高齢者の筋トレ(ダイナペニアという問題)

年齢に関係なく筋力はアップするということは知っていましたが、高齢者の中には筋肉は少なくないのに、歩行する能力が著しく低下していたり、体を動かしたり重いものを持ったり、あるいはビンのふたを開けたりする力が、明らかに衰えているのを目にする機会は多いように感じていました。
今月届いた「月刊トレーニングジャーナル5月号(No.451)」の「走れるだけでいいのか-高齢者と筋力」と題する、帝京大学医療技術学部の川田茂雄先生の記事には、その疑問に対する答えがありました。

 

「月刊トレーニング・ジャーナル2017年5月号(通巻451号)」

ブックハウス・エイチディ

ダイナペニア
この記事の中に出てくる「ダイナペニア」について調べてみたところ、次のようなものでした。 
2008年にダイナぺニア(dynapenia)という概念を提唱した、Brian C. ClarkとTodd M. Maniniは2012年の論文で、高齢者の筋の老化は、筋肉量よりも骨格筋の力を産生する能力、もしくは神経活動の障害に大きく関与すると示唆しています。
つまり、高齢者の筋力の低下は筋肉量の低下だけでは説明できないこと、何歳からという分類は簡単ではないと思いますが、少なくとも、若者とは明らかに異なる体のメカニズムが高齢者には存在することが分かりました。

 

以下はこの記事に掲載されていた興味深いグラフです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは70歳~79歳の男女の体重、筋肉量、筋力を5年間追跡調査したものです。左の「体重減少群」は、筋力(破線)、筋肉量(実線)ともに減少していますが、筋力の減少(破線)の方がより大きく低下しています。一方、右の「体重増加群」では筋肉量(実線)は増加しているにもかかわらず、筋力(破線)は低下しています。これらは、まさに高齢者の筋力低下が筋肉量以外の要因が大きいということを示しています。

高齢者の筋力低下

米国65歳以上の男女の10~18%程度は10ポンド(約4.5kg)の荷物を持ち上げられないとの報告があります。
さらに、高齢者における筋力低下は筋肉量の低下では十分に説明できないこと、50歳以上では1年あたりの筋肉量低下の割合が0.5~1.0%であるのに比べ、筋力低下の割合はその3倍も速く生じることなどの報告もされています。

健康維持などのためにウォーキングやジョギングに取り組む高齢者は少なくありません。このような有酸素運動が、筋肉量や筋力の維持・向上にどの程度期待できるのかに対する報告も出ています。

この調査は平均年齢59歳の男性と同じく57歳の女性を5年間にわたって追跡調査したものです。男女ともに普段からよく運動はしており、男性は週に5日、女性は週に5.4日の頻度で行っています。週あたりの走行距離の平均では、男性が50.9km、女性は48.4kmです。5年間の追跡期間の間に筋肉量は変化しませんでしたが、膝伸展筋力(膝を伸ばす筋力)は1年間あたり約5%、膝屈筋(膝を曲げる筋力)は1年間あたり約3.6%低下していました。このように、これほどの距離を定期的に走っていても、加齢による筋力低下を防ぐことは、有酸素運動だけでは困難です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このグラフは平均年齢90歳の高齢者を対象に8週間、高強度のレジスタンストレーニング(局所あるいは全身の筋群に負荷を与え、筋力・筋パワー・筋持久力といった骨格筋機能の向上に主眼をおくトレーニングの総称)を行った結果です。

左のグラフは膝伸展筋力と6m歩行タイムとの関係を示したもので、筋力と歩行能力は比例しています。この被験者はリハビリセンターに入居している高齢者ということもあり、初期の身体機能は極めて低い状態で、歩行能力では6m歩くのに平均で22.2秒かかっており、中には50秒近くかかっている者もいました。
トレーニングは個々の最大挙上重量80%の重さを負荷とし、膝伸展運動を8回・3セット、これを週3回の頻度で行いました。
右側のグラフはトレーニングの「介入前」と「介入後」の比較ですが、この結果から90歳という高齢であっても筋力はレジスタンストレーニングを行うことにより向上することが確認できます。
なお、被験者からの報告によれば、介入前は歩行の補助器具がなければ歩けなかった者が自力で歩行できるようになり、椅子から一人で立ち上がれなった者が立ち上がれるようになるなど、筋機能の面でも効果があったとのことです。

まとめ(高齢者の筋トレについて)

強い運動には、活性酸素が多く発生するという問題を伴いますが、自分の力で自由に歩ける、移動できるということは健康な日常生活をおくる上で非常に価値があることなので、高齢者のレジスタンストレーニングは専門家による指導の下、積極的に取り組むべきものであると感じました。