医療マッサージ研究1

乳児期に起きた事故によって重症障害者となり、現在、青年期を迎えている患者さまにマッサージを行っています。スタートは2017年4月、頻度は週2回です。開始から15ヶ月が経ち3つの変化がありました。これらがマッサージの効果であるとは断言できませんが、関係しているものと思います。なお、施術では次のことを心掛けています。

 

◆無理をせず、安全第一(特に他動による関節運動)。

◆脳幹への感覚刺激入力として、声かけ(聴覚)、擦る・圧迫する(触覚)、各関節の他動運動(固有覚)という3つの感覚刺激が関連づけられて脳幹に届くことをイメージしています。乳児期の障害だったため言葉は理解できないと認識していますが、何度も何度も繰返すことで、何かが変わることを期待し、声かけでは「部位」と「動作」を伝えています。(例えば、「肩を動かすよー、前…後…。」とか、「腕をさするよー。腕を握るよー。等々)

◆免疫力アップを狙って、肩関節の他動運動では腋窩リンパ節、股関節では鼡径リンパ節への刺激を意識しています。

拡大して頂くと、脇と脚のつけねに円で囲われた部分のリンパ節が確認できます。

画像出展:「人体の正常構造と機能」

リンパは、感染防止の必要に応じて毛細血管から滲み出し、リンパ管に集められます。リンパ管は静脈にほぼ寄り添うかたちで全身に分布し、胸管などの太い主リンパ管となって首のつけ根で静脈に注ぎます。リンパ管の中のリンパは、体の動き、筋肉の収縮などによって太い方へ送られます。リンパ管の各所にあるリンパ節はリンパの濾過装置で、大きさも形も様々であり、ここで末梢からのリンパは濾過されて病原体、異物、毒素などが取り除かれます。また、異物から体を守る免疫の担い手であるリンパ球(Tリンパ球、Bリンパ球)もリンパ節で作られます。

 


3つの変化

1.健康アップ(免疫力アップ)

2017年4月から9月までの6ヶ月間は、入院を含め、発熱等による体調不良のため施術が休みとなることが多く、予定通り実施できたのは約58%でした。一方、2017年10月以降、2018年6月までの9ヶ月間に関しては、体調不良により休みとなったケースはありませんでした。

2.体重増

施術の最初に側臥位の向きを変えてから始めるのですが、数ヶ月前から体を抱えたときの腕への負荷が明らかに高まったように感じました。ご家族の方も同様な認識であり、体重増は間違いないと思います。しかし、この患者さまにとって体重増加が良いことなのか把握できていません。基本的には健康度の指標となる各種検査値や栄養管理、あるいは衛生管理などの面から総合的に評価するべきものではないかと思います。

 

左の資料、「重症心身障害児の栄養管理」はJ-Stageさまからのものです。

『栄養摂取量に関してはこれまでさまざまな方法が提唱されているが確立された方法はない。我々は麻痺のタイプや筋緊張の変動の状態、呼吸状態などの臨床所見を参考に、年齢別体重当たり基礎代謝量の1~2倍程度の範囲に当面の総エネルギー量を設定し、その後の栄養評価を反復して行って、エネルギー摂取量を調節していく方法が実際的であると考えている。』

3.顔の反応(目、口、舌、頭、笑い、息み)

最も印象的なことはこの3番目です。施術を始めた頃に印象的だった反応は、「ニコッ―と笑う」、「う~~と息む」の2つであり、全体的には低反応な感じでした。

日報を見返すと2017年12月頃からになるのですが、顔の表情、顔の動きや反応に変化が表れてきました。長く施術をしていることから、思い入れや期待が強すぎる部分はあるかもしれません。

:以前は虚ろな目の印象が多かったのですが、動きがスローなのはほとんど変わらないものの、動く頻度が多くなり、勢いというか生気というか、何かを感じているような雰囲気が出てきているように思います。また、瞬きする回数も増えたと思います。

:いくつかのパターンがあります。「口を縦に開ける」、「口を最大限に開ける」、「少し緊張したように口をやや突き出すようにすぼめる」、「何かを噛むかのように、下顎を小さく上下に動かす」。これらの反応の発生頻度は徐々に変化してきています。

:こちらもいくつかのパターンがあります。「舌を口の中で動かす」、「舌を少し出す」、「舌をべローンと大きく突き出す」、「舌を上歯の裏に当てるようにして、チュッ、チュッと音を出す」。

:以前は十分な観察ができていなかったので、何とも言えないのですが、少なくとも最近は目の動きと連動するように、動かす頻度が多くなっているような気がします。

笑い:笑うことは以前から見られましたが、少し変化があります。まずは、「嬉しそうな表情」という中間的なものも見られることです。また、笑う頻度が多くなったようと思います。笑い声が出るときは、「アー」という感じでしたが、最近は時々「ハハハ」という笑い方をすることが多くなっているように思います。

息み:息みもマッサージを始めた頃から頻繁に見られた反応です。かなり大きな声を出し長い時間息んでいるので最初は驚きました。マッサージが痛いのか、不快なのか、何かネガティブな反応ではないかと心配しましたが、どうもそういう事ではなさそうです。

 今回、あらためて調べてみると興味深い資料がネット上に存在するのを見つけました。なお、こちらは「窪谷産婦人科」さまのホームページからになります。

9ページに、「1ヵ月を過ぎた赤ちゃんのうなり、いきみは肺が圧迫された状態であり、まだ深呼吸ができないため、うなったり、いきんだりする。」との内容が書かれています。

「生後1ヵ月」には該当しませんが、肺が圧迫された状態、深呼吸できない状態という意味では患者さまも同様です。確かに、患者さまの長い息みの後に、肺に空気がスーッと入っていく様子が確認できます。また、この行為が深呼吸の代わりだとすると、この行為には肩の力を抜いたり(リラックス)、あるいはストレス解消の効果もあるのかもしれません。

 

 

次に顔の反応、特に口と舌の頻繁な動きは何なのだろうと考えてみました。そして、この患者さまの障害が乳児の時だったことを考えると、そして、仮に患者さまの時計(脳の発達)がその時から大きく進んでいないとすると、これらの仕草は赤ちゃんが見せるものではないかと思うに至り、ネット検索してみました。

そこで、特に気になったものは次のようなものでした。

◆『赤ちゃんはまだ自分の意志で自由に動かせるところが少ないので、動かせる舌などを動かして「確認している」と本で読みました。』

◆『赤ちゃんは、成長過程で舌を出す仕草をすることがあります。生まれてからしばらくは舌を上手に動かすことができませんが、成長とともに徐々に動かせるようになり、舌を動かすのが楽しくなるので頻繁に出しますよ。』

なお、赤ちゃんの舌出しについては下記のサイトに詳しく出ていました。

こちらの記事の監修はなごみクリニック 院長の武井智昭先生によるものとなっています。

このような赤ちゃんの仕草も、「脳」が大きく関わっていることは明らかなので、「脳」と「赤ちゃんの仕草」の関係が知りたくなり1冊の本を購入しました。

『本書では、全ての大人が必ず通過する赤ちゃん時代の「不思議」について、脳科学・認知科学における最新の研究成果を参照しながら紹介するとともに、目まぐるしく変化する赤ちゃんの養育環境が発達とどう関連するのかについて論考していきます。』 

出版:岩波新書

大変興味深い内容だったのですが、期待していたイメージの本ではありませんでした。しかしながら、赤ちゃんの成長にとって、「目が見えること」、視覚が極めて重要だということを再認識しました(この本に出てくる各種テストのほとんどは、目が見えていることが前提となっていました)。

患者さまは口や舌を動かすことはできます。目(眼球)を動かすこともできます。そして、耳も聞こえています。しかしながら、見ることはできません。眼球自体に問題がないとすれば、脳が関係しているのは明らかです。では、「何が、どこが悪いからなんだろう?」、「医学が革新的に進歩したならばどうなんだろう?」。この疑問を前に進めたいという気持から、2冊の本を借りることにしました。

1.『脳と視覚 -何をどう見るか-』

2.『乳幼児の発達 -運動・知覚・認知-』

 

なお、ブログについては【続く】ということにさせて頂きたいと思います。

柳谷素霊2(「五十からの青春」)

前回の「柳谷素霊1」では、醫道の日本 昭和33年3月号から、柳谷素霊先生の「脈診と臨床」の全文をご紹介させて頂きましたが、今回は「五十からの青春 -ストレスとハリ・灸医学」(初版発行:昭和32年10月30日)という貴重な本がブログの題材です。この本はamazonでは¥48,800だったため断念寸前だったのですが、度々利用させて頂いている古本サイトの「日本の古本屋」で、¥12,960で販売されていたのを見つけ、思いきって購入しました。私が鍼灸専門学校に入学したのは52歳の時なのですが、先生が逝かれたのも満52歳だったという偶然に因縁めいたものを感じ、つい前のめりになってしまいました。
本は全242ページ、柳谷先生の「五十からの青春」は204ページまで、207ページからは医学博士である田多井先生の「ストレス学説」になっています。

 

著者:柳谷素霊、

田多井吉之介

出版:新樹社

 


左:柳谷素霊

右:ハンス セリエ

画像出展:「五十からの青春」

左:ハンス セリエ

右:田多井吉之介


最初に、本の文末にある両先生の「著者紹介」をご紹介します。
柳谷素霊
明治39年北海道に生れ、日本大学宗教科卒業。東洋鍼灸専門学校校長。東京都鍼灸審議委員、東京鍼灸師顧問、日本鍼灸師相談役。昭和30年パリ鍼学会顧問になり、昭和30年12月ドイツのドイツ鍼学会で「ドイツ鍼医師試験」に合格、A.F.AKUPUNKTURの称号をうく。昭和30年フランスとドイツに招かれてハリ・灸医学の講演と実技公開の旅をせり。著書に『鍼灸医学全書(四巻)』、『鍼灸治療医典』(半田屋)、『鍼灸摘要』、『図説鍼灸実技』、『柳谷一本鍼伝書』(医道の日本社)。同書のドイツ語あり。

田多井吉之介

大正3年東京に生れ、東京大学医学部卒業後生理衛生学を専攻。昭和26-7年ハーバード公衆衛生学校に留学す。現在国立公衆衛生院生理衛生学部長。医学博士。公衆衛生修士。主要著書に『ストレス』(創元社)、『汎適応症候群』(協同医書)、『好酸球の動力学』(医学書院)、『ウロペプシンの動態』、『衛星と公衆衛生』(南江堂)等あり。訳書に『適応症候群』、『セリエ新内分泌学』(医歯薬出版)、『ノルアドレナリン』、『ストレスと病気』(協同医書)等がある。

柳谷素霊先生といえば「古典へ還れ!」という言葉が印象的です。私自身がそうであったように、鍼灸師の先生の多くは、柳谷先生を古典原理主義者のように思われてはいるかもしれません。この本を拝読すると、柳谷先生が西洋医学に精通され、同時に、非常に重視していることが分かります。また、貝原益軒先生の“養生訓”が、度々出てくるのも興味深いところです。柳谷先生を理解するうえでは、“養生訓”を知ることも重要であろうと思います。

こちらの学園の「貝原益軒アーカイブ」は、驚くほど充実した内容になっています。

『養生の術は先(ず)心気を養ふべし。心を和にし、気を平らかにし、いかりと慾とをおさへ、うれひ、思ひ、をすくなくし、心をくるしめず、気をそこなはず、是心気を養ふ要道なり。』
これは「養生訓 中村学園大学校訂テキスト」の巻第一 総論上からの抜粋です。

ブログは目次に続き、次の項目についてご紹介していますが全文ではなく一部や要点になります。
・「まことの人生はこれから」の中から、Ⅰの「頭脳の青春は五十から」
・「ハリ・灸の日本の歴史」
・「老人医学」の中から、Ⅷの「腎臓の調整」
・「ハリ・灸愛好者への回答」
以上の4つが柳谷先生のパートです。
・「ストレス学説」の中から、Ⅰの「ストレスの起源」、Ⅴの「東洋医学と西洋医学」、Ⅳの「セリエ博士の横顔」

こちらは、田多井先生のパートです。

目次

まことの人生はこれから 
 Ⅰ頭脳の青春は五十から
 Ⅱ暦の年齢と生理年齢
 Ⅲ五十の知恵を三十の肉体で
 Ⅳ女体のみじみずしさ
 Ⅴ未病を治す
ハリ・灸の日本の歴史
フランスとドイツのハリ医学
中年生理への闘い
 Ⅰ微笑の一日主義
 Ⅱ五十肩と四十腰
 Ⅲ甘美な睡眠
 Ⅳ頭痛とめまい
 Ⅴ足から若がえる
 Ⅵ忘老は栄養のバランスに
 Ⅶセックスの回春
美容医学
 Ⅰしわとしみ
 Ⅱ肥りすぎ
 Ⅲやせすぎ
 Ⅳ益軒先生の美容体操
ハリ・灸で治りやすい難病
 Ⅰ高血圧
 Ⅱ糖尿病
 Ⅲてんかん
 Ⅳ歯槽膿漏
 Ⅴアレルギー
 Ⅵぜんそく
 Ⅶ肩凝りと腰痛
 Ⅷ肝臓病
 Ⅸ神経痛とリューマチ
 Ⅹノイローゼ
老人医学
 Ⅰ百才への夢
 Ⅱ布施博士の長生術
 Ⅲ老化生理防止のハリ・灸
 Ⅳ不眠症
 Ⅴ白米偏食は短命 
 Ⅵ心臓を守る
 Ⅶ白髪への予防
 Ⅷ腎臓の調整
 Ⅸ益軒先生養生訓への反省
 Ⅹ良医を選べ
ハリ・灸愛好者への回答

ストレス学説 
 Ⅰストレスの起源
 Ⅱストレス学説
 Ⅲストレスと精神身体医学
 Ⅳストレスの適応病
 Ⅴ東洋医学と西洋医学
 Ⅳセリエ博士の横顔

「まことの人生はこれから」
頭脳の青春は五十から
貝原益軒先生は、八十三才のときの「養生訓」に、「人生五十に至らざれば、血気いまだ定まらず、知恵いまだひらけず、古今に疎くして、世変になれず、言あやまり多く、行悔(オコナイクイ)多し。人生の理も楽も未だ知らず。」まことの人生は五十からひらけるのだと訓しています。
さきごろ、なくなられた小林一三氏も「四十、五十は鼻たれ小僧。働きざかりは七十から」と大いに気焔をあげていました。~中略~
人間として、いちおうの、知能の円熟と豊富な体験からくる自信のある人生は、ようやく中年の、五十才からだと、ノーベル賞のカレル先生も、二百年前のわが益軒先生も同じようにのべられています。
人間は、五十になってはじめて、頭脳の働きが円満になり、知恵が冴え、世情のわきまえ方をさとり、処世の妙腕がふるえるような、社会の有能な人物になれるのである、というのです。
世の中をみまわすと、会社の重役、学校の校長、役所の局長、その下の部長クラスにしろ、だいたい、社会の責任の重い重要ポストは、ちょうど、五十才前後が占めているようです。
人生の五十は、仕事ざかり、男ざかり、女ざかりでしょうか。すくなくとも、頭脳からみた人生は、五十とは、花ならばまさに満開の、溢れる才知と豊かな経験をささえにした、トップコンディションといってよろしく、最高頂期なのです。
いわば、酸いも甘いもかみしめた、こういう老舗の知恵は、たしかに、五十という年輪のたまものです。いよいよ貴重な五十才。
さて、東西の学者が、生命の科学をいろいろ研究したところでは、「人間の寿命は百才まで生きれる」の説が信じられています。ビュッフォン(1707-1788)やフルラン(1794-1867)の説です。
益軒先生も人生百才説でした。人間は百才まで生きられるのです。
それを、不用心で病気をしたり、怠けて老化を早めては、つい、もっと早く、生命を失ってしまう人が多いのです。
百才の寿命があるというのならば、五十は人生の半ば、やっと青年期から壮年に入ったコース。いや、五十才の青年なのです。
人間の脳の重さも、四十をこしてから、やっと、いちばん重くなるそうです。つまり、頭脳の青春、知能の円熟をものがたっています。

昭和32年の平均寿命は、男性63.24、女性67.60でした。100歳という年齢は非現実的なものでした。

成人を超えても伸び続ける脳力がある。人の感情を読み取る能力のピークは50代であることが判明(米研究)

表にある「結晶性知能」とは、学校で受けた教育や仕事、社会生活の中で得た経験に基づく知能のことだそうです。「感情推測能力」と共に、社会や組織の中で特に重要な能力だと思います。

「ハリ・灸の日本の歴史」
日本へ、ハリ・灸医学が輸入されたのは、欽明天皇のころ、朝鮮の高麗から、呉知聡という人がはじめて日本へきてひろめ、ハリ・灸の穴が書いてある「明堂図」、「儒釈方書」百六十四巻を伝えたことからはじまります。奈良朝前期ごろの、仏教文化が日本へ渡来したおりのことでしょう。
それから奈良七代、京都の平安朝期、鎌倉期、戦国時代と、ようやく一般に親しまれ、漢方医の重要な治療方法としてのハリ・灸医学は、ひろく日本人の生命をあずかってきました。
そのころは、鍼師(施術士)、鍼博士(大先生とか教授の)、鍼生(学生、見習い)の制度でよばれました。
中国から日本へ伝わったのは、「捻鍼(ヒネリバリ)」の技法です。
その後、「打鍼(ウチバリ)」という技法を日本で発明したのは奥田夢分斎で、「鉄道秘訣集」の本も書きました。彼はもと奥州二本松の禅僧でしたが、京都の多賀検校に多賀流の鍼を習い、晩年に京都御所の枯れかかった牡丹の花を、鍼術で生かしたというので、時の花園天皇からお賞めの言葉をいただき、姓を賜って、以降は、奥田を改め、御薗意斎となりました。
この流れをくむものを「打鍼(ウチバリ)流」といい、万病の基は腹の調整にあるといって、主としておなかのツボに打鍼(ウチバリ)して、栄えていました。
その後徳川記に入ると、有名な杉山検校が出て、いわば、中興の祖とあおがれました。杉山和一は、伊勢の津の人、慶長十五年生まれで、父は藤堂家の臣。盲目なので、はじめ山瀬琢一の弟子となりハリを学びました。
管鍼(クダ゙バリ)」という技法は、杉山検校が江の島弁財天に参籠して満願の日、「竹の管と松葉」を授けられて発案したものと、今日でも浪花節や浄るりに語り伝えていますが、実は、その前の元禄ごろの本にも既に「管鍼」の文字が出ているのです。
のち京都にうつって、杉山検校は名医として繁昌しましたが、ついで江戸に出て、時の将軍綱吉の難病を治したのが、いっそう名声を高め、関東総禄として八百石を賜わり、「なんでもほうびをとらせる」のお声に「一つ目だけでもほしい」と、本所一つ目の地(旧国技館のうらで、いまでも杉山検校の社がある)を賜わったと伝えられています。ここに「鍼治講習所」を開いて、全国四十五ヵ所に分校をおき、ここに、盲人だけの鍼学教育をはじめました。
今日の日本のハリ技法は、みなといっていいほどこの杉山検校のひろめた「管鍼(クダバリ)」の方法で、中国から渡った「捻鍼(ヒネリバリ)」や、夢分斎の発明した「打鍼(ウチバリ)」の技法を知り、伝える人は、ほんの数えるほどしかないのです。
杉山検校は、大正十三年五月、今日の盲人教育の基礎をつくった功によって、正五位の贈位をうけたほど、後世の盲人の恩人となりました。しかし、徳川期にも、もちろん盲人以外のハリ・灸の名医はたくさん出て、吉田流の出雲の吉田とか、垣本鍼源、菅沼周桂と後世までも名を残す人もいました。
また、杉山流には三島安一、和田春徹、石坂志米一等の高弟が、つぎつぎと現われて、高度の技術の発達をとげ、ますます杉山真伝流の発展をはかったので、徳川の中世紀は、日本のハリ・灸医学の技術面で、いちばん絢爛たる花の開いた時代といえましょう。
明治の初年、盲人の官職廃止、漢方医制度の廃止となって、ハリ・灸医師も禁じられましたが、明治十八年に、それでは盲人の生活が困るだろうと、簡単な免許規則ができて、はじめて漢方医と離れて開業することになり、その後何回も改正になり、試験制度になって、戦後、今日の「鍼灸師身分法」となったわけです。
そこで明治のはじめに、国立の盲学校に「鍼按科」ができ盲人の教育をはじめましたが、これは昔の杉山流の直系をくむもので、昭和時代までも奥村三策がこれをつぎ、これが現代の「国立教育大学雑司ヶ谷分校」で、やはり杉山流の直系の吉田弘道が「築地盲人技術学校」に拠り、盲人教育をひらいたのが今日の東京都立文京盲学校であり、そのあとを私がひきうけました。
こうして、鍼灸学校は盲人中心に栄えたようにみえますが、もちろん晴眼者の人の学校も、べつに開かれていました。終戦前は十校位でしたが、終戦後は全国に三十校位あります。これらは厚生省の認定になっております。私の学校「東洋鍼灸専門学校」もその一つです。
つまり、盲人と晴眼の普通人とは、べつべつに鍼灸教育をうけてはいますが、いま全国には、西洋医が八万五千に、ハリ・灸師は五万人います。
そこで、ハリ・灸医学の東西交流の歴史をみますと、一八二六年三月十五日の、シーボルトの「江戸参府日記」に、幕府のハリ医石坂宗哲に、日本のハリ・灸技術習う、とかいてあり、のち、シーボルトによって石坂の著「鍼灸知要」のオランダ訳が出ています。(試しにネット検索したところ、「京都大学貴重資料デジタルアーカイブ」さまに原書がありました)
つまり、明治以前のハリ・灸は、徳川中世以後は、ほとんど漢方医が、外科的治療の一つとしてハリ・灸に腕をふるっていたので、杉山検校のように直接に将軍家のお抱えもあれば、諸大名に召しかかえられたものもあり、開業医もありで、徳川中期の最盛期は、ハリの技法も「九十余種」といわれ、あらゆる病気を、多くのハリをつかって、それぞれの特長の技法で治療していたと伝えられます。 

こちらが、【創立60周年】を迎えた、現在の東洋鍼灸専門学校です。

「老人医学」
腎臓の調整
腎臓の病気は地味なので、あまり、気にとめない人も多いのですが、漢方では、先天の元気の発するところとみて、腎臓を非常に重くみていて、この腎臓を調整することによって、大半の慢性病は解決がつくとまでいわれています。
ですから、どんな病気にでも、必らず、腎臓の働きが十分であるようにと、そこのツボを刺戟してゆく治療法をいたします。
たとえば、腎臓機能の不調に気づかずにいると、肝臓に変化のあらわれてくるものがあります。そして肝臓に病変がくると、こんどは、神経系の病気が出てまいります。
昔の人のいう「疳」がたかぶるというのは、この疳は肝を意味して、ヒステリー症も肝臓の病気からおこり、また、てんかんも、著しい肝臓肥大が特徴とされているように、この腎臓と肝臓との間の密接なつながりを無視しては、治病の実績はあがりません。この、肝臓と腎臓が、たいていの慢性病の根源であるという漢方の考え方から、「肝腎かなめ」という言葉が、ちゃんと残っているわけです。
腎臓の役目は、現代医学的にみても、身体のなかの不用な老廃物を体外に排泄する働きをします。(血液のなかの有害なものを水分といっしょに尿として出す)
それが、なにかの故障で、働きが鈍るとなると、たちまち、身体のなかに、有毒物質がたまるので、あちこちへ、悪い影響がひろがることは、こわいわけです。
そこで、なんとしても、腎臓は、いささかの狂いもなく、十二分の能率をあげてもらわないと、完全な健康体をたもってゆくのがむつかしくなるから、そういう腎臓の重大性は、どんな病気を克服してゆくためにも、第一コースになるといえましょう。
腎臓病には、急性と慢性の腎炎、ネフローゼ、妊娠腎、血管性腎疾患、腎臓結核、腎臓結石、尿毒症、などがあります。
腎臓病の見分け方は、むくみが問題です。医者がみると一目で、みわけられますが、案外普通の人では、このごろ肥り気味なのだとよろこんでいたら、実は、腎臓炎だとわかって、あわてて絶対安静を命ぜられて、職場を休むという例も少なくないのです。
このむくみも、心臓のためからくるものと、腎臓のでは、すこし違います。
心臓のときは、早朝時に軽いむくみが、足の方から、はじまってきて、呼吸困難があり、肝臓が腫れます。腎臓病のときは、早朝時に強く、むくみは顔面からあらわれ、呼吸困難がなく、特に眼蓋のむくみが目立ちます。そして尿が少なくなり、肝臓の腫大はありません。
これは初期の症状で、慢性になって、萎縮腎にすすむと、反対に、むくみは少なくなって、尿も多くなり、血圧も上り、尿の中には蛋白が出てしまうので、腎臓の検査は、つねに、尿の検査と並行して、その一進一退をみてゆくようにします。

※腎臓に関する最新情報として、過去ブログの「腎臓が寿命を決めるとは」をご紹介させて頂きます。

「ハリ・灸愛好者への回答」
:肝臓がすぐ悪くなるのが持病で、疲れると、肝臓部や胃のあたりがはってくる、食欲不振で、あわてて近くの開業医にかけつけて、なにか注射をたのみ、胃の薬を貰って静養していた中年の女。ふと、この三月からハリ治療に親しみました。けれども、街には、ハリ医はたくさんあって、素人の眼には、その優劣がわかりにくいのですが。ハリ技術の巧拙の見分け方は?
:いちばんに
一、ハリを刺すとき痛まぬこと。
二、自覚症状や他覚症状に(血沈、検尿、脉搏、発熱などの)、だんだん健康の方向に向かっているような快感があって、そういう病状の軽減がある筈です(治療後に)。
三、だいいち、気分の爽快さがはっきりある。
四、食欲、排便、利尿、睡眠が、健康状態に近づいてゆく筈です。

 

:ハリ治療をうけたあと、必ず、フラフラと目まいがするという人もありますが。
:それははっきり、症状を訴えないといけません。だまっていては、ハリの先生もわかりません。普通こういうのは、ハリの刺戟量の過多か、病気へのツボのとりまちがえですから。

 

:ハリと灸では、その科学的作用にちがいがあるものでしょうか。
:あります。ハリと灸の効果の差を比較してみましょう。
ハリの効果は、
一、機械的刺戟の応用にある。
二、「瀉(マイナス)」の働きが、灸よりも強大です(だから病気の種類症状により、灸よりもハリの効果がよいことがある)
三、ツボは、正統的には、「補」と「瀉」を区別してつかうのは、ハリも灸も同じです。それで手技にも「補」の手法、「瀉」の手法があります。
四、科学的効果の理論は、
神経理論
皮膚の神経を刺戟して、脳脊髄神経と自律神経に影響を与え、身体の構成組織機関を調整するのです。
液性理論
血液、抗体、ホルモンを増加せしめます。その他酵素(グルタミン酸、アスパラギン酸)をつくり、PH(水素イオン濃度を調整する)または血沈、尿中のウロトロビンに影響を与えます。
灸の効果は、
一、温熱と光の刺戟の応用にある。
二、灸は、補(プラス)の働きがハリよりも強いのです。
三、ツボにも、瀉穴と補穴の区別があります。
灸の補瀉の別を簡単にいえば、「補」とは、モグサを小さく、やわらかくひねり、数を少くして、もえた灰の上からつづけてすえる方法です。「瀉」とは、大きなモグサを、固くひねり、いちいち、もえた灰をとってすえます。たとえば、弘法さまのウミを出す灸は、あれな「大瀉」の方法で、「虚証の病人」には、よろしくないとされています。
四、灸の科学的理論は、
神経理論
温熱または光の刺戟が、身体の神経系統に好影響を与えます。
液性理論
皮膚を火傷することによってできた、火傷毒素(変性蛋白体、異種蛋白体)の刺戟作用により、直接に組織機関を刺戟し、調整作用をおこします。また、硬化血管を軟化し、血液抗体を増加させます。

 

:どういうものか、インテリ階級には、ハリ・灸治療は、あまり歓迎されていないようですが。
:そうとは限りませんが。徳川時代のように、そしていまのフランスやドイツのように、医者がみなハリ・灸治療をやっているのなら、社会大衆からも自然に尊敬と信頼があったわけですが。やはり、ハリ・灸医学は、明治以後、忘れられたうらみはあるので、いわゆる、「くわずぎらい」も多いのです。

 

:たいていの人は、野蛮な医療法のように誤解してしまいがちですが。
:そういう誤解は、一度、体験なされば、消えてしまいましょう。今日のフランスやドイツで、これだけ盛んにもてはやされているのは、べつに迷信やオマジナイではないので、ちゃんと、科学的理論があればこそなのですから。しかし反省してみると、一部の業者にも責はあります。いまは、高等学校を卒業してからでないと入学できないハリ・灸医学校ですが、昔は、安易に免状が手に入ったのでしょう、知識の浅い教養の低い業者が、社会からきらわれるのは当然で、女も男も、せめて大学くらいは卒業してから、ハリ・灸医学の勉強をして、社会へ出るようにすると、ずいぶん、今後のハリ・灸界は変わってもゆくだろうと夢見ているわけですが。

 

:西洋医学で治らない病人を、ハリ・灸医学で治してゆくことは結構ですが、私のように半年間、一週一回いわば、病気の予防の目的みたいに、ハリ・灸にお世話になってきましたが、たしかに素晴らしい健康法だと、このごろ信じられます。身体のなかの、あちこちのしこりがとれ、とても身体がやわらかくなります。
:そういうファンは大歓迎です。いろんな医者にみはなされた、むつかしい病人を治すだけが使命でもないのです。もっとひろくインテリ階級層にも、「人間ドック」とは、「ハリ・灸健康法」にあることがわかって頂けると、よいのですが。

 

:その「人間ドック」的意味が、やっと半年のおなじみで、理解されました。脉診をうけたあとで、私はその一週間の身体の症状をこまかく訴えます。せっかく便通をよくつけて頂いたのに、ちょっと忙しすぎて過労から、また胃のあたりがふくれてきたことなど。すると、そこを中心に治療してくださる。次には、足が少し変ですが、というと、ちょっと血の道が出ていますね、とまた別なツボ中心にしていただく。そういう、病気になる前の病原らしいものを、一歩早く、つかまえて消して頂いているようなので、おかげで、快食、快眠、快便を、一服の薬も一本の注射もなしに、感謝しています。
:そう、理想的なファンがいられるとはおどろきました。積極的の健康増進に「人間ドック」へのハリ・灸は新しい方向ですね。

「ストレス学説」
ストレスの起源
セリエ博士によれば、ストレスの概念は、すでに遠くギリシャ医学にみられるといいます。
ヒポクラテスや、そのほかの当時の医師たちは、パソス(pathos)およびポノス(ponos)という言葉をつかいましたが、パソスは、現在の医者がつかっている病理学(patnology)という語の起源になりました。
これにたいして、ポノスという言葉は、労苦、あるいは仕事といった意味をもっていました。
即ち、ヒポクラテスは、正常の方向にむかって自分の身体を保っていこうとする、体内の努力の存在を認めて、これをポノスと呼んだのです。
いいかえると、医学の父祖といわれるヒポクラテスは、すでに、2400年前に、身体の内に具わった自然の治癒力を認め、これにポノスという名を与えていたのです。セリエ博士は、これが、ストレスという言葉の起源になると考えています。
しかし、ヒポクラテス時代のポノスの言葉は、決して科学的ではなかったのです。科学であるためには、それが分析にたえ、また、測定が可能である必要がありますが、昔はこれが不可能でした。
こんなわけで、ストレスの研究を科学にまで高めたセリエ博士に、偉大な功績があるのです。

東洋医学と西洋医学
西洋医学の上でも、安静療法、ショック療法、発熱療法、異種あるいは同種の蛋白質療法、さらに転地療法といった、各種の非特異的療法が行われてきました。もっとも、これらの療法の適応は、主に、慢性退行性疾患(老人病)とか、一般的な虚弱体質にあったことはもちろんです。
いっぽう、東洋では、古くから、ハリ・灸療法という、非特異的な治療法が医術の座を占め、今日でもなお、大衆の支持を得ているばかりか、西欧への進出もしています。そしてハリ・灸を求めにくる患者の多くが、いわゆる慢性疾患であることも、決して見逃せない事実です。
現在のハリ・灸療法は、かなり科学的になっています。信頼できる施設ではカルテも正確にとっており、他の手段では、なかなか、はかばかしく治らなかった症状が、ハリ・灸療法によって明らかに良くなった例も、かなり多く見出だされます。
このように、非特異的療法は、洋の東西を問わず、古くからの経験と伝統をうけついで、いまだに大衆から支持されていることは、この療法に、なんらかの価値がある証左にほかならないと考えられるのです。

セリエ博士の横顔
さきごろ来朝され、日本の各地の講演やなにかと、大きな感銘を与えて、あわただしく帰国された、カナダのモントリオール大学のセリエ博士のストレス学説を、いま、日本ではストレスブームなどといって騒いでいますが、実は、これは二十年も前からいわれて来た学説なのです。
しかたがって、珍奇な説でもアプレ型でもなく、少なくとも実験医学的には、もう成人に達していることを忘れてはなりません。
モントリオール大学は、1945年、大戦直後にできた新しい大学で、すべてフランス語で抗議されている、カナダ唯一の綜合大学で、セリエ博士は、実験医学研究所長です。
セリエ博士は、1907年ウィーンの外科医を父として生まれ、幼児から神童であったようです。三代もつづいた医家です。父親は、ハンガリー生れで、Selyeというのは、もとは、ハンガリーの小村の呼び名だといいます。
私の「タタイ」という名も、ハンガリーの村にあるそうで、私がはじめて、モントリオールにお訪ねしたときは、はじめ、ハンガリーからきたかと疑われたそうで、大笑いいたしました。

帰国直前の宴会に、一言と求められたとき、
貴国において、生活の内に潜む古心の美を見る。どうかそれを失わずに育ててほしい。西洋には愛の哲学があえるが、東洋にはこれにまさる、感謝の哲学がある。二者を併せて人間は成長すべきである。」そういって、日本のいけばなは生活の美化、茶は心の転換法と、つかむところはちゃんとつかんでしまった。それもたった十日間に。

日本流サッカー

昨夜は同点を狙った積極的な戦いをして欲しかったという思いから、喜び半分という気分でした。しかし、一夜明け16強のトーナメント表に日本があるのを見ると、予選突破の喜びがジワジワと迫ってきます。

そして、あの采配も物凄い決断だと気がつきます。同点を狙う積極策は点が取れれば英雄です。たとえ点が取れなかったとしても、その批判は限定的だと思います。一方、今回の策はセネガルが残り時間で同点弾を決めていれば、恐ろしいまでの批判に晒させることになったはずです。現実問題、成功しましたが厳しい批判も出ています。それでもこの作戦を選択したのは約10分間という残された時間において、日本が得点する確率と失点のリスク、そしてセネガルがコロンビアから得点する可能性を、純粋に分析、比較検討し最も予選突破の確率が高いもの、しかしながら、うまくいって当り前、できることなら選択したくないものを批判覚悟の上、勇気と信念をもって選択したという決断でした。そして、予選突破の目標はクリアされ、不調だった川島選手が復活し、多くの選手がピッチに立ち、主力選手の温存もでき、選手とスタッフが1枚岩になったという成果は、次のチャレンジにとって良い準備につながったことは間違いありません。

いよいよ次はベルギーとの大一番。ポーランド戦のモヤモヤを引きずらず、エネルギーに変えることができれば、日本の底力が爆発しW杯8強という快挙も夢物語ではないと思います。(今回のブログは「西野ジャパン」の続編です)

『スタジアムは町の風光明媚の地、ロシア最大級の川であるドン川沿いに位置する。スタジアムの北スタンドは一部オープン式で、そこから観客は川と町の美しい景色を鑑賞できる。』

画像出展:「ロフスト・アリーナ

今回のワールドカップの成果は、停滞気味の日本サッカーが直面していた危機感と、前回のブラジル大会の悔しさが強烈な原動力になっていると思います。そして、予選3試合を観て感じるのは日本サッカーが新たな段階に足を踏み入れようとしているという感触です。その感触とは日本流サッカー、日本型サッカーの胎動です。

私はそのサッカーの特長を「サッカー・インテリジェンス」と呼びたいと思います。その中核にくるのは日本人のDNAと思える【勤勉さ】、【和を尊ぶ心】、【素直な心】の3つです。その周辺にはメンタリティとして[リスペクトと勇気]、[闘志と冷静さ]、[分析力と修正力]、[責任感と助け合い]、そして[勝利のための自己主張]の5つを配置したいと思います。そして、最後の実行力として[圧倒的走力と俊敏性]、[強靭な体幹]、[正確に止める技術」、[正確に蹴る技術]を置きたいと思います。

 

自己主張はチームにとって難しい部分ではありますが、建設的な自己主張は絶対に必要です。自己主張が乏しいチームは強くなるチャンスを放棄しているようなものだと思います。

大西イズム

「縦の明治」、「横の早稲田」はラグビーの戦法を端的に語る言葉です。この早稲田の戦法は大西鐵之祐先生が編み出されました。当時、大学生だった私は大西先生の「コーチング論」の授業の中で、指導者が絶対に持っていなければならないものとして、「どのように勝利するかを選手に明確に伝え、選手がその方法を100%信じ、100%の能力を試合の中で発揮することだ。」と教わりました。今の時代で考えれば、その勝利する方法は一方通行ではなく、指導者と選手によってより良いものに築き上げるというものなのかも知れません。

そして、この指導者像に加え、大西イズムともいうべきスポーツと平和の関係性を考えることは、日本サッカーにとっても貴重な提言ではないかと思います。

出版:二玄社

この本の「あとがき」は次のような内容です。

『大学体育に関与してから三十七年、大学スポーツに関係して五十二年。私はその人生の大部分を早稲田の杜で生かされてきた。そしてスポーツとラグビーの研究に専念させてもらったのである。有難いことであった。ラグビーについては十数冊の著書によって自分の研究を発表して、いささかわが国のラグビー界に寄与したと考えているが、スポーツについては未だ著書を出していない。ここ数年来今回絶大な協力を頂いた伴一憲、大竹正次、栄隆男の三先生から、何回となく研究をまとめて出すよう要請されたが、不勉強で実現出来なかった。昨年心臓の大病で入院、九死に一生を得て現在自宅療養中である。三先生から今度大学を去る機会に発表しないともう機会がないと言われ、それではと決心した時は療養中で書くことが出来ない。仕方なく話を録音して原稿におこす方法となったため、こうした変わった編集の本となってしまったのである。

さてこの本はいままで個々に研究されて来たスポーツに対する研究が、将来どうしたらスポーツを通じての教育によって平和な社会の建設に貢献し得るかということを中心として書かれている。

今年は敗戦から四十一年、戦死した戦友の霊に感謝の念を捧げると共に、戦争に参加したものとして、現在の平和が永久に続くよう懸命の努力を払わなければならないと決意している。それではスポーツ指導者としてこの平和の維持に貢献するためにはどうした方策があるだろうか。

歴史上最も永い平和の期間を持っているのは封建社会である。何故だろう。それは文武の教育が徹底していたからだと思われる。宗教による平和の教育と武術を通じての闘争の倫理の教育がうまく調和して平和の維持が出来たのではないか。従って武の教育は闘争の倫理を体得させるのが目的であって、その流れをくむスポーツを通じての教育も、ゲームによる闘争の倫理を教えるのが目的であって、体力や健康の養成はその付随物に過ぎない。スポーツにおけるゲームを通じての、勝敗における闘争の倫理の教育こそ、今後の青少年の教育に最も必要なものであり、そうした闘争の倫理を体得した青少年が団結して社会の基礎集団としてのスポーツ集団を結成して社会的勢力をつくり、もし戦力を準備し或いは戦争に導かんとする政治家その他に対して断乎として闘いこれ等を落して行く覚悟をつくらなければならない。こうしたスポーツを通じての国際交流と闘争の倫理の教育を行うことこそ、平和を維持するスポーツ指導者の方策ではないか。こうした趣旨によって本書はまとめられている。 ~以下省略  1986年9月』

ブログでは「勝つチームを作るために」の中からご紹介させて頂きます。

勝つチームを作るために

理論指導における指導理念について

『ティーチング(理論指導)とコーチング(技術指導)の併用が重要なことを強調してきたが、理論指導の場合もその大部分は戦法、技術、練習等についての指導計画の解説に向けられて、肝腎の指導理念については簡単に終わってしまうことが多い。しかし教えられるメンバーが指導理念に全面的に共鳴し、信頼したものでない限り、戦法や技術論は枝葉末節になってしまう。そこで理論指導を利用して行った指導理念について説明しておこう。』

大西先生はチームワークについて次のようにお話されています

『相当練習したのに試合に勝てない現実にぶつかる。勝負を行うプレイヤーは皆個性を持った人間であるということである。これらのプレイヤーの人間関係が一つに統合されていないと絶対に勝てないということを悟る。チームワークとはチーム全員が或る目標に向って必ずやりとげるという共通の精神をもつことであり、唯観念的に持つというだけでなく、その意味を認識し理解し、しかも心から共鳴して信奉し、自分から積極的に協同行動を行うまでに昂揚されたものを持つ時チームワークは完成する。又チームは各プレイヤーに共通の精神を持って協働行動をとることを自然のうちに強要する。人間の精神というものは、各人がこうした共通の精神と目標を持った協働行動に自ら参加し活動するときに成長するものなのである。』

 

理論の注入と知性的行動

『最近のスポーツは国際的に、目的を達成するためにはどんな方法と手段を選ぶべきかという研究が始まってきた。ラグビーにおける各種プレイはトライをとるための技術であり、チーム戦術もまたトライをとるための技術である。そしてこれらの技術はその根底に裏づけとなる理論をもっている。理論的に研究された技術がこの理論指導で教えられ、練習によって実験され、反省し吟味し再組織されて、熟練的技術として戦法的に練習され、反省、吟味、再組織をくりかえしながら進歩して行く。こうしたスポーツへの理論の注入こそ、現代スポーツの特徴であり、現代ラグビーもこうした過程をたどって、勝利を目的として真剣に練習されているのである。

こうした戦法、技術、練習への科学的理論の注入は、とかく若いプレイヤーの陥りやすい衝動的なプレイを知性的プレイへと導く第一歩であり、スポーツこそ知性的行動だということを認識させ青少年達を向上と進歩へと導いて行く。人間が衝動的行動から知性的行動へ進んで行く最も確実な方法は、ある目的を設定しその目的を達成するために、各種の情報を収集して理論を構成し、それを実験して反省し吟味し再組織した理論を繰りかえして実験してゆく過程である。ここにラグビーを行う教育的な価値の一つを見出すのである。ラグビーをやる楽しさの一つは、ただラグビーが面白いからだけでなく、自分が考えた理論的技術が練習によって熟練的技術に向上し、それがゲームにおいて有効に実証されるという研究努力の累積による完成の楽しみなのである。』

大西先生が語っていた「不良少年たちであっても、スポーツに真剣に取り組み、勝利の喜びを知り、さらに周りからの評価を受けることで、本来の少年の姿を取り戻すものだ。」という内容は、強く印象に残った先生のお話の一つでした。

 

画像出展:「GATAGフリー素材集

追記

夢は一歩届きませんでした。残念な思いを引きずっていた時に嬉しいGood Newsが明るい気持ちにさせてくれました。

タイで行方不明になっていた、サッカー少年12人とコーチ1人の生存が9日ぶりに確認されたとのことです。

画像出展:「AFPBB News

柳谷素霊1(「脈診と臨床」)

『柳谷は常に、古典に還れ、そして原典を批判し、そこから再出発すべきである、古典は古人の遺言である、この遺言を実際に再現しなければならない、と説いた。しかしこちこちの古典狂ではなかった。鍼灸を科学化することに決して否定したのではなかった。むしろ正しい意味での科学化を主張したのであった。その態度は次のようなものであった。すなわち「鍼灸師は技術者であって科学者ではない。鍼灸術を科学化するためには、科学者の力を借りなければならない。科学者の力を借りるためには、鍼灸術の本質を明らかにせねばならない」と。しかし長い年月の歴史の批判を通って生き抜いてきた古典的鍼灸術を中心にして行くのが当面の正道であり、そしてなお、家伝であろうが秘伝であろうが、たとえ巷のじいさんばあさんの灸点であろうが、効くという事実があればそれも取り入れる必要があり、さらに、「鍼灸学的行き方同時に現代科学的行き方も包含する風にやって行くのがよい」といった立場をとったのであった。』
これは、1985年に出版された「昭和鍼灸の歳月―経絡治療への道―」の中の一文です。

画像出展:「岡部素道先生追悼」


私は日本伝統医学研修センターの相澤良先生から学びました。その相澤先生は岡部素道先生の最後の内弟子として修業をされ、素道先生のご子息で医師でもあった素明先生からも学ばれました。そして、その岡部素道先生が鍼灸の道に入ったきっかけは柳谷素霊先生との出会いでした。その出会いは次のようなものです。
『東京より避暑に来ていた人物に、東京に結核治療の名人が居ると教えられ、治療を受けに上京した。その名人と教えらえた人物こそ柳谷素霊である。そこで岡部は柳谷の治療を受け、帰り際に、「自分の結核を治すだけではなく、他人の結核を治療するようなことをやってみてはどうか」と勧められる。帰郷後、岡部は不動産を処分して資金を作り、再度上京し、柳谷に弟子入りする。昭和6年12月のことであった。』(「岡部素道の鍼灸治療」より抜粋)
この来歴から、私の施術のルーツは、僭越ながら柳谷素霊先生にあると考えました。そして、柳谷素霊先生のことを勉強したいという思いから、1冊の雑誌と1冊の本を手に入れました。今回のブログは、この「1冊の雑誌」が題材です。
その雑誌とは、「醫道の日本 昭和33年3月号」です。柳谷先生は昭和34年2月(満52歳)で死去されておりますので、その前年、最晩年ということになります。
当初は抜粋や要点の洗い出しを考えていましたが、それでは、正確にお伝えすることができないと考え、全文引用とさせて頂きました。なお、この「脈診と臨床」は昭和32年9月15日(日)東京都千代田区にある日本教育会館で開催された「脉診講習会」の模様を速記録に残したものです。

画像出展:「ウィキペディア


「脈診と臨床」
脈診と臨床という題でございますが、もうここにいらっしゃる方は、大体顔見知りの方もあちこちあるようでございますし、また二、三十年も前から脈診の研究及びその実験ということをやられておる方が相当あるんでして今さらここで脈診というのはどういうものだというようなことを、改めてこまかくいうことはないように思いますが、岡部君、竹山君(中段付近を参照ください)のあとを受けまして、私個人の平素やっております脈診並びに臨床についてお話させていただきます。―脈診と臨床という意味は、脈診から導かれた臨床という意味でございますから、そのつもりでお聞き願いたいと思います。

なぜわれわれが脈診を鍼灸の治療のパイロットにするかと申しますと、これは鍼灸を運用するいわゆる鍼灸の臨床のために脈診が必要であるという点に到達したからでございます。御案内の通り鍼灸を運用するその基盤といいますかイデオロギーは―イデオロギーというと大げさでございますが、立場はさまざまあります。どんなものがあるかと申しますと近代の鍼灸の理論では神経性理論と液性理論、これが教科書にも書いてあり、全国の学校においても教えておるところであります、神経性理論に基くところの鍼灸の臨床、あるいは液性理論に基くところの鍼灸の臨床が、実際臨床の場においてわれわれをして、また病人をして満足せしめているかどうか、こういうようなことを一応反省してみたいんであります。神経生理論、液性理論に導かれたところの鍼灸の運用は、いわば科学的な方法といいましょう。一応の解剖学的知識があり、病巣と皮膚受容器の連関が判っておればたやすいのです。血液、いわゆる液性理論などという点に至っては、刺戟点をどこに求めてもいい訳けになります。どこへやっても液性理論の需要に応ずることができます。たとえば原志免太郎博士の腰部八点穴、及び、足の三里穴、これだけで万病にいいんだと、こういうようなことで済むんであります。神経性理論という建前からいきますと、解剖学的な神経の起始、経過、分布領域、脳脊髄神経と交感神経との解剖学的関係における分布状態、そういうことを知ってさえおれば一応の治療はできます。けれどもそれによってわれわれが臨床の場において、その理論通り行って所期の治療成績をあげる結果となっておるかどうかということになると、皆さんもすでに御体験済みのごとく多分に問題があります、というのはその理論通りいかない。いわゆる2+2+3=7というようなトータルが出てこない。こともあるということであります。しからば鍼灸の運用に最も進んだといわれるところのこれらの神経理論並に液性理論の如き近代理論に基く以外に、鍼灸を臨床的に運用するところの方法がないかというと決してそうではないんであります。結論的にいって失礼なのですがいうなれば、鍼灸の運用というものはいわゆるわれわれの古聖人が残したところの原理原則にのっとった案内によってのみ行われるものであるというふうに私は考えざるを得ないんであります。

過去三十年、いや生まれたときからですから五十年、そういう環境とそういう思念とをいだいて参りましたが、その間非常な攻撃といいますか反撃といいますか、ひどい罵詈雑言という言葉があてはまる声や筆を聞いたり見たりして参りました。
しかし私は頑迷固陋[ガンメイコロウ:考え方に柔軟さがなく、適切な判断ができないこと]といわれるかも知れませんがただいま申し上げた通り、鍼灸の臨床を導くものは、古聖人が残したところの診察と治療の方法以外にないと、こう考えておるんであります。たとえばただいまちょっとお話があったようでありますが、痛いところ、あるいはかゆいところ、いわゆる病的違和感覚のあった場合その場所に鍼をする、あるいは灸をすえる。こういう、やりかたは、考へんでもよく、苦労もいらず、勉強も不必要で一番やりいい、治療方法なのです。痛ければそこへ鍼を刺せばいい。ただしその鍼の刺しようが、どういうふうに刺すかということはこれはもう一つ問題でございますが、鍼を刺せばいいことは一番簡単であるということになる。或いはそこに灸を据えればよいまことに簡単です。こういうやりかたは古人はちゃんとやっています。これはもっとも鍼を臨床に使ったころの初歩的な、あるいは古い時代のやり方なんです。皆さんも御案内の通り鍼灸はその九鍼の形の示すごとく発生起源を異にしているとわたくしは考へます。九鍼も初めから考案されたものではありません。毎度同じことを申上げて申訳ありませんが自然発生的成立過程をとっているとわたくしは考へるのです。どういうことであるかといいますと意識以前の行為が意識の対象になり当時の思想とむすびついて九という数になったものと考へるのです。いわばわれわれ人間の意識以前の行動が源泉なんです。これは脈診とも関係があります。わたくしのいう意識以前という言葉の概念内容をちょっと申し上げて御諒解に資します、意識以前ということはわれわれ生命に直接するところの行動ということです。いわゆる生命は不断の流動をつづけています、心臓の如く瞬時も休みません。このような時、空にまたがる生命的な現れの行動、実践ということです。われわれが頭が痛いというときには頭に手がいきます。お腹が痛いときにはお腹に手がいきます。あるいはころぶとすぐそこをなでます。これは教へられたり、考へたりしてではありません。意識しなくてもやります。目がさめているときばかりでなく、眠っておるときでも同じような行動をします。ねむっているときノミが刺すといたします。あるいはアリが刺すといたしますとそこに手がいきます。眠っている御本人は知りません。これは意識以前と申せましょう。今日の学問ではこれを反射といっております。この意識以前の行動即ち、反射的行動が初めて鍼を考え出し、灸を考え出しその実践を反省して、つまり意識して、知識としました。これは同様に按摩もその時代にできたというふうに私は理解すべきであろうと考えております。われわれが脈診というものに対しての考え方も、同じものと考へております。われわれの生命体が、今申し上げた意識以前的な行動として表象された場合、そういう現象に対してわれわれはいかにこれを読みとるであろうかというものの一つにこの脈診があるというふうに私は考えられるのであります。われわれの生野的状態におけるところの生命体の表象というものは、いわゆる表わす現象というものはさまざまといいますか、一石万波を呼ぶていの現象を示しております。

臨床人は昔から患者の、病人の全部を把握しなければならないということを申しておりました。もしも患者の頭のてっぺんから足の指先の爪に至るまでの現象を読み落とすようなことがあったのでは、これは臨床人の資格はないということさえ申しております。そこでわれわれは患者の、いわゆる病人の表わすところの千差万態な現象を、いかにしてこれを把握するかと、いいますと、東洋のやりかたでは望聞問切の形において把握すべしと教わっております。もう一つ、生命体がその内部機構の状態が表に現われる、だれの目にも現象として現われる前に、つまり、われわれの意識以前に、さまざまな調整機構の働きが行われておる過程があり、それが、生理的現象と異った現象として生体に実践されているということもわれわれは教わっております。今日の学問では、たとえば痙攣、麻痺というものを一緒にするとちょっとわかりにくくなりますから、痙攣を例にとりますが、痙攣という現象に対して、古い鍼灸の教科書では運動神経あるいは筋肉自体の異常興奮によるところの収縮痙攣あるいは強直痙攣、こういうようなものであるというふうに規制されておりました。ことに鍼灸の教科書などには、これは私の書いたものも世間様同様に書いておきましたとうりであります。従ってそういう異常興奮の状態にあるところのものに対しては抑制刺激を与える。いわゆる強刺激を与える。これが一般教科書に書いてあるところの痙攣に対する治療の指示であります。そして今の科学から見た場合には、これは前時代の理論であります。なぜかと申しますと、今の科学では痙攣という現象は筋肉のトーヌスが押さえられていて、押えるところのインパルスがはずされたために起るところの現象であるというふうに考えられてきております。筋肉の収縮を押えておるところの遠心的のインパルスがある。これは錐体外路系のものですが、そのインパルスが減退するために筋肉の収縮は抑へられるものがないために興奮して収縮状態をつよめるということなのです。こうなれば、鍼灸を行う場合に、前者の古い学説でありますならば先ほど申し上げましたように強刺激を与えるなぞということはとんでもないことであって、むしろ弱刺激を与えなければならないという結論になります。私がパリのアンバリードの廃兵病院においての経験談があります、―これはすでに発表しましたのでお聞きになった方もあると思いますが、それは切断されたその脚や足趾、その手や手指が痛むという訴へを病院のドクターにするのです。これはこの間ある雑誌の記者が来たときいいましたら、どうもとっくり納得してくれないのです。というのは切断されて無いものが痛いということはどうも考えられないらしいのです。二、三べん同じことをいってもわからぬ人があるんです。というのは、ない手が、ない指が、ない足が痛むはずがないというのです、これが常識なんですネ。現実には切断されて無いのです。ないところの足の趾先きが、あるいは手が手の指が痛むことを訴える。わかりやすくいいますと、たとえば上膞の中途から切断した。これに義肢をはめる大腿の中央部から切断された。これに義足をつけますネ。早い話がその義足の親指の一番目とか、四番目とかが痛くて夜も寝られぬということを病人は医者に訴えるのです。ちょっと考えられないことでしょう。義足、義肢が痛むなんてばかなことがあるか、考へてもみたまえ、神経も何も通っていないものが痛むなんてことは、ありようないではないか、とまアこれが常識なんですネ。ところが現実にその病人は痛くて眠られない、何んとか治してくれと訴へるのです。そういう病人を実は見させられ治療しろと言われたのであります。そのときによくその切断されたところの腿を、足の切断面を見たんでありますが、見ますとその腿の切断面が、これは人間の方ですよ、義足の方じゃない、義足が痙攣したら大へんなことになる。見せものになる。(笑声)切断されたその切断面がふるえている、患者は非常に足の趾が痛いということを訴えているのです。切断面ばかりではありません、股もごくかすかに痙攣している。いわゆる顫の状態を呈しているのです。うっかりすれば、見落とすほど、ほんのかすかに、うごいている。そうしてその患者の訴へはむろんそこが痛いことはいうまでもないが、痛いところはそればかりじゃない。それから腰部、腹部までも痛いと訴へるのです。『痛い痛い、これを何とかしてくれ、国家の為にこうなったわしを国家の要員である医者たる吾等はどうにも出来ないのか』と、こういうわけなんです。この廃兵さんは相当の位の軍人さんであったと見え、まアいばっているのです、この病廃兵さんの治療を私にしろというのです、そこで、普通ならばふるえている、切った切断面、が痛いといっているんだから、そこへ鍼を刺せばよかりそうなものですネ、または手っとりばやくいえば、腎兪、志室、大腸兪、八髎、膀胱兪、環跳穴、あたりへ鍼を刺せばいいわけですネ、そこへ神経がいっているんだからね、ところがその穴の辺を見ましたがとても痛くて、さわるどころでないほど痛いというのです。皮膚にさわっても痛い震動のほどにうごいている。そこでこれは東洋の正統的なやりかたいわゆる脈を見てですね。証をたてて、順序をふんだ方法で、穴を選んでやらねばならんと考えたのです。くっついておる方の足つまり、健脚ですね。左側の足が切断されて無いのだったら右の方の丘墟、外丘の辺をさわってみました、ところが、ここが大変過敏になっているのです、そこで、ここにごく浅く鍼を刺してとどめておいたのです。大体そこへこう刺しまして、鍼を刺したのは浅いんですよ。二、三ミリくらいのものですかね。そうしてじいっと病人が痛いと訴へるふらふらとふるえるやつを脈をとりながらながめていました。ところがだんだんだんだん見た目にもふるえが少なくなり、とどまってきたように考えられる。脈も調って来たように考へられるのです。

それから先ほど腰部にまでさわると痛いといったところに、おそるおそる手でさわってみるとあまり痛いといわない。そのうちに痙攣がほとんど止み、ふるいが動かなくなるほどになったように感じた。で、痛みが軽減してきたでしょうと問いましたら、『痛みがほとんどやんだ。』というのです。こういうことがあったんであります。これは脈診によるところの繆刺の運用であります。私が考えたんじゃないんで、実は古先人の残してくれた治療の方法であります。このようなことは皆さんが病人を扱う場合にも間間あると思うんです。一本の鍼を刺して、その刺激が現代の生理学の教へるところでは閾上刺激でなければ効果はないことになっている。ところがその刺激がわれわれ生体を作っている、細胞、組織によって、たとえば筋肉組織、臓器、臓器も腸、胃、胆嚢膀胱、子宮、そういう臓器臓器によって闥閾刺激、いわゆる閾上刺激と閾下刺激との差があるということが知られているのです。換言すると被刺戟物の興奮性が違うということです。生理的状態においてもこれが真理であります。病体になった場合にはそれ以上の偏差がある筈です。してみればですネ、われわれが鍼灸による刺激を与えることによって病人にいかなる現象が起こってくるか、これは今日の言葉で申しますと生態反応でしょうネ、いかなる生態反応、患者が意識するとせざるにかかわらず、生体に表れてくるかということを、一つも見逃さないように把握すべきであると思うんであります。皆さんもこういうことはしばしば体験なさっていると思いますが、たとえば慢性胃カタルで胃がしょっちゅうつまったように重い。いわゆる胃部膨満胃部圧重の感がある。肩がこる。そうしてその重いような胃がゲップが出ると気持がよくなる。これは按摩さんにもんでもらう。もんでもらうとゲップが出る。しきりにエエイ、エエイとやる人がある。そうすると胃のところが軽くなる。気持ちがよい、気分がよくなる。肩のこっているのもからだもくつろいでくる。こういう経験は按摩をやる人にもやられる人にもよくあると思うんです。鍼でもそういうことはあるのです。鍼を打つ、ゲップが出る。これはゲップということでわかるからいいんです。ところがわからぬ生体反応もあるのです。そのゲップをするというのはどういうことかというと、胃が運動するということなのです。胃が肩をもむことによって肩に刺激を与えられたことによって、胃の蠕動作用が旺盛になったということなのです。今鍼をすると、その鍼をすることによってゲップがでるということはです、鍼によって胃の蠕動作用が盛んになったということなのです。ところがこれも長いこと按摩をやり、実際の患者に相対している方は御案内と思うのでありますが、人によっては棘上筋をもむことによってゲップが出る人がある。夾板筋[板状筋]をもむことによってゲップが出る人がある。闊背筋[広背筋]をもむことによってゲップが出る人がある。肩甲挙動筋をもむことによってゲップが出る人がある。もう少し違った例を出すと、頭のてっぺんをもむとゲップが出る人がある。足の関節部の外側を揉んでもゲップが出る人がある。胸の外側をもむとゲップが出る人がある。手をもむとゲップが出る人がある。この現象は何を示すか。われわれの対象、いわゆる四肢躯幹の表面にある表在受容器並びに筋肉の中、軟部組織中のいわゆる深部受容器といわれる、受信装置であるところのレセプターが受けたインパルスを、内部機構の調整機構によって取捨され、その結果伝達されて胃に到達せしめる。そうして胃の状況を変化させるというふうに結果的には考えるより考えようがないんであります。しかも頭のてっぺんと胃と、胸と胃というような回路をもっている。皮膚のてっぺん、頭のてっぺんと胃というもの、並びにそこの神経の中枢というものをおいた回路をもっているということになるのです。今日の学問においてはこのことが既に知られているんであります。その内容がどうなっているかは不明といたしましてもそうして人人によって違うということは、実のところわれわれはやってみなければわからない。
例へば天髎に鍼をして胃の蠕動、いわゆるゲップの出る人がある。解谿に鍼をしてゲップが出る人がある。丘墟に鍼をしてゲップが出る人がある。胃兪に鍼をしてゲップが出る人がある。中府に鍼をしてゲップが出る人がある。あるいは肩甲間部に鍼をしてゲップが出る人があるというように、人々によってまちまちであります。私は胆経の丘墟をいじると、ゲップが出る。或る漢方の有名な先生は肺経の中府をいじるとゲップが出る。まだまだ沢山例がありますがね。そういうふうに人々によって違うのです。これはレセプターと中枢と胃との回路が各々あるということです。それで慢性胃カタルにおいて胃が重い。胃カタルというのは蠕動が悪いから消化が悪くなるわけでしょう。それを消化をつければいいわけです。蠕動をつければいい。そうすると鍼をする場合そういう胃に対してどこにやればいいのか、胃の兪だから胃兪にやろうか、胃にあたるから中脘にやろうか、胃と関係のある神経の伝導からいくと脊髄の両側コースをねらえばいいだろうか。ヘッド氏帯の六なり八、九あたりをねらえばいいだろうか。ヘッド氏帯理論からいえば深く刺す必要はないでしょう。深部知覚を利用しようとすれば、大かた小野寺氏臀点あたりを使えばいいでしょう。それでいかないことがある。うまくゲップが出てこない人がある。それなのにとんでもなく離れている丘墟で出る、丘墟で出るからいつも丘墟でゲップが出るかというとどっこいそうはいかぬ場合がある。いかないのが当り前なんですとわたくしは考へています、西洋の医学即ち、医科学は一般性をとります、一般性つまり普遍妥当性を求める訳けです。普遍妥当性のないことは科学でないといえます。それに比すれば東洋の学問の基礎は伸縮する原理にあるようです。伸縮する原理というと変な言ひ方ですが、個々に最適ということであります。
甲は甲、乙は乙、丙は丙として全体的に把握し、全体に扱うということであります。甲と丙との共通点を目標としてわれわれが手当をしようというのではないのであります。これが真の医学であり、証の医学であり、いわゆる隋証療法指示の医学サイエンス・オブ・インデケイションの医学であります。
こういうような点からいきまして脈診というものをかえりみますると、以上申し上げたことからもこういう結論がいえると思います。即ち脈とは生態反応の一部分である。又は病態生理学的一反応であるといいきれるでせう。病気になりますと、病気であるというしるしである症候が出てきます、そのしるしの一つが脈証です。病名を問はず、同じ脈証を示すということは、その脈を示す内部機構になっているのだと見做されるからであります。けれども、それは健康体は比較できるはずです、だから健康な脈を会得しておく必要があります。従って原南陽先生[江戸時代中期-後期の医師。京都にでて山脇東門,賀川玄迪にまなぶ。のち常陸水戸藩医。わが国最初の軍陣医学書「砦艸」をあらわした]が彼の著書に書いてありますように、まず自分の脈をとって三年、それからあとでなければ人の脈をとるべきでないと書いてあります。もう一つ、これは名前は忘れましたが、脈は手にふれたそのとき、思慮を用いる前に触知したことで決定する。あれこれと思いまどうならばそれはそういう脈になっちゃうというております、このことはいま申しましたわれわれの判断以前、意識以前の行動ですね。生物の実践や行動は直観といわれるようにきわめて直観的に、客観的なものをつかむということなんです。主観が正しい客観を把握するということは、主観と客観が合一になって可能なのです。このことは皮膚の内で行はれているわれわれ生物の調整機転ホメオステシス Homeostasis に見ます、本能といわれるものが現代医学では「連鎖反射」とも見られるとの説がありますが、これは意識以前のはたらきです、本能的な客観の把握は練熟した反射作用です。東洋ではこれを「直観」というのです。東洋の学問はこのような基礎のうえに立っております。
脈診という行為は、このような立場から要請されています、中茎陽谷が「切脈一葦」に「専ら心を指下に留め、言うこと勿れ、観ること勿れ、聴くこと勿れ、嗅ぐこと勿れ、思うこと勿れ、是れ脈をするの要訣なり」というています、これは意識以前の体験をまず確かなものとしろということなんです。百錬自得ですネ、そこで脈のとり方は、直観的に行うことが東洋的になるんです、初めは感得したものを第一にしろ。それをもってきめる。あとは実習か実験があるそうですが、それはこうやっているとわからなくなってしまう。これは浮か沈かわかるだろうといっても、やっているうちにどれが浮だか、どれが沈だかごちゃごちゃになっちゃう。そのうちに二十四脈も区別があるでしょう。これがごちゃごちゃになってしまう。まずそっとこう見て、そうしてそのときに了徳した脈をもって虚実を決める。これは見方ですね。そこでわれわれが臨床上において今申した通り―さっき誰か御質問があったようですが、標示法でやるか本治法でやるか、どっちをとるべきかといいますと、これは内経をごらんになれば分かるとうり標示法を先にする場合、本治法を先にする場合があります。が病気、病巣、症状の部に近きところからやるか、病状の部より離れたところからやるかということを私は学生などには病巣の部より離れたところからやる。それから病巣あるいは病気と感ぜられておるところへやれと、こうまあ教えております。そしてこのような遠達刺戟を経絡に基づいてやるのでいわゆる経絡治療といわれておるところの療法をとっておるというわけです。
そして、臨床上我々は日常経験する対象は病態の状態にある病人であるということです。健康人には有るべきものが、無くなったり、無い筈のものが、有るようになるということです。こういうことは結果論的ではありますが、現象的にはこういえるのであります。脈もこのようなものであります。これを前提として考へてゆきたいと存じます。
脈は、生体反応の現われであり、しかもこれが意識前の生命以診体の表現であるというふうなことが一応納得がいただけるならば、その脈を見て―まあ一応脈を見ると何かを諒得します、その脈を知っておって今度は鍼を刺してみる、ここで、刺鍼の前後にどういう相違があるかということをわれわれは克明に検査しながら行う必要があると思うんであります。そうでないと鍼のおもしろみというものもわからぬし、それから病気、病態がどういうふうに進行していくかということもわからない。今私が扱っている患者で、医者の診断では心臓といわれ、症候は背がむくむ、足がむくむ、そして脈を見ますと不整脈です。数が多い、欠滞のような脈を示すこともあります。非常にとりにくい脈証でございましたが、脈証によって水虚証と診見まして、まあこれは水の陰虚証ですから腎の虚証ということになります、こうなれば、もうこのツボは要穴の模式できまってくるんでありますから、あとは鍼を刺してその脈状に変化が出るか出ないかを見るだけのことなんで、鍼をどこえ刺すかということは、もう皆さん御案内の通り陰谷、復溜、陰谷は膝です。復溜も足ですが、そこへ鍼を刺してとどめておく、つまり補するという意味から、そして又、脈を見る。その脈が数の上から百グライあったのが九十になれば、これは病的脈状から健康的脈状の方向に向かって回復しつつあるということがいえる。

もう一つは脈のリズムの問題、調律の問題、これがどうなってくるかこないか、乱調子であればこれはいけないわけです。からだがいけないから乱調子の脈が出てきた。それをからだの状態をよくするような意図のもとに鍼を刺したところが、脈そのものの乱調子が漸次正しい律動をおびてきた。調健が回復してきたということは、からだそのものの機構が、内部機構がよくなってきたということでしょう。このようにして鍼を刺してみては脈を診、鍼を刺しては脈を診るというふうに何べんもやっていくうちにだんだんとなるほどこれはおもしろいなということがわかってくるんであります。鍼を刺すことによって脈に変化がくるということは、結局鍼がごく僅かな刺激とわれわれが考えているにもかかわらず鍼の刺激に対して生体として反応を及ぼしておるということでしょうね。そればかりじゃないんです。われわれ臨床上において患者に鍼をする。そうすると、先生、ちょっと小便にいっています。御不浄を借ります。そういう患者がある。小便にいくということはこれはいいことなんです。小便というものはためておくべきものじゃないんです。あれは出た方がいいんです。小便が出たくなった、といえば、いっていらっしゃい。これもいいことなんです。鍼を刺すとゲップが出る人がいたと同じように膀胱が運動しているわけなんです。直腸が運動をするわけなんです。そのように他の臓器が運動をしているはずなんであります。これも見た方もあると思いますが、フランスのニボイ博士の Essai sur L’ Acupuncture Chinoise Pratique 『支那の鍼の方法』という書物に三部九候の脈を区別し、あるツボに三部九候の脈図をとり、さらにそれに鍼をしてその脈の動揺、いわゆる脉搏の曲線図の変化の研究を報告しています。これはフランスではぼつぼつやっております。そういった刺鍼と穴と脈の関係が書物に出ているのであります。このような研究の方法による鍼の研究はフランスばかりでなく、ドイツでもやっています、今にすばらしい研究が出るでせう、それから三部九候の六部定位の脈の配当ですが、これも我々が日常取っているのと同じように使っています。こっちが左です。これが右の寸間尺で、これが陽でこれが陰です。これはここの脈でありますが、こういうふうに分けて、一部の陽、一部の陰ということを分けて、そうして研究しております。それからもう一つ、脈のとり方もやはり三本指をおいてとっております。フランスのドイツも脈のとり方は全く東洋と同じ。同じはずなんです。同じことをやっているんだからね。同じことをやっていますから寸間尺を定めてとっておるというわけですで、このことは世界に散在する鍼に関心をもっている世界中のドクターは、大部分はことにオーソドックス的に即ち正統的にやっておる、鍼灸というものは全部東洋医学的にやっておるということはいえる。それでないものは異端者であるということになる。

クラクシーにやるのが、正しい鍼灸のいき方である。鍼灸は東洋からでたんですから東洋風にやるのが正しい。従って鍼医は全部東洋風にやるべきなんだという、それはまことに当り前の話なんです。だからわれわれの方が今の西洋の鍼灸の先生方よりは、歴史もあり、研究も多いし、洗練されているので、ちょっと知識も技術も広いわけだと考えていいと思うのです。
そこで最後に申し上げたいことは、今申したように私の脈診というものは、当初に申し上げましたように臨床のための脈診である。換言すると鍼灸の臨床は脈診にパイロットにて、導かれて行き治療の順序をたててゆくべきである。その脈の取りようはさっき岡部君から午前中にお話があったろうと思うが、第一に祖脈を手にすることであります。これはだれでもわかります。遅数の脈ですが、これは数が多いか少ないか、時計を見て一分間かんじょうすれば誰にでもわかる。浮沈の脈ですが、これは浮いているか、つまり、表面にあるか、沈んでいるか、つまり、皮膚から深い部分で触れるかでわかる。脈を軽くさわったとき、重くさわったときによって浮沈はわかるはずだ。これが祖脈ですが、これに虚実の脈の診方、つまり脈搏が力強く感じるか、弱く感ずるかで、虚とか実とかというのです。これは触るか、数えるか、比較すればいいいのでその気になって、脈を診ればだれにでもわかるはずなんです。これから先がめんどうなんです、というのは、古来の脈に関する古典にはさまざまなことが書いてありますからね、昔の本には、まあ異説も出ておりますから、ここまでの脈の診方は現代医学と実は全く同じなのです、これに意味つけすることが、異なっている、がすべてこれらは経験の所産です、そこでわれわれが基いておるところの脈診の方法というものについて、御諒解を得ておきますが、診脉の方法については、明治以降大正、昭和まで生きぬいた実地臨床家の脉の診り方、その経験を基礎としてきたということです、この間、少くとも三十年、五十年とこの脉のことで心をくだき、みずから体験してきた人たちの方法に基いているということなんです、それらをモデルとしてその説をとっているんであります。最近さまざまな脉のとり方を主張する説もあります。ありますがわれわれのとっておるところの立場というものは、こういう体験に基いたいにしえの脉の教えであるということを、この際、この機会に申し上げておきます。鍼灸界の一部分の方々は、このような脉の診り方は独断である。三部九候[三部とは人体の上(顔面)・中(手)・下(足)のことで、それぞれに天・地・人の三部位があり、合計九部位の脈動をしらべることによって病気の所在と状態を知ろうというもの]そのものを分けるなぞは迷信だ。それは非科学的だという人のあることも承知しております。これは、経験医学であるたてまい上あたりまえなことでありまして、科学的解説が出来ないというまでなんだと考へますが私は非科学だとはいいたくないのであります。前科学であるといいたいのであります。評者は更にこういいます。五臓六腑を橈骨動脉部の一部分に配当するなどということはとんでもない非科学だ、迷信だこういわれますが、これも私はちょっと待て、これは前科学にしておいてもらいたい。科学がどういうふうになってゆくかまだわからないんですから、これから先があるんです。先がといったところが何年先になったらわかるか、それは分かりません、そう云う人間がいつ死ぬかもわからないのですから、何年先になるといったって、わかるまで、わからないと云うより仕方がありません、わかるように努力を積まねばならぬのです、これが科学的態度であり、科学を向上させる態度だと考へます。私は以上のように考えているのであります。前科学的であるが故に、やがて解明され得るだろうと、こういうふうに思っております。

でありますから昔の書物、古典又はわれわれの書いた、脉診書を読んでもらいたいというと戸部君が喜ぶでしょう、本が売れますからネ。(笑声)竹山君が東邦医学をやってから二十五年、三十年近くになるでしょうが、それに多くの人々が書いています、それをどうかまず病人の上で、患者の上で読んでもらいたい。あれを読んだだけじゃだめなんです。三部九候と聞いただけでも非科学なんだ。原理を現象におきかえてそのものを読んでもらいたい。現象として、書物を読んでもらいたい。これは故沢田健先生も常日頃、お弟子たちにいった言葉であると聞いております。病人にあらわるる現象を読んでもらいたい。現象の類別がいわゆる五行の横の系別化、あるいはそのプロセスと私は考へている、縦の系別、あの陰陽五行のいわゆる五行の色体表なぞというものも、いいかげんなものだといえばそれまでなんです。が、実はそうではない。生きた人間、生きた生物の現象においてわれわれが見た場合には、個々の類型を見ることができるし、個々にその臓器と臓器との相互関係に前後関係がある。プロセスがある。段階があるということをわれわれは見ることができるんであります。だから望聞問切というものは便宜上四つに分けてありますが、これは実は一つのものなんです。脉診においてさまざまな脉を区別するが、これは煎じつめれば祖脉に帰るでしょう。祖脉、虚実の脉に帰るでしょう。その個別がいわゆる二十四脉あるいは二十六脉、三十八脉というふうに古書に書いてあるさまざまな脉が出ているわけなんであります。これは著者経験の所産なんです。何にしてもわれわれが実際の病人を見る場合には、その病人が示すところの生態反応がいかなるものであるかをすみずみまでとらえるということの努力を忘れてはならないと思います。もし、その努力を欠いて患者に対する鍼医があったとするならば、これは鍼立てであって私はほんとうの意味の鍼医ではないと思うんです。われわれの病人を見る態度というものは、そのような態度でなければならないと思うんであります。そのような態度で脉を見る。また、鍼を刺すことによって次に起るところの病人にあらわるる現象をつかんでみようと努力するとき、その病人が、新しい知識と新しい体験をわれわれに教えてくれるものと私は考えて、日日の臨床に携っておるようなわけであります。
話が非常に抽象的というか、漠然としてとらえどころがないと思いますが、後ほどまた何か質問のときに補足させて頂きたいと思いますので、一応ここで脉診と臨床ということについての私の話を終わりにしたいと思います。御清聴感謝いたします。(拍手)

付記

東洋医学概論の教科書では、祖脈に関して次のような説明がされています。

『最も基本的な脈状であり、その定義も極めて単純である。臨床でも最低限区別できなくてはいけない脈状であり、特に六祖脈( 浮・沈・遅・数・虚・実脈 )は八綱弁証の六綱(表・裏・寒・熱・虚・実)と対応しており臨床意義は非常に大きい。脈象は病の本質を示していることが多く、祖脈の習得は病態の把握や誤診・誤治の予防に意義深い。』

脈診・腹診・クレアチニン

今回のブログは2018年2月23日にアップした「慢性腎臓病が鍼治療で改善!」の続編というべきものです。この患者さまの当時のクレアチニン値は2.38でしたが、その後2.14、2.18と変化しました。そして5月の検査では、ついに2点台を下回り1.82という数値になりました。
患者さまが来院された最大の理由は、2点台前半で安定していたクレアチニン値が2ヵ月で3.64に急速に悪化したことでしたが、5月の検査値の1.82はその安定していた当時の数値をも下回るものでした。

下記はクレアチニン、eGFRの推移をグラフにしたものです。


当院では施術前、仰臥位(あお向け)での施術終了時、そして全ての施術終了時の計3回、脈診を行うと共に血圧と脈拍を計っています。

 

ムロン社製の手首で計測するタイプを使っています。

この患者さまの来院当初の脈の特徴は次の通りでした。
赤くしたところが病脈になっているもので、現在は全て中央の「平脈」に近づきつつあります。「沈」「硬」「実」の3つについては、いずれも脈診を行う鍼灸師の直観的な感じ方による判断のため、評価は主観的であり比較検討は困難です。一方、変化を客観的な数値で評価できるのは「脈拍」です。そこで、計27回の施術を9回ずつ3つのフェーズに分けて、脈拍数の状況をグラフにして、それぞれのフェーズの傾向を比較することにしました。

祖脈診です。

これ以外に緊張が強くピンと張った脈である「緊脈」があります。

 

脈診はこの写真のように、左右3本の指(示指、中指、薬指)を使って行うのが一般的です。なお、手指側から寸・関・尺といいます。

画像出展:「日本鍼灸医学(経絡治療基礎編)」

上記の表は、2017年11月25日の初診から2018年5月27日までの計27回の施術を対象にしており、1~9回(青色)10~18回(小豆色)19~27回(緑色)の3つの段階に分けて比較しています。また、「脈拍数」の数値が入ったボックスのうち、灰色にしたボックスは脈拍数が40台のものを示しています。

10~18回(小豆色)の中に、1回目の脈拍が80以上が2回ありますが、これは患者さま曰く、「遅れそうになったので急いできた。」とのお話でした。これを考慮すると「平均」の脈拍数の順位は逆転するかもしれません。

分かったこと

・脈拍数40台は最初の4回の施術では12回の計測中10回(83%)と顕著に多い。
・遅脉については5~10回程度の施術回数で改善が確認できる。
・この患者さまの平脉の脈拍数は55~60と思われる。
・鍼治療が患者さまの自然治癒力を活性化させたことにより、本来の平脉に戻ったと考えられる。

遅脉とは
代々木の日本伝統医学研修センターでは、遅脉は1分間の脈拍数が50回未満のものとされています。そして、その原因としてまず考えられることは「冷え」です。「冷え」ではない場合、もう一つの原因とされているのが「気不足大」というものです。これは「気」の中に「推動作用」とよばれる、生理的活動や新陳代謝をつかさどる働きがあり、この推動作用の機能低下によって遅脉になると考えます。特に後者の推動作用の低下を原因とする遅脉は注意が必要です。
一方、数脉(サクミャク)は遅脉に相対するもので、1分間の脈拍数が80回以上とされています。こちらの原因は「」、あるいは「気不足小」になります。気不足小の場合、気の不足を補おうとして推動作用が働き、脈が数(脈拍を増やす)になると考えます。つまり、「気不足」が原因と考えられる遅脉および数脉に関しては、推動作用自体に問題を抱えている遅脉の方がより深刻ということになります。

腹診
脈診とともに重視しているのが腹診です。理想は赤ちゃんのような柔らかく、ふっくらしたお腹です。特に注意したいのは硬さの状態や形状、部位などです。
患者さまに関しては、臍周辺および下部の面状の硬さや臍上方の線状の硬さなど、まだ完全には取れていませんが、来院時に比べるとかなり軟らかくなりました。

疑われる瘀血

瘀血は血が内邪により非生理化したもの、熱が血に入り込んで血が固まったものと考えられています。触診は手に角度をつけ、下腹部の奥の面状の硬結を探します。瘀血による硬結の場合、縁が感じられ左右非対称が特徴です。
なお、ウィキペディアさまでは、
瘀血について次のような説明がされていました。

『東洋医学では流れが悪く滞りがちな血液を「瘀血」と呼んでいる。(瘀とは停滞という意味で、文字通り血が滞ったり、血の流れが悪く、よどんだ状態を指す) ~以下省略』
瘀血が疑われる代表的な脈の特徴は「沈細硬」とされています。これは脈が沈み、細く、硬い脈ということです。患者さまに関しては細くはなかったのですが、沈み硬い脈、熱が内攻した陰実な脈でした。そして、腹診でもほぼ「瘀血」の特徴がみられました。以上の事から瘀血による病態と判断し、本治穴を肝と腎の水穴・金穴としました。

まとめ

今回の患者さまの場合、病状の指標となるクレアチニン値・eGFR値と共に脈、腹部が足並みを揃えて改善されています。これは患者さま自身の自然治癒力が強力なものだったからではないかと思われます。

また、患者さまからは食事・飲水と共に、十分な睡眠をとれるよう心掛け、改善されるというイメージをもって生活している。とのお話を頂きました。

感覚過敏・感覚刺激

昨日、お電話で感覚過敏に関するご質問を頂きました。そこで、情報の整理整頓を目的に「感覚過敏」「感覚刺激」「マッサージ」をキーワードに洗い出してみました。その結果、あらためてお伝えしたいポイントは次の2点になります。また、今回洗い出した内容も列挙させて頂きま
1.視覚や聴覚に加え、基本的な感覚ともいうべき触覚、固有覚、前庭覚の働きと様々な感覚間の情報統合が、子どもたちの発達の基礎となる。
2.自宅でできる対策として「五感のバランスのための乾布摩擦」がお勧めである。

感覚過敏は発達全体に影響を及ぼす可能性をもっている
自閉症と感覚過敏
・感覚過敏とは、最近になって自閉症に一般に認められるものとなった症状です。感覚が非常に敏感になっている状態で、刺激を恐れる場合と求める場合があります。たとえば、嫌な音を恐れて耳をふさいだり、音のする部屋に入らなかったりします。また、水路を見つめ小石を落とす行為をいつまでも続けたり、ビデオの同じ箇所を何度も見続けたりします。感覚過敏は視覚や聴覚など、あらゆる感覚に現れ、また、敏感性としてだけでなく鈍感性としても現れる、非常に多様な側面をもつ症状です。
・感覚過敏があると、刺激に対する反応が大きくなり、好きな物は非常に好んで求め、嫌いな物は恐れて避けるようになります。そのため、外界の捉え方が通常とは異なり、行動の仕方も通常と異なってくると考えらえます。このため、人々と共に生活することや学ぶことが難しくなってきます。ことばを学び、人々とコミュニケーションができないと、社会に参加することができなくなります。このように、感覚過敏は発達全体に影響を及ぼす可能性をもっています。

五感のバランスのための乾布摩擦(皮膚刺激で五感の感受性のバランスがよくなる)
発達障害児の言語獲得
乾布摩擦について
・遅れてことばが発達する子どもに共通して、感覚器官のダイナミズムに大きな変化があります。赤ちゃん時代からずっと口は飲む、食べるだけしかしていません。それ以外は泣き声だけで、自分の声を意識していません。少しことばが出はじめると、口の中の感覚が大きく変わりはじめます。同時に、聴覚や視覚にも変化が生じ、耳ふさぎや眼球擦りなどが生じることがあります。赤ちゃんはだれでも、五感の感受性にアンバランスがあり、たくさんの皮膚刺激で、五歳までにバランスがよくなります。
通常、聴覚優位なので、人の話を聞くだけでことばの学習が進みます。優位性がさらに過剰だと、耳ふさぎを示します。皮膚刺激の過敏、鈍感、味覚や嗅覚にこだわりや偏りを示す子もいます。
五感のバランスのために、乾布摩擦をして下さい。全身、朝、晩、服の着換えの時に、擦ってやってください。健康増進のためではなく、五感のバランスのための乾布摩擦なので子どもの顔を見ながら気持ちよさそうな表情を手がかりに、最適な擦り方を見つけてください。頭から足の裏まで、指の一本一本まで、嫌がる所はアンタッチャブルゾーンとして擦らないように、その境界線は特に丁寧に擦っていると、ゾーンは縮小していくはずです。消えるまで朝晩続けていると、ゆっくりと五感のバランスがよくなるはずです。

触覚敏感性問題の対策
自閉症の脳を読み解く
・じわじわと圧力をかけると触角が鈍くなることがある。マッサージは、思いやりを教える役にも立つ。自閉症の人のほとんどが、加重ベストを着たり、重いクッションの下にもぐりこんだり、しっかりマッサージを受けたりして、触覚を鈍らせると、ハグされることに耐えられるようになる。
・ちくちく、ヒリヒリする衣類に対する感受性を鈍くするのは困難だが、新しい衣類はすべて、肌に触れる前に何回か洗濯する。タグは全部取り除く。下着を裏返しに着る(継ぎ目が肌に触れないように)。
・診察に対する敏感性は、ときには、診察で触れられる部分にじわじわと圧力をかけると、鈍くすることができる。

ボディイメージを育てるためには触覚と固有受容覚が特に重要である。
発達障害について(発達障害の子どもたち)
・ボディイメージを育てるためには触覚と固有受容覚が特に重要になります。いわばボディイメージを育てる栄養です。もちろん、マッサージなどで他動的に触覚や固有受容覚を刺激することは効果的かもしれません。ただし、ボディイメージを高めるためには、能動的体験の中で触覚、固有受容覚を体験することも必要です。お風呂の中では、お湯の抵抗がありますので、身体を動かすと触 覚と固有受容覚のフィードバックがあるために身体を意識しやすくなります。同じ理由からスイミングもいいと思います。アスレチック遊具とかクライミングウォールにチャレンジすることもお勧めです。要は能動的に触覚刺激や固有受容刺激を感じて動きを作り出すことが大切なんです。しかも、いつもやらないような未経験の運動をやったほうがボディイメージは育ちやすいと思います。
・マッサージ:ブラシや素手でマッサージして、だんだんと感覚を受け入れられるようにします。治療者との関係を作ってから、「こうやって触れられれば、こういう感覚が入ってくるのだ」と覚えていってもらいます。身体の中では背中が受け入れやすい場所ですので、そこからマッサージを始めます。腹部、首、顔などは過敏反応が出やすいので、最初はやりません。マッサージはまず受け入れられる部分だけ行ったほうが良いでしょう。

体の内側に入る感覚刺激が足りないから、感覚を入れたい
療育
・多動といわれる状態は、動きたいという身体の内側にある感覚的な欲求が働いていることが原因の一つといわれています。「お腹がすいてご飯を食べたい」という生理的な欲求と似ていて、「体の内側に入る感覚刺激が足りないから、感覚を入れたい」という行動です。私たちが、窮屈な乗り物に長い時間乗っていると動きたいという気持ちにかられますが、それに似ています。
体の内側に感じる感覚は「固有覚」(筋肉や関節に感じる感覚)と「前庭感覚」(体の傾きや動いているスピードを感じる感覚)があります。どちらも感じにくいと跳びたくなったり、走りたくなったり、回転したくなったりします。ですから、我慢させすぎることのないように、内的な感覚欲求を満たしてあげることを考えましょう。
外遊びで、跳びはねたり、回ったりするといった遊びが少ない現代、この内的な感覚が足りないことと、子どもたちの行動に落ち着きがないと感じることは関係が深いと考えられます。

感覚間の情報統合が子どもたちの発達の基礎となる
感覚統合法の理論と実践
赤ちゃんは当初は生まれつき持っている反射や反応が助けてくれますが、徐々に感覚運動体験を積み、この多様性に富む複雑な世界に対し、柔軟に行動できるよう、自らの反応を複雑化していきます。赤ちゃんの学習は感覚刺激への反応に始まり、動きの形で反応し、母親やその他の人々も含めた広い意味での環境との相互作用で成長します。基盤となる感覚運動発達は、姿勢、手指の巧緻運動と各部位(首、肩、肘など)の固定、感覚-運動-感覚間の統合(話を聞きながらノートに正しく書き取る等の総合的動作)などです。
脳の研究やリハビリテーション学の進歩により、視覚や聴覚に加え、基本的な感覚ともいうべき触覚、固有覚、前庭覚の働きと様々な感覚間の情報統合が、子どもたちの発達の基礎となることが分かってきました。    
動物が運動する場合、運動に関連して常に二つの感覚が必要です。一つは環境と自分との関係、一つは自分の中心と体の他の各部分との関係を教える感覚です。前者が前庭覚、後者が固有覚であり、これにより空間の中での運動が可能になります。
50cm幅の溝を跳び越すとき、大げさに身構えて、1mも2mも跳ぶということはしません。視覚は溝の幅と接地点の状況を教え、足底は今踏んでいる地面の硬さを教えます。私たちは前庭覚や固有覚などから得た記録に基づき運動の計画を立て実行します。もし、この溝が2mであれば、運動はもっと慎重に計画されます。接地したときに、倒れないのは重力空間に対する頭部の位置関係、その位置を支える足の頭部に対する位置と運動の関係が入力により絶えずコントロールされているからです。
・運動活動を通して経験される固有感覚は、触覚とも関連しながら、子どもの筋緊張を適正にするとともに、興奮を鎮め、触覚の敏感性を低減します。したがって、固有感覚刺激は、覚醒水準が高く多動性を示す子どもに対しても、反対に注意機能が低下して寡動な子どもに対しても、必須な感覚刺激といえます。
発達障害児では、感覚の基本的な調節作用がうまく働いていないことが多く、感覚入力に非常に敏感であったり、逆に鈍感であったりします。その結果、覚醒水準の障害や注意の障害、あるいは多動や寡動などの動きの問題が目立ちます。

糸球体疾患

「一次性ネフローゼ症候群」の患者さまにご来院頂いています。クレアチニン値は約半年間、3点台で安定していたとのことですが、直近2ヵ月で5点台に一気に上昇(悪化)しました。2回の鍼治療後に行われた血液検査ではクレアチニン値の上昇にブレーキをかけることはできませんでしたが、次回の血液検査までの1ヵ月、週1回の治療を継続することになりました。
今後、改善がみられ、患者さまから同意を頂くことができれば、ブログにアップしたいと考えています。

ネフローゼ症候群は、高度の蛋白尿を基本的な病態とし、浮腫、低蛋白血症、高コレステロール血症を呈する疾患群の総称です。また、一次性は原発性ということです。従って組織診断だけで治療方針が決まります。一方、二次性の場合は原因疾患の治療も必要になります。
「病気がみえる vol.8 腎・泌尿器」によると、一次性ネフローゼ症候群の代表的疾患として4つがあげられています。

 

出版:医療情報科学研究所

『腎疾患は、原因が明らかではなく腎臓に限局した病変がみられる一次性(原発性、特発性)と、腎臓以外の原因(全身性疾患、薬剤、妊娠など)に伴って腎障害が生じるに二次性(続発性)に大別できる。』


この中で患者さまの疾患は、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)というもので、難病に指定されています。また、上記の表(円グラフ)を見ると代表的な4つの中では、6.6%と最も少ない疾患と位置づけられています。
腎疾患は病変部に関しては、「糸球体疾患」、「尿細管・間質性疾患」、「腎血管系疾患」の3つに大別できますが、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)は「糸球体疾患」に含まれます。 

 

『糸球体疾患では、糸球体が様々な機序により障害され、蛋白尿や血尿、腎機能障害(糸球体濾過量[GFR]低下)をきたす。』

 

『糸球体疾患の成立には、免疫的機序、血行障害による血行力学的機序や脂質代謝異常、糖代謝異常などが関与する。多くは、免疫学的機序によるものであり、糸球体に免疫複合体(IC)や抗体(免疫グロブリン)、補体の沈着がみられる。

現在、腎臓病でご来院頂いている患者さまは、慢性腎不全であり「糸球体疾患」については、ほとんど知識がありませんでした。そこで今回は、「病気がみえる vol.8 腎・泌尿器」を題材に、「糸球体疾患」の概要を1枚の表にまとめながら、理解を高めるということを行いました。

なお、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)は下から3番目に出ています。

気になったこと
今回作成した表の中で、1つ注目したいものがあります。それが光学顕微鏡による組織診断で、細胞増殖も血管壁(係蹄壁)の肥厚もなく、顕微鏡像が正常とほとんど変わらない「微小糸球体病変」のところに記載されていた「生理的蛋白尿」という病態です。本には次のような解説が出ていました。
『腎臓に器質的な異常を認めないが、一過性あるいは可逆的に蛋白尿がみられることを生理的蛋白尿という。機能性蛋白尿は、激しい運動や発熱、ストレスなどによる蛋白尿で、血行動態の変化によって血漿蛋白の濾過量が増大することで蛋白尿が生じると考えられている。
体位性蛋白尿は、立位(起立性蛋白尿)や前彎位(前彎位蛋白尿)でみられる蛋白尿で、腎静脈の圧迫による腎のうっ血や腎血管の攣縮によるものと考えられている。
また、ネット検索により、以下のような図(「蛋白尿の鑑別診断」)がありました。なお、この図は日本臨床検査医学会にあった、「臨床検査のガイドライン2012」から拝借しました。

こちらの図(上段)にもあるように「生理的蛋白尿」は「病的蛋白尿」とは全く別のものとして位置づけられています。そして、過度な精神的ストレスは定常的に自律神経系および内分泌系に悪影響を及ぼします。

また、体位性蛋白尿の原因とされる腎静脈の圧迫は、腎静脈に流れ込む細静脈や毛細血管までに対象範囲を広げると、体位の問題だけでなく、筋肉の硬結や筋膜の柔軟性の欠如という筋肉・筋膜の問題も血管に物理的ストレスを与える要因になると思います。

病に対する不安はストレスを高め、かつ長期にわたります。運動機会の減少は筋肉、筋膜の状態を劣化させ、血液循環に悪影響を及ぼします。
もし、これらのことが実際に起こるとすれば、糸球体疾患の本態による蛋白尿に加え、生理的蛋白尿による要因も加算されてくる可能性もあると思います。そして、これは鍼刺激による物理的治療が糸球体疾患の蛋白尿の問題改善に寄与できる一つの狙いになるのではないかと考えます。

なお、特に重要となる刺鍼ポイントは腎静脈近位の第12胸椎および第1腰椎下部脊柱際とその周辺の脊柱起立筋になります。

画像出展:「人体の正常構造と機能」


追記

週1回、計6回の施術の後に行った血液検査は、クレアチニン値の上昇が前月の1.18から0.61とほぼ半減されましたが、止めることはできませんでした。ご参考まで。

西野ジャパン

ついに、尊敬する大先輩の西野さんが監督の頂点である日本代表監督に就きました。大変嬉しい出来事で、一時は少々しぼんでいた日本代表に対する期待も一気に復活しました。西野監督率いる日本代表が予選を突破し、決勝トーナメントでのベスト8を懸けた戦いを観るというのが私の願いです。
「勝てば官軍負ければ賊軍」は監督の宿命ですが、今回はとびきりのプレッシャーが掛かる崖っぷち就任であり、まさに「火中の栗を拾う」という言葉通りの正念場だと思います。
そこで、高まる期待を抑え、まずは頭を冷やして今回の監督交代について考えてみたいと思います。
ハリルホジッチ監督が選手に要求していたのは、「1対1の強さ」、「縦への素早い攻撃」、そして「競争」だったと思います。しかしながら、欧州遠征での未勝利はチーム内の競争を優先し続けた結果、チーム戦術の熟成がほとんど進んでいないという現実を露呈してしまったと思います。また、監督の戦う方針、戦術に対する疑問が選手の中にくすぶっており、監督を信じてチームがひとつにまとまることができないという問題に直面していたと思われます。劇的な解任の理由はこの二つではないかと思います。
「1対1の強さ」、「縦への素早い攻撃」の二つは極めて重要です。しかしながら、特に前者は日本代表の課題、ウィークポイントであって日本の強みではありません。戦いの鉄則は「敵を知り己を知る」に始まりますが、守るべき鉄則は「自分の土俵で戦う」ということです。
それでも、日本選手が鋭いよみと強靭なメンタル、強い体幹を身につければ、体格の欧州選手、運動能力のアフリカ選手、試合巧者の南米選手とも互角に戦えると思います。しかし、「優る」ことは困難です。
「縦への素早い攻撃」はパスの出し手、受け手、第三の動きが必要です。つまり、この攻撃はチーム内の意識の統一、流れるようなコンビネーションなくして破壊力は生み出せません。もし、選手が監督の戦術に疑心暗鬼なものを抱えたまま戦っているとすれば、この戦術がうまく機能するとは思えません。

そして迎えた大事なガーナ戦
結果は非常に厳しいものになりました。ガーナ戦に勝ってサポーターの熱い声援を受け、戦いの地に旅立つというシナリオは崩れました。
1点目の失点は、相手選手が腰をぶつけてきた反動で前に倒れたようにも見えましたが、反則と判定され相手にFKが与えられました。集中力に欠けていたからなのか、壁の作りが雑で選手間を抜けてきたボールはキーパーの手をかすめてゴールネットを揺らしました。2点目はディフェンダーとキーパーの連係ミスから、勢い余ってガーナの選手を押し倒すことになってしまい、PKを決められ追加点を許すことになりました。
このセットプレーからの2失点は、ディフェンダーおよびキーパーとの連係の精度を高めることで回避できる失点だと思いますが、攻撃面、守備面いずれもセットプレーは重要です。
一方、流れの中で何度かあったピンチの多くは、中盤での簡単なパスミスからのものでした。こちらも非常に重要ですが、私が思うにはポジティブかつ慌てないメンタルと選手の距離間、コンビネーションが安定すればチームとして、またプレーヤーとして自信と余裕が生まれ、それがミスを減らしてくれると思います。
今回の試合で試されたフォーメーションは、1トップ・2シャドウの「3・6・1」と2トップの「3・5・2」、そして従来型の「4・4・2」の三つでした。私はこの中では最初の3・6・1が1番良いと思います。それは前線の3人(1トップ・2シャドウ)、両サイドの3人(1シャドウ・1ボランチ・1サイド)、中央の4人(2シャドウ・2ボランチ)の選手のコンビネーションを高めることにより、数的有利な局面をつくり出しやすいと思うためです。そして、90年代オフト監督が選手に植えつけていた「アイコンタクト」を共通意識のワードとして復活させてみてはどうでしょうか。
3バックはトルシエ監督時代の「フラット3」が印象的でしたが、勝利に2得点が必要と考えれば、ラインを積極的に押し上げ、選手同士の距離間を維持する「フラット3」はリスクもありますが、優れた戦術であると思います。この点も「3・6・1」を推す理由です。

残り3週間、オーストリアでの事前合宿に期待します!!

 

日付が2006年1月17日となっていますので、ガンバ大阪を率いて4年目となった2005年のJ1初制覇をお祝いして、浦和西高OBが企画した会で間違いないと思います。

1995.5.26 アトランタオリンピック アジア地区 一次予選 タイラウンド 

日本 5-0 タイ

 

今井さんを隊長とする西高OB有志4名+奥さま(1名)の5名が、西野U23代表監督を応援すべくタイにとびました。

 

1996.3.24 アトランタオリンピック アジア地区 最終予選。マレーシアのシャー・アラム・スタジアムにて、28年ぶりのオリンピック出場権をかけた、サウジアラビアとの大一番が行われました。

スタジアム内で撮った写真もあったはずなのですが。。。


 

早稲田大学3年生だった西野さんの雄姿です。(1975年秋)

強烈な個性の先輩だらけだった4年生が引っ張ったこのシーズンは完全優勝でした。

番外編(せっかくの好機なので、掲載させて頂きます)

 

西野さんが表紙となった古いサッカーマガジンを今も大事に保管しているのは、実は、この号に私自身の唯一のお宝写真が載っているためです。

僭越ながら、そいつはこいつです。

アメリカW杯最終予選。我々が泊まったドーハのホテルには各国の選手も宿泊していました。何と、このホテルで西野さんにバッタリお会いしました。

※国旗は手前から、サウジアラビア、韓国、北朝鮮、日本、イラン、そして忘れることのできない、イラクです。

朝、ホテル内のレストランから、いきなり出てきたのは、イングランドの英雄、ボビーチャールトン氏。びっくりして反射的におじぎをしてしまったところ、“モーニング”と挨拶して頂きました。

画像出展:「そろそろ記憶が怪しいもので


 

試合観戦は初戦のサウジアラビア戦と2戦目のイラン戦。

こちらはサウジ戦の選手入場です。スコアは0対0の勝点1でした。

早大サッカーと駒場サッカー場

駒場サッカー場は自転車5分の距離にあります。
その駒場サッカー場で、早稲田大学サッカー部(ア式蹴球部・ア式蹴球女子部)の試合が5月に行われました。男子は関東大学サッカーリーグの試合で、早稲田の試合が駒場で行われるのは、おそらく今年はこの1試合だけと思われます。また、女子部の試合は関東女子サッカーリーグの試合で、浦和レッズレディースユースチームのホームゲームということです。

 

関東大学サッカーリーグ1部

早稲田大学 1 対 0 明治大学

男子は昨年の劇的な逆転優勝で念願の1部昇格を1年で果たし、1部に上がってきた最初の年ということになります。2戦目の筑波大学、3戦目の流通経済大学という強豪チームに競り勝ち、この日は同じく3連勝と勢いにのる強敵明治大学との4連勝を掛けた大事な一戦になりました。
積極的に仕掛ける明治に対し、しっかり守って素早く攻めるという早稲田の試合運びは対照的です。早稲田にとっては先制点を献上すると厳しい試合になることが予想されました。少しラインが下がりすぎる懸念はありましたが、集散と球際の厳しさが浸透し、攻撃のスイッチが入った時のチームの意識統一が徹底されていました。試合は前半のキーパとの1対1の決定機を確実にゴールに結びつけ、そして、その1点を最後まで守り抜き、早稲田が4連勝を勝ち取りました。
その後、駒沢大学に敗北を喫したものの、5月25日時点での4勝1分1敗、勝点13は勝点差1で続く、順天、駒沢、明治の3チームを押え、頭ひとつリードしての首位となっています。

 

関東女子サッカーリーグ

早稲田大学 2 対 0 浦和レッズレディースユース

前半の給水タイムです。

女子部は昨年インカレ3連覇を達成し、関東女子サッカーリーグも現在9連覇中という素晴らしい成績を上げています。

一方、浦和レッズの下部組織である浦和レッズレディースユースチームは高校生年代のチームになっており、その意味では強敵ではあるものの、お姉さんとなる早稲田は負けるわけにはいきません。
体格ではむしろ浦和レッズレディースユースの方が、少し優っているように見えましたが、足腰や体幹の強さは早稲田の方が鍛えられているように思いました。また、試合運びにも優れ、2度の決定的チャンスを逃した時は、「う~ん」と思いましたが、その数分後に左コーナーキックからのチャンスを押し込み、何んとか先取点につなげることができました。この前半の1点は試合を有利に進めることとなり、結果的に2対0で勝利することができました。
ただし、ロスタイムを入れた残り10分弱の気の緩みは、暑さによるものもあったと思いますが、今後の反省点だと思います。

5月25日時点の成績は5戦全勝で首位を快走しており、10連覇に向けて順調な滑りだしとなりました。

駒場サッカー場は1967年9月、埼玉国体のサッカー会場として、当時沼地だった土地を埋め立てて建設されました。私自身、その大規模な工事の風景の記憶がわずかにあります。当時のサッカー場の観客席は大部分が芝生席で収容人数は8,000人だったようです。

画像出展:「浦和市体育協会 創立30周年記念誌」


そして、このサッカー場は1993年のJリーグ発足時に、浦和レッズのホームグランドとして採用されました。
サッカーが盛んな浦和ですが、サッカー少年団が出てきたのは1960年代後半、少し遅れて発足した駒場サッカー少年団は、1970年のスタートでした。小学6年生の私はプロ野球の選手に憧れていたのですが、駒場サッカー少年団に入団したことで、サッカーがかけがえのないものになりました。

初代駒場サッカー少年団

K君と共にガキ大将だった、I君が行方不明です。


駒場サッカー少年団の多くの仲間は、当時にあっても珍しかった、木造校舎の原山中学校に進学しました。あまりに懐かしいので「浦和市立原山中学校’(昭和51年3月卒)原山小学校、仲本小学校(昭和48年3月卒)同窓会ホームページ」さまより拝借しました。

駒場サッカー場というより駒場運動公園といった方が正しいと思いますが、多分、小学3、4年生の頃です。自動車が来ない広いアスファルトということで、ローラースケートをするために一時は毎日のように来ていました。「なんで、ローラースケートだったんだ?」と不思議に思い、ネット検索してみたところ、あの「ローラゲーム」の影響だったことに気がつきました。
テレビ放送は1968年4月から、チャンネルは現テレビ東京、映像はロスアンゼルスを本拠地とするサンダーバードというチームだったようです。
そういえば、その後出てきた、東京ボンバーズはテレビでよく観ていました。

この写真は、「GARADANIKKI」さまより拝借しました。

この写真は、「Girls Channel」さまより拝借しました。


このベンチは公園奥にある相撲の土俵と共に、開設当時からのものだと思います。


駒場サッカー場に隣接して、日通浦和の野球場と体育館が古くからあります。この写真は昨年元旦に取ったものです。今は、改修工事が行われており、この景色は完全に過去のものとなりました。
わざわざ元旦の朝に、見慣れた風景の写真を撮りに行ったのは、これは「虫の知らせ」に類するものだったのかもしれません。

飲水の重要性

サラリーマン時代は風邪で会社を休むことはほとんどなかったのですが、小学生の頃は2ヵ月に1回ぐらい、熱を出して近所の医院にお世話になっていたように思います。その時、必ずお医者さんに言われていたのが、「水を飲んでいるか!?」というフレーズでした。
今回の本を読むまで、コーヒーを水分だと思っていた私が言うものおこがましいのですが、患者さまに「水分を摂っていますか?」とたずねると、「なるべく摂るようにしている。」という回答の方が「あまり意識していない。」より多いと思います。飲水が重要だということを、うまく患者さまにお話できれば良いのですが、残念ながら知識不足でした。
そこで、今回も本に頼ることにしました。図書館から借りてきたのが「知って納得! 水とからだの健康法」であり、ネットで購入したのが「病気を治す飲水法」です。後者は本文の中から重要と思う箇所をそのまま引用させて頂きました。

民間療法に理解が深かったとされる岡田道一博士は水の正しい飲み方として、次の3箇条を紹介されています。
1.朝起きたら、コップ2、3杯の生水を飲む。
2.1日中に合計10杯の水を飲む。
3.病気になったら、薬の前にまず水を飲む。
また、京都大学名誉教授で日本水質保健研究所所長などを務めた川端愛義先生は、水は自然の健康飲料だといい、正しい飲み方をすれば健康維持に効果を発揮すると述べています。そして、川端先生は、「生水美容説」を唱え、その中でいくつかの根拠を上げられています。

 

監修:佐巻健男

出版:小学館

1.水には人体の恒常性を維持する働きがある
人間の生理の基調にあるのは恒常性で、これがあるおかげで体温は常に36~37度を保っています。この恒常性は、水によって支えられています。また、ホルモン作用や酵素作用など、人体にとって大切な働きも水が重要な役割を持っています。美しさを根本で支え、保っているのが水、というわけです。
2.水には整腸作用がある
水は胃腸内の有毒・有害物質を排除して消化器の機能を調整する働きがあります。つまり、水には便秘にも下痢にも効力があるということです。美容の大敵といえば便秘です。水の整腸作用は、便秘を解消し美容に効果を上げるのです。
3.水は栄養を補給する
美容に必要な栄養やホルモンなどは本来、消化器を通して摂取され、体内でつくり出されるものです。それらが血液やリンパ液によって体中の組織に運ばれていくのです。そのためには、体内に十分な水分がなければなりません。いくら化粧をしても、体内の水分が不足すれば美しくはならないのです。つまり、水は内側からの化粧水なのです。
4.水は老廃物を排除する
人間のからだは食物と空気からエネルギーをとり、体内で必要な形に変えて活動しています。その過程では、つねに老廃物が生まれます。これらは速やかにからだの外に排出しなければ、美容はもとより健康をそこなうもとになってしまいます。水は汗や尿、あるいは便として、体内の老廃物を外に出し、健康と美容を保つために大いに役立っています。
5.水は肥満を予防する
水飲み法によって健康的なダイエットが実現可能です。

 

画像出展:「知って納得! 水とからだの健康法」

6.水は解毒作用を促進する
お酒を飲み過ぎたり、食べ過ぎたりしたとき、体内では解毒作用が行われます。このとき必要になるのが水の摂取です。水をとることで代謝活動が活発になり、しみ、そばかす、にきび、あるいはアトピー性皮膚炎のもとになる有毒物質の分解が進みます。健全な新陳代謝なしには肉体の若々しさも肌の美しさもあり得ません。この新陳代謝を調整するのが水なのです。要するに、いちばんの美容とは健康を保つことであり、そのために水は重要な役割をはたしているということです。

次の本は、今回購入したものです。著者の紹介などはブログの最後にある、訳者の林先生が書かれた『訳者あとがき』をご参照ください。

『関節痛、各種ヘルニア、アンギナ、喘息、うつ病、潰瘍、肥満、腫瘍、エイズに至るまで、元をたどれば、体細胞の内外の決定的水不足による代謝障害が原因であり、同一の原因にたどれる体内水不足の「叫び声」が痛覚となって現れ、もろもろの病名がつけられているというのです。その見事な説明がこの一冊に収められています。
収められている多くの治療レポートは、不安になっている病人に勇気を与えてくれるものです。細胞膜を通しての水の浸透メカニズムにおいて、水の分子だけが細胞内に浸透するため、治療に使うのは水道水で十分であると博士は説明しています。これも大切な点です。ペットボトルを買う必要はありません。飲みづらければ浄水器を付ければいいだけです。今日から水道水の蛇口をひねりましょう。』

著書:Fereydoon  Batmanghelidj(バトマンゲリジ)

原版の題名:Your Body's Many Cries for Water

訳者:林 陽

出版:中央アート出版

目次は次の通りですが、太字の項目には説明をつけています。

CONTENTS(目次)
各界の賛辞
序 薬で渇きを処理するな
CHAPTER1 なぜ薬で病気が治らないのか
 基本
 変えるべきパラダイム
 医学の誤診のもとを探る
CHAPTER2 新しいパラダイム
 ライフステージごとの水の制御
 理解を徹底させる
 その他の作用
CHAPTER3 消化不良痛
 結腸炎の痛み
 盲腸の痛み
 裂孔ヘルニア
 要約
CHAPTER4 リウマチ痛
 腰痛
 首の痛み
 胸の痛み
 頭痛
CHAPTER5 ストレスとうつ病
 水不足に関係する代償メカニズム
 エンドルフィン
 コルチゾン
 プロラクチン
 バソプレッシン
 アルコール
 RA(レニン・アンギオテンシン)系
CHAPTER6 高血圧
 高血圧の原因としての水不足
CHAPTER7 高コレステロール血症
 考慮すべき証言
CHAPTER8 肥満
 過食を定義し直す
 ダイエットソーダ
CHAPTER9 アレルギーと喘息
CHAPTER10 糖尿病
 インシュリン非依存性糖尿病
 トリプトファンと糖尿病
 インシュリン依存性糖尿病
CHAPTER11 エイズ
 エイズ研究の新展開
CHAPTER12 最も簡単な治療法
 快眠
 めまいの予防
 心臓発作の予防
 尿の色
 病気治療に役立てる方法
 塩ぬきダイエットの間違い
 医療制度と私たちの責任
 医療費の節減
 おわりに
訳者あとがき

CHAPTER1 なぜ薬で病気が治らないのか
基本
・『体のどんな働きも、水の流れに監視され、それと一体になっている。それで、「水管理」だけが、適切な量の水と水に乗って動く栄養素を最重要器官に真先に届かせる、唯一の手段になる。このメカニズムは天敵と捕食動物に対抗するためにますます強化された。それは生死をかけた究極のシステムであり、今の競争社会においても同じように働いている。
体内水分配において避けられないプロセスの一つが、あらかじめ決められた量以上の水を受け取らないように、特定部位が厳しく管理されることである。それは体のどの器官にもいえることだ。
水を充当する系の中で最も優先されるのは脳である。脳は体重全体の50分の1を占め、血液の18.20%を受け取っている。水の制御と供給をあずかる因子が活発になれば、水不足の警報が鳴りはじめる。それは冷却水の不足した車がオーバーヒートを起こすようなものだ。』
・『文明社会では、茶、コーヒー、アルコール、製造飲料が水の代わりになると考えられているが、この考えが致命的なミスを生んでいる。これらの飲料には確かに水が含まれているが、脱水成分も含まれている。それが飲料水分だけではなく、体に貯蔵されている水まで排除してしまうのである。』
医学の誤診のもとを探る
・『現時点では、喉の渇きが体の水不足の唯一受け止められている信号である。しかし、この信号は極度の水不足が発する最後のサインであり、喉の渇きを示さない段階で、すでに慢性水不足が起きているのである。ビタミンC欠乏から起きる懐血症、ビタミンB不足から起きる脚気、ビタミンD欠乏から起きるくる病、鉄不足が起こす貧血症等、どんな欠乏障害とも同じく、その症状をもっとも有効に治療する方法は、欠乏した成分を補うことである。慢性水不足の合併症が認められれば、その予防と初期療法はきわめて単純である。
この研究は、私が1987年の国際癌学会に講演者として招かれ、パラダイム転換の情報を提供する前から医師仲間に評価されていた。次のページに載せるベリー・ケンドラー博士の手紙は、慢性水不足を病の発生源とする科学的見解の正しさを確認している。大部分の変形性疾患の原因が慢性水不足にあることを説明するために、私は多くの文献を参照したが、彼はそれも調べている。
医学書を参照するとなれば、千ページを超える書物に目を通さなければならない。だが、人間の主だった病の理由を述べる段になれば、どの説明も同じである。「原因不明」の一語で、すべてが片づけられているのである。

 

画像出展:「病気を治す飲水法」

CHAPTER2 新しいパラダイム
その他の作用(水には溶媒と運搬以外にも多くの性質がある)
・『体のすべての代謝機能に欠かせない加水分解の働き。化学反応が頼っているのは水である。種子を発芽させ、新しい植物へ成長させるのにも似た生化学作用がそれである。』
・『細胞膜での働き。細胞膜に浸透する水の流れから電力(ボルト)がつくられ、ATP(アデノシン三燐酸)とGTP(グアノシン三燐酸)という、二大細胞バッテリーに蓄えられる。ATPとGTPは人体の化学的エネルギー源であり、特に神経伝達のさいに分子交換に使われる。』
・『細胞の構造を繋ぐ接着剤に似た働き。水はニカワのように細胞膜の固形部を結合し、高い体温の下でも「氷」のように固める作用を持っている。』
・『体内蛋白質と酵素は、あまり粘り気の無い溶液の中で、有効に働く。細胞膜に存在する受容器(受容点)も同じである。蛋白質と酵素は、粘り気の多い(水不足状態にある)溶液の中では有効に働かない。』
・『脳で生産された物質は、水に乗って、神経終末部の目標地点にたどり着き、情報の伝達に使われる。神経には、情報を梱包して流す「極微細管」と呼ばれる微細な水路が存在する。

 

画像出展:「病気を治す飲水法」

この非常に興味深い神経線維内の水路について、ネット検索したのですが水路として解説されたサイトを見つけることはできませんでした。しかしながら、東京大学で「研究のショーウィンドウ」とされる、UTokyo Researchの中に、「細胞内輸送の解明にかける思い」という記事があり、そこに出ていた図が、よく似ているのでお紹介させて頂きます。用語が微妙に違うのは原文を翻訳しているからかも知れません)

 

 細胞内輸送の解明にかける思い

『これまで、記憶や学習の研究では、シナプスの受容体や、電位を調節するイオンチャンネルなど、神経細胞の表面にあるものばかりが注目されていたのですが、実は、細胞内部の輸送も大きく効いていることがわかりました」と廣川特任教授は胸を張ります。

画像出展:「UTokyo Research」

このように、体のあらゆる機能を調節しているのは水である。体の溶媒たる水が、そこに含まれる溶質の働きを含め、体内のあらゆる機能を調節しているのである。この新しい科学的真理(パラダイム転換)を、未来のあらゆる医学研究の基礎とすべきなのである。』

CHAPTER3 消化不良痛
裂孔ヘルニア
・『水を飲むと、飲んだ量に応じて、モチリンと呼ばれるホルモンが分泌される。水を飲めば飲むほど、腸からモチリンが生産される。モチリンが腸に与える効果は、腸のリズミカルな収縮、上から下へと向かう蠕動運動を起こすことにあり、腸の中身を流す弁を、随時開閉することも含まれる。
このように、体内に十分な量の水があれば、すい臓は重炭酸液を生産し、胃の酸性物を受けとれるよう腸を準備できる。この理想的条件の下で、幽門は開き、胃の内容物を吐き出せるのだ。モチリンはこの働きを調節する中心的伝令である。』 (モチリンについてはブログ「便秘(大蠕動)」でも触れています)
・『重度の水不足合併症で、かなり誤解されているのが、過食症である。 ~中略~ 過食症の人は、食べものを胃にとどめられず、すぐに吐き出す抑えがたい衝動に駆られる。それで「非社交的症状」と呼ばれる。彼らの「空腹感」は、実際には、渇きの信号であり、吐きたくなる衝動は、先ほど説明した保護のメカニズムからくる。過食症の人が十分に水を補給し、食事をとる前に水を飲むようにすれば、この問題は解消する。

CHAPTER4 リウマチ痛
・『リウマチ関節炎とその痛みは、まずもって、患部の軟骨の表面が水不足に陥っている信号と見るべきである。関節痛は体の局所の渇きの信号であり、塩分の不足が一因を成していることもある。
関節の軟骨の表面には水分が多く含まれている。その潤滑機能のおかげで、関節が動くときに、対抗する面同士が自由に擦れ合う。骨細胞はカルシウムの層に浸っているが、軟骨細胞は水の豊富な基質に浸っている。軟骨の表面が擦れ合うと、細胞の一部が摩滅して剥がれ、骨表面の成長突起から新しい細胞が補充される。水の多い軟骨では摩滅する度合いは少ないが、水不足状態にある軟骨ではその割合が大きくなる。軟骨の再生と摩滅の割合が関節が有効に働く指標になる。
骨髄で活発に成長する血の細胞は、骨の中を通る水を軟骨に優先させる。血量を増やそうと血管を膨らませるときに、骨の硬い穴を通る支脈が十分に広がらないことがある。水と栄養を血管に頼る細胞には決まった割り当てがある。この状態で、より多くの水を運べるよう血が希釈されていなければ、軟骨に必要な血清を、関節嚢の血管から補給せざるを得なくなる。どの関節にもいえることだが、神経がつかさどるこの迂回メカニズムが痛みの信号を出す。
関節痛は関節が十分に水和されるまで圧力に耐えられない合図である。この種の痛みは飲む水の量を増やすことによって扱うべきである。そうすれば、一帯に流れる血は希釈され、軟骨に十分に水が行き渡り、骨に接する基礎から修復される。

画像出展:「病気を治す飲水法」

CHAPTER5 ストレスとうつ病
水不足に関係する代償メカニズム
・『水不足から起きてくる体内プロセスはストレスのそれと変わらない。水不足はストレスに等しいのである。ストレスが起きれば、それに関係する基本物質が体の貯蔵庫から引き出され、蓄えられている水も引き出される。水不足がストレスを、ストレスがさらに水不足を起こす悪循環がここにはじまる。
・『ストレス状態にあるといくつかのホルモンが過剰になる。体は「戦いか逃走か」の反応に向かって動き出し、危険な状態になる。体は人間の社会的変化とは無関係に、職場のストレスを含め、どんなストレス状態にあっても、「戦いか逃走か」の体制をとろうとする。ここで、いくつかの強いホルモンが分泌され、体がストレスからぬけ出すまで発動状態になる。その主なものが、エンドルフィン、コルチゾン解放因子、プロラクチン、バソプレッシン、レニン・アンギオテンシンだ。』
RA(レニン・アンギオテンシン)系
・『RA系は脳内ヒスタミンの発動に従属するメカニズムである。RA系は腎臓でも活発に動いているが、発動するのは体水量が減少したときである。RA系は水を保つために発動し、それに必要な塩分の吸収をうながす。水でもナトリウム(塩)でも、体に不足すれば、RA系が非常に活発になる。
RA系は、水とナトリウムが十分に使える量になるまで、毛細血管床と脈管系を収縮させる。それは血管系が淀みを起こさないためだ。測定可能なほど収縮が進めば「高血圧」と呼ばれる。血圧200で高いと思われるだろうか。私の診たイラン人は、高血圧の病歴がなかったが、政治犯収容所に送られたときに、血圧は300を超えていた。
ストレスが血管を縮ませる理由は簡単だ。人体の機能はすべてが絡み合っている。ストレスが起きれば、蛋白質、でんぷん(グリコーゲン)、脂肪などの貯蔵物質を出すために、水が使われる。その不足した水を補うために、RA系はバソプレッシン等のホルモンと力を合わせて、血管を収縮させる。
腎臓はRA系が活動する主な部位である。尿を生産し、余分な水素、カリウム、ナトリウム、老廃物を排出する責任を負っている。腎臓は、尿を生産するのに十分な水量に応じて、その働きを保つ必要がある。腎臓には尿を濃縮する力があるが、常時濃縮されていれば、腎臓を壊す原因になる。
・『腎臓障害は、長期的な水不足と塩分の欠乏により、RA系が発動している結果かもしれないのである。今まで、血管の収縮が体の水不足のサインと見られることはなかったが、いまや、体液のアンバランスを、移植も含む一部の腎臓疾患の主な原因と見なすべきときにきているのである。一度RA系が動き出せば、自然な停止装置が働くまで止むことはない。自然な停止装置の成分が水と若干の塩である。
・『コーヒー、紅茶、コーラを水の代用にしていればどうなるか。コーヒーと紅茶の天然刺激物には、大量のカフェインと、やや少ないセオフィリンが含まれている。これらは中枢神経系を刺激するだけではなく、腎臓に強い利尿作用を起こす水不足の因子である。コーヒー一杯には85mg、紅茶には約50mgのカフェインが含まれている。このように、カフェインは体内エネルギーを解放する力に作用する。その結果は誰でも知っているが、問題は体が望まないのに無理にエネルギーを解放することを知ることである。貯蔵エネルギーは減少し、一部のホルモンと神経伝達物質の働きが制御できなくなる。カフェインは、体の貯蔵エネルギーが低下するまで徹底的に作用する。』
・『カフェインはよい働きをすることもあるが、水の代用にばかりしていれば、水力エネルギーを生む力を体から奪ってしまうのである。カフェインのとりすぎは脳と体のATP貯蔵エネルギーを枯渇させる。これがコーラ世代の若者の注意散漫、コーヒー世代の大人に慢性疲労を起こす一因になっている。また、カフェインをとりすぎれば、心筋を刺激しすぎて疲労を起こす。』

下の資料は、こちらページの下段にある「ファイル」をクリックしたものです。

ダウンロード
日常生活の中におけるカフェイン摂取.pdf
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CHAPTER6 高血圧
高血圧の原因としての水不足
・『水を十分に飲み、体の要求すべてに応じるようにしなければ、体内の水の一部が血管にとられ、一部の細胞が水不足になる。それまで緩んでいた血管床は、収縮し、閉鎖に追い込まれる。体の水が不足すれば、細胞内で66%、細胞外で26%、血液では8%水が失われる。血管が血を失わないためには管腔を閉じるしかない。あまり使われていない毛細血管を閉じることによりこのプロセスが始動する。毛細血管を常時開かせるにはどうすればよいのか、水を外部から補うしかない。
毛細血管床がどれほど働いているかが、そこに流れる血の量を決定する。筋肉を使えば使うほど、その部分の毛細血管も開き、血流も増大する。高血圧の患者に運動が最も欠かせない理由がそこにある。毛細血管床を常に開き、血の流れを円滑にする必要がある。血管床を閉ざすもう一つの原因が水不足である。飲んだ水は最後には細胞に入る。水は細胞の体積を内側から調節し、塩は細胞外の水の量を調節する。それは細胞を囲む海のようなものである。』 

画像出展:「病気を治す飲水法」

訳者あとがき(冒頭の部分になります)
『この本はイラン革命で政治犯収容所に送られた医師が、薬の得られない環境の中で三千人の患者を水だけで治療した経験を基礎に、医学、生理学の見地から、本格的に体内水代謝の複雑な機構と、水による各種疾患の治癒プロセスを解明し、世界に先がけて公表したものです。
著書のバトマンゲリジ博士は、イラン生まれの医師で、イギリスの大学で医学を学び、医師の資格を得ました。祖国にもどり、各地に診療所をつくる仕事に従事した頃に、イラン革命が勃発し、政治犯収容所で病人の世話をすることになりました。
薬が満足に手に入らない収容所の生活で、重い胃潰瘍の患者に水を飲ませただけで痛みが消えたのに、非常な驚きを感じます。「医師としていろいろな臨床の場に接してきたが、このようなことははじめてである。」と、回想しています。
博士はこのできごとを機に、三年間にのべ三千人を超える患者に、薬のかわりに水を処方し、痛みを消して治癒させることに成功しました。そして、この予想もしない経験に医療の重要な突破口を見い出し、アメリカで本格的研究に入ります。賛同する医師仲間を集めて、「シンプル・イン・メディシン財団」を創始、飲水による症状の解消と無用な医薬品の常用への抵抗運動を推進しました。
博士がまっ先にはたらきかけたのは、全米医師会と国立衛生研究所でした。しかし、製薬産業と切っても切れない仲である二つの機関が、博士の提案を受け入れるはずもありません。医師会に絶望した博士は、自費で財団から機関誌を刊行し、著書も次々に出して、国民に直接訴えかける仕事に着手しました。ペルシャ語版と英語版で製作に着手した記念すべき最初の一冊が本書です。~以下省略~』

こちらが、バトマンゲリジ先生(Fereydoon Batmanghelidj)です。

英語になりますが、”watercure”というサイトに多くの情報が掲載されています。

重症五十肩(肩関節周囲炎)

重症五十肩の患者さまに来院頂いています。初診のときに肩関節の可動域を確認させて頂いたところ、屈曲(腕を前に振り上げる)については何とか30°程度ありましたが、伸展(腕を後ろに振り上げる)も外転(腕を横に上げる)も、自力ではほとんど動かすことができませんでした。人とのすれ違いでは、肩が軽くぶつかっただけで激痛のためうずくまってしまうということです。夜間痛は最も何とかしたい痛みでしたが、仰臥位(あお向け)になっただけで肩がずれるような感じがあり辛いとのことでした。そのため、施術では肘から下を小さな枕に乗せて頂くようにしました。家事や日常生活では、シャツの着替え、洗濯物を干すこと、髪を後ろで結ぶことなどはひとりではできないため、家族の方に手伝ってもらっていたそうです。
痛みの強さなどから、亜脱臼や腱板損傷も考えられましたが、二つの病院でのX線による診断はいずれも五十肩とのことでした。

下記の4つの絵は、“「肩」に痛みを感じたら読む本”からの出展です。左上は前方の「屈曲」と後方の「伸展」ですが、それぞれ可動域は180°と60°と定義されています。右上は外側に開く「外転」と内側にクロスする「内転」を示しています。「外転」の可動域は180°です。

下段は「水平内転」・「水平外転」、および「内旋」・「外旋」の説明となっています。すべて、クリックして頂くと拡大されます。



左は肩関節、右は肩甲骨に関する動作です。

画像出展:「改訂版 ボディ・ナビゲーション」


初診は昨年10月後半、治療回数は4月末の段階で25回に達しており、成果については十分とは言い難いのですが、夜間痛はなくなり痛みは我慢できる程度に改善されたため、家事および日常生活に関しては、家族の方に手伝ってもらうことなく、すべてご自分でできるようになりました。
そして、今一番何とかしたいことは、バスや電車のつり革を握って体を支えられるようになることです。
四十肩、五十肩は何もしなくても1年程度で治癒すると言われていますが、この患者さまの状態を拝見した時、「本当にそうだろうか?どうやって自然治癒するのだろうか?」という疑問を持ちました。そこで、1冊は図書館、1冊は購入と2冊の本から学ぶことにしました。

最初に読んだ本は“肩が痛い、腕が上がらない 五十肩”です。ポイントになると考えた部分をまとめました。

 

監修:加藤文雄(西東京警察病院院長)

出版:NHK健康Qブック

早い人で3ヶ月~半年。長い人は1年ぐらい。運動制限が非常に強い人は、さらに長くかかる傾向がある(急性期[炎症期]1~2ヵ月ー慢性期[拘縮期]2~4ヵ月―回復期3~6ヵ月)。
ある日突然くることもあるし、じわじわくることもある。どちらかといえば後者がほとんど。
・痛みと同時に肩の腫れや熱っぽさを伴うこともある。痛む場所は肩から上腕にかけてが多い。

・初めは肩を動かすときに痛むだけだが、症状が進むと動かさなくても肩が疼くように痛み思うように腕が上がらなくなる。
時間がたつと炎症は治まってくるが、その過程で線維性の物質が出てきて、腱板の周囲が癒着し肩の動きが悪くなってしまう。
・原因ははっきりわかっていないが、腕を上げた状態で長時間の作業をしたあとに起こりやすい病気だということは言える樹木の手入れや大掃除で高い場所を拭き続けたあとに発症することがよくある。ものを持ち上げようとした瞬間や、テニス、ゴルフのスイングなどの最中に突然激痛におそわれ、それ以降、肩を動かすたびに痛むケースも多い。また、無理な姿勢をとったり、打ち身を起こしたことから五十肩になったという場合もある。
腱板は痛みやすい環境にある。線維組織は加齢とともにちょっとした力で傷ついて、炎症を引き起こしやすくなる。しかも、もともと血管が少ない部位で、いったん傷つくと修復されにくい性質がある。
・腱板の中でも棘上筋の腱板は構造的に炎症を起こしやすくなっている。腱板が炎症を起こすと、滑液包や関節の内部にも炎症が波及するのが五十肩の原因であろうと考えられている。
・重症のケースで、治療期間を短縮したい場合は手術を選択することもある。(関節鏡視下受動術) 

 

この絵は棘上筋の場合を説明したものです。

画像出展:“肩が痛い、腕が上がらない 五十肩”

 

本の中では、60°を超えて外転動作ができない五十肩を「重症」とされています。

画像出展:“肩が痛い、腕が上がらない 五十肩”

 

 

急性期のリハビリです。ここでは利用する重りにアイロンが使われています。

画像出展:“肩が痛い、腕が上がらない 五十肩”

 

 

「寝るとき」の姿勢が紹介されていました。

画像出展:“肩が痛い、腕が上がらない 五十肩”

もう1冊は、“「肩」に痛みを感じたら読む本”です。

 

著者:鈴木一秀

出版:幻冬舎

こちらの本は5つの章に分かれていますが、その5つは以下の通りです。
第1章 わずかな肩の痛みでも“手術”につながるリスクが潜む
第2章 知らないでは済まされない「肩」の基礎知識
第3章 手遅れになる前に、まずはチャック!「Yes/Noチャート」で“実は気づいていない重症度”を30秒診断
第4章 今すぐ実践!重症度別「肩治療&ケア」
第5章 早期に治して痛みのないアクティブライフを送る

この中で、今回のブログに取り上げたのは第1章と第2章に関する項目になります。こちらもブログに残しておきたいと思った個所の要点を書き出しています。

第1章 わずかな肩の痛みでも“手術”につながるリスクが潜む
肩の痛みを訴える人が低年齢化している
・現在も原因は不明であるが、その発症によって肩関節の組織に変性が起きてくること(退行変性)と、それによって肩関節の周囲に炎症が起きることが影響していると考えられている。
ほとんどの場合、1年前後で自然と治ってしまうが理由は解明されていない。
・自然治癒が期待される疾患のため、来院されることが少ないため患者数の把握が難しい。
・最近では30代で肩の痛みを訴える人が増えている。肩凝りは四十肩・五十肩の予備軍である。
・肩凝りは筋肉疲労によるが、四十肩・五十肩は関節の周囲で起こる炎症が原因の症状。両者を見極めるポイントの一つが肩を動かせるかどうかということ。
多くの場合、肩関節への負担が長期にわたって蓄積されることで炎症を引き起こすので、姿勢の問題やパソコンやスマホのように肩関節に負担を強いるような日常生活は将来的な発症につながるリスクになる。
・肩凝りと四十肩・五十肩は別物だが深く関わっているため、肩が痛くて腕が上がらなくても肩凝りと勘違いしている人も多く、肩凝りで医療機関を受診するのは気が引けると思って放置してしまうことが多い。
対処法を間違えると肩が硬くなって動かなくなる。
・[専業主婦Aさんの事例]:『~~中略~~ ところが、痛みは取れたものの、ずっと肩を動かさずにいたことで硬くなり、腕が上がりづらくなってしまったのです。洗髪やドライヤーをかけたり、エプロンを後ろで結ぶことができないなど、日常生活動作(ADL)に難儀するようになりました。それでも、五十肩がまだ完全には治っていないからだと思い込み、回復すれば腕が上がるようになると信じて、無理に動かして再発しないようにと不自由な生活を続けていました。
そんな生活が1年半ほど続いた頃、一向に良くなる気配がなく、むしろ肩が固まって完全に動かなくなったため、さすがに「これはおかしい」と感じて来院されました。
Aさんの話から、罹患期間が2年近くに及ぶことからMRIを撮って確認したところ、骨には異常がなく、確かに五十肩ではありました。しかし、拘縮を起こしている状態で、いわば五十肩の終末像といえる状態ですので、もはやリハビリだけで治すのは困難となり、年齢的なことを考えると手術をしたほうが良いとお勧めしました。
人生80年の時代ですから、Aさんの人生もまだ30年以上あります。残りの人生を有意義に過ごすためにも、ここは手術を受けるのがベストと考えたAさんは、手術を受けることにしたのです。
幸い、Aさんの場合は内視鏡による手術で済みましたので比較的負担も少なく、その後もリハビリのために通院し、半年後には肩の柔軟性が回復して腕が上がるようになりました。
Aさんは、ただの五十肩だと軽く見て対処法を間違えたために、手術をしなければならない事態にまで進んでしまいました。』
自然には治らない四十肩・五十肩がある
・四十肩・五十肩は、年齢に関係なく仕事の内容や生活習慣によっては、誰でも起こり得る疾患である。自然に治る人がいる一方、Aさんのように初期の段階で適切な治療を行なわないと、肩が固まって動かなくなるケースがある。
自然には治らない四十肩・五十肩には、腱板が部分的あるいは完全に断裂しているために、痛みが取れないケースがある。これはX線画像では軟部組織である腱の状態を正しく判断するのが難しいためである。従って、痛みが強い場合はMRI検査の実施が望ましい。また、腱板が損傷する原因の中には、四十肩・五十肩において、肩を動かさないと硬くなってしまうからと、痛みが残っているのに無理な運動を続けたことで症状が悪化し、ついには腱板が切れてしまうこともある。
肩関節の専門医は意外と少ない
・当院(麻生総合病院)には肩の痛みを訴えて受診する人が年間約1200名、その1割が腱板断裂である。罹患期間も2年以上という人が多い。
・日本肩関節学会に所属している肩関節の専門医は全国で1600人しかいない。
専門医でなかったり、MRI装置を持っていない場合はX線画像だけの判断となるため、腱板損傷を発見できず、通常の四十肩・五十肩と診断されることもある。

四十肩五十肩では、特に肩があがらない症例(広範囲腱板断裂)に対してはリバース型人工肩関節置換術という最新の手術も行なっています。』

『肩関節に関する基礎および臨床研究の発表、連絡、提携及び研究の促進をはかり肩関節医学の進歩普及に貢献し、もって人類の福祉に寄与することを目的とする。』 

第2章 知らないでは済まされない「肩」の基礎知識
頼りない肩関節を補強しているインナーマッスル
・肩関節は広い可動域がもつが、骨格による支えはすくなく安定性に問題がある。そのため、その問題を回避するために活躍しているのが筋肉や腱、靭帯、関節包などの軟部組織である。深層にあって肩関節を安定させると共に、微妙な動きをコントロールしているのがインナーマッスルの棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋である。これらの筋肉の両端から出ている「腱(結合組織)」は、他の部分の腱よりも長く、板状をしているため腱板といわれているが、これらの4つの筋群は上腕骨を取り巻いているため、「ローテーターカフ(回旋筋腱板)」とも呼ばれている。

 

画像出展:「人体の正常構造と機能」

肩甲骨を前(腹側)から補強する「肩甲下筋」、後ろ(背側)から補強する「棘下筋」と「小円筋」、前後から補強する「棘上筋」のローテーターカフに「三角筋」を加えた5つの筋が治療の基本です。

画像出展:「人体の正常構造と機能」

加齢に伴い腱板機能が劣化したり、姿勢や生活習慣の影響で肩甲骨機能が低下すると、肩関節の中が不安定になり、ちょっとした動作が関節包を刺激し傷つけ、炎症を起こすことがある。この状態がいわゆる四十肩・五十肩の痛みの強い時期になる。炎症が治まると傷ついた関節包は縮こまった状態で治癒するが、この時期が四十肩・五十肩の動かなくなった時期(拘縮期)になる。また、加齢によって皮膚の弾力性が失われ、たるみやシワができるように、肩の軟部組織も年齢とともに弱くなって傷つきやすくなる。ちょっとした刺激でも傷つき、狭い空間で炎症を起こして腫れる。そうなると、痛くて腕を上げることは困難になる。ときには弱くなったインナーマッスルが切れる、腱板断裂にいたる。
体の表面を覆っているアウターマッスル
アウターマッスルはインナーマッスルの筋群を覆って肩の強度を高めているおり、三角筋や僧帽筋などがある。
・日常生活では、肩を大きく動かす動作をすることは少ない。また、肩甲骨を支えて腕を引き上げる働きをしている僧帽筋は、腕の重さを支えるために、ある程度の力で常に収縮し緊張した状態にある。そのため血液循環が悪くなりがちであり、筋膜の癒着が起こりやすい。
四十肩・五十肩は関節包やインナーマッスルに起こる炎症であり、肩凝りはアウターマッスルに起こる血行不良と筋膜の癒着といえる。
筋肉が緊張するとなぜ血流が悪くなるか
筋線維が緊張すると、筋線維の1本1本が太く短くなって筋線維を包んでいる筋膜を圧迫し、筋肉はパンパンになる。このため筋膜の中では筋線維どうしの押し合いとなるが、その圧力で押しつぶされるのは筋線維の中を通っている血管や神経である。そのために血流が悪くなり筋肉は硬くなる。特に静脈の血管は力強い動脈とは異なり柔らかいパイプである。そのため、筋線維の圧力で簡単に押しつぶされ、うっ血を起こす。しかしながら、筋肉が緊張と弛緩を繰り返す場合においては、この圧迫と解放の連続は静脈に流れる血液を心臓に送り返す働きとなる。もし、緊張だけが一方的に続くと、新鮮な血液を送ることも、老廃物を回収することも困難になる。
炎症が起こるとなぜ痛みが生じるのか
・炎症が起こっている肩周囲には、免疫に関わるたくさんの細胞が集まっている。四十肩・五十肩の場合は、病原体が原因で起こる疾患ではないが、炎症が起きているところには異変を察知した免疫細胞が集まっており、治そうと働いている。この免疫に関わる細胞には色々な種類があり、それぞれに役割が異なる。中には、炎症や発熱を促す働きをしている細胞や、痛みを誘発する物質(発痛物質)を分泌させる細胞もある。その一方では、炎症や痛みに関わる物質を中和し、鎮静化させる働きを持った細胞もある。炎症が起きて痛いときには、それに関わる細胞が優位に働いており、炎症が治まり痛みが和らいできたときには鎮静化させる細胞が活発に働いているのである。つまり、炎症は一種の防御反応であり、治る過程で起こる現象ともいえる。

付記1「臨床家のためのトリガーポイントアプローチ」

トリガーポイントを広められた黒岩先生の著書である「臨床家のためのトリガーポイントアプローチ」の中に五十肩の治療に関する記述がありましたので、一部をご紹介させて頂きます。

 

著書:黒岩共一

出版:医道の日本社

・五十肩は、治療一回目に劇的改善が得られることがまれな難しい症状である。試行錯誤的刺鍼を繰り返した結果、治りにくい理由として言えることは、大量の責任トリガーポイントの広範囲な分布である。責任トリガーポイントの形成頻度の高い筋は三角筋、肩甲下筋であるが、慢性化・重症化して来院した患者であれば、肩甲間部、肩甲帯(特に腋窩後壁を走行する回旋筋群)、上肢、さらには前胸部の筋にも処置の必要な責任トリガーポイントが認められる。
五十肩の治療で最も重要なことは肩以上に頚と背中、特に大椎近傍の夾脊穴などの刺入である。これは夜間痛がある場合は必須である。(「大椎近傍の夾脊穴」とは、第7頚椎棘突起と第1胸椎棘突起間にあるのが大椎というツボですので、このツボの上[頚]と下[背中]にも刺鍼するということです)
五十肩で一番多いのは、自発性に肩の前方が痛むタイプである。腕を挙げたり(屈曲・外転)、内旋しても痛む、すなわち運動痛もある。増悪すれば夜間痛も発現し苦しむことになる。
本来はこの前部の痛みが三角筋トリガーポイントによるものか棘下筋からの関連痛かを鑑別する必要があるが、現実的にこの作業は非常に難しいため、臨床では拘らない。実際は、まず棘下筋を徹底的に攻めて棘下筋トリガーポイントを探すことである。そのためには、肩甲骨外縁とほぼ平行に内下方外上方に走る索状硬結と、その内側にある500円硬貨位の円盤状硬結を丁寧に触擦する。次に肩甲棘の外1/3あたり下縁から、三角筋粗面に向かって走る三角筋後部線維中の硬結とその中のトリガーポイントを検索する。この2つの硬結部のトリガーポイントに刺鍼して、肩の前の痛みが再現されたら、三角筋の後部線維、棘下筋を中心に治療する。もし、関連痛が起こらなかったり、関連痛が肩前面に放散しない場合には、三角筋の前部線維と肩甲下筋形成トリガーポイントを疑う必要がある。

 

最も多い、肩の前方が痛むタイプに関して、施術に迷ったならば、まず棘下筋に注目することを黒岩先生は推奨されています。

画像出展:「臨床家のためのトリガーポイントアプローチ」

付記2: fasciaリリース治療 (ブログ参照:「エコーガイド下fasciaリリース」)

注)当院ではエコー(超音波診断装置)を利用した治療は行っておりません。
Fascia(ファシア)とは、線維性結合組織の総称であり。皮膚、皮下組織、筋膜、腱、靭帯、脂肪体、腹膜、髄膜、骨膜すべてが含まれる。とされています。そして、fasciaリリース治療は原因となっている癒着部位に働きかけ解放するというものです。
 

 

画像出展:「Fasciaリリースの基本と臨床」

例えば、四十肩・五十肩は関節包周囲での癒着は可動域に制限をもたらしますが、それは上図のように筋膜どうしだけでなく、筋膜と骨膜、筋膜と浅筋膜(皮下組織)、腱と骨膜など様々な組織間で癒着が生じる可能性があります。 

エコーで画像を確認しながら鍼を使ってfasciaリリースを行っている先進的な鍼灸院はすでにありますが、より効果的な処置は、医師による注射(生理食塩水など)を用いる方法です。 

鍼はGrade2、注射はGrade3となっています。  画像出展:「Fasciaリリースの基本と臨床

下の写真は棘下筋に対するfasciaリリースを行っている様子です。いずれも「Fasciaリリースの基本と臨床」の画像です。クリックすると拡大されます。


課題は「fasciaリリース」を行っている整形外科がまだまだ極めて少ないことです。
埼玉県では羽生総合病院の和漢診療科などで行われています。以前からfasciaリリースに関心が高かったこともあり、疲れがたまってくると不穏なギックリ腰対策のため、昨年12月、約1時間の東北道をドライブし和漢診療科で治療を受けてきました。患部が腰部のため、残念ながらエコーに映し出された自分自身の画像を見ることはできませんでしたが、刺針時の痛みはほとんど無く、注射液が注入される感覚を体験できました。その後4ヵ月、気になるレベルの不穏な状態は発生していません。

『腰痛、膝痛、五十肩などの痛みに対して、最新の治療である「筋膜注射」や仙腸関節ブロックを行っている。』

なお、「fascia」と「トリガーポイント」をどう位置づけて理解したら良いのかについては、「Fasciaリリースの基本と臨床」の中で次のような説明がされています。

『トリガーポイントはあくまで生理学的に定義された用語(過敏となった侵害受容器)であり、治療“部位”検索としての解剖学的な位置を示す用語としては適切ではない。トリガーポイントが存在する場所は基本的にfasciaであると想定しているため、治療部位検索の上でトリガーポイントという用語は本書では用いていない。さらに、fasciaの異常(例:炎症性、mechanically-insensitive afferentsによる機械的痛覚過敏、滑走性・伸張性障害)による症状を包括するための概念としてもトリガーポイントだけでは不十分である。』

腸内フローラ(腸内細菌叢)

腸内フローラと腸内細菌叢は同じものですが、「細菌叢」とは「多種多様な細菌の集まり」ということです。
「専門学校時代に習ったかなぁ?」というのが感想でした。そこで、久々に生理学の教科書を広げたところ、次のような内容が別々に掲載されていたのを確認できました。
1.大腸内の消化と吸収―腸内細菌
大腸内には、大腸菌をはじめとして多数の細菌が常在している。腸内細菌は小腸で消化しきれなかったものを分解する。食物線維は腸内細菌の働きにより発酵されて、酪酸・酢酸やCO2、H2、メタンなどのガスを発生する。アミノ酸は腸内細菌によりインドール、スカトールなどを生成し、糞便臭の原因となる。
2.生体の防衛機構に働く組織と因子―生体表面のバリア
皮膚や粘膜表面には、病原性のない常在菌が細菌叢を形成しており、病原菌が生育しづらい環境に保たれている。

 

絵もありました。腸のところにも「常在菌の細菌叢」とありますが、やはり学んだ記憶がありません。

画像出展:「第2版 生理学」

一方、「人体の正常構造と機能」でも同じように調べてみたところ、次のような記述がありました。
腸内の常在細菌叢は、消化管粘膜免疫系の維持と制御に深く関っている。
これを見て、「腸内細菌」と「消化管粘膜免疫系」のそれぞれの働きを把握できていないこと。あやふやな知識がぐちゃぐちゃになっていることが分かりました。

消化管粘膜免疫系(腸管免疫系)について、ネット検索すると「ライフサイエンス 領域融合レビュー」という学術サイトの中に関連する記事がありました。専門的な内容ですが、その記事の「要約」の部分をご紹介させて頂きます。なお、「ライフサイエンス 領域融合レビューは、大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 ライフサイエンス統合データベースセンター から発信・公開される日本語コンテンツのひとつ」とのことです。
腸内細菌と腸管免疫  
要約:『消化管はユニークな免疫系を構築している。そこでは、強い炎症活性をもつ免疫細胞と同時に抑制能の強い免疫細胞がバランスよく生み出されている。これは、消化管がさまざまな微生物の侵入という危険につねにさらされているのと同時に、日常的に接する無害な食物や腸内フローラに対しては不必要に免疫応答しないよう制御される必要があるためである。こうしたバランスよく制御された消化管免疫系の構築において、腸内フローラが重要なはたらきをしていることが徐々に明らかになってきている。腸内フローラを構成する個々の細菌種は、それぞれ異なる様式により消化管免疫系に影響をあたえる。たとえば、セグメント細菌とよばれる消化管に常在する細菌はマウスの小腸の粘膜固有層においてTh17細胞の分化を強力に誘導する。一方で、クロストリジアに属する消化管に常在する細菌は制御性T細胞の数を増加させその機能を高める。そして、腸内フローラの細菌種の構成の異常は免疫の異常へとつながり、さまざまな疾患を誘発する。ここでは,腸内細菌に影響をうけて構築されているユニークな消化管免疫系について紹介する。』

今回、勉強のために参考にさせて頂いた本はこちらです。

 

著者:藤田紘一郎

出版:ワニブックス

「はじめに」に続いて、目次でもある「30の方法」をご紹介しています。その後、特にブログに残しておきたい要点を書き出しています。なお、目次で太字になっているところが、それぞれの要点の元になった「方法」です。

 

はじめに
『わずか数年の間に、腸内細菌をとりまく環境は激変しました。近年の遺伝子研究とコンピュータの発達を受けて、腸内細菌の大規模な遺伝子解析が行われたことが一つのきっかけとなっています。
以前は、腸内細菌の研究は、培養によって種類を特定する方法しかありませんでした。このとき、腸内細菌の数は500種類、100兆個と推定されていました。ところが、遺伝子解析によって、腸内細菌は3万種、1000兆個もいるとわかってきました。
また、かつては「善玉菌が腸によいことをして、悪玉菌が悪いことをする」と単純に語られていた腸の世界が、実は非常に複雑であり、体と心の状態を支配するほどの影響力を持っていることが明らかになってきたのです。

その影響力とは、私たち人間が感じているよりもすさまじいものです。健康も病気も腸からつくり出されるといっても過言ではないほどです。腸内細菌の乱れが起こす病気は、風邪や食中毒などの感染症にとどまらず、がんや肥満、動脈硬化症、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞などの生活習慣病、認知症、うつ病、アレルギー疾患、自己免疫疾患にまで及んでいるのです。しかも、最近の研究では、自閉症などの発達障害や、パーキンソン病にまで関与している可能性が示されています。(以下省略)』

1.私たちの腸にすむ「もうひとりの自分」を意識せよ
2.あなたにはあなただけの腸内細菌叢があることを知ろう
3.病原体を退治する“免疫の武器”が腸内細菌の選別を行っている
4.腸内フローラは数日あれば変わる!生かすも枯らすも毎日の生活しだい
5.細菌を殺しては健康になれない!おおらかにつきあう気持こそ「菌活」「腸活」の基本
6.人類は細菌のおかげで立派な脳を持てた。うぬぼれてはいけない
7.がんやアレルギー、うつ病は人類の衰退を示す「退化病」
8.納豆な土壌菌の塊。毎日食べておけば腸内フローラも男性力も衰えない
9.食物繊維を食べていると、腸内細菌が善玉物質をつくり出す
10.「おデブ菌」をおとなしくさせれば、肥満は治る
11.食の好みは、腸内細菌に操られている。「酢玉ネギ」で腸内環境の改善を
12.食物繊維をエサにしていれば悪玉菌は悪さをしない
13.除菌活動に熱心になってくると感染症や食中毒にかかりやすくなる
14.免疫システムは腸内細菌にコントロールされている
15.土壌菌は食べなければいけない。ピロリ菌は除菌してはいけない。
16.酵素食品をとっても体内の酵素は増えない。腸内細菌が多くの消化酵素をつくり出す
17.サプリメントを飲んでも腸内細菌が働かなければビタミンは得られない
18.腸内細菌を増やし、小麦粉・牛乳を遠ざける食事療法で自閉症が改善される可能性
19.腸を鍛えればうつ病はよくなる!人の幸福感をつくるのは腸内細菌だ
20.イライラや不安、カッとなりやすい心は、汚れた腸からつくられる
21.認知症は「腸内細菌」と「水」で予防できる
22.腸にすむ「マイ乳酸菌」はオリゴ糖で増やせる
23.ヨーグルトは、菌が生きたまま腸に届かなくてもよい
24.医者に金を払うよりも味噌屋に払え
25.「白い炭水化物」は腸内細菌を疲れさせる
26.病気にならない体づくりには肉や油も必要だ
27.保存料、食品添加物、抗生物質は腸内細菌を減らし免疫力を低下させる
28.冷凍機キノコ、ニンニク酢、昆布酢で活性酸素の害を消す
29.腸に開いた穴を塞げば大人の食物アレルギーはよくなる
30.日本人の腸内フローラは世界で最低水準。毎日の大便チェックを状態改善に役立てよう

おわりに ~笑う者の腸には福来る~

1.私たちの腸にすむ「もうひとりの自分」を意識せよ
・腸内細菌は約2kg、腸内の壁にくっついている。
・米国では2007年から1億5000万ドル以上と5年間の歳月をかけ、国立衛生研究所が「ヒト・マイクロバイオーム・プロジェクト」を実行した。腸内細菌一つ一つのDNA配列の全般にわたる解読を目指した。マイクロバイオームとは「細菌叢」のことで、微生物の生態系を意味する。

・腸内細菌から見れば、人間は「宿主」になる。宿主とは寄生生物に寄生される側の生物のこと。私たちと腸内細菌は共生関係にある。 
・善玉菌と呼ばれる菌だけが体に必要なのではなく、悪玉菌も日和見菌もとても大事な働きを担っている。
・微生物の世界は壮大で複雑なため、有用なものを選び、不要なものは排除する、という選別を宿主ができるものではない。

2.あなたにはあなただけの腸内細菌叢があることを知ろう
・一卵性双生児や親子であっても、両者の類似性はさほど高くない。
・人間の遺伝子は20,000~25,000個。腸内細菌の遺伝子数は、3,300,000個にも上る。
生後わずか1年間のうちに、生涯にわたる腸内細菌の組成は決定づけられてしまう。母親の胎内は完全なる無菌状態。菌の洗礼は産道を通る時、そして外界に産み落とされた瞬間から、赤ちゃんは膨大な細菌を浴び、腸や皮膚、気道などで細菌たちが繁殖していくことになる。生後1年間で、赤ちゃんはまるでスポンジのように細菌を取り込んでいく。
・赤ちゃんがなんでもなめたがるのは、多種多様な細菌をとり込んで立派な腸内細菌叢をつくろうとする本能である。

3.病原体を退治する“免疫の武器”が腸内細菌の選別を行っている
・免疫の主な働きは、「感染からの防衛」「健康の維持と増進」「老化と病気の予防」。その免疫力のおよそ70%を腸がつくっている。
・腸が人体の免疫の大半を担うのは、病原体が腸から侵入するからである。腸は「内なる外」である。人の消化管は口から肛門まで9メートルにも及ぶ一本の管になっており、腸には多くの免疫組織が集まるようになった。

この絵をご覧になると、中央の消化管が「内なる外」(体内にあるようで、実は体の外側、皮膚と同じ位置づけ)であることがご理解いただけると思います。

画像出展:「イラスト解剖学」

・腸管の免疫では「自己」と「非自己」がたえず識別されている。食べたり飲んだりしたものも、腸にとっては外から侵入してきた非自己である。そこで、腸は食べたものを分解してブドウ糖やアミノ酸、脂肪酸などの最小粒子にし、非自己物質としての機能を失わせる。これが腸の行う「消化」の働きである。消化されたものは、腸管の表面を覆う上皮細胞から体内に吸収される。
・腸の上皮細胞の表面には粘液がある。この粘液には、消化された栄養素にまぎれて病原体が体内に侵入しないように殺菌物質やウィルスを不活化する物質が含まれている。また、「IgA抗体」という免疫物質も大量に存在している。
・抗体とは、特定の非自己物質にくっついて、その異物を排除する分子のことである。つまり、異物を退治するための武器だと考えるとよいだろう。私たちの免疫は、どんな異物に対してもぴったりの抗体をつくり出すことができるのである。
・これまで、IgA抗体は腸粘膜の中にあって、侵入してくる病原体を殺す物質と知られてきた。しかし、実際には腸内細菌の選別にも働くことが明らかにされた。
・IgA抗体は、腸の粘液でつくられる。また、母乳の中にも含まれる。とりわけ母乳が初めて出す初乳には、たくさんのIgA抗体がある。初乳の重要性は昔から伝えられていることであるが、それは生後まもない時期の感染症を防ぐためといわれてきた。ところが、初乳は細菌を腸にとり込むために必要だったのである。

4.腸内フローラは数日あれば変わる!生かすも枯らすも毎日の生活しだい
・体は自分ひとりだけのものではなく、1000兆個の腸内細菌たちと共有している。成人の体はおよそ60兆個の細胞から構成されているが、私たちの腸には、人体の全細胞より16倍以上もの数の細菌がすみついている。
・食生活が乱れて腸の状態が悪ければ腸内フローラは荒れる。体に悪さをする細菌が爆発的に増えてしまえば、優良な菌たちはとたんに数を減らす。ただし、腸内フローラには野生の花畑と決定的に違う点がある。腸内バランスはひとたび崩れても、野生の花畑ほど再生に多くの時を必要とはしない。細菌の増殖力は植物よりずっと強いからである。つまり、宿主が腸内フローラの乱れをいち早く察知して適正な努力を行えば、わずか数日間のうちに美しく整えられるのである。
消化のしくみは、はじめから腸内細菌との共生ありきで組み立てられている。腸だけの消化能力では、体が欲するように栄養素をとり入れることはできない。
・便のうち食べカスは5%、60%が水分で、20%が腸内細菌とその死骸、15%は腸粘膜細胞の死骸である。

免疫機能も腸内細菌との共同作業によって初めて成り立つものである。腸にたくさんの細菌がすむのは、病原体の侵入を防ぐためでもあるが、腸内細菌は縄張り争いをしながら腸の中に自分の生息場所を守っている。外から新たな細菌が侵入してくると、いっせいに攻撃してその排除に働くのである。しかも、腸内細菌は、腸にいる免疫細胞を活性化する力もある。つまり、免疫システムだけでは十分な免疫力を発揮できず、免疫力を高めるには腸内細菌を増やすことが大事なのである。

6.人類は細菌のおかげで立派な脳を持てた。うぬぼれてはいけない
・脳も腸から分化した臓器である。腸にはもともとニューロンなどの神経細胞が存在していた。また、心の状態を築くセロトニンやドーパミンなどは、脳内で分泌される神経伝達物質と思われているが、その起源は腸にある。腸内細菌が腸の多くの働きを肩代わりする中で、腸内細菌は仲間どうしでの情報伝達が必要になっていった。セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質は、腸内細菌間の交流のために必然的に生まれたものだったのである。たとえば、「ビタミンを生成しましょう」「外敵が来たぞー!」などといった情報の伝達を、神経伝達物質を介して行っていたのである。

12.食物繊維をエサにしていれば悪玉菌は悪さをしない
・腸内細菌たちの大好物は水溶性の食物繊維

14.免疫システムは腸内細菌にコントロールされている
・マクロファージは「自己」と「非自己」を見極める力の特にたけている。

15.土壌菌は食べなければいけない。ピロリ菌は除菌してはいけない。
免疫力が低下すると、システムの統制をとれなくなり、免疫細胞は何が本当の「非自己」なのか見極められなくなる。
・ピロリ菌は日和見菌である。宿主の免疫力がしっかり働いている時には体に良い働きをする共生菌である。ピロリ菌が悪さを始めるのは、宿主がストレス過剰の状態にあって免疫力が低下しているときである。こうなると、ピロリ菌は胃を荒らす方に働いてしまう。細菌とはそもそもそういうものである。細菌自身は、自分が宿主にとって悪玉か善玉かなど考えていない。環境に応じて自分の居心地の良い環境を築こうと、せっせと働いているだけである。

17.サプリメントを飲んでも腸内細菌が働かなければビタミンは得られない
・私たちの腸はビタミン類を合成する機能を持っていない。食べたものからビタミン類を合成するのも腸内細菌たちの働きである。
・腸が元気ならば体が若返る理由の一つは、腸内細菌のビタミン合成力に隠されていたのである。
・ホルモンの一部も腸内免疫がつくっている。消化管ホルモンのセクレチン、コレシストキニン、インクレチンなど。
・強力な抗がん作用をもつエクオールも腸内細菌が大豆イソフラボンからつくり出す成分。ただし、このエクオールをつくれるのは、イソフラボンと相性のよい腸内細菌をもった人だけ。

 

画像出展:「腸内細菌を味方につける30の方法」

18.腸内細菌を増やし、小麦粉・牛乳を遠ざける食事療法で自閉症が改善される可能性
・自閉症の子どもは、そうでない子と比べて、腸内細菌の多様性が乏しいという報告がされている。

19.腸を鍛えればうつ病はよくなる!人の幸福感をつくるのは腸内細菌だ
・腸内フローラの組成は、生後だいたい1年間で決まってしまうが、腸にすみついた細菌たちの数はたえず変動している。たとえ乳児になんらかの問題により腸内フローラの多様性を十分に築けなかったとしても、今ある腸内細菌を増やす生活を送ることで、腸内環境は変わってくる。そうした変動が、脳や心の状態にまで影響を与えることがわかってきた。
・セロトニンとドーパミンはあわせて「幸せホルモン」と呼ばれるが、その原料となる前駆体は、実は腸でつくられている。そのため、腸内環境が悪化すると、幸せホルモンの分泌量は著しく減ってしまう。腸の健康は脳の健康であり、脳の健康は腸の健康である。生物にとってもっとも重要な臓器である腸と脳は、強く影響を及ぼしあいながら動いている。そうした両者の関係を「脳腸相関」という。
・トリプトファンからセロトニンの前駆体がつくられる際は、ビタミンB6が使われる。また、ドーパミンはフェニルアラニンという必須アミノ酸からドーパミンの前駆体になるまで葉酸やナイアシン、ビタミンB6が必要とされる。
・腸内細菌たちがつくり出した幸せホルモンの前駆体を、脳へと送り出しているのも腸内細菌である。

20.イライラや不安、カッとなりやすい心は、汚れた腸からつくられる
・九州大学の須藤信行教授らのグループは、系統的な研究により、人間の体は有害なストレスを受けたときに、「視床下部—下垂体—副腎」という流れを介して腸内細菌に悪影響を与えることを明らかにしている。有害なストレスを脳が察知すると、消化管の局所で「カテコラミン」が放出され、腸内フローラに直接的な影響を与えていることがわかったのである。カテコラミンとは、アドレナリンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の総称である。これらはストレスホルモンとも呼ばれており、ストレスを感じると発生し、動悸や血圧の上昇、発汗、血糖の上昇、覚醒などの不安な変化を体に与える。須藤教授の研究では、このカテコラミンが腸内で発生すると、大腸菌の増殖が進み、腸管局所での病原性が高まることが認められた。カテコラミンが腸内細菌の病原性を強めさせる作用は、大腸菌以外の細菌でも観察されている。このように、不安や緊張によるストレスは、腸内細菌のバランスを著しく乱す。その乱れた腸内環境が脳へ情報を送ると、脳内ではストレスホルモンがつくり出される一方、セロトニンやドーパミンなどの幸せホルモンの量を減少させる。それによって脳が不安と緊張を増強させるという循環ができあがっているのである。

21.認知症は「腸内細菌」と「水」で予防できる
・人間の脳は、活性酸素の害を非常に受けやすい臓器である。人体を形づくる成分のうち、もっとも酸化しやすいのは脂質である。人間の脳は、約80%が水であるが、水分を除いた部分のうち、約60%が脂質からできている。その脂質が活性酸素に過剰にさらされ続けると、褐色の色素沈着を起こす。これが脳内で蓄積されてくると、「アミロイドβ」や「タウタンパク」などのゴミタンパクが大量につくり出され、さらに活性酸素を過剰に発生させるようになる。こうなってくると、脳の神経細胞が変性し、萎縮するようになるのである。つまり、活性酸素の過剰発生を防ぐことが最大の予防法といえる。

22.腸にすむ「マイ乳酸菌」はオリゴ糖で増やせる
・最近の研究により、腸にはその人特有の乳酸菌がすみついていることが明らかになった。

24.医者に金を払うよりも味噌屋に払え
・匂いが強いというのは、発酵力が高くて、菌が元気だという表れである。たくさんの種類の細菌が数多くいる発酵食品のほうが、腸内フローラの活性化には効果的である。

25.「白い炭水化物」は腸内細菌を疲れさせる
・たしかに白米や、白い小麦粉を使かったパンやうどんなどの麺類は、おいしいものである。しかし、そのおいしさは、腸が感じているのではなく、脳が感じるものである。脳がブドウ糖をとくに必要とするのは、とっさの判断やストレス時の反応など、瞬発的な活動をするときである。現代社会のようにストレスフルな状況にあると、脳はたえずブドウ糖を要求することになる。体が疲れているときにもブドウ糖を欲する。こうしたときにブドウ糖が入ってくるから、脳は「おししい」と感じるのである。ところが腸は白い炭水化物が大量に入ってくるのを嫌がる。

・小腸の直接の栄養源はグルタミン酸というアミノ酸の一種である。昆布やチーズ、緑茶、シイタケ、トマト、魚貝類に豊富な「うま味」成分である。

・大腸の栄養源は、腸内細菌が食物繊維を発酵させてつくる短鎖脂肪酸である。

・小腸も大腸も、白い炭水化物を必要としていないのである。それにもかかわらず、白い炭水化物が大量に入ってくると、腸はまっさきに消化吸収のために働かなければならない。脳がブドウ糖を執拗に欲するからである。

27.保存料、食品添加物、抗生物質は腸内細菌を減らし免疫力を低下させる
腸内細菌に特に悪影響を与える化学物質は防腐剤と抗生物質である。
・体に生じる風邪の症状は、免疫細胞が病原体を排除する際に起こる炎症である。

28.冷凍機キノコ、ニンニク酢、昆布酢で活性酸素の害を消す
過剰な活性酸素は腸内フローラにもダメージを与え、細菌数を大きく減らしてしまう。

29.腸に開いた穴を塞げば大人の食物アレルギーはよくなる
・腸内フローラが“いい子”に育てば、健康を増進する物質をどんどんつくり出すとともに、免疫力を高めてくれる。
・腸の消化吸収能力を超えて食べることも、腸内細菌に混乱を起こす元凶である。
・「人+腸内細菌」で人間である。

おわりに ~笑う者の腸には福来る~
腸内フローラを元気にする生活習慣
1.朝起きたら外に出て深呼吸をする
2.疲れない程度の適度な運動をする(朝のラジオ体操でもOK)
3.ぬるめのお風呂にゆっくり浸かって腸を温める
4.夜更かしをせず、寝室は真っ暗にして寝る
5.休日には自然の中に出かけていく
『腸内細菌によい生活習慣とは、宿主である私たちにとって楽しいこととわかります。楽しいという気持ちが腸内環境を整えてくれるのです。腸内細菌を人生の味方につけてください。より楽しく充実した人生を築くためのベストパートナーは、あなたのおなかの中にいるのです。

花粉症と自律神経

「適応疾患」内の「花粉症」でも触れているのですが、私の花粉症は30年以上前、会社の集合寮に入って3年目の1985年だったと思います。同期のS君がティッシュを持って歩いているのを見て、大笑いしていたら自分にも舞い降りたという予期せぬ出来事でした。長い間お世話になったアゼプチンという薬は、私には合っていたようです。症状は10が2程度に抑えることができていたため、それほど困ることはありませんでした。
一方、鍼灸師になったこともあり、一昨年の2016年からお臍の周囲に刺鍼する「内ネーブル4点」という長野式の花粉症治療を自らに行っています。
治療効果はアゼプチン服用時とほぼ同等、施術回数は月1回、計3回程度の回数です。ちなみに敵はスギ・ヒノキ。「花粉よ来るならこい!」という馬鹿げた対抗心と、人体実験を兼ねるという思いから、花粉シーズン中も訪問の仕事以外はマスクをせず、部屋の窓や洗濯物のとり込みもノーケア、車の運転中も窓全開で花粉と共に生活しています。
そして、問題の今年ですが、昼間はこの2年間同様、10が2程度で困ることはなかったのですが、自宅に帰ると、特に夜になると何とかしたいレベルで症状が表れました。以前から昼に比べると夜は症状が出やすい傾向はあったのですが、今年はその度合いが強くなっていました。感覚的には5程度という感じです。5程度というのは、「症状の強さと症状が表れる頻度」の2点から「こんなもんでは」と直観的に判断した値です。なお、今シーズンの施術回数は過去2年の3倍弱、7、8回くらいになったと思います。
原因を調べてみると、スギもヒノキも昨年より飛散量が多いようなので、これが一つの要因であるたことは確かです。そして、もう一つ気になる点がありました。それは介護に伴うストレス、特に睡眠の質の問題です。睡眠時間は6時間程度なのですが、夜中に数回起こされるということもめずらしくなく、そのため、このストレスと睡眠の質の問題も、症状を悪化させている原因ではないかと考えました。
そして、それを調べるため、新しい本ではないのですが、図書館から花粉症関連の本を3冊借りてきました。これらは共著の本を含め「スギ花粉症」を命名された(論文報告は1964年)斎藤洋三先生の本です。もう1冊は「ストレスと免疫」という題名の中古本を購入しました。また、ネット検索で見つけたサイトも参考にさせて頂きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

著者:斎藤洋三

出版:主婦と生活社

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

著書:斎藤洋三、佐藤紀男

出版:少年写真新聞


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

著者:斎藤洋三、井出 武、村山貢司

出版:化学同人

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

著者:星 恵子

出版:講談社


ブログは、花粉症がおこる仕組みや自律神経との関係、制御性B細胞についても少し触れています。

1.花粉症のおこる仕組み
アレルギー反応も免疫反応も体内でのしくみは同じです。いずれも「抗原抗体反応」といわれているものです。この反応が体にとって都合のよいように働く場合を「免疫」といいます。人が病気から体を守るために欠かすことができないシステムです。

ところが、体を守るための抗原抗体反応が、からだにとって都合の悪い結果をおこすことがあります。これが「アレルギー」反応です。
「抗原」とは異物、花粉症であれば「花粉」です。一方、「抗体」とは白血球(リンパ球)の中のB細胞(他にT細胞、NK細胞がある)から産生・放出されるタンパク質です。体内に侵入した異物に結合します。タンパク質名としては免疫グロブリン(immunoglobulin) と呼ばれ、「Ig」と略されます。抗原抗体反応に関与している抗体は、IgE、IgM、IgA、IgG、IgDの5種類あるのですが、花粉症にかかわる抗体はIgEであり、それ以外のIgMIgAIgGIgDの4つの抗体は免疫として働きます。なお、無害な花粉に対してIgE抗体がつくられるのはアレルギー体質の人だけです。

 

左が【免疫】、右が【アレルギー】です。いずれも【抗原抗体反応】になります。

画像出展:「花粉症」

出版:少年写真新聞

花粉が目、鼻、口から侵入するとその粘膜に花粉がとりつき粘膜の中に溶けだします。粘膜に溶けだした抗原は、白血球の一つであるマクロファージ(食細胞)にとりこまれ、異種タンパク質の異物として認識されます。この情報がT細胞を介してB細胞に伝えられると、花粉抗原に対するIgE抗体がつくりだされます。また、IgE抗体肥満細胞と結合しやすい性質があり、肥満細胞の表面にIgE抗体が付着し蓄積されます。そして、再び侵入してきた花粉抗原IgE抗体と反応すると、細胞からアレルギー症状を起こす化学伝達物質(ヒスタミン、ロイコトリエンなど)が放出されます。
化学伝達物質であるヒスタミンやロイコトリエンは、「ケミカル・メディエーター」ともいわれるもので、これらが神経や血管を刺激することによって、花粉症のさまざまな症状が引き起こされます。まず最初にヒスタミンが働き、それから少し遅れてロイコトリエンが作用を再現します。

 

画像出展:「花粉症」

出版:少年写真新聞

花粉が目や鼻の粘膜に付着し、水分を吸収すると花粉の中から抗原が溶け出し、肥満細胞の表面に付いているIgE抗体と結合します。(下左図)
肥満細胞からアレルギー症状をおこす化学伝達物質が放出され、それが神経や血管を刺激して、症状が現れます。(下右図) 

図はいずれも、「花粉症」からの出展ですが、中央の見開き部分が見にくくなっています。(すみません)


以下は症状に着目して説明されたものになります。内容はかなり専門的です。なお、下に図を添付しました。
くしゃみの発現には、ケミカルメディエーターのヒスタミンが重要な働きをしています。ヒスタミンは鼻粘膜の知覚神経である三叉神経終末のヒスタミン受容体と結合して、求心性インパルスを脳幹のくしゃみ中枢へ伝えます。そして中枢からの遠心性インパルスは脊髄神経、舌咽神経、迷走神経、顔面神経などを介して呼吸筋、咽頭筋、顔面筋などに伝わり、爆発的な呼気としてのくしゃみが起こります。くしゃみは生理的にも異物を呼気により体外へ排除しようとする生体防御反射で、下気道(気管、気管支)の咳反射に相当します。
鼻水もヒスタミンの作用で起こります。ヒスタミンによって三叉神経終末が刺激されて、分泌中枢にインパルスが伝えられ、遠心性に分泌神経(副交感神経)に伝わり、副交感神経からのアセチルコリンの分泌を促します。このアセチルコリンが神経伝達物質となって鼻腺細胞のムスカリン受容体に作用して、鼻汁分泌を起こします。
普通の人では花粉を吸いこんでも花粉は粘液膜に付着して、上皮細胞の線毛運動でベルトコンベア式に咽頭へと送られ、痰と一緒に排出されるだけです。これに対し、花粉症の人では入ってきた花粉を早く鼻の外へ流し出そうとして多量の鼻水をだします。これも生体防御反射ですが、花粉症の人にはつらい防御反射となります。
鼻づまりはヒスタミンやロイコトリエンなどが直接に鼻粘膜血管系に作用し、海綿静脈洞の拡張によるうっ血、血管透過性亢進作用による組織の浮腫などにより、鼻粘膜が全体として腫脹することで起こります。
眼の結膜も血管系、リンパ組織に富み、涙液によって覆われています。異物が侵入すると、まばたきと涙によって洗い流しだします。鼻と同様に異物に対する防御反射機構です。結膜におけるⅠ型アレルギー反応も、鼻粘膜におけるのと同様に、結膜表層の肥満細胞での抗原抗体結合によって始まります。そして肥満細胞から遊離したヒスタミンが知覚神経である三叉神経終末を刺激してかゆみを起こし、また血管系への直接作用で結膜の充血、浮腫を起こします。涙腺からの涙液分泌もヒスタミンの作用で反射的に起こり、流涙となります。

 

画像出展:「花粉症の科学」

出版:化学同人

下の棒グラフは2004年のものですが、花粉症患者へのインターネットによるアンケートの集計結果です。

 

「のどの症状」が少ないのは意外でした。というのも、私にとって最も気になるのが、のどの症状だったからです。

画像出展:「花粉症の科学」

出版:化学同人

 

耳のかゆみ、消化不良・食欲不振などの症状が出ることもあるようです。

画像出展:「花粉症」

出版:少年写真新聞

2.花粉症と自律神経
1)花粉症と自律神経はどう関係するか
自律神経には交換神経と副交感神経があり、お互いに拮抗しながら、さまざまな身体機能を、私たちの意思とは関係なく、自律的にコントロールしています。
鼻の自律神経は、特に分泌腺と血管に分布していますが、分泌腺にきているのは、自律神経のうち副交感神経だけです。鼻にアレルギー反応が起きたとき、症状を出現させる役割を果たします。まず、ヒスタミンが鼻の知覚神経を刺激すると、その刺激は自律神経の中枢を経由して副交感神経に伝わります。そして、副交感神経が緊張することによって、鼻の分泌腺から鼻水が出るようになるのです。
知覚神経は粘膜や皮膚などにも分布しています。そこに冷たい空気が触れたりすると、その刺激が反射路に伝わって、やはり鼻水やくしゃみが出るようになります。
血管には交感神経と副交感神経が分布しています。鼻でアレルギー症状が起きると、交感神経が働きにくくなり、逆に副交感神経が緊張して、鼻粘膜の血管は拡張します。それによって、うっ血が起き、鼻づまりの原因となるのです。
2)全身の自律神経のバランスも症状に影響する
自律神経のバランスは昼夜で逆転し、活動的な昼間は交感神経が優位に働き、安静にしている夜間の睡眠時は副交感神経が優位になります。夜半に鼻づまりが起きやすくなかなか解消しないのは、交感神経が働きにくくなっているために鼻粘膜の血管が拡張し、鼻にうっ血が起きているからです。
また、花粉症など鼻のアレルギーを持っている人は、朝の起きがけに、くしゃみと鼻水が発作的に起こることがあります。モーニング・アタックと呼ばれる症状です。これはアレルギー反応ではなく、夜間の副交感神経の状態から、昼間の交感神経優位の状態に変わるとき、自律神経のバランスがくずれるために起ります。
3)体の反射現象
くしゃみ、鼻水、鼻づまり、涙などは、人間の体にそなわった反射現象だといえます。しかし、これがむやみに出ても困るので、さらに上位中枢の抑制機構が設けられています。誰でも年をとると涙もろくなり、鼻水などが出やすくなりますが、それは上位中枢からの抑制機構がゆるんでしまうためだと考えられます。
花粉症の症状で困っているときでも、精神的に非常に緊張すると、症状が抑えられることがあります。たとえば、花粉症の俳優さんが、舞台の上ではくしゃみ一つしないのに、幕が降りたとたん一気に症状がぶり返すというようなことがあります。アナウンサーなどテレビに出る人も同様で、出演中は症状が抑えられるといいます。

4)情動のパターンと自律神経機能の関係
 この表は現在も活用されている、山下格先生が作成されたものです。山下先生は北海道大学医学部精神医学教室第五代教授を務められ、2014年12月にご逝去されました。
ここでは「ストレスと免疫」に記述された表に関する説明分をそのままご紹介させて頂きます。

 

画像出展:「ストレスと免疫」

出版:講談社

『一番目のパターンは、驚きや恐怖、憤怒などで交感神経の機能の亢進によるものです。
第二のパターンは、持続的な不安や緊張、怒り、興奮などの情動変化で、このパターンは、情動が比較的持続するのが特徴です。たとえば、ストレスが加わると、胃酸の分泌が亢進したり、消化管の動きが活発になり、これが持続すると胃粘膜にびらんや潰瘍が形成されることがあります。
このような消化管の異常は副交感神経の機能亢進によって起こると考えられています。しかし、不安や怒りなどは交感神経の亢進によるもので、ここでは、交感神経と副交感神経系の両者の興奮が同時に起きていることになります。
三番目のパターンですが、これは一番目、二番目のパターンと、次の第四番目のパターンとの中間に位置するもので、緊張などから解放されて、休息や平安といったような気分になることを意味します。
生命を維持していくうえで、交感神経が絶えず一定の緊張を保つことは必要ですが、とりたてて危険であるとか恐怖に陥った状態でない場合には、相対的に副交感神経が優位の状態に保たれると考えられます。したがって、他のパターンに移り変わる前段階の状態として、この第三のパターンが存在することが考えられます。
第四のパターンは、失望、抑うつ、悲哀、憂愁といった情動のものです。これは交感神経、副交感神経、両者がともに抑制された状態です。
抑うつ状態や失望したときなどは、胃酸の分泌が減り、消化管の動きも弱くなり、これにともなって食べたものの通過時間も長くなります。さらに、悲しみが強くなったり悲観すると、心拍数の低下ならびに血圧の低下もみられます。』

こちらの病院では、山下先生の表に基づき、独自に調査された結果を拝見することができます。

まとめ
今回のブログは、「夜間、花粉症の症状が出てくるのは何故か」、「ストレス、特に睡眠の質は花粉症の症状悪化の原因になっているのではないか」という疑問が発端でした。そして、私なりの結論は次のようなものです。
1)夜間、花粉症の症状が出てくるのは何故か
これは、免疫機能が副交感神経で優位になるのと同様に、免疫と似て非なる「アレルギー」の花粉症も副交感神経が優位になる時、つまり表に照らし合わせれば「平安、休息」が優位になる時に症状が亢進することを意味しており、夜間や自宅でくつろいでいる時に花粉症の症状が出てくるのはこのためと考えます。
2)ストレス、特に睡眠の質は花粉症の症状悪化の原因になるのではないか
表を見ると、「持続的な不安、緊張、怒り、興奮」に関しては交感神経だけでなく、副交感神経も強く関わっていることが分かります。この事実は大きな驚きでした。介護に伴うストレスや睡眠の質の問題は「不安、イライラ、緊張」が主なものになると思いますので、表にある四つの情動に含まれます。したがって、ストレスや睡眠の質の問題は、花粉症の症状を悪化させる要因になると考えます。

なお、ストレスや睡眠が花粉症の症状に影響を与えることは、本やサイトにも出ていました。

 

こちらは、花粉症対策です。(1)は「皮膚を鍛えておく」、(2)は「運動を積極的に行う」となっています。

画像出展:「花粉症」

出版:少年写真新聞

●睡眠が不足するとホルモンのバランスが乱れ、免疫力が落ちます。免疫力が落ちると、花粉などのアレルゲンの侵入に対して体が過剰反応するのです。

●ストレスも睡眠不足と同様に免疫力を落とすため、花粉に対する体の過剰反応が起きやすくなります。

副交感神経が優位なときは、体の免疫力は上がります。しかし、副交感神経が優位な状態が長く続くと、白血球のなかのリンパ球が過剰に分泌されてしまいます。そうなると免疫が過剰になってしまい、この過剰な反応がアレルギー症状の正体です。「花粉症」などのアレルギー症状が過多に出るのは、「副交感神経が優位な状態」が続いていることが考えられます。アレルギーの原因物質をなるべく排除するだけでなく、交感神経を優位に働かせながら、副交感神経とのバランスを保つことが、「花粉症」と上手くつきあうコツといえるでしょう。

3.制御性B細胞
こちらは「ライフサイエンス領域レビュー」に掲載されていた『馬場義裕(大阪大学免疫学フロンティア研究センター 分化制御研究室).免疫反応を抑制するB細胞:制御性B細胞領域融合レビュー, 5, e002 (2016)』のご紹介となります。

『2015年でB細胞の発見からちょうど50年がたつ。抗体を産生するリンパ球として同定されたことからもわかるように、B細胞は液性免疫において中心的な役割をはたす.また、T細胞に対する抗原の提示やサイトカインの分泌により免疫反応を制御することもB細胞の重要な役目である。これらのはたらきにより、B細胞は病原体の感染に対し生体防御の一翼を担う一方で、自己免疫疾患、炎症、アレルギーの原因となったり病態を悪化させたりすることが知られている.しかし,それとは逆に,免疫反応を抑制するB細胞として制御性B細胞の存在が明らかにされ注目されている。』

付記

お臍の周囲の4ヵ所に刺鍼する「内ネーブル4点」は長野式に基くものですが、その長野潔先生の著書である「鍼灸臨床 わが三十年の軌跡 -東西両医学融合への試み-」の中に記述がありましたので、その内容をご紹介させて頂きます。
ネーブル周囲四点の刺鍼とアレルギー性疾患
『ネーブル周囲四点の刺鍼は、当院では五年間、五回に亘り研修したボストン(アメリカ)在住の松本岐子氏の発想によるものである。彼女は筆者の扁桃原病説からヒントを得た類推的発想によるネーブル周囲四点の刺鍼によって、アレルギー性疾患に対して好成績を挙げている。
筆者(長野潔先生)もこの方法を追試したところ、予想以上の成果をみることができた。この四点の刺鍼はアレルギー性疾患のみならず、自律神経の全身的調節や、諸種の痛みに対して有効であることが実証された。
この刺鍼が何故効くのか。これは筆者(長野潔先生)の、あくまでも推論の域を出ないものであるが、ひとつは、この部が門脈のうっ血の起こりやすい場所であり、この部に刺鍼をすることにより、胃、小腸、大腸、膵臓、胆のう、脾臓から栄養を持った血液を充分肝臓に送ることができるということである。このことは肝臓の賦活作用を促し、二次的に粘膜下のリンパ組織を活性化し、抗体産生を増大させることによってアレルギー性疾患に著効を奏するのではないだろうか。例えば鼻水、鼻づまり、眼瞼の痒み等刺鍼にその症状が消失してゆくことが多いからである。
事実、ネーブル周囲四点を刺鍼することによって、それまで激しかった症状が劇的に消失することが多い。』

慢性疼痛と心療内科

高齢の患者さまの中には、「この慢性疼痛は心因性なのではないか?」と思うことがたまにあります。しかしながら、心因性の疼痛にはどんな特徴や傾向があるのかなど、ほとんど理解できていなかったこともあり、軽々に心因性を原因と考えることはできませんでした。

そこで、まずは何か1冊本を読んでみようと思い、ネット検索していると、作家の夏樹静子先生がご自身の凄まじい慢性疼痛の闘病を綴った「腰痛放浪記 椅子がこわい」という本があることを知りました。「これかなぁ。」と思いつつ、さらに調べていくと、夏樹先生のその慢性疼痛を完治させた心療内科の医師、平井英人先生ご自身も本を出されていることを知りました。そして、30年以上のキャリアをお持ちであることも分かりました。こうして、『慢性疼痛―「こじれた痛み」の不思議』を購入することに決めました。

 

著者:平木英人

出版:筑摩書房

ブログでは、心因性の慢性疼痛の特徴や傾向を理解することと、心療内科がどんな診療科なのかを知ることを目的とています。内容は全て本書に従うもので、重要と思う個所を抜き出し、列挙する形式のため断片的になっています。

慢性疼痛の治療
1.一般的な痛みのメカニズム
外因性の痛み刺激(切り傷、打撲、炎症など)が侵害受容器に入ることで信号が発生し、脊髄内にある知覚神経を伝わって脊髄後角、シナプス、ニューロン、脊髄視床路を順に通って大脳皮質の視床に到達し、認識されます。痛みが脳に認識されると、それに対する反応として副腎髄質からアドレナリンが分泌され、血管の収縮筋肉の緊張が生じます。この反応で局所的な乏血が起こります。この乏血が起こると組織内の酸素が足りなくなるため、今度は内因性の発痛物質が生じます。こうなると、外因性の痛み刺激が消えても痛みを感じるようになるのです。

画像出展:「疼痛コントロールのABC」日本医師会

2.心が痛がっているとは
痛みの解明に取り組んでいる米ノースウェスタン大学(シカゴ)生理学バニア・アプカリアン教授(A. Vania Apkarian)らが行った研究で、慢性疼痛患者の脳MRIを撮影しながら痛み刺激を与えたところ、通常の痛み刺激で活性化するはずの大脳皮質の視床ではなく、思考や感情を司る前頭葉の部分が活性化するのが分かりました。特に前頭葉のなかでも前部―ストレスや不安など、ネガティブな感情を司る部分でした。
この知見に対し、1000例近い慢性疼痛患者を診療されてきた平木先生は、「通常の痛み止めが効かない」という単純な事実からしても、慢性疼痛には何かしら通常の痛みのルートとは別のルートが存在すると考えていた。よってこの研究結果は腑に落ちるものであるとお話されています。

3.螺旋階段をのぼるように
薬物治療を先行させながらその効果をみつつ、「ある時期」がきたらその患者さんに合った指導を少しずつ並行して進めていきます。この「ある時期」というのは、患者さんが訴える症状の表現が少し変わってきたころです。何かしらの手ごたえを少し感じ始めたときともいえます。
たとえば、それまで「まだ痛いです」「ちっとも変りません」「痛くて何もできません」といっていた人が、「痛みはまだありますが、少し動けています」「ときどき痛みがやわらぐときがあります」というようになるなど、痛みに対するグチが減ったとき。そうしたかすかな心の変化をとらえて、新たな技法を導入するとっかりとするのです。
また、この第一の段階では、症状には「波」があることがこの病気の特徴であると教えることも重要です。一直線に治癒に向かって進むのではなく、波打ちながら、よかったり悪かったりしながら治っていくことを教えます。「まだ治らないのか」と焦らせないということです。患者さんは、よかったり悪かったりを繰り返すと、堂々めぐりでいっこうに治療が進まないと感じるものです。
しかし、治療は螺旋階段をのぼるようなものです。本人は同じところを回っているように思えても、外で見ている第三者には、少しずつ上へと昇っていく姿がみえています。螺旋階段も、上っている本人はずいぶん上までいってから下を眺めて、初めて「高いところまできた」と実感します。
治療も同じイメージです。ずいぶん進んでから「ああ、以前よりはよくなっているなと実感するものなのです。

4.自律訓練法のコツ
心理療法には自律訓練法、交流分析、行動療法という三本柱があります。それでも効果が十分でないときに加えるかたちで用いられるのが森田療法絶食療法(後述)という特殊な技法です。
とくに慢性疼痛の患者さんに対しては、積極的に「自律訓練法」を習得するようにすすめています。
自律訓練法は世界的によく知られたリラクゼーションの技法で、17世紀にヨーロッパで試みられた催眠療法の流れを汲むものです。催眠によるトランス状態(理性が弱まっている状態)が病気を治すというこの療法は、当時盛んに脚光を浴びましたが、奇術・魔術的なイメージが強く、強い批判も浴びてそれ以上発展しませんでした。その後フロイトらが催眠療法をもう一度研究し、トランス状態が平衡を作り出すことを明らかにしていったのです。
自律訓練法は自らトランス状態に入るもので、自己催眠法とも呼ばれ、1932年にドイツの精神科医シュルツによって開発されました。日本には1952年に紹介されましたが、以来急速に広まり、いまでは心療内科の必須の技法のひとつとなっています。
ベッドに仰向けになったり椅子に座ったりした姿勢で目をつぶり、「両腕が重たい」「両腕が暖かい」・・・・・・など「公式」を繰り返し唱えるという、自己催眠による治療技法です。
自律訓練法は、スポーツ選手や一部の教育現場でも取り入れられているリラクゼーションの方法です。正しく行われれば効果絶大で、成績の向上や人間関係の改善につながります。一見、心療内科とは無関係に思える病気も改善するなど幅広い適応があります。それだけ、あらゆる病気にとって「心身相関」の存在感は大きいともいえますが。
その実際は非常に簡単で、子どもでもマスターできる方法なのですが、本や雑誌、通信販売のDVDを買って自己流でやろうとしても、なかなか身につきません。独学ではなく、きちんとした指導者のもとで習得されることが近道です。

絶食療法は入院して個室で行います。訓練された看護師らスタッフによるチーム医療も必要です。患者さんには二週間のあいだ、外部との連絡を完全に絶ち、病院内の一室に籠もっていただく必要があります。治療前の検査や治療後の経過観察を含めると、一か月半から二か月ほど入院していただくことになります。

この「絶食」という状態は、何もしないようでいて、人間の身体にすさまじいストレスを与えます。
人間の体のエネルギー代謝には、ブドウ糖を燃料とするグルコース代謝と、脂肪酸を燃料とするケトン体代謝の二通りがあります。普通に食事をする生活では、身体はグルコース代謝を中心に動いており、ケトン体代謝が働くことはありません。
絶食に入ると、糖分の摂取が途絶されるために、グルコース代謝が枯渇して、ケトン体代謝にスイッチされます。脂肪を燃焼してエネルギーとして使うのです。この状態になると人間の身体はホメオスタシス(生体恒常性:身体を環境に適応させ、状態を一定に保とうとする力)の作用でインスリンの分泌がコントロールされ、血糖値が下げ止まります。食物を摂取しなくても低血糖になることはありません。空腹は当初はありますが徐々に感じなくなります。身体の状態は維持されますが、代謝やホルモン系が変動することによって、自律神経系や免疫系にも影響が及びます。
絶食によりケトン体代謝に入った身体では、脳内でα波が著明に増加し、生体恒常性(ホメオスタシス)の状態に入ります。この状態で過ごす絶食期には、前半は自己対峙の結果としての意識の変性(変化)が、後半には心理的な退行(抵抗の放棄など)や被暗示性の亢進(医師の話を素直に受け入れるなど)が起こってきます。
この状態のなかで、患者は極限状態や嫌悪刺戟を乗り越え、新たな自信と喜びをつかみます。また、自己洞察を深め、認識が変わっていくなかで、症状が変わり始めます。そして、代謝系の変化というストレスが、情動を司る自律神経系や関連する内分泌系、免疫系の再調整を促すのです。
こうした絶食療法の奏功メカニズムは、ハーバード医科大学のジョージ・ F・カーヒル (George F. Cahill Jr.) 博士によって解明されました。

画像出展:「慢性疼痛ーこじれた痛みの不思議」

5.自分自身の心で治していける 
慢性疼痛のほとんどすべての患者さんには、共通の心理があります。まず、「自分こそが世界で一番苦しんでいる」「この痛みはいつ治るのだろうか」「なにかいい方法はないだろうか」「このままで本当に治るのだろうか」という不安と疑念です。
それから毎朝起きるたびに「今日の腰の具合はどうかな?」と、腰に意識を集めて点検します。病状に固着すればするほど、局所の神経は過敏になりますから、わずかな症状や痛みもキャッチしがちになります。その結果として「ああ、今日もまた痛い」と感じ、また、痛みにとらわれるという悪循環に陥るのです。
痛みゼロを求めれば求めるほど、「まだ治らない」「まだ残っている」「まだまだ……」という思いは強くなります。無間地獄(むけんじごく:最悪の地獄という意味)に入ってしまうのです。痛みの共存とは、言うは易く行うは難しで、本当に体得することは難しいことです。
くすりだけで治すと、効果は薬効の時間に限られます。患者さんによっては、くすりが切れるとまた痛みだすのではと、くすりが切れる前から不安がり、痛みを増幅させて、くすりの量がどんどんと多くなっていく人もいるでしょう。しかし、薬物療法と心理療法を併用して行うことによって、くすりである程度治したあとは、自分自身の心で治していけるようになるのです。

6.ステイ・アクティブ
痛いけれど痛いまま帰って、普段の生活をする。そうしているうちに痛みが減っていく―。
森田療法や絶食療法という日本古来の心理療法が示すこの結論は、実は興味深いことに、近年、米国整形外科学会(AAOS)で提唱されている最新の治療概念、「ステイ・アクティブ」とも通底するのです。
なかでも、森田療法とステイ・アクティブとは、考え方が驚くほど似ています。米国発の「ステイ・アクティブ」とは、日常生活で行動ができる状態に身体があるのなら、アクティブ(行動的)でいられるのならばそれでよい、それを第一目標にし、患者には行動させよう。痛いからといって、「鎮痛剤を飲んで安静にしておけ」という昔ながらの考え方は捨てようという発想です。
なぜ安静にしていてはダメなのでしょうか。それは、痛みの悪循環に陥らないようにするためです。
慢性疼痛の患者さんは、一般に痛みに敏感です。器質的な痛みではなく、自分の心が100倍にも1000倍にも増幅させた「修飾された痛み」に敏感なのです。その修飾された痛みにとらわれて、ちょっとした体調の変化も痛みに結びつけ、膨らませて苦しみます。
また、痛いのだから安静にしていなければと長期間寝たり起きたりの生活を続けていると、筋力低下や体力不足になり、気分転換のためにちょっとした運動や旅行をしただけで筋肉痛になりやすくなります。
さらには過食と運動不足から肥満し、実際に筋や関節に負担がかかるようになる人もいます。運動不足が、身体の神経系に存在する疼痛を抑制する機能を低下させることにもなります。廃用症候群といって、心肺機能が低下したり、骨粗鬆症が進行したり、筋を傷めやすくなったり、落ち込みやすくなるなど精神的に弱ってきたりもします。その結果、家庭不和や社会生活不適応といった状態が生まれます。これが痛みの悪循環です。
痛いのに動けば余計悪くなるではないか、という患者さんに向け、AAOS(米国整形外科学会)はとくに腰痛患者に対してこう述べています。
「腰痛を発症したばかりの急性期には運動はすべきではありませんが、すでに慢性化した痛みの場合には、運動によって全身の筋肉を鍛えることでむしろ痛みが和らぎます。さらには症状の悪化を予防することになります。急性期にも寝ているのではなく、起きて動き回りましょう。ベッドに寝て運動不足でいると回復が遅くなります」
痛くても痛いなりに動きなさい、といっているのです。
言葉や言い回し、またその意味の深さにおいて、いささかの差はありますが、このステイ・アクティブの概念と、森田療法の「あるがまま」という考え方は、根本理念で通底しているように見えるのです。

7.心因性の慢性疼痛患者の心得
平木先生が私案として、心因性の慢性疼痛患者の心得なるものを8つ挙げられています。ポイントは、頑張らない、焦らない、進み続けるということです。
①「ステイ・アクティブ」を目標とすること
②毎日の疼痛記録はやめること
③根性論で頑張ろうとしないこと
④自律訓練法をマスターすること
⑤「あるがまま」を実践すること
⑥すっかり治そうと焦らないこと
⑦治りたいがための悪あがきはしないこと
⑧薬物治療の場合、症状が改善されてきたら、できるだけ長く服薬を続け、その後徐々に減量し、早々の中止や中断をしないこと

8.悩みを相談する人の心理
多くの場合、問題をかかえている本人は、「うまい策があるわけではないし、この人が解決できるものでもない」ということを頭の隅で無意識に分かっていると思います。恋の悩みも経済的なトラブルでも家庭内の問題でも、健康問題でも、悩みの相談の心理とはそのようなものです。
分かっていながら、誰かに、どうしてもいわずにはいられない。ただ聞いてほしいというのが、悩みを訴える人の本心だと思います。つまり、相談を受けた方の役割で重要なのは、なにかもっともらしいアドバイスをしようと努力することではありません。
その人がどれほど悩んでいるか、苦しんでいるかということを、温かく共感をもって理解、共有しようという態度が、いちばん大切なのです。共感し、共有しようという態度を感じられることによって、苦しんでいる人は心の負担が軽くなります。
それが患者さん本人の自己解決力のアップにつながり、物事を客観的にみることができる余裕につながり、最終的に自分なりの解決法を見出していくのです。

9.心因性疼痛障害を疑うヒント
六か月(三か月とも)以上続く慢性の痛み
少なくとも二か所以上の医療機関での精密検査で、痛みに相当する病変が見あたらない
一般的な鎮痛剤が効かない、効きにくい
痛み方が独特で、周囲の人になかなか理解してもらえない
これまでに1000人以上の慢性疼痛患者さんを診療してきた平木先生のご経験に基づくキーワードです。慢性疼痛があって、これらの項目にあてはまるならば、一度はその原因として心因性を考えてみる必要があると思います。

心療内科
1.患者さんの多くは、「心因性」という診断に納得しない傾向がある。ここには「こんな激痛が心因であるはずがない」という強い思い込みも要因である。
2.日本で最初に心療内科という診療科を掲げたのは、九州大学医学部の池見酉次郎先生で、1963年に講座として、「心療内科」を冠するようになった。(看板を出せる標榜科として認められたのは1996年であり、30年以上先だった)
3.平木先生が一般内科に加えて心療内科を併設されたのは1983年であり、個人病院として心療内科を設置した例としては、全国でも最初に近いほうだった。
4.治ったかどうかは、患者さんの言葉のニュアンスから医師が判断する。平木先生のクリニック では痛みの評価を5点満点の六段階評価で表現してもらっている。同じ2点でも「だいぶよくなってきたけれど、まだ痛い。2点くらいは痛みがあります」という人と、「もうだいぶよくなってきて、2点くらいの痛みはあるけど何とかやっています」という人がいる。同じ2点でも前者はまだまだ時間がかかり、後者はそろそろ卒業というほどにニュアンスは異なる。患者さんの話を聞かないと点数だけでは判断できない。
5.心療内科のカルテは他の診療科とは少し異なる。カルテは日本語で書かれ、患者さんの言ったこと、医師が言ったこと、一言一句そのまま記載する。
6.診察の中でお話を聞きながら受ける第一印象がとても大事である。患者さんの痛みの背景に何があるのか。その物語が、患者さんの口から医師に話されること、そして医師と患者がともに物語への認識を深めていくことから、治療が始まっていく。
7.各種心理テストを行っている。その分析結果は病気を理解するのに参考になるが、診察で病歴を聞きながら、問診を行い、その中で性格傾向や心理状態、不安やうつなどを把握することが大切である。
8.人体図へのマーク」「痛さの程度の数値化」「痛みの言語化という患者さん自身による三段階の作業を通して、患者さんの痛みが明らかになっていく。
9.処方した薬が効かず、頑固な痛みを抱えた難治性の患者さんの場合、あらためて時間をとって面接し、生い立ちから現在までの人生、家族関係、趣味、宗教、恋愛観、結婚観、職場での問題、家庭内の問題などを、手順に従って、より詳しくうかがっていく。そこに、本人もはっきりとは気付いていない何らかの、痛みを生じるに至った「物語」が多々潜んでいることが多い。

付記

時々勉強させて頂いているサイトで、偶然、「心療内科」に関するコラムを見つけましたので、ご紹介させていただきます。

「気療」について考える

「気を酸素とイメージする」これは日本伝統医学研修センターで教えて頂いたものです。もちろん、「気」と「酸素」は同じものではありませんが、私自身もこの考え方は大変気に入っています。それは次のような理由です。
1.気も酸素も目に見えない。
2.気も酸素も極めて重要な自然エネルギーである。
3.気も酸素も健康に関係している(気力がなくなると不健康になる。酸素がなくなると死に至る)
4.猛毒だった酸素と共存するという進化によって、生物は飛躍的に発展し人類も生まれた。
5.気を酸素とイメージすると現代医学との関係性を説明しやすい。
この考え方を変えるつもりはないのですが、神沢瑞至先生の「気療」をテレビで知ることになり、今一度、「気」について真剣に考えなければと強く思うようになりました。

 

著者:神沢瑞至

出版:たま出版


ブログの概要
本書の内容を否定することなく、テレビに映っていた野生の動物が気療で眠ってしまうという驚きの事象と向き合うことからスタートしました。続いて本書の内容を吟味し、「二感覚神経と気応感覚」について自分流に編集してみました。
なお、神沢先生の「気療」を正しくお伝えするため、ポイントになると思われる部分を抜き出し、最初にまとめてご紹介させて頂きます。取り上げた内容は以下の通りです。
はじめに(p1~p3)
目次(p4~p9)
眠ってしまった動物に起きたこと(p79~p80)
気療の原点(p96~p97)
一人交流(気療体得)エクササイズ1・2(p105~p113)
「気療体得(エクササイズ)」については、13ある「一人交流」の中から最初の2つのエクササイズのみ、絵と表を含めてご紹介させて頂いています。

はじめに
『「気は存在そのもの」という言葉どおりに、気療(治療)によってこれまで多くの人々が病気やケガを癒し、健康を回復してきました。そればかりでなく、この方たちが併せて気の力を感知できるようにもなった事実を見て、「気は万人共通」なのだとの思いをさらに深くしました。
前二著([気療]、[遠隔気療])は、治療を主体としたもので、その気療方法は今も変わってはいません。気療師の方たちも、そのとおりに実践して大きな効果を挙げてきています。気療には素晴らしい癒しの力があり、結果が出れば良いのであって、論ずるものではないと言えば、言えなくもありません。
しかし今から考えてみますと、実は論ずるにも気療には、それを語り説明する言葉も用語もほとんどなかったのです。ですから気療実績を述べるにとどまっていたのです。
その後、1996年に気療塾学院を開きましたが、当初は塾生の皆さんを指導するにも、理論や気療用語がなくて苦悩しました。そんなある日、被気療者や塾生の皆さんが、自分の受けた「気の感覚」を表現した「チリチリ」とか「スースー」とかのさまざまな言葉に、気の本質が表れているのではないかと直観しました。これらの表現に、気療に際して生じた感覚神経の働き、すなわち気の力と感知・判別する力が表されているのではないかと考えたのです。
それでは、この気の力と感知・判別する感覚神経をどのように名づけたらよいのかと長く苦しんだ末に、気の力を「気療神経」、感知・判別する力を「波動感知神経」と呼ぶことにしました。その詳細は、本書の第二章「二感覚神経の発見」に述べてあります。もとよりこれは、今の西洋医学で認められているものではなく、気療という観点からの考え方です。
この二感覚神経を発見し、感覚現象を言語化して以来、「集合エネルギー」とか「やわらぎ空間」などの気療用語も数多く生まれ、塾生の指導育成も楽になりました。気療師や熟生も増え、学院は活気に満ちてきました。
こうして十余年の歳月を経た今、本書を執筆したいと考えるに至った動機には二つあります。
一つは、気療には治療するだけでなく、その体得エクササイズによって次の四つの力を体得できることがわかってきたからです。それは、①気の力の体得、②感知・判別能力の体得、③予防気療(病気にならないように未然に防止する力)です。いずれも本書の中に詳述してありますので、ぜひお読みください。
もう一つは、2002年に、「健康増進法」が公布されたことです。少子高齢化社会を迎えて、生活習慣病などに対処するために、国ばかりでなく、国民も一人一人が健康を管理し、健康増進に努めて欲しいという趣旨の法律です。
私は気療を体得することと、健康増進法のこの趣旨とは一致していると思います。ぜひ一人でも多くの人々が本書を読み、気療体得(エクササイズ)をして、健康を回復し増進してくださるようにと願って止みません。(以下省略)』

目次
第一章 動物との気の交流
 テレビ出演にいたるまで
 動物との気の交流
 オーストラリア編
  オーストラリアへロケーション慣行
 スペイン編
 アフリカ ケニア編
  バッファローとの対決
  再びマサイ族の村へ
 シベリア編
  ヒグマとの対決
  シベリアンタイガーとの対決
 動物との交流による「気」の発見
  「起」として、オーストラリア編
  「承」として、スペイン編
  「転」として、ケニア編
  「結」として、シベリア編
 動物の生理的仕組み
第二章 二感覚神経の発見
 思考の世界から感覚の世界へ
  気療塾学院の設立
  痛み感覚または痛みのような感覚
  思考の世界から感覚の世界へ
 二感覚神経の発見
  気療は神経の働きに着目
  二感覚神経の発見とその命名
  二感覚神経の相互作用
 二感覚神経を呼び起こせ
  二感覚神経を呼び起こせ
  神経伝達還流の原理
第三章 気療体得(エクササイズ)  
 気療の原点
  気療の原点
  気療は癒しの実践から出発
  足応感覚の発見
 気療体得(エクササイズ)
  気療体得の型は画期的な自然発生
  気療体得は神経伝達交流
  一人交流(気療体得)
   基本的な事項
   体得方法
  対面交流
   手応交流・足応交流・身応交流
   かけ手と受け手と相互かけ手(二感覚神経の呼び起こし合い)
   気の交流感覚の基本
   気療体得の「Aの型」「Bの型」「Cの型」
   二人用エクササイズ
   多人数用エクササイズ
 気の力と感知・判別能力の体得
  気の力と感知・判別能力の向上
  感知・判別の性質
 集合エネルギーとやわらぎ空間
  集合エネルギーとやわらぎ空間
  「老い盛りのいのち」の発見
  予防気療と進行防止
   予防気療
   進行防止
  気療体得(エクササイズ)で効果のあった病院
  健康増進法
第四章 気療技術
 気療からみた人体構造
  人体構造のとらえ方
  背筋と内臓(筋)は表裏一体
  骨格筋の気療技術の五原則
   骨格筋気療技術五原則
  筋肉調整と血流調整
 気療技術の基本
  気療技術の基本形
  素手一本と素足一本
 感知・判別の基準
  体内情報の感知・判別
 気療効果
  気療は実践から出発した
  気療の基本的事項
  気療効果の症例
  進行防止と予防気療

眠ってしまった動物に起きたこと
まず、私が動物たちに気を送り始めます。すると気療神経が働き出します。そして同時に波動感知神経も働きだすのです。気を受け始めた動物たちは、波動感知神経で気を感じ始めると同時に気療神経が働き出します。この受けた気の力は、瞬時に脳幹へ伝えられ、刺激を受けた脳幹は、その命令を自律神経に伝えます。
自律神経は、内臓(筋)や骨格筋の筋肉調整を促して、それらの筋肉をやわらかくします。そして、血流調整をして、血液の流れを促します。体内の血液循環がよくなると脳へも血液がどんどん送られ、脳幹は活性化します。血液循環がよくなってくると、動物たちはリラックス状態になり、生命エネルギーを高まります。そして動物たちの波動感知神経の働きは、人間とは比べられないほど大きい、というのが私の実感でした。』

気療の原点
『いつも気になって手のひらを意識するようになり、意識するといつも「スースー」感が私の手のひらにあるのです。やがて、手のひらの「スースー」感が強くなるにしたがって、手のひらを「意識する」から、「意識を置く」といった感じに変わってきました。遊び感覚で、左右の手のひらを左右に開いたり閉じたりして、引っ張り感と圧縮感を楽しむようになったのです。それが日々の生活の中で習慣化して、二年間ほどいつでもどこでも、この「スースー」感覚を楽しんでいました。このことが今日の「感ずるがまま」の原点となったのです。「感ずるがまま」の世界には、創意工夫は一切ありません。まさに、感ずるがままです。そして、この「感ずるがまま」が「気」という自然エネルギーの媒体となったのです。いいかえれば、「気」の媒体となるには、「感ずるがまま」であるほかに方法はないのです。人間の思考活動でもって、広大無辺な気をコントロールすることは、難しいことだと思います。気療にとって、「感ずるがまま」は大きな発見であり、原点であり、すべてです。そして、この「感ずるがまま」が二感覚神経を呼び起こして、神経伝達還流の原理が働き出すと、病気の人は癒され、健康な人はより健康となり、予防気療にもなるのです。

一人交流(気療体得)エクササイズ1・2
『一人交流とは自然エネルギー(天地融合エネルギー)の媒体となって、気応感覚により二感覚神経(気療神経と波動感知神経)を呼び起こす神経伝達交流(気の交流)をいいます。この一人交流によって、気の力及び感知・判別能力を体得します。同時に治癒能力を引き出します。 
―中略― エクササイズを始めるにあたっては、解説やイラストにしたがって、手のひらや足のうらや全身に意識を置いてください。「意識を置く」ことで思考の世界から感覚の世界への「切り換え」となります。そして二感覚神経が呼び起こされます。気療体得の出発です。
意識を置いたならば、あとは「感ずるがまま」です。この「感ずるがまま」が気療の基本であり、すべてです。そして、この「感ずるがまま」が神経に働きかけて、生理的仕組みを活性化させるのです。これが、気の力と感知・判別能力を体得させ、内なる治癒能力を引き出してくれるのです。

エクササイズ1手のひら間隔合わせ交流
心と身体をリラックスしながら左右の手のひらを約十センチあけて両方の手のひらに意識を置いてください。左の手のひらの二感覚神経と右の手のひらの二感覚神経の交流が始まります。何も感じなくても、身体に力を入れたり無理な意識を集中させたり、「気よ、出ろ!」などと思わず、「感ずるがまま」でよいのです。実は、意識を置いた瞬間から、左右の手のひらの気の交流は始まっているのです。最初は手応感覚がないため、それがわからないだけなのです。どんなに微妙でも、いったん反応が感じられるようになれば、これで第一段階はクリアです。意識を止めない限り、気は交流を続けます。

エクササイズ2手のひら気練り交流
今度は左右の手のひらを上下に「感ずるがまま」に動かしてみます。同時に同じ方向に動かすのではなく、片方を上に動かしたら、もう片方は下に動かします。こうすると気の交流感覚が強くなります。手のひらを動かすことで、気の交流感覚がわかりやすくなるのです。


動物との対決(気の交流)
今回の驚きは何と言っても、野生の猛獣たちが気療によって眠ってしまうという衝撃的な映像でした。そこで、現状把握を目的に一覧表にまとめてみました。
表の下の画像は、本書「気療で健康増進」からのものです。

気づいた点は次の通りです。
1.集団には油断、気を許す雰囲気があり、気応連鎖につながる。
2.用心深さや闘うモードは気が通じにくい。
3.思いの強さは気の力を強くするのか。
4.手のひらの手応え感覚と動物が受ける気の影響には関連(交流)がみられる。
5.動物との対決は気の交流であり、猛獣が近づいても恐れや緊張をほとんどもたないようだ。
6.著者の行為は広大なやわらぎ(癒し)の空間をつくること。

個人的感想ですが、『北風と太陽』を思い出しました。もちろん、「気療」は太陽の方です。

 

画像出展:「イソップ童話の塗り絵

最後に下の写真をあらためて眺めてみると、この眠った状態は、体内でからだの修復作業(メンテナンス)が行われている姿なのではないかと感じました。


「二感覚神経と気応感覚」
ここからが本題になるのですが、最初に「地震予知」と「遺伝子」、そして「脳のはたらき」について触れます。
二感覚神経の一つは“波動感知神経”です。これは「感知・判別する力」とされています。ここで私が連想したのは、動物の地震予知能力についてです。これに関してネットで調べたところ、三つの興味深いサイトが見つかりました。

動物や植物は地震を予知できるのですか?
『動植物には、音、電気、電磁波、匂いなどに対する感知力が人間などに比べ格段に優れているものがあることは知られています。一方、地震は、地中の広い範囲で、固い岩盤同士が、破壊し合い、ずれ合う大きなエネルギーの集中や解放を伴うため、徐々に岩盤が変形し始めたり、地下水位が変動したりして、地震の発生前から非常に微弱で特異な音、電気、電磁波、匂いなどが周辺の地面や大気などに現れ、それを動植物が感じ取る可能性もあるのかもしれません。しかし、動植物は地震以外の理由によって通常と異なる行動・反応をすることがあり、また、動植物自体についてまだわかっていないことも多く、ましてや地震の前兆現象も解明できていない部分が多いことから、地震の前にそうした異常行動・反応をする理由について科学的に説明できていない状況です。』

動物たちが地震を予知できるって本当?

『ここで地震の前の動物たちの行動についての前例を見ていきましょう。
東日本大震災の前に、国内の多くの動物たちの不可解な行動が報告されています。カラスは普段とは違う鳴き方をし、50頭あまりのクジラが海岸に打ち上げられました。また2008年の中国を襲った大地震の前には、シマウマが頭をドアにぶつけたり、象が胴体をブルブル揺らしたり、ライオンやトラは寝てるはずの時間にのしのし歩き回り、クジャクは揺れが来る5分前に一斉に鳴き出したとか。これに似たことは2005年津波がアジアを襲った際にもあったそうですよ。1975年、中国の海城市で2000人もの人が犠牲になった地震(M7.3)の際も動物たちの妙な行動が報告されました。』

犬猫は地震を予知できるのか?

このような犬猫の行動、人間から見るととても不思議です。「超能力」があるのではないかと思ってしまいます。が、これらは摩訶不思議な能力というわけではなく、もともと犬猫に備わった優れた能力によるものといわれています。例えば、聴覚の鋭さ。人間は最高で20キロヘルツまでの音しか聴くことができず、それ以上の音は「超音波」と呼んでいます。ですがこの超音波、犬猫には聴こえるのです。犬は約40キロヘルツまで、猫はそれを超える60キロヘルツまでの音を聴くことができます。ですから人間にとっては超音波でも、犬猫にとっては超でも何でもありません。地震の揺れ(主用動/S波)の前には、ごく小さな揺れである初期微動(P波)が起こります。P波は空気にも伝わり、地響きのような音として聴くことができます。犬猫はこのP波をいち早く感じ取っているといわれます。

次は「遺伝子」についてです。

著者:竹内久美子

出版:文藝春秋

竹内久美子先生は、京都大学および大学院で動物行動学を専攻されました。その竹内先生の最高傑作ともいわれる「そんなバカな! 遺伝子と神について」はとてもユニークで驚きが連続する楽しい作品です。

そこでは、「人間は遺伝子を運ぶ器にすぎない。人間を含め、あらゆる生物が遺伝子を生き伸びさせるためにのみ存在している。」とあります。つまり、人間は単なる乗り物(ビークル)にすぎず、ドライバーは遺伝子であるというのです。

そして、遺伝子にとっての関心事は「種の保存」だろうと思います。

長い長い前置き失礼しました。以下のものが、今までの内容を自分流に整理整頓したものですが、ドライバーである遺伝子になったつもりで書いています。

なお、二感覚神経は、気の力である「気療神経」と感知・判別する力の「波動感知神経」であり、この二つには相互作用があり表裏一体となったものとされています。

「二感覚神経」を考える

1.二感覚神経の存在目的は、「種の保存」と考えます。
2.二感覚神経の働きは、「危険を回避する能力」と考えます。
3.対象となる「危険」とは五感(視・聴・嗅・味・触の感覚)では回避できないものと考えます。
 1)地震などの自然災害や、宇宙規模の異変(太陽フレアなど)
 2)体外からの侵入や体内で産生される病となる因子(ウィルス、がん細胞など)
4.自然災害や宇宙規模の異変など(マクロの危険)への対応策
 1)第六感による危険察知能力を備え、災害発生前に安全な場所に退避すること【波動感知神経】
5.病の原因因子(ミクロの危険)への対応策
 1)総合的な防衛システムを備え、病の発症を阻止すること【気療神経】

   ・免疫システムや腸内細菌との共生、細胞レベルの修復システムなど
6.二感覚神経は、波動感知神経と気療神経が表裏一体であるとする理由
 1)未知の危険に備えるには、2つの可能性(「マクロの危険」と「ミクロの危険」)に同時対応できる表裏一体・相互作用型の方が、危険回避できる確率が高まると考えられるため。
7.気療神経が自らの身体だけでなく、他の個体(仲間)に対しても機能を発揮できる理由
 1)「種の保存」の考え方に従えば、自他共に作用を及ぼすことができる方が、多くの個体を守れる可能性が高まると考えられるため。

「気応感覚」を考える
「気応感覚」は二感覚神経を認識するためのセンサーと考えます。手も足もホムンクルスの絵(下)が示しているように、感覚野(左)、運動野(右)とも脳の広範囲に及んでいます。手は上肢の広範囲な可動域により、センサーとして高い機能性を持ちます。一方、足は立位においては大地と接しています。そのため大地からの変動をキャッチしやすい場所にあるといえます。

画像出展:「人体の正常構造と機能」

 

こちらの図は「気応感覚」ということではなく、一般的な感覚刺激の伝達をご説明した絵です。

左端に書かれている通りですが、冷たいコップに触れた手指への刺激は、脊髄と視床でニューロン交代を行いながら、終点である大脳皮質の感覚野に到達します。

 

画像出展:「病気がみえる vol.7 脳・神経」

 

結論

「二感覚神経と気応感覚」といわれるものは存在すると考えます。そして、これらの「気」の力は鍼灸治療にとっても凄い可能性をもった魅力的なものです。まずは、自身の潜在能力を寝覚めさせるため、エクササイズ1と2に取り組んでみようと思います。

付記:「交感神経緊張状態がもたらす四悪

猛獣が眠ってしまうのは、副交感神経が優位になることが最初の変化です。言い換えれば、交感神経優位の状態は闘うモードであり、心身への負荷を伴います。ここでは、その「緊張状態の四悪」についてご説明します。

画像出展:「パーキンソン病を治す本」

出版:ビタミン文庫

なお、下記の文章も全て「パーキンソン病を治す本」からの引用です。

 

 


1.顆粒球過多→活性酸素の大量発生による組織破壊
『自律神経のうち交感神経は、顆粒球の数と働きを支配しています。ストレスで交感神経の緊張が続くと顆粒球が増加して、そこから強力な酸化力を持つ活性酸素が大量に産生されます。それらの活性酸素が細胞を次々に参加し、殺傷していくことで、組織破壊が拡大します。
ちなみに、私たちの体内では呼吸で得た酸素から発生する活性酸素、細胞の新陳代謝から生じる活性酸素など、さまざまなルートで活性酸素が産生されていますが、活性酸素全体の比率では、顆粒球から放出されるものが7~8割を占めます。したがって、顆粒球が増加すればするほど、組織破壊も進むことになります。
2.血流障害
『交感神経が分泌するアドレナリンは、血管を収縮させる作用があります。そのため、交感神経の緊張が続くと、細胞が持続的にアドレナリンの作用を受けて全身で血流障害が起こってきます。
血液は全身の細胞に酸素と栄養を送り、老廃物や体にとって不要なものを回収しています。血流障害によってこのサイクルが阻害されると、細胞に必要な酸素や栄養が届かず、老廃物が停滞するようになります。その結果、痛み物質や疲労物質がたまれば痛みやこりなどが現れますし、発ガン物質や有害物質が蓄積すれば発ガンを促します。それと同時に細胞そのものの活力も衰え、働きが低下していきます。』
3.リンパ球の減少
『白血球の顆粒球とリンパ球の比率は、その人の自律神経のバランスによって変動します。顆粒球とリンパ球は、いつも逆転した動きをします。
交感神経が緊張すると、副交感神経の働きがおさえられます。その結果、副交感神経の支配下にあるリンパ球の数が減り、働きが低下して、カゼをはじめとするウィルス感染などが起こりやすくなります。また、ガンを殺すNK細胞などの活性も低下します。
4.排泄・分泌能の低下
『交感神経が緊張し、副交感神経の働きがおさえられると、臓器・器官の排泄や分泌機能が低下します。これにより便や尿などが排泄しにくくなったり、各種ホルモンの分泌異常が起こったりするようになります。
交感神経の緊張は、以上1~4の障害を連鎖反応的に引き起こし、病気を発症しやすい体調・体質をつくり上げていきます。』

顆粒球とリンパ球
『顆粒球は交感神経が優位になっている日中の活動時には、手足に傷を負いやすく、傷口に細菌が侵入する機会が増えます。こういうときは、サイズの大きな細菌を食べてくれる顆粒球にいてもらったほうがよいわけです。逆に、副交感神経が優位になっている夜間の休息時や食事をしているときには、消化酵素で分解された異種たんぱくやウィルスなど微小な異物が消化管からどんどん入ってきます。これらはサイズが小さすぎて顆粒球では対応できないため、夜間は微小な異物処置の得意なリンパ球が出番となるわけです。
実際、血液を採って調べてみると、昼間の活動時は交感神経が優位になって顆粒球が増え、夜間の休息時には副交感神経が優位になってリンパ球が増えています。こうして自律神経と白血球が連携することで、私たち人間は環境の変化に順応し、命を存続させる最良の状態を作り上げてきたのです。』

バイ・ディジタルO-リングテスト

O-リングテストの存在を知ったのは、2011年、専門学校に入って間もなくの頃だったと思います。その不思議なテストに関心をもち専門的な本を衝動買いしてしまいました。
ただし、ざっと目を通す程度で読むまでにはいたらず本棚に並んでいました。本気で読んでみようと思ったきっかけは、O-リングテストのコツやテロメアのことが書かれた「O-リングテスト スーパーヘルス超健康レッスン」という雑誌を購入したためです。

O-リングテストとは、片方の手で触れる・手に持つ・指さすなどの行為によって、生み出された刺激が脳に伝わり、それが有害なものであれば、筋肉の抵抗が弱まるという原理です。つまり、もう片方の手の指(母指と示指)でつくったリングが、簡単な力で開いてしまうか否かによって有害か無害かの評価ができるということです。また、歴史や普及の実態は下記の通りです。

『O-リングテストは、1970年代に方法論が確立し、その後約30年以上の歳月をかけて、医師や学者を中心に世界各地で研究を積み重ね、普及してきました。93年にはアメリカで特許を取得。日本では87年に日本バイ・ディジタルO-リングテスト協会を設立。医師・歯科医師・獣医師・看護師・鍼灸師・薬剤師を中心に、過去35年間に1万人以上の医療関係者が勉強し、約60人のO-リングテスト認定医を擁するまでになっています。』(2008年)

 

別冊すてきな奥さん

出版:主婦と生活社

衝動買いした「図説 バイ・ディジタル O-リング テストの実習」は初版第1刷は昭和61年3月15日となっています。私の本は第3版で平成5年3月15日発行です。約25年前の書籍のため、現在、普及しているバイ・ディジタル O-リング テストと全く同じかどうか確認はできていません。
目次は次の通りですが、これは大項目、中項目のみとなっており、3段目の小項目は省略させて頂いています。

著者:大村恵昭

出版:医道の日本社


目次
第1章 テストの概要
1.バイ・ディジタル O-リング テストとは何か
2.O-リング テストの背景と研究の過程
3.神経学的機序へのアプローチ
第2章 鍼と循環
1.循環障害と身体各部の血圧
2.身体各部の血圧異常と症状
3.下肢の静脈圧の測定
4.鍼の循環系および血液化学におよぼす影響
第3章 テストを行う前に
1.チャートの記入法
2.用意するもの
3.刺激物と適応部位
4.注意事項
第4章 テストの実際
1.患者の体位、姿勢
2.検者の位置、抵抗を加える方向
3.頸椎、頸椎神経を代表する各指
4.指の力の判定
5.検査指の決め方
6.子供や指を使えない患者、動物をテストする方法
第5章 臓器代表点
1.新しい臓器代表点・代表域
2.古典的臓器代表点
第6章 診断法としてO-リング テスト
1.一般的検査法とO-リング テスト
2.O-リング テストによる診断法
第7章 薬物や飲食物の適合性テスト
1.電磁場について
2.薬物や飲食物の適合性テスト
第8章 治療法の実際
1.用手鍼療法
2.低周波療法
3.レーバービーム療法
4.治療の実際
5.鍼治療や電気治療の適応
6.鍼治療の限界
7.重要な例外
第9章 臨床の実際
1.症例
2.新簡易造影法
第10章 医療の中での展望
1.利点と応用
2.これからの展望
付録
・質疑と応答
・最新の学術論文から(英語)

まず考えたのは、第1章のテスト概要をしっかり理解しようというものでした。特に「神経学的機序へのアプローチ」のロジックが理解できれば、新しい武器(知識)を身につけることができると考えました。そこで、3つの中項目について、ポイントと思われる部分を列挙してみました。

1.バイ・ディジタル O-リング テストとは何か
・1970年代にニューヨーク市において開発された。
・アプライド・キネシオロジー(応用運動機能学)にヒントを得たものだが、研究段階で科学的裏づけを重ねてできた、全く新しいテスト法である。
・東洋医学の古典的臓器代表点に修正を加えた、新しい臓器代表点を診断に用いる。
2.O-リング テストの背景と研究の過程
・アプライド・キネシオロジーでよく使われる大きな筋肉より、疲れの少ない小さな筋肉の方が検査による疲れの影響が少なく、疲れても早く回復する筋肉、それは指の筋肉である。
・脳を最大限に代表している筋肉。指の筋肉は大脳皮質の感覚領と運動領を最大限に代表している。
・手の握力と脳循環の関係を6年間研究し、1978年に論文にまとめた。
3.神経学的機序へのアプローチ
・人体のあらゆる異常な部分は正常な部分に比べて、異なる電場及び電磁場を持っている。そこへ軽度の機械的圧力や光線、電場、磁場を用いて知覚神経を刺激すると脳の中央までその刺激が伝わる。
・軽微な機械的刺激を与えると、まず大きい直径の知覚神経が刺激され、脊髄を上昇して中枢神経へと伝わる。
・上行神経路のなかでも重要なのは、①後根にある内側縦束、②外側脊髄視床路、③脊髄小脳路などである。
・バイ・ディジタル O-リング テストで抵抗力が弱まるのは、コンピュータの中央演算機構にたとえることができる。
刺激してる身体の場所が病的かどうかを中央演算機構で判断し、モニターでの表示の変わりに、指のO-リングの抵抗力で表示しているようなものである。
・コンピュータの中央演算機構に相当する人間の中枢神経の精密度は、いかなるコンピュータよりすぐれており、かつ小型であるといえる。そして、これには大脳、小脳、脳幹、網様体、前庭神経核、室頂核、赤核脊髄路、小脳前庭脊髄路など全てが関与している。そして、ここから直接、α運動ニューロンに、あるいはγ運動ニューロンを介して間接的にα運動ニューロンに伝わる。


これ以降、約1,000文字の解説が続くのですが、私の知識ではついていくことが困難になりました。ただし、文末に次のような記述がありました。
『さらに神経路は上記のようにいろいろな所が関与し、複雑に細かくなります。そのひとつひとつについて現在の生理学でもわからないところがたくさんあります。そのため、バイ・ディジタル O-リング テストの神経学的機序についても絶対的なことは断言できません。ただ、おそらくこのような神経路が関係しているだろうということだけは説明できます。』

以上のことから、少なくとも本書が発行された当時においては、詳細な神経学的機序までは解明できていなかったということだと思います。

だからといって、バイ・ディジタル O-リング テストを否定するものでは決してありません。生意気な言い方ですが、医学にはまだまだ解明されていないことがたくさんあると思います。
しかしながら、バイ・ディジタル O-リング テストを自分の施術の中の知識やスキルに加えることは難しいと判断しました。

 

ゴールのない中途半端なブログになってしまい申し訳ありません。

以降は、「O-リングテスト スーパーヘルス超健康レッスン」に掲載されていた特に興味深いページや関連するサイトをご紹介させて頂きます。



『O-リングテストでは、細胞の核内のテロメア量を数値化することで、その人の健康状態、細胞レベルの若さ、生命力をチェックすることができます。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『正常細胞のテロメア値を高める食品について実験していくうちに、驚くような発見がありました。誰もが知っている身近な果物である「リンゴ」と「バナナ」を一緒に食べることで、テロメア値がスーパーヘルスの基準である500ナノグラムにまで高まることが実証できたのです。』


NHKでは、「生命の不思議“テロメア” 健康寿命はのばせる!」という番組が制作され、2017年5月16日に放送されていました。

また、「O-リングテスト スーパーヘルス超健康レッスン」には全国の認定医等の一覧が掲載されています。ここでは、さいたま市の認定医をご紹介させて頂きます。

場所は、さいたま市中央区になります。

こちらは、日本バイ・ディジタルO-リングテスト協会さまのホームページです。

脳性麻痺リハビリテーションガイド

訪問の仕事(業務委託)は鍼灸とマッサージが半々というところですが、マッサージについては小児障害、特に脳性マヒの患者さまが増えています。
一方、特に発達障害児へのマッサージを考える際に勉強した「新・感覚統合法の理論と実践」では、そのブログの中で、マッサージのポイントを次のようにまとめました。
1.人は最も大きな刺激源であり、人に対する感情によって、刺激の感じ方もずいぶん違ってくると言われています。従って、子どもとの信頼関係を築くことが第一歩です。  
2.触覚防衛反応などの感覚調整の障害については、「感覚調整機能評価表」を利用し、触覚系と前庭-固有覚系の過反応と低反応の実態を把握します。
3.筋緊張の強い子には、抑制的な触圧の刺激などにより、緊張部位のリラクセーションをはかり、屈筋群と伸筋群の拮抗をバランスよく保ち、筋肉の柔軟性を高めます。
4.筋緊張の低い子には、促通的な触圧の刺激などにより、屈筋群の活性化をはかります。また、関節への抵抗運動により筋緊張を高めるとともに拘縮を予防します。              
5.ボディイメージが弱い子には、関節の抵抗運動により、それぞれの筋肉の動かし方を繰り返し学習します。 

この中で3~5の筋の低緊張、過緊張およびボディイメージの弱さに関する改善は、脳性マヒ患者さまにも当てはまるものと考えています。しかしながら、本当にそうなのか、注意すべきは何なのかを把握するため、図書館から「脳性麻痺リハビリテーションガイド第2版」を借用し、第6章の運動障害と治療(リハビリテーション)を中心に、その内容を確認しました。

 

監修:公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
出版
金原出版

 

 

こちらのサイトをクリック頂くと、「脳性麻痺リハビリテーションガイドライン第2版」の目次が確認できるだけでなく、PDFファイルをダウンロードすることもできます。

以下の表が、確認した内容をまとめたものです。結論としては、脳性マヒ患者さまの筋の緊張状態やボディイメージを改善することは、推奨グレードAおよびBの漸増負荷トレーニング・サーキットトレーニング(筋力トレーニング)、有酸素トレーニング、歩行訓練、それぞれの効果を高めるための土台作り(筋肉、関節などの運動器系の状態を良くすること)として間接的に貢献することができる。ということだと考えています。

また、順序が逆になりましたが、「ガイドライン」がどのようなものかについてご紹介させて頂きます。

目的
本ガイドライン策定の目的は、最新のエビデンスに基づき、わが国で推奨される標準的な脳性麻痺リハビリテーションの診療方針を提示するとともに、将来に向けてあるべき理想の診療方法を明らかにすることである。
本ガイドライン策定に関しては、脳性麻痺の疾患特性を考慮し、医学的観点のみならず、脳性麻痺患者のライフサイクル全般にわたる問題点(家族支援、成人期の問題、就学と社会参加など)も含め、より包括的なリサーチクエスチョンで全体を構成するように努めた。

読者対象
脳性麻痺リハビリテーション診療に関る、すべての医療・福祉従事者はもとより、患者本人とそのご家族、学校教育関係者にも、広く利用されることを想定して作成した。

 

また、ガイドラインには「推奨グレード」の他に「エビデンスレベル」という観点からも考察されています。ブログでは分かりやすさを優先し「推奨グレード」一本に絞りましたが、ご参考として「エビデンスレベル」の内容をご紹介させて頂きます。

今回のブログの中で、私自身は「脳性麻痺」ではなく「脳性マヒ」という言葉を用いています。その理由に関してはブログ(「脳性麻痺 vs 脳性マヒ」)を参照頂ければと思いますが、ポイントは成瀬悟策先生の著書「姿勢のふしぎ」という本に出ていた次の一文に基づいています。

『脳の病変によって肢体が不自由になる現象を、本書ではここまで「脳性麻痺」ではなく一貫して「脳性マヒ」と表記してきたのは、一般に「麻痺」ということばが「神経や筋の機能が停止する状態」(広辞苑)とされているためでした。これまで述べてきたように、この子たちのからだは病理学的に動かないのではなく、生理的には動く自分のからだを、その主体者が自分の思うように動かせないだけですから、「麻痺」ということばはそぐわないため用いません。』    

「腎臓が寿命を決める」とは

現在、NHKでは『神秘の巨大ネットワーク 人体』という全8回のNHKスペシャルが放送されています。その初回となる、第1集は「“腎臓”が寿命を決める」というタイトルでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

NHKスペシャル「人体」取材班

出版:東京書籍


『「なぜ、腎臓を第1集に選んだのか?」
「人体」のメインディレクターとして、最も多く聞かれた質問です。じつは、番組をつくる前、全8回のラインナップを決めた段階から、ずっとこの質問をされていました。NHKスペシャルでもめったにない超大型シリーズ、その第1集は、特別な重要性を持っています。質問の裏には「本当に腎臓で大丈夫?」という意味が隠れていたと思います。脳や心臓といった、誰もが興味をもつスーパースターではなく、腎臓という“ちょっと地味”なキャラクターを主役に抜擢するのは、大きな賭けでした。
しかし、だからこそ、第1集で腎臓をやりたいと思いました。本書を読んでいただけば分かるとおり、腎臓は人体のネットワークの中で要となる存在です。「腎臓はじつは、スーパースターだった」そのことに驚き、納得してもらうことが、そのまま“人体は神秘の巨大ネットワークである”という、このシリーズのメインテーマを深く感じてもらうことに繋がると考えました。ネットワークという視点で人体を捉え直すことで、これまでの常識が大きく覆る、そんな劇的な瞬間を味わってもらいたいと思ったのです。
これは、書籍版第1巻の「あとがき」の冒頭部分です。
第1回のテレビ放送を拝見して、「“腎臓”が寿命を決める」というテーマは、私には今ひとつ消化できるものではありませんでした。「そうなのかなぁ?」という印象が残りました。そして、その時はそれ以上のことを考えることはなかったのですが、慢性腎不全の患者さまへの鍼治療の効果が明らかになったことで、今一度、NHKスペシャルの「“腎臓”が寿命を決める」を勉強しなおしたいという思いが強くなり、調べたところ書籍版が出ていることを知りました。

162ページのこの本は、前半の「プロローグ 神秘の巨大ネットワーク」と後半の「第1集“腎臓”が寿命を決める」に分かれています。目次は下記の通りですが、ブログは酸素をコントロールし、血液を管理し、寿命を決めるとされる腎臓の働きを詳しく知ることを目的にしています。

プロローグ
神秘の巨大ネットワーク 生命を支える「臓器同士の会話」
1.人体がここまで見えてきた! 驚異の技術革新
2.心臓からのメッセージががん治療に革命をもたらす! 
   ANP、発見と進化の物語(サイズ14)
3.“1滴の血液”で13種類のがんを早期診断
4.人体ネットワークの会話が人生を変える

 

番組では、「メッセージ物質」という言葉が使われています。テレビ放送の時は、この言葉が腑に落ちず混乱の原因となっていたように思うのですが、これは書籍版によって解決しました。以下はその説明個所です。
『「臓器同士の会話」がもたらすもの
腸の細胞が発するメッセージは、「臓器同士の会話」のほんの一例に過ぎない。いま、こうしたメッセージを伝える物質が、腸に限らず、全身のあらゆる臓器から放出されていることが明らかになってきた。
体を支えているだけだと思われがちな、「骨」。血液を全身に巡らせるための通路というイメージが強い、「血管」。現代では“やっかいもの”として扱われている「脂肪」までもが、全身に向けたメッセージを発しているという。
そうした、メッセージとなる物質には、古くから知られていた「ホルモン」や、その後に発見が相次いだ「サイトカイン」、さらに近年急速に研究が進む「マイクロRNA」など、非常にたくさんの種類がある。そこでNHKスペシャル「人体」では、これらの物資をまとめて「メッセージ物質」と呼ぶことにした。人体を「ネットワーク」として捉えるに至った背景には、多くの科学者たちによる、長年の研究の積み重ねがある。その全体像を俯瞰して見たいと考えたのだ。
そして、メッセージ物質の役割が明らかになるにつれて、医療の世界に起きた大きな変革にも注目する。メッセージ物質を人工的につくって投与したり、逆に、その作用を抑えたりすることで、これまで治療が困難とされてきた病気にも希望の光が差し込むようになった。
体の中で交わされる臓器たちの会話に、より一層耳を傾けることが重要になっている。メッセージ物質を理解することは、人体の神秘に迫ることであると同時に、病の克服という切実なテーマにも直結しているのだ。

後半部分の目次です。
第1集 “腎臓”が寿命を決める
1.金メダルの獲得を陰で支えた腎臓のメッセージ
   EPO精製への道
   EPO産生細胞の発見
2.腎臓の手術で重症の高血圧が治る! 大注目の最新治療
3.血液の管理者:腎臓
   腎臓の構造と働き
4.老化や寿命のカギを握る腎臓
5.腎臓を守れ! 命の現場

 

酸素をコントロールする
人間にとって生きるために最も必要な物質は酸素です。カーラーの救命曲線によると、心臓停止後3分で死亡率約50%となっています。このように酸素供給の完全停止は直ちに死に直結します。この重要な酸素の供給に関るメッセージ物質がEPO(エリスロポエチン)と呼ばれる物質です。私が専門学校で習ったときは、ホルモンとされていましたが、昨年(平成29年)3月発行の「病気がみえる vol.8 腎・泌尿器 第2版5刷」では、EPO(エリスロポエチン)は赤血球の「造血因子」と書かれています。
このEPOは腎臓から放出され、「酸素が欲しい」というメッセージを伝えますが、その存在は2008年、日本人研究者によって明らかにされました。そして、尿を運ぶ膨大な数の尿細管、その管と管の隙間、「間質」と呼ばれる部分にEPO産生細胞が存在していることが特定されました。

 

1981年にフランスのカーラー(Morley Cara)が作成した曲線。数値は目安とされています。

画像出展:「宇部・山陽・小野田消防局

 

中央に見えるのが糸球体。その糸球体は複雑に絡み合った毛細血管の塊のようです。周囲にあるホースのような管のほとんどは尿細管で、EPO産生細胞が存在する「間質」は管と管の間です。

画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

『全身に酸素を行き渡らせるためのメッセージである、EPO。体内に酸素を取り込む「肺」や、血液を全身に巡らせる「心臓」ではなく、一見、酸素と関わりがなさそうな「腎臓」が、こうしたメッセージを出す役割を担っているのは、一体どうしてなのだろうか。』
これは本書の中で指摘されている疑問ですが、私も全くその通りだと思います。何故、腎臓なのか不思議です。
そして、その答えは次のようなものでした。
『腎臓の間質は、もともと酸素の供給量が高くなく、低酸素の状態にあります。また、隣にいる尿細管の細胞は尿をつくるためにたくさんのエネルギーが必要で、多くの酸素を消費することが分かっています。そのため、EPO産生細胞の周辺では急速に酸素濃度が下がりやすい。腎臓の中の、この場所は、体に酸素が足りなくなったときに、いち早く感知できる環境になっているのです。つまり、EPO産生細胞がいる場所は、全身の中でも最も酸素が不足しやすい場所であり、だからこそ、酸素の“見張り番”として働くのに最適だというわけだ。』

EPO産生細胞の場所(尿細管のすき間で赤・緑に光っているのがEPO産生細胞。赤色の細胞はEPOをつくっていないOFF(オフ)の状態で、緑色の細胞はEPOをつくっているON(オン)の状態を示す。)
画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

『研究グループは、顕微鏡で観察するとEPO産生細胞が光って見えるように、栄光物質を組み込んだEPO遺伝子をマウスに導入した。すると、EPO産生細胞は尿細管と尿細管のすき間を埋める間質という組織で見つかった。EPOをつくっていたのは、糸球体や尿細管といった腎臓の主体をなす細胞ではないという事実は、世界中の研究者を驚かせた。

EPOによる赤血球の増産
腎臓は体内の酸素が不足していると、EPO(エリスロポエチン)を大量に出し始めます。そして、血液の流れに乗って全身に広がっていきます。
本書では貴重な写真だけでなく、CGによる絵が豊富に使われています。ここでは、EPOによる赤血球の増産の流れをCGのスライドショーでご紹介させて頂きます。下に解説が付いています。また、画像中央のマークをクリックすると停止します。

血液を管理する
『人間の血液の量は、体重の約13分の1(約7.7%)といわれる。体重60キログラムの人なら、血液4.6キログラム。血液1リットルの重さは約1キログラムなので、体の中には約4.6リットルの血液が流れている計算だ。
そして驚くべきことに、心臓が送り出す血液のおよそ4分の1は、2つでわずか300グラムほどの小さな腎臓に流れているのである。その血流量は、毎分800~1,200ミリリットルにもなる。なぜ、こんなにも多くの血液が腎臓に集まるのか。それは、誰もが知る腎臓の役割である「尿をつくる」ことの裏に隠されたもう1つの仕事に関係している。
尿は、体を巡る老廃物を含んだ汚れた血液からつくられる。老廃物を含んだ血液は腎臓に流れ込み、腎臓を通過する中できれいな血液と老廃物などを含む尿に分けられ、尿は体外へ出ていく。
この一連の腎臓の働きを見ると、つい尿の生成のほうへ目が行きがちだ。しかし、体にとって尿の生成と同じくらい、もしくはそれ以上に重要なのは、“きれいな血液”をつくることだ。
ここでいう“きれいな血液”とは、老廃物が除去されているということだけではない。血液中の塩分、カルシウム、カリウムといったさまざまな成分が、すべて適正な濃度になっていることが大切である。実は、これらをきめ細かく調節するのが腎臓の大きな役割だ。』

 

『腎臓は尿をつくるだけではなく、血液中の成分を調節するという重要な役割を担っている。』

画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

 

『腎臓は塩分やカリウムなど、体に必要な成分を一定の割合に保つように管理・調節している。』

画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

小さくて見ずらいですが、上の絵には番号が①~⑤までふられています。それについて説明します。

汚れた血液は腎動脈から腎臓に入り、輸入細動脈を経て糸球体を形成する毛細血管に流れ込む。
糸球体の毛細血管で、血液はろ過される。
血液中の小さな成分(老廃物や水分、ミネラルなど)は毛細血管の穴をすり抜け、ボーマン嚢の内側に入って尿の元となる。
残りの血液成分(赤血球やたんぱく質など)は輸出細動脈から出ていく。輸出細動脈は再び毛細血管となって尿細管に寄り添うように走行する。
体に必要な成分(水分やミネラルなど)が、尿細管で再吸収され、毛細血管に戻される。その後、尿細管周囲の毛細血管が集まって最終的に太い腎静脈となり、成分調節された“きれいな血液”が腎臓から出ていく。

『こうして行われる血液の成分調節は、実は、腎臓だけの判断で行っているわけではない。腎臓は、体中の臓器からのメッセージをしっかり聞き、情報を集める。例えば、カルシウムを調節する際には、喉の近くにある「副甲状腺」という小さな臓器や「骨」から出されたメッセージを受け取っている。これらの情報を基に、腎臓はポンプを制御して、原尿から再吸収する量を変化させているのだ。全身から情報を集め、体調や周囲の状況に応じて血液の成分を常に調整する。まさに、体の中に広がる巨大な情報ネットワークの要といえるだろう。

『腎臓は体中の臓器からのメッセージを分け隔てなく聞き、情報を集めて血液中の成分調節を行う人体ネットワークの要といえる臓器だ。』

画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

『腎臓がろ過する原尿の量は1日約180リットルにもなる。人間の血液量が4~5リットルなので、腎臓は1日のうちに何度も血液のろ過を繰り返している。一方、1日に排泄される尿の量は1~2リットル。原尿の99%は尿細管で再吸収されていることになる。』

画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

 

腎臓というと、まず「尿」、そして次に思い浮かぶのは、「ろ過」でした。今回、様々な臓器と会話しつつ、命のライフラインともいうべき血液成分をきめ細かく調節する「血液管理者」としての腎臓を認識できたことが、最大の収穫だったように思います。

寿命を決める
『日本人科学者が偶然生み出した不思議なマウスの研究から、私たちの寿命を大きく左右する、「ある物質」が明らかになった。その物質とは、リン。血液中のリン濃度が高すぎると老化が加速してしまう。そして、血液中のリン濃度を絶妙に調節しているのが腎臓だ。腎臓は他の臓器と連携しながらリンを調節し、寿命を決めていることが分かってきたのだ。
リンは生命維持に欠かせない栄養素で、魚介類や肉類、大豆などの食品に豊富に含まれている。リンが足りないと、骨軟化症、くる病などの病気の原因になるほか、呼吸不全、心機能低下を引き起こして生命に関わることもある。ところが、最新の研究では、血液中のリンが過剰になると、老化を加速させてしまうことが分かってきたのだ。』

 

上の図は、寿命と体の大きさの関係性を見たものです。これを見ると、体の大きさだけが寿命を決定しているものではないことが分かります。

 

下の図の横軸は、体の大きさではなく、血液中のリンの量によるものです。これにより寿命の長さに関係しているのは、血液中のリンの量であることが分かります。

画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

血液中のリンの調節には、体を支える「骨」と、「腎臓」の会話が重要な役割を果たしている。骨の主成分は、リン酸カルシウム。リンもカルシウムも、体にとっては重要な栄養素であり、骨にはその貯蔵庫としての働きもある。それも、“ただためこんでいる”だけではない。骨は血液中のリン濃度を監視し、腎臓に報告する役割も果たしている。
そのために骨が出しているメッセージ物質がFGF23(線維芽細胞成長因子23)だ。骨は、血液中のリン濃度が高くなると、FGF23を盛んに放出する。いわば「リン、足りてますよ」というメッセージだ。腎臓にはFGF23を受け取る受容体がある。実は、この受容体をつくるための設計図となっているのが、クロトー遺伝子(老化抑制遺伝子)だったのだ。
「受容体はメッセージを受け取る郵便箱のようなものです。クロトー遺伝子が壊れたマウスの腎臓には郵便箱がないので骨からのメッセージが来ても受け取れない。その結果、腎臓がリンをうまく調節できなくなって、老化が加速してしまうのです」と黒尾博士は説明する。
腎臓が骨からのメッセージを受け取ることができれば、その情報に基づいて尿細管での再吸収量を変化させ、血液中のリン濃度を絶妙に調節することができる。逆に、メッセージを受け取れなくなると、謎の老化加速マウスのように血液中のリンが過剰となり、寿命が一気に縮んでしまうこともあるのだ。骨と腎臓の会話が、リンの濃度を決め、それがそのまま寿命にも大きな影響を与えている―。黒尾博士の研究から明らかになってきた、腎臓の新たな真実だ。』

 

骨からの「リン、足りてます」というメッセージにより、腎臓の尿細管の微絨毛にあるポンプが再吸収を停止すれば、寿命は正常ということです。画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

 

付記1:EPO産生細胞とCKD(慢性腎臓病)
CKD(慢性腎臓病)では5段階あるステージの3(中程度)から、夜間多尿、血圧上昇、むくみ等に加え貧血(腎性貧血)が生じてくる可能性が高くなるとされていますが、これは腎臓の機能低下が進行するとEPOが作れなくなるためであると考えられています。
一方、EPO産生細胞は腎臓でみられる「線維化」という病態に深く関っていることも明らかになりました。さらにEPO産生細胞は善悪2つの顔をもっており、CKDの発症・進行を抑制する治療法の開拓に大きなヒントになると期待されています。下記はその詳細を説明した箇所です。
『腎臓病が慢性化する主な原因として、糖尿病や高血圧、慢性糸球体腎炎などが挙げられるが、原因疾患にかかわりなく、腎臓病が進行すると、線維化が生じ、腎臓の機能が損なわれていく。腎臓の線維化が生じる際、そのもとになる細胞は何なのか。
この研究で先鞭をつけたのは、京都大学大学院医学研究科の柳田素子博士の研究グループだった。柳田博士らは、東北大学で開発した遺伝子改変マウス(EPO産生細胞が蛍光を発するマウス)を用いた研究により、EPO産生細胞が硬い線維状の細胞、いわば「悪玉細胞」に変化することで腎臓の線維化が生じることを突き止めた。
一方、山本博士らは、遺伝子改変マウスを貧血状態にし、さらに尿管を縛って腎臓に炎症を誘発させるという実験を行った。すると、炎症でマウスの腎臓に線維化が起こり、線維成分であるコラーゲンが著明に増加するとともに、炎症性物資がさらに増加するという悪循環をきたした。しかも、高度な貧血で低酸素状態にあるにもかかわらず、EPOの産生力は大きく低下した。そしてこのとき、EPO産生細胞は「悪玉細胞」へと変化していた。
これらの研究により、腎臓に炎症のような有害刺激が加わると、EPO産生細胞が「善玉」から「悪玉」に変わってしまうことが分かった。悪玉化した細胞は「筋線維芽細胞」と呼ばれているが、このように細胞の持つ本来の特徴が大きく変化し、異なる性質を持った細胞になることを「形質転換」という。
EPO産生細胞が形質転換するだけでなく、さらに興味深い事実も判明した。尿管を縛って炎症を誘発させたマウスで、完全に線維化する前に縛りを解除したのである。すると驚いたことに、低下していたEPOの産生力が、正常マウスと同じレベルまで回復した。また、抗炎症薬のステロイドを投与すると、EPO産生細胞の産生力はさらに促進されたのだ。
つまり、炎症によりEPO産生細胞が「悪玉細胞」に変化して腎臓に障害をきたしても、炎症を抑制するとEPO産生細胞は本来の「善玉細胞」に復帰するというのである。
山本博士は、「EPO産生細胞は環境に応じて善悪両方向に変化することが分かりました。さらに、EPO産生細胞は高い回復力を持っており、炎症をコントロールしてEPO産生細胞の『善玉』の性質を維持していくことが、腎臓の線維化を抑えるには重要であることが示されました。これは慢性腎臓病の発症・進行を抑制する治療法を探索するうえで大きなヒントになると思います」と語る。
現在、腎臓病の進行を食い止めるためにEPO産生細胞の機能を回復させる治療法を探索されている。EPO産生細胞の発見から始まった研究は、さらなるステージに進もうとしている。』

『EPO産生細胞は低酸素状態になるとEPOをつくり始め、赤血球が増産される。一方、腎臓が障害されて炎症が起こると、EPO産生細胞は「悪玉細胞」に変化し、線維化が進行する。炎症を抑制すると、EPO産生細胞のEPO産生力は回復する。』

画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

『EPO産生細胞が「悪玉細胞」に変化すると、EPOを産生する力が大きく減少する。同時に、線維化のもとになるコラーゲンやさらなる炎症を引き起こす物質が大量につくられる。』

画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

病気の腎臓ではEPO産生細胞のEPO産生力は著しく衰えるが、炎症を抑えると本来の力が蘇った。

画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

腎臓の炎症と慢性腎臓病の関係性を示す資料などは無いかネット検索したところ、「日本医療研究開発機構」さまのサイトに興味深い研究が発表されていました。

付記2:“腎”とは
経絡治療においては、“腎”は五臓(肝・心・脾・肺・腎)の中でも1、2位を争う最も重要な臓器と考えられています。ここでは、専門学校の教科書、東洋医学概論(東洋療法学校協会編)から、腎の中核ともいえる“腎精”についてご紹介させて頂きます。
“腎は、精を蔵し、生命力の根源である原気をもたらす。”
『父母から受け継いだ先天の精は、腎に内蔵されている。この精は、飲食物から造られる後天の精によって、常に補充されている。精は、生命力と、成長、生殖力の根源である。この精が、腎により活性化されたものが、原気(生命活動の原動力となるもの)である。人間は、腎の働きが盛んになるにつれて成長し、生殖能力を生みだす。腎精が充実していれば、原気も盛んで、活動的で、疾病にもかかりにくく、また、根気がいる細かい作業を、やり抜き通す力もわいてくる。そこで、「作強(サキョウ)の官、伎巧これより出づ」といわれる。腎気が衰えると原気がなくなり、活動が低下し、身体が冷える。また、生殖能力も低下し、疾病にかかりやすく、治りにくくなり、さまざまの老化現象を呈する。』
生命力・成長・生殖力・老化に深くかかわるとする東洋医学の“腎”は、現代医学の“腎臓”とは似て非なるものというイメージを持っていました。ところが、今回の勉強を通して、”腎臓”は尿をつくるだけではなく、酸素をコントロールし、血液を管理し、老化にかかわり寿命を決めるという極めて重要な働きを行っていることが分かりました。そして東洋医学の“腎”と現代医学の“腎臓”はかけ離れたものではないという新たな認識を持ちました。

腎臓リハビリテーション

過去ブログ、「CKD(慢性腎臓病)治療の最前線」の宿題になっていた「腎臓リハビリテーション」ですが、入手した情報をベースにまとめてみました。
参考とさせて頂いたのは、日本腎臓リハビリテーション学会さまの各種資料(保存期CKD患者に対する腎臓リハビリテーションの手引き、学会広報誌 腎臓リハ NEWS LETTER、施設紹介)と、日本腎臓リハビリテーション学会の理事長である上月正博先生が執筆された「CKDにおけるリハビリテーション(日本内科学会雑誌105巻7号)」になります。ブログはこれらの内容を組み合わせ、はり付けたようなものになっています。なお、上月先生の「CKDにおけるリハビリテーション」はダウンロードできるようにさせて頂きました。

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CKDにおけるリハビリテーション.pdf
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コペルニクス的転換
『腎臓病といえば、かつて安静にすることが治療の1つであった。しかし、CKD(chronic kidney disease)患者においても、身体活動の低下は心血管疾患による死亡のリスクであることや、軽い運動がCKDを悪化させないことが明らかになり、CKD患者にも運動療法が適用されるようになってきた。運動療法は腎臓リハビリテーション(腎臓リハ)の中核として考えられ、最近ではCKD患者における心大血管疾患発生予防効果や透析導入時期遅延効果の役割も期待されている。』
「CKD(慢性腎臓病)治療の最前線」の中では、「運動制限から運動療法へのコペルニクス的転換」との表現があり、「腎臓病=運動制限」が当たり前と思っていた私にも、これは大きな驚きでした。
 

画像出展:「保存期 CKD 患者に対する腎臓リハビリテーションの手引き」

腎臓リハビリテーションとは
『腎疾患や透析医療に基づく身体的・精神的影響を軽減させ、症状を調整し、生命予後を改善し、心理社会的ならびに職業的な状況を改善することを目的として、運動療法、食事療法と水分管理、薬物療法、教育、精神・心理的サポートなどを行う、長期にわたる包括的なプログラムである。腎臓リハの中核的役割を担う運動療法は、透析患者の運動耐容能改善、Protein Energy Wasting改善、たんぱく質異化抑制(「異化」とは分解すること。栄養状態の悪化によりエネルギーを作り出すための分解が進む)、QOL改善などをもたらす。さらに、最近になって、保存期CKD患者が運動療法を行うことで腎機能(糸球体濾過量:GFR)が改善するという報告が相次いでいる。腎臓リハにより、保存期CKD患者の腎機能改善や腎機能低下速度遅延が確実となれば、透析導入を先延ばしすることができ、多くのCKD患者にとって朗報となる可能性がある。2011年に日本腎臓リハビリテーション学会も設立され、CKD患者における腎臓リハのさらなる発展が期待される。』
なお、Protein Energy Wastingに関しては、「透析患者における protein-energy wasting(PEW)の評価」を参照頂ければと思いますが、「PEWは透析患者に対する低栄養状態の呼称として、海外では広く普及してきている。」とのことです。

CKD患者の抱える問題
『CKD発症あるいは腎障害進行のリスクファクターは、高血圧、糖尿病、脂質異常症、高齢などで、超高齢社会の我が国では今後ますますCKD患者数の増加が懸念される。CKDの進行に伴い、心血管疾患の発症率は加速的に高まる。』
心血管疾患との関係は非常に重要で、日本心臓リハビリテーション学会学術集会においては、2013年の第19回のシンポジウムでは「心臓と他臓器のコミュニケーション(臓器連関)を知る」が、続く第20回のシンポジウムでは「リハビリテーションの心腎連関:慢性腎臓病や透析患者への適応を考える」がテーマとなっています。

臓器連関の病態生理
脳を加えた、脳・心・腎の関係について書かれたものがありましたので、ご紹介させて頂きます。
『脳・心・腎の間には密接で、かつ、精巧な機能的連関があります。この連関には、細胞外液、すなわち、内部環境の恒常性と循環の維持が重要な役割を果たしています。しかし、いったん、脳・心・腎のいずれかが障害されると、この臓器連関により単一臓器の機能不全への進展のみならず、互いの臓器を障害していく負の連鎖を形成します。
腎臓は心臓から拍出された多くの血液量を受け、全身の血行動態に応じたさまざまな神経体液性因子に反応して体液量や電解質を調節し、その結果、心血管機能に影響を与えています。近年、心疾患患者の生命予後は腎機能により大きく影響を受ける一方、腎機能障害患者の主要な死因は心血管病であることが明らかにされ、心腎連関という概念で注目を集めています。心不全では交感神経系やレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系、バゾプレッシンなど神経体液性因子が活性化され、糸球体濾過量やナトリウム利尿の低下が生じ、体液が増加します。一方、心臓より分泌されるナトリウム利尿ペプチドは体液増加の阻止に作用します。また、糖・脂質のエネルギー代謝も脳・心・腎などの機能調節に関わっていることが明らかになっています。
このような臓器連関の病態生理を理解するとともに、各患者の主要疾患への検査や治療などが、他の臓器に与える影響を理解することはきわめて重要です。』

脳心腎・糖代謝連関における腎交感神経の役割

『脳・心血管疾患と腎臓病は密接に関連し、「脳 心腎連関」と呼ばれる概念が提唱されている。しかし、そのような臓器連関の臨床症状に頻繁に遭遇するものの、詳細な発症・進展メカニズムについてはほとんど明らかとなっていない。これに対し、交感神経と腎臓内レニン・アンジオテンシン系の活性化が、脳心腎連関の病態に深く関わっていることが、最近明らかとなってきている。例えば、心不全では心拍出量の低下による腎虚血のみならず、遠心性に腎交感神経が活性化されて糸球体輸入細動脈と輸出細動脈に分布する交感神経終末からカテコラミンが分泌され、腎血流の低下を招く。また、腎神経の活性化は、尿細管のα1 受容体、β2受容体の活性化を介し、ナトリウム再吸収を増加させて体内へのナトリウム貯留を生じ、さらに心不全を悪化させる。……』

心臓リハビリテーションと腎臓リハビリテーション
『2つのリハビリテーションの共通の効果として、最大酸素摂取量の増加、左心室収縮能の亢進、心臓副交感神経系の活性化、炎症の改善、不安・うつ・QOLの改善、ADLの改善、死亡率の低下などがあります。また、慢性腎臓病を伴う心筋梗塞患者にリハを行うと腎機能が改善したとの報告や、冠動脈バイパス術を受けた透析患者がリハを行うと全死亡率や心死亡率が大きく減少したとの報告もあります。超高齢社会では、このような心腎連関の病態生理とリハの効果や影響を理解することはきわめて重要です。』
心臓リハビリテーション」については、2017年5月にブログにアップしていましたので、こちらもご紹介させて頂きます。

腎臓リハビリテーションの運動療法
『運動処方の考え方としては、基本的には慢性心不全患者や高血圧患者の運動療法メニューに準じたものである。運動の種類としては、有酸素運動、レジスタンストレーニング、またはそれらを組み合わせたプログラムを推奨する。身体機能やADL 能力が低下している者は、バランストレーニングなどと適宜組み合わせて、個別のプログラムを作成することが望ましい。運動の負荷は、疲労の残らない強度で短時間、少ない回数から導入し、心拍数や自覚症状に基づいて徐々に強度時間、回数を増加させることが望ましい。また、自宅で行うことができるようなプログラムにすることも効果を上げるためには重要である。』

 

こちらの絵はストレッチングを含む準備体操となる「腎臓体操」と呼ばれるものです。

 

画像出展:「保存期CKD患者に対する腎臓リハビリテーションの手引き」

下の表はCKD患者に推奨されている運動処方です。

 

画像出展:「看護roo!(「保存期CKD患者に対する腎臓リハビリテーションの手引き」を一部改変)」
 

こちらは、CKD透析患者に対する運動療法による効果を示したものです。

 

画像出展:「CKDにおけるリハビリテーション」

「保存期CKD患者に対する腎臓リハビリテーションの手引き」には、運動療法の注意点、腎臓保護効果判定指標、更には日常生活での工夫について記述されていました。
運動療法の注意点
・関節痛など運動器障害や息切れ、胸痛など循環器障害の症状の出現や進展に注意する。
・尿毒症の症状の出現や進展に注意する。
・運動することで腎機能が低下していないかをチェックする。

腎臓保護効果判定指標
運動療法の介入前と介入後3ヵ月程度の成果としては、
1.血清クレアチニン又はシスタチンCの不変・低下
2.尿蛋白排泄量の軽減(20%以上)
3.血清クレアチニン推定GFR(eGFRcr)又は血清シスタチンC推定GFR(eGFRcys)の低下率の軽減(30%以上)(3では介入3 ヵ月前、介入開始時、介入後3ヵ月の3回の採血検査が必要)を目標とするため、これらの検査を必須とすることが望ましい。
日常生活での工夫

平成28年度診療報酬改定 「腎不全期患者指導加算」認定と今後の対応
平成28年度は、一定水準以上の成果を出している保険医療機関に対して糖尿病透析予防指導管理料に「腎不全期患者指導加算(月1回100点)」が設けられましたが、あくまで限定的なものであり、対象範囲を保存期CKD一般や透析患者に拡げていく必要があるとされています。以下は『腎臓リハ NEWS LETTER No5』(最下段がNo5になります)の内容の一部をご紹介させて頂きます。


『本年度、腎不全期の糖尿病性腎症の患者に運動指導を行い、一定水準以上の成果を出している保険医療機関に対して糖尿病透析予防指導管理料に「腎不全期患者指導加算(月1回100点)」が設けられました。算定要件として、腎不全期(eGFR 30mL/分/1.73m2 未満)の患者に対し、専任の医師が、当該患者が腎機能を維持する観点から必要と考えられる運動について、その種類、頻度、強度、時間、留意すべき点などについて指導し、また既に運動を開始している患者についてはその状況を確認し、必要に応じてさらなる指導を行います。施設基準の条件として、運動療法の介入前と介入後3ヵ月程度のアウトカムとして、1)血清クレアチニンもしくはシスタチンCの不変・低下、2)尿蛋白排泄量の軽減、3)血清クレアチニンもしくは血清シスタチンCによる推定GFRの低下率の軽減を確認する、の3条件のうちいずれか1つを満たす症例が5割を超えていることが必要です。

さらに、糖尿病透析予防指導管理料の算定要件に、保険者による保健指導への協力に関する事項を追加する。すなわち、保険者から保健指導を行う目的で情報提供などの協力の求めがある場合に、患者の同意を得て、必要な協力を行います。具体的な運動内容、禁忌、中止基準などに関しては、本学会ホームページの「保存期CKD患者に対する腎臓リハビリテーションの手引き」を参考にしてください。

本学会が要求してきた「慢性腎臓病運動療法料」は、本来は保存期糖尿病性腎症のみならず、保存期CKD一般や透析患者をも含む出来高のリハ料・運動療法料です。今回認定された腎不全期患者指導加算は、わずか4年の交渉で獲得に成功した成果であるとはいえ、認定された対象は糖尿病性腎症で腎不全期にあくまで限定的なものであり、対象範囲を早急に拡げていく必要があります。腎不全期患者指導加算を本来めざしていた慢性腎臓病運動療法料に今後発展させるべく、CKD2期以上や透析患者でも運動療法のエビデンスをさらに強固にして、適応拡大、増点になるように活動を継続します。

最後に、日本腎臓リハビリテーション学会さまのホームページにある「施設紹介」の中から、東京都にある2つの施設について表にしましたのでご覧ください。また、こちらの2つの病院は、腎臓リハビリテーションを積極的に推進されており、大変興味深い内容となっています。

 

 

 

「つばさクリニック」の透析患者さんが元気な理由
 理由その1「ひとりひとりに適切な透析」
 理由その2「解り易い患者指導」
 理由その3「運動療法」
 透析中のミュージックエクササイズ(運動療法)※こちらは動画です。

 

 

 

 

 

当院リハビリテーションの特色
『運動器疾患、脳血管疾患、心血管疾患、呼吸器疾患などの各種疾患別リハビリテーションを幅広く展開しています。また、当院は透析専門施設であり、透析患者さんの運動機能の維持・向上に加え、心血管疾患や腎性貧血などをはじめとする合併症予防を目的とした腎臓リハビリテーションを実施しています。入院でのリハビリテーションでは、脳血管障害による麻痺や、整形外科疾患により日常生活機能が低下した透析患者さんの在宅復帰支援に力を入れています。』

付記

中医学(中国伝統医学)に【肝腎同源】という用語があります。

これは、『肝血は腎精の滋養を受けており、腎精もたえず肝血による補充を受けている。このように精と血とは相互に資源となり滋養しあっていることから、「肝腎同源」あるいは「精血同源」といわれている、病理的な変化のうえでも肝血と腎精とは常に影響しあっており、肝血の不足は腎精の不足を、腎精の不足は肝血の不足を引き起こす。』というものです。

今回のブログでネット上の資料を調べていたところ、内科医の先生が書かれた興味深い資料がありましたので、ダウンロードできるようにさせて頂きました。

なお、その冒頭には次のようなことが書かれています。『太古から物事の要の意味で「肝腎」と言う言葉が使用されてきたように、肝臓と腎臓は、体内の恒常性維持・代謝調節の要である。エネルギー、蛋白、脂質代謝の主役は肝臓、水・電解質・酸塩基平衡調節の主役は腎臓という大まかな役割分担があるが、一部の生理的調節において相互補完関係にある。』

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内科医が知っておくべき腎臓と全身臓器とのインターラクション (肝臓と腎臓).pd
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CKD(慢性腎臓病)治療の最前線

CKDはChronic Kidney Diseaseの略称です。また、日本腎臓学会編として「CKD診療ガイド」が2007年、2009年、2012年と発行され、「CKD診療ガイド2018年」の発行準備が進んでいるようです。
ここでは、2009年版の“CKD診療ガイドの改訂に寄せて”の内容の一部をご紹介させて頂きます。
CKD(慢性腎臓病)は2002年にアメリカで提唱された全く新しい概念です。慢性に進行する腎臓の疾患は数多くあり、腎臓の疾患名はわかり難いとの批判がありました。そこで、さまざまの腎疾患を主に蛋白尿と腎機能の面より新たにCKDと定義しました。CKDという病名は腎臓専門医のためではなく、一般かかりつけ医のための病名です。日本腎臓学会では2004年に慢性腎臓病対策委員会を設置して、疫学調査研究、診療システム構築、社会への働きかけ、国際協調・貢献を4つの柱として、総合的にCKD対策を行ってきました。その中の一つの事業として、かかりつけ医と腎臓専門医の連携を深めて病診連携を行うためのツールとして2007年9月に「CKD診療ガイド」初版を発行しました。・・・』

2月23日のブログでは、慢性腎不全と診断された患者さまへの鍼治療において、改善がみられた症例をお伝えしました。そして、この症例をきっかけとして、腎・腎臓への理解を深め、より効果の高い施術を目指したいという思いが強くなりました。そこで、先月「パーキンソン病 -進化する診断と治療-」でお世話になった最新医學のバックナンバーを調べ、2016年12月号の「特集:慢性腎臓病(CKD)治療の最前線 -生活習慣病への新たなアプローチ-」で知識アップを図ることにしました。

 

出版:最新医学社

この特集は序論に続き次のような内容になっています。
【座談会】
生活習慣病治療のパラダイムシフトがCKD研究に与えるインパクト

CKDにおける生活習慣病治療のパラダイムシフト
CKDと高血圧 -レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の最新知見-
CKDと脂質異常症 -脂肪毒性の役割-
CKDと糖尿病 -細胞内栄養シグナルを標的とした病態解明と治療-
CKDと肥満 -アディポサイトカイン調節機構と腎保護-
CKDと高尿酸血症

生活習慣とCKD進展とのクロストーク
新たなCKDリスクファクター -サルコペニア、フレイル-
CKDと骨代謝異常とのクロストーク
CKDと栄養とのクロストーク
CKDと睡眠障害とのクロストーク

CKD発症阻止のための母子環境へのアプローチ
母体環境がCKD進展に及ぼす影響
小児期の成育環境および生活習慣の変化とCKD発症・進展

CKD診断・治療のUp-to-Date
最新のCKDのバイオマーカー
CKD新規治療薬の開発-PHD阻害薬、Nrf2刺激薬、インクレチン関連薬、SGLT2阻害薬-

ブログに取り上げたのは【CKDにおける生活習慣病治療のパラダイムシフト】と【生活習慣とCKD進展とのクロストーク】です。
まず、要点と思ったものをそれぞれ表形式にまとめました。そして、前者は「レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAA系)」に関して、後者は、「サルコペニアとフレイル」について補足しました。
また、今回のブログを書くにあたり、ネット上にあった優れたサイトや資料もご紹介しています。特に「サルコペニア」「フレイル」の意味については『健康長寿ネット』がおすすめです。

なお、運動療法を中核とする「腎臓リハビリテーション」については次回のブログでご紹介させて頂きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「病気がみえる 腎・泌尿器

レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAA系)
血圧や有効循環血漿量の低下が起こると腎臓はレニンを分泌し、アンジオテンシノゲンがアンジオテンシンⅠを経てアンジオテンシンⅡに変換され、アルドステロンが分泌されます。これにより、血圧、循環血漿量が調節されます。なお、血圧上昇・循環血漿量増加がネガティブフィードバック(抑制的な指示)となりレニンの分泌が抑制されます。

腎臓の傍糸球体細胞は腎血流量の変化を感知し、減少すればレニンの分泌を促進し、増加すれば抑制するという仕組みをもっています。このレニンは発見当初は活性化の仕組みがわからずホルモンかキナーゼ(リン酸化酵素)の一種ではないかと考えられていましたが、現在ではタンパク質分解酵素の一種とされています。
ACE(アンギオテンシン転換酵素)も酵素です。肺などの血管内皮細胞によって産生・放出される血圧調節に関与しており、種々の呼吸器疾患、肝、腎、甲状腺疾患、糖尿病などで変動することが知られています。アンジオテンシンとアルドステロンは尿生成に関するホルモンです。双方、血圧上昇の働きがありますが、後者は体液量増加の働きももっています。アンジオテンシンは肝臓で合成されたアンジオテンシノゲンが元になっています。一方、アルドステロンは副腎皮質から分泌されます。

 

中央の2つがアンジオテンシンⅡとアルドステロンです。他に尿生成に関するホルモンとして、バゾプレシン、ANPがあります。

画像出展:「病気がみえる 腎・泌尿器」

横道にそれますが、「神秘の巨大ネットワーク」と題するNHKスペシャルが放映されています。これは脳が関与することなく、臓器同士がメッセージのやりとりをしながら様々な働きをするというものです。この中で臓器同士のやりとりは、ホルモンやサイトカインなどの「メッセージ物質」を介して行われますが、番組では、「人体の本当の姿は脳を頂点とするタテ社会と考えられてきたが、臓器同士の会話による巨大ネットワークが人体の真の姿である。」という考え方を紹介しています。
この考えに従って、RAA系(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系)をみてみると、主な臓器は腎臓肝臓副腎です。メッセージ物質は酵素のレニンACEとホルモンのアンジオテンシンⅡアルドステロンということになり、RAA系も「巨大ネットワーク」の1つということになると思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出版:東京書籍


サルコペニアとフレイル
こちらの図は本文に掲載されている「図1 CKD患者におけるフレイルの原因」と「図2 CKD患者におけるフレイルがもたらす結果」ですが、この2つの図を説明した箇所を引用させて頂きます。なお、クリックして頂くと拡大されます。


CKD患者においては、食思不振や食事制限による栄養摂取不足はサルコペニア、フレイルの主要因である。しかし、栄養摂取不足のみならず、尿毒症、全身性の炎症、糖尿病や心血管疾患などの併存疾患、代謝性アシドーシスやインスリン抵抗性などの代謝・内分泌系的異常なども、サルコペニア、フレイルの発症に関与している(左-図1)。さらに、透析患者では、透析による栄養素の喪失(アミノ酸やタンパク質の透析中への流出)や透析治療に関連した因子(透析液中のエンドトキシンや透析膜の生体的合成など)も加わり、サルコペニア、フレイルを非常に来たしやすい。サルコペニア、フレイルは感染症、心血管疾患、虚弱や抑うつなどを引き起こし、さらにこれらの合併症がサルコペニア、フレイルを増悪させる要因となる(右-図2)。
フレイルが要介護状態の前段階とすると、この状態は日本では介護予防の二次対策予防対象者に相当する。したがって要介護状態をできるだけ予防するうえでも、このフレイルの予防・介入は喫緊の課題である。サルコペニア、フレイルに対する包括的かつ積極的な介入が、CKD患者のQOL向上や生命予後改善のために不可欠である。』

 

平成28年9月に一般社団法人となった、日本サルコペニア・フレイル学会さまのサイトには次のような説明がされています。

 『世界的に社会の高齢化は大きな問題となっていますが、高齢者の機能障害や要介護に至ることを予防するためには、疾病の管理とともに老年症候群の管理が重要です。なかでも生活機能障害を招き、健康長寿の妨げになるものとしてフレイルやサルコペニアが非常に注目されています。フレイルは高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、機能障害、要介護状態、死亡などの不幸な転機に陥りやすい状態とされ、生理的な加齢変化と機能障害、要介護状態の間にある状態として理解されており、サルコペニアは、加齢に伴って筋肉が減少し、握力や歩行速度の低下など機能的な側面をも含めて定義されています。サルコペニアが進行すると転倒、活動度低下が生じやすく、フレイルが進行して要介護状態につながる可能性が高くなり、高齢者の運動機能、身体機能を低下させるばかりでなく、生命予後、ADLを低下させてしまう場合が多く、その対策が必要です。すなわち、サルコペニアはフレイルの一つの重要な要因ともいえます。』

 

 

 

「サルコペニア診療ガイドライン2017年版」:サルコペニア診療のためのガイドラインが、国立長寿医療研究センター、日本サルコペニア・フレイル学会、日本老年医学会によって作成されました。

同研究センター副院長の荒井秀典先生が監修された「サルコペニアがいろん」の中に、サルコペニアが起こるメカニズムに関する記述がありましたので、専門的な内容ですがご紹介したいと思います。

出版:ライフサイエンス出版


●加齢による神経筋シナプスの形態変性
『筋の運動機能を維持するためには、筋組織と運動神経が連携して運動時に必要な代謝産物、エネルギー量や酸素消費量の需要増大に対応する必要があります。脊髄にある運動神経細胞の細胞体から伸びた神経線維の終末部は、筋細胞と接して神経筋シナプス(接合部)を形成しています。加齢に伴ってこの神経筋シナプスの断片化、構造の単純化、神経終末の分枝化が起こります。このような神経筋シナプスの形態変性は、運動神経終末から分泌される神経伝達分子(アセチルコリン)の作用効率を下げ、サルコペニアにおける筋力低下や筋萎縮の原因となります。さらに、ビタミンDが神経筋シナプスの構造の維持に有効との報告もあります。』

左は神経筋接合部の構造です。

画像出展:「人体の正常構造と機能」


●筋幹細胞の老化との関係
サルコペニアの筋では、筋線維の数と断面積が減少しています。発生期の筋線維の形成や筋が損傷したときの修復には、再生・分化能をもつ筋幹細胞が必要ですが、加齢により筋幹細胞の再生・分化能や修復効率は低下します。しかし、筋の単なる加齢変化では明らかな筋損傷がみられないことや、筋幹細胞が筋線維の維持に必ずしも必要でないとの報告もあり、筋幹細胞の老化とサルコペニアの因果関係は、今後の課題です。』
●代謝バランスの破綻と可塑性の喪失
『筋力や身体能力の低下は認知症を含む老年症候群、要介護や死亡のリスクと相関することが明らかになっています。加齢による全身の変化は、筋量の減少ではなく筋の質的な変化と強く関連していることを示唆しています。筋肉も他の組織と同様に、通常は筋タンパク質の同化(合成)と異化(分解)が平衡状態に保たれています。骨折や脳血管障害などによりベッドレストで筋が不活動状態になると、同化と異化のバランスが急速に崩れ、筋は2週間で萎縮します。この萎縮した筋は通常の生活に戻ればすぐに改善されますが、加齢とともにその回復力は低下し、また加齢に伴う低栄養・低タンパク質は回復をさらに阻害します。
サルコペニアの萎縮した筋では遅筋線維の割合が相対的に増えると考えられます。若い筋では、運動により筋線維が肥大するだけでなく、運動の種類(筋力/耐久トレーニング)によって速筋線維と遅筋線維の割合を変化させることができますが、加齢とともにこのような可塑性は失われます。
免疫細胞の機能制御を担う多くのサイトカインは筋からも分泌されていて、サイトカイン以外の分泌タンパク質を含めてマイオカインと総称します。マイオカインは肝臓、膵臓、脂肪組織、免疫組織、骨、脳などにも血流で運ばれ、マイオカインの分泌制御は筋の運動機能や体内の栄養環境の影響を受けるため、サルコペニアだけでなく認知症など老年症候群の成因と強い関連があると考えられます。』

長寿科学振興財団 健康長寿ネット

 

「高齢者の病気」の先頭の2つに「フレイル」と「サルコペニア」があります。それぞれ、原因・診断・治療・予防などが丁寧に説明されています。

協和発酵キリンさまの運営サイトです。

とても親切なサイトで、マンガによる解説も付いています。

いま,なぜ睡眠と全身性疾患か?? ―全身性疾患を睡眠からとらえる

睡眠との関係を知りたいと思い検索して発見した資料です。

「おわりに」の冒頭は次のような内容です。『睡眠時間の減少や睡眠時の呼吸異常は、全身性炎症や心血管系疾患、代謝性疾患と密接に関連すること、さらに癌の進展リスクにもつながり得ることを示した。とりわけ、肥満に伴う閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)ではIH(間歇的低酸素[Intermittent Hypoxia])やそれに伴う全身性炎症が生活習慣病の発症進展に重要な役割を担っている。……』

療育-ほめ方・しかり方・言葉かけ

発達障害児に対し、潜在的な部分まで幅広く理解できることは大切です。一方、現場では、その時、その場で、その子に対し、もっとも適切な1番・2番を直感的に選択し、行動することが求められるのだろうと思います。また、これが「療育」のポイントではないかと思います。
11月に「はじめての療育」という本で勉強させて頂きましたが、咄嗟の判断ができるレベルはまだまだ先にあり、自信に満ちた対応、実践力を磨いていかないといけないなぁと思っていました。
そこで、まずは図書館より、今回の「発達障害の子どもが伸びる ほめ方・しかり方・言葉かけ」という本を借りることにしました。A4サイズと大きめで、111ページと手頃なボリュームであり、「これはいいね!」という印象でした。

amazonでは似たような内容の本を数多く紹介してくれるので、良くも悪くも迷ってしまうのですが、この本にはあまり安いものはなく、また、カスタマレビューが全くありませんでした。
ちょっとに気になり他の本もチェックしたのですが、最終的にこの本を手元に置いておきたいという気持になりました。

特に、内容紹介に出ていた「発達障害の子どもは、どんな言葉をかけてあげれば喜び、自信を持ち育つことができるのかを、シミュレーション。」とあったのが、決めたポイントです。というのは、過去ブログの「ありがとう ヘンリー」の中で、発達障害児にとって極めて大切なことは「自信と自尊心」であるということを頭にたたき込まれていたためでした。
なお、ブログは土台になると思われる第1章~3章について触れています。

 

監修:塩川宏郷

出版:河出書房新社

第1章 発達障害ってどんな障害なの?
『発達障害とは、言語・コミュニケーション・社会性などの発達になんらかの特性(偏りやゆがみ)があることによって生じる不適応状態をさします。生まれながらの(生来的な)脳機能障害と考えられており、個人によりその特性の強さが違います。最近では「障害」ではなく、本人の「個性」としてとらえることで、その特性を伸ばす方法が模索され、さまざまな支援が行われるようになってきています。』


発達障害は、大きく3つのタイプに分けられる
精神遅滞(知的障害)
 全般的な知的機能の発達の停滞をさします。
自閉症スペクトラム障害(ASD)
 ASDには自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害が含まれます。ASDの典型的な特性としては、「社会的な対人関係を築きにくい」、「コミュニケーションがとりにくい」、「こだわりが強い」という、広汎性発達障害の3つの特性が認められます。
特異的発達障害
 知的能力に全般的な遅れはないものの、「読む」「聞く」「話す」「書く」「計算する」「推論する」などの学習と関連する部分的な能力や機能で著しい遅れ見られるのが特徴です。読み、書き、計算など学習能力の習得に時間がかかるLD(学習障害)や、集中力がなく、衝動的で落ち着きや注意力がないADHD(注意欠如/多動性障害)も特異的発達障害に含まれます。
これらは、重なり合う部分が多くあり、また2つ以上の機能障害を併存している場合もあります。

 

発達特性は2~3歳ごろから見られ始める

子どもの発達は個人差が大きく、人によって発達特性が目立ってくる時期も違ってきます。自閉症スペクトラムは、典型的な子どもの場合2~3歳ぐらいで特性が見られるようになります。もっとも分かりやすいのは言葉の遅れです。アーウーといった声(喃語)は出しても、パパ、ママといった意味ある単語などが出てこない、指をさして教えないなどといった言動が特徴です。一方、ADHDの特性は5歳ぐらいから強くあらわれてきます。
発達障害の診断が確定的となるのは3~4歳ごろが一般的です。それまでの発達の経過は個人差が大きく、健常と病的な区別をつけることは困難です。従いまして、確定診断は急がず3歳を過ぎてから考えるのが妥当です。

 

画像出展:「発達障害の子どもが伸びる-ほめ方・しかり方・言葉かけ」

自閉症スペクトラム(ASD)の基本的な3つの特性
1.人との関わり方が苦手(社会的なやり取りの障害)
・人と目を合わせない
・名前を呼ばれても反応しない
・相手や状況に合わせた行動が苦手(マイペースな対人行動)
・自己主張が強く一方的な行動が目立つ
2.コミュニケーションがうまくとれない(コミュニケーションの障害)
・言葉の遅れ
・言われた言葉をそのまま繰り返す(オウム返し)
・相手の表情から気持ちを読み取れない
・ことわざや、皮肉、たとえ話を理解することが苦手
3.想像力が乏しい・こだわりがある(こだわり行動)
・言われたことを定義通りに受け取りやすい
・「ままごと遊び」「役割遊び」をあまりしない
・決まった順序や道順にこだわる
・急に予定が変わるとパニックをおこす


ADHDの基本的な3つの特性
1.不注意
・モノをよくなくす
・細かいことに気がつかない
・忘れ物が多い
・話し声や教室外の音が気になって集中できない
・整理整頓が苦手
2.衝動性(よく考えずに行動する)
・順番を待てない
・先生にあてられる前に答える
・他の児童に干渉する
3.多動性(落ち着きがない)
・じっとしていられない
・授業中も席を立ってウロウロする
・静かに遊んだり、読書をしたりすることが苦手
・手や足を動かしそわそわしている
・授業中でも物音をたてたりする


LDの基本的な特性は6つの学習能力の問題
1.「聞く」ことの障害
・会話が理解できない
・文章の聞き取りができない
・書き取りが苦手
・単語や言葉の聞き誤りが多い
・長い話しを理解するのが苦手
・長い話しに集中できない
・言葉の復唱ができない
2.「話す」ことの障害
・筋道を立てて話すことが苦手
・文章として話すことが苦手
・話しに余分な内容が入ってしまう
・同じ内容を違う言い回しで話せない
・話が回りくどく、結論までいかない
3.「計算する」ことの障害
・数字の位どりが理解できない
・繰り上がり、繰り下がりが理解できない
・九九を暗記しても計算に使えない
・暗算ができない
4.「推論する」ことの障害
・算数の応用問題・証明問題・図形問題が苦手
・因果関係の理解・説明が苦手
・長文読解が苦手
・直接示されていないことを推測することが苦手
5.「読む」ことの障害
・文字を発音できない
・間違った発音をする
・単語を発音できない
・文字や単語を抜かいして読む
・読むのが遅い
・文章の音読はできるが、意味が理解できない
6.「書く」ことの障害
・文字が書けない
・誤った文字を書く
・漢字の部首を間違う
・単語が書けない、誤った文字が混じる
・単純な文章しか書けない
・文法的な誤りが多い(「てにをは」の誤りが多い)

早めに気づいて、早めに支援を考える
発達障害は、3~5歳ぐらいまではなかなか確定診断できないといわれています。しかし、その特性の一部は赤ちゃんのうちからあらわれてくることが少なくありません。できるだけ早く特性に気づいてあげることが重要です。
こんな赤ちゃんの反応を見逃さないで
『発達障害の場合、顕著にあらわれていなくても赤ちゃんは生まれながらに特性を持っています。赤ちゃんの様子や反応を注意深く観察しましょう。
自閉症児を持つ母親などに赤ちゃんのときの状態を聞くと「人見知りをしない子だった」「夜泣きをしない子だった」というように「手のかからない子だった」という声が少なくありません。反対に「いくらあやしても泣き止まなかった」とか「特定のおもちゃしか興味を持たなかった」という「困った子だった」という声もあります。
発達障害の特性は、その子どもの個性でもあるので、あらわれ方は子どもによってそれぞれ違ってきます。しかし、いくつかの傾向があります。もし、子どもの動向が気になったら、なるべく早めに保健所や病院に相談しましょう。』
3歳を過ぎたら「かんしゃく」に注意
『3歳を過ぎたころになると、自閉症スペクトラムの特性を持っている子どもは、しばしば急に奇声を発したり、自分の腕をかんだり、自分の頭を壁に打ちつけたりすることがあります。「かんしゃく」や「パニック」と呼ばれる行動です。こうした行動には子どもなりの理由があります。
自閉症スペクトラムの子どもには「感覚の過敏性」があるといわれています。これは、身の回りの音や光が非常に強く感じられたり、温度やにおいという感覚について私たちとは違う感じ方をしたりいている状態をいいます。
感覚の過敏性を持っている子どもたちは、私たちが体験している世界とはまったく違った感覚の世界に住んでいると考えてみましょう。そしてその世界はしばしば不安や緊張に満ちあふれた世界なのです。また、他人の話している言葉が理解できず、相手の表情がなにを意味しているのかを読み取れないという状態も「特性」の一つです。ちょうど私たちが外国にたったひとりで放り出された状態を想像してみるとわかりやすいでしょう。
このような状況で、自分が対処しきれないできごとが発生してしまったときや、不安や恐怖を強める刺激が加わったときにパニックやかんしゃくが起こります。つまり、パニックやかんしゃくは不安や恐怖が自分ではどうすることもできない極限に達してしまっている、誰か助けてほしい、というサインなのです。
したがって、パニックやかんしゃくそのものを止めようとするのではなく、パニックを引き起こしてしまうような子どもをとりまく環境要因を調べることが大切になります。』

第2章 子どもが伸びる「言葉かけ」7つの基本
言葉かけの基本は、「ほめて」伸ばす
ほめられることで、落ち着いてくる
・ほめられることで成長し、「自分は生きている価値がある」「自分は必要とされている」という自分を肯定する気持ち(自己肯定感)を高めていくことができる。
・自己肯定感が高まってくると、少しずつパニックが減り、落ち着いていく。
・特性がある子どもは家庭でも学校でもほめられることより、しかられることが多く、大きな劣等感を抱えている場合が多く、いつまでも自分に自身が持てない。
ほめることは、子どもの将来につながっている
・ほめるとは、小さくとも子ども自身が一つの壁を越えたことを認めることである。
・普通の子どもにとっては何気なくできることでも特性をもっている子どもには、大きな壁であることを理解する。

 

画像出展:「発達障害の子どもが伸びる-ほめ方・しかり方・言葉かけ」

指示は短く、わかりやすい言葉で具体的に
長い指示が苦手な場合がある
・特性を持つ子どもは一般的に長い文章(指示)が苦手である。例えば「手を洗ってからご飯を食べよう」という指示に対して、前半部分の「手を洗って」を忘れてしまう。
指示は、短くわかりやすい単語で一つひとつはっきりと伝える
・特性をもっている子どもに話しかけるときは、できるだけ短く、わかりやすい言葉を使う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「発達障害の子どもが伸びる-ほめ方・しかり方・言葉かけ」


「ダメ!」と否定的で強い言葉でしからない
否定的にしかるより、やるべきことを具体的に指示する
・特性を持っている子どもは、「いけません」と言われても、そのあとに自分が何をすればいいのかわからないと、とまどってしまう。例えば「ドアを開けっ放しにしてはダメ」という表現は「ドアを閉めて」に言い換えると、理解および行動がしやすくなる。

 

画像出展:「発達障害の子どもが伸びる-ほめ方・しかり方・言葉かけ」

しかったり注意したりする回数を減らす
注意する回数を減らすことで気持ちを安定させる
・ADHDの子どもは「不注意」「落ち着きがない」「衝動的」という特性を持っている。お母さんが怒っていることは理解できるが、どうしても行動を抑えられないのがADHDの特性であり、その事実を理解してあげる。
一度、子どもの注目を引きつける工夫をする
・ADHDの子どもは、何かに夢中になっているときは、お母さんの声が「聞こえていない」場合もあるので、一度、子どもの近くへ寄って注目を引いてから注意する。また、注意するときは感情的になって大きな声を出したり、命令口調で注意したりしない。
子どもがとまどう言葉かけを避ける
皮肉や冗談は通じないことが多い
・自閉症スペクトラムの子どもの中には、よくおしゃべりする子どももいるが、直接的でない表現を理解することは難しい。「直接的でない表現」とは、慣用的表現、比喩、暗示、反語、まわりくどい表現など。

 

画像出展:「発達障害の子どもが伸びる-ほめ方・しかり方・言葉かけ」

毎日の予定表を作って声をかけて確認しよう
スケジュール表で次にやることを確認させる
・特性を持っている子どもは、次になにをやるのかわからないと不安を感じる。そこで、目で見て確認できるように1日のスケジュール表を作り、できあがったスケジュール表を親子で確認しながら行動する。
体罰は、百害あって一利なし
体罰には有害な作用しかない
・体罰では特性は治らない。体罰は、親とのきずな、のびのびとした心、おとなへの信頼感、周りの人を好きになる気持ちなど子どもが本来持っている大切なものを壊してしまう。
・「がんばったね」とほめてあげることが子どもを伸ばすことにつながる。


第3章 子どもの気になる行動を減らす言葉かけ
パニックを起こしたときに落ち着かせる言葉
・パニックは、突然、奇声を発したり自分や他人に噛みついたり、物を投げつけたりする行動であるが、パニックには、必ず理由や原因がある。
・子どもがパニックを起こしたときはしからないことが基本。子どもの気持ちになって「いつものと違うから嫌なの?」というように言葉にしてあげると落ち着くことがある。

 

画像出展:「発達障害の子どもが伸びる-ほめ方・しかり方・言葉かけ」

前もって変更や変化を説明しておく
・普段から子どもがパニックを起こす状況や傾向を把握するようにする。
・特性を持っている子どもにとっては、「あらゆる変化」が大きなストレスになる。
・パニックを減らすためには、何か変化が予定されていたり、予測できる場合はあらかじめ説明して心の準備をさせることが役に立つが、子どもがうまく行動できたときには、「ありがとう」「えらいよ」と言葉をかけてあげることが重要。子どもはほめられることで自分自身でパニックを回避する行動を少しずつ覚えていく。

しかっても聞かないときは、しかり方を変えてみる
長いお説教には効果がない!
・特性によっては相手の話していることが理解できない場合もある。
・以前の失敗を蒸し返すようなしかり方は、特に理解が難しい。
・しかる場合
 ・そのときその場でしかる
 ・短いことばで具体的にしかる
 ・どうすればしかられないかを具体的に教える etc
子どもの気持ちを想像してみる
・「6年生なんだからこのくらいはわかるだろう」と思うのではなく「6年生になったけど、これくらいはわかっているかな?」と考えながら行動を観察することが大切である。

食事時の気になる行動-①
同じおかずしか食べないのはこだわりのため
・特性を持つ子どもの偏食は単なる好き嫌いによるものではなく、食べ物の味、色合い、におい、食感などの感じ方が通常と異なっているために起きていると考えられている。
残したことをしかるより食べたことをほめてあげる
・偏食はどうしようもないものと切り替え、好きなものを全部食べたことをほめることが大切。子どもはほめられることで食事が楽しくなり、もっとほめられたいと思うようになる。

 

画像出展:「発達障害の子どもが伸びる-ほめ方・しかり方・言葉かけ」

食事時の気になる行動-②
まわりが気になって食事に集中できない
・多動傾向の特性をもつ子どもにとっては、食事中に他のことが気になることはどうすることもできない部分があると理解してあげる。
食事に集中できるような環境をつくる
・食事に関係ないもの(テレビ、おもちゃなど)は食卓から遠ざける。
・「7時になったらテーブルにつこう」とか「この番組が終わったら食事だよ」、あるいは「7時半までに食べたら、お父さんとゲームをしよう」などと子どもが準備できるように声をかけてあげる。

 

画像出展:「発達障害の子どもが伸びる-ほめ方・しかり方・言葉かけ」

ルールやマナーが理解できないときは
ルールやマナーを覚えることが難しい
・ルールやマナーをある程度理解できたとしても、順番を守ることやその場の雰囲気を読み取って行動すること、「暗黙の了解」などは苦手な子どもが多い。
言葉よりも「可視化」でルールを理解しやすくする
・「目に見える形」にすることは理解の助けになる。「絶対にこれだけは守る」ということをいくつか選び、壁や机に紙をはったり、手帳などにメモしたりすると良い。

 

「ほどほど」がわからないときにかける言葉
極端な行動をとってしまうのは「ほどほど」が理解できないから
・「おなかがいっぱいになったらやめる」「暑くなったら上着は着ないよ」「そろそろ遊ぶのをやめよう」といったあいまいな指示は特性のある子どもはうまく理解できず、なかなか従うことはできない。
・ポイントは「ほどほど」をお母さんや周囲の人が決めてあげること。お茶碗2杯、気温が10度といった数値や、時計の針がここまできたら次の遊びをする。など目で見てわかるように工夫する必要がある。
「ほどほど」がわからないのは「こだわり」のせいかも
・一つのことにこだわると他に注意を向けることは難しい。
・こだわり行動は好きでやっている場合以外に、不安に感じたり緊張したりする場面で見られることが多い。この場合、不安や緊張の原因やきっかけがあるはずなので、それを見つけてあげることが最初にすることである。原因が見つからない場合には、子どもが「不安を感じているんだな、緊張しているんだな」と」理解してあげるようにする。
・こだわり行動は、成長・発達とともに目立たなくなっていくことが多いので、あせって行動を何とかしようと頑張らず、しばらく見守ることも大切である。

 

画像出展:「発達障害の子どもが伸びる-ほめ方・しかり方・言葉かけ」

「こだわり行動」がエスカレートしたときにかける言葉
こだわり行動に対する考え方
・こだわり行動が強くなる場合としては、環境の変化やスケジュールの変化、年齢があがることで期待されることが増えることへのプレッシャー、引越しや就園・就学などの「ライフイベント」などがきっかけになることが多い。
・環境変化を点検することが第一。まずは子どもとその周囲の環境をよく観察する。観察のポイントは今までとの違いは何かということ。また、観察したことをノートに記録することが非常に重要。記録しておかないと分析ができず、適切な対策につながらない。

付記

「発達障害ポータル」さまから配信される「コラム」で勉強させて頂いているのですが、「療育」には以下のような側面もあるようです。 

慢性腎不全が鍼治療で改善!

慢性腎不全の患者さまへの施術で、クレアチニン値3.64から2.38に改善された症例がありましたのでご紹介させて頂きます。なお、体調も良くなり通常のお仕事に復帰されました。
・施術期間:2017年11月-2018年1月
・施術回数:9回
・クレアチン値:3.643.022.502.38

今回、ブログを書くにあたり患者さまにご相談したところ、検査結果もお見せ頂けることになりました。下記がその検査結果ですが右上に日付が出ています。なお、クリックして頂くと拡大されます。



CKD診療ガイド2012を元に、内臓トレーニング協会さまが作成されたグラフです。これを拝見すると、クレアチニン値が3.5以上になると手術が必要になってきます。

画像出展:「内臓トレーニング協会

 

 

 
腎移植手術を行う場合、医療費助成制度適用には、「腎機能障害の身体障害認定」が必要となります。4級の評価基準は右端にある「クレアチニンクリアランス(Ccr)20以上30未満」もしくは「クレアチニン値3.0以上5.0未満」のいずれかを満たすという条件です。つまり、3.0という数値は日常生活活動の制限を覚悟しなければなりません。

 

画像出展:「腎援隊

疾患-慢性腎臓病」でも触れていますが、「鍼治療が慢性腎臓病(CKD:chronic kidney diseas)に有効ではないか」ということを考えるようになったのは、静岡トレーニングクリニック 廣岡院長の著書、「腎臓病を自分でなおす -私たちはクレアチニン値を自分で下げた-」を拝読させて頂いたことによります。仮説ということではありますが、「クレアチニン値の下がる理由(特に青字箇所)」鍼治療の可能性を確信した理由です。

注)静岡トレーニングクリニックさまで行われている「内臓トレーニング療法」は鍼治療ではありません! 「低周波パルス印加装置」を使用されています。

 

発行は、2015年4月です。

出版:アイシーアイ出版

クレアチニン値の下がる理由(仮説) 
a 人体を細胞レベルで見ると
『体を細胞レベルで見ると、約60兆個の細胞からできています。全ての細胞は、酸素を取り入れて二酸化炭素を排出し、アミノ酸やブドウ糖などの栄養を取って老廃物を排出しています。細胞に栄養と酸素を届けるのは血液であり、二酸化炭素と老廃物も血液によって回収されます。ですから、細胞は血液が届けば健康ですが、届かなければ衰弱し、もし酸素が届かなくなれば10分ほどで死んでしまいます。つまり、細胞にとって血液は生命線であり、全身の細胞に血液が行き届いていれば人間の体は元気でいることができます。
b 細胞も生き物、その健康状態はさまざま
細胞は生き物です。生き物は単純に生か死に二分することは出来ません。元気な細胞、疲れた細胞、病気の細胞などがあり、徐々に弱って寝込んだり倒れたりして最後に死を迎えます。一般的にクレアチニン値1.00を超え、腎機能に支障があると診断されたときには、その機能の半分が不全に陥っています。しかし、1.00の時、半分の細胞が死滅し、残りの半分の細胞が元気というわけではありません。細胞は活発に活動しているものから、瀕死の状態のものまでさまざまな健康状態で混在しています。腎臓の機能の回復を図ろうとするなら、弱っている細胞に新鮮な酸素と栄養をたっぷり与えれば、人間と同じように元気になるはずです。それには腎臓の血流を活発化すればよいのです。』
c 血液が届けば細胞は元気になれる
全身の血流を活性化し、臓器に血液を送りこめば、元気な細胞は今まで以上に元気になり、疲れた細胞は疲労を回復し、病気の細胞も治癒し、瀕死の細胞も息を吹き返すはずです。そして、疲労しきった腎臓の機能全体が回復してクレアチニンの数値も下がるはずです。現に、内臓トレーニングでクレアチニンを下げたり、数値の上昇を抑えている人は7割を超えています。内臓トレーニングが、クレアチニンは下がらないという医療界の常識に反して効果を挙げている理由は、ここにあると考えています。ただし、この考え方は科学的に証明されたものではありません。あくまでも細胞生理学的な見地からの仮説です。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「内臓トレーニング協会

また、次のご指摘も納得のいくものでした。
血液の流れる仕組み
『血液の大循環を考えてみましょう。心臓から押し出された血液は動脈を伝って全身に届けられ、静脈から心臓に戻ります。血液循環で一番難しいのは下半身に降りた血液を引力に逆らって心臓に戻ることです。心臓から足のつま先まで約1メートルの高さがあります。下半身の血液は、主として第2の心臓と呼ばれるふくらはぎの筋肉が動かします。ふくらはぎの筋肉がしっかり動けば、下半身の血液は尺取虫にように押し上げられて、心臓に戻ります。日常生活の中でふくらはぎを動かすには歩くことです。しかし、現在は車社会で歩くことが極端に少なくなっています。このため、下半身に汚れた血液が溜まり、さまざまな病気になりがちです。
次に毛細血管の血液の流れを説明しましょう。毛細血管は筋肉の中にあり、毛細血管の血液も筋肉の収縮によって体の隅々まで流れます。やはり、運動が必要です。ですから、歪んだ姿勢で生活したり、肩こりや腰痛で筋肉を固めてしまうと、筋肉の収縮頻度が少なくなり、毛細血管の血液の流れまで悪くなってしまいます。血液の流れを円滑に保つことは、健康な人でもなかなか大変なことです。ましてや腎臓を患っている人は、当然血液の流れが滞りがちです。』

 

画像出展:「腎臓病を自分でなおす」

 


警告のための名称
廣岡先生は、2012年5月に発行された「腎臓病をなおす-内臓トレーニングでクレアチニン値は下がる-」の中では、次のようなお話もされています。
腎臓の働きが衰えてくると、一般に慢性腎臓病とか慢性腎不全と診断される。しかし、この名称は「腎臓の機能が衰えてきています」と腎臓の働きの状態を表した病名で、いわゆる「警告のための名称」と考えるとわかりやすい。

 

 

 

 

廣岡先生が実施されている治療は「内臓トレーニング」とよばれ、ホームページにも詳しく紹介されています。

ご参考1

ホームページに紹介されている「田坂定孝教授著[低周波脊髄・頭部通電療法]中外醫學社刊」は、「国立国会図書館デジタルコレクション」の中にありました。資料は「図書館向けデジタル化資料 送信サービス参加館」に登録されていれば、その図書館にある専用端末で閲覧およびコピーが可能です。添付は、「田坂定孝教授著[低周波脊髄通電療法]」です。これは[低周波脊髄・頭部通電療法]の2年前の1958年に発行されたものです。実は、間違ってこちらを閲覧・コピーしてしまいました。なお、『本通電法を一応低周波脊髄通電法(以下低脊通電と略す)と命名して昭和30年8月20日に(日本医事新報,第1634号)に報告したものである。』と記されていました。

右側は「低脊通電の臨床効果」が書かれた最初のページですが、見ずらいため冒頭の一部を書き出しました。

 

『低脊通電は諸種中枢性神経疾患ことに脳卒中後片麻痺にみられる運動障害に有効であるばかりでなく、視覚障害・言語障害・拘攣・自律神経障害および精神障害などにたいしても有効であり、約15%くらいの無効例および15%くらいの微効例はあるが、その他の70%においては効果がはっきり認められ、しかもこのうち約20%においては卓効または劇的な効果がみられた。・・・』


鍼治療の概要
当院の鍼灸治療は経絡治療になりますが、日本伝統医学研修センターにて相澤良先生よりご教授いただいた経絡治療になります。これは、岡部素道先生が昭和20年~39年の第2期に行っていたもので、陰陽論を具体化するものであり、「祖脈診」による脈診は病理を鑑別します。これに問診、腹診などを考慮して総合的に判断します。今回の患者さまは、瘀血が疑われる熱型で、肝経の金穴(中封)・水穴(曲泉)、腎経の金穴(復溜)・水穴(陰谷)を本治としました。なお、腹部の中脘、左右天枢、関元の4穴も本治に加えています。

下図は祖脈診の概要です。右の写真は現場で使うシャーレと寸3-1番の40本の鍼です。殿筋など長い鍼が必要な場合は、寸6-3番や2寸-5番を使っています。 


「内臓トレーニング」では、ふくらはぎ、足裏、背中(脊柱際)を治療ポイントとしています。

今回は足の浮腫みがあったため、腓腹筋ヒラメ筋をターゲットにツボを意識しつつ、触診により刺鍼点を決めました。
また、軟らかい印象があった背中ですが、刺鍼してみると少し深いところに顕著な硬さがあり、曲がってしまう鍼もありました。この硬さは普通ではなく最重要の刺鍼エリアであると判断しました。置鍼時間は20~30分を目安とし、必要に応じて、単刺や抜鍼時の雀啄を行い、硬さをつくっている熱が外に排出されるイメージで鍼を抜きました。

 

夾脊(華佗夾脊)」は、経絡治療、中医学ともに使われる奇穴です。教科書には主治として「胸腹部の慢性疾患」とあります。

画像出展:「新版 経絡経穴概論」

神経リンパ反射療法でご紹介した「チャップマンによる内臓器官反射点」です。この反射点を活性化すると、『自律神経系を通して反射点と連結する内臓に影響を与えることが可能である。反射点の治療を通して交感神経緊張の制御が切り替わり、関係する内臓の血流が良くなり代謝推移が素早く正常化する。』との解説がされています。

Dr. Frank Chapman, DO(Doctor of Osteopathic Medicine)

画像出展:「神経リンパ反射療法」

整理をすると、今回の標治ヒラメ筋腓腹筋T1(第1胸椎)~L2(第2腰椎)の脊際、さらに、脳への血流を意識し、後頚部を加えたものが刺鍼部位になります。

ご参考2

五行説:陰陽と並ぶ古代中国の自然哲学の思想。陰陽五行説という捉え方もされる。万物は「木火土金水」という五つの要素により成り立つとする。

相撲は日本古来の神事とされていますが、ここには「五行」が存在します。
・土(土表)
・金(白ぶさ)
・水(黒ぶさ)
・木(青ぶさ)

・火(赤ぶさ)

画像出展:「ウィキペディア

腎臓の働き
・腎臓の働きは大きく分けると、「尿生成」と「ホルモン産生・調節」の2つですが、臨床的には尿生成を腎機能としています。
。その尿生成に関しては、「よくわかる生理学の基本としくみ」という本の中に、例をあげて分かりやすく説明がされていましたので、こちらをご紹介させて頂きます。(右側の腎機能の図は「病気がみえる vol8 腎・泌尿器」からのものです)