更年期障害

概要
卵巣機能低下に伴うエストロゲン減少と、社会的、環境、個人要素などが複雑にからみ、特に内臓などの病気がないにも関わらず、自律神経障害を中心とした不定愁訴を主とする症候群です。

 

ポイント
1.自律神経障害による不定愁訴を主とする症候群です。
2.現代医学の治療は薬物療法とカウンセリングなどの心理・精神療法になり

  ます。
3.鍼灸では自律神経を調え、血液循環を高め臓器や組織に酸素と栄養素を届

  けることが基本になります。
4.特にストレスと生活習慣の問題の改善に取り組むことが大切です。

 

補足説明
更年期障害は閉経前後の女性にみられるものとされてきましましたが、最近では男性にも更年期障害は起きていると言われるようなりました。原因はホルモン分泌が大きく関わっていると考えられていますが、女性では卵巣で生成され、卵胞の発育を促したり、子宮内膜などの増殖を促すなどの働きをするエストロゲン(卵胞ホルモン)の減少と、そのエストロゲンの生成と分泌を促進するFSH(卵胞刺激ホルモン)の増加、受精卵の着床や妊娠維持に関わるプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌を増加させるLH(黄体形成ホルモン)の増加が関係していると考えられています。一方、男性の更年期障害はLOH症候群ともいわれ、男性ホルモンであるテストステロンが大きく影響しています。
更年期は心理的、社会的にも不安定な時期にあるため、その発現には心理的要素も少なくないと思います。

主な症状は冷え・のぼせ、月経異常、発汗、イライラ、心悸亢進などの自律神経に関係する症状と、抑うつなどの精神症状があります。
治療は薬物療法とカウンセリングなどの心理・精神療法になります。前者ではホルモン補充療法と向精神薬が使われます。

脳幹は脳の中央に位置し、ヒトが生きるための根源的な働きを支えますが、この中の視床下部の神経細胞群は、ホルモンと自律神経の両方をコントロールする指令塔となっています。現代医学の機能と構造という視点でいえば、更年期障害はこの視床下部との関係が最も大きいといえます。この視床下部の働きを抑制したり機能低下させる要因の一つに冷えがあります。
冷えとは熱と栄養素を供給する血液の問題と考えても間違いではないと思います。血液が通る管は血管ですが、これが定常的に狭くなるのは、交感神経優位な状態が長時間続くことです。そして、これにはストレスが大きく関わっています。一方、いわゆる「ドロドロ血」は水分不足、運動不足、食事(脂っこいもの、甘いもの等)、喫煙などが原因となります。ストレスを低減し血液をサラサラに保つことが更年期障害の治療には大切であると考えています。
また、これらの要素は生活習慣に左右される問題ですので、生活習慣を見直すことが必要になります。
鍼灸治療では、ストレスや自律神経の問題に関係が深いと考えます。そして狙いは自律神経を調え、血液循環を高め臓器や組織に酸素と栄養素を届けることです。脈診では肝経と腎経の経絡の変動に注目します。上焦・中焦は熱型で、下焦は冷え型という特徴的な脈がみられることもあります。標治は上焦の熱を取ること(首、肩等の硬結に刺鍼)。また、冷えが顕著であれば湧泉などに灸も行います。
背部など硬さ、緊張、硬結を取り除くことは治療の基本ですが、上焦で脊柱上に圧痛点があれば、身柱という経穴の上下の圧痛点に灸を行うこともあります。 

 

付記
三焦は上焦・中焦・下焦を意味します。上焦は横隔膜から上方の機能で、胸部(心・肺)を指します。中焦は横隔膜から臍までの機能で、上腹部(脾・胃)を指します。下焦は臍から下の機能で、下腹部(腎・膀胱・腸など)を指します。