病的血管によるしつこい痛み

以下のニュースはエムスリーという医療情報を提供しているサイトから送られてくる医療ニュースの中にあった記事で、配信元は西日本新聞さまです。https://www.m3.com/

 

『[五十肩に新治療法 患部から新たに増えた血管除去 久留米大病院が九州初導入]

 久留米大学病院(久留米市旭町)は10月から、中高年に多い五十肩に対し、患部に増えた新生血管をカテーテルで除去する新たな治療法を導入した。五十肩は肩関節周辺に炎症が起き、症状が重い場合、日常生活に支障を来す。病院によると、この治療法の導入は九州で初めて。
 放射線医学講座の小金丸雅道准教授によると、五十肩のうち消炎鎮痛剤などによる薬物療法や、筋肉をほぐすといった一般的治療で症状が改善しない患者が相当数いた。
 最近の研究で、こうした強い痛みが慢性的に続く人の患部を血管造影検査で調べたところ、炎症が引き金になって新たに細かく枝分かれした血管が生じ、同時に神経も伸びていることが判明。この神経が痛みの原因とみられる。
 新たな治療法は、局所麻酔後に、手首か、肘の内側の動脈から直径1ミリ以下のカテーテルを差し入れて新生血管まで通し、薬剤でふさいで除去。並走する神経を鎮める。治療は1時間程度で終わり、日帰りできる。自由診療のため費用は約17万円。
 小金丸准教授によると、2012年に都内の病院で初めて導入され、現在までに500件を超える治療実績がある。約60人の患者への調査では術後3カ月で9割の痛みが消失し、特に夜間の痛みに効果が大きかった。別の長期調査では3年間、再発は確認されていないという。』

 

この記事は、江戸川病院整形外科 奥野祐次先生の著書、「長引く痛みの原因は血管が9割」の内容と重なります。奥野先生が始められたのが2012年とのことなので、記事内の「都内の病院」とは、まさに先生が勤務されている江戸川病院のことではないでしょうか。


私の場合、テニス肘の治療において慢性化したしつこい痛みの原因を調べていた時にこの本に出会いました。また、下記右側の写真の矢印が病的血管、モヤモヤ血管になります。


まず、本の中では、正常な血管を「生理的血管」とし、病気を悪化させてしまう異常な血管を「病的血管」としています。そして「病的血管」はモヤモヤした状態になっていることから、「モヤモヤ血管」と呼ばれています。
このブログでは「病的血管」がどのように生まれ、どのような対策をするのか等についてご紹介させて頂きます。

1.病的血管の姿              
 ・ぐちゃぐちゃとした塊のような血管。栄養分や酸素を運ぶ血液本来の仕事はしない。              
 ・「血管を新しく作りなさい」という指令が炎症部位で活発化する。なお、指令を出す物質は

  「血管内皮増殖因子(VEGF)」と呼ばれるペプチドホルモンであり低酸素状態の時に線維芽細胞

  から分泌される。


2.何故痛みがでるのか
 ・炎症細胞(白血球の顆粒球やリンパ球)を呼び込んでしまう。
 ・病的血管の周りに神経線維が増え、この神経から痛みの信号が出されると考えられる。   
 ・病的血管は酸素や栄養素を運ばないだけでなく、正常な毛細血管に届くはずの血液をその手前で

  奪ってしまうため(「盗み取り現象」)組織が酸素不足となり、不適切な「血管内皮増殖因子

  (VEGF)」が分泌され悪循環に陥ってしまう。なお、血管造影の検査により「盗み取り現象」が

  長引く痛みの患者さまに見られることが分かっている。 

                           
3.病的血管を減らす生活習慣
 ・有酸素運動が有効:運動不足は体の中の軽微な炎症を長引かせる原因になる。有酸素運動を継続

  することによって、全身の組織の軽微な炎症が改善されることで病的血管は減る。              
 ・高カロリーの食事はやめる:高カロリー食が病的血管を増やしてしまうということことが、東京

  医科歯科大学の研究者がマウスを使った実験で明らかにされた。そして実験では更に時間が経過

  すると関節に変形が生じてくることも分かった。
 ・糖尿病に注意:糖尿病に起こる問題は「小さな血管の異常」である。そしてこれは病的血管がで

  きるということである。目の網膜に出ると糖尿病性網膜症であり、腎臓にできれば糖尿病性腎症

  である。そして糖尿病患者は関節にも病的血管ができやすく、肩関節周囲炎を例にとると

  10~20%の人が肩関節周囲炎になる。これは一般の人よりはるかに多い数字である。              
 ・ストレッチが有効:ドイツの解剖学者が腱の細胞に機械的なストレスを加えた実験を行ったとこ

  ろ、血管を新しく作らせないようにする物質の一つであるエンドスタチンが豊富に出ることが分

  かった。なお、ストレッチが効果的なのは腰、肘、膝、腱であり、痛みの方向へ負荷をかけると

  いう方法である。 
 ・動かす:3ヶ月も4ヶ月も痛いような長引く痛みの場合、痛くない範囲で動かした方がよい。これ

  は急性期と異なり、すでに修復は完了している状態なので、安静にする必要はなく、むしろ痛み

  の原因となる病的血管を作ってしまう。
 ・温める:血液が正常な血管に流れると、相対的に病的血管への流れを減少させるため痛みは改善

  される。体を温めると痛みが和らぐのはこのためである。寒い場所では皮膚への血液の流れが減

  り、内部に位置する病的血管への流れが増え痛みがでる。
 ・急な炎症は冷やす:怪我をした直後に、人間の体は必要以上に血管をたくさん増やすように反応

  する。こんなときに生じた余計な血管が長引く痛みの原因になったり、後々の「古傷の痛み」の

  原因になったりする。従って、怪我した直後はじっくりと冷やし、かつ圧迫することで余計な血

  液の流れを作り出さないようにすることが重要である。
 ・圧迫する:長引く痛みは「圧迫して治る」という性質がある。圧迫法はテニス肘や膝の痛み、五

  十肩の痛みにも効果がある。長引く圧痛には病的血管ができており、圧痛部位を10秒前後圧迫す

  ることで一時的に病的血管への流れが遮断される。圧迫以外でも病的血管は色々な刺激に弱いと

  いう特徴があるので、普段と違う刺激を受けることで、速やかに減る性質がある。 
 ・筋力トレーニング:筋力トレーニングは痛みを治すというよりも再発予防に効果的である。まず

  は病的血管を減らして痛みの原因を除去したのちに、再発を防ぐために筋トレを行うのが良い方

  法であると考える。    

         
4.運動器カテーテル治療とは
 ・ターゲットの血管は「盗み取り血管」である。これは医学的には動静脈短絡と呼ばれるが、
これ

  があることで正常な血液の流れが奪われ、本来送り届けられるはずの酸素や栄養は供給され

  ず、病的血管が作られ続けるという悪循環を生む。この「盗み取り血管」は非常に細くて直径

  50μm(0.05mm)程と考えられる。薬剤の滞在時間は数時間、長くて1日くらいである。

  これは異常な血管はすぐに退縮する性質があるためである。つまり、このような短期間の塞栓で

  も、異常な血管は減少していく。体内の異物を貪食するマクロファージに食べられてしまうと考

  えられている。これにより悪循環が改善され、病的血管は徐々に減少してく。痛みが十分に取

  れるタイミングは人によって様々である。その場で良くなった患者は25%である。最も多いの

  は治療してから約1ヶ月後に痛みが改善するというパターンである。          
              
「痛みをとろう.COM」で、運動器カテーテル治療の外来予約や問い合わせができます。

期待される鍼灸治療の効果

1.病的血管が作られる前の段階

 ・自律神経を整え、硬くなった筋肉を緩め、血液の流れを正常化することにより、病的血管の発現

  を抑制することが可能と思います。

2.病的血管が作られてしまった段階

 ・鍼の刺激や灸の熱刺激は普段の生活では受けない刺激であるので、これらの刺激が病的血管の消

  退につながる可能性があると思います。