特発性側弯症と機能性側弯症

今回のブログで参考にさせて頂いた本は、「子どもの背骨の病気を治す 脊柱側彎症と子どもの病気」著者:下出真法氏(講談社)と専門学校時代の教科書「臨床医学各論」(医歯薬出版)です。
ネット検索してみると、日本側彎症学会からは、2013年4月に「側弯症治療の最前線―基礎編」が、2014年7月に「側弯症治療の最前線 手術編」が出版されていました。

 

著者:下出真法氏

出版:講談社

発行は2000年10月です。 

「脊柱側弯症」に対する正しい理解と治療の為に作られました。

側弯症とは 
側弯症は背骨が曲がったり、ねじれたりする状態をいいます。
コブ角が10°未満は正常範囲、10~19°は要定期的観察、20°以上は何らかの治療を要すると考えられています。

X線画像の患者さまのコブ角52°です。

測定は、水平面に対してもっとも傾いている頭側終椎の上縁(このケースでは、第7胸椎)と尾側終椎の下縁(同、第1腰椎)を結ぶ線のなす角度がコブ角になります。

側弯は裸になれば確認しやすいのですが、コブ角30°位でもシャツを着てしまうと見分けるのは困難です。トレーナーやセーターの上からではコブ角50~60°でもなかなか分かりません。また、同じ角度でも、曲がり方や曲がる部位によって目立つ場合とそうでない場合があります。

このようなことから、コブ角40~50°の側弯症になってはじめて気づくこともめずらしくはありません。

画像出展: 「子どもの背骨の病気を治す」(講談社)

側弯症はまず、機能性側弯と構築性側弯の2つに分けられます。そして構築性側弯は原因が特定できる側弯症(症候性側弯)と原因不明の側弯症(特発性側弯)の2つに区別されます。
この3つの側弯症のそれぞれの特徴は次の通りです。
Ⅰ.機能性側弯:一時的に生じた側弯、原因が取り除かれれば側弯はなくなります。
  ・姿勢不良による小児の側弯
  ・脚長差を解消するための代償性側弯
  ・坐骨神経痛などの痛みのための疼痛性側弯
  ・心因性のヒステリー性側弯
  ・筋炎や筋膜炎などによる炎症性側弯
Ⅱ.構築性側弯:弯曲、捻じれに加え、椎間板の変形を伴い元に戻ることはないとされています。
Ⅱa.特発性側弯:原因が分かっていない構築性側弯症  
  ・乳児期側弯症:男児に多く、3歳までに発症
  ・学童期側弯症:性差なく、4歳から9歳に発症
  ・思春期側弯症:10歳~成長期修了までに発症。ほとんどが女児
Ⅱb.症候性側弯:原因となる病気がわかっている構築性側弯症
  ・先天性側弯:半椎など椎体の奇形によるもの
  ・神経性側弯:脊髄空洞症、ポリオなどによるもの
  ・筋性側弯:筋ジストロフィーなど筋肉疾患によるもの
  ・神経線維腫症:フォン・レックリングハウンゼン病によるもの
  ・間葉性側弯:マルファン症候群などによるもの
  ・外傷性側弯:脊椎の脱臼骨折などによるもの
  ・リウマチ性:若年性関節リウマチなどによるもの

 

側弯症の原因疾患については、1987年の全国調査で、原因不明である特発性が79%、先天性が10%、ポリオ、脊髄空洞症など神経性が2%、神経線維腫症が2%、マルファン症候群が2%などとなっています。最も多くを占める特発性側弯では大半は思春期側弯症であり、女性が約80%を占めます。
また、2016年度東京都発行の予防医学年報には、2014年度のデータで、小中学校の生徒を対象に行った側弯度調査でコブ角15度以上の人数は、男子は29,561人中27人(0.09%)、女子は30,306人中335人(1.11%)でした。これによると男女差は10倍以上ということがわかります。
なお、この資料はとても良くできた資料でしたので添付させて頂きました。

ダウンロード
脊柱側弯症検診_東京都予防医学協会年報2016年版第45号.pdf
PDFファイル 6.6 MB

特発性側弯症の原因(「子どもの背骨の病気を治す 脊柱側彎症と子どもの病気」より引用)
特発性側弯症の原因の一つとして古くから身体の平衡機能の指摘がされています。平衡機能というのは身体のバランスを調整する神経機能のことで、脳幹という脳の部分でコントロールしています。この脳幹に異常がおこると側弯症がおこるのではないかといわれています。脳の異常といっても、脳の一部が欠損しているような異常ではなく、成長期にだけおこる平衡機能のわずかな異常が積みかさなって、背骨の成長に悪影響をおよぼし、その結果、背骨が曲がるのではないかと考えられているのです。
 ただ、このような考えも推論の域をでていません。脳幹の一部を破壊された動物の背骨が人間の特発性側弯症に似た曲がり方をしたというかつての動物実験の結果や、特発性側弯症の患者の一部に脳幹を調べる検査で異常を示すことがたまにあるという臨床経験から推論されているもので、脳幹のどの部分のどのような機能に異常がおこると成長期の骨が曲がってくるのかは、まったくわかっていません。今後、脳の機能、特に成長期の平衡機能の研究がすすみ、背骨との関係が明らかにされ、それを評価する新しい診断技術が開発されれば、特発性側彎症の本当の原因も、わかるようになるかもしれません。』

 

この本は2000年10月発行のため最新情報とは言えません。しかしながら、この文章を読んで、昨年12月のブログ「動作法について」の中で「大丈夫! すくすくのびたよ自閉っ子」(花風社)に書かれていた「脳が混乱している状態」ということを思い出しました。


『支援センターからいただいた個別支援計画を見ると、桃子の重点取り組み事項は、「前庭系・固有系をしっかり入れていく」となっている。何のことだかさっぱりわからない。
先生からのお話によると、桃子は、「感覚統合療法を必要とする子ども」なのだそうだ。感覚には、次の三つがあるらしい。
一つ目は、前庭覚である。これに何らかの問題があると、揺れ動く遊具や高いところを非常に怖がったり、誰かに動かされると恐れや不安、苦痛などを感じたりするようだ。いくら回転しても目が回らない、高いところや不安定なところを好む、などの特徴もあるらしい。公園の遊具なども三つ年下の妹は平気で登っているのに、桃子は怖がってできないものがある。桃子は怖がりだなあと思っていたが、原因は前庭覚なのか。また、桃子が椅子に持続して座っていられないのもこのためか。
二つ目は、固有覚である。これに問題があると、すぐ疲れてしまったり、力加減のコントロールが難しかったりするらしい。物をどのように操作してよいかわからず、衣服の着脱がうまくできないこともあるようだ。桃子が不器用なのは、この固有覚のせいなのか。
三つ目は、触覚である。べたべたした感覚が苦手だったり、手をつなぐ、抱きしめられたりするのが苦手だったり、裸足で園庭を歩けなかったりするらしい。散髪や爪きり、耳かきを極端に嫌がる子どももいるようである。以前、桃子はスライムが苦手で、触るのを嫌がっていたが、この触覚に問題があったせいか。そういえば、爪きりも苦手であった。
もし、感覚統合がうまく働かないと、感覚が洪水のように入ってきたり、逆に必要な情報が入ってこなくなったりして、脳が混乱している状態になるのです」と、先生はおっしゃった。』

 

 画像出展:「続 自閉っ子、こういう風にできてます!」(花風社)

私が会った発達障害の児童数はまだまだ多くはありませんが、発達障害を持っていない児童に比べ、側弯症は多いように感じていました。
また、滋賀県立小児保健医療センター小児整形外科のホームページには、発達障害にも位置づけられているダウン症について、次のような記述がありました。
『欧米の教科書には側彎症は約50%の頻度とされています』ただし、こちらの病院では、『それほどの高い頻度ではない様に思います』との記述がされていました。50%という数値はともかく、ダウン症では側弯症が代表的症状のひとつであるということです。

こちらのセンターには「ダウン症外来」があります。

以上のことから、下出先生がご指摘になられた「脳幹の異常(平衡機能のわずかな異常の積みかさね)」は非常に重要ことに言及されているように思います。

 

 

機能性側弯症の鍼灸治療
機能性側弯症は一時的に生じた側弯とされており、こちらは症候性側弯症とは異なり、鍼灸治療の対象になります。
今までは、背中の脊柱起立筋を対象に面状や棒状、線状の硬結を触診で探し、刺鍼していましたが、今回のブログを書いていく中で、脊柱起立筋をもっと詳しく理解する必要があると感じました。そこで、手持ちの本を見直して重要と思ったものを列挙してみました。
なお、治療においては機能性側弯症の原因を考えることが第一です。また、脊柱起立筋以外では骨盤と脊柱や骨盤と大腿骨に関与する筋肉(腸腰筋、腰方形筋、殿筋群、梨状筋など)に関しても重要だと思います。

 

解剖
脊柱起立筋は中央より、棘筋、最長筋、腸肋筋に分かれますが、これらは1本の筋ではなく数本の筋が集まっています。ただし、「骨格筋の形と触察法」(大峰閣)には次のような説明があります。『腸肋筋は、腰腸肋筋、胸腸肋筋および頚腸肋筋の3部から構成されるが、各々の境界は不明瞭である。また、最長筋も胸最長筋、頚最長筋および頭最長筋の3部から構成されているが、各々の境界は不明瞭である』このように、明確には区分けされていないようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「3D踊る肉単 」(エヌティーエス)

こちらは、脊柱の高さと筋肉の厚みを確認できる写真です。上位胸椎(下左写真のD:第7胸椎)から頭部に上がっていくと筋は薄い板状になります。


左は、「骨格筋の形と触察法」(大峰閣)より。上からE、F、Gの右端に位置する筋肉が腰腸肋筋です。

右は、「肉単」(エヌティーエス)より。全体像をイメージできるように添付しました。

以上のことから背骨を弯曲させることを考えると脊柱の外側にあって、筋肉量の多い腰部にある筋肉が主役になると思います。
従って、腰腸肋筋の付着部とL1・L2の筋腹を中心に、丁寧な触診により硬結、圧痛点を探し、刺鍼ポイントを決めるというのが治療の基本と考えます。(胸最長筋も決して無視はできません!)

トリガーポイント
伊藤和憲先生の「はじめてのトリガーポイント鍼治療」(医道の日本社)では、脊柱起立筋の中で関連痛を起こしやすいのは腸肋筋であると書かれています。写真にマークされたポイントも腰腸肋筋になっています。この点からもこの筋肉の優先順位を高くすることは妥当であると思います。

 

画像出展:「はじめてのトリガーポイント鍼治療」(医道の日本社)

触察
この写真は「骨格筋の形と触察法」(大峰閣)からのもので、体に直接書き込んでいるのでとても分かりやすくなっています。

これを見て感じることは、腰腸肋筋の外縁は考えているより外側にあるということです。今までは、硬結重視で触診していましたが、意識する筋肉の全体像をイメージした上で、硬結を探すという方法の重要性をあらためて認識しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「骨格筋の形と触察法」(大峰閣)

付記
このブログの下書き完成後、数日して「側弯症は治る!」が入庫したとの連絡メールが図書館から届きました。こちらの本も興味深い内容ですので、次回のブログでご紹介させて頂きます。