飲水の重要性

サラリーマン時代は風邪で会社を休むことはほとんどなかったのですが、小学生の頃は2ヵ月に1回ぐらい、熱を出して近所の医院にお世話になっていたように思います。その時、必ずお医者さんに言われていたのが、「水を飲んでいるか!?」というフレーズでした。
今回の本を読むまで、コーヒーを水分だと思っていた私が言うものおこがましいのですが、患者さまに「水分を摂っていますか?」とたずねると、「なるべく摂るようにしている。」という回答の方が「あまり意識していない。」より多いと思います。飲水が重要だということを、うまく患者さまにお話できれば良いのですが、残念ながら知識不足でした。
そこで、今回も本に頼ることにしました。図書館から借りてきたのが「知って納得! 水とからだの健康法」であり、ネットで購入したのが「病気を治す飲水法」です。後者は本文の中から重要と思う箇所をそのまま引用させて頂きました。

民間療法に理解が深かったとされる岡田道一博士は水の正しい飲み方として、次の3箇条を紹介されています。
1.朝起きたら、コップ2、3杯の生水を飲む。
2.1日中に合計10杯の水を飲む。
3.病気になったら、薬の前にまず水を飲む。
また、京都大学名誉教授で日本水質保健研究所所長などを務めた川端愛義先生は、水は自然の健康飲料だといい、正しい飲み方をすれば健康維持に効果を発揮すると述べています。そして、川端先生は、「生水美容説」を唱え、その中でいくつかの根拠を上げられています。

 

監修:佐巻健男

出版:小学館

1.水には人体の恒常性を維持する働きがある
人間の生理の基調にあるのは恒常性で、これがあるおかげで体温は常に36~37度を保っています。この恒常性は、水によって支えられています。また、ホルモン作用や酵素作用など、人体にとって大切な働きも水が重要な役割を持っています。美しさを根本で支え、保っているのが水、というわけです。
2.水には整腸作用がある
水は胃腸内の有毒・有害物質を排除して消化器の機能を調整する働きがあります。つまり、水には便秘にも下痢にも効力があるということです。美容の大敵といえば便秘です。水の整腸作用は、便秘を解消し美容に効果を上げるのです。
3.水は栄養を補給する
美容に必要な栄養やホルモンなどは本来、消化器を通して摂取され、体内でつくり出されるものです。それらが血液やリンパ液によって体中の組織に運ばれていくのです。そのためには、体内に十分な水分がなければなりません。いくら化粧をしても、体内の水分が不足すれば美しくはならないのです。つまり、水は内側からの化粧水なのです。
4.水は老廃物を排除する
人間のからだは食物と空気からエネルギーをとり、体内で必要な形に変えて活動しています。その過程では、つねに老廃物が生まれます。これらは速やかにからだの外に排出しなければ、美容はもとより健康をそこなうもとになってしまいます。水は汗や尿、あるいは便として、体内の老廃物を外に出し、健康と美容を保つために大いに役立っています。
5.水は肥満を予防する
水飲み法によって健康的なダイエットが実現可能です。

 

画像出展:「知って納得! 水とからだの健康法」

6.水は解毒作用を促進する
お酒を飲み過ぎたり、食べ過ぎたりしたとき、体内では解毒作用が行われます。このとき必要になるのが水の摂取です。水をとることで代謝活動が活発になり、しみ、そばかす、にきび、あるいはアトピー性皮膚炎のもとになる有毒物質の分解が進みます。健全な新陳代謝なしには肉体の若々しさも肌の美しさもあり得ません。この新陳代謝を調整するのが水なのです。要するに、いちばんの美容とは健康を保つことであり、そのために水は重要な役割をはたしているということです。

次の本は、今回購入したものです。著者の紹介などはブログの最後にある、訳者の林先生が書かれた『訳者あとがき』をご参照ください。

『関節痛、各種ヘルニア、アンギナ、喘息、うつ病、潰瘍、肥満、腫瘍、エイズに至るまで、元をたどれば、体細胞の内外の決定的水不足による代謝障害が原因であり、同一の原因にたどれる体内水不足の「叫び声」が痛覚となって現れ、もろもろの病名がつけられているというのです。その見事な説明がこの一冊に収められています。
収められている多くの治療レポートは、不安になっている病人に勇気を与えてくれるものです。細胞膜を通しての水の浸透メカニズムにおいて、水の分子だけが細胞内に浸透するため、治療に使うのは水道水で十分であると博士は説明しています。これも大切な点です。ペットボトルを買う必要はありません。飲みづらければ浄水器を付ければいいだけです。今日から水道水の蛇口をひねりましょう。』

著書:Fereydoon  Batmanghelidj(バトマンゲリジ)

原版の題名:Your Body's Many Cries for Water

訳者:林 陽

出版:中央アート出版

目次は次の通りですが、太字の項目には説明をつけています。

CONTENTS(目次)
各界の賛辞
序 薬で渇きを処理するな
CHAPTER1 なぜ薬で病気が治らないのか
 基本
 変えるべきパラダイム
 医学の誤診のもとを探る
CHAPTER2 新しいパラダイム
 ライフステージごとの水の制御
 理解を徹底させる
 その他の作用
CHAPTER3 消化不良痛
 結腸炎の痛み
 盲腸の痛み
 裂孔ヘルニア
 要約
CHAPTER4 リウマチ痛
 腰痛
 首の痛み
 胸の痛み
 頭痛
CHAPTER5 ストレスとうつ病
 水不足に関係する代償メカニズム
 エンドルフィン
 コルチゾン
 プロラクチン
 バソプレッシン
 アルコール
 RA(レニン・アンギオテンシン)系
CHAPTER6 高血圧
 高血圧の原因としての水不足
CHAPTER7 高コレステロール血症
 考慮すべき証言
CHAPTER8 肥満
 過食を定義し直す
 ダイエットソーダ
CHAPTER9 アレルギーと喘息
CHAPTER10 糖尿病
 インシュリン非依存性糖尿病
 トリプトファンと糖尿病
 インシュリン依存性糖尿病
CHAPTER11 エイズ
 エイズ研究の新展開
CHAPTER12 最も簡単な治療法
 快眠
 めまいの予防
 心臓発作の予防
 尿の色
 病気治療に役立てる方法
 塩ぬきダイエットの間違い
 医療制度と私たちの責任
 医療費の節減
 おわりに
訳者あとがき

CHAPTER1 なぜ薬で病気が治らないのか
基本
・『体のどんな働きも、水の流れに監視され、それと一体になっている。それで、「水管理」だけが、適切な量の水と水に乗って動く栄養素を最重要器官に真先に届かせる、唯一の手段になる。このメカニズムは天敵と捕食動物に対抗するためにますます強化された。それは生死をかけた究極のシステムであり、今の競争社会においても同じように働いている。
体内水分配において避けられないプロセスの一つが、あらかじめ決められた量以上の水を受け取らないように、特定部位が厳しく管理されることである。それは体のどの器官にもいえることだ。
水を充当する系の中で最も優先されるのは脳である。脳は体重全体の50分の1を占め、血液の18.20%を受け取っている。水の制御と供給をあずかる因子が活発になれば、水不足の警報が鳴りはじめる。それは冷却水の不足した車がオーバーヒートを起こすようなものだ。』
・『文明社会では、茶、コーヒー、アルコール、製造飲料が水の代わりになると考えられているが、この考えが致命的なミスを生んでいる。これらの飲料には確かに水が含まれているが、脱水成分も含まれている。それが飲料水分だけではなく、体に貯蔵されている水まで排除してしまうのである。』
医学の誤診のもとを探る
・『現時点では、喉の渇きが体の水不足の唯一受け止められている信号である。しかし、この信号は極度の水不足が発する最後のサインであり、喉の渇きを示さない段階で、すでに慢性水不足が起きているのである。ビタミンC欠乏から起きる懐血症、ビタミンB不足から起きる脚気、ビタミンD欠乏から起きるくる病、鉄不足が起こす貧血症等、どんな欠乏障害とも同じく、その症状をもっとも有効に治療する方法は、欠乏した成分を補うことである。慢性水不足の合併症が認められれば、その予防と初期療法はきわめて単純である。
この研究は、私が1987年の国際癌学会に講演者として招かれ、パラダイム転換の情報を提供する前から医師仲間に評価されていた。次のページに載せるベリー・ケンドラー博士の手紙は、慢性水不足を病の発生源とする科学的見解の正しさを確認している。大部分の変形性疾患の原因が慢性水不足にあることを説明するために、私は多くの文献を参照したが、彼はそれも調べている。
医学書を参照するとなれば、千ページを超える書物に目を通さなければならない。だが、人間の主だった病の理由を述べる段になれば、どの説明も同じである。「原因不明」の一語で、すべてが片づけられているのである。』

 

画像出展:「病気を治す飲水法」

CHAPTER2 新しいパラダイム
その他の作用(水には溶媒と運搬以外にも多くの性質がある)
・『体のすべての代謝機能に欠かせない加水分解の働き。化学反応が頼っているのは水である。種子を発芽させ、新しい植物へ成長させるのにも似た生化学作用がそれである。』
・『細胞膜での働き。細胞膜に浸透する水の流れから電力(ボルト)がつくられ、ATP(アデノシン三燐酸)とGTP(グアノシン三燐酸)という、二大細胞バッテリーに蓄えられる。ATPとGTPは人体の化学的エネルギー源であり、特に神経伝達のさいに分子交換に使われる。』
・『細胞の構造を繋ぐ接着剤に似た働き。水はニカワのように細胞膜の固形部を結合し、高い体温の下でも「氷」のように固める作用を持っている。』
・『体内蛋白質と酵素は、あまり粘り気の無い溶液の中で、有効に働く。細胞膜に存在する受容器(受容点)も同じである。蛋白質と酵素は、粘り気の多い(水不足状態にある)溶液の中では有効に働かない。』
・『脳で生産された物質は、水に乗って、神経終末部の目標地点にたどり着き、情報の伝達に使われる。神経には、情報を梱包して流す「極微細管」と呼ばれる微細な水路が存在する。

 

画像出展:「病気を治す飲水法」

この非常に興味深い神経線維内の水路について、ネット検索したのですが水路として解説されたサイトを見つけることはできませんでした。しかしながら、東京大学で「研究のショーウィンドウ」とされる、UTokyo Researchの中に、「細胞内輸送の解明にかける思い」という記事があり、そこに出ていた図が、よく似ているのでお紹介させて頂きます。用語が微妙に違うのは原文を翻訳しているからかも知れません)

 

 細胞内輸送の解明にかける思い

『これまで、記憶や学習の研究では、シナプスの受容体や、電位を調節するイオンチャンネルなど、神経細胞の表面にあるものばかりが注目されていたのですが、実は、細胞内部の輸送も大きく効いていることがわかりました」と廣川特任教授は胸を張ります。

画像出展:「UTokyo Research」

『このように、体のあらゆる機能を調節しているのは水である。体の溶媒たる水が、そこに含まれる溶質の働きを含め、体内のあらゆる機能を調節しているのである。この新しい科学的真理(パラダイム転換)を、未来のあらゆる医学研究の基礎とすべきなのである。』

CHAPTER3 消化不良痛
裂孔ヘルニア
・『水を飲むと、飲んだ量に応じて、モチリンと呼ばれるホルモンが分泌される。水を飲めば飲むほど、腸からモチリンが生産される。モチリンが腸に与える効果は、腸のリズミカルな収縮、上から下へと向かう蠕動運動を起こすことにあり、腸の中身を流す弁を、随時開閉することも含まれる。
このように、体内に十分な量の水があれば、すい臓は重炭酸液を生産し、胃の酸性物を受けとれるよう腸を準備できる。この理想的条件の下で、幽門は開き、胃の内容物を吐き出せるのだ。モチリンはこの働きを調節する中心的伝令である。』 (モチリンについてはブログ「便秘(大蠕動)」でも触れています)
・『重度の水不足合併症で、かなり誤解されているのが、過食症である。 ~中略~ 過食症の人は、食べものを胃にとどめられず、すぐに吐き出す抑えがたい衝動に駆られる。それで「非社交的症状」と呼ばれる。彼らの「空腹感」は、実際には、渇きの信号であり、吐きたくなる衝動は、先ほど説明した保護のメカニズムからくる。過食症の人が十分に水を補給し、食事をとる前に水を飲むようにすれば、この問題は解消する。

CHAPTER4 リウマチ痛
・『リウマチ関節炎とその痛みは、まずもって、患部の軟骨の表面が水不足に陥っている信号と見るべきである。関節痛は体の局所の渇きの信号であり、塩分の不足が一因を成していることもある。
関節の軟骨の表面には水分が多く含まれている。その潤滑機能のおかげで、関節が動くときに、対抗する面同士が自由に擦れ合う。骨細胞はカルシウムの層に浸っているが、軟骨細胞は水の豊富な基質に浸っている。軟骨の表面が擦れ合うと、細胞の一部が摩滅して剥がれ、骨表面の成長突起から新しい細胞が補充される。水の多い軟骨では摩滅する度合いは少ないが、水不足状態にある軟骨ではその割合が大きくなる。軟骨の再生と摩滅の割合が関節が有効に働く指標になる。
骨髄で活発に成長する血の細胞は、骨の中を通る水を軟骨に優先させる。血量を増やそうと血管を膨らませるときに、骨の硬い穴を通る支脈が十分に広がらないことがある。水と栄養を血管に頼る細胞には決まった割り当てがある。この状態で、より多くの水を運べるよう血が希釈されていなければ、軟骨に必要な血清を、関節嚢の血管から補給せざるを得なくなる。どの関節にもいえることだが、神経がつかさどるこの迂回メカニズムが痛みの信号を出す。
関節痛は関節が十分に水和されるまで圧力に耐えられない合図である。この種の痛みは飲む水の量を増やすことによって扱うべきである。そうすれば、一帯に流れる血は希釈され、軟骨に十分に水が行き渡り、骨に接する基礎から修復される。

画像出展:「病気を治す飲水法」

CHAPTER5 ストレスとうつ病
水不足に関係する代償メカニズム
・『水不足から起きてくる体内プロセスはストレスのそれと変わらない。水不足はストレスに等しいのである。ストレスが起きれば、それに関係する基本物質が体の貯蔵庫から引き出され、蓄えられている水も引き出される。水不足がストレスを、ストレスがさらに水不足を起こす悪循環がここにはじまる。
・『ストレス状態にあるといくつかのホルモンが過剰になる。体は「戦いか逃走か」の反応に向かって動き出し、危険な状態になる。体は人間の社会的変化とは無関係に、職場のストレスを含め、どんなストレス状態にあっても、「戦いか逃走か」の体制をとろうとする。ここで、いくつかの強いホルモンが分泌され、体がストレスからぬけ出すまで発動状態になる。その主なものが、エンドルフィン、コルチゾン解放因子、プロラクチン、バソプレッシン、レニン・アンギオテンシンだ。』
RA(レニン・アンギオテンシン)系
・『RA系は脳内ヒスタミンの発動に従属するメカニズムである。RA系は腎臓でも活発に動いているが、発動するのは体水量が減少したときである。RA系は水を保つために発動し、それに必要な塩分の吸収をうながす。水でもナトリウム(塩)でも、体に不足すれば、RA系が非常に活発になる。
RA系は、水とナトリウムが十分に使える量になるまで、毛細血管床と脈管系を収縮させる。それは血管系が淀みを起こさないためだ。測定可能なほど収縮が進めば「高血圧」と呼ばれる。血圧200で高いと思われるだろうか。私の診たイラン人は、高血圧の病歴がなかったが、政治犯収容所に送られたときに、血圧は300を超えていた。
ストレスが血管を縮ませる理由は簡単だ。人体の機能はすべてが絡み合っている。ストレスが起きれば、蛋白質、でんぷん(グリコーゲン)、脂肪などの貯蔵物質を出すために、水が使われる。その不足した水を補うために、RA系はバソプレッシン等のホルモンと力を合わせて、血管を収縮させる。
腎臓はRA系が活動する主な部位である。尿を生産し、余分な水素、カリウム、ナトリウム、老廃物を排出する責任を負っている。腎臓は、尿を生産するのに十分な水量に応じて、その働きを保つ必要がある。腎臓には尿を濃縮する力があるが、常時濃縮されていれば、腎臓を壊す原因になる。
・『腎臓障害は、長期的な水不足と塩分の欠乏により、RA系が発動している結果かもしれないのである。今まで、血管の収縮が体の水不足のサインと見られることはなかったが、いまや、体液のアンバランスを、移植も含む一部の腎臓疾患の主な原因と見なすべきときにきているのである。一度RA系が動き出せば、自然な停止装置が働くまで止むことはない。自然な停止装置の成分が水と若干の塩である。
・『コーヒー、紅茶、コーラを水の代用にしていればどうなるか。コーヒーと紅茶の天然刺激物には、大量のカフェインと、やや少ないセオフィリンが含まれている。これらは中枢神経系を刺激するだけではなく、腎臓に強い利尿作用を起こす水不足の因子である。コーヒー一杯には85mg、紅茶には約50mgのカフェインが含まれている。このように、カフェインは体内エネルギーを解放する力に作用する。その結果は誰でも知っているが、問題は体が望まないのに無理にエネルギーを解放することを知ることである。貯蔵エネルギーは減少し、一部のホルモンと神経伝達物質の働きが制御できなくなる。カフェインは、体の貯蔵エネルギーが低下するまで徹底的に作用する。』
・『カフェインはよい働きをすることもあるが、水の代用にばかりしていれば、水力エネルギーを生む力を体から奪ってしまうのである。カフェインのとりすぎは脳と体のATP貯蔵エネルギーを枯渇させる。これがコーラ世代の若者の注意散漫、コーヒー世代の大人に慢性疲労を起こす一因になっている。また、カフェインをとりすぎれば、心筋を刺激しすぎて疲労を起こす。』

下の資料は、こちらページの下段にある「ファイル」をクリックしたものです。

ダウンロード
日常生活の中におけるカフェイン摂取.pdf
PDFファイル 923.6 KB

CHAPTER6 高血圧
高血圧の原因としての水不足
・『水を十分に飲み、体の要求すべてに応じるようにしなければ、体内の水の一部が血管にとられ、一部の細胞が水不足になる。それまで緩んでいた血管床は、収縮し、閉鎖に追い込まれる。体の水が不足すれば、細胞内で66%、細胞外で26%、血液では8%水が失われる。血管が血を失わないためには管腔を閉じるしかない。あまり使われていない毛細血管を閉じることによりこのプロセスが始動する。毛細血管を常時開かせるにはどうすればよいのか、水を外部から補うしかない。
毛細血管床がどれほど働いているかが、そこに流れる血の量を決定する。筋肉を使えば使うほど、その部分の毛細血管も開き、血流も増大する。高血圧の患者に運動が最も欠かせない理由がそこにある。毛細血管床を常に開き、血の流れを円滑にする必要がある。血管床を閉ざすもう一つの原因が水不足である。飲んだ水は最後には細胞に入る。水は細胞の体積を内側から調節し、塩は細胞外の水の量を調節する。それは細胞を囲む海のようなものである。』 

画像出展:「病気を治す飲水法」

訳者あとがき(冒頭の部分になります)
『この本はイラン革命で政治犯収容所に送られた医師が、薬の得られない環境の中で三千人の患者を水だけで治療した経験を基礎に、医学、生理学の見地から、本格的に体内水代謝の複雑な機構と、水による各種疾患の治癒プロセスを解明し、世界に先がけて公表したものです。
著書のバトマンゲリジ博士は、イラン生まれの医師で、イギリスの大学で医学を学び、医師の資格を得ました。祖国にもどり、各地に診療所をつくる仕事に従事した頃に、イラン革命が勃発し、政治犯収容所で病人の世話をすることになりました。
薬が満足に手に入らない収容所の生活で、重い胃潰瘍の患者に水を飲ませただけで痛みが消えたのに、非常な驚きを感じます。「医師としていろいろな臨床の場に接してきたが、このようなことははじめてである。」と、回想しています。
博士はこのできごとを機に、三年間にのべ三千人を超える患者に、薬のかわりに水を処方し、痛みを消して治癒させることに成功しました。そして、この予想もしない経験に医療の重要な突破口を見い出し、アメリカで本格的研究に入ります。賛同する医師仲間を集めて、「シンプル・イン・メディシン財団」を創始、飲水による症状の解消と無用な医薬品の常用への抵抗運動を推進しました。
博士がまっ先にはたらきかけたのは、全米医師会と国立衛生研究所でした。しかし、製薬産業と切っても切れない仲である二つの機関が、博士の提案を受け入れるはずもありません。医師会に絶望した博士は、自費で財団から機関誌を刊行し、著書も次々に出して、国民に直接訴えかける仕事に着手しました。ペルシャ語版と英語版で製作に着手した記念すべき最初の一冊が本書です。~以下省略~』

こちらが、バトマンゲリジ先生(Fereydoon Batmanghelidj)です。

英語になりますが、”watercure”というサイトに多くの情報が掲載されています。

重症五十肩(肩関節周囲炎)

重症五十肩の患者さまに来院頂いています。初診のときに肩関節の可動域を確認させて頂いたところ、屈曲(腕を前に振り上げる)については何とか30°程度ありましたが、伸展(腕を後ろに振り上げる)も外転(腕を横に上げる)も、自力ではほとんど動かすことができませんでした。人とのすれ違いでは、肩が軽くぶつかっただけで激痛のためうずくまってしまうということです。夜間痛は最も何とかしたい痛みでしたが、仰臥位(あお向け)になっただけで肩がずれるような感じがあり辛いとのことでした。そのため、施術では肘から下を小さな枕に乗せて頂くようにしました。家事や日常生活では、シャツの着替え、洗濯物を干すこと、髪を後ろで結ぶことなどはひとりではできないため、家族の方に手伝ってもらっていたそうです。
痛みの強さなどから、亜脱臼や腱板損傷も考えられましたが、二つの病院でのX線による診断はいずれも五十肩とのことでした。

下記の4つの絵は、“「肩」に痛みを感じたら読む本”からの出展です。左上は前方の「屈曲」と後方の「伸展」ですが、それぞれ可動域は180°と60°と定義されています。右上は外側に開く「外転」と内側にクロスする「内転」を示しています。「外転」の可動域は180°です。

下段は「水平内転」・「水平外転」、および「内旋」・「外旋」の説明となっています。すべて、クリックして頂くと拡大されます。



左は肩関節、右は肩甲骨に関する動作です。

画像出展:「改訂版 ボディ・ナビゲーション」


初診は昨年10月後半、治療回数は4月末の段階で25回に達しており、成果については十分とは言い難いのですが、夜間痛はなくなり痛みは我慢できる程度に改善されたため、家事および日常生活に関しては、家族の方に手伝ってもらうことなく、すべてご自分でできるようになりました。
そして、今一番何とかしたいことは、バスや電車のつり革を握って体を支えられるようになることです。
四十肩、五十肩は何もしなくても1年程度で治癒すると言われていますが、この患者さまの状態を拝見した時、「本当にそうだろうか?どうやって自然治癒するのだろうか?」という疑問を持ちました。そこで、1冊は図書館、1冊は購入と2冊の本から学ぶことにしました。

最初に読んだ本は“肩が痛い、腕が上がらない 五十肩”です。ポイントになると考えた部分をまとめました。

 

監修:加藤文雄(西東京警察病院院長)

出版:NHK健康Qブック

早い人で3ヶ月~半年。長い人は1年ぐらい。運動制限が非常に強い人は、さらに長くかかる傾向がある(急性期[炎症期]1~2ヵ月ー慢性期[拘縮期]2~4ヵ月―回復期3~6ヵ月)。
ある日突然くることもあるし、じわじわくることもある。どちらかといえば後者がほとんど。
・痛みと同時に肩の腫れや熱っぽさを伴うこともある。痛む場所は肩から上腕にかけてが多い。

・初めは肩を動かすときに痛むだけだが、症状が進むと動かさなくても肩が疼くように痛み思うように腕が上がらなくなる。
時間がたつと炎症は治まってくるが、その過程で線維性の物質が出てきて、腱板の周囲が癒着し肩の動きが悪くなってしまう。
・原因ははっきりわかっていないが、腕を上げた状態で長時間の作業をしたあとに起こりやすい病気だということは言える樹木の手入れや大掃除で高い場所を拭き続けたあとに発症することがよくある。ものを持ち上げようとした瞬間や、テニス、ゴルフのスイングなどの最中に突然激痛におそわれ、それ以降、肩を動かすたびに痛むケースも多い。また、無理な姿勢をとったり、打ち身を起こしたことから五十肩になったという場合もある。
腱板は痛みやすい環境にある。線維組織は加齢とともにちょっとした力で傷ついて、炎症を引き起こしやすくなる。しかも、もともと血管が少ない部位で、いったん傷つくと修復されにくい性質がある。
・腱板の中でも棘上筋の腱板は構造的に炎症を起こしやすくなっている。腱板が炎症を起こすと、滑液包や関節の内部にも炎症が波及するのが五十肩の原因であろうと考えられている。
・重症のケースで、治療期間を短縮したい場合は手術を選択することもある。(関節鏡視下受動術) 

 

この絵は棘上筋の場合を説明したものです。

画像出展:“肩が痛い、腕が上がらない 五十肩”

 

本の中では、60°を超えて外転動作ができない五十肩を「重症」とされています。

画像出展:“肩が痛い、腕が上がらない 五十肩”

 

 

急性期のリハビリです。ここでは利用する重りにアイロンが使われています。

画像出展:“肩が痛い、腕が上がらない 五十肩”

 

 

「寝るとき」の姿勢が紹介されていました。

画像出展:“肩が痛い、腕が上がらない 五十肩”

もう1冊は、“「肩」に痛みを感じたら読む本”です。

 

著者:鈴木一秀

出版:幻冬舎

こちらの本は5つの章に分かれていますが、その5つは以下の通りです。
第1章 わずかな肩の痛みでも“手術”につながるリスクが潜む
第2章 知らないでは済まされない「肩」の基礎知識
第3章 手遅れになる前に、まずはチャック!「Yes/Noチャート」で“実は気づいていない重症度”を30秒診断
第4章 今すぐ実践!重症度別「肩治療&ケア」
第5章 早期に治して痛みのないアクティブライフを送る

この中で、今回のブログに取り上げたのは第1章と第2章に関する項目になります。こちらもブログに残しておきたいと思った個所の要点を書き出しています。

第1章 わずかな肩の痛みでも“手術”につながるリスクが潜む
肩の痛みを訴える人が低年齢化している
・現在も原因は不明であるが、その発症によって肩関節の組織に変性が起きてくること(退行変性)と、それによって肩関節の周囲に炎症が起きることが影響していると考えられている。
ほとんどの場合、1年前後で自然と治ってしまうが理由は解明されていない。
・自然治癒が期待される疾患のため、来院されることが少ないため患者数の把握が難しい。
・最近では30代で肩の痛みを訴える人が増えている。肩凝りは四十肩・五十肩の予備軍である。
・肩凝りは筋肉疲労によるが、四十肩・五十肩は関節の周囲で起こる炎症が原因の症状。両者を見極めるポイントの一つが肩を動かせるかどうかということ。
多くの場合、肩関節への負担が長期にわたって蓄積されることで炎症を引き起こすので、姿勢の問題やパソコンやスマホのように肩関節に負担を強いるような日常生活は将来的な発症につながるリスクになる。
・肩凝りと四十肩・五十肩は別物だが深く関わっているため、肩が痛くて腕が上がらなくても肩凝りと勘違いしている人も多く、肩凝りで医療機関を受診するのは気が引けると思って放置してしまうことが多い。
対処法を間違えると肩が硬くなって動かなくなる。
・[専業主婦Aさんの事例]:『~~中略~~ ところが、痛みは取れたものの、ずっと肩を動かさずにいたことで硬くなり、腕が上がりづらくなってしまったのです。洗髪やドライヤーをかけたり、エプロンを後ろで結ぶことができないなど、日常生活動作(ADL)に難儀するようになりました。それでも、五十肩がまだ完全には治っていないからだと思い込み、回復すれば腕が上がるようになると信じて、無理に動かして再発しないようにと不自由な生活を続けていました。
そんな生活が1年半ほど続いた頃、一向に良くなる気配がなく、むしろ肩が固まって完全に動かなくなったため、さすがに「これはおかしい」と感じて来院されました。
Aさんの話から、罹患期間が2年近くに及ぶことからMRIを撮って確認したところ、骨には異常がなく、確かに五十肩ではありました。しかし、拘縮を起こしている状態で、いわば五十肩の終末像といえる状態ですので、もはやリハビリだけで治すのは困難となり、年齢的なことを考えると手術をしたほうが良いとお勧めしました。
人生80年の時代ですから、Aさんの人生もまだ30年以上あります。残りの人生を有意義に過ごすためにも、ここは手術を受けるのがベストと考えたAさんは、手術を受けることにしたのです。
幸い、Aさんの場合は内視鏡による手術で済みましたので比較的負担も少なく、その後もリハビリのために通院し、半年後には肩の柔軟性が回復して腕が上がるようになりました。
Aさんは、ただの五十肩だと軽く見て対処法を間違えたために、手術をしなければならない事態にまで進んでしまいました。』
自然には治らない四十肩・五十肩がある
・四十肩・五十肩は、年齢に関係なく仕事の内容や生活習慣によっては、誰でも起こり得る疾患である。自然に治る人がいる一方、Aさんのように初期の段階で適切な治療を行なわないと、肩が固まって動かなくなるケースがある。
自然には治らない四十肩・五十肩には、腱板が部分的あるいは完全に断裂しているために、痛みが取れないケースがある。これはX線画像では軟部組織である腱の状態を正しく判断するのが難しいためである。従って、痛みが強い場合はMRI検査の実施が望ましい。また、腱板が損傷する原因の中には、四十肩・五十肩において、肩を動かさないと硬くなってしまうからと、痛みが残っているのに無理な運動を続けたことで症状が悪化し、ついには腱板が切れてしまうこともある。
肩関節の専門医は意外と少ない
・当院(麻生総合病院)には肩の痛みを訴えて受診する人が年間約1200名、その1割が腱板断裂である。罹患期間も2年以上という人が多い。
・日本肩関節学会に所属している肩関節の専門医は全国で1600人しかいない。
専門医でなかったり、MRI装置を持っていない場合はX線画像だけの判断となるため、腱板損傷を発見できず、通常の四十肩・五十肩と診断されることもある。

四十肩五十肩では、特に肩があがらない症例(広範囲腱板断裂)に対してはリバース型人工肩関節置換術という最新の手術も行なっています。』

『肩関節に関する基礎および臨床研究の発表、連絡、提携及び研究の促進をはかり肩関節医学の進歩普及に貢献し、もって人類の福祉に寄与することを目的とする。』 

第2章 知らないでは済まされない「肩」の基礎知識
頼りない肩関節を補強しているインナーマッスル
・肩関節は広い可動域がもつが、骨格による支えはすくなく安定性に問題がある。そのため、その問題を回避するために活躍しているのが筋肉や腱、靭帯、関節包などの軟部組織である。深層にあって肩関節を安定させると共に、微妙な動きをコントロールしているのがインナーマッスルの棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋である。これらの筋肉の両端から出ている「腱(結合組織)」は、他の部分の腱よりも長く、板状をしているため腱板といわれているが、これらの4つの筋群は上腕骨を取り巻いているため、「ローテーターカフ(回旋筋腱板)」とも呼ばれている。

 

画像出展:「人体の正常構造と機能」

肩甲骨を前(腹側)から補強する「肩甲下筋」、後ろ(背側)から補強する「棘下筋」と「小円筋」、前後から補強する「棘上筋」のローテーターカフに「三角筋」を加えた5つの筋が治療の基本です。

画像出展:「人体の正常構造と機能」

加齢に伴い腱板機能が劣化したり、姿勢や生活習慣の影響で肩甲骨機能が低下すると、肩関節の中が不安定になり、ちょっとした動作が関節包を刺激し傷つけ、炎症を起こすことがある。この状態がいわゆる四十肩・五十肩の痛みの強い時期になる。炎症が治まると傷ついた関節包は縮こまった状態で治癒するが、この時期が四十肩・五十肩の動かなくなった時期(拘縮期)になる。また、加齢によって皮膚の弾力性が失われ、たるみやシワができるように、肩の軟部組織も年齢とともに弱くなって傷つきやすくなる。ちょっとした刺激でも傷つき、狭い空間で炎症を起こして腫れる。そうなると、痛くて腕を上げることは困難になる。ときには弱くなったインナーマッスルが切れる、腱板断裂にいたる。
体の表面を覆っているアウターマッスル
アウターマッスルはインナーマッスルの筋群を覆って肩の強度を高めているおり、三角筋や僧帽筋などがある。
・日常生活では、肩を大きく動かす動作をすることは少ない。また、肩甲骨を支えて腕を引き上げる働きをしている僧帽筋は、腕の重さを支えるために、ある程度の力で常に収縮し緊張した状態にある。そのため血液循環が悪くなりがちであり、筋膜の癒着が起こりやすい。
四十肩・五十肩は関節包やインナーマッスルに起こる炎症であり、肩凝りはアウターマッスルに起こる血行不良と筋膜の癒着といえる。
筋肉が緊張するとなぜ血流が悪くなるか
筋線維が緊張すると、筋線維の1本1本が太く短くなって筋線維を包んでいる筋膜を圧迫し、筋肉はパンパンになる。このため筋膜の中では筋線維どうしの押し合いとなるが、その圧力で押しつぶされるのは筋線維の中を通っている血管や神経である。そのために血流が悪くなり筋肉は硬くなる。特に静脈の血管は力強い動脈とは異なり柔らかいパイプである。そのため、筋線維の圧力で簡単に押しつぶされ、うっ血を起こす。しかしながら、筋肉が緊張と弛緩を繰り返す場合においては、この圧迫と解放の連続は静脈に流れる血液を心臓に送り返す働きとなる。もし、緊張だけが一方的に続くと、新鮮な血液を送ることも、老廃物を回収することも困難になる。
炎症が起こるとなぜ痛みが生じるのか
・炎症が起こっている肩周囲には、免疫に関わるたくさんの細胞が集まっている。四十肩・五十肩の場合は、病原体が原因で起こる疾患ではないが、炎症が起きているところには異変を察知した免疫細胞が集まっており、治そうと働いている。この免疫に関わる細胞には色々な種類があり、それぞれに役割が異なる。中には、炎症や発熱を促す働きをしている細胞や、痛みを誘発する物質(発痛物質)を分泌させる細胞もある。その一方では、炎症や痛みに関わる物質を中和し、鎮静化させる働きを持った細胞もある。炎症が起きて痛いときには、それに関わる細胞が優位に働いており、炎症が治まり痛みが和らいできたときには鎮静化させる細胞が活発に働いているのである。つまり、炎症は一種の防御反応であり、治る過程で起こる現象ともいえる。

付記1「臨床家のためのトリガーポイントアプローチ」

トリガーポイントを広められた黒岩先生の著書である「臨床家のためのトリガーポイントアプローチ」の中に五十肩の治療に関する記述がありましたので、一部をご紹介させて頂きます。

 

著書:黒岩共一

出版:医道の日本社

・五十肩は、治療一回目に劇的改善が得られることがまれな難しい症状である。試行錯誤的刺鍼を繰り返した結果、治りにくい理由として言えることは、大量の責任トリガーポイントの広範囲な分布である。責任トリガーポイントの形成頻度の高い筋は三角筋、肩甲下筋であるが、慢性化・重症化して来院した患者であれば、肩甲間部、肩甲帯(特に腋窩後壁を走行する回旋筋群)、上肢、さらには前胸部の筋にも処置の必要な責任トリガーポイントが認められる。
五十肩の治療で最も重要なことは肩以上に頚と背中、特に大椎近傍の夾脊穴などの刺入である。これは夜間痛がある場合は必須である。(「大椎近傍の夾脊穴」とは、第7頚椎棘突起と第1胸椎棘突起間にあるのが大椎というツボですので、このツボの上[頚]と下[背中]にも刺鍼するということです)
五十肩で一番多いのは、自発性に肩の前方が痛むタイプである。腕を挙げたり(屈曲・外転)、内旋しても痛む、すなわち運動痛もある。増悪すれば夜間痛も発現し苦しむことになる。
本来はこの前部の痛みが三角筋トリガーポイントによるものか棘下筋からの関連痛かを鑑別する必要があるが、現実的にこの作業は非常に難しいため、臨床では拘らない。実際は、まず棘下筋を徹底的に攻めて棘下筋トリガーポイントを探すことである。そのためには、肩甲骨外縁とほぼ平行に内下方外上方に走る索状硬結と、その内側にある500円硬貨位の円盤状硬結を丁寧に触擦する。次に肩甲棘の外1/3あたり下縁から、三角筋粗面に向かって走る三角筋後部線維中の硬結とその中のトリガーポイントを検索する。この2つの硬結部のトリガーポイントに刺鍼して、肩の前の痛みが再現されたら、三角筋の後部線維、棘下筋を中心に治療する。もし、関連痛が起こらなかったり、関連痛が肩前面に放散しない場合には、三角筋の前部線維と肩甲下筋形成トリガーポイントを疑う必要がある。

 

最も多い、肩の前方が痛むタイプに関して、施術に迷ったならば、まず棘下筋に注目することを黒岩先生は推奨されています。

画像出展:「臨床家のためのトリガーポイントアプローチ」

付記2: fasciaリリース治療 (ブログ参照:「エコーガイド下fasciaリリース」)

注)当院ではエコー(超音波診断装置)を利用した治療は行っておりません。
Fascia(ファシア)とは、線維性結合組織の総称であり。皮膚、皮下組織、筋膜、腱、靭帯、脂肪体、腹膜、髄膜、骨膜すべてが含まれる。とされています。そして、fasciaリリース治療は原因となっている癒着部位に働きかけ解放するというものです。
 

 

画像出展:「Fasciaリリースの基本と臨床」

例えば、四十肩・五十肩は関節包周囲での癒着は可動域に制限をもたらしますが、それは上図のように筋膜どうしだけでなく、筋膜と骨膜、筋膜と浅筋膜(皮下組織)、腱と骨膜など様々な組織間で癒着が生じる可能性があります。 

エコーで画像を確認しながら鍼を使ってfasciaリリースを行っている先進的な鍼灸院はすでにありますが、より効果的な処置は、医師による注射(生理食塩水など)を用いる方法です。 

鍼はGrade2、注射はGrade3となっています。  画像出展:「Fasciaリリースの基本と臨床

下の写真は棘下筋に対するfasciaリリースを行っている様子です。いずれも「Fasciaリリースの基本と臨床」の画像です。クリックすると拡大されます。


課題は「fasciaリリース」を行っている整形外科がまだまだ極めて少ないことです。
埼玉県では羽生総合病院の和漢診療科などで行われています。以前からfasciaリリースに関心が高かったこともあり、疲れがたまってくると不穏なギックリ腰対策のため、昨年12月、約1時間の東北道をドライブし和漢診療科で治療を受けてきました。患部が腰部のため、残念ながらエコーに映し出された自分自身の画像を見ることはできませんでしたが、刺針時の痛みはほとんど無く、注射液が注入される感覚を体験できました。その後4ヵ月、気になるレベルの不穏な状態は発生していません。

『腰痛、膝痛、五十肩などの痛みに対して、最新の治療である「筋膜注射」や仙腸関節ブロックを行っている。』

なお、「fascia」と「トリガーポイント」をどう位置づけて理解したら良いのかについては、「Fasciaリリースの基本と臨床」の中で次のような説明がされています。

『トリガーポイントはあくまで生理学的に定義された用語(過敏となった侵害受容器)であり、治療“部位”検索としての解剖学的な位置を示す用語としては適切ではない。トリガーポイントが存在する場所は基本的にfasciaであると想定しているため、治療部位検索の上でトリガーポイントという用語は本書では用いていない。さらに、fasciaの異常(例:炎症性、mechanically-insensitive afferentsによる機械的痛覚過敏、滑走性・伸張性障害)による症状を包括するための概念としてもトリガーポイントだけでは不十分である。』

腸内フローラ(腸内細菌叢)

腸内フローラと腸内細菌叢は同じものですが、「細菌叢」とは「多種多様な細菌の集まり」ということです。
「専門学校時代に習ったかなぁ?」というのが感想でした。そこで、久々に生理学の教科書を広げたところ、次のような内容が別々に掲載されていたのを確認できました。
1.大腸内の消化と吸収―腸内細菌
大腸内には、大腸菌をはじめとして多数の細菌が常在している。腸内細菌は小腸で消化しきれなかったものを分解する。食物線維は腸内細菌の働きにより発酵されて、酪酸・酢酸やCO2、H2、メタンなどのガスを発生する。アミノ酸は腸内細菌によりインドール、スカトールなどを生成し、糞便臭の原因となる。
2.生体の防衛機構に働く組織と因子―生体表面のバリア
皮膚や粘膜表面には、病原性のない常在菌が細菌叢を形成しており、病原菌が生育しづらい環境に保たれている。

 

絵もありました。腸のところにも「常在菌の細菌叢」とありますが、やはり学んだ記憶がありません。

画像出展:「第2版 生理学」

一方、「人体の正常構造と機能」でも同じように調べてみたところ、次のような記述がありました。
腸内の常在細菌叢は、消化管粘膜免疫系の維持と制御に深く関っている。
これを見て、「腸内細菌」と「消化管粘膜免疫系」のそれぞれの働きを把握できていないこと。あやふやな知識がぐちゃぐちゃになっていることが分かりました。

消化管粘膜免疫系(腸管免疫系)について、ネット検索すると「ライフサイエンス 領域融合レビュー」という学術サイトの中に関連する記事がありました。専門的な内容ですが、その記事の「要約」の部分をご紹介させて頂きます。なお、「ライフサイエンス 領域融合レビューは、大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 ライフサイエンス統合データベースセンター から発信・公開される日本語コンテンツのひとつ」とのことです。
腸内細菌と腸管免疫  
要約:『消化管はユニークな免疫系を構築している。そこでは、強い炎症活性をもつ免疫細胞と同時に抑制能の強い免疫細胞がバランスよく生み出されている。これは、消化管がさまざまな微生物の侵入という危険につねにさらされているのと同時に、日常的に接する無害な食物や腸内フローラに対しては不必要に免疫応答しないよう制御される必要があるためである。こうしたバランスよく制御された消化管免疫系の構築において、腸内フローラが重要なはたらきをしていることが徐々に明らかになってきている。腸内フローラを構成する個々の細菌種は、それぞれ異なる様式により消化管免疫系に影響をあたえる。たとえば、セグメント細菌とよばれる消化管に常在する細菌はマウスの小腸の粘膜固有層においてTh17細胞の分化を強力に誘導する。一方で、クロストリジアに属する消化管に常在する細菌は制御性T細胞の数を増加させその機能を高める。そして、腸内フローラの細菌種の構成の異常は免疫の異常へとつながり、さまざまな疾患を誘発する。ここでは,腸内細菌に影響をうけて構築されているユニークな消化管免疫系について紹介する。』

今回、勉強のために参考にさせて頂いた本はこちらです。

 

著者:藤田紘一郎

出版:ワニブックス

「はじめに」に続いて、目次でもある「30の方法」をご紹介しています。その後、特にブログに残しておきたい要点を書き出しています。なお、目次で太字になっているところが、それぞれの要点の元になった「方法」です。

 

はじめに
『わずか数年の間に、腸内細菌をとりまく環境は激変しました。近年の遺伝子研究とコンピュータの発達を受けて、腸内細菌の大規模な遺伝子解析が行われたことが一つのきっかけとなっています。
以前は、腸内細菌の研究は、培養によって種類を特定する方法しかありませんでした。このとき、腸内細菌の数は500種類、100兆個と推定されていました。ところが、遺伝子解析によって、腸内細菌は3万種、1000兆個もいるとわかってきました。
また、かつては「善玉菌が腸によいことをして、悪玉菌が悪いことをする」と単純に語られていた腸の世界が、実は非常に複雑であり、体と心の状態を支配するほどの影響力を持っていることが明らかになってきたのです。

その影響力とは、私たち人間が感じているよりもすさまじいものです。健康も病気も腸からつくり出されるといっても過言ではないほどです。腸内細菌の乱れが起こす病気は、風邪や食中毒などの感染症にとどまらず、がんや肥満、動脈硬化症、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞などの生活習慣病、認知症、うつ病、アレルギー疾患、自己免疫疾患にまで及んでいるのです。しかも、最近の研究では、自閉症などの発達障害や、パーキンソン病にまで関与している可能性が示されています。(以下省略)』

1.私たちの腸にすむ「もうひとりの自分」を意識せよ
2.あなたにはあなただけの腸内細菌叢があることを知ろう
3.病原体を退治する“免疫の武器”が腸内細菌の選別を行っている
4.腸内フローラは数日あれば変わる!生かすも枯らすも毎日の生活しだい
5.細菌を殺しては健康になれない!おおらかにつきあう気持こそ「菌活」「腸活」の基本
6.人類は細菌のおかげで立派な脳を持てた。うぬぼれてはいけない
7.がんやアレルギー、うつ病は人類の衰退を示す「退化病」
8.納豆な土壌菌の塊。毎日食べておけば腸内フローラも男性力も衰えない
9.食物繊維を食べていると、腸内細菌が善玉物質をつくり出す
10.「おデブ菌」をおとなしくさせれば、肥満は治る
11.食の好みは、腸内細菌に操られている。「酢玉ネギ」で腸内環境の改善を
12.食物繊維をエサにしていれば悪玉菌は悪さをしない
13.除菌活動に熱心になってくると感染症や食中毒にかかりやすくなる
14.免疫システムは腸内細菌にコントロールされている
15.土壌菌は食べなければいけない。ピロリ菌は除菌してはいけない。
16.酵素食品をとっても体内の酵素は増えない。腸内細菌が多くの消化酵素をつくり出す
17.サプリメントを飲んでも腸内細菌が働かなければビタミンは得られない
18.腸内細菌を増やし、小麦粉・牛乳を遠ざける食事療法で自閉症が改善される可能性
19.腸を鍛えればうつ病はよくなる!人の幸福感をつくるのは腸内細菌だ
20.イライラや不安、カッとなりやすい心は、汚れた腸からつくられる
21.認知症は「腸内細菌」と「水」で予防できる
22.腸にすむ「マイ乳酸菌」はオリゴ糖で増やせる
23.ヨーグルトは、菌が生きたまま腸に届かなくてもよい
24.医者に金を払うよりも味噌屋に払え
25.「白い炭水化物」は腸内細菌を疲れさせる
26.病気にならない体づくりには肉や油も必要だ
27.保存料、食品添加物、抗生物質は腸内細菌を減らし免疫力を低下させる
28.冷凍機キノコ、ニンニク酢、昆布酢で活性酸素の害を消す
29.腸に開いた穴を塞げば大人の食物アレルギーはよくなる
30.日本人の腸内フローラは世界で最低水準。毎日の大便チェックを状態改善に役立てよう

おわりに ~笑う者の腸には福来る~

1.私たちの腸にすむ「もうひとりの自分」を意識せよ
・腸内細菌は約2kg、腸内の壁にくっついている。
・米国では2007年から1億5000万ドル以上と5年間の歳月をかけ、国立衛生研究所が「ヒト・マイクロバイオーム・プロジェクト」を実行した。腸内細菌一つ一つのDNA配列の全般にわたる解読を目指した。マイクロバイオームとは「細菌叢」のことで、微生物の生態系を意味する。

・腸内細菌から見れば、人間は「宿主」になる。宿主とは寄生生物に寄生される側の生物のこと。私たちと腸内細菌は共生関係にある。 
・善玉菌と呼ばれる菌だけが体に必要なのではなく、悪玉菌も日和見菌もとても大事な働きを担っている。
・微生物の世界は壮大で複雑なため、有用なものを選び、不要なものは排除する、という選別を宿主ができるものではない。

2.あなたにはあなただけの腸内細菌叢があることを知ろう
・一卵性双生児や親子であっても、両者の類似性はさほど高くない。
・人間の遺伝子は20,000~25,000個。腸内細菌の遺伝子数は、3,300,000個にも上る。
生後わずか1年間のうちに、生涯にわたる腸内細菌の組成は決定づけられてしまう。母親の胎内は完全なる無菌状態。菌の洗礼は産道を通る時、そして外界に産み落とされた瞬間から、赤ちゃんは膨大な細菌を浴び、腸や皮膚、気道などで細菌たちが繁殖していくことになる。生後1年間で、赤ちゃんはまるでスポンジのように細菌を取り込んでいく。
・赤ちゃんがなんでもなめたがるのは、多種多様な細菌をとり込んで立派な腸内細菌叢をつくろうとする本能である。

3.病原体を退治する“免疫の武器”が腸内細菌の選別を行っている
・免疫の主な働きは、「感染からの防衛」「健康の維持と増進」「老化と病気の予防」。その免疫力のおよそ70%を腸がつくっている。
・腸が人体の免疫の大半を担うのは、病原体が腸から侵入するからである。腸は「内なる外」である。人の消化管は口から肛門まで9メートルにも及ぶ一本の管になっており、腸には多くの免疫組織が集まるようになった。

この絵をご覧になると、中央の消化管が「内なる外」(体内にあるようで、実は体の外側、皮膚と同じ位置づけ)であることがご理解いただけると思います。

画像出展:「イラスト解剖学」

・腸管の免疫では「自己」と「非自己」がたえず識別されている。食べたり飲んだりしたものも、腸にとっては外から侵入してきた非自己である。そこで、腸は食べたものを分解してブドウ糖やアミノ酸、脂肪酸などの最小粒子にし、非自己物質としての機能を失わせる。これが腸の行う「消化」の働きである。消化されたものは、腸管の表面を覆う上皮細胞から体内に吸収される。
・腸の上皮細胞の表面には粘液がある。この粘液には、消化された栄養素にまぎれて病原体が体内に侵入しないように殺菌物質やウィルスを不活化する物質が含まれている。また、「IgA抗体」という免疫物質も大量に存在している。
・抗体とは、特定の非自己物質にくっついて、その異物を排除する分子のことである。つまり、異物を退治するための武器だと考えるとよいだろう。私たちの免疫は、どんな異物に対してもぴったりの抗体をつくり出すことができるのである。
・これまで、IgA抗体は腸粘膜の中にあって、侵入してくる病原体を殺す物質と知られてきた。しかし、実際には腸内細菌の選別にも働くことが明らかにされた。
・IgA抗体は、腸の粘液でつくられる。また、母乳の中にも含まれる。とりわけ母乳が初めて出す初乳には、たくさんのIgA抗体がある。初乳の重要性は昔から伝えられていることであるが、それは生後まもない時期の感染症を防ぐためといわれてきた。ところが、初乳は細菌を腸にとり込むために必要だったのである。

4.腸内フローラは数日あれば変わる!生かすも枯らすも毎日の生活しだい
・体は自分ひとりだけのものではなく、1000兆個の腸内細菌たちと共有している。成人の体はおよそ60兆個の細胞から構成されているが、私たちの腸には、人体の全細胞より16倍以上もの数の細菌がすみついている。
・食生活が乱れて腸の状態が悪ければ腸内フローラは荒れる。体に悪さをする細菌が爆発的に増えてしまえば、優良な菌たちはとたんに数を減らす。ただし、腸内フローラには野生の花畑と決定的に違う点がある。腸内バランスはひとたび崩れても、野生の花畑ほど再生に多くの時を必要とはしない。細菌の増殖力は植物よりずっと強いからである。つまり、宿主が腸内フローラの乱れをいち早く察知して適正な努力を行えば、わずか数日間のうちに美しく整えられるのである。
消化のしくみは、はじめから腸内細菌との共生ありきで組み立てられている。腸だけの消化能力では、体が欲するように栄養素をとり入れることはできない。
・便のうち食べカスは5%、60%が水分で、20%が腸内細菌とその死骸、15%は腸粘膜細胞の死骸である。

免疫機能も腸内細菌との共同作業によって初めて成り立つものである。腸にたくさんの細菌がすむのは、病原体の侵入を防ぐためでもあるが、腸内細菌は縄張り争いをしながら腸の中に自分の生息場所を守っている。外から新たな細菌が侵入してくると、いっせいに攻撃してその排除に働くのである。しかも、腸内細菌は、腸にいる免疫細胞を活性化する力もある。つまり、免疫システムだけでは十分な免疫力を発揮できず、免疫力を高めるには腸内細菌を増やすことが大事なのである。

6.人類は細菌のおかげで立派な脳を持てた。うぬぼれてはいけない
・脳も腸から分化した臓器である。腸にはもともとニューロンなどの神経細胞が存在していた。また、心の状態を築くセロトニンやドーパミンなどは、脳内で分泌される神経伝達物質と思われているが、その起源は腸にある。腸内細菌が腸の多くの働きを肩代わりする中で、腸内細菌は仲間どうしでの情報伝達が必要になっていった。セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質は、腸内細菌間の交流のために必然的に生まれたものだったのである。たとえば、「ビタミンを生成しましょう」「外敵が来たぞー!」などといった情報の伝達を、神経伝達物質を介して行っていたのである。

12.食物繊維をエサにしていれば悪玉菌は悪さをしない
・腸内細菌たちの大好物は水溶性の食物繊維

14.免疫システムは腸内細菌にコントロールされている
・マクロファージは「自己」と「非自己」を見極める力の特にたけている。

15.土壌菌は食べなければいけない。ピロリ菌は除菌してはいけない。
免疫力が低下すると、システムの統制をとれなくなり、免疫細胞は何が本当の「非自己」なのか見極められなくなる。
・ピロリ菌は日和見菌である。宿主の免疫力がしっかり働いている時には体に良い働きをする共生菌である。ピロリ菌が悪さを始めるのは、宿主がストレス過剰の状態にあって免疫力が低下しているときである。こうなると、ピロリ菌は胃を荒らす方に働いてしまう。細菌とはそもそもそういうものである。細菌自身は、自分が宿主にとって悪玉か善玉かなど考えていない。環境に応じて自分の居心地の良い環境を築こうと、せっせと働いているだけである。

17.サプリメントを飲んでも腸内細菌が働かなければビタミンは得られない
・私たちの腸はビタミン類を合成する機能を持っていない。食べたものからビタミン類を合成するのも腸内細菌たちの働きである。
・腸が元気ならば体が若返る理由の一つは、腸内細菌のビタミン合成力に隠されていたのである。
・ホルモンの一部も腸内免疫がつくっている。消化管ホルモンのセクレチン、コレシストキニン、インクレチンなど。
・強力な抗がん作用をもつエクオールも腸内細菌が大豆イソフラボンからつくり出す成分。ただし、このエクオールをつくれるのは、イソフラボンと相性のよい腸内細菌をもった人だけ。

 

画像出展:「腸内細菌を味方につける30の方法」

18.腸内細菌を増やし、小麦粉・牛乳を遠ざける食事療法で自閉症が改善される可能性
・自閉症の子どもは、そうでない子と比べて、腸内細菌の多様性が乏しいという報告がされている。

19.腸を鍛えればうつ病はよくなる!人の幸福感をつくるのは腸内細菌だ
・腸内フローラの組成は、生後だいたい1年間で決まってしまうが、腸にすみついた細菌たちの数はたえず変動している。たとえ乳児になんらかの問題により腸内フローラの多様性を十分に築けなかったとしても、今ある腸内細菌を増やす生活を送ることで、腸内環境は変わってくる。そうした変動が、脳や心の状態にまで影響を与えることがわかってきた。
・セロトニンとドーパミンはあわせて「幸せホルモン」と呼ばれるが、その原料となる前駆体は、実は腸でつくられている。そのため、腸内環境が悪化すると、幸せホルモンの分泌量は著しく減ってしまう。腸の健康は脳の健康であり、脳の健康は腸の健康である。生物にとってもっとも重要な臓器である腸と脳は、強く影響を及ぼしあいながら動いている。そうした両者の関係を「脳腸相関」という。
・トリプトファンからセロトニンの前駆体がつくられる際は、ビタミンB6が使われる。また、ドーパミンはフェニルアラニンという必須アミノ酸からドーパミンの前駆体になるまで葉酸やナイアシン、ビタミンB6が必要とされる。
・腸内細菌たちがつくり出した幸せホルモンの前駆体を、脳へと送り出しているのも腸内細菌である。

20.イライラや不安、カッとなりやすい心は、汚れた腸からつくられる
・九州大学の須藤信行教授らのグループは、系統的な研究により、人間の体は有害なストレスを受けたときに、「視床下部—下垂体—副腎」という流れを介して腸内細菌に悪影響を与えることを明らかにしている。有害なストレスを脳が察知すると、消化管の局所で「カテコラミン」が放出され、腸内フローラに直接的な影響を与えていることがわかったのである。カテコラミンとは、アドレナリンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の総称である。これらはストレスホルモンとも呼ばれており、ストレスを感じると発生し、動悸や血圧の上昇、発汗、血糖の上昇、覚醒などの不安な変化を体に与える。須藤教授の研究では、このカテコラミンが腸内で発生すると、大腸菌の増殖が進み、腸管局所での病原性が高まることが認められた。カテコラミンが腸内細菌の病原性を強めさせる作用は、大腸菌以外の細菌でも観察されている。このように、不安や緊張によるストレスは、腸内細菌のバランスを著しく乱す。その乱れた腸内環境が脳へ情報を送ると、脳内ではストレスホルモンがつくり出される一方、セロトニンやドーパミンなどの幸せホルモンの量を減少させる。それによって脳が不安と緊張を増強させるという循環ができあがっているのである。

21.認知症は「腸内細菌」と「水」で予防できる
・人間の脳は、活性酸素の害を非常に受けやすい臓器である。人体を形づくる成分のうち、もっとも酸化しやすいのは脂質である。人間の脳は、約80%が水であるが、水分を除いた部分のうち、約60%が脂質からできている。その脂質が活性酸素に過剰にさらされ続けると、褐色の色素沈着を起こす。これが脳内で蓄積されてくると、「アミロイドβ」や「タウタンパク」などのゴミタンパクが大量につくり出され、さらに活性酸素を過剰に発生させるようになる。こうなってくると、脳の神経細胞が変性し、萎縮するようになるのである。つまり、活性酸素の過剰発生を防ぐことが最大の予防法といえる。

22.腸にすむ「マイ乳酸菌」はオリゴ糖で増やせる
・最近の研究により、腸にはその人特有の乳酸菌がすみついていることが明らかになった。

24.医者に金を払うよりも味噌屋に払え
・匂いが強いというのは、発酵力が高くて、菌が元気だという表れである。たくさんの種類の細菌が数多くいる発酵食品のほうが、腸内フローラの活性化には効果的である。

25.「白い炭水化物」は腸内細菌を疲れさせる
・たしかに白米や、白い小麦粉を使かったパンやうどんなどの麺類は、おいしいものである。しかし、そのおいしさは、腸が感じているのではなく、脳が感じるものである。脳がブドウ糖をとくに必要とするのは、とっさの判断やストレス時の反応など、瞬発的な活動をするときである。現代社会のようにストレスフルな状況にあると、脳はたえずブドウ糖を要求することになる。体が疲れているときにもブドウ糖を欲する。こうしたときにブドウ糖が入ってくるから、脳は「おししい」と感じるのである。ところが腸は白い炭水化物が大量に入ってくるのを嫌がる。

・小腸の直接の栄養源はグルタミン酸というアミノ酸の一種である。昆布やチーズ、緑茶、シイタケ、トマト、魚貝類に豊富な「うま味」成分である。

・大腸の栄養源は、腸内細菌が食物繊維を発酵させてつくる短鎖脂肪酸である。

・小腸も大腸も、白い炭水化物を必要としていないのである。それにもかかわらず、白い炭水化物が大量に入ってくると、腸はまっさきに消化吸収のために働かなければならない。脳がブドウ糖を執拗に欲するからである。

27.保存料、食品添加物、抗生物質は腸内細菌を減らし免疫力を低下させる
腸内細菌に特に悪影響を与える化学物質は防腐剤と抗生物質である。
・体に生じる風邪の症状は、免疫細胞が病原体を排除する際に起こる炎症である。

28.冷凍機キノコ、ニンニク酢、昆布酢で活性酸素の害を消す
過剰な活性酸素は腸内フローラにもダメージを与え、細菌数を大きく減らしてしまう。

29.腸に開いた穴を塞げば大人の食物アレルギーはよくなる
・腸内フローラが“いい子”に育てば、健康を増進する物質をどんどんつくり出すとともに、免疫力を高めてくれる。
・腸の消化吸収能力を超えて食べることも、腸内細菌に混乱を起こす元凶である。
・「人+腸内細菌」で人間である。

おわりに ~笑う者の腸には福来る~
腸内フローラを元気にする生活習慣
1.朝起きたら外に出て深呼吸をする
2.疲れない程度の適度な運動をする(朝のラジオ体操でもOK)
3.ぬるめのお風呂にゆっくり浸かって腸を温める
4.夜更かしをせず、寝室は真っ暗にして寝る
5.休日には自然の中に出かけていく
『腸内細菌によい生活習慣とは、宿主である私たちにとって楽しいこととわかります。楽しいという気持ちが腸内環境を整えてくれるのです。腸内細菌を人生の味方につけてください。より楽しく充実した人生を築くためのベストパートナーは、あなたのおなかの中にいるのです。

花粉症と自律神経

「適応疾患」内の「花粉症」でも触れているのですが、私の花粉症は30年以上前、会社の集合寮に入って3年目の1985年だったと思います。同期のS君がティッシュを持って歩いているのを見て、大笑いしていたら自分にも舞い降りたという予期せぬ出来事でした。長い間お世話になったアゼプチンという薬は、私には合っていたようです。症状は10が2程度に抑えることができていたため、それほど困ることはありませんでした。
一方、鍼灸師になったこともあり、一昨年の2016年からお臍の周囲に刺鍼する「内ネーブル4点」という長野式の花粉症治療を自らに行っています。
治療効果はアゼプチン服用時とほぼ同等、施術回数は月1回、計3回程度の回数です。ちなみに敵はスギ・ヒノキ。「花粉よ来るならこい!」という馬鹿げた対抗心と、人体実験を兼ねるという思いから、花粉シーズン中も訪問の仕事以外はマスクをせず、部屋の窓や洗濯物のとり込みもノーケア、車の運転中も窓全開で花粉と共に生活しています。
そして、問題の今年ですが、昼間はこの2年間同様、10が2程度で困ることはなかったのですが、自宅に帰ると、特に夜になると何とかしたいレベルで症状が表れました。以前から昼に比べると夜は症状が出やすい傾向はあったのですが、今年はその度合いが強くなっていました。感覚的には5程度という感じです。5程度というのは、「症状の強さと症状が表れる頻度」の2点から「こんなもんでは」と直観的に判断した値です。なお、今シーズンの施術回数は過去2年の3倍弱、7、8回くらいになったと思います。
原因を調べてみると、スギもヒノキも昨年より飛散量が多いようなので、これが一つの要因であるたことは確かです。そして、もう一つ気になる点がありました。それは介護に伴うストレス、特に睡眠の質の問題です。睡眠時間は6時間程度なのですが、夜中に数回起こされるということもめずらしくなく、そのため、このストレスと睡眠の質の問題も、症状を悪化させている原因ではないかと考えました。
そして、それを調べるため、新しい本ではないのですが、図書館から花粉症関連の本を3冊借りてきました。これらは共著の本を含め「スギ花粉症」を命名された(論文報告は1964年)斎藤洋三先生の本です。もう1冊は「ストレスと免疫」という題名の中古本を購入しました。また、ネット検索で見つけたサイトも参考にさせて頂きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

著者:斎藤洋三

出版:主婦と生活社

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

著書:斎藤洋三、佐藤紀男

出版:少年写真新聞


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

著者:斎藤洋三、井出 武、村山貢司

出版:化学同人

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

著者:星 恵子

出版:講談社


ブログは、花粉症がおこる仕組みや自律神経との関係、制御性B細胞についても少し触れています。

1.花粉症のおこる仕組み
アレルギー反応も免疫反応も体内でのしくみは同じです。いずれも「抗原抗体反応」といわれているものです。この反応が体にとって都合のよいように働く場合を「免疫」といいます。人が病気から体を守るために欠かすことができないシステムです。

ところが、体を守るための抗原抗体反応が、からだにとって都合の悪い結果をおこすことがあります。これが「アレルギー」反応です。
「抗原」とは異物、花粉症であれば「花粉」です。一方、「抗体」とは白血球(リンパ球)の中のB細胞(他にT細胞、NK細胞がある)から産生・放出されるタンパク質です。体内に侵入した異物に結合します。タンパク質名としては免疫グロブリン(immunoglobulin) と呼ばれ、「Ig」と略されます。抗原抗体反応に関与している抗体は、IgE、IgM、IgA、IgG、IgDの5種類あるのですが、花粉症にかかわる抗体はIgEであり、それ以外のIgMIgAIgGIgDの4つの抗体は免疫として働きます。なお、無害な花粉に対してIgE抗体がつくられるのはアレルギー体質の人だけです。

 

左が【免疫】、右が【アレルギー】です。いずれも【抗原抗体反応】になります。

画像出展:「花粉症」

出版:少年写真新聞

花粉が目、鼻、口から侵入するとその粘膜に花粉がとりつき粘膜の中に溶けだします。粘膜に溶けだした抗原は、白血球の一つであるマクロファージ(食細胞)にとりこまれ、異種タンパク質の異物として認識されます。この情報がT細胞を介してB細胞に伝えられると、花粉抗原に対するIgE抗体がつくりだされます。また、IgE抗体肥満細胞と結合しやすい性質があり、肥満細胞の表面にIgE抗体が付着し蓄積されます。そして、再び侵入してきた花粉抗原IgE抗体と反応すると、細胞からアレルギー症状を起こす化学伝達物質(ヒスタミン、ロイコトリエンなど)が放出されます。
化学伝達物質であるヒスタミンやロイコトリエンは、「ケミカル・メディエーター」ともいわれるもので、これらが神経や血管を刺激することによって、花粉症のさまざまな症状が引き起こされます。まず最初にヒスタミンが働き、それから少し遅れてロイコトリエンが作用を再現します。

 

画像出展:「花粉症」

出版:少年写真新聞

花粉が目や鼻の粘膜に付着し、水分を吸収すると花粉の中から抗原が溶け出し、肥満細胞の表面に付いているIgE抗体と結合します。(下左図)
肥満細胞からアレルギー症状をおこす化学伝達物質が放出され、それが神経や血管を刺激して、症状が現れます。(下右図) 

図はいずれも、「花粉症」からの出展ですが、中央の見開き部分が見にくくなっています。(すみません)


以下は症状に着目して説明されたものになります。内容はかなり専門的です。なお、下に図を添付しました。
くしゃみの発現には、ケミカルメディエーターのヒスタミンが重要な働きをしています。ヒスタミンは鼻粘膜の知覚神経である三叉神経終末のヒスタミン受容体と結合して、求心性インパルスを脳幹のくしゃみ中枢へ伝えます。そして中枢からの遠心性インパルスは脊髄神経、舌咽神経、迷走神経、顔面神経などを介して呼吸筋、咽頭筋、顔面筋などに伝わり、爆発的な呼気としてのくしゃみが起こります。くしゃみは生理的にも異物を呼気により体外へ排除しようとする生体防御反射で、下気道(気管、気管支)の咳反射に相当します。
鼻水もヒスタミンの作用で起こります。ヒスタミンによって三叉神経終末が刺激されて、分泌中枢にインパルスが伝えられ、遠心性に分泌神経(副交感神経)に伝わり、副交感神経からのアセチルコリンの分泌を促します。このアセチルコリンが神経伝達物質となって鼻腺細胞のムスカリン受容体に作用して、鼻汁分泌を起こします。
普通の人では花粉を吸いこんでも花粉は粘液膜に付着して、上皮細胞の線毛運動でベルトコンベア式に咽頭へと送られ、痰と一緒に排出されるだけです。これに対し、花粉症の人では入ってきた花粉を早く鼻の外へ流し出そうとして多量の鼻水をだします。これも生体防御反射ですが、花粉症の人にはつらい防御反射となります。
鼻づまりはヒスタミンやロイコトリエンなどが直接に鼻粘膜血管系に作用し、海綿静脈洞の拡張によるうっ血、血管透過性亢進作用による組織の浮腫などにより、鼻粘膜が全体として腫脹することで起こります。
眼の結膜も血管系、リンパ組織に富み、涙液によって覆われています。異物が侵入すると、まばたきと涙によって洗い流しだします。鼻と同様に異物に対する防御反射機構です。結膜におけるⅠ型アレルギー反応も、鼻粘膜におけるのと同様に、結膜表層の肥満細胞での抗原抗体結合によって始まります。そして肥満細胞から遊離したヒスタミンが知覚神経である三叉神経終末を刺激してかゆみを起こし、また血管系への直接作用で結膜の充血、浮腫を起こします。涙腺からの涙液分泌もヒスタミンの作用で反射的に起こり、流涙となります。

 

画像出展:「花粉症の科学」

出版:化学同人

下の棒グラフは2004年のものですが、花粉症患者へのインターネットによるアンケートの集計結果です。

 

「のどの症状」が少ないのは意外でした。というのも、私にとって最も気になるのが、のどの症状だったからです。

画像出展:「花粉症の科学」

出版:化学同人

 

耳のかゆみ、消化不良・食欲不振などの症状が出ることもあるようです。

画像出展:「花粉症」

出版:少年写真新聞

2.花粉症と自律神経
1)花粉症と自律神経はどう関係するか
自律神経には交換神経と副交感神経があり、お互いに拮抗しながら、さまざまな身体機能を、私たちの意思とは関係なく、自律的にコントロールしています。
鼻の自律神経は、特に分泌腺と血管に分布していますが、分泌腺にきているのは、自律神経のうち副交感神経だけです。鼻にアレルギー反応が起きたとき、症状を出現させる役割を果たします。まず、ヒスタミンが鼻の知覚神経を刺激すると、その刺激は自律神経の中枢を経由して副交感神経に伝わります。そして、副交感神経が緊張することによって、鼻の分泌腺から鼻水が出るようになるのです。
知覚神経は粘膜や皮膚などにも分布しています。そこに冷たい空気が触れたりすると、その刺激が反射路に伝わって、やはり鼻水やくしゃみが出るようになります。
血管には交感神経と副交感神経が分布しています。鼻でアレルギー症状が起きると、交感神経が働きにくくなり、逆に副交感神経が緊張して、鼻粘膜の血管は拡張します。それによって、うっ血が起き、鼻づまりの原因となるのです。
2)全身の自律神経のバランスも症状に影響する
自律神経のバランスは昼夜で逆転し、活動的な昼間は交感神経が優位に働き、安静にしている夜間の睡眠時は副交感神経が優位になります。夜半に鼻づまりが起きやすくなかなか解消しないのは、交感神経が働きにくくなっているために鼻粘膜の血管が拡張し、鼻にうっ血が起きているからです。
また、花粉症など鼻のアレルギーを持っている人は、朝の起きがけに、くしゃみと鼻水が発作的に起こることがあります。モーニング・アタックと呼ばれる症状です。これはアレルギー反応ではなく、夜間の副交感神経の状態から、昼間の交感神経優位の状態に変わるとき、自律神経のバランスがくずれるために起ります。
3)体の反射現象
くしゃみ、鼻水、鼻づまり、涙などは、人間の体にそなわった反射現象だといえます。しかし、これがむやみに出ても困るので、さらに上位中枢の抑制機構が設けられています。誰でも年をとると涙もろくなり、鼻水などが出やすくなりますが、それは上位中枢からの抑制機構がゆるんでしまうためだと考えられます。
花粉症の症状で困っているときでも、精神的に非常に緊張すると、症状が抑えられることがあります。たとえば、花粉症の俳優さんが、舞台の上ではくしゃみ一つしないのに、幕が降りたとたん一気に症状がぶり返すというようなことがあります。アナウンサーなどテレビに出る人も同様で、出演中は症状が抑えられるといいます。

4)情動のパターンと自律神経機能の関係
 この表は現在も活用されている、山下格先生が作成されたものです。山下先生は北海道大学医学部精神医学教室第五代教授を務められ、2014年12月にご逝去されました。
ここでは「ストレスと免疫」に記述された表に関する説明分をそのままご紹介させて頂きます。

 

画像出展:「ストレスと免疫」

出版:講談社

『一番目のパターンは、驚きや恐怖、憤怒などで交感神経の機能の亢進によるものです。
第二のパターンは、持続的な不安や緊張、怒り、興奮などの情動変化で、このパターンは、情動が比較的持続するのが特徴です。たとえば、ストレスが加わると、胃酸の分泌が亢進したり、消化管の動きが活発になり、これが持続すると胃粘膜にびらんや潰瘍が形成されることがあります。
このような消化管の異常は副交感神経の機能亢進によって起こると考えられています。しかし、不安や怒りなどは交感神経の亢進によるもので、ここでは、交感神経と副交感神経系の両者の興奮が同時に起きていることになります。
三番目のパターンですが、これは一番目、二番目のパターンと、次の第四番目のパターンとの中間に位置するもので、緊張などから解放されて、休息や平安といったような気分になることを意味します。
生命を維持していくうえで、交感神経が絶えず一定の緊張を保つことは必要ですが、とりたてて危険であるとか恐怖に陥った状態でない場合には、相対的に副交感神経が優位の状態に保たれると考えられます。したがって、他のパターンに移り変わる前段階の状態として、この第三のパターンが存在することが考えられます。
第四のパターンは、失望、抑うつ、悲哀、憂愁といった情動のものです。これは交感神経、副交感神経、両者がともに抑制された状態です。
抑うつ状態や失望したときなどは、胃酸の分泌が減り、消化管の動きも弱くなり、これにともなって食べたものの通過時間も長くなります。さらに、悲しみが強くなったり悲観すると、心拍数の低下ならびに血圧の低下もみられます。』

こちらの病院では、山下先生の表に基づき、独自に調査された結果を拝見することができます。

まとめ
今回のブログは、「夜間、花粉症の症状が出てくるのは何故か」、「ストレス、特に睡眠の質は花粉症の症状悪化の原因になっているのではないか」という疑問が発端でした。そして、私なりの結論は次のようなものです。
1)夜間、花粉症の症状が出てくるのは何故か
これは、免疫機能が副交感神経で優位になるのと同様に、免疫と似て非なる「アレルギー」の花粉症も副交感神経が優位になる時、つまり表に照らし合わせれば「平安、休息」が優位になる時に症状が亢進することを意味しており、夜間や自宅でくつろいでいる時に花粉症の症状が出てくるのはこのためと考えます。
2)ストレス、特に睡眠の質は花粉症の症状悪化の原因になるのではないか
表を見ると、「持続的な不安、緊張、怒り、興奮」に関しては交感神経だけでなく、副交感神経も強く関わっていることが分かります。この事実は大きな驚きでした。介護に伴うストレスや睡眠の質の問題は「不安、イライラ、緊張」が主なものになると思いますので、表にある四つの情動に含まれます。したがって、ストレスや睡眠の質の問題は、花粉症の症状を悪化させる要因になると考えます。

なお、ストレスや睡眠が花粉症の症状に影響を与えることは、本やサイトにも出ていました。

 

こちらは、花粉症対策です。(1)は「皮膚を鍛えておく」、(2)は「運動を積極的に行う」となっています。

画像出展:「花粉症」

出版:少年写真新聞

●睡眠が不足するとホルモンのバランスが乱れ、免疫力が落ちます。免疫力が落ちると、花粉などのアレルゲンの侵入に対して体が過剰反応するのです。

●ストレスも睡眠不足と同様に免疫力を落とすため、花粉に対する体の過剰反応が起きやすくなります。

副交感神経が優位なときは、体の免疫力は上がります。しかし、副交感神経が優位な状態が長く続くと、白血球のなかのリンパ球が過剰に分泌されてしまいます。そうなると免疫が過剰になってしまい、この過剰な反応がアレルギー症状の正体です。「花粉症」などのアレルギー症状が過多に出るのは、「副交感神経が優位な状態」が続いていることが考えられます。アレルギーの原因物質をなるべく排除するだけでなく、交感神経を優位に働かせながら、副交感神経とのバランスを保つことが、「花粉症」と上手くつきあうコツといえるでしょう。

3.制御性B細胞
こちらは「ライフサイエンス領域レビュー」に掲載されていた『馬場義裕(大阪大学免疫学フロンティア研究センター 分化制御研究室).免疫反応を抑制するB細胞:制御性B細胞領域融合レビュー, 5, e002 (2016)』のご紹介となります。

『2015年でB細胞の発見からちょうど50年がたつ。抗体を産生するリンパ球として同定されたことからもわかるように、B細胞は液性免疫において中心的な役割をはたす.また、T細胞に対する抗原の提示やサイトカインの分泌により免疫反応を制御することもB細胞の重要な役目である。これらのはたらきにより、B細胞は病原体の感染に対し生体防御の一翼を担う一方で、自己免疫疾患、炎症、アレルギーの原因となったり病態を悪化させたりすることが知られている.しかし,それとは逆に,免疫反応を抑制するB細胞として制御性B細胞の存在が明らかにされ注目されている。』

付記

お臍の周囲の4ヵ所に刺鍼する「内ネーブル4点」は長野式に基くものですが、その長野潔先生の著書である「鍼灸臨床 わが三十年の軌跡 -東西両医学融合への試み-」の中に記述がありましたので、その内容をご紹介させて頂きます。
ネーブル周囲四点の刺鍼とアレルギー性疾患
『ネーブル周囲四点の刺鍼は、当院では五年間、五回に亘り研修したボストン(アメリカ)在住の松本岐子氏の発想によるものである。彼女は筆者の扁桃原病説からヒントを得た類推的発想によるネーブル周囲四点の刺鍼によって、アレルギー性疾患に対して好成績を挙げている。
筆者(長野潔先生)もこの方法を追試したところ、予想以上の成果をみることができた。この四点の刺鍼はアレルギー性疾患のみならず、自律神経の全身的調節や、諸種の痛みに対して有効であることが実証された。
この刺鍼が何故効くのか。これは筆者(長野潔先生)の、あくまでも推論の域を出ないものであるが、ひとつは、この部が門脈のうっ血の起こりやすい場所であり、この部に刺鍼をすることにより、胃、小腸、大腸、膵臓、胆のう、脾臓から栄養を持った血液を充分肝臓に送ることができるということである。このことは肝臓の賦活作用を促し、二次的に粘膜下のリンパ組織を活性化し、抗体産生を増大させることによってアレルギー性疾患に著効を奏するのではないだろうか。例えば鼻水、鼻づまり、眼瞼の痒み等刺鍼にその症状が消失してゆくことが多いからである。
事実、ネーブル周囲四点を刺鍼することによって、それまで激しかった症状が劇的に消失することが多い。』

慢性疼痛と心療内科

高齢の患者さまの中には、「この慢性疼痛は心因性なのではないか?」と思うことがたまにあります。しかしながら、心因性の疼痛にはどんな特徴や傾向があるのかなど、ほとんど理解できていなかったこともあり、軽々に心因性を原因と考えることはできませんでした。

そこで、まずは何か1冊本を読んでみようと思い、ネット検索していると、作家の夏樹静子先生がご自身の凄まじい慢性疼痛の闘病を綴った「腰痛放浪記 椅子がこわい」という本があることを知りました。「これかなぁ。」と思いつつ、さらに調べていくと、夏樹先生のその慢性疼痛を完治させた心療内科の医師、平井英人先生ご自身も本を出されていることを知りました。そして、30年以上のキャリアをお持ちであることも分かりました。こうして、『慢性疼痛―「こじれた痛み」の不思議』を購入することに決めました。

 

著者:平木英人

出版:筑摩書房

ブログでは、心因性の慢性疼痛の特徴や傾向を理解することと、心療内科がどんな診療科なのかを知ることを目的とています。内容は全て本書に従うもので、重要と思う個所を抜き出し、列挙する形式のため断片的になっています。

慢性疼痛の治療
1.一般的な痛みのメカニズム
外因性の痛み刺激(切り傷、打撲、炎症など)が侵害受容器に入ることで信号が発生し、脊髄内にある知覚神経を伝わって脊髄後角、シナプス、ニューロン、脊髄視床路を順に通って大脳皮質の視床に到達し、認識されます。痛みが脳に認識されると、それに対する反応として副腎髄質からアドレナリンが分泌され、血管の収縮筋肉の緊張が生じます。この反応で局所的な乏血が起こります。この乏血が起こると組織内の酸素が足りなくなるため、今度は内因性の発痛物質が生じます。こうなると、外因性の痛み刺激が消えても痛みを感じるようになるのです。

画像出展:「疼痛コントロールのABC」日本医師会

2.心が痛がっているとは
痛みの解明に取り組んでいる米ノースウェスタン大学(シカゴ)生理学バニア・アプカリアン教授(A. Vania Apkarian)らが行った研究で、慢性疼痛患者の脳MRIを撮影しながら痛み刺激を与えたところ、通常の痛み刺激で活性化するはずの大脳皮質の視床ではなく、思考や感情を司る前頭葉の部分が活性化するのが分かりました。特に前頭葉のなかでも前部―ストレスや不安など、ネガティブな感情を司る部分でした。
この知見に対し、1000例近い慢性疼痛患者を診療されてきた平木先生は、「通常の痛み止めが効かない」という単純な事実からしても、慢性疼痛には何かしら通常の痛みのルートとは別のルートが存在すると考えていた。よってこの研究結果は腑に落ちるものであるとお話されています。

3.螺旋階段をのぼるように
薬物治療を先行させながらその効果をみつつ、「ある時期」がきたらその患者さんに合った指導を少しずつ並行して進めていきます。この「ある時期」というのは、患者さんが訴える症状の表現が少し変わってきたころです。何かしらの手ごたえを少し感じ始めたときともいえます。
たとえば、それまで「まだ痛いです」「ちっとも変りません」「痛くて何もできません」といっていた人が、「痛みはまだありますが、少し動けています」「ときどき痛みがやわらぐときがあります」というようになるなど、痛みに対するグチが減ったとき。そうしたかすかな心の変化をとらえて、新たな技法を導入するとっかりとするのです。
また、この第一の段階では、症状には「波」があることがこの病気の特徴であると教えることも重要です。一直線に治癒に向かって進むのではなく、波打ちながら、よかったり悪かったりしながら治っていくことを教えます。「まだ治らないのか」と焦らせないということです。患者さんは、よかったり悪かったりを繰り返すと、堂々めぐりでいっこうに治療が進まないと感じるものです。
しかし、治療は螺旋階段をのぼるようなものです。本人は同じところを回っているように思えても、外で見ている第三者には、少しずつ上へと昇っていく姿がみえています。螺旋階段も、上っている本人はずいぶん上までいってから下を眺めて、初めて「高いところまできた」と実感します。
治療も同じイメージです。ずいぶん進んでから「ああ、以前よりはよくなっているなと実感するものなのです。

4.自律訓練法のコツ
心理療法には自律訓練法、交流分析、行動療法という三本柱があります。それでも効果が十分でないときに加えるかたちで用いられるのが森田療法絶食療法(後述)という特殊な技法です。
とくに慢性疼痛の患者さんに対しては、積極的に「自律訓練法」を習得するようにすすめています。
自律訓練法は世界的によく知られたリラクゼーションの技法で、17世紀にヨーロッパで試みられた催眠療法の流れを汲むものです。催眠によるトランス状態(理性が弱まっている状態)が病気を治すというこの療法は、当時盛んに脚光を浴びましたが、奇術・魔術的なイメージが強く、強い批判も浴びてそれ以上発展しませんでした。その後フロイトらが催眠療法をもう一度研究し、トランス状態が平衡を作り出すことを明らかにしていったのです。
自律訓練法は自らトランス状態に入るもので、自己催眠法とも呼ばれ、1932年にドイツの精神科医シュルツによって開発されました。日本には1952年に紹介されましたが、以来急速に広まり、いまでは心療内科の必須の技法のひとつとなっています。
ベッドに仰向けになったり椅子に座ったりした姿勢で目をつぶり、「両腕が重たい」「両腕が暖かい」・・・・・・など「公式」を繰り返し唱えるという、自己催眠による治療技法です。
自律訓練法は、スポーツ選手や一部の教育現場でも取り入れられているリラクゼーションの方法です。正しく行われれば効果絶大で、成績の向上や人間関係の改善につながります。一見、心療内科とは無関係に思える病気も改善するなど幅広い適応があります。それだけ、あらゆる病気にとって「心身相関」の存在感は大きいともいえますが。
その実際は非常に簡単で、子どもでもマスターできる方法なのですが、本や雑誌、通信販売のDVDを買って自己流でやろうとしても、なかなか身につきません。独学ではなく、きちんとした指導者のもとで習得されることが近道です。

絶食療法は入院して個室で行います。訓練された看護師らスタッフによるチーム医療も必要です。患者さんには二週間のあいだ、外部との連絡を完全に絶ち、病院内の一室に籠もっていただく必要があります。治療前の検査や治療後の経過観察を含めると、一か月半から二か月ほど入院していただくことになります。

この「絶食」という状態は、何もしないようでいて、人間の身体にすさまじいストレスを与えます。
人間の体のエネルギー代謝には、ブドウ糖を燃料とするグルコース代謝と、脂肪酸を燃料とするケトン体代謝の二通りがあります。普通に食事をする生活では、身体はグルコース代謝を中心に動いており、ケトン体代謝が働くことはありません。
絶食に入ると、糖分の摂取が途絶されるために、グルコース代謝が枯渇して、ケトン体代謝にスイッチされます。脂肪を燃焼してエネルギーとして使うのです。この状態になると人間の身体はホメオスタシス(生体恒常性:身体を環境に適応させ、状態を一定に保とうとする力)の作用でインスリンの分泌がコントロールされ、血糖値が下げ止まります。食物を摂取しなくても低血糖になることはありません。空腹は当初はありますが徐々に感じなくなります。身体の状態は維持されますが、代謝やホルモン系が変動することによって、自律神経系や免疫系にも影響が及びます。
絶食によりケトン体代謝に入った身体では、脳内でα波が著明に増加し、生体恒常性(ホメオスタシス)の状態に入ります。この状態で過ごす絶食期には、前半は自己対峙の結果としての意識の変性(変化)が、後半には心理的な退行(抵抗の放棄など)や被暗示性の亢進(医師の話を素直に受け入れるなど)が起こってきます。
この状態のなかで、患者は極限状態や嫌悪刺戟を乗り越え、新たな自信と喜びをつかみます。また、自己洞察を深め、認識が変わっていくなかで、症状が変わり始めます。そして、代謝系の変化というストレスが、情動を司る自律神経系や関連する内分泌系、免疫系の再調整を促すのです。
こうした絶食療法の奏功メカニズムは、ハーバード医科大学のジョージ・ F・カーヒル (George F. Cahill Jr.) 博士によって解明されました。

画像出展:「慢性疼痛ーこじれた痛みの不思議」

5.自分自身の心で治していける 
慢性疼痛のほとんどすべての患者さんには、共通の心理があります。まず、「自分こそが世界で一番苦しんでいる」「この痛みはいつ治るのだろうか」「なにかいい方法はないだろうか」「このままで本当に治るのだろうか」という不安と疑念です。
それから毎朝起きるたびに「今日の腰の具合はどうかな?」と、腰に意識を集めて点検します。病状に固着すればするほど、局所の神経は過敏になりますから、わずかな症状や痛みもキャッチしがちになります。その結果として「ああ、今日もまた痛い」と感じ、また、痛みにとらわれるという悪循環に陥るのです。
痛みゼロを求めれば求めるほど、「まだ治らない」「まだ残っている」「まだまだ……」という思いは強くなります。無間地獄(むけんじごく:最悪の地獄という意味)に入ってしまうのです。痛みの共存とは、言うは易く行うは難しで、本当に体得することは難しいことです。
くすりだけで治すと、効果は薬効の時間に限られます。患者さんによっては、くすりが切れるとまた痛みだすのではと、くすりが切れる前から不安がり、痛みを増幅させて、くすりの量がどんどんと多くなっていく人もいるでしょう。しかし、薬物療法と心理療法を併用して行うことによって、くすりである程度治したあとは、自分自身の心で治していけるようになるのです。

6.ステイ・アクティブ
痛いけれど痛いまま帰って、普段の生活をする。そうしているうちに痛みが減っていく―。
森田療法や絶食療法という日本古来の心理療法が示すこの結論は、実は興味深いことに、近年、米国整形外科学会(AAOS)で提唱されている最新の治療概念、「ステイ・アクティブ」とも通底するのです。
なかでも、森田療法とステイ・アクティブとは、考え方が驚くほど似ています。米国発の「ステイ・アクティブ」とは、日常生活で行動ができる状態に身体があるのなら、アクティブ(行動的)でいられるのならばそれでよい、それを第一目標にし、患者には行動させよう。痛いからといって、「鎮痛剤を飲んで安静にしておけ」という昔ながらの考え方は捨てようという発想です。
なぜ安静にしていてはダメなのでしょうか。それは、痛みの悪循環に陥らないようにするためです。
慢性疼痛の患者さんは、一般に痛みに敏感です。器質的な痛みではなく、自分の心が100倍にも1000倍にも増幅させた「修飾された痛み」に敏感なのです。その修飾された痛みにとらわれて、ちょっとした体調の変化も痛みに結びつけ、膨らませて苦しみます。
また、痛いのだから安静にしていなければと長期間寝たり起きたりの生活を続けていると、筋力低下や体力不足になり、気分転換のためにちょっとした運動や旅行をしただけで筋肉痛になりやすくなります。
さらには過食と運動不足から肥満し、実際に筋や関節に負担がかかるようになる人もいます。運動不足が、身体の神経系に存在する疼痛を抑制する機能を低下させることにもなります。廃用症候群といって、心肺機能が低下したり、骨粗鬆症が進行したり、筋を傷めやすくなったり、落ち込みやすくなるなど精神的に弱ってきたりもします。その結果、家庭不和や社会生活不適応といった状態が生まれます。これが痛みの悪循環です。
痛いのに動けば余計悪くなるではないか、という患者さんに向け、AAOS(米国整形外科学会)はとくに腰痛患者に対してこう述べています。
「腰痛を発症したばかりの急性期には運動はすべきではありませんが、すでに慢性化した痛みの場合には、運動によって全身の筋肉を鍛えることでむしろ痛みが和らぎます。さらには症状の悪化を予防することになります。急性期にも寝ているのではなく、起きて動き回りましょう。ベッドに寝て運動不足でいると回復が遅くなります」
痛くても痛いなりに動きなさい、といっているのです。
言葉や言い回し、またその意味の深さにおいて、いささかの差はありますが、このステイ・アクティブの概念と、森田療法の「あるがまま」という考え方は、根本理念で通底しているように見えるのです。

7.心因性の慢性疼痛患者の心得
平木先生が私案として、心因性の慢性疼痛患者の心得なるものを8つ挙げられています。ポイントは、頑張らない、焦らない、進み続けるということです。
①「ステイ・アクティブ」を目標とすること
②毎日の疼痛記録はやめること
③根性論で頑張ろうとしないこと
④自律訓練法をマスターすること
⑤「あるがまま」を実践すること
⑥すっかり治そうと焦らないこと
⑦治りたいがための悪あがきはしないこと
⑧薬物治療の場合、症状が改善されてきたら、できるだけ長く服薬を続け、その後徐々に減量し、早々の中止や中断をしないこと

8.悩みを相談する人の心理
多くの場合、問題をかかえている本人は、「うまい策があるわけではないし、この人が解決できるものでもない」ということを頭の隅で無意識に分かっていると思います。恋の悩みも経済的なトラブルでも家庭内の問題でも、健康問題でも、悩みの相談の心理とはそのようなものです。
分かっていながら、誰かに、どうしてもいわずにはいられない。ただ聞いてほしいというのが、悩みを訴える人の本心だと思います。つまり、相談を受けた方の役割で重要なのは、なにかもっともらしいアドバイスをしようと努力することではありません。
その人がどれほど悩んでいるか、苦しんでいるかということを、温かく共感をもって理解、共有しようという態度が、いちばん大切なのです。共感し、共有しようという態度を感じられることによって、苦しんでいる人は心の負担が軽くなります。
それが患者さん本人の自己解決力のアップにつながり、物事を客観的にみることができる余裕につながり、最終的に自分なりの解決法を見出していくのです。

9.心因性疼痛障害を疑うヒント
六か月(三か月とも)以上続く慢性の痛み
少なくとも二か所以上の医療機関での精密検査で、痛みに相当する病変が見あたらない
一般的な鎮痛剤が効かない、効きにくい
痛み方が独特で、周囲の人になかなか理解してもらえない
これまでに1000人以上の慢性疼痛患者さんを診療してきた平木先生のご経験に基づくキーワードです。慢性疼痛があって、これらの項目にあてはまるならば、一度はその原因として心因性を考えてみる必要があると思います。

心療内科
1.患者さんの多くは、「心因性」という診断に納得しない傾向がある。ここには「こんな激痛が心因であるはずがない」という強い思い込みも要因である。
2.日本で最初に心療内科という診療科を掲げたのは、九州大学医学部の池見酉次郎先生で、1963年に講座として、「心療内科」を冠するようになった。(看板を出せる標榜科として認められたのは1996年であり、30年以上先だった)
3.平木先生が一般内科に加えて心療内科を併設されたのは1983年であり、個人病院として心療内科を設置した例としては、全国でも最初に近いほうだった。
4.治ったかどうかは、患者さんの言葉のニュアンスから医師が判断する。平木先生のクリニック では痛みの評価を5点満点の六段階評価で表現してもらっている。同じ2点でも「だいぶよくなってきたけれど、まだ痛い。2点くらいは痛みがあります」という人と、「もうだいぶよくなってきて、2点くらいの痛みはあるけど何とかやっています」という人がいる。同じ2点でも前者はまだまだ時間がかかり、後者はそろそろ卒業というほどにニュアンスは異なる。患者さんの話を聞かないと点数だけでは判断できない。
5.心療内科のカルテは他の診療科とは少し異なる。カルテは日本語で書かれ、患者さんの言ったこと、医師が言ったこと、一言一句そのまま記載する。
6.診察の中でお話を聞きながら受ける第一印象がとても大事である。患者さんの痛みの背景に何があるのか。その物語が、患者さんの口から医師に話されること、そして医師と患者がともに物語への認識を深めていくことから、治療が始まっていく。
7.各種心理テストを行っている。その分析結果は病気を理解するのに参考になるが、診察で病歴を聞きながら、問診を行い、その中で性格傾向や心理状態、不安やうつなどを把握することが大切である。
8.人体図へのマーク」「痛さの程度の数値化」「痛みの言語化という患者さん自身による三段階の作業を通して、患者さんの痛みが明らかになっていく。
9.処方した薬が効かず、頑固な痛みを抱えた難治性の患者さんの場合、あらためて時間をとって面接し、生い立ちから現在までの人生、家族関係、趣味、宗教、恋愛観、結婚観、職場での問題、家庭内の問題などを、手順に従って、より詳しくうかがっていく。そこに、本人もはっきりとは気付いていない何らかの、痛みを生じるに至った「物語」が多々潜んでいることが多い。

付記

時々勉強させて頂いているサイトで、偶然、「心療内科」に関するコラムを見つけましたので、ご紹介させていただきます。

「気療」について考える

「気を酸素とイメージする」これは日本伝統医学研修センターで教えて頂いたものです。もちろん、「気」と「酸素」は同じものではありませんが、私自身もこの考え方は大変気に入っています。それは次のような理由です。
1.気も酸素も目に見えない。
2.気も酸素も極めて重要な自然エネルギーである。
3.気も酸素も健康に関係している(気力がなくなると不健康になる。酸素がなくなると死に至る)
4.猛毒だった酸素と共存するという進化によって、生物は飛躍的に発展し人類も生まれた。
5.気を酸素とイメージすると現代医学との関係性を説明しやすい。
この考え方を変えるつもりはないのですが、神沢瑞至先生の「気療」をテレビで知ることになり、今一度、「気」について真剣に考えなければと強く思うようになりました。

 

著者:神沢瑞至

出版:たま出版


ブログの概要
本書の内容を否定することなく、テレビに映っていた野生の動物が気療で眠ってしまうという驚きの事象と向き合うことからスタートしました。続いて本書の内容を吟味し、「二感覚神経と気応感覚」について自分流に編集してみました。
なお、神沢先生の「気療」を正しくお伝えするため、ポイントになると思われる部分を抜き出し、最初にまとめてご紹介させて頂きます。取り上げた内容は以下の通りです。
はじめに(p1~p3)
目次(p4~p9)
眠ってしまった動物に起きたこと(p79~p80)
気療の原点(p96~p97)
一人交流(気療体得)エクササイズ1・2(p105~p113)
「気療体得(エクササイズ)」については、13ある「一人交流」の中から最初の2つのエクササイズのみ、絵と表を含めてご紹介させて頂いています。

はじめに
『「気は存在そのもの」という言葉どおりに、気療(治療)によってこれまで多くの人々が病気やケガを癒し、健康を回復してきました。そればかりでなく、この方たちが併せて気の力を感知できるようにもなった事実を見て、「気は万人共通」なのだとの思いをさらに深くしました。
前二著([気療]、[遠隔気療])は、治療を主体としたもので、その気療方法は今も変わってはいません。気療師の方たちも、そのとおりに実践して大きな効果を挙げてきています。気療には素晴らしい癒しの力があり、結果が出れば良いのであって、論ずるものではないと言えば、言えなくもありません。
しかし今から考えてみますと、実は論ずるにも気療には、それを語り説明する言葉も用語もほとんどなかったのです。ですから気療実績を述べるにとどまっていたのです。
その後、1996年に気療塾学院を開きましたが、当初は塾生の皆さんを指導するにも、理論や気療用語がなくて苦悩しました。そんなある日、被気療者や塾生の皆さんが、自分の受けた「気の感覚」を表現した「チリチリ」とか「スースー」とかのさまざまな言葉に、気の本質が表れているのではないかと直観しました。これらの表現に、気療に際して生じた感覚神経の働き、すなわち気の力と感知・判別する力が表されているのではないかと考えたのです。
それでは、この気の力と感知・判別する感覚神経をどのように名づけたらよいのかと長く苦しんだ末に、気の力を「気療神経」、感知・判別する力を「波動感知神経」と呼ぶことにしました。その詳細は、本書の第二章「二感覚神経の発見」に述べてあります。もとよりこれは、今の西洋医学で認められているものではなく、気療という観点からの考え方です。
この二感覚神経を発見し、感覚現象を言語化して以来、「集合エネルギー」とか「やわらぎ空間」などの気療用語も数多く生まれ、塾生の指導育成も楽になりました。気療師や熟生も増え、学院は活気に満ちてきました。
こうして十余年の歳月を経た今、本書を執筆したいと考えるに至った動機には二つあります。
一つは、気療には治療するだけでなく、その体得エクササイズによって次の四つの力を体得できることがわかってきたからです。それは、①気の力の体得、②感知・判別能力の体得、③予防気療(病気にならないように未然に防止する力)です。いずれも本書の中に詳述してありますので、ぜひお読みください。
もう一つは、2002年に、「健康増進法」が公布されたことです。少子高齢化社会を迎えて、生活習慣病などに対処するために、国ばかりでなく、国民も一人一人が健康を管理し、健康増進に努めて欲しいという趣旨の法律です。
私は気療を体得することと、健康増進法のこの趣旨とは一致していると思います。ぜひ一人でも多くの人々が本書を読み、気療体得(エクササイズ)をして、健康を回復し増進してくださるようにと願って止みません。(以下省略)』

目次
第一章 動物との気の交流
 テレビ出演にいたるまで
 動物との気の交流
 オーストラリア編
  オーストラリアへロケーション慣行
 スペイン編
 アフリカ ケニア編
  バッファローとの対決
  再びマサイ族の村へ
 シベリア編
  ヒグマとの対決
  シベリアンタイガーとの対決
 動物との交流による「気」の発見
  「起」として、オーストラリア編
  「承」として、スペイン編
  「転」として、ケニア編
  「結」として、シベリア編
 動物の生理的仕組み
第二章 二感覚神経の発見
 思考の世界から感覚の世界へ
  気療塾学院の設立
  痛み感覚または痛みのような感覚
  思考の世界から感覚の世界へ
 二感覚神経の発見
  気療は神経の働きに着目
  二感覚神経の発見とその命名
  二感覚神経の相互作用
 二感覚神経を呼び起こせ
  二感覚神経を呼び起こせ
  神経伝達還流の原理
第三章 気療体得(エクササイズ)  
 気療の原点
  気療の原点
  気療は癒しの実践から出発
  足応感覚の発見
 気療体得(エクササイズ)
  気療体得の型は画期的な自然発生
  気療体得は神経伝達交流
  一人交流(気療体得)
   基本的な事項
   体得方法
  対面交流
   手応交流・足応交流・身応交流
   かけ手と受け手と相互かけ手(二感覚神経の呼び起こし合い)
   気の交流感覚の基本
   気療体得の「Aの型」「Bの型」「Cの型」
   二人用エクササイズ
   多人数用エクササイズ
 気の力と感知・判別能力の体得
  気の力と感知・判別能力の向上
  感知・判別の性質
 集合エネルギーとやわらぎ空間
  集合エネルギーとやわらぎ空間
  「老い盛りのいのち」の発見
  予防気療と進行防止
   予防気療
   進行防止
  気療体得(エクササイズ)で効果のあった病院
  健康増進法
第四章 気療技術
 気療からみた人体構造
  人体構造のとらえ方
  背筋と内臓(筋)は表裏一体
  骨格筋の気療技術の五原則
   骨格筋気療技術五原則
  筋肉調整と血流調整
 気療技術の基本
  気療技術の基本形
  素手一本と素足一本
 感知・判別の基準
  体内情報の感知・判別
 気療効果
  気療は実践から出発した
  気療の基本的事項
  気療効果の症例
  進行防止と予防気療

眠ってしまった動物に起きたこと
まず、私が動物たちに気を送り始めます。すると気療神経が働き出します。そして同時に波動感知神経も働きだすのです。気を受け始めた動物たちは、波動感知神経で気を感じ始めると同時に気療神経が働き出します。この受けた気の力は、瞬時に脳幹へ伝えられ、刺激を受けた脳幹は、その命令を自律神経に伝えます。
自律神経は、内臓(筋)や骨格筋の筋肉調整を促して、それらの筋肉をやわらかくします。そして、血流調整をして、血液の流れを促します。体内の血液循環がよくなると脳へも血液がどんどん送られ、脳幹は活性化します。血液循環がよくなってくると、動物たちはリラックス状態になり、生命エネルギーを高まります。そして動物たちの波動感知神経の働きは、人間とは比べられないほど大きい、というのが私の実感でした。』

気療の原点
『いつも気になって手のひらを意識するようになり、意識するといつも「スースー」感が私の手のひらにあるのです。やがて、手のひらの「スースー」感が強くなるにしたがって、手のひらを「意識する」から、「意識を置く」といった感じに変わってきました。遊び感覚で、左右の手のひらを左右に開いたり閉じたりして、引っ張り感と圧縮感を楽しむようになったのです。それが日々の生活の中で習慣化して、二年間ほどいつでもどこでも、この「スースー」感覚を楽しんでいました。このことが今日の「感ずるがまま」の原点となったのです。「感ずるがまま」の世界には、創意工夫は一切ありません。まさに、感ずるがままです。そして、この「感ずるがまま」が「気」という自然エネルギーの媒体となったのです。いいかえれば、「気」の媒体となるには、「感ずるがまま」であるほかに方法はないのです。人間の思考活動でもって、広大無辺な気をコントロールすることは、難しいことだと思います。気療にとって、「感ずるがまま」は大きな発見であり、原点であり、すべてです。そして、この「感ずるがまま」が二感覚神経を呼び起こして、神経伝達還流の原理が働き出すと、病気の人は癒され、健康な人はより健康となり、予防気療にもなるのです。

一人交流(気療体得)エクササイズ1・2
『一人交流とは自然エネルギー(天地融合エネルギー)の媒体となって、気応感覚により二感覚神経(気療神経と波動感知神経)を呼び起こす神経伝達交流(気の交流)をいいます。この一人交流によって、気の力及び感知・判別能力を体得します。同時に治癒能力を引き出します。 
―中略― エクササイズを始めるにあたっては、解説やイラストにしたがって、手のひらや足のうらや全身に意識を置いてください。「意識を置く」ことで思考の世界から感覚の世界への「切り換え」となります。そして二感覚神経が呼び起こされます。気療体得の出発です。
意識を置いたならば、あとは「感ずるがまま」です。この「感ずるがまま」が気療の基本であり、すべてです。そして、この「感ずるがまま」が神経に働きかけて、生理的仕組みを活性化させるのです。これが、気の力と感知・判別能力を体得させ、内なる治癒能力を引き出してくれるのです。

エクササイズ1手のひら間隔合わせ交流
心と身体をリラックスしながら左右の手のひらを約十センチあけて両方の手のひらに意識を置いてください。左の手のひらの二感覚神経と右の手のひらの二感覚神経の交流が始まります。何も感じなくても、身体に力を入れたり無理な意識を集中させたり、「気よ、出ろ!」などと思わず、「感ずるがまま」でよいのです。実は、意識を置いた瞬間から、左右の手のひらの気の交流は始まっているのです。最初は手応感覚がないため、それがわからないだけなのです。どんなに微妙でも、いったん反応が感じられるようになれば、これで第一段階はクリアです。意識を止めない限り、気は交流を続けます。

エクササイズ2手のひら気練り交流
今度は左右の手のひらを上下に「感ずるがまま」に動かしてみます。同時に同じ方向に動かすのではなく、片方を上に動かしたら、もう片方は下に動かします。こうすると気の交流感覚が強くなります。手のひらを動かすことで、気の交流感覚がわかりやすくなるのです。


動物との対決(気の交流)
今回の驚きは何と言っても、野生の猛獣たちが気療によって眠ってしまうという衝撃的な映像でした。そこで、現状把握を目的に一覧表にまとめてみました。
表の下の画像は、本書「気療で健康増進」からのものです。

気づいた点は次の通りです。
1.集団には油断、気を許す雰囲気があり、気応連鎖につながる。
2.用心深さや闘うモードは気が通じにくい。
3.思いの強さは気の力を強くするのか。
4.手のひらの手応え感覚と動物が受ける気の影響には関連(交流)がみられる。
5.動物との対決は気の交流であり、猛獣が近づいても恐れや緊張をほとんどもたないようだ。
6.著者の行為は広大なやわらぎ(癒し)の空間をつくること。

個人的感想ですが、『北風と太陽』を思い出しました。もちろん、「気療」は太陽の方です。

 

画像出展:「イソップ童話の塗り絵

最後に下の写真をあらためて眺めてみると、この眠った状態は、体内でからだの修復作業(メンテナンス)が行われている姿なのではないかと感じました。


「二感覚神経と気応感覚」
ここからが本題になるのですが、最初に「地震予知」と「遺伝子」、そして「脳のはたらき」について触れます。
二感覚神経の一つは“波動感知神経”です。これは「感知・判別する力」とされています。ここで私が連想したのは、動物の地震予知能力についてです。これに関してネットで調べたところ、三つの興味深いサイトが見つかりました。

動物や植物は地震を予知できるのですか?
『動植物には、音、電気、電磁波、匂いなどに対する感知力が人間などに比べ格段に優れているものがあることは知られています。一方、地震は、地中の広い範囲で、固い岩盤同士が、破壊し合い、ずれ合う大きなエネルギーの集中や解放を伴うため、徐々に岩盤が変形し始めたり、地下水位が変動したりして、地震の発生前から非常に微弱で特異な音、電気、電磁波、匂いなどが周辺の地面や大気などに現れ、それを動植物が感じ取る可能性もあるのかもしれません。しかし、動植物は地震以外の理由によって通常と異なる行動・反応をすることがあり、また、動植物自体についてまだわかっていないことも多く、ましてや地震の前兆現象も解明できていない部分が多いことから、地震の前にそうした異常行動・反応をする理由について科学的に説明できていない状況です。』

動物たちが地震を予知できるって本当?

『ここで地震の前の動物たちの行動についての前例を見ていきましょう。
東日本大震災の前に、国内の多くの動物たちの不可解な行動が報告されています。カラスは普段とは違う鳴き方をし、50頭あまりのクジラが海岸に打ち上げられました。また2008年の中国を襲った大地震の前には、シマウマが頭をドアにぶつけたり、象が胴体をブルブル揺らしたり、ライオンやトラは寝てるはずの時間にのしのし歩き回り、クジャクは揺れが来る5分前に一斉に鳴き出したとか。これに似たことは2005年津波がアジアを襲った際にもあったそうですよ。1975年、中国の海城市で2000人もの人が犠牲になった地震(M7.3)の際も動物たちの妙な行動が報告されました。』

犬猫は地震を予知できるのか?

このような犬猫の行動、人間から見るととても不思議です。「超能力」があるのではないかと思ってしまいます。が、これらは摩訶不思議な能力というわけではなく、もともと犬猫に備わった優れた能力によるものといわれています。例えば、聴覚の鋭さ。人間は最高で20キロヘルツまでの音しか聴くことができず、それ以上の音は「超音波」と呼んでいます。ですがこの超音波、犬猫には聴こえるのです。犬は約40キロヘルツまで、猫はそれを超える60キロヘルツまでの音を聴くことができます。ですから人間にとっては超音波でも、犬猫にとっては超でも何でもありません。地震の揺れ(主用動/S波)の前には、ごく小さな揺れである初期微動(P波)が起こります。P波は空気にも伝わり、地響きのような音として聴くことができます。犬猫はこのP波をいち早く感じ取っているといわれます。

次は「遺伝子」についてです。

著者:竹内久美子

出版:文藝春秋

竹内久美子先生は、京都大学および大学院で動物行動学を専攻されました。その竹内先生の最高傑作ともいわれる「そんなバカな! 遺伝子と神について」はとてもユニークで驚きが連続する楽しい作品です。

そこでは、「人間は遺伝子を運ぶ器にすぎない。人間を含め、あらゆる生物が遺伝子を生き伸びさせるためにのみ存在している。」とあります。つまり、人間は単なる乗り物(ビークル)にすぎず、ドライバーは遺伝子であるというのです。

そして、遺伝子にとっての関心事は「種の保存」だろうと思います。

長い長い前置き失礼しました。以下のものが、今までの内容を自分流に整理整頓したものですが、ドライバーである遺伝子になったつもりで書いています。

なお、二感覚神経は、気の力である「気療神経」と感知・判別する力の「波動感知神経」であり、この二つには相互作用があり表裏一体となったものとされています。

「二感覚神経」を考える

1.二感覚神経の存在目的は、「種の保存」と考えます。
2.二感覚神経の働きは、「危険を回避する能力」と考えます。
3.対象となる「危険」とは五感(視・聴・嗅・味・触の感覚)では回避できないものと考えます。
 1)地震などの自然災害や、宇宙規模の異変(太陽フレアなど)
 2)体外からの侵入や体内で産生される病となる因子(ウィルス、がん細胞など)
4.自然災害や宇宙規模の異変など(マクロの危険)への対応策
 1)第六感による危険察知能力を備え、災害発生前に安全な場所に退避すること【波動感知神経】
5.病の原因因子(ミクロの危険)への対応策
 1)総合的な防衛システムを備え、病の発症を阻止すること【気療神経】

   ・免疫システムや腸内細菌との共生、細胞レベルの修復システムなど
6.二感覚神経は、波動感知神経と気療神経が表裏一体であるとする理由
 1)未知の危険に備えるには、2つの可能性(「マクロの危険」と「ミクロの危険」)に同時対応できる表裏一体・相互作用型の方が、危険回避できる確率が高まると考えられるため。
7.気療神経が自らの身体だけでなく、他の個体(仲間)に対しても機能を発揮できる理由
 1)「種の保存」の考え方に従えば、自他共に作用を及ぼすことができる方が、多くの個体を守れる可能性が高まると考えられるため。

「気応感覚」を考える
「気応感覚」は二感覚神経を認識するためのセンサーと考えます。手も足もホムンクルスの絵(下)が示しているように、感覚野(左)、運動野(右)とも脳の広範囲に及んでいます。手は上肢の広範囲な可動域により、センサーとして高い機能性を持ちます。一方、足は立位においては大地と接しています。そのため大地からの変動をキャッチしやすい場所にあるといえます。

画像出展:「人体の正常構造と機能」

 

こちらの図は「気応感覚」ということではなく、一般的な感覚刺激の伝達をご説明した絵です。

左端に書かれている通りですが、冷たいコップに触れた手指への刺激は、脊髄と視床でニューロン交代を行いながら、終点である大脳皮質の感覚野に到達します。

 

画像出展:「病気がみえる vol.7 脳・神経」

 

結論

「二感覚神経と気応感覚」といわれるものは存在すると考えます。そして、これらの「気」の力は鍼灸治療にとっても凄い可能性をもった魅力的なものです。まずは、自身の潜在能力を寝覚めさせるため、エクササイズ1と2に取り組んでみようと思います。

付記:「交感神経緊張状態がもたらす四悪

猛獣が眠ってしまうのは、副交感神経が優位になることが最初の変化です。言い換えれば、交感神経優位の状態は闘うモードであり、心身への負荷を伴います。ここでは、その「緊張状態の四悪」についてご説明します。

画像出展:「パーキンソン病を治す本」

出版:ビタミン文庫

なお、下記の文章も全て「パーキンソン病を治す本」からの引用です。

 

 


1.顆粒球過多→活性酸素の大量発生による組織破壊
『自律神経のうち交感神経は、顆粒球の数と働きを支配しています。ストレスで交感神経の緊張が続くと顆粒球が増加して、そこから強力な酸化力を持つ活性酸素が大量に産生されます。それらの活性酸素が細胞を次々に参加し、殺傷していくことで、組織破壊が拡大します。
ちなみに、私たちの体内では呼吸で得た酸素から発生する活性酸素、細胞の新陳代謝から生じる活性酸素など、さまざまなルートで活性酸素が産生されていますが、活性酸素全体の比率では、顆粒球から放出されるものが7~8割を占めます。したがって、顆粒球が増加すればするほど、組織破壊も進むことになります。
2.血流障害
『交感神経が分泌するアドレナリンは、血管を収縮させる作用があります。そのため、交感神経の緊張が続くと、細胞が持続的にアドレナリンの作用を受けて全身で血流障害が起こってきます。
血液は全身の細胞に酸素と栄養を送り、老廃物や体にとって不要なものを回収しています。血流障害によってこのサイクルが阻害されると、細胞に必要な酸素や栄養が届かず、老廃物が停滞するようになります。その結果、痛み物質や疲労物質がたまれば痛みやこりなどが現れますし、発ガン物質や有害物質が蓄積すれば発ガンを促します。それと同時に細胞そのものの活力も衰え、働きが低下していきます。』
3.リンパ球の減少
『白血球の顆粒球とリンパ球の比率は、その人の自律神経のバランスによって変動します。顆粒球とリンパ球は、いつも逆転した動きをします。
交感神経が緊張すると、副交感神経の働きがおさえられます。その結果、副交感神経の支配下にあるリンパ球の数が減り、働きが低下して、カゼをはじめとするウィルス感染などが起こりやすくなります。また、ガンを殺すNK細胞などの活性も低下します。
4.排泄・分泌能の低下
『交感神経が緊張し、副交感神経の働きがおさえられると、臓器・器官の排泄や分泌機能が低下します。これにより便や尿などが排泄しにくくなったり、各種ホルモンの分泌異常が起こったりするようになります。
交感神経の緊張は、以上1~4の障害を連鎖反応的に引き起こし、病気を発症しやすい体調・体質をつくり上げていきます。』

顆粒球とリンパ球
『顆粒球は交感神経が優位になっている日中の活動時には、手足に傷を負いやすく、傷口に細菌が侵入する機会が増えます。こういうときは、サイズの大きな細菌を食べてくれる顆粒球にいてもらったほうがよいわけです。逆に、副交感神経が優位になっている夜間の休息時や食事をしているときには、消化酵素で分解された異種たんぱくやウィルスなど微小な異物が消化管からどんどん入ってきます。これらはサイズが小さすぎて顆粒球では対応できないため、夜間は微小な異物処置の得意なリンパ球が出番となるわけです。
実際、血液を採って調べてみると、昼間の活動時は交感神経が優位になって顆粒球が増え、夜間の休息時には副交感神経が優位になってリンパ球が増えています。こうして自律神経と白血球が連携することで、私たち人間は環境の変化に順応し、命を存続させる最良の状態を作り上げてきたのです。』

バイ・ディジタルO-リングテスト

O-リングテストの存在を知ったのは、2011年、専門学校に入って間もなくの頃だったと思います。その不思議なテストに関心をもち専門的な本を衝動買いしてしまいました。
ただし、ざっと目を通す程度で読むまでにはいたらず本棚に並んでいました。本気で読んでみようと思ったきっかけは、O-リングテストのコツやテロメアのことが書かれた「O-リングテスト スーパーヘルス超健康レッスン」という雑誌を購入したためです。

O-リングテストとは、片方の手で触れる・手に持つ・指さすなどの行為によって、生み出された刺激が脳に伝わり、それが有害なものであれば、筋肉の抵抗が弱まるという原理です。つまり、もう片方の手の指(母指と示指)でつくったリングが、簡単な力で開いてしまうか否かによって有害か無害かの評価ができるということです。また、歴史や普及の実態は下記の通りです。

『O-リングテストは、1970年代に方法論が確立し、その後約30年以上の歳月をかけて、医師や学者を中心に世界各地で研究を積み重ね、普及してきました。93年にはアメリカで特許を取得。日本では87年に日本バイ・ディジタルO-リングテスト協会を設立。医師・歯科医師・獣医師・看護師・鍼灸師・薬剤師を中心に、過去35年間に1万人以上の医療関係者が勉強し、約60人のO-リングテスト認定医を擁するまでになっています。』(2008年)

 

別冊すてきな奥さん

出版:主婦と生活社

衝動買いした「図説 バイ・ディジタル O-リング テストの実習」は初版第1刷は昭和61年3月15日となっています。私の本は第3版で平成5年3月15日発行です。約25年前の書籍のため、現在、普及しているバイ・ディジタル O-リング テストと全く同じかどうか確認はできていません。
目次は次の通りですが、これは大項目、中項目のみとなっており、3段目の小項目は省略させて頂いています。

著者:大村恵昭

出版:医道の日本社


目次
第1章 テストの概要
1.バイ・ディジタル O-リング テストとは何か
2.O-リング テストの背景と研究の過程
3.神経学的機序へのアプローチ
第2章 鍼と循環
1.循環障害と身体各部の血圧
2.身体各部の血圧異常と症状
3.下肢の静脈圧の測定
4.鍼の循環系および血液化学におよぼす影響
第3章 テストを行う前に
1.チャートの記入法
2.用意するもの
3.刺激物と適応部位
4.注意事項
第4章 テストの実際
1.患者の体位、姿勢
2.検者の位置、抵抗を加える方向
3.頸椎、頸椎神経を代表する各指
4.指の力の判定
5.検査指の決め方
6.子供や指を使えない患者、動物をテストする方法
第5章 臓器代表点
1.新しい臓器代表点・代表域
2.古典的臓器代表点
第6章 診断法としてO-リング テスト
1.一般的検査法とO-リング テスト
2.O-リング テストによる診断法
第7章 薬物や飲食物の適合性テスト
1.電磁場について
2.薬物や飲食物の適合性テスト
第8章 治療法の実際
1.用手鍼療法
2.低周波療法
3.レーバービーム療法
4.治療の実際
5.鍼治療や電気治療の適応
6.鍼治療の限界
7.重要な例外
第9章 臨床の実際
1.症例
2.新簡易造影法
第10章 医療の中での展望
1.利点と応用
2.これからの展望
付録
・質疑と応答
・最新の学術論文から(英語)

まず考えたのは、第1章のテスト概要をしっかり理解しようというものでした。特に「神経学的機序へのアプローチ」のロジックが理解できれば、新しい武器(知識)を身につけることができると考えました。そこで、3つの中項目について、ポイントと思われる部分を列挙してみました。

1.バイ・ディジタル O-リング テストとは何か
・1970年代にニューヨーク市において開発された。
・アプライド・キネシオロジー(応用運動機能学)にヒントを得たものだが、研究段階で科学的裏づけを重ねてできた、全く新しいテスト法である。
・東洋医学の古典的臓器代表点に修正を加えた、新しい臓器代表点を診断に用いる。
2.O-リング テストの背景と研究の過程
・アプライド・キネシオロジーでよく使われる大きな筋肉より、疲れの少ない小さな筋肉の方が検査による疲れの影響が少なく、疲れても早く回復する筋肉、それは指の筋肉である。
・脳を最大限に代表している筋肉。指の筋肉は大脳皮質の感覚領と運動領を最大限に代表している。
・手の握力と脳循環の関係を6年間研究し、1978年に論文にまとめた。
3.神経学的機序へのアプローチ
・人体のあらゆる異常な部分は正常な部分に比べて、異なる電場及び電磁場を持っている。そこへ軽度の機械的圧力や光線、電場、磁場を用いて知覚神経を刺激すると脳の中央までその刺激が伝わる。
・軽微な機械的刺激を与えると、まず大きい直径の知覚神経が刺激され、脊髄を上昇して中枢神経へと伝わる。
・上行神経路のなかでも重要なのは、①後根にある内側縦束、②外側脊髄視床路、③脊髄小脳路などである。
・バイ・ディジタル O-リング テストで抵抗力が弱まるのは、コンピュータの中央演算機構にたとえることができる。
刺激してる身体の場所が病的かどうかを中央演算機構で判断し、モニターでの表示の変わりに、指のO-リングの抵抗力で表示しているようなものである。
・コンピュータの中央演算機構に相当する人間の中枢神経の精密度は、いかなるコンピュータよりすぐれており、かつ小型であるといえる。そして、これには大脳、小脳、脳幹、網様体、前庭神経核、室頂核、赤核脊髄路、小脳前庭脊髄路など全てが関与している。そして、ここから直接、α運動ニューロンに、あるいはγ運動ニューロンを介して間接的にα運動ニューロンに伝わる。


これ以降、約1,000文字の解説が続くのですが、私の知識ではついていくことが困難になりました。ただし、文末に次のような記述がありました。
『さらに神経路は上記のようにいろいろな所が関与し、複雑に細かくなります。そのひとつひとつについて現在の生理学でもわからないところがたくさんあります。そのため、バイ・ディジタル O-リング テストの神経学的機序についても絶対的なことは断言できません。ただ、おそらくこのような神経路が関係しているだろうということだけは説明できます。』

以上のことから、少なくとも本書が発行された当時においては、詳細な神経学的機序までは解明できていなかったということだと思います。

だからといって、バイ・ディジタル O-リング テストを否定するものでは決してありません。生意気な言い方ですが、医学にはまだまだ解明されていないことがたくさんあると思います。
しかしながら、バイ・ディジタル O-リング テストを自分の施術の中の知識やスキルに加えることは難しいと判断しました。

 

ゴールのない中途半端なブログになってしまい申し訳ありません。

以降は、「O-リングテスト スーパーヘルス超健康レッスン」に掲載されていた特に興味深いページや関連するサイトをご紹介させて頂きます。



『O-リングテストでは、細胞の核内のテロメア量を数値化することで、その人の健康状態、細胞レベルの若さ、生命力をチェックすることができます。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『正常細胞のテロメア値を高める食品について実験していくうちに、驚くような発見がありました。誰もが知っている身近な果物である「リンゴ」と「バナナ」を一緒に食べることで、テロメア値がスーパーヘルスの基準である500ナノグラムにまで高まることが実証できたのです。』


NHKでは、「生命の不思議“テロメア” 健康寿命はのばせる!」という番組が制作され、2017年5月16日に放送されていました。

また、「O-リングテスト スーパーヘルス超健康レッスン」には全国の認定医等の一覧が掲載されています。ここでは、さいたま市の認定医をご紹介させて頂きます。

場所は、さいたま市中央区になります。

こちらは、日本バイ・ディジタルO-リングテスト協会さまのホームページです。

脳性麻痺リハビリテーションガイド

訪問の仕事(業務委託)は鍼灸とマッサージが半々というところですが、マッサージについては小児障害、特に脳性マヒの患者さまが増えています。
一方、特に発達障害児へのマッサージを考える際に勉強した「新・感覚統合法の理論と実践」では、そのブログの中で、マッサージのポイントを次のようにまとめました。
1.人は最も大きな刺激源であり、人に対する感情によって、刺激の感じ方もずいぶん違ってくると言われています。従って、子どもとの信頼関係を築くことが第一歩です。  
2.触覚防衛反応などの感覚調整の障害については、「感覚調整機能評価表」を利用し、触覚系と前庭-固有覚系の過反応と低反応の実態を把握します。
3.筋緊張の強い子には、抑制的な触圧の刺激などにより、緊張部位のリラクセーションをはかり、屈筋群と伸筋群の拮抗をバランスよく保ち、筋肉の柔軟性を高めます。
4.筋緊張の低い子には、促通的な触圧の刺激などにより、屈筋群の活性化をはかります。また、関節への抵抗運動により筋緊張を高めるとともに拘縮を予防します。              
5.ボディイメージが弱い子には、関節の抵抗運動により、それぞれの筋肉の動かし方を繰り返し学習します。 

この中で3~5の筋の低緊張、過緊張およびボディイメージの弱さに関する改善は、脳性マヒ患者さまにも当てはまるものと考えています。しかしながら、本当にそうなのか、注意すべきは何なのかを把握するため、図書館から「脳性麻痺リハビリテーションガイド第2版」を借用し、第6章の運動障害と治療(リハビリテーション)を中心に、その内容を確認しました。

 

監修:公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
出版
金原出版

 

 

こちらのサイトをクリック頂くと、「脳性麻痺リハビリテーションガイドライン第2版」の目次が確認できるだけでなく、PDFファイルをダウンロードすることもできます。

以下の表が、確認した内容をまとめたものです。結論としては、脳性マヒ患者さまの筋の緊張状態やボディイメージを改善することは、推奨グレードAおよびBの漸増負荷トレーニング・サーキットトレーニング(筋力トレーニング)、有酸素トレーニング、歩行訓練、それぞれの効果を高めるための土台作り(筋肉、関節などの運動器系の状態を良くすること)として間接的に貢献することができる。ということだと考えています。

また、順序が逆になりましたが、「ガイドライン」がどのようなものかについてご紹介させて頂きます。

目的
本ガイドライン策定の目的は、最新のエビデンスに基づき、わが国で推奨される標準的な脳性麻痺リハビリテーションの診療方針を提示するとともに、将来に向けてあるべき理想の診療方法を明らかにすることである。
本ガイドライン策定に関しては、脳性麻痺の疾患特性を考慮し、医学的観点のみならず、脳性麻痺患者のライフサイクル全般にわたる問題点(家族支援、成人期の問題、就学と社会参加など)も含め、より包括的なリサーチクエスチョンで全体を構成するように努めた。

読者対象
脳性麻痺リハビリテーション診療に関る、すべての医療・福祉従事者はもとより、患者本人とそのご家族、学校教育関係者にも、広く利用されることを想定して作成した。

 

また、ガイドラインには「推奨グレード」の他に「エビデンスレベル」という観点からも考察されています。ブログでは分かりやすさを優先し「推奨グレード」一本に絞りましたが、ご参考として「エビデンスレベル」の内容をご紹介させて頂きます。

今回のブログの中で、私自身は「脳性麻痺」ではなく「脳性マヒ」という言葉を用いています。その理由に関してはブログ(「脳性麻痺 vs 脳性マヒ」)を参照頂ければと思いますが、ポイントは成瀬悟策先生の著書「姿勢のふしぎ」という本に出ていた次の一文に基づいています。

『脳の病変によって肢体が不自由になる現象を、本書ではここまで「脳性麻痺」ではなく一貫して「脳性マヒ」と表記してきたのは、一般に「麻痺」ということばが「神経や筋の機能が停止する状態」(広辞苑)とされているためでした。これまで述べてきたように、この子たちのからだは病理学的に動かないのではなく、生理的には動く自分のからだを、その主体者が自分の思うように動かせないだけですから、「麻痺」ということばはそぐわないため用いません。』    

「腎臓が寿命を決める」とは

現在、NHKでは『神秘の巨大ネットワーク 人体』という全8回のNHKスペシャルが放送されています。その初回となる、第1集は「“腎臓”が寿命を決める」というタイトルでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

NHKスペシャル「人体」取材班

出版:東京書籍


『「なぜ、腎臓を第1集に選んだのか?」
「人体」のメインディレクターとして、最も多く聞かれた質問です。じつは、番組をつくる前、全8回のラインナップを決めた段階から、ずっとこの質問をされていました。NHKスペシャルでもめったにない超大型シリーズ、その第1集は、特別な重要性を持っています。質問の裏には「本当に腎臓で大丈夫?」という意味が隠れていたと思います。脳や心臓といった、誰もが興味をもつスーパースターではなく、腎臓という“ちょっと地味”なキャラクターを主役に抜擢するのは、大きな賭けでした。
しかし、だからこそ、第1集で腎臓をやりたいと思いました。本書を読んでいただけば分かるとおり、腎臓は人体のネットワークの中で要となる存在です。「腎臓はじつは、スーパースターだった」そのことに驚き、納得してもらうことが、そのまま“人体は神秘の巨大ネットワークである”という、このシリーズのメインテーマを深く感じてもらうことに繋がると考えました。ネットワークという視点で人体を捉え直すことで、これまでの常識が大きく覆る、そんな劇的な瞬間を味わってもらいたいと思ったのです。
これは、書籍版第1巻の「あとがき」の冒頭部分です。
第1回のテレビ放送を拝見して、「“腎臓”が寿命を決める」というテーマは、私には今ひとつ消化できるものではありませんでした。「そうなのかなぁ?」という印象が残りました。そして、その時はそれ以上のことを考えることはなかったのですが、慢性腎不全の患者さまへの鍼治療の効果が明らかになったことで、今一度、NHKスペシャルの「“腎臓”が寿命を決める」を勉強しなおしたいという思いが強くなり、調べたところ書籍版が出ていることを知りました。

162ページのこの本は、前半の「プロローグ 神秘の巨大ネットワーク」と後半の「第1集“腎臓”が寿命を決める」に分かれています。目次は下記の通りですが、ブログは酸素をコントロールし、血液を管理し、寿命を決めるとされる腎臓の働きを詳しく知ることを目的にしています。

プロローグ
神秘の巨大ネットワーク 生命を支える「臓器同士の会話」
1.人体がここまで見えてきた! 驚異の技術革新
2.心臓からのメッセージががん治療に革命をもたらす! 
   ANP、発見と進化の物語(サイズ14)
3.“1滴の血液”で13種類のがんを早期診断
4.人体ネットワークの会話が人生を変える

 

番組では、「メッセージ物質」という言葉が使われています。テレビ放送の時は、この言葉が腑に落ちず混乱の原因となっていたように思うのですが、これは書籍版によって解決しました。以下はその説明個所です。
『「臓器同士の会話」がもたらすもの
腸の細胞が発するメッセージは、「臓器同士の会話」のほんの一例に過ぎない。いま、こうしたメッセージを伝える物質が、腸に限らず、全身のあらゆる臓器から放出されていることが明らかになってきた。
体を支えているだけだと思われがちな、「骨」。血液を全身に巡らせるための通路というイメージが強い、「血管」。現代では“やっかいもの”として扱われている「脂肪」までもが、全身に向けたメッセージを発しているという。
そうした、メッセージとなる物質には、古くから知られていた「ホルモン」や、その後に発見が相次いだ「サイトカイン」、さらに近年急速に研究が進む「マイクロRNA」など、非常にたくさんの種類がある。そこでNHKスペシャル「人体」では、これらの物資をまとめて「メッセージ物質」と呼ぶことにした。人体を「ネットワーク」として捉えるに至った背景には、多くの科学者たちによる、長年の研究の積み重ねがある。その全体像を俯瞰して見たいと考えたのだ。
そして、メッセージ物質の役割が明らかになるにつれて、医療の世界に起きた大きな変革にも注目する。メッセージ物質を人工的につくって投与したり、逆に、その作用を抑えたりすることで、これまで治療が困難とされてきた病気にも希望の光が差し込むようになった。
体の中で交わされる臓器たちの会話に、より一層耳を傾けることが重要になっている。メッセージ物質を理解することは、人体の神秘に迫ることであると同時に、病の克服という切実なテーマにも直結しているのだ。

後半部分の目次です。
第1集 “腎臓”が寿命を決める
1.金メダルの獲得を陰で支えた腎臓のメッセージ
   EPO精製への道
   EPO産生細胞の発見
2.腎臓の手術で重症の高血圧が治る! 大注目の最新治療
3.血液の管理者:腎臓
   腎臓の構造と働き
4.老化や寿命のカギを握る腎臓
5.腎臓を守れ! 命の現場

 

酸素をコントロールする
人間にとって生きるために最も必要な物質は酸素です。カーラーの救命曲線によると、心臓停止後3分で死亡率約50%となっています。このように酸素供給の完全停止は直ちに死に直結します。この重要な酸素の供給に関るメッセージ物質がEPO(エリスロポエチン)と呼ばれる物質です。私が専門学校で習ったときは、ホルモンとされていましたが、昨年(平成29年)3月発行の「病気がみえる vol.8 腎・泌尿器 第2版5刷」では、EPO(エリスロポエチン)は赤血球の「造血因子」と書かれています。
このEPOは腎臓から放出され、「酸素が欲しい」というメッセージを伝えますが、その存在は2008年、日本人研究者によって明らかにされました。そして、尿を運ぶ膨大な数の尿細管、その管と管の隙間、「間質」と呼ばれる部分にEPO産生細胞が存在していることが特定されました。

 

1981年にフランスのカーラー(Morley Cara)が作成した曲線。数値は目安とされています。

画像出展:「宇部・山陽・小野田消防局

 

中央に見えるのが糸球体。その糸球体は複雑に絡み合った毛細血管の塊のようです。周囲にあるホースのような管のほとんどは尿細管で、EPO産生細胞が存在する「間質」は管と管の間です。

画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

『全身に酸素を行き渡らせるためのメッセージである、EPO。体内に酸素を取り込む「肺」や、血液を全身に巡らせる「心臓」ではなく、一見、酸素と関わりがなさそうな「腎臓」が、こうしたメッセージを出す役割を担っているのは、一体どうしてなのだろうか。』
これは本書の中で指摘されている疑問ですが、私も全くその通りだと思います。何故、腎臓なのか不思議です。
そして、その答えは次のようなものでした。
『腎臓の間質は、もともと酸素の供給量が高くなく、低酸素の状態にあります。また、隣にいる尿細管の細胞は尿をつくるためにたくさんのエネルギーが必要で、多くの酸素を消費することが分かっています。そのため、EPO産生細胞の周辺では急速に酸素濃度が下がりやすい。腎臓の中の、この場所は、体に酸素が足りなくなったときに、いち早く感知できる環境になっているのです。つまり、EPO産生細胞がいる場所は、全身の中でも最も酸素が不足しやすい場所であり、だからこそ、酸素の“見張り番”として働くのに最適だというわけだ。』

EPO産生細胞の場所(尿細管のすき間で赤・緑に光っているのがEPO産生細胞。赤色の細胞はEPOをつくっていないOFF(オフ)の状態で、緑色の細胞はEPOをつくっているON(オン)の状態を示す。)
画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

『研究グループは、顕微鏡で観察するとEPO産生細胞が光って見えるように、栄光物質を組み込んだEPO遺伝子をマウスに導入した。すると、EPO産生細胞は尿細管と尿細管のすき間を埋める間質という組織で見つかった。EPOをつくっていたのは、糸球体や尿細管といった腎臓の主体をなす細胞ではないという事実は、世界中の研究者を驚かせた。

EPOによる赤血球の増産
腎臓は体内の酸素が不足していると、EPO(エリスロポエチン)を大量に出し始めます。そして、血液の流れに乗って全身に広がっていきます。
本書では貴重な写真だけでなく、CGによる絵が豊富に使われています。ここでは、EPOによる赤血球の増産の流れをCGのスライドショーでご紹介させて頂きます。下に解説が付いています。また、画像中央のマークをクリックすると停止します。

血液を管理する
『人間の血液の量は、体重の約13分の1(約7.7%)といわれる。体重60キログラムの人なら、血液4.6キログラム。血液1リットルの重さは約1キログラムなので、体の中には約4.6リットルの血液が流れている計算だ。
そして驚くべきことに、心臓が送り出す血液のおよそ4分の1は、2つでわずか300グラムほどの小さな腎臓に流れているのである。その血流量は、毎分800~1,200ミリリットルにもなる。なぜ、こんなにも多くの血液が腎臓に集まるのか。それは、誰もが知る腎臓の役割である「尿をつくる」ことの裏に隠されたもう1つの仕事に関係している。
尿は、体を巡る老廃物を含んだ汚れた血液からつくられる。老廃物を含んだ血液は腎臓に流れ込み、腎臓を通過する中できれいな血液と老廃物などを含む尿に分けられ、尿は体外へ出ていく。
この一連の腎臓の働きを見ると、つい尿の生成のほうへ目が行きがちだ。しかし、体にとって尿の生成と同じくらい、もしくはそれ以上に重要なのは、“きれいな血液”をつくることだ。
ここでいう“きれいな血液”とは、老廃物が除去されているということだけではない。血液中の塩分、カルシウム、カリウムといったさまざまな成分が、すべて適正な濃度になっていることが大切である。実は、これらをきめ細かく調節するのが腎臓の大きな役割だ。』

 

『腎臓は尿をつくるだけではなく、血液中の成分を調節するという重要な役割を担っている。』

画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

 

『腎臓は塩分やカリウムなど、体に必要な成分を一定の割合に保つように管理・調節している。』

画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

小さくて見ずらいですが、上の絵には番号が①~⑤までふられています。それについて説明します。

汚れた血液は腎動脈から腎臓に入り、輸入細動脈を経て糸球体を形成する毛細血管に流れ込む。
糸球体の毛細血管で、血液はろ過される。
血液中の小さな成分(老廃物や水分、ミネラルなど)は毛細血管の穴をすり抜け、ボーマン嚢の内側に入って尿の元となる。
残りの血液成分(赤血球やたんぱく質など)は輸出細動脈から出ていく。輸出細動脈は再び毛細血管となって尿細管に寄り添うように走行する。
体に必要な成分(水分やミネラルなど)が、尿細管で再吸収され、毛細血管に戻される。その後、尿細管周囲の毛細血管が集まって最終的に太い腎静脈となり、成分調節された“きれいな血液”が腎臓から出ていく。

『こうして行われる血液の成分調節は、実は、腎臓だけの判断で行っているわけではない。腎臓は、体中の臓器からのメッセージをしっかり聞き、情報を集める。例えば、カルシウムを調節する際には、喉の近くにある「副甲状腺」という小さな臓器や「骨」から出されたメッセージを受け取っている。これらの情報を基に、腎臓はポンプを制御して、原尿から再吸収する量を変化させているのだ。全身から情報を集め、体調や周囲の状況に応じて血液の成分を常に調整する。まさに、体の中に広がる巨大な情報ネットワークの要といえるだろう。

『腎臓は体中の臓器からのメッセージを分け隔てなく聞き、情報を集めて血液中の成分調節を行う人体ネットワークの要といえる臓器だ。』

画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

『腎臓がろ過する原尿の量は1日約180リットルにもなる。人間の血液量が4~5リットルなので、腎臓は1日のうちに何度も血液のろ過を繰り返している。一方、1日に排泄される尿の量は1~2リットル。原尿の99%は尿細管で再吸収されていることになる。』

画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

 

腎臓というと、まず「尿」、そして次に思い浮かぶのは、「ろ過」でした。今回、様々な臓器と会話しつつ、命のライフラインともいうべき血液成分をきめ細かく調節する「血液管理者」としての腎臓を認識できたことが、最大の収穫だったように思います。

寿命を決める
『日本人科学者が偶然生み出した不思議なマウスの研究から、私たちの寿命を大きく左右する、「ある物質」が明らかになった。その物質とは、リン。血液中のリン濃度が高すぎると老化が加速してしまう。そして、血液中のリン濃度を絶妙に調節しているのが腎臓だ。腎臓は他の臓器と連携しながらリンを調節し、寿命を決めていることが分かってきたのだ。
リンは生命維持に欠かせない栄養素で、魚介類や肉類、大豆などの食品に豊富に含まれている。リンが足りないと、骨軟化症、くる病などの病気の原因になるほか、呼吸不全、心機能低下を引き起こして生命に関わることもある。ところが、最新の研究では、血液中のリンが過剰になると、老化を加速させてしまうことが分かってきたのだ。』

 

上の図は、寿命と体の大きさの関係性を見たものです。これを見ると、体の大きさだけが寿命を決定しているものではないことが分かります。

 

下の図の横軸は、体の大きさではなく、血液中のリンの量によるものです。これにより寿命の長さに関係しているのは、血液中のリンの量であることが分かります。

画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

血液中のリンの調節には、体を支える「骨」と、「腎臓」の会話が重要な役割を果たしている。骨の主成分は、リン酸カルシウム。リンもカルシウムも、体にとっては重要な栄養素であり、骨にはその貯蔵庫としての働きもある。それも、“ただためこんでいる”だけではない。骨は血液中のリン濃度を監視し、腎臓に報告する役割も果たしている。
そのために骨が出しているメッセージ物質がFGF23(線維芽細胞成長因子23)だ。骨は、血液中のリン濃度が高くなると、FGF23を盛んに放出する。いわば「リン、足りてますよ」というメッセージだ。腎臓にはFGF23を受け取る受容体がある。実は、この受容体をつくるための設計図となっているのが、クロトー遺伝子(老化抑制遺伝子)だったのだ。
「受容体はメッセージを受け取る郵便箱のようなものです。クロトー遺伝子が壊れたマウスの腎臓には郵便箱がないので骨からのメッセージが来ても受け取れない。その結果、腎臓がリンをうまく調節できなくなって、老化が加速してしまうのです」と黒尾博士は説明する。
腎臓が骨からのメッセージを受け取ることができれば、その情報に基づいて尿細管での再吸収量を変化させ、血液中のリン濃度を絶妙に調節することができる。逆に、メッセージを受け取れなくなると、謎の老化加速マウスのように血液中のリンが過剰となり、寿命が一気に縮んでしまうこともあるのだ。骨と腎臓の会話が、リンの濃度を決め、それがそのまま寿命にも大きな影響を与えている―。黒尾博士の研究から明らかになってきた、腎臓の新たな真実だ。』

 

骨からの「リン、足りてます」というメッセージにより、腎臓の尿細管の微絨毛にあるポンプが再吸収を停止すれば、寿命は正常ということです。画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

 

付記1:EPO産生細胞とCKD(慢性腎臓病)
CKD(慢性腎臓病)では5段階あるステージの3(中程度)から、夜間多尿、血圧上昇、むくみ等に加え貧血(腎性貧血)が生じてくる可能性が高くなるとされていますが、これは腎臓の機能低下が進行するとEPOが作れなくなるためであると考えられています。
一方、EPO産生細胞は腎臓でみられる「線維化」という病態に深く関っていることも明らかになりました。さらにEPO産生細胞は善悪2つの顔をもっており、CKDの発症・進行を抑制する治療法の開拓に大きなヒントになると期待されています。下記はその詳細を説明した箇所です。
『腎臓病が慢性化する主な原因として、糖尿病や高血圧、慢性糸球体腎炎などが挙げられるが、原因疾患にかかわりなく、腎臓病が進行すると、線維化が生じ、腎臓の機能が損なわれていく。腎臓の線維化が生じる際、そのもとになる細胞は何なのか。
この研究で先鞭をつけたのは、京都大学大学院医学研究科の柳田素子博士の研究グループだった。柳田博士らは、東北大学で開発した遺伝子改変マウス(EPO産生細胞が蛍光を発するマウス)を用いた研究により、EPO産生細胞が硬い線維状の細胞、いわば「悪玉細胞」に変化することで腎臓の線維化が生じることを突き止めた。
一方、山本博士らは、遺伝子改変マウスを貧血状態にし、さらに尿管を縛って腎臓に炎症を誘発させるという実験を行った。すると、炎症でマウスの腎臓に線維化が起こり、線維成分であるコラーゲンが著明に増加するとともに、炎症性物資がさらに増加するという悪循環をきたした。しかも、高度な貧血で低酸素状態にあるにもかかわらず、EPOの産生力は大きく低下した。そしてこのとき、EPO産生細胞は「悪玉細胞」へと変化していた。
これらの研究により、腎臓に炎症のような有害刺激が加わると、EPO産生細胞が「善玉」から「悪玉」に変わってしまうことが分かった。悪玉化した細胞は「筋線維芽細胞」と呼ばれているが、このように細胞の持つ本来の特徴が大きく変化し、異なる性質を持った細胞になることを「形質転換」という。
EPO産生細胞が形質転換するだけでなく、さらに興味深い事実も判明した。尿管を縛って炎症を誘発させたマウスで、完全に線維化する前に縛りを解除したのである。すると驚いたことに、低下していたEPOの産生力が、正常マウスと同じレベルまで回復した。また、抗炎症薬のステロイドを投与すると、EPO産生細胞の産生力はさらに促進されたのだ。
つまり、炎症によりEPO産生細胞が「悪玉細胞」に変化して腎臓に障害をきたしても、炎症を抑制するとEPO産生細胞は本来の「善玉細胞」に復帰するというのである。
山本博士は、「EPO産生細胞は環境に応じて善悪両方向に変化することが分かりました。さらに、EPO産生細胞は高い回復力を持っており、炎症をコントロールしてEPO産生細胞の『善玉』の性質を維持していくことが、腎臓の線維化を抑えるには重要であることが示されました。これは慢性腎臓病の発症・進行を抑制する治療法を探索するうえで大きなヒントになると思います」と語る。
現在、腎臓病の進行を食い止めるためにEPO産生細胞の機能を回復させる治療法を探索されている。EPO産生細胞の発見から始まった研究は、さらなるステージに進もうとしている。』

『EPO産生細胞は低酸素状態になるとEPOをつくり始め、赤血球が増産される。一方、腎臓が障害されて炎症が起こると、EPO産生細胞は「悪玉細胞」に変化し、線維化が進行する。炎症を抑制すると、EPO産生細胞のEPO産生力は回復する。』

画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

『EPO産生細胞が「悪玉細胞」に変化すると、EPOを産生する力が大きく減少する。同時に、線維化のもとになるコラーゲンやさらなる炎症を引き起こす物質が大量につくられる。』

画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

病気の腎臓ではEPO産生細胞のEPO産生力は著しく衰えるが、炎症を抑えると本来の力が蘇った。

画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

腎臓の炎症と慢性腎臓病の関係性を示す資料などは無いかネット検索したところ、「日本医療研究開発機構」さまのサイトに興味深い研究が発表されていました。

付記2:“腎”とは
経絡治療においては、“腎”は五臓(肝・心・脾・肺・腎)の中でも1、2位を争う最も重要な臓器と考えられています。ここでは、専門学校の教科書、東洋医学概論(東洋療法学校協会編)から、腎の中核ともいえる“腎精”についてご紹介させて頂きます。
“腎は、精を蔵し、生命力の根源である原気をもたらす。”
『父母から受け継いだ先天の精は、腎に内蔵されている。この精は、飲食物から造られる後天の精によって、常に補充されている。精は、生命力と、成長、生殖力の根源である。この精が、腎により活性化されたものが、原気(生命活動の原動力となるもの)である。人間は、腎の働きが盛んになるにつれて成長し、生殖能力を生みだす。腎精が充実していれば、原気も盛んで、活動的で、疾病にもかかりにくく、また、根気がいる細かい作業を、やり抜き通す力もわいてくる。そこで、「作強(サキョウ)の官、伎巧これより出づ」といわれる。腎気が衰えると原気がなくなり、活動が低下し、身体が冷える。また、生殖能力も低下し、疾病にかかりやすく、治りにくくなり、さまざまの老化現象を呈する。』
生命力・成長・生殖力・老化に深くかかわるとする東洋医学の“腎”は、現代医学の“腎臓”とは似て非なるものというイメージを持っていました。ところが、今回の勉強を通して、”腎臓”は尿をつくるだけではなく、酸素をコントロールし、血液を管理し、老化にかかわり寿命を決めるという極めて重要な働きを行っていることが分かりました。そして東洋医学の“腎”と現代医学の“腎臓”はかけ離れたものではないという新たな認識を持ちました。

腎臓リハビリテーション

過去ブログ、「CKD(慢性腎臓病)治療の最前線」の宿題になっていた「腎臓リハビリテーション」ですが、入手した情報をベースにまとめてみました。
参考とさせて頂いたのは、日本腎臓リハビリテーション学会さまの各種資料(保存期CKD患者に対する腎臓リハビリテーションの手引き、学会広報誌 腎臓リハ NEWS LETTER、施設紹介)と、日本腎臓リハビリテーション学会の理事長である上月正博先生が執筆された「CKDにおけるリハビリテーション(日本内科学会雑誌105巻7号)」になります。ブログはこれらの内容を組み合わせ、はり付けたようなものになっています。なお、上月先生の「CKDにおけるリハビリテーション」はダウンロードできるようにさせて頂きました。

ダウンロード
CKDにおけるリハビリテーション.pdf
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コペルニクス的転換
『腎臓病といえば、かつて安静にすることが治療の1つであった。しかし、CKD(chronic kidney disease)患者においても、身体活動の低下は心血管疾患による死亡のリスクであることや、軽い運動がCKDを悪化させないことが明らかになり、CKD患者にも運動療法が適用されるようになってきた。運動療法は腎臓リハビリテーション(腎臓リハ)の中核として考えられ、最近ではCKD患者における心大血管疾患発生予防効果や透析導入時期遅延効果の役割も期待されている。』
「CKD(慢性腎臓病)治療の最前線」の中では、「運動制限から運動療法へのコペルニクス的転換」との表現があり、「腎臓病=運動制限」が当たり前と思っていた私にも、これは大きな驚きでした。
 

画像出展:「保存期 CKD 患者に対する腎臓リハビリテーションの手引き」

腎臓リハビリテーションとは
『腎疾患や透析医療に基づく身体的・精神的影響を軽減させ、症状を調整し、生命予後を改善し、心理社会的ならびに職業的な状況を改善することを目的として、運動療法、食事療法と水分管理、薬物療法、教育、精神・心理的サポートなどを行う、長期にわたる包括的なプログラムである。腎臓リハの中核的役割を担う運動療法は、透析患者の運動耐容能改善、Protein Energy Wasting改善、たんぱく質異化抑制(「異化」とは分解すること。栄養状態の悪化によりエネルギーを作り出すための分解が進む)、QOL改善などをもたらす。さらに、最近になって、保存期CKD患者が運動療法を行うことで腎機能(糸球体濾過量:GFR)が改善するという報告が相次いでいる。腎臓リハにより、保存期CKD患者の腎機能改善や腎機能低下速度遅延が確実となれば、透析導入を先延ばしすることができ、多くのCKD患者にとって朗報となる可能性がある。2011年に日本腎臓リハビリテーション学会も設立され、CKD患者における腎臓リハのさらなる発展が期待される。』
なお、Protein Energy Wastingに関しては、「透析患者における protein-energy wasting(PEW)の評価」を参照頂ければと思いますが、「PEWは透析患者に対する低栄養状態の呼称として、海外では広く普及してきている。」とのことです。

CKD患者の抱える問題
『CKD発症あるいは腎障害進行のリスクファクターは、高血圧、糖尿病、脂質異常症、高齢などで、超高齢社会の我が国では今後ますますCKD患者数の増加が懸念される。CKDの進行に伴い、心血管疾患の発症率は加速的に高まる。』
心血管疾患との関係は非常に重要で、日本心臓リハビリテーション学会学術集会においては、2013年の第19回のシンポジウムでは「心臓と他臓器のコミュニケーション(臓器連関)を知る」が、続く第20回のシンポジウムでは「リハビリテーションの心腎連関:慢性腎臓病や透析患者への適応を考える」がテーマとなっています。

臓器連関の病態生理
脳を加えた、脳・心・腎の関係について書かれたものがありましたので、ご紹介させて頂きます。
『脳・心・腎の間には密接で、かつ、精巧な機能的連関があります。この連関には、細胞外液、すなわち、内部環境の恒常性と循環の維持が重要な役割を果たしています。しかし、いったん、脳・心・腎のいずれかが障害されると、この臓器連関により単一臓器の機能不全への進展のみならず、互いの臓器を障害していく負の連鎖を形成します。
腎臓は心臓から拍出された多くの血液量を受け、全身の血行動態に応じたさまざまな神経体液性因子に反応して体液量や電解質を調節し、その結果、心血管機能に影響を与えています。近年、心疾患患者の生命予後は腎機能により大きく影響を受ける一方、腎機能障害患者の主要な死因は心血管病であることが明らかにされ、心腎連関という概念で注目を集めています。心不全では交感神経系やレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系、バゾプレッシンなど神経体液性因子が活性化され、糸球体濾過量やナトリウム利尿の低下が生じ、体液が増加します。一方、心臓より分泌されるナトリウム利尿ペプチドは体液増加の阻止に作用します。また、糖・脂質のエネルギー代謝も脳・心・腎などの機能調節に関わっていることが明らかになっています。
このような臓器連関の病態生理を理解するとともに、各患者の主要疾患への検査や治療などが、他の臓器に与える影響を理解することはきわめて重要です。』

脳心腎・糖代謝連関における腎交感神経の役割

『脳・心血管疾患と腎臓病は密接に関連し、「脳 心腎連関」と呼ばれる概念が提唱されている。しかし、そのような臓器連関の臨床症状に頻繁に遭遇するものの、詳細な発症・進展メカニズムについてはほとんど明らかとなっていない。これに対し、交感神経と腎臓内レニン・アンジオテンシン系の活性化が、脳心腎連関の病態に深く関わっていることが、最近明らかとなってきている。例えば、心不全では心拍出量の低下による腎虚血のみならず、遠心性に腎交感神経が活性化されて糸球体輸入細動脈と輸出細動脈に分布する交感神経終末からカテコラミンが分泌され、腎血流の低下を招く。また、腎神経の活性化は、尿細管のα1 受容体、β2受容体の活性化を介し、ナトリウム再吸収を増加させて体内へのナトリウム貯留を生じ、さらに心不全を悪化させる。……』

心臓リハビリテーションと腎臓リハビリテーション
『2つのリハビリテーションの共通の効果として、最大酸素摂取量の増加、左心室収縮能の亢進、心臓副交感神経系の活性化、炎症の改善、不安・うつ・QOLの改善、ADLの改善、死亡率の低下などがあります。また、慢性腎臓病を伴う心筋梗塞患者にリハを行うと腎機能が改善したとの報告や、冠動脈バイパス術を受けた透析患者がリハを行うと全死亡率や心死亡率が大きく減少したとの報告もあります。超高齢社会では、このような心腎連関の病態生理とリハの効果や影響を理解することはきわめて重要です。』
心臓リハビリテーション」については、2017年5月にブログにアップしていましたので、こちらもご紹介させて頂きます。

腎臓リハビリテーションの運動療法
『運動処方の考え方としては、基本的には慢性心不全患者や高血圧患者の運動療法メニューに準じたものである。運動の種類としては、有酸素運動、レジスタンストレーニング、またはそれらを組み合わせたプログラムを推奨する。身体機能やADL 能力が低下している者は、バランストレーニングなどと適宜組み合わせて、個別のプログラムを作成することが望ましい。運動の負荷は、疲労の残らない強度で短時間、少ない回数から導入し、心拍数や自覚症状に基づいて徐々に強度時間、回数を増加させることが望ましい。また、自宅で行うことができるようなプログラムにすることも効果を上げるためには重要である。』

 

こちらの絵はストレッチングを含む準備体操となる「腎臓体操」と呼ばれるものです。

 

画像出展:「保存期CKD患者に対する腎臓リハビリテーションの手引き」

下の表はCKD患者に推奨されている運動処方です。

 

画像出展:「看護roo!(「保存期CKD患者に対する腎臓リハビリテーションの手引き」を一部改変)」
 

こちらは、CKD透析患者に対する運動療法による効果を示したものです。

 

画像出展:「CKDにおけるリハビリテーション」

「保存期CKD患者に対する腎臓リハビリテーションの手引き」には、運動療法の注意点、腎臓保護効果判定指標、更には日常生活での工夫について記述されていました。
運動療法の注意点
・関節痛など運動器障害や息切れ、胸痛など循環器障害の症状の出現や進展に注意する。
・尿毒症の症状の出現や進展に注意する。
・運動することで腎機能が低下していないかをチェックする。

腎臓保護効果判定指標
運動療法の介入前と介入後3ヵ月程度の成果としては、
1.血清クレアチニン又はシスタチンCの不変・低下
2.尿蛋白排泄量の軽減(20%以上)
3.血清クレアチニン推定GFR(eGFRcr)又は血清シスタチンC推定GFR(eGFRcys)の低下率の軽減(30%以上)(3では介入3 ヵ月前、介入開始時、介入後3ヵ月の3回の採血検査が必要)を目標とするため、これらの検査を必須とすることが望ましい。
日常生活での工夫

平成28年度診療報酬改定 「腎不全期患者指導加算」認定と今後の対応
平成28年度は、一定水準以上の成果を出している保険医療機関に対して糖尿病透析予防指導管理料に「腎不全期患者指導加算(月1回100点)」が設けられましたが、あくまで限定的なものであり、対象範囲を保存期CKD一般や透析患者に拡げていく必要があるとされています。以下は『腎臓リハ NEWS LETTER No5』(最下段がNo5になります)の内容の一部をご紹介させて頂きます。


『本年度、腎不全期の糖尿病性腎症の患者に運動指導を行い、一定水準以上の成果を出している保険医療機関に対して糖尿病透析予防指導管理料に「腎不全期患者指導加算(月1回100点)」が設けられました。算定要件として、腎不全期(eGFR 30mL/分/1.73m2 未満)の患者に対し、専任の医師が、当該患者が腎機能を維持する観点から必要と考えられる運動について、その種類、頻度、強度、時間、留意すべき点などについて指導し、また既に運動を開始している患者についてはその状況を確認し、必要に応じてさらなる指導を行います。施設基準の条件として、運動療法の介入前と介入後3ヵ月程度のアウトカムとして、1)血清クレアチニンもしくはシスタチンCの不変・低下、2)尿蛋白排泄量の軽減、3)血清クレアチニンもしくは血清シスタチンCによる推定GFRの低下率の軽減を確認する、の3条件のうちいずれか1つを満たす症例が5割を超えていることが必要です。

さらに、糖尿病透析予防指導管理料の算定要件に、保険者による保健指導への協力に関する事項を追加する。すなわち、保険者から保健指導を行う目的で情報提供などの協力の求めがある場合に、患者の同意を得て、必要な協力を行います。具体的な運動内容、禁忌、中止基準などに関しては、本学会ホームページの「保存期CKD患者に対する腎臓リハビリテーションの手引き」を参考にしてください。

本学会が要求してきた「慢性腎臓病運動療法料」は、本来は保存期糖尿病性腎症のみならず、保存期CKD一般や透析患者をも含む出来高のリハ料・運動療法料です。今回認定された腎不全期患者指導加算は、わずか4年の交渉で獲得に成功した成果であるとはいえ、認定された対象は糖尿病性腎症で腎不全期にあくまで限定的なものであり、対象範囲を早急に拡げていく必要があります。腎不全期患者指導加算を本来めざしていた慢性腎臓病運動療法料に今後発展させるべく、CKD2期以上や透析患者でも運動療法のエビデンスをさらに強固にして、適応拡大、増点になるように活動を継続します。

最後に、日本腎臓リハビリテーション学会さまのホームページにある「施設紹介」の中から、東京都にある2つの施設について表にしましたのでご覧ください。また、こちらの2つの病院は、腎臓リハビリテーションを積極的に推進されており、大変興味深い内容となっています。

 

 

 

「つばさクリニック」の透析患者さんが元気な理由
 理由その1「ひとりひとりに適切な透析」
 理由その2「解り易い患者指導」
 理由その3「運動療法」
 透析中のミュージックエクササイズ(運動療法)※こちらは動画です。

 

 

 

 

 

当院リハビリテーションの特色
『運動器疾患、脳血管疾患、心血管疾患、呼吸器疾患などの各種疾患別リハビリテーションを幅広く展開しています。また、当院は透析専門施設であり、透析患者さんの運動機能の維持・向上に加え、心血管疾患や腎性貧血などをはじめとする合併症予防を目的とした腎臓リハビリテーションを実施しています。入院でのリハビリテーションでは、脳血管障害による麻痺や、整形外科疾患により日常生活機能が低下した透析患者さんの在宅復帰支援に力を入れています。』

付記

中医学(中国伝統医学)に【肝腎同源】という用語があります。

これは、『肝血は腎精の滋養を受けており、腎精もたえず肝血による補充を受けている。このように精と血とは相互に資源となり滋養しあっていることから、「肝腎同源」あるいは「精血同源」といわれている、病理的な変化のうえでも肝血と腎精とは常に影響しあっており、肝血の不足は腎精の不足を、腎精の不足は肝血の不足を引き起こす。』というものです。

今回のブログでネット上の資料を調べていたところ、内科医の先生が書かれた興味深い資料がありましたので、ダウンロードできるようにさせて頂きました。

なお、その冒頭には次のようなことが書かれています。『太古から物事の要の意味で「肝腎」と言う言葉が使用されてきたように、肝臓と腎臓は、体内の恒常性維持・代謝調節の要である。エネルギー、蛋白、脂質代謝の主役は肝臓、水・電解質・酸塩基平衡調節の主役は腎臓という大まかな役割分担があるが、一部の生理的調節において相互補完関係にある。』

ダウンロード
内科医が知っておくべき腎臓と全身臓器とのインターラクション (肝臓と腎臓).pd
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CKD(慢性腎臓病)治療の最前線

CKDはChronic Kidney Diseaseの略称です。また、日本腎臓学会編として「CKD診療ガイド」が2007年、2009年、2012年と発行され、「CKD診療ガイド2018年」の発行準備が進んでいるようです。
ここでは、2009年版の“CKD診療ガイドの改訂に寄せて”の内容の一部をご紹介させて頂きます。
CKD(慢性腎臓病)は2002年にアメリカで提唱された全く新しい概念です。慢性に進行する腎臓の疾患は数多くあり、腎臓の疾患名はわかり難いとの批判がありました。そこで、さまざまの腎疾患を主に蛋白尿と腎機能の面より新たにCKDと定義しました。CKDという病名は腎臓専門医のためではなく、一般かかりつけ医のための病名です。日本腎臓学会では2004年に慢性腎臓病対策委員会を設置して、疫学調査研究、診療システム構築、社会への働きかけ、国際協調・貢献を4つの柱として、総合的にCKD対策を行ってきました。その中の一つの事業として、かかりつけ医と腎臓専門医の連携を深めて病診連携を行うためのツールとして2007年9月に「CKD診療ガイド」初版を発行しました。・・・』

2月23日のブログでは、慢性腎不全と診断された患者さまへの鍼治療において、改善がみられた症例をお伝えしました。そして、この症例をきっかけとして、腎・腎臓への理解を深め、より効果の高い施術を目指したいという思いが強くなりました。そこで、先月「パーキンソン病 -進化する診断と治療-」でお世話になった最新医學のバックナンバーを調べ、2016年12月号の「特集:慢性腎臓病(CKD)治療の最前線 -生活習慣病への新たなアプローチ-」で知識アップを図ることにしました。

 

出版:最新医学社

この特集は序論に続き次のような内容になっています。
【座談会】
生活習慣病治療のパラダイムシフトがCKD研究に与えるインパクト

CKDにおける生活習慣病治療のパラダイムシフト
CKDと高血圧 -レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の最新知見-
CKDと脂質異常症 -脂肪毒性の役割-
CKDと糖尿病 -細胞内栄養シグナルを標的とした病態解明と治療-
CKDと肥満 -アディポサイトカイン調節機構と腎保護-
CKDと高尿酸血症

生活習慣とCKD進展とのクロストーク
新たなCKDリスクファクター -サルコペニア、フレイル-
CKDと骨代謝異常とのクロストーク
CKDと栄養とのクロストーク
CKDと睡眠障害とのクロストーク

CKD発症阻止のための母子環境へのアプローチ
母体環境がCKD進展に及ぼす影響
小児期の成育環境および生活習慣の変化とCKD発症・進展

CKD診断・治療のUp-to-Date
最新のCKDのバイオマーカー
CKD新規治療薬の開発-PHD阻害薬、Nrf2刺激薬、インクレチン関連薬、SGLT2阻害薬-

ブログに取り上げたのは【CKDにおける生活習慣病治療のパラダイムシフト】と【生活習慣とCKD進展とのクロストーク】です。
まず、要点と思ったものをそれぞれ表形式にまとめました。そして、前者は「レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAA系)」に関して、後者は、「サルコペニアとフレイル」について補足しました。
また、今回のブログを書くにあたり、ネット上にあった優れたサイトや資料もご紹介しています。特に「サルコペニア」「フレイル」の意味については『健康長寿ネット』がおすすめです。

なお、運動療法を中核とする「腎臓リハビリテーション」については次回のブログでご紹介させて頂きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「病気がみえる 腎・泌尿器

レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAA系)
血圧や有効循環血漿量の低下が起こると腎臓はレニンを分泌し、アンジオテンシノゲンがアンジオテンシンⅠを経てアンジオテンシンⅡに変換され、アルドステロンが分泌されます。これにより、血圧、循環血漿量が調節されます。なお、血圧上昇・循環血漿量増加がネガティブフィードバック(抑制的な指示)となりレニンの分泌が抑制されます。

腎臓の傍糸球体細胞は腎血流量の変化を感知し、減少すればレニンの分泌を促進し、増加すれば抑制するという仕組みをもっています。このレニンは発見当初は活性化の仕組みがわからずホルモンかキナーゼ(リン酸化酵素)の一種ではないかと考えられていましたが、現在ではタンパク質分解酵素の一種とされています。
ACE(アンギオテンシン転換酵素)も酵素です。肺などの血管内皮細胞によって産生・放出される血圧調節に関与しており、種々の呼吸器疾患、肝、腎、甲状腺疾患、糖尿病などで変動することが知られています。アンジオテンシンとアルドステロンは尿生成に関するホルモンです。双方、血圧上昇の働きがありますが、後者は体液量増加の働きももっています。アンジオテンシンは肝臓で合成されたアンジオテンシノゲンが元になっています。一方、アルドステロンは副腎皮質から分泌されます。

 

中央の2つがアンジオテンシンⅡとアルドステロンです。他に尿生成に関するホルモンとして、バゾプレシン、ANPがあります。

画像出展:「病気がみえる 腎・泌尿器」

横道にそれますが、「神秘の巨大ネットワーク」と題するNHKスペシャルが放映されています。これは脳が関与することなく、臓器同士がメッセージのやりとりをしながら様々な働きをするというものです。この中で臓器同士のやりとりは、ホルモンやサイトカインなどの「メッセージ物質」を介して行われますが、番組では、「人体の本当の姿は脳を頂点とするタテ社会と考えられてきたが、臓器同士の会話による巨大ネットワークが人体の真の姿である。」という考え方を紹介しています。
この考えに従って、RAA系(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系)をみてみると、主な臓器は腎臓肝臓副腎です。メッセージ物質は酵素のレニンACEとホルモンのアンジオテンシンⅡアルドステロンということになり、RAA系も「巨大ネットワーク」の1つということになると思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出版:東京書籍


サルコペニアとフレイル
こちらの図は本文に掲載されている「図1 CKD患者におけるフレイルの原因」と「図2 CKD患者におけるフレイルがもたらす結果」ですが、この2つの図を説明した箇所を引用させて頂きます。なお、クリックして頂くと拡大されます。


CKD患者においては、食思不振や食事制限による栄養摂取不足はサルコペニア、フレイルの主要因である。しかし、栄養摂取不足のみならず、尿毒症、全身性の炎症、糖尿病や心血管疾患などの併存疾患、代謝性アシドーシスやインスリン抵抗性などの代謝・内分泌系的異常なども、サルコペニア、フレイルの発症に関与している(左-図1)。さらに、透析患者では、透析による栄養素の喪失(アミノ酸やタンパク質の透析中への流出)や透析治療に関連した因子(透析液中のエンドトキシンや透析膜の生体的合成など)も加わり、サルコペニア、フレイルを非常に来たしやすい。サルコペニア、フレイルは感染症、心血管疾患、虚弱や抑うつなどを引き起こし、さらにこれらの合併症がサルコペニア、フレイルを増悪させる要因となる(右-図2)。
フレイルが要介護状態の前段階とすると、この状態は日本では介護予防の二次対策予防対象者に相当する。したがって要介護状態をできるだけ予防するうえでも、このフレイルの予防・介入は喫緊の課題である。サルコペニア、フレイルに対する包括的かつ積極的な介入が、CKD患者のQOL向上や生命予後改善のために不可欠である。』

 

平成28年9月に一般社団法人となった、日本サルコペニア・フレイル学会さまのサイトには次のような説明がされています。

 『世界的に社会の高齢化は大きな問題となっていますが、高齢者の機能障害や要介護に至ることを予防するためには、疾病の管理とともに老年症候群の管理が重要です。なかでも生活機能障害を招き、健康長寿の妨げになるものとしてフレイルやサルコペニアが非常に注目されています。フレイルは高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、機能障害、要介護状態、死亡などの不幸な転機に陥りやすい状態とされ、生理的な加齢変化と機能障害、要介護状態の間にある状態として理解されており、サルコペニアは、加齢に伴って筋肉が減少し、握力や歩行速度の低下など機能的な側面をも含めて定義されています。サルコペニアが進行すると転倒、活動度低下が生じやすく、フレイルが進行して要介護状態につながる可能性が高くなり、高齢者の運動機能、身体機能を低下させるばかりでなく、生命予後、ADLを低下させてしまう場合が多く、その対策が必要です。すなわち、サルコペニアはフレイルの一つの重要な要因ともいえます。』

 

 

 

「サルコペニア診療ガイドライン2017年版」:サルコペニア診療のためのガイドラインが、国立長寿医療研究センター、日本サルコペニア・フレイル学会、日本老年医学会によって作成されました。

同研究センター副院長の荒井秀典先生が監修された「サルコペニアがいろん」の中に、サルコペニアが起こるメカニズムに関する記述がありましたので、専門的な内容ですがご紹介したいと思います。

出版:ライフサイエンス出版


●加齢による神経筋シナプスの形態変性
『筋の運動機能を維持するためには、筋組織と運動神経が連携して運動時に必要な代謝産物、エネルギー量や酸素消費量の需要増大に対応する必要があります。脊髄にある運動神経細胞の細胞体から伸びた神経線維の終末部は、筋細胞と接して神経筋シナプス(接合部)を形成しています。加齢に伴ってこの神経筋シナプスの断片化、構造の単純化、神経終末の分枝化が起こります。このような神経筋シナプスの形態変性は、運動神経終末から分泌される神経伝達分子(アセチルコリン)の作用効率を下げ、サルコペニアにおける筋力低下や筋萎縮の原因となります。さらに、ビタミンDが神経筋シナプスの構造の維持に有効との報告もあります。』

左は神経筋接合部の構造です。

画像出展:「人体の正常構造と機能」


●筋幹細胞の老化との関係
サルコペニアの筋では、筋線維の数と断面積が減少しています。発生期の筋線維の形成や筋が損傷したときの修復には、再生・分化能をもつ筋幹細胞が必要ですが、加齢により筋幹細胞の再生・分化能や修復効率は低下します。しかし、筋の単なる加齢変化では明らかな筋損傷がみられないことや、筋幹細胞が筋線維の維持に必ずしも必要でないとの報告もあり、筋幹細胞の老化とサルコペニアの因果関係は、今後の課題です。』
●代謝バランスの破綻と可塑性の喪失
『筋力や身体能力の低下は認知症を含む老年症候群、要介護や死亡のリスクと相関することが明らかになっています。加齢による全身の変化は、筋量の減少ではなく筋の質的な変化と強く関連していることを示唆しています。筋肉も他の組織と同様に、通常は筋タンパク質の同化(合成)と異化(分解)が平衡状態に保たれています。骨折や脳血管障害などによりベッドレストで筋が不活動状態になると、同化と異化のバランスが急速に崩れ、筋は2週間で萎縮します。この萎縮した筋は通常の生活に戻ればすぐに改善されますが、加齢とともにその回復力は低下し、また加齢に伴う低栄養・低タンパク質は回復をさらに阻害します。
サルコペニアの萎縮した筋では遅筋線維の割合が相対的に増えると考えられます。若い筋では、運動により筋線維が肥大するだけでなく、運動の種類(筋力/耐久トレーニング)によって速筋線維と遅筋線維の割合を変化させることができますが、加齢とともにこのような可塑性は失われます。
免疫細胞の機能制御を担う多くのサイトカインは筋からも分泌されていて、サイトカイン以外の分泌タンパク質を含めてマイオカインと総称します。マイオカインは肝臓、膵臓、脂肪組織、免疫組織、骨、脳などにも血流で運ばれ、マイオカインの分泌制御は筋の運動機能や体内の栄養環境の影響を受けるため、サルコペニアだけでなく認知症など老年症候群の成因と強い関連があると考えられます。』

長寿科学振興財団 健康長寿ネット

 

「高齢者の病気」の先頭の2つに「フレイル」と「サルコペニア」があります。それぞれ、原因・診断・治療・予防などが丁寧に説明されています。

協和発酵キリンさまの運営サイトです。

とても親切なサイトで、マンガによる解説も付いています。

いま,なぜ睡眠と全身性疾患か?? ―全身性疾患を睡眠からとらえる

睡眠との関係を知りたいと思い検索して発見した資料です。

「おわりに」の冒頭は次のような内容です。『睡眠時間の減少や睡眠時の呼吸異常は、全身性炎症や心血管系疾患、代謝性疾患と密接に関連すること、さらに癌の進展リスクにもつながり得ることを示した。とりわけ、肥満に伴う閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)ではIH(間歇的低酸素[Intermittent Hypoxia])やそれに伴う全身性炎症が生活習慣病の発症進展に重要な役割を担っている。……』

療育-ほめ方・しかり方・言葉かけ

発達障害児に対し、潜在的な部分まで幅広く理解できることは大切です。一方、現場では、その時、その場で、その子に対し、もっとも適切な1番・2番を直感的に選択し、行動することが求められるのだろうと思います。また、これが「療育」のポイントではないかと思います。
11月に「はじめての療育」という本で勉強させて頂きましたが、咄嗟の判断ができるレベルはまだまだ先にあり、自信に満ちた対応、実践力を磨いていかないといけないなぁと思っていました。
そこで、まずは図書館より、今回の「発達障害の子どもが伸びる ほめ方・しかり方・言葉かけ」という本を借りることにしました。A4サイズと大きめで、111ページと手頃なボリュームであり、「これはいいね!」という印象でした。

amazonでは似たような内容の本を数多く紹介してくれるので、良くも悪くも迷ってしまうのですが、この本にはあまり安いものはなく、また、カスタマレビューが全くありませんでした。
ちょっとに気になり他の本もチェックしたのですが、最終的にこの本を手元に置いておきたいという気持になりました。

特に、内容紹介に出ていた「発達障害の子どもは、どんな言葉をかけてあげれば喜び、自信を持ち育つことができるのかを、シミュレーション。」とあったのが、決めたポイントです。というのは、過去ブログの「ありがとう ヘンリー」の中で、発達障害児にとって極めて大切なことは「自信と自尊心」であるということを頭にたたき込まれていたためでした。
なお、ブログは土台になると思われる第1章~3章について触れています。

 

監修:塩川宏郷

出版:河出書房新社

第1章 発達障害ってどんな障害なの?
『発達障害とは、言語・コミュニケーション・社会性などの発達になんらかの特性(偏りやゆがみ)があることによって生じる不適応状態をさします。生まれながらの(生来的な)脳機能障害と考えられており、個人によりその特性の強さが違います。最近では「障害」ではなく、本人の「個性」としてとらえることで、その特性を伸ばす方法が模索され、さまざまな支援が行われるようになってきています。』


発達障害は、大きく3つのタイプに分けられる
精神遅滞(知的障害)
 全般的な知的機能の発達の停滞をさします。
自閉症スペクトラム障害(ASD)
 ASDには自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害が含まれます。ASDの典型的な特性としては、「社会的な対人関係を築きにくい」、「コミュニケーションがとりにくい」、「こだわりが強い」という、広汎性発達障害の3つの特性が認められます。
特異的発達障害
 知的能力に全般的な遅れはないものの、「読む」「聞く」「話す」「書く」「計算する」「推論する」などの学習と関連する部分的な能力や機能で著しい遅れ見られるのが特徴です。読み、書き、計算など学習能力の習得に時間がかかるLD(学習障害)や、集中力がなく、衝動的で落ち着きや注意力がないADHD(注意欠如/多動性障害)も特異的発達障害に含まれます。
これらは、重なり合う部分が多くあり、また2つ以上の機能障害を併存している場合もあります。

 

発達特性は2~3歳ごろから見られ始める

子どもの発達は個人差が大きく、人によって発達特性が目立ってくる時期も違ってきます。自閉症スペクトラムは、典型的な子どもの場合2~3歳ぐらいで特性が見られるようになります。もっとも分かりやすいのは言葉の遅れです。アーウーといった声(喃語)は出しても、パパ、ママといった意味ある単語などが出てこない、指をさして教えないなどといった言動が特徴です。一方、ADHDの特性は5歳ぐらいから強くあらわれてきます。
発達障害の診断が確定的となるのは3~4歳ごろが一般的です。それまでの発達の経過は個人差が大きく、健常と病的な区別をつけることは困難です。従いまして、確定診断は急がず3歳を過ぎてから考えるのが妥当です。

 

画像出展:「発達障害の子どもが伸びる-ほめ方・しかり方・言葉かけ」

自閉症スペクトラム(ASD)の基本的な3つの特性
1.人との関わり方が苦手(社会的なやり取りの障害)
・人と目を合わせない
・名前を呼ばれても反応しない
・相手や状況に合わせた行動が苦手(マイペースな対人行動)
・自己主張が強く一方的な行動が目立つ
2.コミュニケーションがうまくとれない(コミュニケーションの障害)
・言葉の遅れ
・言われた言葉をそのまま繰り返す(オウム返し)
・相手の表情から気持ちを読み取れない
・ことわざや、皮肉、たとえ話を理解することが苦手
3.想像力が乏しい・こだわりがある(こだわり行動)
・言われたことを定義通りに受け取りやすい
・「ままごと遊び」「役割遊び」をあまりしない
・決まった順序や道順にこだわる
・急に予定が変わるとパニックをおこす


ADHDの基本的な3つの特性
1.不注意
・モノをよくなくす
・細かいことに気がつかない
・忘れ物が多い
・話し声や教室外の音が気になって集中できない
・整理整頓が苦手
2.衝動性(よく考えずに行動する)
・順番を待てない
・先生にあてられる前に答える
・他の児童に干渉する
3.多動性(落ち着きがない)
・じっとしていられない
・授業中も席を立ってウロウロする
・静かに遊んだり、読書をしたりすることが苦手
・手や足を動かしそわそわしている
・授業中でも物音をたてたりする


LDの基本的な特性は6つの学習能力の問題
1.「聞く」ことの障害
・会話が理解できない
・文章の聞き取りができない
・書き取りが苦手
・単語や言葉の聞き誤りが多い
・長い話しを理解するのが苦手
・長い話しに集中できない
・言葉の復唱ができない
2.「話す」ことの障害
・筋道を立てて話すことが苦手
・文章として話すことが苦手
・話しに余分な内容が入ってしまう
・同じ内容を違う言い回しで話せない
・話が回りくどく、結論までいかない
3.「計算する」ことの障害
・数字の位どりが理解できない
・繰り上がり、繰り下がりが理解できない
・九九を暗記しても計算に使えない
・暗算ができない
4.「推論する」ことの障害
・算数の応用問題・証明問題・図形問題が苦手
・因果関係の理解・説明が苦手
・長文読解が苦手
・直接示されていないことを推測することが苦手
5.「読む」ことの障害
・文字を発音できない
・間違った発音をする
・単語を発音できない
・文字や単語を抜かいして読む
・読むのが遅い
・文章の音読はできるが、意味が理解できない
6.「書く」ことの障害
・文字が書けない
・誤った文字を書く
・漢字の部首を間違う
・単語が書けない、誤った文字が混じる
・単純な文章しか書けない
・文法的な誤りが多い(「てにをは」の誤りが多い)

早めに気づいて、早めに支援を考える
発達障害は、3~5歳ぐらいまではなかなか確定診断できないといわれています。しかし、その特性の一部は赤ちゃんのうちからあらわれてくることが少なくありません。できるだけ早く特性に気づいてあげることが重要です。
こんな赤ちゃんの反応を見逃さないで
『発達障害の場合、顕著にあらわれていなくても赤ちゃんは生まれながらに特性を持っています。赤ちゃんの様子や反応を注意深く観察しましょう。
自閉症児を持つ母親などに赤ちゃんのときの状態を聞くと「人見知りをしない子だった」「夜泣きをしない子だった」というように「手のかからない子だった」という声が少なくありません。反対に「いくらあやしても泣き止まなかった」とか「特定のおもちゃしか興味を持たなかった」という「困った子だった」という声もあります。
発達障害の特性は、その子どもの個性でもあるので、あらわれ方は子どもによってそれぞれ違ってきます。しかし、いくつかの傾向があります。もし、子どもの動向が気になったら、なるべく早めに保健所や病院に相談しましょう。』
3歳を過ぎたら「かんしゃく」に注意
『3歳を過ぎたころになると、自閉症スペクトラムの特性を持っている子どもは、しばしば急に奇声を発したり、自分の腕をかんだり、自分の頭を壁に打ちつけたりすることがあります。「かんしゃく」や「パニック」と呼ばれる行動です。こうした行動には子どもなりの理由があります。
自閉症スペクトラムの子どもには「感覚の過敏性」があるといわれています。これは、身の回りの音や光が非常に強く感じられたり、温度やにおいという感覚について私たちとは違う感じ方をしたりいている状態をいいます。
感覚の過敏性を持っている子どもたちは、私たちが体験している世界とはまったく違った感覚の世界に住んでいると考えてみましょう。そしてその世界はしばしば不安や緊張に満ちあふれた世界なのです。また、他人の話している言葉が理解できず、相手の表情がなにを意味しているのかを読み取れないという状態も「特性」の一つです。ちょうど私たちが外国にたったひとりで放り出された状態を想像してみるとわかりやすいでしょう。
このような状況で、自分が対処しきれないできごとが発生してしまったときや、不安や恐怖を強める刺激が加わったときにパニックやかんしゃくが起こります。つまり、パニックやかんしゃくは不安や恐怖が自分ではどうすることもできない極限に達してしまっている、誰か助けてほしい、というサインなのです。
したがって、パニックやかんしゃくそのものを止めようとするのではなく、パニックを引き起こしてしまうような子どもをとりまく環境要因を調べることが大切になります。』

第2章 子どもが伸びる「言葉かけ」7つの基本
言葉かけの基本は、「ほめて」伸ばす
ほめられることで、落ち着いてくる
・ほめられることで成長し、「自分は生きている価値がある」「自分は必要とされている」という自分を肯定する気持ち(自己肯定感)を高めていくことができる。
・自己肯定感が高まってくると、少しずつパニックが減り、落ち着いていく。
・特性がある子どもは家庭でも学校でもほめられることより、しかられることが多く、大きな劣等感を抱えている場合が多く、いつまでも自分に自身が持てない。
ほめることは、子どもの将来につながっている
・ほめるとは、小さくとも子ども自身が一つの壁を越えたことを認めることである。
・普通の子どもにとっては何気なくできることでも特性をもっている子どもには、大きな壁であることを理解する。

 

画像出展:「発達障害の子どもが伸びる-ほめ方・しかり方・言葉かけ」

指示は短く、わかりやすい言葉で具体的に
長い指示が苦手な場合がある
・特性を持つ子どもは一般的に長い文章(指示)が苦手である。例えば「手を洗ってからご飯を食べよう」という指示に対して、前半部分の「手を洗って」を忘れてしまう。
指示は、短くわかりやすい単語で一つひとつはっきりと伝える
・特性をもっている子どもに話しかけるときは、できるだけ短く、わかりやすい言葉を使う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「発達障害の子どもが伸びる-ほめ方・しかり方・言葉かけ」


「ダメ!」と否定的で強い言葉でしからない
否定的にしかるより、やるべきことを具体的に指示する
・特性を持っている子どもは、「いけません」と言われても、そのあとに自分が何をすればいいのかわからないと、とまどってしまう。例えば「ドアを開けっ放しにしてはダメ」という表現は「ドアを閉めて」に言い換えると、理解および行動がしやすくなる。

 

画像出展:「発達障害の子どもが伸びる-ほめ方・しかり方・言葉かけ」

しかったり注意したりする回数を減らす
注意する回数を減らすことで気持ちを安定させる
・ADHDの子どもは「不注意」「落ち着きがない」「衝動的」という特性を持っている。お母さんが怒っていることは理解できるが、どうしても行動を抑えられないのがADHDの特性であり、その事実を理解してあげる。
一度、子どもの注目を引きつける工夫をする
・ADHDの子どもは、何かに夢中になっているときは、お母さんの声が「聞こえていない」場合もあるので、一度、子どもの近くへ寄って注目を引いてから注意する。また、注意するときは感情的になって大きな声を出したり、命令口調で注意したりしない。
子どもがとまどう言葉かけを避ける
皮肉や冗談は通じないことが多い
・自閉症スペクトラムの子どもの中には、よくおしゃべりする子どももいるが、直接的でない表現を理解することは難しい。「直接的でない表現」とは、慣用的表現、比喩、暗示、反語、まわりくどい表現など。

 

画像出展:「発達障害の子どもが伸びる-ほめ方・しかり方・言葉かけ」

毎日の予定表を作って声をかけて確認しよう
スケジュール表で次にやることを確認させる
・特性を持っている子どもは、次になにをやるのかわからないと不安を感じる。そこで、目で見て確認できるように1日のスケジュール表を作り、できあがったスケジュール表を親子で確認しながら行動する。
体罰は、百害あって一利なし
体罰には有害な作用しかない
・体罰では特性は治らない。体罰は、親とのきずな、のびのびとした心、おとなへの信頼感、周りの人を好きになる気持ちなど子どもが本来持っている大切なものを壊してしまう。
・「がんばったね」とほめてあげることが子どもを伸ばすことにつながる。


第3章 子どもの気になる行動を減らす言葉かけ
パニックを起こしたときに落ち着かせる言葉
・パニックは、突然、奇声を発したり自分や他人に噛みついたり、物を投げつけたりする行動であるが、パニックには、必ず理由や原因がある。
・子どもがパニックを起こしたときはしからないことが基本。子どもの気持ちになって「いつものと違うから嫌なの?」というように言葉にしてあげると落ち着くことがある。

 

画像出展:「発達障害の子どもが伸びる-ほめ方・しかり方・言葉かけ」

前もって変更や変化を説明しておく
・普段から子どもがパニックを起こす状況や傾向を把握するようにする。
・特性を持っている子どもにとっては、「あらゆる変化」が大きなストレスになる。
・パニックを減らすためには、何か変化が予定されていたり、予測できる場合はあらかじめ説明して心の準備をさせることが役に立つが、子どもがうまく行動できたときには、「ありがとう」「えらいよ」と言葉をかけてあげることが重要。子どもはほめられることで自分自身でパニックを回避する行動を少しずつ覚えていく。

しかっても聞かないときは、しかり方を変えてみる
長いお説教には効果がない!
・特性によっては相手の話していることが理解できない場合もある。
・以前の失敗を蒸し返すようなしかり方は、特に理解が難しい。
・しかる場合
 ・そのときその場でしかる
 ・短いことばで具体的にしかる
 ・どうすればしかられないかを具体的に教える etc
子どもの気持ちを想像してみる
・「6年生なんだからこのくらいはわかるだろう」と思うのではなく「6年生になったけど、これくらいはわかっているかな?」と考えながら行動を観察することが大切である。

食事時の気になる行動-①
同じおかずしか食べないのはこだわりのため
・特性を持つ子どもの偏食は単なる好き嫌いによるものではなく、食べ物の味、色合い、におい、食感などの感じ方が通常と異なっているために起きていると考えられている。
残したことをしかるより食べたことをほめてあげる
・偏食はどうしようもないものと切り替え、好きなものを全部食べたことをほめることが大切。子どもはほめられることで食事が楽しくなり、もっとほめられたいと思うようになる。

 

画像出展:「発達障害の子どもが伸びる-ほめ方・しかり方・言葉かけ」

食事時の気になる行動-②
まわりが気になって食事に集中できない
・多動傾向の特性をもつ子どもにとっては、食事中に他のことが気になることはどうすることもできない部分があると理解してあげる。
食事に集中できるような環境をつくる
・食事に関係ないもの(テレビ、おもちゃなど)は食卓から遠ざける。
・「7時になったらテーブルにつこう」とか「この番組が終わったら食事だよ」、あるいは「7時半までに食べたら、お父さんとゲームをしよう」などと子どもが準備できるように声をかけてあげる。

 

画像出展:「発達障害の子どもが伸びる-ほめ方・しかり方・言葉かけ」

ルールやマナーが理解できないときは
ルールやマナーを覚えることが難しい
・ルールやマナーをある程度理解できたとしても、順番を守ることやその場の雰囲気を読み取って行動すること、「暗黙の了解」などは苦手な子どもが多い。
言葉よりも「可視化」でルールを理解しやすくする
・「目に見える形」にすることは理解の助けになる。「絶対にこれだけは守る」ということをいくつか選び、壁や机に紙をはったり、手帳などにメモしたりすると良い。

 

「ほどほど」がわからないときにかける言葉
極端な行動をとってしまうのは「ほどほど」が理解できないから
・「おなかがいっぱいになったらやめる」「暑くなったら上着は着ないよ」「そろそろ遊ぶのをやめよう」といったあいまいな指示は特性のある子どもはうまく理解できず、なかなか従うことはできない。
・ポイントは「ほどほど」をお母さんや周囲の人が決めてあげること。お茶碗2杯、気温が10度といった数値や、時計の針がここまできたら次の遊びをする。など目で見てわかるように工夫する必要がある。
「ほどほど」がわからないのは「こだわり」のせいかも
・一つのことにこだわると他に注意を向けることは難しい。
・こだわり行動は好きでやっている場合以外に、不安に感じたり緊張したりする場面で見られることが多い。この場合、不安や緊張の原因やきっかけがあるはずなので、それを見つけてあげることが最初にすることである。原因が見つからない場合には、子どもが「不安を感じているんだな、緊張しているんだな」と」理解してあげるようにする。
・こだわり行動は、成長・発達とともに目立たなくなっていくことが多いので、あせって行動を何とかしようと頑張らず、しばらく見守ることも大切である。

 

画像出展:「発達障害の子どもが伸びる-ほめ方・しかり方・言葉かけ」

「こだわり行動」がエスカレートしたときにかける言葉
こだわり行動に対する考え方
・こだわり行動が強くなる場合としては、環境の変化やスケジュールの変化、年齢があがることで期待されることが増えることへのプレッシャー、引越しや就園・就学などの「ライフイベント」などがきっかけになることが多い。
・環境変化を点検することが第一。まずは子どもとその周囲の環境をよく観察する。観察のポイントは今までとの違いは何かということ。また、観察したことをノートに記録することが非常に重要。記録しておかないと分析ができず、適切な対策につながらない。

付記

「発達障害ポータル」さまから配信される「コラム」で勉強させて頂いているのですが、「療育」には以下のような側面もあるようです。 

慢性腎不全が鍼治療で改善!

慢性腎不全の患者さまへの施術で、クレアチニン値3.64から2.38に改善された症例がありましたのでご紹介させて頂きます。なお、体調も良くなり通常のお仕事に復帰されました。
・施術期間:2017年11月-2018年1月
・施術回数:9回
・クレアチン値:3.643.022.502.38

今回、ブログを書くにあたり患者さまにご相談したところ、検査結果もお見せ頂けることになりました。下記がその検査結果ですが右上に日付が出ています。なお、クリックして頂くと拡大されます。



CKD診療ガイド2012を元に、内臓トレーニング協会さまが作成されたグラフです。これを拝見すると、クレアチニン値が3.5以上になると手術が必要になってきます。

画像出展:「内臓トレーニング協会

 

 

 
腎移植手術を行う場合、医療費助成制度適用には、「腎機能障害の身体障害認定」が必要となります。4級の評価基準は右端にある「クレアチニンクリアランス(Ccr)20以上30未満」もしくは「クレアチニン値3.0以上5.0未満」のいずれかを満たすという条件です。つまり、3.0という数値は日常生活活動の制限を覚悟しなければなりません。

 

画像出展:「腎援隊

疾患-慢性腎臓病」でも触れていますが、「鍼治療が慢性腎臓病(CKD:chronic kidney diseas)に有効ではないか」ということを考えるようになったのは、静岡トレーニングクリニック 廣岡院長の著書、「腎臓病を自分でなおす -私たちはクレアチニン値を自分で下げた-」を拝読させて頂いたことによります。仮説ということではありますが、「クレアチニン値の下がる理由(特に青字箇所)」鍼治療の可能性を確信した理由です。

注)静岡トレーニングクリニックさまで行われている「内臓トレーニング療法」は鍼治療ではありません! 「低周波パルス印加装置」を使用されています。

 

発行は、2015年4月です。

出版:アイシーアイ出版

クレアチニン値の下がる理由(仮説) 
a 人体を細胞レベルで見ると
『体を細胞レベルで見ると、約60兆個の細胞からできています。全ての細胞は、酸素を取り入れて二酸化炭素を排出し、アミノ酸やブドウ糖などの栄養を取って老廃物を排出しています。細胞に栄養と酸素を届けるのは血液であり、二酸化炭素と老廃物も血液によって回収されます。ですから、細胞は血液が届けば健康ですが、届かなければ衰弱し、もし酸素が届かなくなれば10分ほどで死んでしまいます。つまり、細胞にとって血液は生命線であり、全身の細胞に血液が行き届いていれば人間の体は元気でいることができます。
b 細胞も生き物、その健康状態はさまざま
細胞は生き物です。生き物は単純に生か死に二分することは出来ません。元気な細胞、疲れた細胞、病気の細胞などがあり、徐々に弱って寝込んだり倒れたりして最後に死を迎えます。一般的にクレアチニン値1.00を超え、腎機能に支障があると診断されたときには、その機能の半分が不全に陥っています。しかし、1.00の時、半分の細胞が死滅し、残りの半分の細胞が元気というわけではありません。細胞は活発に活動しているものから、瀕死の状態のものまでさまざまな健康状態で混在しています。腎臓の機能の回復を図ろうとするなら、弱っている細胞に新鮮な酸素と栄養をたっぷり与えれば、人間と同じように元気になるはずです。それには腎臓の血流を活発化すればよいのです。』
c 血液が届けば細胞は元気になれる
全身の血流を活性化し、臓器に血液を送りこめば、元気な細胞は今まで以上に元気になり、疲れた細胞は疲労を回復し、病気の細胞も治癒し、瀕死の細胞も息を吹き返すはずです。そして、疲労しきった腎臓の機能全体が回復してクレアチニンの数値も下がるはずです。現に、内臓トレーニングでクレアチニンを下げたり、数値の上昇を抑えている人は7割を超えています。内臓トレーニングが、クレアチニンは下がらないという医療界の常識に反して効果を挙げている理由は、ここにあると考えています。ただし、この考え方は科学的に証明されたものではありません。あくまでも細胞生理学的な見地からの仮説です。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「内臓トレーニング協会

また、次のご指摘も納得のいくものでした。
血液の流れる仕組み
『血液の大循環を考えてみましょう。心臓から押し出された血液は動脈を伝って全身に届けられ、静脈から心臓に戻ります。血液循環で一番難しいのは下半身に降りた血液を引力に逆らって心臓に戻ることです。心臓から足のつま先まで約1メートルの高さがあります。下半身の血液は、主として第2の心臓と呼ばれるふくらはぎの筋肉が動かします。ふくらはぎの筋肉がしっかり動けば、下半身の血液は尺取虫にように押し上げられて、心臓に戻ります。日常生活の中でふくらはぎを動かすには歩くことです。しかし、現在は車社会で歩くことが極端に少なくなっています。このため、下半身に汚れた血液が溜まり、さまざまな病気になりがちです。
次に毛細血管の血液の流れを説明しましょう。毛細血管は筋肉の中にあり、毛細血管の血液も筋肉の収縮によって体の隅々まで流れます。やはり、運動が必要です。ですから、歪んだ姿勢で生活したり、肩こりや腰痛で筋肉を固めてしまうと、筋肉の収縮頻度が少なくなり、毛細血管の血液の流れまで悪くなってしまいます。血液の流れを円滑に保つことは、健康な人でもなかなか大変なことです。ましてや腎臓を患っている人は、当然血液の流れが滞りがちです。』

 

画像出展:「腎臓病を自分でなおす」

 


警告のための名称
廣岡先生は、2012年5月に発行された「腎臓病をなおす-内臓トレーニングでクレアチニン値は下がる-」の中では、次のようなお話もされています。
腎臓の働きが衰えてくると、一般に慢性腎臓病とか慢性腎不全と診断される。しかし、この名称は「腎臓の機能が衰えてきています」と腎臓の働きの状態を表した病名で、いわゆる「警告のための名称」と考えるとわかりやすい。

 

 

 

 

廣岡先生が実施されている治療は「内臓トレーニング」とよばれ、ホームページにも詳しく紹介されています。

ご参考1

ホームページに紹介されている「田坂定孝教授著[低周波脊髄・頭部通電療法]中外醫學社刊」は、「国立国会図書館デジタルコレクション」の中にありました。資料は「図書館向けデジタル化資料 送信サービス参加館」に登録されていれば、その図書館にある専用端末で閲覧およびコピーが可能です。添付は、「田坂定孝教授著[低周波脊髄通電療法]」です。これは[低周波脊髄・頭部通電療法]の2年前の1958年に発行されたものです。実は、間違ってこちらを閲覧・コピーしてしまいました。なお、『本通電法を一応低周波脊髄通電法(以下低脊通電と略す)と命名して昭和30年8月20日に(日本医事新報,第1634号)に報告したものである。』と記されていました。

右側は「低脊通電の臨床効果」が書かれた最初のページですが、見ずらいため冒頭の一部を書き出しました。

 

『低脊通電は諸種中枢性神経疾患ことに脳卒中後片麻痺にみられる運動障害に有効であるばかりでなく、視覚障害・言語障害・拘攣・自律神経障害および精神障害などにたいしても有効であり、約15%くらいの無効例および15%くらいの微効例はあるが、その他の70%においては効果がはっきり認められ、しかもこのうち約20%においては卓効または劇的な効果がみられた。・・・』


鍼治療の概要
当院の鍼灸治療は経絡治療になりますが、日本伝統医学研修センターにて相澤良先生よりご教授いただいた経絡治療になります。これは、岡部素道先生が昭和20年~39年の第2期に行っていたもので、陰陽論を具体化するものであり、「祖脈診」による脈診は病理を鑑別します。これに問診、腹診などを考慮して総合的に判断します。今回の患者さまは、瘀血が疑われる熱型で、肝経の金穴(中封)・水穴(曲泉)、腎経の金穴(復溜)・水穴(陰谷)を本治としました。なお、腹部の中脘、左右天枢、関元の4穴も本治に加えています。

下図は祖脈診の概要です。右の写真は現場で使うシャーレと寸3-1番の40本の鍼です。殿筋など長い鍼が必要な場合は、寸6-3番や2寸-5番を使っています。 


「内臓トレーニング」では、ふくらはぎ、足裏、背中(脊柱際)を治療ポイントとしています。

今回は足の浮腫みがあったため、腓腹筋ヒラメ筋をターゲットにツボを意識しつつ、触診により刺鍼点を決めました。
また、軟らかい印象があった背中ですが、刺鍼してみると少し深いところに顕著な硬さがあり、曲がってしまう鍼もありました。この硬さは普通ではなく最重要の刺鍼エリアであると判断しました。置鍼時間は20~30分を目安とし、必要に応じて、単刺や抜鍼時の雀啄を行い、硬さをつくっている熱が外に排出されるイメージで鍼を抜きました。

 

夾脊(華佗夾脊)」は、経絡治療、中医学ともに使われる奇穴です。教科書には主治として「胸腹部の慢性疾患」とあります。

画像出展:「新版 経絡経穴概論」

神経リンパ反射療法でご紹介した「チャップマンによる内臓器官反射点」です。この反射点を活性化すると、『自律神経系を通して反射点と連結する内臓に影響を与えることが可能である。反射点の治療を通して交感神経緊張の制御が切り替わり、関係する内臓の血流が良くなり代謝推移が素早く正常化する。』との解説がされています。

Dr. Frank Chapman, DO(Doctor of Osteopathic Medicine)

画像出展:「神経リンパ反射療法」

整理をすると、今回の標治ヒラメ筋腓腹筋T1(第1胸椎)~L2(第2腰椎)の脊際、さらに、脳への血流を意識し、後頚部を加えたものが刺鍼部位になります。

ご参考2

五行説:陰陽と並ぶ古代中国の自然哲学の思想。陰陽五行説という捉え方もされる。万物は「木火土金水」という五つの要素により成り立つとする。

相撲は日本古来の神事とされていますが、ここには「五行」が存在します。
・土(土表)
・金(白ぶさ)
・水(黒ぶさ)
・木(青ぶさ)

・火(赤ぶさ)

画像出展:「ウィキペディア

腎臓の働き
・腎臓の働きは大きく分けると、「尿生成」と「ホルモン産生・調節」の2つですが、臨床的には尿生成を腎機能としています。
。その尿生成に関しては、「よくわかる生理学の基本としくみ」という本の中に、例をあげて分かりやすく説明がされていましたので、こちらをご紹介させて頂きます。(右側の腎機能の図は「病気がみえる vol8 腎・泌尿器」からのものです)

 

出版:秀和システム


 

こちらは、腎動脈に造影剤を注入してX線撮影した腎動脈造影です。「病院の検査の基礎知識」さまより拝借しました。

なお、腎動脈の直径は5~6mmとされています。

『細胞が出す代表的な代謝産物には、酸素の消費の結果出てくる二酸化炭素のほか、タンパク質やアミノ酸を分解することで生じる尿素や硫酸など、それに、DNAやATPなどに使われる核酸を分解して生じる尿酸などがあります。これらの物質は、細胞から血液に出されてきます。したがって、ゴミは、血液によって体中から回収されているわけです。血液は、なんと、ゴミ収集車の役わりをしているのです。

 

尿素や尿酸などのゴミを回収したごみ回収車は血液を通って処理センターの腎臓に向かいます。

画像出展:「よくわかる生理学の基本としくみ」

血液は、あくまで収集をしているだけなので、どこかに捨てなければなりません。一つのごみ処理場は、肺です。ここで二酸化炭素が出されることを、第3章(息をすること[呼吸器系])でお話しました。しかし、他の物質は、気体にならないので、肺からは出ません。気体にならないゴミを除去するのが、腎臓の役割です。つまり腎臓は、ゴミを水に溶かした状態で体外に出します。これがおしっこです。
だから、体が少々水不足の状態であっても、ゴミを溶かすために水が必要で、おしっこはやっぱり出てくることになります。こうして見ると、腎臓が壊れることの恐ろしさが分かると思います。腎不全が進んでしまった患者さんは、腎臓移植をするか、人工血液透析を行って、血液から直接ゴミを取り除く方法をとらなければならなくなります。
血液の中に溶けている“ゴミ”を体の外に出すためには、どうしたらよいでしょうか。一番簡単なのは、血液をそのまま捨てることです。しかし、これは出血ですね! 体の中の血液の量は、体重の約8%ですので、体重60kgの人では約5Lです。おしっこの1日量から考えると、3日で空っぽになってしまいます。また、おしっこに血液が混じるのは血尿といって、病気の兆候です。結局、血液の中から、ゴミを選んで出す必要があるのです。
血液の主な成分といえば、赤血球や白血球や血小板が思いつくことでしょう。この3つは、細胞、あるいはその一部で、血球成分と呼ばれます。血球成分は、もちろんゴミではありません。ですから、血球を出さずにゴミを除去しなければなりません。
ゴミは、血液の液性成分である血漿の中に溶けている分子です。そうすると、血液の中から、血漿だけを取り出せばよさそうです。血球は細胞成分ですから、比較的大きいので、理科の実験などでよく使う濾紙(フィルター)であれば、濾しとることができそうです。腎臓には、この濾紙の役わりをするものがあります。それが糸球体です。糸球体は、両側の腎臓に合わせて、200万個以上もあるといわれています。糸球体は、毛細血管が糸くずのように丸まった状態のものです。つまり血管ですから。この中を血液が流れています。
この血液は、大動脈から直接枝分けれしている腎動脈が、さらに数回枝分かれしてきた輸入細動脈から注がれます。そして、糸球体を通過した血液は、輸出細動脈として出ていきます。こうして、糸球体には、血液が絶えず流れています。

糸球体の壁は、内側から、血管内皮細胞、基底膜、上皮細胞の順で層を成しています。血管内皮細胞と上皮細胞は、それぞれ細胞どうし密着しておらず、ちょうどタイルのように並んでいます。そして、細胞どうしの間はすき間になっています。また、基底膜は、膜とはいっても均一なものではなく、網状の構造をしています。網の上に細胞がバラバラに載っているようすは、網の上でお餅を焼いているようすに似ています。内皮細胞の大きさは赤血球より小さいので、内皮細胞や上皮細胞のすき間を、血球成分は通過できません。では、基底膜はどうでしょう。基底膜の網の目はかなり細かいので、血漿の中の巨大分子であるたんぱく質は、ほとんど通過できません。
こうして、血漿成分からタンパク質を除いた比較的小さな分子と水だけ、糸球体の壁を通過することができ、中に入っている比較的小さな分子であるゴミを血管の外に出すことができるのです。このしくみを糸球体ろ過といいます。こうして糸球体から、いわばしみ出てきた液を原尿と呼びます。原尿はボーマン嚢に受け止められて、次のルートである尿細管に流れてゆきます。

 

画像出展:よくわかる生理学の基本としくみ」

糸球体の壁からしみ出た原尿は、血漿からタンパク質を除いたものです。ところで、そもそも血漿には何が含まれていたでしょうか。
第一はタンパク質です。タンパク質にはアルブミンと呼ばれるグループと、グロブリンと呼ばれるそれより大きな分子のグループがあります。それと、血液内で脂質を輸送する役わりがあるリポタンパクがあります。健康を気にしてる人は、LDLとかHDLとかいう名前を聞いたことがあるでしょう。それがリポタンパクです。こうした血漿に含まれているタンパク質は、しみ出しません。
タンパク質は栄養素でもありますが、第2章(食べること[消化器系])で、他の栄養素も、腸で吸収されて、血液に入ってくることをお話しました。そう、グルコースなどの単糖類とアミノ酸です。これらは比較的小さな分子なので、糸球体の壁からしみ出してしまいます。そのほか、ナトリウムやカリウム、カルシウム、塩素などの電解質も、血漿の中にしみ出します。また、もちろん水もしみ出します。こうした栄養素や電解質、水は、ヒトの体に必要なものです。
これらが、糸球体からどんどん失われたとすると、まったくムダなことをしていることになります。ですから、これらのものは、最終的に、おっしことして出してしまう前に回収しなければなりません。尿細管では、原尿中の必要物質を回収し、血液に戻しています。

 

画像出展:「よくわかる生理学の基本としくみ」

では、どうして、糸球体からいったんだしてしまったものを、また回収するというような、一見ムダに見えることを行っているのでしょうか?それは、“ゴミ”を出すために必要な作業だからなのです。血液中のゴミは小さな分子で、栄養素などと大きさがさほど変わりません。だから、ろ過では、栄養素とゴミの区別をつけることはほぼ不可能です。
ならば、ろ過という方式をとらず、ゴミだけ、血液の中から選択的に取り出す方法も考えられます。これなら、尿素や尿酸といったゴミだけ捨てて、栄養素を捨てなくてすみます。
でも、この方法は、自然界では危険な方法です。なぜなら、体の中には、栄養素とゴミ以外の物質が、いつも入り込んでくる可能性があるからです。典型的なものは毒物です。毒物は、ヒトが持っている物質ではありませんので、ヒトとしては、どんな物質なのか予想がつきません。ですから、血液中から毒物だけを選んでうまく捨てることができるかどうかは、不確実です。おまけに、これを失敗すると、生命の危険にさらされるわけです。具体的な例として、新薬の話があります。新薬は、人工的に合成された化学物質ですから、それまで地球上に存在するはずのない物質です。しかし、新薬がヒトに投与されると、みごとに体の中から除去され、おしっこに出てゆきます。

 

捨てる&回収は、最も安全です。

画像出展:「よくわかる生理学の基本としくみ」

もし、腎臓が、ゴミだけ選んで捨てていたら、新薬はいつまでたっても体の中にとどまって、深刻な副作用を引き起こすでしょう。毒物も新薬もゴミも確実に排出するには、考え方を変えなければなりません。タンパク質より小さな分子は、とりあえず、いったん血管の外に出してしまうのです。そうすれば、どんな毒物も開発したての新薬も、出て行ってしまいます。ゴミももちろんそうです。これが糸球体のろ過のやり方です。
同時に出て行った栄養素や電解質ですが、これは生体がよく知っているもので、その数も限られているので、こちらを選んで回収するほうが、結局、効率がよいわけです。たとえば、ゴミ箱に誤って必要なものを捨ててしまって、ゴミ箱からそれを探し出すときのようなものです。ゴミ箱の中身を、新聞紙か何かにいったん拡げて、必要なものを見つけ出し、残りをまたゴミ箱に捨てる方が、ゴミ箱の中に手をつっ込んで探すより、簡単ですよね!

ご参考3

こちらは糸球体の写真です。

まさに毛細血管の糸くずですが、1つのパーツではありません。ミクロの細胞を1つの部品とすれば、物凄い部品点数の巨大「ろ過装置」です。

もし、この「ろ過装置」が1個のスイッチで操作されるのであれば、その働きは、1(稼働)0(停止)というデジタル的といえます。

しかしながら、実際は常にスイッチはオンです。ただし、その稼働状況は一定とは限りません。取るべき睡眠をとっていなかったり、食べるべき食事を抜いていたり、あるい、暴飲暴食などの不摂生を繰り返していると、生み出されるストレスは「ろ過装置」が必要とする燃料(血液が運ぶ酸素と栄養素)の安定的供給に影響を及ぼし、稼働環境を悪化させます。

このように、細胞という無数の部品で組み立てられた巨大な「ろ過装置」を不十分な燃料で長期に渡って稼働させなければならないとすれば、その「ろ過装置」の稼働状況は、絶好調瀕死状態にある細胞群に支えられることになります。そして時間の経過とともに各細胞の健康状態は徐々に悪化してゆき、不良部品が増えていく「ろ過装置」の性能は低下していきます。

つまり、「低酸素や虚血という環境は腎臓のろ過機能を低下させるが、その変化はアナログ的であり、酸素と栄養素などが血液によって安定供給されれば、細胞の健康状態も改善され、そして、ろ過機能も改善される。」と考えることは不自然ではないと思います。

画像出展:「人体の正常構造と機能」

再登場の絵です。

上記の「絶好調~~瀕死状態」はこの絵をイメージしたものです。

ご参考4

臓器は血液が運ぶ酸素と栄養素などで健康を維持していますが、特に腎臓にとって低酸素状態は重大な問題です。ネット上にあった第113回日本内科学会講演会の資料によると、糸球体の硬化の問題以上に、尿細管間質の慢性低酸素状態が特に重要と考えられること、腎臓は生体が必要とする酸素の30を消費する非常に酸素需要の高い臓器となっており、低酸素や虚血が病態に影響を及ぼすことなどが論じられています。なお、本資料はダウンロードできるようにさせて頂きました。

ダウンロード
腎臓病の新たな視点-低酸素とepigenetics.pdf
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長野式-結合組織活性化処置法

今回のブログは、標治に長野式の「結合組織活性化処置法」を取り入れるため、あらためて勉強したというものです。なお、それぞれの講習会で入手した資料を勝手に使うことは不適切であり、一方、まだ熟読していない本を使って学びたいという気持ちから、長野先生の本を使って進めています。そして、最後に「自序」、「あとがき」、「著者略歴」をご紹介しています。

 

初版は平成5年12月です。

長野先生には、この本とは別に「鍼灸臨床 新治療法の探求 -心に残る診療カルテから-」という著書もありますが、こちらは長野先生曰く「本書は、私がこの道に入って二十五年目から三十五年目まで、十年間に書き留めた断片的な臨床論文である」とのことです。

出版:医道の日本社

長野式とは長野潔先生が確立された鍼灸治療で、鍼灸師の間では「知る人ぞ知る」評価の高い治療方法です。

私は八丁堀の専門学校に通っていた3年間のうち、2年目に「長野式臨床研究会」の基礎セミナーを、3年目に「長野式研究会」の基礎講座を受講させて頂きました。長野式を研修できる現場を求めて、栃木県まで足を運んだこともありましたが、現実のものにすることはできませんでした。このような経緯を経て、卒業後、代々木の日本伝統医学研修センターで知識と臨床力を付けるという道を選びました。

しかしながら、頭をリフレッシュさせる目的で、長野式だったらどのような選択をするのかといったことを考えてみることは有意義だと思っています。
【混ぜるな危険】とは、「色々な治療法を明確な狙いもなく、苦しまぎれにミックスしてしまうこと」ということだと思います。私はこの【混ぜるな危険】を守りながら、長野式の可能性を「標治」の幅を広げる目的で活用したいと考えました。これは、筋肉や結合組織に対するトリガーポイントと同じような位置づけであり、新たな武器を身につけるという狙いです。
日本伝統医学の経絡治療には「本治」と「標治」という考え方があります。本治は治療法の根幹であり、まさに【混ぜるな危険】を守るべき領域です。
一方、標治は患者さまが抱える問題、痛みや凝りなどに対して即効性を優先した治療であり、一般的には筋肉などの軟部組織に刺鍼して改善を図ろうとするアプローチです。そして、標治の基本は徹底した触診により、硬結やスジ、突っ張りや緊張といった変化部位を発見し、そこに鍼を当てにいくというものです。例えば、経絡治療には「阿是穴(あぜけつ)」という、触診で見つける「あっ、それ!」というツボも定義されています。これなども標治の幅を広げるためと考えられます。
以上のことから、「標治」に関しては施術の質を高めるために、トリガーポイントと同様に長野式を有効な武器として加えることは問題ないと判断します。
ただし、長野式の根幹は次のように10個(運動器疾患処置法は4個)の処置法に分かれており、この中で標治に加えて何も問題ないと思うのは「結合組織活性化処置法」です。

1.気流促進処理法
2.水分代謝促進処理法
3.血流促進処理法
4.粘膜消炎処置法
5.自律神経・内分泌系調整処置法
6.免疫機能強化処置法
7.運動器疾患処置法
 1)結合組織活性化処置法
 2)筋緊張緩和処置法
 3)血糖値調整処置法
 4)血管運動神経活性化処置法

「結合組織活性化処置法」は、本の中では126~137ページに説明がされています。今回は現場で使えるものにしたいと思い、表形式にまとめました。なお、項目になっている[刺入(鍼)]の中で、鍼の長さ・太さと刺入の深さについては色をグレーに変えています。これらは個々の体格等を優先して判断すべきものだと考え、明記された数値を参考値という位置づけにしたためです。

表の内容を直感的に把握する目的で、「絵」を載せていますが、ふられている数字は上記の表、左端に出ている連番を指しています。ただし、すべてを網羅できていません。

9・16

17


19

20


21

24


表の中には経穴(ツボ)によって、部位を説明しているものもあります。これに関しては、「イトリズム事典」で、該当する経穴(ツボ)を確認できるようにしました。

イアトリズム事典は、「日本東洋医学協会」監修のもと、人体に数百とある経穴(ツボ)に関する詳しい情報を画像とともに分かりやすく掲載しています。

なお、利用についてはホームページ開設時に使用許可を頂いています。

9  尺沢(シャクタク)
12 風池(フウチ)
12 完骨(カンコツ)
12 天牖(テンユウ)
14 中府(チュウフ)
14 雲門(ウンモン)
15 少海(ショウカイ)
17 四瀆(シトク)
18 承扶(ショウフ)
19 委陽(イヨウ)
20 陰陵泉(インリョウセン)
20 曲泉(キョクセン)
20 陰谷(インコク)
23 風市(フウシ)
24 足三里(アシサンリ)

自序
『私にとって青年時代よりの中心課題は、東西両医学融合体系構築が目標であり、これらのエッセーは、それへのアプローチであった。
その目標に向かって、デカルトによる、身体と心は別々であると云う二元論の理性的・合理主義を基盤とする西洋医学と、人間も自然の一部とする一元論的存在論とする東洋医学を融合させることは、無謀なことと知りながら可能な限りの融合点を見い出し、近代医学で見放された患者を治癒せしめた事実が少なからずある。
この事実を集積することにより、東西両医学の体系構築への確信を持つようになった。この確信なくして私の文章は一行も書き得なかったであろう。
臨床家にとって本を書くということは、至難の技である。先づ、臨床の状況を詳細にカルテに記録しなければならない。数多いカルテの中から特記すべき症例を拾い上げ、症例別に分類を行いまとめてゆくのであるが、一日の診療を終え極度の疲労に達した状態での作業は、身体に大きな支障を来たすものである。
しかし、それを克服しなければ、これまでの治療行為が遠い記憶となり、やがて虚しく消えてしまうものである。従って、余程の診療体制の確立と自分自身の体力の充実という条件がなければ書けるものではない。
過去30年間、そのような恵まれた時間は決して多くはなかった。そのような状況の中で、この本を書かしめたものは、私にとって両医学の融合の成果を、鍼灸臨床に携わる方々に何らかの参考にしてもらえばという思いと、一人でも多くの病人を救うという使命感にも似たようなものであった。
印度仏典を中国語に900巻も翻訳した鳩摩羅什(クマラジュウ)(344-409)の業績や、印度仏教における思弁哲学体系を構築した天台智顗(チギ)(538-597)の偉大な業績を思う時、私の著作は誠に細やかなものであるが、治癒事実の記録という実証主義的エッセイは、私が確信を持って書いたものであり、永遠の過去と、永遠の未来の接点である現在、即ち、今の事実は残すに値するものであるという自負を持っている。
当初本を書き始める頃は、東西両医学融合の治療体系構築のアプローチへの一片の資料になればと夢を持っていたが、振り返ってみれば、私ごとき一介の鍼灸師が個人レベルでは、大それた意図であるということがしみじみと解ってきた。しかし、その夢を忘れることはできなく、私の可能な限りの処置法を構築したいという思いで書き始めた。
臨床においては学理的解明よりも、治癒事実の方が優先されなければならない。いかに学理的解明がなされても、生命が終わってしまえば、もうそれは医療ではない。今日、このような状況が現実として我々の身辺に起こっているということは、近代医学にとって、また、人類にとって大きな不幸ではないだろうか。全身的な、全人格的な回復ということは、何よりも優先されなければならないのである。
局所の病的細胞の修復と改造を目標とする近代医学と、全身的気血の和合を目的とする東洋医学は、基本的に病理概念や或は生命感が違うのであるが、人間の生命が全体と局所、局所と全体が有機的且つ合目的的に、また包括的に生かされているということは、大自然の調和ということと同一のものではなかろうか。
鍼灸臨床拾遺は、ある時期の二年間の臨床の中で特記すべきもののうち、500治験症例をまとめたものであるが、この統計を作りあげるのには並々ならぬ労力を要した。これは鍼や灸の治療対象がどこまで可能か、またどこまでが限界なのかを探求したという気持があってまとめたものである。
治験症例報告は、日常のありふれた一般的な症例(例えばギックリ腰や変形性膝関節症等)は割愛した。しかし、日常的に多く出合う疾病で、西洋医学的方法では難治でも、鍼灸治療では治ったという症例(前立腺肥大や慢性膀胱炎等)、又特殊な経穴を組み合わせて、特殊な疾病を治す事に成功した症例も取り挙げて報告することにした。
私は、私なりに外来臨床に携わっている。西洋医学と東洋医学を複眼として、西洋医学的な一つの暗示を受けて東洋医学的治療法を行い有効であったことが多い。例えば慢性膵炎による痛みは、X線による間接照射、副腎皮質ホルモンでしか痛みが取れないということに対して、足の腎経の「照海」と同じく「兪府」に鍼をすることによって痛みを消失させることができた。
このように両医学の視点から考え、治療を試みて成功したのであるが、何故痛みが消失したかという作用機序の理論的解明は、推論の域を脱し得ないのが残念である。臨床家は病人を治すということが目標であるので、理論的解明は二次的にならざるを得ないのは、止むを得ない事である。
今後、鍼灸医学の進歩発展のためには、公的な東西医学の共有する場を持ち、共通する学術用語とその意味づけが早急に検討・統合されることが必要な時機に来ているものと考える。なおこのエッセーは未完不備なものであり、独断と偏見に満ちているかも知れないが、少なくとも私の臨床経験というフィルターを通してのものであり、決して虚構と偽証のものではないことだけは明記しておきたい。
また、このエッセーが、鍼灸家の臨床研究の資料として、いささかのお役に立ち、高齢者人口の増加する今日的状況の中で、近代医学的治療の補足補完的な真価を発揮し、慢性的に苦しみ迷う患者層の、道しるべの布石のひとつともなれば望外の幸である。』

あとがき
本書は一口に言って私の45年にわたる鍼灸臨床生活の総集編とまではいかないが、その要諦であり大半である。
1980年迄の10年間、医道の日本誌に「更年期障害の臨床」「心に残る診療カルテから」「鍼灸臨床備忘録」「鍼灸治療室」など10年間にわたって寄稿させて頂いた。
それから文字を書けないまでに視力を喪失してペンを置く事7年、1988年、幸いにも有能なアシスタントとの出会いを得て私の最終的な目標である東西医学融合大系構築へのアプローチとしての成果を書こうと決心したのである。
1988年10月から今日迄、即ち1992年12月まで、4年間に亘って脳裡にたたみこんで来た「処置法」の大系を口述筆記で24万字にわたって書き綴ったのが本書である。
文字が書けなく分文脈がなかなかおもうにまかせず、前後したり、重複したり、或いは書き落としたり、書き足りなかったり、様々な困難に遭遇してきたものの、なんとか鍼灸臨床体験を通して貯えて来た治療大系を私なりに構築し得たと思っている。もちろんこれは広汎な医療のジャンルでその一部にすぎないのであるが、私にとっては全生命を絞りきった思いである。

振り返って1955年、杉靖三郎教授の「ストレス学説」の講義を拝聴し、それが何故か私の心奥にとどまり、加えて藤田六朗博士の「筋主因性流体波動通路膜系理論」等を習得した。
1974年、耳鼻咽喉科院長の岩下博士との出会いや、札幌医科大学耳鼻咽喉学科の形浦昭克教授の「扁桃とその臨床」という著作に出逢い、扁桃の機構とそのもつ機能と中国の「気」の医学説とが私の中で渾然となり、東西両医学構築大系への夢を現実的なものへと芽生えさせてくれた。
とかく「気」を本質とした経絡学説は、形而上学的思想そのものや或いは思弁哲学的思想そのものと誤認されたりして来たが、これは決してその様な思想そのものではなく、思想化されやすい傾向をもっているにすぎないものであって普遍的に誰もが感得しうる実在的、具象的なものである。
「気」の実在は主客の相対的次元を超えた万人誰もがもつ生命そのものの本質である。
二千数百年の歴史をもつ「気」を中心にした存在論をもつ中国医学は、連綿と伝承されてきたそして多大な成果を挙げたという歴史は私をも含めて厳然たる真実である。
東西両医学の融合という事は近代医学と東洋医学は、ホリスティック医学のカテゴリーの中に包括的に位置づけられこれからの医療にたずさわるものの常識的なものとなってゆくであろう。
東西両医学の融合はただ単に我が国だけのものではなく、世界に共通する医療として志向されなければならないと思う。』

著者略歴
1925年 大分県大分市鶴崎に生まれる。
1948~1952年 大分県立病院理学療法室勤務
1952~1957年 東京教育大学に学び後、大分県立盲学校理療専攻科にて教鞭をとる。
1957年 鍼灸院を開院。大分県鍼灸師会学術部長。同鍼灸・柔整等試験委員・同審議委員等を歴任。
1979年 日本赤十字社金色有効賞受賞。
1982年 大分市より優良技能賞受賞。
1988年 ㈳大分県鍼灸師会会長を3期6年間務む。
1988年 厚生大臣賞受賞
1989年 日本赤十字社社長賞受賞
2001年6月 死去

ドグマチール(スルピリド)による薬剤性パーキソニズム

年始に「薬剤性パーキソニズム」が原因で、転倒された患者さまがおいでです。
お話を伺うと、平坦な道にもかかわらず、ツツツッと足が勝手に運ばれ、止まることができず転倒してしまったとのことでした。この転倒は姿勢反射障害によるものであることが懸念されました。
また、ご友人からは「〇〇さんは足を引きずるように歩いているから、注意した方がいいよ。」と言われるとのお話もされていました。これについては、足の運びだけでなく、歩行時の腕振りに問題があるのではないかということを考えました。

パーキンソン病の症状は姿勢反射障害の他、振戦(手のふるえ)、筋強剛(腕が歯車のようにカクカクした動きになる)、無動(思うように体が動かない)などが代表的な所見ですが、今回は姿勢反射障害によると思われる転倒以外の所見はありませんでした。しかしながら、万一のことを優先し、脳を診てもらえる病院に行かれることをお勧めしました。
地元の病院での診察結果は、パーキンソン病かどうかははっきりしないが、レボドパという強力なパーキンソン病の薬を2週間分渡されるというもので、原因および今後の展開は不透明な状況となっていました。
この薬は副作用の問題を抱えており、パーキンソン病やパーキンソン症候群(薬剤性を除く)の患者さま以外は服用する薬ではないと認識していました。そこで、現在の状況と問題点、更に今後の進め方について、患者さまに率直にお話したところ、ご納得いただき、後日、小平市にある国立精神・神経医療研究センター病院で診察を受けられることになりました。

診察の結果、数年前から服用していた「ドグマチール」の副作用による「薬剤性パーキソニズム」であると診断されました。そして、レボドパの服用はただちに中止されました。また、薬の代謝の問題と思われますが、ドグマチールの影響は2週間程続くので、今後2週間は特に転倒に注意してほしいとのお話があったそうです。こうして、年始の転倒の原因と今後の治療の進め方が明らかになり、一件落着となりました。

 

 

 

住所:東京都小平市小川東町4-1-1 / 予約センター:042-346-2190

 

 

「パーキンソン病の診断手順」に基づくと、今回のケースは「薬剤性パーキソニズム」になります。

せせらぎメンタルクリニック精神科・心療内科」さまのサイトをご紹介させて頂きます。

ドグマチールの特徴、副作用などについて大変分かりやすく解説されています。

補足.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これらはすべてパーキンソン症候群(パーキソニズム)の疾患です。

画像出展:「病気がみえる 〈vol.7〉 脳・神経」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ほぼ中央に赤字で「スルピリド」、代表的商品名「ドグマチール」が紹介され、下段には「スルピリドが薬剤性パーキソニズムの原因となる頻度が最も多い」という説明が加えられています。

画像出展:「病気がみえる 〈vol.7〉 脳・神経」

活性酸素シグナルと酸化ストレス

今回の題材は2017年12月29日の「パーキンソン病 -進化する診断と治療-」の中で、自らに課した宿題です。これはパーキンソン病発症には「活性酸素」が深く関わっており、これをしっかり理解することが重要であるという思いからでした。
教材は下記の2冊ですが、「絵とき  シグナル伝達入門 改訂版」ついては関心がある箇所だけを拾い読みしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

監修:谷口直之

出版:羊土社

※発行は、2009年9月になります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

著者:服部成介

出版:羊土社


本題に入る前に、パーキンソン病と活性酸素との関係についてお伝えしたいと思います。

この写真と図は、「パーキンソン病 -進化する診断と治療-」の座談会で司会を務められた、京都大学大学院の高橋良輔教授が平成20年に日本内科学会講演会で発表され、日本内科学会雑誌 第97巻 第9号に掲載された資料からのものですが、ネット上にある資料でしたので閲覧できるようにさせて頂きました。

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神経変性疾患研究の進歩.pdf
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自分なりに考えた、パーキンソン病と活性酸素との関係について
1.活性酸素と抗酸化物質のアンバランスによって「酸化ストレス」は生まれ障害を起こす。
2.パーキンソン病を神経変性疾患の一つとしてとらえ、「蛋白質障害」という切り口で考える。
3.活性酸素はシグナル経路を活性化して、細胞保護、細胞分化増殖、細胞死の制御などの有益な働きもしている。

 

 

神経変性疾患はコンフォメーション病(蛋白質ミスフォールディング病)とも呼ばれており、原因タンパク質が凝集化し、病変部位に沈着することが特徴です。原因タンパク質の凝集化には酸化ストレスが関与しています。

 

 画像出展:「コンフォメーション病としての神経変性疾患」

そして、鍼灸治療について考えるならば、「自律神経系と内分泌系のバランスを調え、内臓の働きと自然治癒力を高め、酸化ストレス発現の抑制と耐性を目指す。」というものが治療の柱になると思います。非常に抽象的ではありますが、「何を、どうしたいのか」という治療イメージを持って臨むことが、良い施術の第一歩であると考えています。

『病態解明に迫る 活性酸素シグナルと酸化ストレス』では、活性酸素、酸化ストレスに加え、「シグナル伝達」というキーワードも重要なポイントになっています。そこで、まずはこの「シグナル伝達」が、いかなるものか調べました。

『絵とき  シグナル伝達入門』では「はじめに」の中で以下の2つを上げられています。
シグナル伝達研究は、さまざまな生命現象のメカニズムを分子レベルで明らかにしていこうとするものである。
“だれ”が“だれ”にシグナルを伝え、次に“だれ”がそれを受け取るのか、そして最後に何が起こるのか…この流れを捉えていくことが大切である。


著者の服部先生は、“がん研究からみつかった[がん遺伝子]はシグナル伝達研究に大きなインパクトを与えた”とお話されていますが、その説明箇所を引用させて頂きます。

なお( )内は補足説明として私の方で追記したものになります。
「シグナルを流れとして捉える-点から線へ、さらにはネットワークへ」
『細胞の受容体が受け取ったシグナルは細胞の中でどのようにプロセスされて、核、細胞質や細胞骨格(線維状のタンパク質により細胞を支えたり、動かしたりする)系に伝えられていくのだろう。シグナルを誤って伝えることは、シグナルがない時よりも悪い結果をもたらしかねない。まず受容体が刺激されたという細胞外のシグナルを細胞内のシグナルに変換しなければならない。そしてさらに正しい経路を経てさまざまな最終目的地まで間違いなく伝えなければならない。シグナル伝達は伝言ゲームにたとえることができるだろう。

 

画像出展:

「シグナル伝達入門」

どのようにして、シグナルを伝えるべき相手を選び、しかも正しく伝えていくのだろうか。
がん研究からみつかった“がん遺伝子”はシグナル伝達研究に大きなインパクトを与えた。すでに100以上もみつかっているがん遺伝子は、実は私たちの体のどの細胞ももっている遺伝子“前がん遺伝子”に変異が生じできたものである。そして前がん遺伝子の産物たちは、手に手を取り合って細胞の増殖を指令し続けさせるものだった。“だれが”“だれに”シグナルを伝え、次の“だれが”それを受け取るのか、そして最後に何が引き起こされるのか。シグナル伝達の研究はこうした点を次々と明らかにしてきたのである。
細胞の増殖を研究するにしろ、あるいは神経細胞の分化を研究するにせよ、シグナル伝達の立場は、常にシグナルを“流れ”として捉えてその流れを伝えていく役者を次々と明らかにしていくものである。その主役はタンパク質であることは間違いない。
このようにシグナル伝達はがんの研究から大きな影響を受けたけれども、もちろん生理学や遺伝学からもシグナル伝達研究の柱となるような大きな結果が出ている。

興奮するとドキドキしたり、また気合いが張ってくるのを感じることがあるだろう。これはアドレナリンの作用で、細胞の中のcAMP(サイクリック[環状]AMP[アデノシン一リン酸]:アドレナリンなど多くのホルモンや神経伝達物質などの第1メッセンジャーの細胞外からの刺激を、細胞内の標的分子に伝える第2メッセンジャーとして機能する)濃度が高められるせいである。その結果、細胞内のさまざまなタンパク質がcAMP依存性のタンパク質リン酸化酵素でリン酸化されていろいろな効果が発揮される。

 

画像出展:

「シグナル伝達入門」

さまざまな神経伝達物質の受容体からのシグナル伝達もこのような経路を用いている。こうしてみると、私たちの気持ちや心理状態もシグナル伝達の立場から説明できる日も遠くないかもしれない。』

『病態解明に迫る 活性酸素シグナルと酸化ストレス

 癌、神経変性疾患、循環・代謝異常にかかわるレドックス制御機構と最新の技術開発』

は、「序」に続き「概論」からスタートしていますが、まずは目次をご紹介します。

概論
活性酸素のシグナル伝達機能 -その生理機能の再発見と酸化ストレス研究の新展開
第1章 活性酸素・NOの生理機能
1.活性酸素シグナル生成系の制御機構
2.ミトコンドリア活性酸素生成とシグナル制御
3.チオール基の修飾による活性酸素のセンサー機能制御
4.親電子シグナル伝達
5.SNO化修飾によるシグナル伝達の新展開
6.NO・ニトロソ化シグナルと細胞死
7.活性酸素によるリン酸化シグナル制御
8.G12/13タンパク質による活性酸素シグナリング
9.植物におけるNADPHオキシダーゼの制御機構
10.植物のストレス応答・形態形成における活性酸素種の積極的生成とその制御
第2章 酸化ストレスと病態
Ⅰ.細胞分化増殖・シグナル異常と再生医療
1.ER(小胞体)と酸化ストレス
2.アポトーシスと酸化ストレス -酸化ストレス誘導性アポトーシスにおけるNoxaの役割
3.幹細胞ホメオスタシスと酸化ストレス
4.眼表面と酸化ストレス
5.グルタチオンペルオキシダーゼ4(GPx4、PHGPx)による胚発生・精子形成の制御機構
Ⅱ.炎症・発癌と変性疾患
1.酸化的翻訳後修飾タンパク質の解析でみえてきた肝・消化管炎症病態の新展開
2.チオレドキシンによる酸化ストレス防御とレドックスシグナル制御
3.酸化ストレス誘発発癌機構の解明 -フリーラジカル傷害に弱いゲノム領域を探る
4.塩基除去修復酵素MUTYHに依存したプログラム細胞死と発癌抑制機構
5.ALSにおける酸化ストレスおよび酸化型SOD1の関与
Ⅲ.呼吸・循環・代謝異常
1.H2O2が制御する血管弛緩反応の分子機構
2.慢性腎臓病における鉄の重要性
3.COPDにおける酸化ストレス病態
4.糖尿病合併症および糖尿病発症における酸化ストレスの意義
5.酸化ストレスによる貧血 -造血幹細胞の老化と赤血球の酸化
第3章 活性酸素応用研究の最前線
1.論理的設計法に基づく種選択的ROS蛍光プローブの開発
2.活性酸素シグナル分子H2O2を介したユニークなタンパク質修飾機構
3.アダクトミクス -DNAおよびタンパク質付加体の網羅的解析
4.活性酸素センサー:nucleoredoxin
5.酸化ストレス作動性TRPチャネルの化学生理学
6.親電子性リガンドセンサーとしての核内受容体PPARγ
7.活性酸素がインスリンシグナル伝達に与える影響とその二面性
8.レドックス制御に干渉する小分子のケミカルバイオロジー
9.Nrf2/Keap1酸化ストレス応答系による活性酸素シグナル制御
10.NOと植物の感染防御応答

続いて、「概論」の冒頭に書かれていた全文をご紹介します。
『活性酸素は生体内のエネルギー代謝や感染防御過程において発生する一連の活性分子種(O2⁻,H2O2など)であり、これまで酸素毒性の要因となる有害物質として取り扱われてきた。実際、活性酸素は、感染、炎症、癌、動脈硬化・糖尿病などの生活習慣病や代謝性疾患、アルツハイマー病などの神経変性疾患といった、さまざまな疾病の原因となることが示唆されている。近年本書は2009年の発行です)、活性酸素がシグナル伝達機能を発揮していることが報告されるようになり、幅広い生命科学領域において、「活性酸素による生理的なシグナル伝達機能」の解明が飛躍的に進展している。本増刊号においては、最近次々と明らかにされている活性酸素シグナルの新知見に焦点をあて、その真の生理活性を議論することにより、活性酸素の機能と病態解明の新展開を紹介する。』


以降、本文よりブログに記録しておきたい要点を抜き出し、列挙させて頂きます。
なお、ROSはreactive oxygen speciesの略で「活性酸素種」となりますが、「活性酸素」を意味します。ブログの中ではROSは「ROSシグナル」として使い、それ以外は「活性酸素・活性酸素種」という言葉を使います。
概論
活性酸素のシグナル伝達機能 -その生理機能の再発見と酸化ストレス研究の新展開
・生物は、酸素との長い付き合いが始まった太古の時代より、酸素分子の高い化学反応を利用したエネルギー代謝の代償としてその毒性を被ることとなった。
・活性酸素は生体分子の非特異的損傷をもたらす単なる毒性因子ではなく、精密に制御されたシグナル伝達の担い手であるというコンセプトが広く受け入れられつつある。
・活性酸素は、生体内のその他のシグナル伝達物質(細胞内に存在し、外部からの刺激[信号]を受け取って別の物質に伝える役割を持つ物質)と同様に、特異的なシグナル経路を活性化して、細胞保護、細胞分化増殖、細胞死の制御などを司ることがわかってきた。
・活性酸素による細胞シグナル制御(ROSシグナル)に関する関連分野からの国際誌への発表論文数は、この10年間で2倍以上の伸びを示している。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「活性酸素シグナルと酸化ストレス」

1.シグナル分子としての活性酸素(ROSシグナル)の再発見
・80年代頃から盛んに試みられた抗酸化療法は、当初期待したほどうまく臨床応用が進まず、その学術基盤が確立されぬまま、科学的に腑弱な概念に基づく民間療法として一般に普及してしまった。特に日本国内における酸化ストレス研究は、折りしも国民に広く流行した健康食品ブームに押されるようにして進展してきたともいえる。
・酸化ストレス研究は2000年前後に特に顕著に進展し沢山の成果を上げてきた。
・近年急速に進展しているROSシグナルの解明は、活性酸素研究に新たな潮流を生み出し古典的な酸化ストレス研究に革新的な扉を開こうとしている。
2.ROSシグナルの生理機能からみた酸化ストレス病態
これまでの酸化ストレスの病因論は「活性酸素」として展開してきた。この病態理論はもちろん酸化ストレスの中心的なドグマ(教義)となっている。実際、活性酸素により脂質過酸化反応が誘発され細胞の生体膜機能が損なわれること、血中の脂質・コレステロールの酸化が、動脈硬化病巣の形成を促しその発症に深くかかわること、また、高血糖が活性酸素の産生を高めることにより生活習慣病の重要な要因になることなどが報告されている。酸化ストレスが疾病病態に普遍的に関与することは、関連分野の多くの研究者に広く認められている。
・ER(小胞体)ストレス、幹細胞の分化制御、アポトーシス・細胞死制御、角膜エイジング、生殖・再生、発癌など多様な病態と酸化ストレスのクロストークに関してもそれぞれの分野の第一人者から最新の知見が紹介されている。
・酸化ストレスを活性酸素による生理的シグナル伝達経路を介する病態、あるいは、正常なシグナル伝達の制御異常という視点から捉えることも重要であろう。

・活性酸素は、酸化ストレスをもたらす病原因子としてふるまう反面、その生理機能の重要性を示す多くの科学的根拠が報告されており、しばしば「double-edged sword」として取り扱われてきた活性分子種である。その光と陰は、これまで単純にその化学的反応性と毒性により説明されてきた。しかしながら実際は毒性というより、生理的なROSシグナル活性の発現と制御信号が、活性酸素の二面性を操る本態であることが明らかにされつつある。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「活性酸素シグナルと酸化ストレス」

「酸化ストレスとは、活性酸素と抗酸化システム、抗酸化酵素との バランスとして定義されています。酸化ストレスが高いとは、生体内において活性酸素による酸化作用と、 抗酸化物質等の抗酸化作用とのバランスが崩れ、酸化反応が亢進する状況のことを言います。」

画像出展:「日本老化制御研究所

・活性酸素の生理活性として以前より感染防御作用においても、直接的な抗菌作用だけでなくROSシグナルを介する間接的な防御機構が存在することが示唆されている。
活性酸素研究の新たな潮流と裾野の広がりは生命科学領域のほとんどの分野に及んでおり、特に、メタボリックシンドローム、感染・炎症・免疫異常、老化、神経変性疾患、発癌などの酸化ストレスのかかわる疾病病態の解明とその再生医療などの先進医療への応用・展開は、高齢化が進むわが国にあっては社会的にも要請が強い重要な課題といえる。
・活性酸素は、これまではその高い反応性のため真の生理活性に不明な点が多かったが、分子イメージングや質量分析法などの優れた技術開発により、近年その実体の解明が飛躍的に進んでいる。
・活性酸素がユニークなシグナル伝達の担い手として再発見され、今まさに歴史の大舞台に登場してきた。今後さらに、新しい病態論と診断・予防・治療法が確立されるものと期待される。

第1章 活性酸素・NO(一酸化窒素)の生理機能
1.活性酸素シグナル生成系の制御機構
種々の活性酸素生成系について
・活性酸素は、歴史的にはまず、代謝系の副産物として認識された。現在ではミトコンドリアの電子伝達系の寄与が大きいと考えられている。特にミトコンドリア内膜の複合体Ⅰや複合体Ⅲから漏れ出た電子が、酸素分子に渡されスーパーオキシドが生成する。
・細胞質に存在するキサンチン酸化還元酵素(XOR)は、通常はキサンチン脱水素酵素(XDH)として存在し、活性酸素を生成しないが、酸化ストレス時にはキサンチン酸化酵素(XO)に変換され、酸素分子から過酸化水素やスーパーオキシドなどの活性酸素を生成するようになる。
・細胞質に存在するNO合成酵素(NOS)は、ストレス時にuncouplingが起こるとNO合成をやめてスーパーオキシドを生成するようになる。
・シクロオキシゲナーゼやリポキシゲナーゼなどからも活性酸素が生成しうるが、これらの活性酸素シグナリングにおける役割は小さいと、今のところ考えられている。

2.ミトコンドリア活性酸素生成とシグナル制御
ミトコンドリアは各細胞に数百存在し、肝臓、腎臓、心臓、筋肉、脳などにある代謝の活発な部位では、細胞質の約40%をも占める組織もあるほどである。
・ミトコンドリアにおいて活性酸素が産生されるという仮説は、Denham Harmanが1956年に発表した“Free radical theory”(「加齢はミトコンドリア由来のフリーラジカルによって引き起こされる細胞損傷が蓄積したものである)という理論が最初である。
・抗酸化剤のSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)が発見されたのは1969年だった。
・1973年にBoverisらが過酸化水素が単離ミトコンドリアから産生されていることを証明し、現代に至るまで、加齢のみならず、種々の慢性疾患において、ミトコンドリア呼吸鎖由来の活性酸素が、その病態形成、伸展において重要な役割を果たしていることが知られるようになった。
ミトコンドリアにおける活性酸素種とその産生部位
・ミトコンドリア呼吸鎖における活性酸素は、複合体ⅠおよびⅢにおいて産生される。
・過酸化水素は細胞膜を自由に通過でき、細胞質内に移動できることが知られている。
ミトコンドリア内には、スーパーオキシドを消去するMn-SODのほかに、過酸化水素の消去系として、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)やペルオキシレドキシン(Prx)が存在し、産生された活性酸素はすみやかに消去される。
処理しきれない過剰な活性酸素は、タンパク質や核酸と反応し傷害を及ぼし、機能障害、細胞死へと導く。
これらの抗酸化酵素と活性酸素産生の不均衡は、発癌やアルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患、動脈硬化、心不全、さらに老化など実にさまざまな慢性疾患に関与していると考えられ、抗酸化剤の投与、抗酸化酵素の過剰発現によって治療効果が得られることが、多くの実験によって裏づけられている。
・近年、いくつかのミトコンドリアに局在するリン酸化酵素がミトコンドリア由来の活性酸素によって可逆的に不活性化されることも知られてきた。
・活性酸素が細胞周期をも制御することが明らかにされている。
過酸化水素(活性酸素)はNO同様に、その濃度によって作用を異にする。
 ・0.7μM以下…細胞増殖に作用
 ・1.0~3.0μM…アポトーシス
 ・3.0μM以上…ネクローシス(壊死)
活性酸素とアポトーシス
・アポトーシスはdeath receptorにTNF-α、Fasリガンドが結合することで、カスパーゼを活性化する外因経路とミトコンドリアを介した内因経路が知られている。
・アポトーシスの内因経路は、アポトーシス促進因子として、ミトコンドリア由来の酸化ストレスと深く関連していることが知られている。
ミトコンドリアは最も重要な活性酸素の産生源であり、同時に活性酸素の標的でもある。そして、ミトコンドリア由来のスーパーオキシドおよび過酸化水素が種々の病態ひいては老化において、いわゆる“悪役”として重要な役割を果たしていることが概念として認識された。

3.チオール基の修飾による活性酸素のセンサー機能制御
・近年、活性酸素は巧妙に制御されたシグナル伝達機構の担い手であるというコンセプトが生命科学分野に広く受け入れられつつある。
・活性酸素が、防御的な酸化ストレス応答を誘導する重要なシグナル分子であることが明らかになってきた。
・活性酸素や一酸化窒素(NO)は、シグナル伝達の最も上流に位置する分子群として、細胞内のセンサータンパク質を活性化し、さらに下流のエフェクター分子へとシグナルを伝える。

7.活性酸素によるリン酸化シグナル制御
高濃度の活性酸素種は細胞死や細胞傷害を引き起こすが、生理的に産生された低濃度の活性酸素は細胞増殖、細胞運動、遺伝子発現を制御する。さらにサイトカイン刺激などの細胞外刺激に応じて産生された活性酸素がセカンドメッセンジャーとして機能することも明らかにされている。ここで問題になるのは活性酸素がどのようにしてシグナル系を駆動するのかということである。

8.G12/13タンパク質による活性酸素シグナリング
・神経伝達物質や液性因子などの受容体刺激によって生じる細胞内シグナル伝達のなかで、活性酸素の役割が注目されている。
・心臓では、アンジオテンシンⅡ刺激がAT1受容体を介してスーパーオキシドや過酸化水素をはじめとする活性酸素種を生成することが報告されている。これらの活性酸素は主に細胞膜上のNADPHオキシダーゼの活性化を介して生成され、AT1受容体シグナリングにおける細胞内情報伝達因子として重要な役割を果たしている。

筑波大学の研究情報ポータル(COTRE)に以下の図と説明がありました。ご紹介させて頂きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私たちの体内の組織や臓器は、それらに特有の細胞によって作られています。それらの細胞がホルモン・成長因子・神経伝達物質などの情報を受け取って、シグナル伝達が稼働して細胞機能が発揮されることにより組織や臓器が正常に機能します。その結果として私たちは正常な生活を営むことができます。しかし、細胞のシグナル伝達に異常をきたすと、様々な病気になります。この異常は、シグナル伝達を行うタンパク質や酵素の性質の変化によって起こります。シグナル伝達の異常によって起こる病気には、がんやアレルギー、神経疾患などがあります。シグナル伝達がどのようなメカニズムで作動しているのかを解明して、それらの異常がどのような病気に関連しているのかを分子レベル、細胞レベル、および個体レベルで解明することが求められています。』

第2章 酸化ストレスと病態
Ⅰ.細胞分化増殖・シグナル異常と再生医療
1.ER(小胞体)と酸化ストレス
・ERは細胞内Ca2+(カルシウムイオン)の主たる貯蔵部位として、Ca2+ホメオスタシスにおいて重要な役割を演じる。
・ERの諸機能の破綻によるERストレスは、神経変性疾患や虚血性臓器傷害、糖尿病や動脈硬化症などの生活習慣病の誘因の一つと考えらえるが、近年、その分子機構とレドックス(酸化還元反応)、酸化ストレスとの関連が注目されている。
ERにおけるタンパク質の酸化的折りたたみ
・分泌・膜タンパク質の新生ポリペプチドは、ER内腔へ引き込まれた後、分子シャロペンのようなタンパク質の折りたたみ関連酵素による手助けのもとで正しく折りたたまれる。そして、ゴルジ体で糖鎖修飾などの翻訳後修飾を受けた後、細胞外あるいは膜上に運ばれる。
・ERでの折りたたみに失敗したタンパク質は細胞質に移送され、ユビキチン・プロテアソーム経路で分解される。
ERにおけるレドックスホメオスタシスとROSの生成
過剰なERでのタンパク質生合成は、酸化ストレスの発生と密接に関係する。
ERストレスとは
ERストレスは、正しく折りたたまれない変性タンパク質のERへの蓄積が起こすストレス応答である。
・ERストレスは、酸化ストレス、虚血、低酸素、ウィルス感染、栄養飢餓など種々の環境変化によってもたらされる。
・ERストレスシグナルに起因したERストレス応答では、変性タンパク質が過剰にERに蓄積しないよう、タンパク質の翻訳停止、ERシャロペンの発現誘導、ERADの亢進が起こる。
・ERストレスにより回避できない細胞傷害が起こった場合、細胞は自らアポトーシスの誘導を選択する。
ERストレスと酸化ストレスのクロストーク
・糖尿病態において、酸化ストレスとERストレスの両者が密接に関わることを示している。
酸化ストレスによるER内Ca2+制御タンパク質の機能修飾
・ERに局在するCa2+制御タンパク質は、酸化ストレスの標的となり、その生理機能が制御され、細胞・組織の酸化ストレス傷害と関係することが知られている。

2.アポトーシスと酸化ストレス -酸化ストレス誘導性アポトーシスにおけるNoxaの役割
・生体内で発生する活性酸素種は遺伝子発現やシグナル伝達因子の活性を制御し、種々の細胞応答にかかわっていることが知られている。
活性酸素種の発生量は産生と消去とのバランスにより、厳密に制御されており、その制御破綻は、老化、発癌、梗塞、神経変性疾患など、さまざまな疾患の発症に関与していることが示唆されている。とりわけ、酸化ストレスによる過剰な細胞死の誘導は、組織の機能を維持するうえで危機的であり、その分子メカニズムの解明は、生物学的な意義をもつだけではなく、医学的にも非常に重要な課題と思われる。
・活性酸素種の1つである過酸化水素による細胞死に関しては、アポトーシスとネクローシスがよく知られているが、どの細胞死機構が活性化されているかについては、細胞腫や過酸化水素の濃度によって異なっており、両者が混在するケースも知られている。
アポトーシス経路とミトコンドリア
・アポトーシスはさまざまな刺激によって誘導されるが、各刺激によって誘導されたシグナルは最終的にはミトコンドリアに集約される。

4.眼表面と酸化ストレス
・角膜を含む眼表面が、なぜこれほど環境性の酸化ストレスに強いかはまだ知られていない。角膜上皮が多くのグリコーゲンを貯蔵して、嫌気性代謝に依存する率が高いことも1つの原因としてあげられている。角膜の抗酸化機能を解明することは、酸化ストレスによるエイジングや発癌メカニズムを一部解明できるかもしれない。

Ⅱ.炎症・発癌と変性疾患
3.酸化ストレス誘発発癌機構の解明
酸化ストレスと発癌
酸化ストレスを引き起こす病態は、放射線・紫外線への曝露、鉄・銅などの遷移金属の過剰状態、ウィルス感染、あらゆる慢性炎症、ある種の抗癌剤投与(ブレオマイシン、アドリアマイシン)、臓器移植や梗塞など、実に多岐にわたっている。

Ⅲ.呼吸・循環・代謝異常
1.H2O2(過酸化水素:活性酸素の一つ)が制御する血管弛緩反応の分子機構
血管内皮細胞および血管平滑筋細胞は、多くの相互作用を及ぼしつつ血管の生理的機能を保っていることが知られている。血管内皮は各種の血管弛緩因子を産生・放出し、血管機能の恒常性の維持に重要な役割を果たしている。われわれは、生理的濃度の活性酸素(H2O2)が内皮由来過分極因子の本体として、血管弛緩作用を有することを報告した。一方、過剰な活性酸素(酸化ストレス)は心血管疾患の原因になることが知られている。われわれは最近、酸化ストレスが血管平滑筋細胞よりCyclophilin A(細胞質に大量に存在する蛋白質。CyPA はそもそも免疫抑制剤cyclosporin A(CsA)の特異的 リガンドとして発見され,ポリペプチドのプロリンのアミド結合のシスからトランスヘの異性化を触媒する活性を有する)を分泌させ、血管内皮機能障害や平滑筋増殖促進作用を有することを報告した。これらの酸化ストレスによる血管弛緩反応の分子機構の解明により、心血管疾患の新たな治療薬開発の可能性が期待される。
・血管内皮細胞は、血管平滑筋層の内側を覆うたった一層の細胞群ではあるが、血管平滑筋細胞との多くの相互作用を有し、血管機能制御の根幹を形成している。血管内皮はプロスタサイクリン(PGI2)・一酸化窒素(NO)・内皮由来過分極因子(EDHF)の3種類の血管弛緩因子を産生・放出し、これらは生理的条件下での血管機能の恒常性の維持に重要な役割を果たしている。(短期的には血管トーヌス[緊張]を弛緩優位に保ち、長期的には動脈硬化の発生・進展を抑制して、心血管系の恒常性の維持に極めて重要な働きをしている)
EDHFとしてのH2O2
・H2O2は血管弛緩反応に関する役割をNOと分担しており、大動脈などの導入血管における弛緩反応は主としてNOにより制御されているが、H2O2は微小血管、特に抵抗血管において重要な役割を果たしていると考えられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「活性酸素シグナルと酸化ストレス」

酸化ストレスとしてのH2O2
・高血圧、糖尿病や脂質異常症などの種々の動脈硬化危険因子の存在下では、過剰な活性酸素種が血管平滑筋細胞や炎症細胞(好酸球,Tリンパ球,肥満細胞[マスト細胞],好中球,好塩基球など)において大量に産生・遊離されることがわかっている。
・血管平滑筋細胞は中~大血管を構築する細胞のなかでも圧倒的な数および容積を有し、NADPHオキシダーゼなどの多くのROS産生源を有する。
・アンジオテンシンⅡ(ポリペプチドの1種で、血圧上昇[昇圧]作用を持つ生理活性物質である。アンジオテンシンII〜IVは心臓の収縮力を高め、細動脈を収縮させることで血圧を上昇させる。特にアンジオテンシンII は副腎皮質にある受容体に結合すると、副腎皮質からアルドステロンの合成・分泌が促進される)などのアゴニスト(生体内の受容体分子に働いて神経伝達物質やホルモンなどと同様の機能を示す作動薬のこと。現実に生体内で働いている物質はリガンドと呼ばれる)刺激や「ずり応力」(血流は内皮にずり応力を与える:血管壁には常に血行力学的ストレスが作用している. 一つは血圧による血管壁に垂直方向に働く法線応力で,これは内皮細胞や平滑筋細胞を引き伸ばし細胞に張力を与える.他 の一つは血流によるずり応力で,これは血管内面を覆う内皮細胞にのみ作用し,内皮細胞を流れの方向に歪ませる力となる)、低酸素などの環境因子により大量の活性酸素が平滑筋細胞内で産生され、病的高濃度(ミリモルオーダー)のH2O2は、生理的濃度(マイクロオーダー)のH2O2とは異なる役割を有していることが示唆されている。すなわち、H2O2は生理的低濃度において特に微小血管の血管機能にとって保護的に働く一方、病的高濃度においては血管リモデリング(血液循環状態の変化に伴う、血管の構造上の変化で、高血圧による圧力変化に対応する血管壁圧の変化や、腫瘍組織における血管新生などが例である)を促進する可能性がある。

2.慢性腎臓病における鉄の重要性
慢性腎臓病(CKD)では、腎障害のさらなる進行や心血管疾患(CVD)の合併が多くみられ、その病態には酸化ストレスが深く関与している。CKDの酸化ストレス亢進において、タンパク尿やレニン・アンジオテンシン系亢進に加え、鉄代謝異常の役割は大きい、鉄輸送タンパク質の発現異常による細胞内の鉄過剰状態は活性酸素産生を惹起する。また、CKDではチオシアンさんの増加による活性酸素産生がCVD発症に関連しうる。CKDあるいはCVDに関するこれらの知見から、活性酸素・遊離鉄をターゲットとした治療戦略の確立が望まれる。
・CKDの重要な点は、腎障害が悪化して末期腎不全へと至ることだけではなく、心血管疾患(CVD)などの合併がきわめて多く死亡率も高いことである。CKDでは従来からタンパク尿の程度と腎機能の予後との関連が知られており、タンパク尿による腎障害進行のメカニズムが報告されている。また、腎障害やCVDの進展においてレニン・アンジオテンシン系の亢進、酸化ストレスや慢性炎症の持続なども病態に関与している。
CVD(心血管疾患)
・CVD発症のリスク因子として、従来から喫煙や高血圧、肥満などの因子が知られているが、最大のリスク因子はCKDであることが、欧米および日本での大規模臨床試験で示されている。われわれは、CKDの病態およびCVD発症・進展には鉄代謝異常が関与していると考えている。
・透析患者は鉄輸送タンパク質の調節異常によって、細胞内では鉄が過剰に存在することが明らかとなった。

筋緊張

脳血管障害による体の異常のことを「痙縮」といいますが、時に「痙直」という言葉を使うこともあります。また、パーキンソン病などでみられる体に現われる異常の一つに「固縮」がありますが、これについては「強剛」あるいは「筋強剛」なども使われており、更に「強直」、「硬直」といった言葉も出てきます。一方、ギックリ腰は痙縮や固縮とは異なり、中枢神経が関与しない「筋スパズム」の問題とされています。「筋スパズム」は日本語では「筋攣縮」となり、痙攣性の収縮のことです。筋肉と関節の関係では「拘縮」という言葉もよく耳にします。
これらの似て非なるものを分かりやすく分類しようと思うと、例えば、筋緊張の強さと弱さ、関節と軟部組織(筋、腱、靭帯、結合組織)、神経性要素と機械的要素、疾患との関連性、特徴的な症状などがモヤッとして整理整頓困難な印象があり、その手間と難しさから着手できずにいました。

ところが、先日ネット検索している時に、「筋緊張に挑む」という本を偶然見つけ、今までモヤモヤしていた所がクリアになりそうな気がしたため、思い切って商品券を使って購入することにしました。

 

こちらは「理学療法士」の方向けの本です。

 

常任編集:斉藤秀之・加藤 浩

出版:文光堂

目次は3層の見出しのうち、大中の2層に関しては次の通りです。
PartⅠ 理学療法から見る筋緊張
1.理学療法における筋緊張の再考
2.運動・生理学からみた筋緊張
PartⅡ 筋緊張の測定・評価
1.一般的評価や検査手技について
2.動作レベルでの筋緊張評価の診かた
3.歩行分析における筋緊張の診かた
4.セルフケアにおける筋緊張の診かた
5.頸部・体幹および顎・口腔の筋緊張の診かた
6.筋緊張に影響する要因
PartⅢ 疾患別の筋緊張の特性と治療
1.脳卒中における筋緊張の特性と治療
2.脊髄損傷における筋緊張の特性と治療
3.痙直型脳性麻痺における筋緊張の特性と治療
4.二分脊椎における筋緊張の特性と治療
5.低酸素脳症(脳損傷・意識障害を含む)における筋緊張の特性と治療
6.パーキンソン病における筋緊張の特性と治療
7.筋強直性ジストロフィーにおける筋緊張の特性と治療
8.呼吸器疾患における筋緊張の特性と評価・治療
9.運動器疾患における筋緊張の特性と治療
10.慢性疼痛症候群における筋緊張の特性と治療

下の図は「筋緊張の概念図」です。今回はこの図をベースにネットで確認した情報を付け足して、一覧表を作りました(クリックすると拡大されます)。情報源が混在しているため、正確性と見やすさに課題があると思いますが、何かご参考になればと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「筋緊張に挑む」

動かないことによって生じる骨格筋の線維化の原因を探索

損傷に対する修復だけでなく、【不動】でも線維化するという記事です。

高草木 薫先生の論文「大脳基底核による運動の制御」がダウンロードされます。

こちらは「筋緊張亢進と動作障害に関する機能因子の連関サイクル」です。筋緊張の関係性、全体像を把握するのに役立つ図だと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「筋緊張に挑む」

運動器疾患における筋緊張、筋スパズム、筋硬結については詳しくご紹介したいと思います。なお、これらは全て本の内容に基づいています。

 

運動器疾患における筋緊張の特性と治療
運動器疾患における筋緊張の異常とは?
持続的な筋緊張の亢進は局所の循環不全を引き起こし、発痛物質や疼痛増強物質などを誘導し、侵害受容器の興奮を惹起する。さらに、疼痛の持続は、交感神経の活動を上昇させることから、末梢血管収縮による局所の循環不全を引き起こす。循環不全による酸素欠乏状態は、アデノシン三リン酸(ATP)産生を抑制するなど筋の弛緩不全を引き起こすような悪循環に至ってしまう。退行性変性疾患であれば、慢性疼痛や罹患関節に対する代償作用が隣接関節だけでなく全身へと波及する結果、固定化あるいはパターン化された姿勢・動作が形成される。固定化あるいはパターン化された姿勢・動作は、偏った筋の持続的な過緊張へとつながり、日常生活において習慣化される。それは、無意識に罹患関節への力学的ストレスの増加や他関節への障害を惹起する可能性がある。 


筋緊張が亢進する理由は!?
・中枢神経系に器質的異常のない運動器疾患において、筋緊張が亢進する理由は何であろうか。それは主に脊髄反射が関与していると考えられる。脊髄反射は、伸張反射と屈曲反射に大別される。「伸張反射は、外力に抗する力を発生することで関節を固定して姿勢を保持することにある。すなわち、重力に抗して姿勢を保持するための、筋の持続的な収縮である。屈曲反射は、皮膚、筋その他の深部組織が傷害されるような刺激に対して、肢節を屈曲させるような反応である」。例えば、術後の疼痛が持続することで、屈筋群の持続的な筋収縮により、股関節が屈曲・内転・内旋位で固定化されやすい状態になることは臨床上よく経験することである。これらの反射は無意識的に調整されているため、患者自身はどこに、どの程度の力が入ってるかを認識することは困難なことが多い。

運動器疾患において筋緊張が亢進する原因は?
・神経原生因子は、脳の障害の損傷箇所およびそれに関与する神経系路による問題で、痙縮、固縮、クローヌス筋肉や腱を不意に伸張したとき生じる規則的かつ律動的に筋収縮を反復する運動)の障害の損傷箇所およびそれに
などさまざまな筋緊張の異常を呈する。非神経原生因子には、①筋・皮膚などの軟部組織のバイオメカニカルな変化およびそれに起因する疼痛など。②過剰動作による代償および誤動作による関節・筋などの炎症、合併症の出現および増悪。③環境・人格(生活、家族背景、趣味など)・その他、精神面に作用する要素を挙げている。このように個人要因や環境要因、社会要因などさまざまな要因により筋緊張は影響を受けることが考えられる。

筋緊張は連鎖する
・四肢遠位の体節の筋緊張が高まると、その筋緊張は近位の体節を構成する筋へ連鎖するような現象が筋の収縮連鎖である。

上肢疾患における筋緊張の特性および治療
・術後の著明な疼痛や夜間痛による睡眠障害は、心理・精神的ストレスを増加させ肩関節・肩甲帯周囲筋の筋緊張の亢進につながることが少なくない。

筋スパズムとは?
骨格筋が急速かつ不随意に収縮すること、あるいは収縮している状態を表す。
・神経学の分野では「断続的に生じる一定の持続時間をもった異常な筋収縮状態」とされ、筋攣縮とも呼ばれる。
・理学療法領域においては「痛み刺激に対する防御作用の一環とした、反射的・持続的な筋緊張の亢進」を指していることが多い。
筋スパズムの原因としては、筋疲労や脱水、電解質異常、ホルモン・ビタミン欠乏、腎不全、薬剤の副作用、外傷や炎症などの要因が考えられる。
・筋スパズムが遷延化(長期化)することは骨格筋や関節機能障害の発生につながり、痛みを慢性化させる。
筋スパズムの発生機序
・筋や関節を構成する結合組織などが損傷すると、発痛物質(ブラジキニンなど)が放出される。また、組織修復の過程で炎症が生じ、腫脹による組織内圧の上昇や局所の発熱がみられる。それらの侵害刺激は自由神経終末(高閾値機械受容器とポリモーダル受容器)を刺激し、求心性に情報を伝導する。
損傷組織や炎症による各刺激が脊髄後角へ入力され、α運動ニューロンを興奮させることで筋活動が増加する。また、同時にγ運動ニューロンを興奮させ筋紡錘へ影響を与え、α運動ニューロンが興奮しやすい状況を作る。
筋スパズムによって生じる筋機能の障害
・筋スパズムが遷延化することで筋や関節の機能障害を生じる場合がある。特に筋の機能障害が進展することにより、疼痛が慢性化する可能性がある。
・筋緊張の亢進が持続することによりみられるもの
 ①筋内圧の増加と局所の循環障害
 ②ポリモーダル受容器の閾値低下
 ③発痛物質の血中濃度上昇
 ④相反抑制(主働筋が収縮する際に拮抗筋を収縮させない[弛緩させる]命令が出されるというような、互いに拮抗しあう筋の活動を抑制するメカニズム)によるスパズム筋の拮抗筋弱化
 ⑤痛みによる交感神経活動の亢進(末梢循環障害)が生じる
 ①~⑤によりさらに筋スパズムを強く生じさせ、疼痛を慢性化させる。加えて虚血状態の筋は収縮から弛緩への移行が障害される。
これらのことにより、筋や関節の結合組織の伸張性や粘弾性の低下が生じる。また、筋スパズムの期間が延長するのに合わせ筋短縮や拘縮が進行し、姿勢の悪化や関節アライメントの変位につながっていく。筋スパズムがある場合、過度な負荷を加えると、筋付着部や腱に微細な損傷や炎症を生じさせる可能性が高い。筋スパズムによる筋機能不全が痛みの原因となり、痛みの増悪が筋スパズムを増加させるといった悪循環を形成する(pain-spasm-pain cycle)。

 

「pain-spasm-pain cycle」で画像の検索をすると、表示されるpain cycleは一様ではなく、色々なバリエーションが出てきます。左の図はシンプルなのと、絵が気に入り拝借しました。

『筋緊張⇒循環障害⇒筋肉の炎症⇒可動域制限⇒疼痛⇒筋緊張⇒…』という感じだと思います。

筋スパズムに対する理学療法
・筋緊張が亢進が持続することにより、筋の機能不全(伸張性・粘弾性低下、拘縮、萎縮、循環障害、変位)を生じる。その状況で不適切な運動を行うと、筋や結合組織に新たな損傷を生じさせる可能性が高い。
・スパズムは関節運動のリズムを崩し、転がり運動滑り運動を破綻させる。
・無理に動かすことは周囲組織のインピンジメントを助長し組織損傷を誘発しかねない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは「肩甲上腕リズム」を説明するものです。腕を高く上げるには、肩関節に加え肩甲骨が連動することが必要です。また、筋肉も動きに伴い働く筋肉が変化します。

※この画像は、「伊豆deマッサージ◇河津ハンズblog◇」さまより拝借しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらは膝関節にみられる①「転がり」、②「すべり」です。スパズムはこれらの動きを抑制する可能性があり、関節可動域に悪影響を及ぼします。

※この画像は、「Adetto」さまより拝借しました。

筋硬結とは?
・「凝り」「こわばり」「しこり」の正体は筋硬結と呼ばれ、筋が硬く結節状になった状態である。
・発生の機序としては、筋損傷、過剰な筋疲労をきっかけに、筋小胞体損傷部からカルシウムイオンの放出、また筋線維細胞膜損傷により細胞外カルシウムイオンの細胞内への流入により、筋漿膜内のカルシウムイオン濃度が上昇し、局所的なアクチンフィラメントとミオシンフィラメントの滑走が膠着する。膠着解除のためにATPが必要となり、代謝は亢進するが、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントの膠着による局所循環障害は、酸素欠乏とエネルギー欠乏を招き、さらに膠着が持続し筋硬結が形成されるといわれている。
・筋硬結は局所の循環障害を起こしている筋の中に、収縮結節が残存している状態であるといえる。

その他
筋スパズム「spasm」は攣縮を意味し筋肉の線維が持続的・不随意的に収縮しつづける状態を指します。一方、生理学では「twitch」の訳として「単収縮」と「攣縮」が使われています。
この「spasm」と「twitch」の違いを調べたのですが、なかなか見つからず、やっと見つけたのは以下のように英語の記事でした。  
なお、twitchの最も分かりやすい例は、eyelidという「まぶたがピクピクする状態(無痛)」だと思います。

Muscle Twitching vs. Spasms:the Difference?
“A twitch is a brief phenomenon that affects a small portion of a muscle, whereas a spasm may be more prolonged and affects a large muscle group. A twitch does not tend to be painful, but a spasm can be quite painful.”

大健闘の2017シーズン

女子サッカーのインカレ(全国大学選手権大会)の決勝戦は同じ関東代表の神奈川大学でした。試合内容はほぼ互角、わずかに試合巧者である早稲田が集中した守備で相手の得点を許さず、1対0のスコアで勝利し大会3連覇という偉業を達成しました。
この試合は2017年シーズンの最終戦であり、最高の結果で締めくくることができました。早稲田女子部は関東大学リーグは2位という残念な結果でしたが、今季はもう一つ大きな仕事がありました。
それは、皇后杯3回戦でなでしこリーグ強豪のINAC神戸レオネッサにPK戦で競り勝ち、ベスト8に進出したというビッグニュースです。これも記録に残る今季の素晴らしい成果でした。

 

画像出展:「早稲田スポーツ新聞会

クリックして頂くと、監督、選手のコメントが見られます。

早稲田大学男子部は昨年末の悪夢を払拭してくれました。しかも、「勝てば天国、負ければ地獄」と評された最終の国士館大学との接戦をものにしての逆転優勝と1部リーグ復活という劇的なものでした。実際、3位中央大学も最終戦を勝利していたので、早稲田は負けていれば優勝はもちろん、1部昇格も逃していました。
大学リーグは前後期計22試合で行われます。2位の昇格圏を死守してきた早稲田は17節と19節の引き分けで、20節の直接対決を前に、猛追してきた中央大学に2位の座を譲る事態となってしまいました。そして迎えた
11月5日の中央大学との直接対決は、勝たなければならないという厳しいプレッシャーを背負いながらも、3対0の完勝で最大の山を乗り越えることができました。

私は台風が近づいていた10月21日に、東伏見グランドで行われた第18節、東海大学との一戦を観戦しました。伝統の重さなのか、選手には硬さが見られましたが、手を抜かない集中した試合をしていました。

後半、先制しながらも5分後に追いつかれたのは、勝利の厳しさを痛感するものでしたが、終盤に得点力のある選手、ヘディングの強い選手を立て続けに投入した監督の勝利への執念が、劇的なロスタイムの決勝ゴールを引き寄せました。ラストプレーから生まれた、ゴールに叩き込むような豪快なヘディングシュートは、雨も寒さも吹き飛ばしてくれました。

浦和西高等学校(男子)
歴史に残る1年でした。夏は30年ぶりのインターハイ出場と初戦突破の全国1勝。冬は34年ぶりの全国高校選手権県予選決勝進出。

関東大会を征し、S1(1部)リーグ優勝の昌平高の壁を壊すことはできませんでしたが、1-4の完敗だった夏とは異なり、今回は後半先制されるも、右サイドの切り崩しから、綺麗な同点ゴールを決めたことで、試合は接戦となりました。その後、早々に突き放される2点目を失い、勝利を逃すことになりましたが、チームの成長を実感できる拮抗した好ゲームでした。選手ひとりひとりが工夫、努力し、自信をもってチームとしての力に結集できたということだと思います。

一方、リーグ戦は1部昇格をかけ、2年生主体の新チームで戦いましたが、結果を出すことはできませんでした。高校生には大きな伸びしろがあります。1年かけ大きく変貌することができます。期待したいと思います。


浦和西高等学校(女子)
女子も健闘しました。サッカー経験者が集まる私立の強豪校との実力差は小さいものではありません。その状況で全国選手権の県予選を5位となったことは十分に評価できると思います。
埼玉県ではベスト4に残れなかったチームは順位決定戦にまわります。決定戦にまわった西高は、敗戦後、しっかりとチームを立て直し2連勝して5位を死守しました。ここで2つ勝ってシーズンを終えることができたのが何よりも良かったと思います。

付記1:東伏見の思い出
サッカー部だった私は、早稲田といえば馬場ではなく、東伏見であった。時に練習着のまま踏切をわたって銭湯にいった。ホッピーがある小さな飲み屋があった。私より明らかに大柄な本場のチアリーダが大挙してやってきて度肝を抜かれたが、あれは何だったのだろうか。その東伏見の景色は40年前のものである。
今にして思うと、グリーンハウスがとても懐かしい。それは練習しているグランドと相対するように建っており、独特の風貌から歴史と威厳を感じるからなのか。監督で早稲田の政経学部の教授でもあった、故堀江忠雄先生の「常識にとらわれず独創的であれ」という言葉が印象に残っているが、
そのミーティングはグリーンハウスで行われていた。そのグリーンハウスが歩んできた歴史には、どうやら坪内逍遥が関係しているらしいということは知っていた。しかしながら、それ以上のことは知らず、また、調べる気もなかった。

『グリーンハウスは1882年10月に東京専門学校が開校された時、学苑最初の木造洋館の校舎として建設されたものである。1902年に東京専門学校は早稲田大学と改称され、さらに1907年の早稲田大学第二期拡張事業の後文学部専用の校舎となり、多くの学生がここで学んだ。大教室の「文科第七番教室」では坪内逍遥が早稲田名物のシェークスピアを講じ、さらに島村抱月、高山樗牛(ちょぎゅう)といった名だたる講師がここで講義を行った。文学部専用校舎となる以前であるが、小泉八雲が最後の講義を行ったのもここであった。しかし1931年文学部に新校舎が建設される事となり、文学部旧校舎は東伏見運動場へ移築され、運動各部の合宿所として使用する事が維持員会で決定された。こうして多くの文学部学生が学んだ旧校舎は、体育各部の合宿所として多くの早稲田アスリートを育てる場となったのである。移築の際、外側の柱や横板、窓枠をエメラルドグリーンに塗装した事からグリーンハウスの愛称が定着した。以降グリーンハウスは多くの早稲田アスリートが練習に疲れた体を休め、友人と寝食を共にする卒業後も忘れ難い思い出の場所となったのである。しかしアジア・太平洋戦争中はグリーンハウスにも戦争の影が忍び寄った。ラグビー蹴球部の部員たちは1943年の学徒動員により学苑とグラウンドに別れを告げ戦場に赴いた。部員たちは戦時中グリーンハウスに備品を整理・保管していたが、OBに託してユニフォームを埋め、戦地へ向かった。無事に帰り、掘り起こしたユニフォームで練習を再開した部員たちもいたが、二度と帰らぬ部員たちもいた。グリーンハウスは戦争の悲劇を伝える場でもあったのである(早稲田ラグビー60年史編集委員会編『早稲田ラグビー六十年史』 1979年参照)。戦後も体育各部の宿舎として使用されたが、老朽化のため惜しくも1988年解体された。しかし1992年追分セミナーハウス(現軽井沢セミナーハウス)に新築復元され、今日大学関係者の宿舎・ゼミ室として利用されている。』

※上記の絵は、「悠々庵気まぐれ日記」から拝借しました。

※上記の文章は、「早稲田ウィークリー」から拝借しました。

堀江忠雄先生

前列左から3人目が堀江先生

画像出展:「JFA.jp

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いつか、必ず、読まねば!!」


宮本征勝監督

中列左から2人目が宮本監督

画像出展:「JFA.jp

【2005年第1回日本サッカー殿堂入り】

 

早稲田では2年生から、3年間お世話になった。2年の菅平合宿後、もう一人のM君と共に部屋に呼ばれ、「古河電工(現ジェフ千葉)の合宿に出てみないか」と声をかけて頂きながらも、断ってしまったという最高に失礼な記憶が鮮明に残っている。宮本監督との出会いは、私が小学6年生の時、場所は駒場サッカー場。古河電工の選手として駒場に来ていたのは間違いないだろう。ちゃっかりサッカーボールにサインまでもらっていた。今回、宮本監督の写真を探していて、生前に出版されていた「サッカーに魅せられた男 宮本征勝」という本があるのを知った。「まずは、買わねば!!」

これは、おそらく大学2年の時の菅平合宿です。起床後、宿舎からダボスまでランニング、そして頂上までのタイムトライアル、更に比較的なだらかな地形を利用しての坂道ダッシュと、朝からガンガン鍛えられました。

中央に堀江先生(白)、後列向かって左端(赤)に宮本監督が映っている貴重な写真です。

付記2:検見川の思い出

どこから拝借したのか思い出せないのですが、大変、貴重な写真だったので保存していました。確か、サッカー誌の「イレブン」か「サッカーマガジン」に掲載された記事が大元です。

一番後列の向かって右端が宮本征勝監督です。私は2年生で、多分、前から2列目にいそうです。

 

なお、記事の内容は以下の通りです。

『検見川で長期合宿にはいっている早大、この日(2月29日)は前日の雪でグランドがぬかるんでいるため、もっぱら筋力トレーニングに精を出していた。この筋力トレーニングは、「大学選手はまずパワーでJSL選手に負けている」との宮本コーチの持論から、いまや「早大名物」になった感もある。一段と逞しくなった選手たちは、総勢51名。王座奪回のため名門チームは、全員一丸となって、「ただいま特訓中」。

パーキンソン病-進化する診断と治療【治療】

『パーキンソン病-進化する診断と治療-』という特集は【座談会】で始まっています。【治療】は4番目であり、掲載されていた寄稿は次の6つです。
●新しい薬物治療
●脳深部刺激療法(DBS)
●遺伝子治療
●パーキンソン病に対する細胞移植治療
●デュオドーパ
●ニューロリハビリテーション
ブログでは、「パーキンソン病に対する細胞移植治療」、「ニューロリハビリテーション」を取り上げました。これはiPS細胞というキーワードと鍼灸師にとって重要なリハビリテーションに着目したためです。なお、分からない用語が数多くあったため、それらの用語の後ろに( )で説明等を付け加えましたが、その結果少し見づらくなっていると思います。

【座談会】のテーマは「パーキンソン病病態の解明の進歩と疾患修飾療法」です。クリックして頂くと移動します。

出版:最新医学社

 

高橋淳先生

京都大学iPS細胞研究所 臨床応用部門 神経再生研究分野 教授

菊地哲広先生

京都大学iPS細胞研究所 臨床応用部門 神経再生研究分野  

要旨:『現在のパーキンソン病に対する主な治療である薬物療法、脳深部刺激療法では、障害された中脳ドパミン神経細胞自体を修復することはできない。失われたドパミン神経細胞を修復することはできない。失われたドパミン神経細胞を補充する治療として、細胞移植治療の研究が進められている。近年、iPS細胞は細胞移植治療の細胞源として注目されており、臨床応用に向けた研究が進められている。』

はじめに
・細胞移植治療は、胎児組織を用いた胎児腹側中脳組織移植が1980年代から行われているが、中絶胎児を治療に用いる倫理的問題もあり、治療の主流にはなっていない。
2007年のiPS細胞作製の報告以来、胎児細胞の代わりに細胞移植源としてiPS細胞を用いる研究が進められてきた。
パーキンソン病においては、中脳黒質線条体系のドパミン神経細胞の喪失により運動障害が生じるといった病態が比較的単純な部分もあり、細胞移植治療の対象になりやすいと考えられる。

パーキンソン病の病理および治療
・パーキンソン病では、振戦、固縮、無動、歩行障害、および姿勢反射障害などの運動症状が主に中脳黒質線条体系のドパミン神経細胞の脱落によって引き起こされることが知られている。
・現在行われている標準的な治療は薬物療法であり、L-ドパ、ドパミン受容体刺激薬、抗コリン作用薬などが使用される。
・L-ドパはドパミン前駆体(化学反応などで、ある物質が生成される前の段階にある物質)であり、脳内でドパミンに代謝されて作用するが、病気の進行に伴いL-ドパを代謝するドパミン神経細胞が減少することによって、その効果は低下する。
・L-ドパ以外の薬剤についても、初期には有効であるが、病状が進行するにつれて薬剤を増やす必要があり、副作用も出現しやすくなるため、長期間にわたり症状をコントロールすることは困難である。

パーキンソン病に対する細胞移植治療
細胞移植治療は、損なわれたドパミン産生能自体を改善するための治療である。1980年代後半には、スウェーデンでヒト中絶胎児の中脳組織を用いた胎児腹側中脳組織移植が開始され、以来、主に欧米で約400件の手術が行われている。幾つかのケースで劇的な効果が認められ、移植の効果は10年以上持続したとする報告もある。
・胎児組織の移植には1人の患者に4~10体の胎児が必要なこと、移植片による不随意運動の報告もあり、一般的な治療にはなっていない。
・近年、ドナー細胞として胎児の代わりに幹細胞を用いる方法が期待され、研究が進められている。

細胞移植治療のための細胞源
1.ES細胞(embryonic stem cells:万能細胞の一種。さまざまな異なる細胞に分化し増殖する能力を持つ。ES細胞の採取は受精卵を殺すことになるので倫理面の問題がある)
・ES細胞は、三胚葉(内・中・外胚葉)すべてに分化する多能性により、すべての細胞移植のための細胞源として使用され得るが、ES細胞からの標的細胞を高純度に誘導することが1つの課題となる。
未分化ES細胞が移植片に混入した場合、奇形腫などの腫瘍を形成する可能性がある。
他家移植(自己以外の個体の組織などの一部を自己の個体に移植すること)となるため免疫抑制薬が必要になる。
ES細胞を樹立するためには生命の萌芽である初期胚を破壊しなければならないため、倫理的な観点からの批判がある。
2.iPS細胞
・iPS細胞はES細胞と同等の自己複製能および多能性をもっている。
iPS細胞は体細胞から作製され、初期胚の破壊を伴わないため、ES細胞で問題となる倫理的問題を回避することが可能である。
奇形腫などの腫瘍を形成する危険性はES細胞と同じである。
・iPS細胞はもともと4つの遺伝子をゲノムDNAに不可逆的に導入することで作製されるため、ゲノムの損傷による予期せぬ腫瘍形成や悪性化の可能性が指摘されている。この点については近年、臨床化へ向けて危険性の少ないiPS細胞を作製する方法が盛んに研究されている。
・iPS細胞からドパミン神経細胞への誘導に関しては、ES細胞の研究で得られた知見をiPS細胞にも応用することで、ドパミン神経誘導が可能である。

疾患動物モデルを用いた有効性と安全性の検証
・ドパミン神経細胞移植の有効性および安全性を検証するために、疾患動物モデルが必要である。
・パーキンソン病患者脳内におけるαシヌクレイン過剰状態を模倣するαシヌクレイン過剰発現マウスモデルも複数提唱されており、パーキンソン病患者脳内での移植細胞の挙動を予測するために有用である。

これまでの研究成果
・ヒトES細胞由来のドパミン神経細胞をカニクイザルMPTP(ドーパミン作動性ニューロンを変性脱落させる神経毒)モデルに移植し、神経症状が改善したことを報告した。
・ヒトiPS細胞由来のドパミン神経細胞をカニクイザルに移植し、腫瘍形成なく生着したことを報告した。
パーキンソン病患者の皮膚線維芽細胞から樹立されたiPS細胞由来のドパミン神経細胞が、パーキンソン病モデルラットの運動機能を改善することが報告されている。

問題と展望
ヒトES/iPS細胞由来のドパミン神経細胞は、モデル動物に生着してパーキンソン病の症状を改善することができるが、臨床適用前に解決すべき幾つかの問題がある。
1.治療適応の選択
・胎児中脳細胞移植の経験から、細胞移植治療は重篤な症例では効果が少なく、初期に治療効果が高いことが知られている。効果的な症例を選択するための基準が必要である。
2.ドナー細胞の分化の誘導、選別
・移植に必要なドパミン神経細胞を高精度に誘導する分化プロトコルや細胞選別技術が求められる。
3.腫瘍形成の制御
・腫瘍形成リスクを低減するためには、iPS細胞の樹立方法や細胞選択技術の検討に加えて、ドナー細胞の分化の程度を制御することが重要である。
・腫瘍形成等の緊急事態に対する安全対策として、抗がん剤などの薬剤や放射線照射により腫瘍増殖を抑制する試みがなされている。
4.移植片と宿主との免疫応答
・胎児中脳細胞移植では多くの場合免疫抑制薬が使用されており、免疫抑制が有効であると考えられている。
・カニクイザルを用いた実験では自家移植(個体内にある組織または器官や臓器を同一の個体内の別の個所に移植すること)では他の移植よりも免疫反応が少ないことが報告されているが、患者由来のiPS細胞を細胞移植治療の細胞源として使用できるかどうかはさらなる検討が必要である。
5.iPS細胞ストック
・自家移植の問題の1つは、患者自身の細胞からiPS細胞を樹立し、ドパミン神経細胞を誘導するのにかなりの時間を要することである。そのため、あらかじめ多くのドナーからiPS細胞を作製し、安全性と有効性を確認した細胞を保存しておくストック化も進められている。
・ストック細胞の移植は他家移植であるため、HLA型(human leukocyte antigen:ヒト白血球抗原、免疫を担当する)の違いによる免疫拒絶反応が特に問題となる。

おわりに
『パーキンソン病では、胎児中脳移植の有効性が証明されていおり、細胞移植治療のターゲットとして研究が進められている。近年、移植療法の細胞源としてのiPS細胞の出現により、自家移植および細胞ストックの実現が可能になった。最初に発表された方法と比較すると、樹立方法などの改良によりiPS細胞の安全性は向上しており、臨床応用に向けてさらなる安全性および有効性の評価が行われている。』

コメント(自分なりに整理してみました)

損なわれたドパミン産生能自体を改善するための細胞移植治療は、1980年代後半にスウェーデンでヒト中絶胎児の中脳組織を用いた移植が開始され、以来、主に欧米で約400件の手術が行われています。しかしながら、中絶胎児を治療に用いるという倫理的問題もあり、治療の主流にはなっていません。
また、ES細胞に関しても、初期胚を破壊するという倫理的な問題があり、移植も自己以外の個体を移植する他家移植になるため免疫抑制薬が必要になります。
一方、iPS細胞ではES細胞のような倫理的問題はなく、移植も自己移植が可能です(ただし、ドパミン神経細胞を誘導するのにかなりの時間を要するという課題がある)。しかしながら、奇形腫などの腫瘍を形成する危険性についてはES細胞と変わりません。

パーキンソン病の病態は、ドパミン神経細胞の喪失により運動障害が生じるという比較的単純なものであり、細胞移植治療の対象になりやすいと考えられています。今までの、胎児の中脳組織を用いた移植やES細胞を用いての実績を考えると、細胞移植治療はパーキンソン病にとって、非常に期待のできる治療です。

ご参考】 

 

 

 

 

2030年までの目標
1. iPS細胞ストックを柱とした再生医療の普及
2. iPS細胞による個別化医薬の実現と難病の創薬
3. iPS細胞を利用した新たな生命科学と医療の開拓
4. 日本最高レベルの研究支援体制と研究環境の整備

 

脳内ドパミンのはたらき


市川忠先生

埼玉県総合リハビリテーションセンター神経内科 副センター長

要旨:『大規模疫学研究により、活動度が高い群でのパーキンソン病発症リスクが逓減することが明らかである。リハビリテーションや運動での介入でパーキンソン病患者の運動機能改善が報告されている。機序としては、BDNF(脳由来神経栄養因子:脳内の神経細胞の成長を促したり維持したりする作用をもつタンパク質)等の環境因子と神経可塑性(外界の刺激によって神経が機能的、構造的に変化する性質)の改善が示唆される。また、自己運動認知の改善を図るLSVT(発声発語明瞭度改善目的の訓練法)も広く実施されている。パーキンソン病リハビリテーションには、認知機能への影響、効果残存期間、有効な種目、強度、頻度等、解明すべき課題がある。』

はじめに
・パーキンソン病のリハビリは脳卒中などの疾患と異なり、リハビリの主な目標は症状進行を最小限にとどめることや、運動、日常生活動、認知機能などの長期予後を改善することになる。
ニューロリハビリテーションは、神経細胞や神経回路の可塑性に働きかけ、機能の維持・向上を図ろうとするものである。

ニューロリハビリテーションの効果
ニューロリハビリテーションを実践する手法としては。理学療法、作業療法、言語療法などの医学的リハビリに加え、負荷運動(ジムで行うトレーニング)、ダンスや太極拳なども含まれる。これらは、数ヵ月から1年程度の期間で運動機能を指標に効果判定が行われている。
・フィンランド移動クリック健康調査では、パーキンソン病未発症を対象とした6,715人、3年間の追跡で、BMIが低い群、レジャーでの活動性が高い群でパーキンソン病発症リスクが低かったとしている。
・スウェーデンでの43,368人を対象とした平均観察期間12年余りの大規模疫学調査で、家事・通勤での活動度、職業上必要な身体活動、レジャー等の活動が高い群で、パーキンソン病発症リスクが逓減していることが示されている。

ニューロリハビリテーションの機序
・機序を解明することは、パーキンソン病に対するニューロリハビリテーションを実施する根拠として重要である。機序を理解することで、リハビリテーションのより現実的な計画作成が可能となる。
・ニューロリハビリテーションの機序は現時点で、神経成長因子(神経細胞の分化・成長・増殖や大脳の神経細胞の活性化作用に関わるタンパク質)などの液性因子(液性の防御因子)と神経可塑性が挙げられる。
・液性因子は脳や神経の環境因子とも言え、神経変性から神経を保護する機能があると考えられている。
・アルツハイマー病では、血中の脳由来神経栄養因子(BDNF)値が低下しており、BDNF値の低下は海馬の萎縮と相関していることが示されている。Zoladzらは、パーキンソン病患者で8週間の定期的運動により、Unfied Parkinson's Disease Rating Scale(UPDRS:パーキンソン病患者の病態を把握するための評価尺度)が低下し、血中BDNFが上昇することを示した。
・可塑性は、神経回路のすべての部位で生じる可能性があるが、パーキンソン病では主に運動皮質、基底核での検討がなされている。
・パーキンソン病でのリハビリの重要な目標の1つに、歩行の改善がある。歩行のコントロールにはさまざまな神経回路が関与しており、可塑性の解析は困難である。主たる歩行中枢は、大脳基底核、脳幹、脊髄にあるとされ、脊髄の歩行中枢は歩行パターンの生成を行うcentral pattern generator(CPG)である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上の図は『リハビリmemo』さんの「CPGについて考えよう」から拝借しました。この記事にはCPGに関する説明が詳しくかつ分かりやすくされています。

運動に対する自己認知障害へのアプローチ
・パーキンソン病の運動障害の原因の1つには、運動の自己認知の障害があると言われている。
・近年、世界的に知られるようになったLee-Shilverman Voice Treatment(LSVT)は、身体運動や発声発語の自己運動認知を向上し、大きな運動や発語を目指すリハビリ手法である。

おわりに
『パーキンソン病における運動やリハビリテーションの効果についての報告が集積してきている。またその機序についても、動物実験による詳細な検討が進んでいる。これまでの知見から、運動・リハビリはBDNFなどの環境因子の改善や可塑性の向上などに貢献していると考えられる。パーキンソン病の運動・リハビリについては課題も多く残されている。認知機能への影響、効果の残存期間、より効果的な種目、強度、効果などを解明し、より有効で効果的な運動・リハビリを確立する必要がある。』

コメント(自分なりに整理してみました)

ニューロリハビリテーションは、神経細胞や神経回路の可塑性に働きかけ、機能の維持・向上を図ろうとするものです。具体的には理学療法、作業療法、言語療法などの医学的リハビリに加え、負荷運動(ジムで行うトレーニング)、ダンスや太極拳なども含まれるようです。
鍼灸では緊張した筋肉を緩めることが可能であり、マッサージについては触覚、固有覚への刺激を通じて脳幹の活性化が期待できます。ニューロリハビリテーションに対してプラスにはたらくことは間違いないと思います。

パーキンソン病-進化する診断と治療【診断】

『パーキンソン病-進化する診断と治療-』という特集は【座談会】で始まっています。【診断】は3番目であり、掲載されていた寄稿は次の3つです。

●「パーキンソン病の臨床診断の精度向上のためのSPECT検査」
●「Movement Disorder Societyの新たな診断基準」
●「日本におけるパーキンソン病リスクコホート研究:J-PPMI」
ブログでは、早期発見という大きな課題に関わる「日本におけるパーキンソン病リスクコホート研究:J-PPMIを取り上げました。なお、分からない用語が数多くあったため、それらの用語の後ろに( )で説明等を付け加えましたが、その結果少し見づらくなっていると思います。

【座談会】のテーマは「パーキンソン病病態の解明の進歩と疾患修飾療法」です。クリックして頂くと移動します。
出版:最新医学社

村田美穂先生

国立精神・神経医療センター病院 

病院長

要旨:『パーキンソン病の疾患修飾療法を見据えて、パーキンソン病等シヌクレイノパチー(αシヌクレインが脳内に蓄積する疾病)の強いリスク集団であるREM睡眠行動障害(RBD)患者を対象とした多施設共同前向きコホート研究(仮説として考えられる要因を持つ集団[曝露群]と持たない集団[非曝露群]を追跡し、両群の疾病の罹患率または死亡率を比較する方法)を実施中である。

ドパミントランスポーター(DAT[Dopamine transporter]:神経末端のシナプスにあるドパミントランスポーターは、役目を終えたドパミンを回収し再利用する。下図参照)SPECT(single photon emission computed tomography:コンピューター処理して断層画像を得る。この装置では形態だけでなく、血液量や代謝などの情報も得ることができる)、脳MRI、運動機能および心理機能の経年評価ととも血液・髄液等の採取を進め、長期経過観察により、運動症状発症前の細胞変性の経過とそのバイオマーカー(人の身体の状態を客観的に測定し評価するための指標。血液検査などの臨床検査値、画像診断データのほか、広義には体温や脈拍などのバイタルサインまでも含む)を明らかにする。』

 

信号Aを受けると(①)、神経終末内のドパミンは、②のように次々とシナプス間隙に放出され、次の神経終末上にあるドパミン受容体に鍵と鍵穴の関係で結合する(③)。これによって、新たな信号Bが生まれ、情報が伝達されて