冷え症

概要
東洋医学の基本は風邪の治療である。という説があります。「風邪は万病のもと」と言われますが、これはそのような説を裏付けるものといえると思います。また、いわゆる「冷え症」が抱える問題は、温度が下がるということに加え、熱の不足によって体の中をめぐるものの動きが悪くなるということも重要です。

 

ポイント
1.鍼灸では冷えは体表から臓腑に波及し、問題を深刻化させると考えて

  います。
2.判断は脈診、腹診を中心に四診から総合的に判断します。
3.予防はバランスの良い食事、運動習慣、ストレスに注意することです。

 

補足説明
冷え症の問題は大きく取り上げられています。例えば200年前と比べると食生活は圧倒的に現代人の方が優れています。しかしながら、乱れた食生活や体を冷やす物の摂りすぎ、無謀なダイエット、あるいは貧困といった現代の問題により、栄養状態の悪い人は存在します。さらに生活の場にはエアコンが普及しており、冷蔵庫の中には冷えた飲食物があります。また、多くの若い女性はファッションを優先することにより、体を冷やしてしまう機会が少なくないと思います。

最近は体温が35度台という人も珍しくない話ですが、体温は1度下がると免疫力は30%下がり、1度上がると5、6倍になるといわれています。免疫力に大きく関わっているのが白血球ですが、白血球の数は喫煙、アルコールの摂り過ぎ、生活習慣の乱れなどにより減少します。また、ある記事によると50年前の日本人の平均体温は、36.89度だったそうです。
このように問題視される冷えですが、鍼灸では冷えは体表から発生し臓腑に入り込む(体の中心へ冷えは進む)と考えています。これは冷えが持っている下降、凝縮という陰性の性質によります。例えば脈診では脈が奥の方にある感じ(沈脈)で、細く(細脈)、少し指に力を入れると拍動が消えてしまう(軟脈)という特徴があります。腹診では表面の状態ではなく、奥に冷えがないかを特に注意して診ています。
以下にタイプ別の基本的な治療法と筋肉等との関係についてまとめてみました。

 

冷え症(下肢型)
脈診で軟らかい脈(軟脈)の場合は、体幹部に冷えがあると考えます。治療は気血津液を補うことが目的になりますが、虚している経絡(陰経)に浅く刺鍼し補います。また、特効穴として三陰交と足三里に置鍼する場合もあります。体幹部では特にお腹を手掌全体で軽く圧し、奥の方に冷えがあるかどうかを確認し、冷えがある場合はその部分に20分程度の置鍼を行い気を補います。

 

冷え症(瘀血型)
脈診で肝経が沈細硬(奥の方にあって細く硬くて消えない脈)の場合は、瘀血の熱が体内に内攻すると考えますが、一方、手足など表面には冷えが出てきます。これらの冷え症状は、瘀血を取り除くことにより、内攻した熱がなくなり表面に出ていた冷え症状も取れます。治療は通常、冷やす力と通りを良くする力を持つ経穴を選択します。

 

筋肉から冷え症を考える
・フクラハギの筋肉群を緩める
腓腹筋の下に位置するヒラメ筋や、さらにその下にある長趾屈筋、後脛骨筋および長母趾屈筋の緊張や硬結は、これらの筋群の間を走行している後頚骨動脈に影響し、血流量が低下して冷えの原因になります。従って、これらの筋群全体を緩めて、循環改善を図ることが冷えの改善になります。
・膝内側と鼡径部の血液循環を高める

膝内側に形成された内側広筋、鵞足筋の硬結は大腿動静脈を圧迫し冷えの原因になります。また、鼡径部に違和感がある場合、慢性腰痛を併発していることがあります。これは腸腰筋の硬結が鼡径部において血管裂孔を圧迫するために起こると考えられます。股関節屈曲で鼡径部に鈍痛があり、冷え症がなかなか改善されないケースでは、腸腰筋を緩めることが重要です。