小児障害マッサージ

12月4日の日曜日、小児障害マッサージの講習(今回は座学)を受講してきました。
疾患は脳性麻痺(CP)、脳室周囲白質軟化症(PVL)、筋ジストロフィー(CMD)などが多く、それらの病気を理解することが第一ですが、施術にあたっては脱臼・亜脱臼の既往とてんかんの有無を最初に確認することが必須となります。また、施術は安全性と効果の両面から適切な手技の習得が求められます。
講習受講後、調べて理解しなければならないと感じたものが、「ボトックス注射(ボツリヌス治療)」です。そこで、ブログは前半にボトックス注射の基礎知識、後半に一般的なマッサージ・指圧の効果についてご紹介したいと思います。

 

ボトックス注射(ボツリヌス治療)
ボトックスとは、ボツリヌス菌のもつ毒素を滅菌された生理食塩水で薄めた薬剤のことです。
ボツリヌス菌は食中毒を起こす菌で、極めて強力な神経毒により胃腸症状に続いて、筋肉の麻痺や呼吸困難などを引き起こします。
これを知ると、恐ろしいものと感じると思いますが、ボトックスは毒素ではなくボツリヌス菌が作り出した「ボツリヌストキシン」という成分で製造されており、問題の毒素は取り除かれています。
なお、このボツリヌストキシンには、筋肉に送られる命令の伝達を弱め、筋肉の収縮を抑える効果があります。つまり、この特性を利用して硬くなった筋肉を弛緩させるわけです。
1970年代後半、アメリカの眼科医が斜視の治療でボツリヌストキシンを臨床で使用したのが最初です。日本では1996年に眼瞼攣縮が認可されて以来、2000年に片側顔面攣縮、2001年に攣縮性斜頸、2009年に小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足、さらに2010年に上肢痙縮・下肢痙縮、2012年に腋窩多汗症へと徐々にその適応症が拡大されてきました。

懸念される副作用の多くは治療対象筋肉の過度な脱力というものですが、薬の量を調整することで回避が可能です。また、重症障害児の場合には、嚥下や呼吸が弱くなるという副作用があるとされていますので十分な注意が必要になります。
治療間隔は5~6ヶ月が目安となり、これに適した投与量を注射することになりますが、量の調整は段階的に増量しながら、最終的に適量を決定します。また、毎日のリハビリテーションが治療効果の持続にとって重要となります。

施術者としては、筋肉は筋膜や腱膜などによって周辺の筋と連結しているため、治療対象周辺の筋肉の状態や、各パート(左右の上肢、下肢などの単位)および全身レベルの筋肉のバランスや状態に注意を払うことが大切だと思います。

 

マッサージ・指圧の現代医学的効果
小児障害マッサージも土台となっているのは一般的なマッサージの基本と同じです。

マッサージには気持ちよいという慰安の側面もありますが、効果のメカニズムは科学的な説明が可能であり、医療においてはそのメカニズムを理解し、患者さまの状態に応じて、適切に施術することが重要になります。
なお、「鍼通電療法」でご紹介した芹澤勝助先生が、著書「マッサージ・指圧法の実際」(創元社)の中で、詳細に説明されていますので、その個所を引用させて頂きます(2箇所、中略あり)。


『マッサージの効果も、指圧の効果も、ともに皮膚の上から加える [触圧](ふれる、おす) 作用で、直接には循環系に働き、間接には神経反射により神経、筋肉系に影響を与える施術である
ところで、触圧感覚とはどういう感覚なのかというと、この感覚は、皮膚や筋膜、筋肉、腱、関節などに機械的なエネルギーをあたえたとき、つまり、さわったり、なでたり、こすったり、もんだり、おしたり、ふるわせたり、たたいたり、ひっぱったりしたときに起こる感覚のすべてをいうのであり、このうち筋肉や筋膜、腱や関節に起こる触圧感覚を深部感覚といっている。 -中略-
いま皮膚が、なでられ、おされ、ひっぱられると、この条件変化により、それぞれに対応する受容器が変形を起こし、受容器が興奮する。この興奮は受容器に入り込んでいる知覚神経線維により、脊髄神経節を介して脊髄に入る。 -中略-
要約すると、皮膚刺激→触圧→触圧の受容器→知覚神経→脊髄(上行する線維、下行する線維、自律神経「交感神経」に連絡する線維、脊髄のそれぞれの高さでの反射弓をつくる線維)→延髄→大脳(間脳の視床→皮質)を伝導路とすることになり、皮膚感覚のすべては、一応間脳の視床に集まり、大脳皮質に達するのである。
マッサージや指圧による治療効果として現れる生体反応の多くは、触圧による機械的な作用もさることながら、神経反射によって起こるものであろう。生体における一連の反射作用は、神経の末梢で起こる軸索反射と、求心性伝導路の脊髄レベルで起こる反射(脊髄反射)とがあり、さらにもっと高位の中枢(間脳の視床と、自律神経の高位中枢である視床下部との間に起こる)の複雑な関連機転によって起こるものとがある。特に中枢神経系の機能の主なものは反射機能であり、脳脊髄神経系の反射自律神経系の反射である。
 神経痛の「いたみ」や「しびれ」、運動神経系の痙攣などにマッサージや指圧が効く理由の主なものは、脳脊髄神経系の反射機転を介するものであろうし、循環系や広汎な内臓系のいろいろな症状や不定愁訴の症状群(たとえば頭痛、めまい、耳鳴り、不眠、肩こり、便秘など)に効く理由は自律神経反射が主役を演じているのであろう。しかし人間の体は有機統一体なのであるから、お互いに絡み合いの機転であろうが、その間には、おのずから主役的あるいは脇役的に働く機転があるはずである。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「あん摩マッサージ指圧理論」 (教科書執筆小委員会)

 これは自律神経支配図です。体表からの刺激は自律神経を通じて各臓器に働きかけます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

              画像出展:「経穴マップ」(医歯薬出版) 
 
下段はホルムクルスと呼ばれる絵で、体のどこを刺激するかによって、脳の体性感覚野にどうように投影されるかを表したものです。四肢末端と顔面(特に口唇)への刺激が体性感覚野の広い領域に影響を及ぼすことを示しています。これを見ると脳のリハビリとして、歩くこと、手を使って食べることが効果的であるということが納得できます。