量子コンピューター誕生

量子超越(quantum supremacy)というのは、「量子コンピューターで従来のコンピューターにはできない計算をする」という意味の造語だそうです。

量子コンピューターが世界最速のスパコン(スーパーコンピュータ)を凌駕したという【量子超越】のニュースは、前々回のブログ“スマート・クリエイティブ”の中でご紹介しましたが、このGoogle の量子コンピューターのことは、日経サイエンスで特集されていました。

日経サイエンス 2020年2月号

出版:日経サイエンス

発行:2020年2月

量子コンピューターはたった53個の素子で世界最速のスパコンを超える計算を実行した。この計算能力を生かせるキラーアプリケーションの発見を目指して世界中で競争が始まっている。

画像出展:「日経サイエンス」

「前」世界最速のスパコン

米国立オークリッジ研究所にあるスパコン

サミット

・台数(ノード数):4608

・CPU数:9216

・メモリ:10PB(ペタバイト)

・ストレージ:250PB

・OS:Linux

 

2020年6月22日に富士通/理化学研究所の“富岳”が世界1位になったという発表がありました。

画像出展:「日本経済新聞

富岳

・台数(ノード数):158,976

・CPU(コア)数:8,266,752

・メモリ:4.85PiB(ぺビバイト)

・ストレージ:150PB

・OS:Linux 

画像出展:「日本経済新聞

性能比較

Google 社の量子コンピューター(53個の超電導量子ビット)

画像出展:「日経サイエンス」

チップの中身

量子コンピューターチップには、53個の超電導量子ビット(右)が格子状に並び、接続を制御する接続器でつながっている。1つ抜けているのは(上段中央の白いチップ)壊れて動作しなかったため。

 

 

この特集は技術的な解説が中心ですが、難解ということもあり、私の関心は“これからの見通し”と“量子コンピューターの扉を開けたのは誰か”という2点です。 

前者は、「量子コンピューターが近い将来に世界を変えることはない。これは現在の量子コンピューターが計算できるのは特殊なものに限定されており、科学者や産業界が期待する実用的な計算ができるようになるかどうかは未知数である」ということでした。

東京大学の中村泰信先生は、『「今の延長で、2~3年のうちにおそらく200量子ビット程度まではいけると思う」』、とお話されています。

また、本誌には2つの視点から今後の課題が書かれています。

各ビットを制御するために必要な膨大な配線をどう処理するかが大規模化の課題になるという。よく巨大なシャンデリアのような量子コンピューターの写真を見かけることがあるが、あれは中心にある量子チップを冷やす冷凍機で、無数の金属線はそのチップの素子を制御する配線だ。』

エラーを訂正しながら計算が続けられる量子コンピューターを実現するにはあと20~30年かかると、研究者の多くはみている。それまではエラー耐性量子コンピューターを目指しつつ、エラー訂正できない小規模な量子コンピューター(これをNISQ[Noisy Intermediate-Scale Quantum device]と呼ぶ)で何か面白い計算ができないかを探索する研究が進むだろう。』

量子コンピューターは極めて興味深い技術革新ですが、まだまだツボミ、満開になるまでにはかなりの月日を要するようです。

画像出展:「日経サイエンス」

左はマルティニス教授(2017年12月、グーグル研究所)

 

 

後者の“誰が量子コンピューターの扉を開けたのか”という疑問は、オックスフォード大学の物理学教授、ディヴィッド・ドイッチュ(David Deutsch)先生というのが答えでした。日経サイエンスの記事の中にも誕生までの経緯に関するお話が出ていましたので、そちらをご紹介します。 

画像出展:「日経サイエンス」

この写真はドイッチュ先生のホームページから拝借しました。

 

 

 

・量子的に動作するコンピューターというアイデアが初めて注目を集めたのは1981年5月、IBMの計算機科学者ランダウア―(Rolf Landauer)が主催した「第1回物理と計算の国際会議」である。会議には著名な物理学者のファインマン(Richard Feynman)が招かれ、計算機による物理コミュニケーションについて講演した。そして「(量子力学以前の)古典力学を扱う解析はどれもうまくいかない。自然は古典力学では動いていないので、シミュレートするなら量子力学的にやるべきだ」と結論し、量子コンピューターの必要性を予言した。

・『ドイチュが1985年に量子コンピューターの動作を定式化した論文を出したときには、「反響はほとんどなかった」という。量子的な重さね合わせは今でこそ計算のリソースと捉えられているが、当時は量子力学を構成する理論上の枠組みだと思われていた。そんな実体のないものに情報を保存して計算するというのは突拍子もない話で、しばしば「幽霊を使って計算するコンピューター」と評された。

だが量子コンピューターの理論に関心を持つ人はじわじわと増えていった。1994年にベル研究所のシェア(Peter Shor、現マサチューセッツ工科大学)が量子コンピューターによって巣因数分解を桁違いの高速で解くアルゴリズムを提唱すると状況は一変し、大勢の研究者が流入して、第1次の量子コンピューターブームが起きた。

※ご参考:量子論および「重さね合わせ」についての簡単な説明は、ブログ“スマート・クリエイティブ”の前半にあります。

1982年ごろ、英オックスフォード大学のポスドク、ドイッチュ(David Deutsch)は、それまで数カ月にわたって進めてきた計算を終え、ひとつの結論にたどり着いた。今まさに理論を完成しつつある新しい計算機「量子コンピューター」は、まったく新しい計算をする。

「それは特別な瞬間だった」とドイッチュは振り返る。「量子コンピューターの理論は、新しい計算の理論だとわかった」。 

1985年7月ドイッチュは量子コンピューターの理論を論文として発表し、その中でこう書いた。

「いつの日か量子コンピューターを作ることが技術的に可能になるかもしれない。おそらくは超電導回路の量子で」

34年後の2019年10月、グーグルの量子AIグループを率いるマルティニス(John Martinis)らが、超電導回路を使った量子コンピューターで、世界最速のスパコンで1万年かかる実験を200秒で実行したとNature誌に発表した。そしてこの劇的な加速によって「量子超越」が実験的に示されたと宣言した。

・マルティニスはカリフォルニア工科大学で行った講演でこう語った。「量子超越は、ソロバンから最先端のコンピューターまで、あらゆる計算機は同じクラスの計算をするという【拡張チャーチ・チューリングのテーゼ】への反論だ。量子コンピューターは、新しいクラスの計算をするデバイスなのだ」。ドイッチュの予想は30年余りを経て、マルティニスによって現実のものとなった。

※IBM社の反論:Googleが世界で初めて実証した「量子超越性」にIBMが反論、量子コンピューターはシミュレートできるのか?” こちらはGigazineさまの記事になります。

※Google 社の計画:米グーグルが量子コンピューターの野心的計画、10年以内に「万能」目指す” こちらは日経XTECHさまの記事になります。

画像出展:「日経XTECH」

左下を見ると、”Google AI Quantum"とあります。そこで検索してみるとGoogle Researchというページを見つけました。

 

 

 

画像出展:「Google Research」

こちらはGoogle Researchにあった”Quantum”というページです。左の絵は”The Question of Quantum Supremacy”につながります。また、”Quantum”のページには次のような説明が出ていました。『A research effort from Google AI that aims to build quantum processors and develop novel quantum algorithms to dramatically accelerate computational tasks for machine learning.』

卓越した才能をもったドイッチュ先生の著書の中に、「無限の始まり」という著名な本があることを知りました。

論外の難しさであるのは間違いなく、ページ数も600ページを超える大作のため買うつもりは全くなかったのですが、幸いにも、図書館に所蔵されていることを見つけました。

パラパラとページをめくっていると、400ページの“時間とは「もつれ」現象である”という見出しに続いて、量子コンピューターに関する記述がありました。ブログではその冒頭の部分をご紹介します。

著者:デイヴィッド・ドイッチュ

出版:合同出版

発行:2013年11月

 

こちらは原書です。発行は2012年1月でした。

『物理学における私の研究テーマのいくつかは、「量子コンピューター」の理論に関するものだ。量子コンピューターでは情報を伝える変数があの手この手で守られ、周囲ともつれを起こさないようになっている。そうすることで、情報の流れを単一の歴史に限定しない新たな計算モードが実現されている。あるタイプの量子計算では、同時に行われる膨大な数の異なる計算が互いに影響を及ぼし合い、ひいては一つの計算の結果に寄与する。このことは「量子並列性」と呼ばれている。

一般に、量子計算では情報の個々のビットを「キュービット(量子ビット)」と呼ばれる物理的物体で表す。キュービットを物理的に実現する方法はいくつもあるが、二つの不可欠な特徴をかならず備えている。一つは、個々のキュービットに離散的な二つの値のどちらかをとれる変数があること、もう一つは、キュービットをもつれから保護する特殊な措置―キュービットを絶対零度近くまで冷やすなど―が講じられていることだ。量子並列性を用いる典型的なアルゴリズムではまず、キュービットのいくつかで、情報を伝達する変数に両方の値を同時に獲得させる。ここで、キュービットをまとめて(たとえば)数を表す一時記憶(レジスター)と見なせば、レジスターとしてのさまざまな実在の数は、キュービット数の二乗という指数関数的な大きさになる。そして、一時的に古典的な計算が行われ、そのあいだに分化の波がほかのキュービットのいくつかへと広がる―だが、それ以上は広がらない。そうならないような措置が講じられているからだ。ゆえに、情報は膨大な数の自律的な歴史それぞれのなかで別個に処理される。最後に、影響を受けるすべてのキュービットが絡む干渉プロセスによって、数々の歴史に含まれる情報が単一の歴史にまとまる。中間段階の計算が存在し、情報はそこで計算されているため、先ほど議論した単純な干渉実験[多宇宙における情報の流れに関するもの]の場合とは違って、最終状態は初期状態と同じではなく、図13に示すように初期状態の関数となる。

画像出展:「無限の始まり」

 

 

 

宇宙船の乗組員は自分のドッペルゲンガー[分身]と情報を共有し、一つの関数を異なる入力に対して計算することによって大量の計算をやってのけたが、量子並列性を利用するアルゴリズムでもまさに同じことをする。だが、先ほどの架空の計算は、プロットに合わせていろいろ創作できる宇宙船の規則の制約しか受けなかったのに対し、量子コンピューターは量子干渉をつかさどる物理法則の制約を受ける。多宇宙の助けを借りて実行できるのは、決まったタイプの量子計算しかない。そしてそのタイプでは、最終結果に必要な情報を単一の歴史にまとめるうえで、たまたま量子干渉の数字が最適なのである。

この手法による計算では、わずか数百キュービットの量子コンピューターでも、観測可能な宇宙に存在する原子よりはるかに多い数の計算を並列に実行できる。本書の執筆時点[2011年頃]で製作されている量子コンピューターのキュービット数は10だ。この数の「拡張」は量子テクノロジーにとってたいへん難関だが、徐々に実現しつつある。』

ご参考:”量研(QST)における量子生命科学研究

上記をクリック頂くと、量子科学技術開発機構さまの資料(PDF19枚)がダウンロードされます。図、写真、表などが多く含まれた親切な資料です。

スマート・クリエイティブ

今回のブログは“Google”に関するものです。「なぜ、Googleに興味をもったのか?」、かなり長い前置きになりますがお付き合いください。 

ほとんど関心のなかった自動運転ですが、たまたま入ってきた情報に反応してしまいました。それはグーグルが自動運転で他社を圧倒しているというものです。てっきり、今も五十歩百歩、横一線なのではないかと思っていたため、このニュースに意表を突かれた感じです。

検索してみると、素晴らしいサイトがありました。以下はそのサイトにあった2019年4月1日付の記事です。動画もあり、非常に詳しい紹介がされています。 

画像出展:「NEWS CARAVAN

Google傘下のWaymo、商用自動運転車を目指した10年の軌跡

『2018年に初めて自動運転を使った配車サービスを商用展開したのがWaymoです。Googleの親会社のアルファベットの傘下でWaymoは、前身のGoogle自動運転プロジェクトから10年もの歳月をかけてようやく、その技術を実用化させつつあります。

以下のグラフはワシントンポストのニュースにあったものです。“Rates of intervention”という見出しなので、自動運転技術の性能に関するものということだと思います。これを見るとGoogle は競合他社より2桁~3桁、精度が高そうです。 

画像出展:「ワシントンポスト

 

上記のグラフではTeslaが0になっていますが、下のグラフの補足を見ると、Teslaは公道での実験データを公表していないようです。また、公道でのテストデータに関してもGoogle の実績(距離)は他社を圧倒しています。

画像出展:「OFFICE31051

 

ところで、ご紹介した“NEWS CARAVAN”は、“世界中の最新のテクノロジーを扱ったニュースを配信するサイトです”とのことです。その内容は、FAANG(Facebook、Apple、Amazon、Netflix、Googleの頭文字)、AI、Maas/自動運転、サブスクリプションビジネス、IoT、ブロックチェーン・仮想通貨、フィンテック(Finance+Technology)、クラウド、フードテック(Food+Technology)、宇宙開発 の情報を扱っています。素晴らしい完成度です。

そういえば、Googleは量子コンピュータでもIBMと競っていたのを思い出しました。ということで、こちらも検索してみると驚きのニュースが見つかりました。 

画像出展:「CNET Japan

グーグルの「量子超越性」は革命の始まりにすぎない

『1981年に有名な物理学者、故Richard Feynman氏が言及し、Googleが13年間取り組んできた量子コンピューティングというアイデアが、現実に向かって動き出しているのである。』

 

 

下の記事はNewsweekのものです。

画像出展:「Newsweek

『グーグルの研究チームは、同社の量子コンピューターが、従来のスーパーコンピューター(スパコン)で約1万年かかる計算を「わずか数分」で解いたと発表した。』

『量子コンピューターは、量子力学の奇妙な原理を利用して計算を行う。従来型のコンピューターは「ビット」という情報単位を使っている。これは「0」か「1」のどちらかの状態しか表すことができないのに対し、量子コンピューターが使う情報単位「量子ビット」は、同時に「0」でも「1」でもあって、「0」と「1」の間のすべての値でもある。扱える情報量が大幅に増えるため、演算能力も大幅に高まるのだ。』

こちらの記事の中には英語ですが、コインの表裏を例にした説明動画があります。これは量子力学の奇妙な原理の一つ、「重ね合わせ」を説明するものです。

偉そうに説明できるような知識は持っていないのですが、過去ブログの“量子論1”に戻って少しご説明します。なお、ここでご紹介している内容および画像は、「13歳からの量子論のきほん」という本からです。

出版:ニュートンプレス

発行:2018年7月

 

 

量子論が生まれた理由

『あらゆる物質は、「原子」からできていることがわかっています。19世紀末ごろになって、原子がかかわる現象を詳しく調べてみると、ミクロな世界は私たちが日常生活で目にする世界とはまったくちがうことがわかってきました。ミクロの世界は私たちが日常生活で目にする世界とはまったくちがうことがわかってきました。ミクロな物質は、私たちの常識では説明できない、摩訶不思議なふるまいをするのです。

そこで、新しい理論が必要になりました。それが「量子論」です。量子論とは「非常に小さなミクロな世界で、物質を構成する粒子や光などがどのようにふるまうかを解き明かす理論」といえます。

量子論と日常生活の関係

『マクロな世界の物体の運動に量子論を適用すると、計算量が膨大になってしまいます。そこで実用上は、計算が楽な古典論が使われます。マクロな世界では、量子論による計算結果と古典論による計算結果が、ほとんど同じになるのです。なおマクロな世界にも、量子論を使わないと説明できない現象はあります。「金属(導体)」「絶縁体」「半導体」の性質のちがいや、「超流動」や「超電導」といった現象です。


量子論の二つの重要事項

波と粒子の二面性:“電子や光は、波と粒子の性質をあわせもつ”

状態の共存(重ね合わせ):“一つの電子は、箱の左右に同時に存在できる”

Newsweekの記事にあったコインの動画は、上記の「状態の共存(重ね合わせ)」を説明したものということになります。

以前、ネットで見つけた例えでは次のようなものもありました。

「道を歩いていたら、道が3つに分かれた。1番早く目的地に着ける道を選びたいが、選べるのは1つしかない。従って、結果的に1番早い道を選べる確率は1/3(約33.33%)である。

一方、量子の世界では、【重ね合わせ】という奇妙な原理のお陰で3つの道を同時に歩いて行ける。よって、1番早い道を選べる確率は100%である」。

「Google 恐るべし!!」

そこで、Google がどんな会社か知りたいと思い、“How Google Works(私たちの働き方とマネジメント)”という本を購入したという経緯です。

ブログは目次に続き、共同創業者であるラリー・ペイジの言葉と本書の骨子的なメッセージをお伝えし、続いてGoogle のDNAではないかと思われる“スマート・クリエイティブ”と“ラーニング・アニマル”、そして、イノベーションという章の中のテーマから、“自らとりまく環境を理解する”と“良い失敗をする”をご紹介します。

著者:エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル

出版:日本経済新聞出版社

発行:2014年10月

 

 

目次は大見出しのみご紹介させて頂きます。

序文

はじめに

文化 自分たちのスローガンを信じる

戦略 あなたの計画は間違っている

人材 採用は一番大切な仕事

意思決定 「コンセンサス」の本当の意味

コミュニケーション とびきり高性能のルータになれ

イノベーション 原始スープを生み出せ

おわりに

序文

グーグルは「自律的思考」をあらゆる活動の基礎にしていた。それはぼくらの誇るすばらしい成功、そしてときにはとんでもない失敗の原動力となった。』 グーグルCEO兼共同創業者 ラリー・ペイジ

はじめに

楽しいプロジェクト

『本書は成功・成長している企業やベンチャーの発達過程をたどるような構成になっている。この発達過程は、雪玉が坂道を転がっていくうちに勢いがつき、どんどん大きくなっていくような、永続的な好環境に発展できるものだ。一連のステップは、スマート・クリエイティブを惹きつけ、意欲を高めるために企業が実践可能なものだ。その一つひとつが企業を次のステップへと押し上げていく。各ステップは相互に依存し、お互いの上に成り立っている。またどのステップも決して終わることのない、ダイナミックなものだ。

まずは最高のスマート・クリエイティブを惹きつける方法から始める。その出発点は企業文化だ。なぜなら企業文化とビジネスの成功は切り離して考えることはできないからだ。自分たちのモットーを信じられなければ、大成功はとうてい望めない。次に取り上げるのが戦略だ。スマート・クリエイティブは強固な戦略の土台に根差したアイデアに何より魅力を感じる。事業計画を支える戦略の柱こそが、事業計画そのものよりもはるかに重要だとよくわかっている。その次が採用だ。これはリーダーの最も大切な仕事である。最高の人材を十分に集めることができれば、知性と知性が混じり合い、クリエイティビティと成功が生まれるのは確実だ。

スマート・クリエイティブ

・こんにちの労働環境は、20世紀とは本質的に異なる。実験のコストは安くなり、失敗のコストもかつてよりは大幅に低くなった。そのうえ、データもコンピューティングのリソースも豊富になり、自由に使えるようになった。部署を越え、大陸や海を越えての協業も簡単にできる。こうした要素が組み合わさった結果、突如としてひとりのプレイヤー、マネジャー、経営者にいたるまで、働く人間がとほうもないインパクトを生み出せるようになった。

・IBM、ゼネラル・エレクトリック(GE)、ゼネラル・モーターズ(GM)、ジョンソン・エンド・ジョンソンなどの優れた企業は、有望な人材に2~3年ずつさまざまな部署を経験させる経営幹部養成トラックを設けている。だがこの仕組みは専門能力ではなく、経営能力を高めることを目的としている。この結果、従来型企業で働く知識労働者のほとんどは、専門分野に秀でているか、幅広い経営能力を備えているか、どちらかの能力に片寄っているのが普通である。

・従来型の知識労働者と、グーグルのエンジニアを比べてみると、まったく違うタイプであることがわかる。グーグルの社員は会社の情報やコンピューティング能力に自由にアクセスできる。リスクテイクをいとわず、またそうしたリスクをともなう取り組みが失敗したとしても処罰や不利益を受けることはない。職務や組織構造に束縛されることなく、むしろ自分のアイデアを実行に移すよう奨励されている。納得できないことがあれば、黙ってはいない。退屈しやすく、しょっちゅう職務を変える。多才で、専門性とビジネススキルと創造性を併せ持っている。私たちが「スマート・クリエイティブ」と呼ぶ新種で、インターネットの世紀での成功のカギを握る存在である。

こんにち成功している企業の際立った特色は、最高のプロダクトを生み出しつづける能力である。それを手に入れる道は、「スマート・クリエイティブ」を惹きつけ、彼らがとてつもない偉業を成し遂げられるような環境をつくりだすことである。

・スマート・クリエイティブは、自分の“商売道具”を使いこなすための高度な専門知識を持っており、経験値も高い。

・スマート・クリエイティブは、実行力に優れ、単にコンセプトを考えるだけでなく、プロトタイプをつくる人間である。

・スマート・クリエイティブは、分析力も優れている。データを扱うのが得意で、それを意思決定に生かすことができる。同時にデータの弱点もわかっており、いつまでも分析を続けようとはしない。データに判断させるのは構わないが、それに振り回されるのはやめようと考える。

・スマート・クリエイティブは、ビジネス感覚も優れている。専門知識をプロダクトの優位性や事業の成功と結びつけて考えることができ、そのすべてが重要であることをわかっている。競争心も旺盛である。成功にはイノベーションが不可欠だが、猛烈な努力も欠かせない。

・スマート・クリエイティブは、頂点を目指す意欲にあふれ、ユーザのこともよくわかっている。どんな業界に身を置いているかにかかわらず、スマート・クリエイティブはプロダクトを誰よりもユーザ目線、あるいは消費者の視点から見ることができる。自らが「パワー・ユーザ」で興味の対象に取りつかれたようにのめり込む。

・スマート・クリエイティブからは、斬新なアイデアがほとばしり出る。他の人とはまったく違う視点があり、ときには本来の自分とも違う視点に立つ。必要に応じて、カメレオン的に視点を使い分けることができる。

・スマート・クリエイティブは、好奇心旺盛である。常に疑問を抱き、決して現状に満足せず、常に問題を見つけて解決しようとし、それができるのは自分しかいないと確信している。傲慢に見えることもあるかもしれない。

・スマート・クリエイティブは、リスクをいとわない。失敗を恐れない。失敗からは常に大切なことを学べると信じているからである。あるいはとほうもない自信家で、たとえ失敗しても、絶対に立ち直り、次は成功できると思っている。

・スマート・クリエイティブは、自発的である。指示を与えられるのを待つのではなく、また納得できない指示を与えられたら無視することもある。自らの主体性にもとづいて行動するが、その主体性自体が並みの強さではない。

・スマート・クリエイティブは、あらゆる可能性にオープンである。自由に他社と協力し、アイデアや分析をそれ自体の本質にもとづいて評価する。

・スマート・クリエイティブは、細かい点まで注意が行き届く。集中力を切らさず、どんな細かいことも覚えている。それは勉強し、記憶するからではない。それが自分にとって重要だから、すべて知り尽くしている。

・スマート・クリエイティブは、コミュニケーションも得意である。一対一でも集団の前で話すときも、話がおもしろく、センスがよくてカリスマ性さえ感じさせる。

すべてのスマート・クリエイティブがこうした特徴を全部備えているわけではないし、実際そんな人間は数えるほどしかいない。だが全員に共通するのは、ビジネスセンス、専門知識、クリエイティブなエネルギー、自分で手を動かして業務を遂行しようとする姿勢だ。これが基本的要件だ。

・スマート・クリエイティブはどこにでもいる。社会階層や年齢、性別も関係ない。テクノロジーのもたらすツールを使って価値あることをしたいという、意欲と能力のある、あらゆる世代の志の高い人たちである。その共通点は努力をいとわず、これまでの常識的方法に疑問を持ち、新しいやり方を試すことに積極的であることである。スマート・クリエイティブが大きな影響を持ちうるのはこうした理由からである。

人材

ラーニング・アニマルを採用する

・『あなたの会社の従業員について考えてみよう。自分より優秀だと心から思えるのは誰か。チェスやクロスワードで対戦したくない相手は? 自分より優秀な人間を採用せよ、という格言があるが、どれだけ実行できているだろう。

この格言はいまも妥当性を失っていないが、その意味は考えられている以上に深い。もちろん優秀な人はいろいろなことを知っていて、凡庸な人より高い成果をあげる。ただ、大切なのは優秀な人が「何を知っているか」ではなく、「これから何を学ぶか」だ。

・『ヘンリー・フォードは「人は学習を辞めたときに老いる。20歳の老人もいれば、80歳の若者もいる。学びつづける者は若さを失わない。人生で何よりすばらしいのは、自分の心の若さを保つことだ」と言った。グーグルが採用したいのは、ジェットコースターを選ぶタイプ、つまり学習を続ける人々だ。彼ら“ラーニング・アニマル”は大きな変化に立ち向かい、それを楽しむ力を持っている。

・心理学者のキャロル・ドゥエックは、これ[ラーニング・アニマル]を別の言葉で表現する。それは「しなやかマインドセット」である。

しなやかマインドセットの持ち主は、努力すれば自分の持ち味とする能力を変えたり、新たな能力を開花させることができると考える。人は変われる。適応できる。むしろ変化を強いられると、心地よく感じ、より高い成果をあげられる。

・しなやかマインドセットの持ち主は「学習目標」を設定する。学ぶこと自体が目標になると、くだらない質問をしたり、答えを間違えたりしたら自分がバカに見えるのではないかなどと悩んだりせず、リスクをとるようになる。ラーニング・アニマルが目先の失敗にこだわらないのは、長い目でみればそのほうが多くを学び、さらなる高みに上がれることを知っているからだ。

・知力より専門能力を重視するのは、とくにハイテク業界では間違いである。あらゆる業界では急速な変化が起きており、昨日までの先端的プロダクトが明日には陳腐化するような時代に、スペシャリスト採用にこだわると裏目に出る可能性が高い。スペシャリストが問題を解決するとき、その手法には自分の強みとされる専門分野ならではの偏りが生じがちだ。優秀なゼネラリストには偏りがなく、多様なソリューションを見比べて最も有効なものを選択することができる。

イノベーション

自らとりまく環境を理解する

・『グーグルXチームは新しいプロジェクトに取り組むかどうか決めるとき、ベン図を使う。まず、それが対象としているのは、数百万人、数十億人に影響をおよぼすような大きな問題あるいはチャンスだろうか。第二に、すでに市場に存在するものとは根本的に異なる解決策のアイデアはあるのか。グーグルは既存のやり方を改善するのではなく、まったく新しい解決策を生み出したいと考えている。そして第三に、根本的なる解決策を世に送り出すための画期的な技術は(完全な姿ではなく、部分的なかたちでも)すでに存在しているのか、あるいは実現可能なのか。』

・「プロジェクト・ルーン」とは、インターネットへのブロードバンド接続環境のない数十億人に、ヘリウム気球を使ってそれを提供しようというプロジェクトだが、これは先に挙げた三つの条件をすべて満たしている。すでに存在する、あるいは十分実現可能な技術を使って、とほうもなく大きな問題をこれまでとは劇的に違うやり方で解決しようとするものである。グーグルXチームはまず新たなプロジェクトのアイデアが三つのパラダイムをすべて満たすか確かめ、満たさないものは却下する。

・イノベーションが生まれるには、イノベーションにふさわしい環境が必要である。イノベーションにふさわしい環境とは、急速に成長しており、たくさんの競合企業がひしめく市場である。

・まったく新しい、ライバルがやってこない“未開の地”は、企業の成長を維持するだけの規模がない。イノベーションのための環境を望むなら、成長の余地の大きな巨大市場を探したほうが良い。

技術は検討すべき要素である。その分野の技術はどのように進化していくか。現在との違いは何か、そして他にはどんな違いが生まれるか。その進化する環境のなかで、持続的に他社との明確な違いを出していくための人材はそろっているか。これらもイノベーションの環境にとって大切である。

こちらが、ベン図です。

できるネット」さまより拝借しました。

良い失敗をする

『「世に出してから手直しする」アプローチの成功例がグーグル・クロームだとすれば、代表的な失敗例は2009年に華々しく登場したグーグル・ウェーブである。』

・ウェーブは大失敗だった。しかし、失敗が明らかになってから追加投資をしなかった。また失敗によって敗者の烙印を押された社員はいなかった。ウェーブ・チームメンバーはプロジェクトの打ち切り後、社内でひっぱりだこになった。限界に挑戦するようなプロジェクトに取り組んだからである。

・ウェーブは失敗する過程で、たくさんの貴重な技術を生み出した。ウェーブのプラットフォームの技術はグーグル・プラスやGメールに取り入れられている。失敗ではあったが、ウェーブは“良い失敗”だった。

・イノベーションを生み出すには、良い失敗のしかたを身に着ける。どんな失敗プロジェクトからも、次の試みに役立つような貴重な技術、ユーザ、市場の理解が得られるものである。アイデアは潰すのではなく、形を変えることを考える。

・世界的イノベーションの多くは、まったく用途の異なるものから生まれている。だからプロジェクトを終了するときには、その構成要素を慎重に吟味し、他の何かに応用できないか見きわめる必要がある。

・『ラリーがよく言うように、とびきり大きな発想をしていれば、完全な失敗に終わることはまずない。たいてい何かしら貴重なものが残るはずだ。そして失敗したチームを非難してはいけない。メンバーが社内で良い仕事に就けるようにしよう。他のイノベーターも、彼らが制裁を受けるかどうか注目している。失敗を祝福する必要はないが、ある種の名誉の印と言っていいだろう。少なくとも挑戦したのだから。』

経営者の仕事は、リスクを最低限に抑えたり、失敗を防いだりすることではない。リスクをとり、避けられない失敗に耐えられるだけの強靭な組織をつくることである。

・おそらく最も難しいのは、失敗のタイミングを見きわめることである。良い失敗は決断が早い。プロジェクトが成功しないと判断したら、リソースのさらなる浪費や機会損失を避けるため、なるべく早く手を引くべきである。ただし、イノベーティブな会社の顕著な特徴は、優れたアイデアに成熟する時間をたっぷり与えることである。自動運転車やグーグル・ファイバー(家庭で最大1ギガビットのブロードバンド接続を可能にする。現在のアメリカの平均的な家庭用回線のおよそ100倍に相当)のようなプロジェクトは、莫大な収益をもたらす可能性があるが、おそろしく時間がかかる。

・『ジェフ・ベゾスもこう言っている。「時間軸を伸ばすだけで、それまで考えもしなかったようなプロジェクトに取り組めるようになる。アマゾンではアイデアを5年~7年で実現したいと考えている。ぼくらは積極的にタネをまき、育てようとするし、しかもとびきり頑固だ。ビジョンについては頑固に、細部については柔軟に、が合言葉さ」 』

・失敗はすばやく、ただし時間軸はとびきり長く、ということである。そのために大切なことは、手直しをできるかぎり速くすること、そして手直しするたびに、自分が成功に近づいているか判断する基準をつくっておくことである。小さな失敗は当然起こるだろうし、許容すべきである。それが進むべき正しい道を示してくれることもある。

・失敗が積み重なり、どうにも成功への道筋が見えないときは、おそらく潮時と考えた方が良い。

相田みつを先生の『にんげんだもの』より

”ラーニング・アニマル”と聞いて、こちらの書を思い出しました。

ブロックチェーン

ビットコインなる仮想通貨には全く興味はなかったのですが、そのビットコインの仕組みに使われている“ブロックチェーン”というテクノロジーは、画期的なものらしいということ知りました。「インターネット以来の最大の発明だ」という人までいるようです。

約29年勤めていた会社はHP(ヒューレット・パッカード)というIT企業です。もっぱら営業担当だったため、技術そのものにはほとんど興味はありませんが、IT業界の動向については今も関心がありますは、これにはIT企業の株式を少々保有しているという裏事情もあります)。

そこで、このような新しいビジネスチャンスに対し、明確な戦略メッセージを周知徹底されるIBM社のホームページをのぞいてみることにしました。そして、この“ブロックチェーン”が極めて有望なものであるということを理解しました。これは“中抜き”によるコストと時間と多様性に対するビジネスチャンスということだと思います。

知りたいことは、「ブロックチェーンの何が優れているのか」と「どんなビジネス機会が想定されるのか(実現可能性)」の2つです。

思っていたとおり、数多くの本が出版されていたのですが、この本は著者の中島先生が中央銀行である日本銀行に長く勤務され、特に「決済システム」にも関わっていたという点に惹かれました。発行が2017年10月と他の本に比べるとそれ程新しくないためか、中古本価格が安かったのも助かりました。

著者:中島真志

出版:新潮社

発行:2017年10月

大きな目次は以下の通りです。

序章 生き残る次世代通貨は何か

第1章 謎だらけの仮想通貨

第2章 仮想通貨に未来はあるのか

第3章 ブロックチェーンこそ次世代のコア技術

第4章 通貨の電子化は歴史の必然

第5章 中央銀行がデジタル通貨を発行する日

第6章 ブロックチェーンによる国際送金革命

第7章 有望視される証券決済へのブロックチェーンの応用

「はじめに」の後半に、著書である中島先生の経歴のお話が出ていますので、最初にそれをご紹介します。

『著者は、長らく日本銀行に勤務し、リサーチ関連の仕事を多く経験しました。その中で「決済システム」に出会い、大学教授への転身後もライフワークとして調査研究を続けてきています。日本銀行時代には、金融研究所で「電子現金」の研究に携わり(詳しくは本論でどうぞ)、国際決済銀行(BIS)に出向の際は、決済に関するグローバルなルール作りに携わりました。この間、資金決済、証券決済、外為決済、SWIFTなどについての著書を刊行し、いずれも金融関係者に広く読んで頂いています。こういった経歴から、わが国における決済分野の有識者の一人として、金融庁の審議会や全銀ネットの有識者会合などにも数多く参加してきました。』

ブログは「第3章 ブロックチェーンこそ次世代のコア技術」からになりますが、その第3章の中にある、“③ブロックチェーンが主役の世界へ” の説明に使われている図を見て、今後の目指す方向性が見えました。

画像出展:「アフター・ビットコイン」

以下は図の説明です。

『ビットコインなどの仮想通貨が、従来の金融の本流から少し離れた、いわば周辺部分におけるイノベーションであるのに対して、ブロックチェーンは、金融の中核を成すメインストリームの業務のあり方を大きく変えようとしているのです。

ここに来て金融業界では、「ブロックチェーンが主役になる」という認識が共有されつつあり、この技術をどの分野に応用していくかが中心的な課題となっているのです。ビットコインは、あくまでもブロックチェーンの最初の実用例であって、また特殊な適用例の一つにすぎないとの見方に変わってきています。すなわち、「ビットコイン中心の世界」から、「ブロックチェーンが主役の世界」へ移行してきており、当初のビットコインの導入段階からは、主客が完全に逆転しているのです。

ブロックチェーンの応用分野は、幅広い分野が想定されており、このうち、①仮想通貨に応用する場合を「ブロックチェーン1.0」②金融分野(仮想通貨以外)に応用する場合を「ブロックチェーン2.0」③土地登記、資産管理、商流管理、医療情報、選挙の投票管理などの非金属分野に応用する場合を「ブロックチェーン3.0」として分類するようになっています(図表3-1)。』

次も第3章からになります。ポイントと感じた部分を書き出しました。

1.ブロックチェーンとは

●ビットコインを支える中核技術として開発され、“オリジナル・ブロックチェーン”と呼ばれている。

●新たな進化系のブロックチェーンを総称して“ブロックチェーン技術”と呼んでいる。

データベースを保管するデータベースの技術である。

●“ブロック”と呼ばれる取引データの固まり一定時間ごとに生成し、時系列的に鎖のようにつなげていく。

過去の取引データを改ざんするためには、過去から最新のブロックまでをすべて改ざんする必要があり、二重使用や偽造などの不正取引を防止できる。 

画像出展:「経済産業省」※一部を切り取りました。クリックするとサイトに移動します。

2.分散型台帳技術(DLT:Distributed Ledger Techonology)とは

“分散型台帳技術(DLT)に関して、中島先生は次のように補足されています。

『IT技術者以外の一般の方にとっては、そこまで[ブロックチェーンとDLTを]厳密に区別する必要は必ずしもなく、ブロックチェーンと分散型台帳管理(DLT)とはほぼ同義のものと捉えておけばよいでしょう。ブロックチェーンとDLTとは、「同じ技術を別の側面から呼んだもの」と考えておけばよいものと思います。』

●「ブロックを鎖状につなげて管理する」という技術面より「所有権データを分散型で管理する」というユーザ側の視点の方が金融業界では親しみやすく、その結果、金融業界では“分散型台帳技術(DLT)”という用語が前に出てきている。

画像出展:「アフター・ビットコイン」

3.ブロックチェーン/分散型台帳技術の特性

1)改ざん耐性(改ざんが困難であること)

●改ざんするためには、現在までのすべてのブロックを作り直す必要があり、かつその作り直しを正規のチェーンよりも早く成立させなければならない。これは事実上不可能である。(この重要なメカニズムは“ハッシュ値”というものに因る)

2)高可用性(低障害であること)

●ネットワーク上のコンピュータが同じデータを持ち合い、分散してデータを管理している。

●ネットワーク上のコンピュータが1台でも稼働していれば全体としてのシステムを維持できる。

右側のP2P(Point to Point)型がブロックチェーンの一般的なシステム構成になります。左側はサーバーが故障すると、システム全体が止まります。

画像出展:「アフター・ビットコイン」

3)低コスト(劇的なコスト削減ができること)

●取引や顧客に関する膨大なデータベースの維持、管理などに関わるコストを大幅に削減ができる。

●各金融機関どうしの帳簿の残高照合作業が不要になる。

●ユーザ側においても仲介者が不要になるため、迅速かつ低コストでの取引が可能になる。

4.ブロックチェーンの種類

●ブロックチェーンには誰でも参加できる「オープン型」と特定の参加者のみの「クローズド型」がある。

●「オープン型」は「パブリック型」とも呼ばれている。ビットコインは「オープン型」である。

●「クローズド型」は「プライベート型」や「許可型」とも呼ばれている。

●「クローズド型」は参加を許可する段階で、参加者の身元は明らかになっている(匿名性なし)。

●「クローズド型」には全体を管理・運営する中央の管理主体が存在する。

画像出展:「アフター・ビットコイン」

5.コンセンサス・アルゴリズム

●「コンセンサス・アルゴリズム」とは「合意形成の手法」と言われており、分散したデータベース上に多数存在する台帳情報を、ネットワーク上の全員で共有するための手法である。

●「コンセンサス・アルゴリズム」の方法は、オープン型とクローズ型で異なるが、これはオープン型が「悪意の参加者」の存在を前提にする必要があるのに対し、クローズド型では「許可された参加者」だけが対象になるからである。

●主なコンセンサス・アルゴリズム

表の上から3つ(プルーフ オブ ワーク[PoW]、プルーフ オブ ステーク[PoS]、プルーフ オブ インポータンス[PoI])は悪意のある参加者がいることを前提に、厳格な方式で不正を排除している仕組みになっています。

画像出展:「アフター・ビットコイン」

6.代表的なブロックチェーン

1)リナックスが進める「ハイパーレッジャー・ファブリック」

●「ハイパーレッジャー・ファブリック」は“リナックス・ファウンデーション”が開発しているブロックチェーンであり、金融業界向けのブロックチェーンとしての標準化を志向している。

●独自のコンセンサス・アルゴリズム(PBFT系)やメンバーシップ管理の仕組みを含んでいる。

●金融以外にも、製造、保険、不動産契約、IoT、ライセンス管理、エネルギー取引などでの応用を志向している。

●オープンソース(無償で一般公開)のため、誰でもそのソフトウエアの利用、改良ができる。

こちらは“リナックス・ファウンデーション”のサイトにあるものです。

Forbes Blockchain 50”の半数がHyperledgerを使っているということが書かれたページです。

こちらはForbesのサイトです。アルファベット順に50社が紹介されています。

 

こちらは“ブロックチェーンオンライン”さまのハイパーレッジャーに関するご説明です。

『Hyperledgerは、ブロックチェーンの技術を仮想通貨に限らず最大限に利用することを目的として生まれたブロックチェーン技術の推進コミュニティーです。プロジェクトの立ち上げにあたってLinuxOSの普及をサポートする非営利の共同事業体であるLinux Foundationが中心となり、オープンソースの理念から世界中のIT企業が協力して、ブロックチェーン技術の確立を目指しています。』

こちらのブログの中に、少し古いですがLinuxに関する現状が載っていました。一部をご紹介します。これを見るとLinuxはOSS(Open Source Software)のリーダーという感じですね。

●In 2018, Linux ran on 100% of the world’s 500 supercomputers.

●In 2018, Android (based on Linux) dominated the mobile OS market with 75.16%.

 

85% of all smartphones run on some version or derivative of Linux.

上記の”WEBSITE PLANET"は”Find a solution for your website”となっており、”Website Builders"もありました。ためしにのぞいてみたら。1位がWixで、私が使っているJimdoは5位でした。Wixは以前からデザインの自由度などで高い評価をされていました。

2)R3コンソーシアムが進める「コルダ」

●R3は米国の技術系企業である。

●金融業界向けに特化した分散型台帳管理技術を開発する。

こちらはコルダのサイトですが、参加企業のロゴが全て掲載されています。数えてみたら178社でした。(2019年5月3日時点)

7.金融分野におけるブロックチェーンの実証実験

1)国際送金における応用

『国際送金は、これまで相手先への着金までに時間がかかることや、手数料が高いといった問題点があったため、ブロックチェーンの技術を使ってこれらを克服し、国際送金を「早く、安く」行おうとする動きがみられます。』

国際送金システム「SWIFT」がブロックチェーン企業R3と提携 XRP対応の決済アプリ「Corda Settler」統合へ”という2019年1月31日付けのBD by BITDAYSさまの記事です。

なお、SWIFTとは Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunicationの略で、国際銀行間通信協会になります。 

私自身の話になりますが、HPの営業時代に銀行さまを担当していたことがあり、このSWIFTという用語は国際決済の代名詞のように使われていました。「思い出します。懐かしい」。(日本語サイトです)

2)証券決済における応用

『国際送金と並び、証券決済の分野もブロックチェーンの応用として脚光が当たっています。株式や債券といった証券の決済は、現状では、多くの当事者が関係する複雑なプロセスになっていますが、ブロックチェーンを利用することによって、こうしたプロセスを大幅に合理化し、コストを削減できるのではないかとの機運が盛り上がっています。』

有価証券の決済にブロックチェーンを活用する、カナダ銀行の試み(Bloomberg)

こちらはNTTデータさまの「イマ旬2.0」に掲載されていた2019年2月28日公開の記事です。

ブロックチェーンが証券決済能力を有することを証明|独中央銀行

こちらは「Oh My Crypto News」に掲載されていた2018年10月29日公開の記事です。

付記1:総務省 自治体ポイントに関する検討会 2018年4月11日 資料3

クリック頂くと、PDFの資料がダウンロードされます。こちらの資料、”ブロックチェーンの将来性と応用分野” は中島先生によるものです。今回ご紹介した『アフター・ビットコイン』がベースになっていますが、書式がスライドタイプなので見やすいと思います。ご参考にして頂ければと思います。

付記2:HPE opens new headquarters in north San Jose

日本では『平成』最後の日となった2019年4月30日に、HPE(旧HPから分社した会社で主に企業むけのシステムやサービスを提供。辞めていなければHPではなく、こちらのHPE側にいたというところです)の新しい本社がオープンしたそうです。グッドタイミングだったので貼りました。

すいません。英語のままです。

Hewlett Packard Enterprise employees gather next to the new HPE headquarters at 6280 America Center in San Jose. Hewlett Packard Enterprise on Tuesday unveiled a gleaming new office building in north San Jose, bringing a world-class tech company's headquarters into the Bay Area's largest city.

画像出展:「mercurynews

左から2番目がCEOのAntonio Neriです。

Hewlett Packard Enterprises CEO Antonio Neri (L), San Jose City Councilman Lan Diep (C) and San Jose Mayor Sam Liccardo (R), take a selfie with Hewlett Packard Enterprises employees during the grand opening of the new HPE headquarters in north San Jose. Hewlett Packard Enterprises on Tuesday unveiled a gleaming new office building in north San Jose, marking a new tech headquarters for the Bay Area's largest city.

【YHP】

ホームページの「その他」→「参考図書」のページにガレージらしき写真を、何の説明もつけずにポンと置いていますが、それについてお話したいと思います。
この写真のタイトルは「Rules of the Garage」といい、1999年当時、米国ヒューレット・パッカード社(HP社)の新CEOであったカーリー・フィオリナが、創業者のビル・ヒューレットとデイブ・パッカードが築いたHP Wayの精神を再考し、あらためて行動規範としてまとめたものです。

原点であるHP Wayはビル・ヒューレットが語った次の言葉が象徴的であるといわれています。
それは、「信頼と尊厳。社員は男女を問わず誰でも良い仕事、創造的な仕事をしたいと思っている。それに相応しい環境におかれれば、誰でもそうする。会社は本当に社員が働きやすい環境・制度を整備する。社員はそうした会社の姿勢に応えるべく責任と義務を要する。」
というものです。なお、二人が使った創業当時のガレージは米国ITの象徴ともいえる、シリコンバレー発祥の地として「史跡」に指定されています。
HP WayはHP社で働く者にとっては、DNAともいうべき考え方ですが、私が最も印象に残り、判断や行動の拠り所として、心に置いていたのはHP Wayではありません。

それは会社説明会で渡された会社案内のトップページに書かれていた、「One for all, all for one」でした。今でこそ有名ですが、34年前の自分にはとても新鮮で、何故かハッとさせられたという記憶があります。
ラグビーでよく使われる言葉だということを知り、その意味するイメージを深く理解できたと思います。仕事が楽しく、前向きに取り組むことができたのは、この言葉を大切にしてきたからではないかと思っています。
そして、この言葉は入社当時の人事部長で、56歳という若さで他界された木本建治さん、早稲田大学ラグビー部OBで1987年の日本選手権では、監督として社会人の強豪東芝府中を撃破し、大学最後の優勝監督となった木本監督を思い出します。

ずいぶんと日焼けしてしまいましたが、貴重な1冊です。

写真はtownphoto.netさまより拝借。2010年5月撮影のようですが、この「HPストリート」の風景は1980年代当時と変わらないように思います。