽筋が弱いと、頭部の重さを支えられず、弯曲はさらに大きくなります。成長期の子供の背骨がどんどん真っすぐ伸びようとしているのに、それが押さえられたら、軟らかい構造を持つ背骨はねじれて伸びるしかありません。』

 

鍼灸師として特発性側弯症にどう向き合うか
特発性側弯症が不治の病とされる「構築性側弯症」に含まれていることに違和感を感じます。切り離して考えるべきではないでしょうか。
従って、特発性側弯症は不治ではないと考えます。特発性とは原因不明ということですが、下出真法先生が「子どもの背骨の病気を治す 脊柱側彎症と子どもの病気」の中で原因の可能性として示唆された「身体の平衡機能」に注目します。そして、特発性側弯症が小児から思春期までの成長期にみられるという限定された時期に注目します。

つまり、心と体が発達する成長期に、或るきっかけが脳を混乱させ、その混乱が前庭感覚と深部感覚の精緻なコントロールに誤差を生み、真っすぐに伸びていくはずの脊柱に乱れを作るというイメージを頭に入れておきたいと思います。
一方、治療については、筋肉のバランスが非常に重要ですが、筋肉に加え、ボディスーツに例えられる筋膜に対しても適切な施術を行う必要があるのではないかと考えます。

そして、「側弯エクササイズ」をご紹介できるようにしたいと思います。