動作法について

「動作法」は1960年代後半に、成瀬悟策先生によって提唱された一つの心理療法および心理学理論です。その後、自閉症・多動症児に効果があることが、筑波大学の今野義孝先生と大野清志先生によって確かめられました。
リハビリテーションが身体の可動域や筋肉の強さなどの生理的側面に重きを置いているのとは対象的に、心理的側面について焦点をあてたものとなっています。

成瀬悟策先生が名誉理事長。

『日本リハビリテイション心理学会はリハビリテイション心理学及びこれに基づく学術の発展をはかり、文化の向上に寄与するとともに、併せて会員相互の親睦をはかることを目的とした全国的な学術団体です。』

心理的側面とはどのようなものか、どのように行うのか等を知るため、「絵でわかる動作法」と「動作法ハンドブック」という2冊の本を読んでみました。

私自身、まだまだ消化しきれていない段階ではありますが、まずはこの2冊の内容から理解や認識すべきと思った事柄を列挙してみました。
※「動作法ハンドブック」と明記されているもの以外は、「絵でわかる動作法」からの引用です。


・動作という言葉は日常でも使いますが、動作法においては特別に定義された言葉です。

「身体運動」は文字どおり身体が動くことです。身体としての骨格や筋肉があり、それを動かす神経があり、その神経に命令を伝える大脳があります。こうした、生理的に身体が動くことを指して「身体運動」と呼んでいます。

一方、「動作」は、身体運動をコントロールしている主体の活動です。自分で、動かそうと「意図」して、意図どおりになるように「努力」するという心理的なプロセスがあって、その結果として身体運動が生起する時に「動作」といいます。 (動作=意図→努力→身体運動)


・動作の基本 「動作法ハンドブック」
 ・意図

  ・人が自分の体をどのように動かそうとするかという、動きについて計画する段階
 ・努力

  ・意図を実現するため、自分の体に注意を向け、意図した動きに必要な体の諸条件を整えた

   り、操作したりする感じも出さなければならない。それを出すための主体的な自己活動
 ・身体運動

  ・この段階で発生する心的なエネルギーが、生理学的な段階の活動を刺激して生起する。

 

・動作不自由 「動作法ハンドブック」
 ・脳性マヒの子供の不自由は、動作学的な研究の結果、脳の神経学的な障害に基づいた、中枢

  性の運動機能障害であるという理解の仕方では不十分であることが分かってきました。むし

  ろ、人が、自分の身体運動を操作する、主体的な自己の活動が十分に行われていないため

  に、発達の経過で、不自由な動かし方を学習したためであると考えた方が適切なのです。運

  動の発達が遅れて、Gパターンと呼ばれる、乳幼児の固い姿勢を自分の力で乗り越えられな

  いのも、これに関係があります。このように、人の主体的な活動である動作の問題が非常に

  大きいことから、脳性マによる不自由は、単なる肢体不自由と区別して、動作の不自由と

  言った方が適切です。同じような動作不自由をもっている者には、知恵遅れの子供、自閉や

  多動の子供などがいます。動作不自由は、自己活動が不十分なために発生します。


動作法が対象としているのは心理的な活動です。身体をどのように動かしたらよいかという「身体の動かし方」と、それをどのように実行するかという「意図」と「努力」の仕方が動作法の対象です。


・医療においては、脳性マヒの肢体不自由に対して、生理学の観点から運動機能の改善をはかるリハビリテーションが行われています。

動作法も、脳性マヒ児の身体の動きを改善するので、医学的なリハビリテーションと同様に身体を訓練するものと誤解される場合がみられます。実際に、動作法の様子を外から見ていると、腕や脚などの身体を動かしています。けれども、動作法では、身体がどれだけ曲がったり伸びたりしたかという、力の強さや動いた量を問題としているわけではありません。動作法が肢体不自由の子供だけでなく、自閉症や多動の子供、あるいは神経症などにも効果があるのは、人間の「意図」や「努力」という活動を対象として扱っているからなのです。


・人は、動作という心理的プロセスを様々な形で感じます。その中で、人が確かに自分で身体を動かしているという実感を「主動感」と呼んでいます。動作法は、この主動感を大切にしています。

一方、自分以外の力によって身体を動かされているという他動的な実感のことを「被動感」と呼びます。また、自分の身体が勝手に動いてしまうという実感のことを「自動感」といいます。


・「緊張」というのは、人が身体のある部分をある方向に動かしていった時に、生理学的に異常がなければ動く範囲にもかかわらず、抵抗感を感じて動かしにくくなることです。指導者が相手の身体をある方向に動かしていくと抵抗感を感じる時、その部位のその方向に緊張があるといいます。抵抗感が強いほど緊張も強いといいます。この緊張は、楽に身体を動かすことを妨げる要素となります。骨や筋肉に生理学的な変化がないのであれば、本人が何らかの形で力を入れているものと考えられます。そして、実際に動作法によって入れている力を緩める練習をすると、緊張が少なくなります。


・行動変容をねらう訓練のコツ 「動作法ハンドブック」
 ・安心感を与える手の当て方をする
  ・まず、子供は自分の体に触れられることに対して大きな不安を感じている。
   ・不安を感じない程度の力を使う。
   ・手のひら全体を使う感じ。
 ・体の感じを子供と共有する
  ・子供が感じているだろう感覚を、施術者も同じように感覚を感じるようにする。
 ・言葉かけを大切にする
  ・子供の気持ちをリラックスさせ、その気にさせる。
  ・施術者も言葉かけと施術を重ねることで良いリズムで楽しく取り組むことが大事です。
 ・主体的な取り組みを大切にする   
  ・子供は気が散って、集中できないことが多い。特自閉や多動の子供たちは、訓練を自分が

   主体的に行っているという実感を欠いています。したがって、子供が自分の体の感じに気

   づき、自分で体を緩めたり動かしているという感じをつかめるようにする主体的な動きを

   行わせる必要があります。
   ・まず、優しく、ゆっくりと何をどうしようとしているのかを部位に軽く触れながら
「こ

    ういう動きをするよ。」と説明する。
   ・どこがどう感じているかを聞きながらゆっくり進め、自分で緩む感じや動く感じを認知

    する。
   ・さらに、自分自身が主体的に動かす感じをつかめるように、動かしている方向、スピー

    ド、可動域などを細かく伝えながら、二人三脚で理解するという課題に取り組んでい

    く。


・動作法は「立位・歩行」、「書字」、「発声・発語」の3つの基本動作に分類しています。

・動作法は、特定の訓練姿勢で行います。これを課題動作(モデルパターン)といいます。その訓練姿勢で行うことは「緊張の緩め方」と「単位動作(身体の動かし方)」です。そして、動作の要素として、部位、方向。強さ(速さ)があげられます。

・課題動作(モデルパターン)
 1.立位・歩行動作 
   ・あぐら座動作 
   ・膝立ち動作(片膝立ち動作)
   ・立位動作
   ・歩行動作
 2.書字動作
   ・腕動作(腕上げ動作と肘曲げ動作)
   ・手動作(手のひらと指の動作)
   ・作業動作(字を書く、道具を使う動作)
 3.発声・発語動作
   ・呼吸動作  
   ・口動作(あご動作、口唇動作、舌動作)
   ・発声動作
   ・食べる動作


補助はしっかり強く補助するところから、次第に弱く少なくして、自分でコントロールできるようにしていきます。そのためには、「はなすよ!はなすよ!」と声をかけて、相手が自分で努力する心構えをつくります。

 
訓練の終わり方では、「できた!」という形で終わることが大切です。そのためには、計画段階で、どの段階で、どの課題を最後に持ってくるか、それを何回やって終わるか考えておくことが必要です。「あと、もう1回」と欲を出すと、えてして最後の訓練がうまくいかなかったりするので、回数を決めてできたら終わりにすることが重要です。


・動作のコミュニケーション
 ・動作法は子供の「意図」や「努力」あるいは「身体の動かし方」という心理的活動を対象と

  しています。そこで指導者が子供に伝えていることは、身体を動かす「力」を加えていると

  いうよりも「情報」を伝えているのです。その意味で、動作法は子供と身体を間に挟んでコ

  ミュニケーションしているという側面を持っています


訓練に誘うにあたっては、指導者は穏やかな心でのぞみ、こどもの反応や感情を感じ取れることが大切です。そのためには、うまくやろう、早く訓練しようと気負わないことです。子供の動きや活動に沿いながらペースを合わせます。そして、子供が訓練に取り組めるタイミングを待つことが大切です。


・動作法の初心者は訓練姿勢を決めるところで苦労している。どんな訓練をするか、そのための訓練姿勢がどうかを、言葉だけでなく、指導者がその姿勢を実演してみせたりすることも大切。そこで子供が感じる困難点や感情を補助している指導者の身体を通して感じ取ることが必要です。そのためには、指導者自身が安定した姿勢を取り、無理なく安全に、子供の姿勢を援助できるようにしなければなりません。また、あせって訓練姿勢を取らず、子供のペースを確かめながら、訓練姿勢を少しずつ整える援助をしていきます。強い補助が必要な場合には、子供と指導者の身体をより近づけます。

付記

12月23日のブログ「発達障害」の中で、感覚統合療法の体験談として、『大丈夫! すくすくのびたよ自閉っ子』という本をご紹介していました。

下記は、感覚統合療法を分かりやすく説明されていた箇所です。また、実践内容については、目次の内容を一部抜粋させて頂きました。

脳への刺激
支援センターからいただいた個別支援計画を見ると、桃子の重点取り組み事項は、「前庭系・固有系をしっかり入れていく」となっている。何のことだかさっぱりわからない。

先生からのお話によると、桃子は、「感覚統合療法を必要とする子ども」なのだそうだ。感覚には、次の三つがあるらしい。
一つ目は、前庭覚である。これに何らかの問題があると、揺れ動く遊具や高いところを非常に怖がったり、誰かに動かされると恐れや不安、苦痛などを感じたりするようだ。いくら回転しても目が回らない、高いところや不安定なところを好む、などの特徴もあるらしい。公園の遊具なども三つ年下の妹は平気で登っているのに、桃子は怖がってできないものがある。桃子は怖がりだなあと思っていたが、原因は前庭覚なのか。また、桃子が椅子に持続して座っていられないのもこのためか。
二つ目は、固有覚である。これに問題があると、すぐ疲れてしまったり、力加減のコントロールが難しかったりするらしい。物をどのように操作してよいかわからず、衣服の着脱がうまくできないこともあるようだ。桃子が不器用なのは、この固有覚のせいなのか。
三つ目は、触覚である。べたべたした感覚が苦手だったり、手をつなぐ、抱きしめられたりするのが苦手だったり、裸足で園庭を歩けなかったりするらしい。散髪や爪きり、耳かきを極端に嫌がる子どももいるようである。以前、桃子はスライムが苦手で、触るのを嫌がっていたが、この触覚に問題があったせいか。そういえば、爪きりも苦手であった。
「もし、感覚統合がうまく働かないと、感覚が洪水のように入ってきたり、逆に必要な情報が入ってこなくなったりして、脳が混乱している状態になるのです」と、先生はおっしゃった。
我が家は旅行好きだ。旅行中、桃子は楽しそうにしているが、帰宅後、彼女は決まってパニックを起こす。これも、感覚統合と関係があるのだろうか。旅行中、いろいろなものを見聞きして、脳が混乱状態になっているのか。
桃子はパニックで済んでいるが、同じ障がいのお友だちの中には、旅行後や何か行事があるたびに、熱を出す、倒れる、など体を壊してしまうお子さんもいると聞く。
療育で桃子がしているのは、「感覚運動遊び」である。先ほどの前庭覚、固有覚、触覚を刺激する遊具で遊ぶのだ。ブランコのようなもの、はしご、ボールプールまどで、ただ楽しく遊んでいるだけのように見えるが、これが感覚統合療法らしい。脳へ刺激を与えているのだ。
桃子が感覚統合療法を始めて、もう二年以上たつ。結果が目に見えて出てきているのは、この本を読んでいただければよくわかっていただけると思う。


以下は目次からの抜粋になります
一人でできたほうがいいぞ 身辺自立へのスモールステップ
・ボタン編(2歳8か月~3歳9か月)
・服たたみ編(3歳0か月~5歳2か月)
・歯磨き編(0歳~4歳0か月)
・トイレ編(2歳8か月~4歳5か月)
子どもには、遊びだって大切!「遊べるようになる」までの道
・じゃんけん編(2歳11か月~5歳1か月)
・鉛筆・お絵描き編(2歳8か月~5歳2か月)
・三輪車編(2歳8か月~4歳4か月)
・ハサミ編(2歳8か月~4歳5か月)
きちんと食べよう!お食事タイムが楽しくなってきた
・偏食編(2歳10か月~4歳10か月)
・箸編(2歳8か月~4歳5か月)
・おやつ編(3歳4か月~3歳8か月)
友だちできるかな?(2歳11か月~5歳2か月)
パニック・こだわり これぞ自閉っ子!という場面で工夫したこと
・こだわり編
・パニック編
・クリスマスツリー大作戦(3歳2か月~4歳2か月)
・男性恐怖症(1歳~4歳10か月)
変化が苦手な自閉っ子 でも少しずつ世界を広げてみた
・病院編(3歳1か月~4歳9か月)
・クラス替え編(3歳0か月~4歳6か月)


「肉離れ予防に必要だったこと」

今回のブログは、この「月刊トレーニングジャーナル 2017 1 No.447」の特集の中から「肉離れ予防に必要だったこと -正確な把握と適切な対策、伝える努力」を取り上げています。

特集は全部で4つあり、他は「予防の考えを浸透・継続させる取り組み」、「予防できる環境を整えるために」、「育成時代のコンディショニング」になります。

「肉離れ予防に必要だったこと」を選択したのは、何といっても、私自身が散々肉離れとおつきあいしてきたという経緯があり、非常に興味深く、また多くのスポーツ関係者にとって役に立つものと考えたためです。記述は特に印象に残った部分を列挙する形式とさせて頂きました。
筆者は内藤重人氏、読売巨人軍二軍トレーニングコーチ兼医療コンディショニング副室長です。関係者を巻き込んだ、緻密な調査・分析に基づいた素晴らしい内容となっており、実際に肉離れによる戦線離脱者の激減に成功されています。


1.障害予防マニュアルの作成
 ・2015年シーズン、春季キャンプ中の2月16日から6月16日までの約4ヶ月間に、一軍選手9名(11

  件)、二軍選手3名(4件)の肉離れが発生し、これが戦力ダウンに結び付いた。
 ・現場、球団の上層部から、予防のための教科書になるようなマニュアル作成の依頼があった。
 ・春先のケガは野球に限らずどのスポーツにも起きる。原因がわかれば予防できると考えた。
 ・マニュアルを作成するにあたり、選手のコンディショニング及び障害予防に携わるスタッフであ

  るトレーニングコーチ、理学療法士、トレーナーがそれぞれどんな考えを持っているのかをヒア

  リングした。
 ・なぜ肉離れは起きたのか、なぜ野手なのか、なぜシーズン序盤なのかをキーワードに原因を探っ

  た。
 ・スポーツ医科学に関するさまざまな情報を集めるため、JISS(国立スポーツ科学センター)、病

  院、大学、さらに日本肩関節学会、JOSKAS(日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会)、日本整

  形外科スポーツ医学会、日本臨床スポーツ医学会などから、症例や論文など大変参考になる情報

  を頂いた。

このマニュアルは、ユニフォームのポケットに収まるサイズになっているそうです。(素晴らしい!)

2.肉離れとは何か
 ・マニュアル作成を始めてから月に数回「C(コンディショニング)会議」を開いて、球団フロン

  トを含む5~6名で昨年の肉離れ発生原因を検証した。
 ・実は、肉離れの定義が難しく、そのため治療や評価のノウハウが曖昧な状況だった。そして、定

  義を考える上で、肉離れのMRI画像から専門医は何を診るかということが参考になった。特に出

  血像が重要になるが、出血像の多少と重症軽症を安直に結びつけるべきでなく、出血像が少ない

  からといって安易に復帰させるべきではない。
 ・肉離れの定義は、二関節筋を中心とした羽状筋で、筋腱移行部に起こりやすい筋膜・腱膜の損傷

  であると考えている。
 ・肉離れの定義を限局して考えることにより、その対処法を明確にするという根本をおさえること

  が、予防に取り組むうえでも大事である。このことが今回一番の収穫だった。


3.野球の特性を踏まえて
 ・攻守交代は身体を冷やすことになる。肩については何度か送球して準備するが、下肢に対する準

  備は不足しがちであり、ケガをしやすい要素をもっている。
 ・今回の検証から、肉離れは複合的な問題で起き、何か単一の原因を突き止めるのは難しいという

  ことが分かった。
 ・下腿(腓腹筋、ヒラメ筋)の肉離れは加齢との相関が高いことが報告されている。
 ・ハムストリングスの肉離れに関して、走塁の局面ではファーストベースを駆け抜ける際に足を大

  きく伸ばし強く踏み込むので、股関節屈曲・膝伸展で体幹は回旋(股関節内旋)という肉離れが

  起きやすい状況になる。
 ・野球選手は疾走距離が長くても前傾姿勢のまま走ることが多いが、地面を押す局面(走り方)ば

  かりでスピードを上げようとすると、肉離れは起きやすい。投げる距離によって投げ方が変化す

  るのと同じように、走る距離によって走り方も変わることを理解する必要がある。投げる動作と

  同様に、走る動作も個々の走技術の特性を理解して、画一的でない指導が必要である。


4.トレーニング、食事改善による予防
 ・肉離れの件数は2015年の11例から、一軍では2例に、二軍では0になった。(目標は、マニュア

  ルの冒頭の「肉離れ ゼロへ」)
 ・トレーニングでは、スパイクでの全力疾走、方向を変えるアジリティ、ストレッチショートニン

  グサイクルで下腿部に刺激を入れるジャンプトレーニングという、全力疾走・アジリティ・ジャ

  ンプという3つの要素を取り入れた。実施はウォームアップ直後に入れた。
 ・食事改善では、電解質の確保のため水分補給はスポーツドリンク、カフェインを含む緑茶は避け

  る。体脂肪はリスクファクターになるため、キャンプ中の食事の献立はホテルと協力して考え

  る。また、寮や練習場などでの食事の献立も見直している。


5.ケガにつながるものは私生活まで網羅
 ・障害予防は、選手や医療スタッフを含め、現場にいるすべての人の仕事である。なぜなら、ケガ

  の原因は現場にいる人間しかわからないためである。
 ・試合時の気温・湿度・気候や練習量、また長距離移動した直後だったかなどの状況を見落とさな

  いことが重要である。
 ・選手の体調や日々変わるので、それを選手が自覚できるか。今の疲労や身体コンディションをど

  う考えるかが重要であり、マニュアルにはシーズン以外についても書かれており、ストレッチや

  トレーニング、食事、睡眠、入浴、メンタルなどすべて網羅している。
 ・ちょっとした不調なら自ら治す能力が人間にはあるが、煙草やアルコール、カフェイン、ファス

  トフード、不規則な生活は体調を崩す。選手自身の私生活が悪ければ成功にはつながらない。セ

  ルフコンディショニングが重要となる。

パーキンソン病のマネジメントと最新リハビリテーション

12月17日(土)埼玉県川越市のウエスタ川越で、順天堂大学浦安病院 林明人先生による講演会「パーキンソン病のマネジメントと最新リハビリテーション」に出席してきました。
副題は「自宅でできるリハビリ」となっています。林先生は音楽療法を推進されており、「パーキンソン病に効く音楽療法CDブック」の著者であります。

この本の前のものになりますが、「パーキンソン病に効くCDブック」を拝読しようと思っています。

お話のポイント
・リハビリと薬物治療は両輪である。
・薬物治療は病気が明らかになった時点で、主治医とよく話をして早期に開始することが望

 ましい。また、長期戦略を考慮した薬の工夫が大切である。
・リハビリは廃用を回避できる。
・リハビリは個々の状況を反映したリハビリプログラムにする。そして、
QOL(Quality of life: 生活

 の質)を向上させる。
・頑固な「首下がり現象」、「腰曲がり」、「斜め徴候」がある場合、リハビリを行いやす
くするた

 めに、局所麻酔のリドカイン注射を活用するという方法がある。
・「ブラッシュアップ入院」(リンク先ほぼ中央の「入院診療」の中に説明がでています)いう入院

 によるリハビリ習得のプログラムを利用する方法がある。
・リハビリでは運動が重要で、太極拳やダンスなども有効である。
・リハビリは本人のモチベーションが非常に大事である。
・リハビリには、「音(聴覚)」、「光(視覚)」、「運動(体性感覚)」などの外部刺激
を用いる

 方法がある。

 

パーキンソン病におけるリハビリ
パーキンソン病は2011年、薬物療法との併用で運動症状の改善効果および臨床的有用性が認められました。「パーキンソン病治療ガイドライン2011」に表記されているリハビリはグレードA、B、Cに分類されています。
・グレードA:行うよう強く勧められる

 ・運動療法が身体機能、健康関連QOL、筋力、バランス、歩行速度の改善に有効である

 ・外部刺激、特に聴覚刺激による歩行訓練で歩行は改善する
・グレードB:行うよう勧められる

 ・運動療法により転倒の頻度が減少する
・グレードC:行うことを考慮してもいいが、十分な科学的根拠がない

 ・音楽療法も試みるとよい

パーキンソン病の病態の確認
1.下右図:線条体の働きを調節している黒質の変性が起こり、ドパミンが減少すると、線条体は淡

  蒼球内節を抑制できなくなり、そのため必要以上に運動にブレーキをかけてしまいます。 

 画像出展:「病気がみえる 〈vol.7〉 脳・神経」(医療情報科学研究所)

補足:黒質は中脳に存在していますが、発生学的・生理学的に大脳基底核の一部として捉えられています。

2.下右図:大脳皮質から大脳基底核への入力部は線条体で、大脳基底核からの出力部は淡蒼球内

  節・黒質網様部です。正常では、大脳基底核内の直接路と間接路のバランスによって、大脳皮質

  が適切に制御されていますが、パーキンソン病ではこのバランスがくずれ運動が過剰に抑制され

  ることになります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 画像出展:「病気がみえる 〈vol.7〉 脳・神経」(医療情報科学研究所)

外部刺激によるリハビリ 
・パーキンソン病では大脳基底核の機能不全に伴い、内発性随意運動(基底核-補足運動野を通る)

 が障害されますが、視覚や聴覚、体性感覚などの外部刺激に誘発される外発性随意運動(小脳-運

 動前野を通る)は大脳基底核ではなく視床核(外側膝状体、内側膝状体、後腹側核など)が関与す

 るためパーキンソン病の影響を受けません。そして、外部刺激へのアプローチがリハビリになると

 いうことです。
 ここで、私は疑問にぶつかりました。それは、外部刺激によって脳内で何が起こり、そして何が変

 わるのかという点です。

 ドパミンが補われるのか、あるいは不足しているドパミンを支援するような神経伝達物質が登場す

 るのか、ドパミン自体が活性化して通常以上の働きをするのか、または全く別の仕掛けが発動され

 るのか等々で頭が停滞してしまいました。
  そこで、夜な夜なネットを検索し、色々なサイトや資料にアクセスする中で、「こういうことなの

 かな?」という所にはたどり着きました。以下はその内容になりますが、話が飛躍している恐れが

 あります。ご注意ください。そしてご容赦ください。

 

ドパミン作動性ニューロン(ドパミン神経核)
A8細胞群〜A15細胞群の8つの集団に分類され、中脳と視床下部に存在しています。この中から
パーキンソン病を考えるうえで関連性の高い細胞群について検討します。

A9細胞群:黒質緻密部から線条体に投射されます。パーキンソン病はこの黒質-線条体系が障害す

 ることにより起きます。
A10細胞群:中脳の腹側被蓋野から側坐核、前頭眼窩野、前帯状回、扁桃体、海馬、前頭前野へ投

 射されます。

 下方にPDF資料を添付しています。これは、早稲田大学高等研究所紀要 第2号、「行動・学習・疾

 患の神経基盤とドパミンの役割」と題するもで、研究所の枝川義邦先生と渡邉丈夫先生が書かれ

 ました。この中で、『リハリは「報酬の獲得を伴わない目標志向行動」と定義され、「明確な目

 標がない行動」比べ、線体、 前頭眼窩野、島皮質、前頭前野、前帯状回の活動を引き起こすこ

 とが判明した。』とのことを発表されています。

 従いまして、目標をもったリハビリを行うことはドパミン作動性ニューロンを活性化する働きがあ

 るものと考えられます。 
A11細胞群:間脳後部から視床下部、脊髄側角に投射されます。
A13細胞群A14細胞群:不確帯は視床下部に投射されます。

 

体性感覚、聴覚、視覚に対する運動療法や音楽療法などの外部刺激を受け入れ、一方で高い目標に向かってリハビリに励む時、A10・A11・A13・A14の各ドパミン作動性ニューロンは活性化され、随意運動に働くブレーキの強さが軽減されて、動きがスムーズになるのではないかと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図は脊髄から間脳(視床+視床下部)を横から見たもので、緑色がドパミン神経核であり、中脳と間脳に存在しているのが分かります。

画像出展:管理薬剤師.com(http://kanri.nkdesk.com/hifuka/sinkei28.php)

視床の核群です。体性感覚の中継核は外側にある「VPM(後内側腹側核)」と「VPL(後外側腹側核)」です。先端に突き出た「MG(内側膝状体)」は聴覚の中継核で、「LG(外側膝状体)」は視覚の中継核になります。

画像出展:「人体の正常構造と機能」(日本医事新報)

画像出展:「人体の正常構造と機能」(日本医事新報)

ダウンロード
「行動・学習・疾患の神経基盤とドパミンの役割」
ドパミン.pdf
PDFファイル 659.3 KB

まとめ
1.運動療法、音楽療法などの外部刺激(体性感覚、視覚、聴覚)によるリハビリでは大脳基底核で

  はなく、視床核が関与します。
2.視床核にはドパミン作動性ニューロン(ドパミン神経核)の細胞群があり、ドパミンを視床下部

  に投射する細胞群があります。
3.中脳の腹側被蓋野にもドパミン作動性ニューロン(ドパミン神経核)の細胞群があり、動機づけ

  や報酬系として機能します。
4.上記3点から、常に目標をもって、楽しく、さらに音楽等の五感に働きかける刺激を加えた運動

  療法は、優れたリハビリのプログラムです。

付記1

「やさしいパーキンソン病の自己管理 改訂版」(医薬ジャーナル)2012年5月(村田美穂先生)の中から、推奨される有酸素運動と状態ごとの運動メニュー例をご紹介させて頂きます。

付記2

水嶋クリニック 水嶋丈雄先生の「パーキンソン病に対する薬物治療と鍼灸治療併用療法についての治療成績」をご紹介させて頂きます。

なお、最後のページの「考察」のところに、ドパミンと鍼灸との関係性について、以下のように説明されています。

『我々の研究ではパーキンソン病の患者群で随時血清ドパミンを調査してみると、ただし脳内ドパミンではないので参考値であるが、薬物治療を行っていない症例で鍼灸治療のみ行った4症例(平均年齢52.4歳)について治療前5pg/mL以下であった血清ドパミン値が鍼灸治療後3か月後に8.4±1.4pg/mLに上昇していた。これらは鍼灸治療の脳内神経保護作用を推察させる。

ダウンロード
「パーキンソン病に対する薬物治療と鍼灸治療併用療法についての治療成績」
鍼灸療法併用療法.pdf
PDFファイル 283.6 KB

発達障害について

小児障害マッサージは当院ではなく、地元のプラナ治療院が「訪問鍼灸・マッサージ」で展開しているサービスで、私は週2回、こちらの治療院で仕事をしています。

そして、小児障害マッサージに関しては、セラピストとしての講習を受けている段階です。

 

ところで、今まで「発達障害」というものについては無知に等しい状態でした。発達障害は症状によって分類されていますが、運動や動きに関するものもあり、小児障害マッサージの対象です。

先週、さいたま市内で発達障害のデイサポートを行っている施設に見学に行ってきたのですが、その時にいたのは、年齢は10歳前後が多く、障害が軽度な子供たちでした。これから、この子供たちに接していくためは、まずは発達障害についての基礎知識が必須であると認識し、ネットを検索したり、中古本を買ったり、図書館から本を借りたりと突貫工事をスタートさせました。

左をクリックすると、「ちょっと気になる子(発達障害)を理解するために」という資料をダウンロードできるページが表示されます。

 

 

『アスペ・エルデの会は、発達障害をもつ子どもたちの支援の場、自助会、専門家養成、発達支援についての啓発、発信点、研究機関を統合的に目指していく「生涯発達援助システム」です。』

最初に手にした本は、発達障害について多くの著書を出されている、杉山登志郎先生の「発達障害の子どもたち」でした。ブログの前半は、ほとんどこの本からの引用になっています。

この本は、冒頭に「世間に広がる誤解」という読者への投げかけで始まっているのですが、いかに何も知らないかということを痛感しました。
『以下に挙げたのは、発達障害に関して特に学校進学をひかえた子どもを抱えるご家族から聞くことが多い意見である。読者のみなさんは、おのおのについての是非をどのように思われるだろうか。』
・発達障害は一生治らないし、治療方法はない
・発達障害児も普通の教育を受けるほうが幸福であり、また発達にも良い影響がある
・通常学級から特殊学級(特別支援教室)に変わることはできるが、その逆はできない
・養護学校(特別支援学校)に一度入れば、通常学校には戻れない
・通常学級の中で周りの子どもたちから助けられながら生活することは、本人にも良い影響がある
・発達障害児が不登校になったときは一般の不登校と同じに扱い登校刺激はしないほうが良い
・養護学校卒業というキャリアは、就労に際しては著しく不利に働く
・通常の高校や大学に進学ができれば成人後の社会生活はより良好になる
『次は、幼児期の発達障害のお子さんのご両親からしばしば伺う意見である。』
・発達障害は病気だから、医療機関に行かないと治療はできない
・病院に行き、言語療法、作業療法などを受けることは発達を非常に促進する
・なるべく早く集団に入れて普通の子どもに接するほうがよく発達する
・偏食で死ぬ人はいないから偏食は特に矯正をしなくて良い
・幼児期から子どもの自主性を重んじることが子どもの発達をより促進する
『これらはすべて、私から見たときに誤った見解か、あるいは条件付きでのみ正しい見解であって一般的にはとても正しいとはいえない。おのおのについて、なぜこれが誤っているのか、と驚かれたとしたら、そして発達障害と診断を受けたお子さんに関わっているとしたら、この本はあなたにとって読む価値のある本である。』

 

著者の杉山先生のご指摘の通り、理解不足は明白であり読み進むこととなりました。
以下、箇条書き形式になってしまいますが、目に止まった、特に重要と感じたことを書き出しています。一部、かなり専門的な内容になっています。

・人間の子どもは「生理的早産」原因は大きく進化した脳。これ以上大きくなると産道を傷つけ出産

 できない。これは、人間は他の動物に比べ、本来お腹にいるべき段階で出産せざるをえない事態に

 なっている。例えば、独歩まで出産から1年を要するような動物は人間だけである。という意味で

 す。
・子育ては集団よりも個人の方がよい。特に生後早期から数年において個別のそだちが必要であるこ

 とは、乳児院でそだった子どもたちが後年、心の発達の問題を抱えやすいことからも明らかであ

 る。
ゴールは「自立」である。自立の3つの目標
 1.自分で生活できる
 2.人に迷惑をかけない
 3.人の役に立つ
・人として生まれた子どもが、受精した瞬間から社会の中で生き、自立するまでの過程全体が「発

 達」である。
・発達の過程は、子どもが元々持っている力に対し、周囲が働きかけを行い、その両方が互いに働き

 かけ合って子どものそだちを作ることが知られている。発達を支えるものは子どもが持つ遺伝子と

 環境である。発達障害臨床の言葉に言い換えれば、生物学的な素因と環境因ということになる。
・環境の影響を受ける遺伝子:分子レベルの遺伝子研究が進展し、それによって遺伝子が体の青写真

 や設計図というよりも、料理のレシピのようなものであることが明らかになってきた。つまり、遺

 伝子に蓄えられた情報は、環境によって発現の仕方が異なることが示されたのである。遺伝情報の

 発現の過程は、遺伝子そのものであるDNAの情報が、メッセンジャーRNAによって転写され、タン

 パク質の合成が行われることによって生じる。この過程が実は問題で、ここで環境の影響を受け

 る。多くの状況依存的なスイッチが存在し、環境との相互作用の中で、合成されるタンパク質や酵

 素レベルで差異が生じることが徐々に明らかとなってきた。
・遺伝的素因の解明は、障害を決定づけるのではなく、高リスク児に対する早期療育の可能性を開く

 ものとなる。
・心因であることが最も明確な疾患である外傷後ストレス障害(PTSD。トラウマを負った後、数ヵ月

 経ても不眠やフラッシュバックなどの精神科的異常が生じるという病態)において、扁桃体や海馬

 という想起記憶の中枢と考えられている部位に萎縮や機能障害など、明確な器質的な脳の変化が認

 められることがまず明らかになった。しかしその後の研究によって、強いトラウマ反応を生じる個

 人はもともと扁桃体が小さいらしいということが明らかになった。
子どもは発達をしていく存在であり、発達障害の子どもたちも当然、日々発達していく。その過程

 で、凸凹や失調は全体としては改善していくのが普通である。むしろ、改善をしていかなければ何

 かおかしなことが起きたと考えるべきであり、二次的な問題の派生を疑う必要がある。
・子どもを正常か異常かという二群分けを行い、発達障害を持つ児童は異常と考えるのは今や完全な

 誤りである。発達障害とは、個別の配慮を必要とするか否かという判断において、個別の配慮をし

 た方がより良い発達が期待できることを意味しているのである。
・発達障害の定義:「発達障害とは、子どもの発達の途上において、なんらかの理由により、発達の

 特定の領域に、社会的な適応上の問題を引き起こす可能性がある凸凹を生じたもの」
・知的障害を示す児童の89%までがIQ50~69の範疇に入る軽症の知的障害者である。IQ50とは成人

 に達したときに知的能力は健常発達の9歳前後と同等である。
発達障害の概観
 ・認知の発達…精神遅滞
 ・学習能力の発達…学習障害
 ・言語能力の発達…発達性言語障害
 ・社会性の発達…広汎用性発達障害(自閉症スペクトラム)
 ・運動の発達…筋ジスなどの筋肉病、脳性麻痺など
 ・手先の細かな動きの発達…発達性協調運動障害
 ・注意力、行動コントロールの発達…注意欠陥性障害(ADHD)
・境界知能はIQ70~IQ84前後
・自閉症の3つの症状
 ・社会性の障害…人と人との基本的なつながりに生まれつきの苦手さがあるということ。
 ・コミュニケーションの障害…オウム返しが長く続く。疑問文によって要求を表す。
 ・想像力の障害とそれに基づく行動の障害(こだわり行動)…見立て遊びは極めて苦手である。

  一方、こだわり行動は顕著で中には800以上のこだわり行動をもった障害児もいた。自己刺激

  に没頭する理由は「まわり中が一定のリズムで動いていると幸福感がある」。
 ・上記の3項目以外で重要なものに、知覚過敏性の問題がある。
・最重度の知的障害を持つものから、まったくの正常知能のものまでいる。
 ・高機能広汎性発達障害とは、知的障害をもたない自閉症のことである。
生まれつきの障害であり、統合失調症などとは決定的に違う。つまりその世界に生きている者に

 とって、その世界は奇異でも何でもなく、ごくごく当たり前なのである。
・自閉症は語ることは困難であるが、書かせるとより容易になる。
「なぜ人を避けてしまうのか?」→「人に近寄られるのは好きではなかった。…「触られるなど

  論外で、触られるとどんな触られ方であれ痛いし、とても恐かった」 ドナ・ウィリアムズ
「なぜ目を合わさず目をそらしてしまうのか?」→「人の目を見ると話が解らなくなってしま

  う。…「自分は45歳を過ぎて目がものを言うことを学んだ」 テンプル・グランディン
「なぜくるくる回ったり、ぴょんぴょん跳ねたり自己刺激に没頭するのか?」→「まわり中が一

  定のリズムで動いていると幸福感がある」ドナ・ウィリアムズ 「砂の一粒一粒が見飽きず面白

  い」テンプル・グランディン
「なぜコミュニケーションがとれず、言葉があるものでも会話が苦手なのか?」→「一度に一つ

  のことしかできないので、自分の語ったことすら自分に向かってもう一度言い直さなくては理解

  ができない。」 ドナ・ウィリアムズ
・自閉症の精神病理の基本は、対話の際に雑多な情報の中から目の前の人間が出す情報に自動的に

 注意が絞り込まれる機能がきちんと働かないこと、一度に処理できる情報が非常に限られている

 ことの二点である。これを認知の特徴という点で説明すると次の3つになる。
 ・情報の中の雑音の除去ができないこと。
 ・一般化や概念化という作業ができないこと
 ・認知対象との間に、事物、表象を問わず、認知における心理的距離が持てないこと。
・自閉症の幼児は、対人的な情報への選択的注意という機能が十分に働いていない。その結果、お母

 さんの出す情報も、機械から出る雑音も同じように流れ込んでしまう。いわば情報の洪水の中で立

 ち往生している状態である。テンプル・グランディンは、自分の幼児期の耳は調整の効かないマイ

 クロフォンのようだったと述べている。
不安定で、怖い世界から自分を守るために、自閉症の幼児がとる戦略は、自分で、一定の安定した

 刺激を作り出して感覚遮断を行うという方策である。幼児期の自閉症でよく見られる自己刺激への

 没頭に他ならない。一定のリズムでぴょんぴょんしたり、目の前で手のひらをひらひらさせたりし

 て、彼らは言わば押し寄せる情報へのバリアーを作り出しているのである。
・現在と過去とのモザイクこそが自閉症体験世界の特徴の一つである。
・広汎性発達障害の罹病率は2.1%である。(2007年)
・大まかで曖昧な認知がとても苦手である。
筆者は対人関係で自閉症を孤立型、受動型、積極奇異型の3つに分けている。
 ・孤立型…人との関わりを避けてしまうタイプ。知覚過敏が強く一般的に重度の知覚的障害を伴っ

      ている。
 ・受動型…受身であれば人と関わることが出来るタイプで、知的障害を持たないものもいる。
 ・積極奇異型…人に積極的に、しかし奇異なやり方で接するタイプ。知的障害は軽いものが多い

  が、マイペースで、基盤に注意の障害を持っていて、多動であることが大きな特徴である。
・特に孤立型と積極奇異型は、知覚過敏性などの問題に妨げられて愛着の形成が著しく遅れる。本格

 的な愛着が小学校に入ってからという児童も少なくない。したがって、小学校年代において、きち

 んと子どもの甘えを両親に受け入れてもらうことがとても大事な課題となる。
一般的に4歳前後までの幼児期が最も大変で、5歳ごろにコミュニケーションが目覚しく伸びる時期

 がある。また、10歳~12歳の小学校高学年はさらによく伸びる時期である。
青年期も5歳と小学校高学年に次いで、よく発達する時期となることが多い。
・手を握りながら話かければ、握られた手の知覚入力だけであふれてしまい、言われたことは全く入

 らなくなる。言う時は言うだけ、見せる時は見せるだけ、触れるときは触れるだけにする。
・何度も体験したからといって徐々に慣れてくるということが期待できないところがある。
・一般化ができないこともあって、変化に対しては常に強い抵抗が生じる。
・高機能広汎性発達障害(高機能自閉症)とアスペルガー症候群の間に明確な違いは認められない。

 病名にとらわれず、高機能広汎性発達障害と考えるようになった。
・現在では脳科学の進展によって、注意欠陥性障害(ADHD)の症状の背後にはドーパミン系および

 ノルアドレナリン系神経機能の失調があることが明らかになっている。また、物事の予定や予測的

 な行動を組み立てる能力である、実行機能と呼ばれる大脳前頭葉の働きの一部に、弱いところがあ

 ることも示された。
・学習障害
 ・知的な能力に比して読字、書字、計算など、学習の特定の領域に限定した学力の極端な問題を抱

  える児童。
 ・純粋な学習障害は少なく、高機能広汎性発達障害やADHDなど、他の発達障害に併発して見られ

  るものが多い。
 ・学習障害への対応は、特別支援教育である。障害のある脳の領域に繋がる領域を賦活し、バイパ

  スを作る作業である。OT、PTの考え方が非常に有用である。
・児童精神科は膨大な新患待機リストを持っている。あいち小児保健医療総合センター心療科の発達

 外来は3年。

後半は「続 自閉っ子、こういう風にできてます!」(花風社)から、知ることができた事を列挙しています。この本は作家で自閉症の藤家寛子氏と、翻訳家で同じく自閉症のニキリンコ氏に、長崎大学医学部付属病院等で臨床に携わり、その一方で、研究者として、そしてアスペルガーの息子を持つ父親でもある岩永竜一郎先生の3人を中心に、会話形式で書かれています。

・現在の感覚統合理論では、感覚統合障害は大きく二つの障害、すなわち「行為機能の障害」と「

 覚調整障害」に分けられます。

 行為機能の障害は、触覚、固有受容感覚(筋肉にある受容器で感じる身体の位置や動きの感覚)、

 前庭感覚(耳の奥の三半規管や耳石器などで感じる回転やスピード、傾きの感覚)などの感覚情報

 の処理過程に問題があり、それによって身体の位置や動きがわかりづらいなどの問題が生じ、不器

 用さや姿勢運動の問題など運動行為面に困難が出る障害です。


・自閉症の人を定型発達の人の認識の違いは、セントラルコヘレンスの機能に起因するとセントラル

 コヘレンスとはウタ・フリス博士によると「様々な情報を統合して、脈絡の中で高次の意味を構築

 する傾向」とされています。つまり、細部より全体をとらえることが優先される思考傾向です。鮮

 明な写真の表情の読み取りには定型発達の人とアスペルガー症候群の人の間で差が見られなかった

 のに、ぼかした写真になるとアスペルガー症候群の人のほうが表情の読み取りができにくかったこ

 とがわかっています。これからわかるように、定型発達者は細かいところはあまり気にせずに、

 ざっととらえるんですね。だから、多少細かいところが違っていても同じ仲間だと思ってしまいま

 す。一方、自閉症の人はざっととらえようとせずに細部を見てしまうから顔の細部が見えなくなる

 とわからなくなるのでしょう。このような傾向があるから、自閉症の人は耳の形が違う犬同士、色

 が違う犬同士を同じ仲間であると思えないことがあるのかもしれません。


・後天的に「労働に耐えうる体力」を養うことができるかどうか:体力には大きく分けて、「行動体

 力」と「防衛体力」があります。「行動体力」とは体を動かしたり行動を起こすために必要な体力

 です。筋力、バランス機能、巧緻性、柔軟性、持久性などがそれにあたります。一方、「防衛体

 力」というものは様々なストレスに耐え、体を守るための体力です。詳しく言うと、暑さや寒さな

 どの物理的ストレス、スモッグなどの科学的ストレス、細菌・ウィルス・睡眠不足などの生物的ス

 トレス、恐怖・不安などの精神的ストレスに耐える時に発揮される体力です。一人の中でも当然、

 行動体力と防衛体力の格差はあります。そして、この二つの体力は、発熱などで体調が良くなると

 二つの体力は向上します。なお、体調と体力は表裏一体ですので、防衛体力が上がれば体調も良く

 なるとも言えます。

 

自閉症の人はセロトニンなどの神経伝達物質の働きがうまくいっていないことが指摘されています

 が、そうした行動に必要な伝達物質が自閉症の人にもともと少ないと想定すれば、ストレス下で集

 中してがんばると定型発達者よりも早く疲れてしまうことになります。


・姿勢の崩れは感覚と深く関わっている:怠けではなく、脳の機能の違いによって姿勢が崩れやすく

 なること、身体の感覚が上手くつかめないために姿勢コントロールが難しくなることは、多くの人

 には予想できないことです。定型発達の人は姿勢の維持を無意識のうちにやっているのですが、自

 閉症の人は意識的にやらなければならないことがありますので、身体に集中して目の前の課題への

 集中ができなくなる可能性があります。


・成人期には、体力の向上を目指すことも重要ですが、その人が持っている体力で生活や仕事をして

 いく方法を身につけてもらうことも必要だと思います。体力が低い人でも、気分が落ち着いて体調

 が整っているときは活動できることが多いと思います。感覚過敏は気分が不安定だと強くなります

 から。気持ちが安定していることで感覚過敏が緩和されているでしょうし、その結果余力が増えて

 エネルギー源が大きくなっているでしょう。抑うつ状態になると身体の動きが緩慢になったり、自

 発的に何かやろうという気持ちが起こりにくくなりますが、気分が安定していると生活のエネル

 ギーも出てきます。気分の安定が栄養摂取の良さにつながり、脳の中の伝達物質のバランスもよく

 なるでしょう。つまり、気分の安定が防衛体力を整えたり、高めたりする一つの要因となると思い

 ます。そして、それは行動体力にも影響することになるでしょう。


疲れが自分でわからないことを理解しておく:生活に支障が出るほど調子を崩すのは、不安や気分

 の落ち込みがあった時や、がんばりすぎたり、はしゃぎすぎたりして、生活リズムに乱れが生じた

 時などが多いです。そのため、まず心理的ストレスがかかった時にそれを解消する手段を持つこと

 が必要です。具体的に言うと、自閉症の特性をわかっている相談相手を身近に見つけて話をよく聞

 いてもらうことなどが大切ですね。自閉症の方の体調管理に際しては、「自分で自分の疲れがわか

 らない」というのが大きな問題になってきます。だからこそ、規則正しい生活習慣を心がけ、自分

 の身体の感覚を頼りに疲れを判断しないようにすること。疲れていないと思っても決まった時間に

 休んで、一定の睡眠・休息を取るようにすることが必要です。つまり、定型発達者のように自分の

 身体の感覚に基づいて寝る時間を決めたりせずに、体調が良さそうな時であっても、あらかじめ決

 めたスケジュールに従って休んだり寝たりすることが大切です。


・就労に対して:大人になってからの体調・体力を安定させるために早期からやっておくべきことが

 あると思います。それは、①二次障害を作らない(うつなどな体調にも影響します) ②早期から

 運動に関わる神経系の発達を促す訓練(例えば感覚統合療法)を受けておく ③日常生活における

 運動習慣を身につけておく ④体調を崩さない生活習慣を学んでおく 以上4つです。


・自分の身体図式がしっかりしていると、新しい空間に行っても自分の領域をすぐにつかめるんで

 す。自分の身体をよくわかっているから、手が届く範囲や身体を動かしたときに窮屈さを感じない

 広さというものをすぐにつかめるんです。そして、自分の身体図式ができていて、相手を見たとき

 に身体のミラーイメージを持てる人は、相手の身体図式と領域もつかむことができます。定型発達

 の人の多くは自分の身体図式も、相手の身体図式もつかめますので、自分の領域、相手の領域も容

 易にわかり、近くに人がいても自分と他者の領域を無意識のうちに区別して適切な距離を取りなが

 ら作業をすることができるんですね。しかし、身体図式ができあがっていないと自分の領域も他人

 の領域もつかみにくくなるはずです。そして、身体図式の弱さを補うために一生懸命身の周りを見

 て、自分の領域を確かめることになるでしょう。これでは作業どころではないですよね。だから、

 身体図式の弱さを補うために、自分の領域の周りに線を引いてもらったり、パーティションで区切

 りを作ってもらうなどの支援があるといいんです。


・四輪の車に乗るより二輪の方が身体のイメージがわかると言っていた方がいます。バイクって足で

 押さえますよね。車の中に座るより、そのほうが身体の位置がつかみやすいそうです。

 それぞれ、強い感覚と弱い感覚があるんですね。その方は、固有受容覚は強いけど触角が弱いので

 しょう。固有受容覚が強い人は何かに押し付けていると身体の位置がつかみやすいんです。


・感覚統合障害の中でも、静止画像の真似が苦手な人と、動きを真似するのが苦手な方がいるんです

 ね。動きを真似するのが苦手な方は固有受容覚の認識が弱い方が多いです。自分の身体が動いてい

 る感じを連続的に脳でつかみにくいんですね。一方、静止画像の真似が苦手な人は触覚の認識が弱

 い人が多いです。


・息子が自閉症の特性を持つと確実に気づき始めたのは生後五ヶ月頃です。その時は、まず対人的注

 意が低いことが気になっていました。生後四ヶ月までは誰にでもよく笑い、自閉的な印象はなかっ

 たのですが。そして、寝返りの質が違うことも気になりました。筋緊張が低く、屈曲力が弱い寝返

 りをするので、筋肉の使い方の質的問題があると感じていました。そのような特性が生後五ヶ月頃

 から次々と見えるようになってきました。


・体育は他人との比較が入りますし、チームプレイで失敗すると責められることになりますので、自

 閉症の子どもがやる気を起こすはずはありません。ドラムのように個人プレイでできて、成功を自

 分なりに感じられるもののほうが良いと思います。私たちが行う作業療法では、有能感、自尊心を

 育てることを大切にします。それが次のチャレンジを促し、障害によって滞っている発達の部分を

 よりよい方向に導くからです。これは自閉症の子どもの療育の中でも、常に意識していることで

 す。

 

・ボディイメージを育てるためには触覚と固有受容覚が特に重要になります。いわばボディイメージ

 を育てる栄養ですね。もちろん、マッサージなどで他動的に触覚や固有受容覚を刺激することは効

 果的かもしれません。ただし、ボディイメージを高めるためには、能動的体験の中で触覚、固有受

 容覚を体験することも必要です。お風呂の中では、お湯の抵抗がありますので、身体を動かすと触

 覚と固有受容覚のフィードバックがあるために身体を意識しやすくなります。同じ理由からスイミ

 ングもいいと思います。アスレチック遊具とかクライミングウォールにチャレンジすることもお勧

 めです。要は能動的に触覚刺激や固有受容刺激を感じて動きを作り出すことが大切なんです。しか

 も、いつもやらないような未経験の運動をやったほうがボディイメージは育ちやすいと思います。


・自閉症の子どもは集団で行う球技が嫌いだと思われていますが、やり方次第では好きになるんです

 よ。好きになってもらうためのポイントを挙げておきましょう。
 ・不器用でも失敗が起こりにくいように工夫する。
 ・不器用でも不利にならないルールを作る。
 ・必ず全員に出番があり、皆で活躍できるような工夫をする。
 ・必要に応じて大人が参加し、ゲームが円滑に進むように調整する。
 ・暴力を振るわない。
 ・暴言を吐かない。
 ・審判の判定にクレームをつけない(「ゲーム中審判は神様です」と前置きしてから始めます)。


・自閉っ子が大好きなる球技
 ・ポートボール(自閉っ子ルール)
 ・サッカー(自閉っ子ルール)
 ・キックベースボール


五感の他にも人間の行動や情緒に大きな影響を及ぼす感覚が二つあります。それが固有受容覚と前

 庭覚ですね。私やニキさんが、コタツに入ると脚がなくなるのは固有受容覚のつかみ方が弱く

 て、自分の身体が伝えてくる情報を受け取っていないからでした。そして藤家さんやニキさんは

 「自分の身体がどこからどこまでかわからない」とか「コタツに入ると脚がなくなる」とか私たち

 には実感のできない身体感覚を持っています。それは、ボディイメージが弱いからです。そし

 て、ボディイメージが不確かなのは、身体からの情報が脳にきちんと伝わっていないからです。

 ボディイメージが弱いと、いろいろ困ったことが起こりますね。まず、不器用という問題が起こり

 がちです。そしてこの問題に、感覚統合療法は効果があります。その体験談が、『大丈夫! すく

 すくのびたよ自閉っ子』という本に載っています。


・マッサージ:ブラシや素手でマッサージして、だんだんと感覚を受け入れられるようにします。治

 療者との関係を作ってから、「こうやって触れられれば、こういう感覚が入ってくるのだ」と覚え

 ていってもらいます。身体の中では背中が受け入れやすい場所ですので、そこからマッサージを始

 めます。腹部、首、顔などは過敏反応が出やすいので、最初はやりません。マッサージはまず受け

 入れられる部分だけ行ったほうが良いでしょう。

下の図は体を使って遊ぶ時や運動するときに必要とする感覚、固有受容角覚と前庭覚です。これに触覚を加えた3つの感覚が、感覚統合訓練の柱になっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「続 自閉っ子、こういう風にできてます!」(花風社)                               

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「続 自閉っ子、こういう風にできてます!」(花風社)                               

最後に、「自分の体取り戻しマニュアル」をご紹介したいと思います。

これは著者の一人で作家の藤家寛子先生が「体に力が入らないときや身体の実体が感覚できなくなったときに使っているものです。なお、前作『自閉っ子、こういう風にできてます!』に掲載されていたものです。

小児障害マッサージ

12月4日の日曜日、小児障害マッサージの講習(今回は座学)を受講してきました。
疾患は脳性麻痺(CP)、脳室周囲白質軟化症(PVL)、筋ジストロフィー(CMD)などが多く、それらの病気を理解することが第一ですが、施術にあたっては脱臼・亜脱臼の既往とてんかんの有無を最初に確認することが必須となります。また、施術は安全性と効果の両面から適切な手技の習得が求められます。
講習受講後、調べて理解しなければならないと感じたものが、「ボトックス注射(ボツリヌス治療)」です。そこで、ブログは前半にボトックス注射の基礎知識、後半に一般的なマッサージ・指圧の効果についてご紹介したいと思います。

 

ボトックス注射(ボツリヌス治療)
ボトックスとは、ボツリヌス菌のもつ毒素を滅菌された生理食塩水で薄めた薬剤のことです。
ボツリヌス菌は食中毒を起こす菌で、極めて強力な神経毒により胃腸症状に続いて、筋肉の麻痺や呼吸困難などを引き起こします。
これを知ると、恐ろしいものと感じると思いますが、ボトックスは毒素ではなくボツリヌス菌が作り出した「ボツリヌストキシン」という成分で製造されており、問題の毒素は取り除かれています。
なお、このボツリヌストキシンには、筋肉に送られる命令の伝達を弱め、筋肉の収縮を抑える効果があります。つまり、この特性を利用して硬くなった筋肉を弛緩させるわけです。
1970年代後半、アメリカの眼科医が斜視の治療でボツリヌストキシンを臨床で使用したのが最初です。日本では1996年に眼瞼攣縮が認可されて以来、2000年に片側顔面攣縮、2001年に攣縮性斜頸、2009年に小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足、さらに2010年に上肢痙縮・下肢痙縮、2012年に腋窩多汗症へと徐々にその適応症が拡大されてきました。

懸念される副作用の多くは治療対象筋肉の過度な脱力というものですが、薬の量を調整することで回避が可能です。また、重症障害児の場合には、嚥下や呼吸が弱くなるという副作用があるとされていますので十分な注意が必要になります。
治療間隔は5~6ヶ月が目安となり、これに適した投与量を注射することになりますが、量の調整は段階的に増量しながら、最終的に適量を決定します。また、毎日のリハビリテーションが治療効果の持続にとって重要となります。

施術者としては、筋肉は筋膜や腱膜などによって周辺の筋と連結しているため、治療対象周辺の筋肉の状態や、各パート(左右の上肢、下肢などの単位)および全身レベルの筋肉のバランスや状態に注意を払うことが大切だと思います。

 

マッサージ・指圧の現代医学的効果
小児障害マッサージも土台となっているのは一般的なマッサージの基本と同じです。

マッサージには気持ちよいという慰安の側面もありますが、効果のメカニズムは科学的な説明が可能であり、医療においてはそのメカニズムを理解し、患者さまの状態に応じて、適切に施術することが重要になります。
なお、「鍼通電療法」でご紹介した芹澤勝助先生が、著書「マッサージ・指圧法の実際」(創元社)の中で、詳細に説明されていますので、その個所を引用させて頂きます(2箇所、中略あり)。


『マッサージの効果も、指圧の効果も、ともに皮膚の上から加える [触圧](ふれる、おす) 作用で、直接には循環系に働き、間接には神経反射により神経、筋肉系に影響を与える施術である
ところで、触圧感覚とはどういう感覚なのかというと、この感覚は、皮膚や筋膜、筋肉、腱、関節などに機械的なエネルギーをあたえたとき、つまり、さわったり、なでたり、こすったり、もんだり、おしたり、ふるわせたり、たたいたり、ひっぱったりしたときに起こる感覚のすべてをいうのであり、このうち筋肉や筋膜、腱や関節に起こる触圧感覚を深部感覚といっている。 -中略-
いま皮膚が、なでられ、おされ、ひっぱられると、この条件変化により、それぞれに対応する受容器が変形を起こし、受容器が興奮する。この興奮は受容器に入り込んでいる知覚神経線維により、脊髄神経節を介して脊髄に入る。 -中略-
要約すると、皮膚刺激→触圧→触圧の受容器→知覚神経→脊髄(上行する線維、下行する線維、自律神経「交感神経」に連絡する線維、脊髄のそれぞれの高さでの反射弓をつくる線維)→延髄→大脳(間脳の視床→皮質)を伝導路とすることになり、皮膚感覚のすべては、一応間脳の視床に集まり、大脳皮質に達するのである。
マッサージや指圧による治療効果として現れる生体反応の多くは、触圧による機械的な作用もさることながら、神経反射によって起こるものであろう。生体における一連の反射作用は、神経の末梢で起こる軸索反射と、求心性伝導路の脊髄レベルで起こる反射(脊髄反射)とがあり、さらにもっと高位の中枢(間脳の視床と、自律神経の高位中枢である視床下部との間に起こる)の複雑な関連機転によって起こるものとがある。特に中枢神経系の機能の主なものは反射機能であり、脳脊髄神経系の反射自律神経系の反射である。
 神経痛の「いたみ」や「しびれ」、運動神経系の痙攣などにマッサージや指圧が効く理由の主なものは、脳脊髄神経系の反射機転を介するものであろうし、循環系や広汎な内臓系のいろいろな症状や不定愁訴の症状群(たとえば頭痛、めまい、耳鳴り、不眠、肩こり、便秘など)に効く理由は自律神経反射が主役を演じているのであろう。しかし人間の体は有機統一体なのであるから、お互いに絡み合いの機転であろうが、その間には、おのずから主役的あるいは脇役的に働く機転があるはずである。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「あん摩マッサージ指圧理論」 (教科書執筆小委員会)

 これは自律神経支配図です。体表からの刺激は自律神経を通じて各臓器に働きかけます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

              画像出展:「経穴マップ」(医歯薬出版) 
 
下段はホルムクルスと呼ばれる絵で、体のどこを刺激するかによって、脳の体性感覚野にどうように投影されるかを表したものです。四肢末端と顔面(特に口唇)への刺激が体性感覚野の広い領域に影響を及ぼすことを示しています。これを見ると脳のリハビリとして、歩くこと、手を使って食べることが効果的であるということが納得できます。

筋膜について

『人間のカラダには、自ら守るための実にさまざまな機能がある。たとえば筋肉が切れないように筋紡錘が見張っていてくれたり、自由に活動できるように、筋膜が伸び縮みしてくれたり。何もなく生活できるのは、こんな安全装置のおかげなのだ。しかし、これらが過剰に働きだしたり、逆に機能不全に陥ると、安全は一気に危険へと変わっていってしまうのである。』

 

引用:「Tarzan」(マガジンハウス社)

筋膜は昨年9月に放送された、NHKの「ためしてガッテン」で注目度がアップしたように思います。腰痛・肩こりをトリガーポイントの視点から特集した雑誌「Tarzan」にあるように「筋膜が伸び縮みしてくれる」ことは健康な体の条件の一つです。
このブログでは、筋膜の構造および悪い状態とはどんなものかをご紹介します。また、「適応疾患」の内容と一部重複しますが、肩こり・首こりについて記述したいと思います。

筋膜の構造
筋膜はコラーゲン(膠原線維)とエラスチン(弾性線維)という2種類のタンパク質からなり、これらが縦横に織り込まれてガーゼのような膜を作っています。そして、これが何層にも重なることで筋膜に厚みと強さが生まれます。この2つのタンパク質は対照的で、コラーゲンは皮ベルトのように丈夫ですが伸縮性が4%と低く、一方、エラスチンは2~2.5倍に伸び縮む軟らかい性質をもっています。これらの異なる性質の線維を組み合わせることにより、伸び縮みを確保しつつ、丈夫なコラーゲンによって筋膜が広がりすぎて破れるということを防いでいます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「Tazan」(マガジンハウス社)

筋膜はボディスーツのように体全体を覆っていますが、1種類ではなく役割ごとに分かれています。皮膚に続く筋膜が浅筋膜でその下に深筋膜があります。さらに各筋肉を包んでいる筋外膜、その内側にあって筋線維を束ねている筋束を包む筋周膜、そして個々の筋線維もまた筋内膜と呼ばれる筋膜に包まれています。このように各筋膜により筋線維はバラバラになることはありません。 

皮膚に近く、体全体を包んでいる浅筋膜と深筋膜では、痛みが発生するとその痛みは離れた部位にも広がるという特性をもっています。


画像出展:「Tarzan」(マガジンハウス社)

皮膚に近い浅筋膜は脂肪組織と疎性結合組織という2つの組織から構成され、筋膜内に浅動脈・浅静脈・皮神経・リンパ管を持っており、体を守る重要な働きを担っています。

脂肪組織は断熱により熱の損失を防ぎ、また物理的な外傷から筋を保護しています。

疎性結合組織は半液状の基質が大部分を占め、その中にまばらな線維(膠原線維、弾性線維、細網線維)と比較的少数の細胞(膠原線維を産生する線維芽細胞、脂肪細胞、大食細胞、肥満細胞、形質細胞に加えて、しばしばリンパ球や好酸球など)を見ることができます。

浅筋膜の下にある深筋膜は不規則性結合組織で、筋あるいは筋群の表面を包む結合組織性の膜であり、状態は一様ではありません。深筋膜は筋をその位置に支持し、収縮を制限するため、線維の方向が筋線維に対し直角のものが多く、筋の起始あるいは停止となることもあります。

筋肉単体を包む筋上膜と筋線維束と呼ばれる束を束ねている筋周膜は、深筋膜と同じ不規則性結合組織ですが、1つ1つの筋線維を取り巻いている薄い膜である筋内膜は疎性結合組織になります。

注)引用:「国際筋膜研究会:筋膜・リンパ研究部門」http://ifri.blog34.fc2.com/category4-2.html

筋膜の障害
筋膜は運動不足や悪い姿勢を長期間続けること、あるいは強い負荷で反復動作を繰り返すことにより障害されます。これは細胞外基質の流動性が落ちてドロドロになり、ゼラチンのように固まり(これをゲル化といいます)、コラーゲンやエラスチンの新陳代謝を妨げることによって、筋膜の復元性が低下してしまうためです。復元性が下がると、細胞外基質の流動性はさらに低下し、コラーゲンに糖質がつくグリケーションという現象が発生します。ベタベタした糖質によってコラーゲンは絡み合い、エラスチンの復元性を邪魔します。

こうして筋膜にねじれや突っ張りが生じてくると、隣接する筋肉の動きが制限されて血液循環が悪くなり、ついには凝りや痛みとなって自覚されるようになります。
何故、血液循環の悪化によって痛みが伴うのかというと、血液の滞りによって酸欠になった組織の血流を回復させようと、循環の局所性調節が行われるのですが、そこに登場する化学物質の中に、発痛物質でもあるプロスタグランジンなどがあり、それらの発痛作用によって痛みが発生することになります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「細胞と組織の地図帳」(講談社)

この図は上から、表皮、真皮、皮下組織(浅筋膜)を表したものです。皮下組織(浅筋膜)には動脈、静脈、神経があります。右側に見えるファーター・パチニ小体は圧変化と振動を感知する感覚受容器です。

なお、この図では皮下組織(浅筋膜)と筋肉の間の動脈と静脈が通っている層が深筋膜になります。

肩こり・首こり
一般的に1本の腕の重さは体重の6.5%といわれていますので、体重60kgの人であれば、約4Kgということになります。例えば、パソコン作業などで腕を水平状態にしていると、重力が4kgに近い力で下から引っ張り続けているというイメージになります。
こうなると、肩周辺の筋肉は作業時間中、収縮した状態が続くことになり、やがて筋肉や筋膜は疲労し血行が悪くなります。さらに緊張状態やイライラ状態などの精神的ストレスが加わると、自律神経の中の交感神経が優位な状態になるため、血管は狭くなった状態が定常化します。こうして肩こりはつくられていきます。
一方、頭の重さは首を傾ける角度により負荷が増えていきます。これについての研究データによると、傾き0度のときは頭の重さとイコールで約5kgだそうです。これが15度傾けると12Kgに、傾き30度では18Kg、同じく45度で22Kg、そして60度になると27Kgまで増えるようです。このように、パソコンやスマホなどを長時間使い続けることは、首への負担も非常に大きく、首のこりとなって表れます。

毛細血管と循環調節

通常の血管の先には細い毛細血管がありますが、その毛細血管の直径は通常0.005~0.01mmとされ肉眼では見えません。また、毛細血管の全長は約10万kmと言われ全血管の約95%を占めています。

鍼灸治療の効果の1つに血液循環を良くするということがありますが、血液が毛細血管の中を進んでいけないと、臓器や組織に酸素などを十分に届けることはできません。
そこで、今回は毛細血管を中心に血液循環や血圧のしくみの理解を深め、より良い治療ノウハウにつなげたいと思います。

 

画像出展:「人体~神秘の巨大ネットワーク~」

出版:東京書籍

1.毛細血管の構造と機能

・毛細血管は内皮細胞とそれを取り囲む基底膜からできています。内腔の直径は動脈側で約0.005mm

 (5μm)、静脈側で約0.009mm(9μm)のため、赤血球(直径0.007.5mm、厚さ0.002mm)は毛

 細血管内を変形しながら通過していくという容易ではない環境にあります。
・毛細血管の内皮細胞は3種類あります。

 1つは連続型内皮細胞であり、脳や肺、筋肉にみられます。内皮細胞どうしが結合しています(タ

 イト結合)。

 2つめは非連続型内皮細胞といい内皮細胞どうしはつながっておらず、30~500nm(1nmは

 1/1000μm、1μmは1/1000mm。従って30nmは0.00003mmです)の隙間があり、ここからイオ

 ン、水、タンパク質、細胞が透過できます。

 3つめは内皮細胞自体が特殊に変化しているもので、内分泌腺、腎糸球体、小腸粘膜などにみられ

 る有窓型内皮細胞です。これは内皮細胞の一部が薄くなって直径20~100nmの小孔(窓)が多数あ

 いており、この孔を通って、血液と組織との間で物質交換が行われます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「生理学第2版」(東洋療法学校協会)

 

内腔の直径をmmにしてみると以下のようになり、太い大静脈は毛細血管の約3750倍にもなります。
大動脈:25mm
動脈:4mm
細動脈:0.03mm
毛細血管:0.008mm
細静脈:0.02mm
静脈:5mm
大静脈:30mm

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「人体の正常構造と機能」(日本医事新報社)

上段は細動脈で、中膜が平滑筋になっています。一方、下段左が連続型毛細血管ですが、左の方に前毛細血管括約筋が付いています。右は内皮細胞が特殊に変化した有窓型内皮細胞です。

 


画像出展:「細胞と組織の地図帳」(講談社)

 

右から細動脈、連続型毛細血管、有窓型毛細血管の全体イメージになります。 

続いて毛細血管の働きをご説明したいと思いますが、その前に大元ともいえる、血液循環と循環調節(血圧)について触れたいと思います。

 

血液循環
・体循環は酸素化した赤血球(ヘモグロビン)を末梢臓器に運び、その末梢臓器から二酸化炭素を回

 収します。
・肺循環は肺で回収した二酸化酸素を放出し、赤血球(ヘモグロビン)を再度、酸素化します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「人体の正常構造と機能」(日本医事新報社)

 

安静時には心臓は1分間に約5l(リットル)の血液を送り出しています。このうち約1500mlは肝臓へ、1200mlは腎臓に送られ、脳へは約750mlが送られます。血液量は一定ではなく、運動時には心拍数、心臓収縮力が増加し、骨格筋には通常の30倍もの血流が流れます。脳に関しても血流は一定ではなく、活動の盛んな部位により多くの血液が送り込まれます。このように血液量は組織の必要に応じて変化しますが、これらの変化は自律神経の活動組織代謝物によって制御されています。

 

2.循環調節
・全身循環は主として心臓と血管と血液量を調節することによって維持されます。また、調節には局

 所性、神経性、ホルモン性(液性)の3つの方法があります。毛細血管に直接作用する調節は局所

 性になります。
神経性調節:心臓と血管は自律神経によって調節されています。神経性の最大の特徴は秒単位で反

 応するところです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「生理学第2版」(東洋療法学校協会)

 

交感神経の血管収縮神経は安静時においても血管平滑筋に作用し、常時自発性に活動しています。これをトーヌスといいます。トーヌスは脳幹の自律神経中枢の支配を受けて微妙に変化し調節を行ないます。多くの血管は通常、トーヌス下では軽度の収縮状態にありますが、交感神経が活発になると血管は更に収縮し、その部分の血流は減少します。一方、交感神経の亢進活動が低下すると、血管は拡張し血流は増加します。

鍼灸治療の血行改善のしくみは、活性化した交感神経に働き、トーヌスを安定した状態にすることです

 

ホルモン性調節:ホルモン性の調節は分単位あるいは時間および日単位にわたって循環を調節しま

 す。これは血管の収縮状態や血流量を変えることにより行います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「人の正常構造と機能」(日本医事新報社)

 

血圧の調節は心臓以外に脳や腎臓も深く関係します。なお、図中の赤実線は交感神経で、脳と心臓を結ぶ青実線オレンジ実線は副交感神経です。また、各破線はホルモン性(液性)調節を表しています。

 

毛細血管の収縮と弛緩
・毛細血管には筋肉はありません。代わりに毛細血管の結合部に前毛細血管括約
筋と呼ばれる平滑筋

 があり、その開閉によって血流を調節します。これは組織が血流を保とうとする自己調節の機能で

 す。つまり、血流が減少すると組織の代謝産物が局所に蓄積し、それらの物質によって血管が拡張

 し血液が増加するというしくみです

画像出展:「人の正常構造と機能」(日本医事新報社)

局所性調節:例えば止血においては、傷害部位に血小板が凝集して血小板血栓を形成しますが、血
 小板は血管収縮作用をもつセロトニン等を含む顆粒を放出します。血管収縮作用をもつ物質として
 は他にエンドセリンがあります。
 一方、血管を拡張させる代謝産物には乳酸や二酸化炭素、アデノシン、ヒスタミンなどがありま
 す。

乳酸と疲労

400mを走った時に最後の直線は足がパンパンになって、ほとんど足を動かすことができない状態になります。そして、この原因は足に蓄積してしまった乳酸によるものであり、乳酸とは筋肉の疲労物質というのが今までの認識でした。
しかし、八田秀雄先生の著書により、乳酸を疲労物質としてみると、それはとうてい主役でも脇役でもなく、エキストラ程度でしかないということを知りました。「疲労」は健康にもスポーツにも重要な出来事であり、詳しく知りたいと思っています。

今回は、その切り口として乳酸を正しく理解したいと思います。なお、ブログの中身および添付された画像は八田先生の「乳酸」から引用させて頂いています。

乳酸とは
・牛乳が腐って酸っぱくなるときにできるのが乳酸です。

・乳酸は炭素と水素と酸素からできていて、肉やチーズや味噌などの発酵食品に含まれています。
・乳酸は赤血球や内臓の筋肉(平滑筋)などから作られています。
・乳酸は糖が分解される過程で作られ、最終的にエネルギー源として利用されます。

 

糖の分解量に対して、ミトコンドリアの処理量が間に合わない渋滞した時に、乳酸の生産量が増え蓄えられます。

 

乳酸ができる時にエネルギーが作られ(解糖系)、さらに本命のミトコンドリアでも乳酸は利用されエネルギーになります(酸化系)。

酸化系は解糖系の18倍のエネルギーが作られます。

・乳酸を作る菌が乳酸菌です。乳酸菌は腸の中で生きていて腸の働きを良くします。
・乳酸は運動後30分~1時間で元のレベルにまで戻りますから、運動数時間後以降の疲労には乳酸は

 関係していません
乳酸は運動後1時間すれば元のレベルに戻るので、運動翌日以降に起こる筋肉痛には無関係です

 

疲労と乳酸
・乳酸は非常に強度の高い運動では疲労の原因の1つになります。
・激しい運動の最中には乳酸以外に多くのことが原因となって疲労を起こしています。リン酸の蓄

 積カリウムが筋肉から漏れ出すこと筋グリコーゲン濃度の低下体温の上昇活性酸素の発

 生脱水症状脳の疲労等々です。

上記の項目にある「脳の疲労」について、八田先生は次のように説明されています。

 

『私たちが生きていけるのは、脳からさまざまな指令が出ているからです。ですから脳のことを考えずして疲労を考えることはできません。特に「疲労」というものは、筋の力が出ないといった生理学的なことだけでなく、だるいというような感覚も含んでいます。だるさという感覚は、脳が「こんな運動をしていると、もう体に悪影響が出るから止めなさい」といった指令が生み出したものだとも考えられます。例えば長時間運動していると血糖値が下がってきます。血糖は脳への主要なエネルギーですから、それがなくなってくると困るので、「こんな運動は止めろ」という指令がきつさやだるさになると考えられます。さらに脳と疲労との関係ではセロトニンという物質が注目されています。セロトニンは神経の伝達に関与し、これが脳に十分あるかないかが鬱状態に関係しているともいわれます。運動もこのセロトニンの脳内のレベルを大きく変化させてしまうような場合には、疲労感が生まれるということが考えられています。この他、運動で筋に傷が付いて、その炎症のためにできる物質が脳に届いて、疲労感を起こすといったことも考えられています。このように運動の疲労において、脳の影響は重要ですが、脳と疲労に関する研究はまだまだこれからといえます。』

 

付記:筋肉痛
運動で筋に傷が付いて、それを修復する際に起こるのが筋肉痛です。特に下り坂で体重を受け止めるときのように、筋に大きな力がかかる場合に起きやすくなります。筋肉痛はその筋を使わなければ痛みは感じません。筋肉の小さな損傷を治す過程で、その筋をまた使ってしまうことが、痛みとなって現われるということが考えられます。

 

下り坂で使う筋肉は、「止まれる体をつくる」や「速さを鍛える」にも出てきたプライオメトリクス(伸展性筋収縮を伴うトレーニング)に通じるものです。

結合組織について

膠原線維(コラーゲン)からなる結合組織は上皮の下にあります。コラーゲンは身体の総蛋白量の約1/3~1/2に達し、体重の4~6%を占めています。そして筋膜、腱、皮膚、骨はコラーゲンで作られています。
一方、結合組織としての機能は多岐にわたり、いずれも重要な役割を担っています。デスクワークによる肩こり等で最近注目されている筋膜も結合組織であり、筋肉に加え、筋膜などの結合組織の働きを正しく理解することは鍼灸師としても重要です。

ここでは結合組織の概要と主な機能についてまとめます。なお、内容は「細胞と組織の地図帳」(講談社)に基づいています。
細胞間物質の種類
細胞間物質には膠原線維(コラーゲン)、弾性線維、細網線維の線維性のものと、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸などの基質とがあります。


結合組織の主な機能
1.体の器官の支持(支持組織とも呼ばれる)
2.血液ガス、栄養物質、代謝産物の輸送や交感とその調節
3.水と電解質の平衡維持
4.大食細胞(マクロファージ)が異物を貪食
5.脂肪やビタミンAなどの貯蔵
6.上皮組織の分化誘導
7.傷害に対する修復


結合組織の主な細胞
1.線維芽細胞:膠原線維を産生し、結合組織の主役である
2.未分化間葉細胞:胎生期の間葉の性質を残している
3.周皮細胞
4.肥満細胞:ヘパリン、ヒスタミン、セロトニンなどを含む顆粒を充満させている
5.大食細胞(マクロファージ):異物を貪食する
6.単球:大食細胞に分化する
7.形質細胞:抗体を産生する
8.樹状細胞:抗原を取り込みリンパ球に抗原を提示する
9.リンパ球:免疫に関与する
10.好酸球:免疫複合体を破壊する


炎症
炎症は結合組織がある種の傷害をうけたときに起こる局所的な生体の反応です。そこでは血管の透過性が亢進し、多数の白血球が活動し、組織液が貯留します。動員された結合組織の細胞は異物による組織の破壊や損傷を修復します。


図の概要
1.線維成分
  縞模様のある膠原線維が束となって蛇行し、その間を縫って走る弾性線維が組織に弾力性を与え

  ています。網の目のように張りめぐらされた線維と毛細血管の間に、様々な細胞が装いをこらし

  て存在し、結合組織の働きを分担しています。
2.細胞成分
  膠原線維に寄り添うように存在する紡錘状や星状の線維芽細胞は、次々と膠原線維を産生し、結

  合組織の主役をつとめます。毛細血管の周囲にはそれに類似した細胞がビタミンAを貯蔵してい

  ます。脂肪を一杯にためこんだ脂肪細胞、わずかの刺激でヒスタミンを含む顆粒を放出する肥満

  細胞もあります。形質細胞は発達した粗面小胞体によって抗体を産生します。


画像出展:「細胞と組織の地図帳」(講談社)

・左上段から下へ
 ・弾性線維:茶色
 ・膠原線維:黄色
 ・形質細胞:紫色・丸型
 ・脂肪細胞:金色(切り口は白)
 ・肥満細胞:緑色
 ・リンパ球:青色

・右上段から下へ
 ・線維芽細胞:紫色・星型
 ・毛細血管:赤色(引き出し線なし)
 ・好酸球:茶色
 ・大食細胞(マクロファージ):藤色

 ・周皮細胞:薄茶色


病的血管によるしつこい痛み

以下のニュースはエムスリーという医療情報を提供しているサイトから送られてくる医療ニュースの中にあった記事で、配信元は西日本新聞さまです。https://www.m3.com/

 

『[五十肩に新治療法 患部から新たに増えた血管除去 久留米大病院が九州初導入]

 久留米大学病院(久留米市旭町)は10月から、中高年に多い五十肩に対し、患部に増えた新生血管をカテーテルで除去する新たな治療法を導入した。五十肩は肩関節周辺に炎症が起き、症状が重い場合、日常生活に支障を来す。病院によると、この治療法の導入は九州で初めて。
 放射線医学講座の小金丸雅道准教授によると、五十肩のうち消炎鎮痛剤などによる薬物療法や、筋肉をほぐすといった一般的治療で症状が改善しない患者が相当数いた。
 最近の研究で、こうした強い痛みが慢性的に続く人の患部を血管造影検査で調べたところ、炎症が引き金になって新たに細かく枝分かれした血管が生じ、同時に神経も伸びていることが判明。この神経が痛みの原因とみられる。
 新たな治療法は、局所麻酔後に、手首か、肘の内側の動脈から直径1ミリ以下のカテーテルを差し入れて新生血管まで通し、薬剤でふさいで除去。並走する神経を鎮める。治療は1時間程度で終わり、日帰りできる。自由診療のため費用は約17万円。
 小金丸准教授によると、2012年に都内の病院で初めて導入され、現在までに500件を超える治療実績がある。約60人の患者への調査では術後3カ月で9割の痛みが消失し、特に夜間の痛みに効果が大きかった。別の長期調査では3年間、再発は確認されていないという。』

 

この記事は、江戸川病院整形外科 奥野祐次先生の著書、「長引く痛みの原因は血管が9割」の内容と重なります。奥野先生が始められたのが2012年とのことなので、記事内の「都内の病院」とは、まさに先生が勤務されている江戸川病院のことではないでしょうか。


私の場合、テニス肘の治療において慢性化したしつこい痛みの原因を調べていた時にこの本に出会いました。また、下記右側の写真の矢印が病的血管、モヤモヤ血管になります。


まず、本の中では、正常な血管を「生理的血管」とし、病気を悪化させてしまう異常な血管を「病的血管」としています。そして「病的血管」はモヤモヤした状態になっていることから、「モヤモヤ血管」と呼ばれています。
このブログでは「病的血管」がどのように生まれ、どのような対策をするのか等についてご紹介させて頂きます。

1.病的血管の姿              
 ・ぐちゃぐちゃとした塊のような血管。栄養分や酸素を運ぶ血液本来の仕事はしない。              
 ・「血管を新しく作りなさい」という指令が炎症部位で活発化する。なお、指令を出す物質は

  「血管内皮増殖因子(VEGF)」と呼ばれるペプチドホルモンであり低酸素状態の時に線維芽細胞

  から分泌される。


2.何故痛みがでるのか
 ・炎症細胞(白血球の顆粒球やリンパ球)を呼び込んでしまう。
 ・病的血管の周りに神経線維が増え、この神経から痛みの信号が出されると考えられる。   
 ・病的血管は酸素や栄養素を運ばないだけでなく、正常な毛細血管に届くはずの血液をその手前で

  奪ってしまうため(「盗み取り現象」)組織が酸素不足となり、不適切な「血管内皮増殖因子

  (VEGF)」が分泌され悪循環に陥ってしまう。なお、血管造影の検査により「盗み取り現象」が

  長引く痛みの患者さまに見られることが分かっている。 

                           
3.病的血管を減らす生活習慣
 ・有酸素運動が有効:運動不足は体の中の軽微な炎症を長引かせる原因になる。有酸素運動を継続

  することによって、全身の組織の軽微な炎症が改善されることで病的血管は減る。              
 ・高カロリーの食事はやめる:高カロリー食が病的血管を増やしてしまうということことが、東京

  医科歯科大学の研究者がマウスを使った実験で明らかにされた。そして実験では更に時間が経過

  すると関節に変形が生じてくることも分かった。
 ・糖尿病に注意:糖尿病に起こる問題は「小さな血管の異常」である。そしてこれは病的血管がで

  きるということである。目の網膜に出ると糖尿病性網膜症であり、腎臓にできれば糖尿病性腎症

  である。そして糖尿病患者は関節にも病的血管ができやすく、肩関節周囲炎を例にとると

  10~20%の人が肩関節周囲炎になる。これは一般の人よりはるかに多い数字である。              
 ・ストレッチが有効:ドイツの解剖学者が腱の細胞に機械的なストレスを加えた実験を行ったとこ

  ろ、血管を新しく作らせないようにする物質の一つであるエンドスタチンが豊富に出ることが分

  かった。なお、ストレッチが効果的なのは腰、肘、膝、腱であり、痛みの方向へ負荷をかけると

  いう方法である。 
 ・動かす:3ヶ月も4ヶ月も痛いような長引く痛みの場合、痛くない範囲で動かした方がよい。これ

  は急性期と異なり、すでに修復は完了している状態なので、安静にする必要はなく、むしろ痛み

  の原因となる病的血管を作ってしまう。
 ・温める:血液が正常な血管に流れると、相対的に病的血管への流れを減少させるため痛みは改善

  される。体を温めると痛みが和らぐのはこのためである。寒い場所では皮膚への血液の流れが減

  り、内部に位置する病的血管への流れが増え痛みがでる。
 ・急な炎症は冷やす:怪我をした直後に、人間の体は必要以上に血管をたくさん増やすように反応

  する。こんなときに生じた余計な血管が長引く痛みの原因になったり、後々の「古傷の痛み」の

  原因になったりする。従って、怪我した直後はじっくりと冷やし、かつ圧迫することで余計な血

  液の流れを作り出さないようにすることが重要である。
 ・圧迫する:長引く痛みは「圧迫して治る」という性質がある。圧迫法はテニス肘や膝の痛み、五

  十肩の痛みにも効果がある。長引く圧痛には病的血管ができており、圧痛部位を10秒前後圧迫す

  ることで一時的に病的血管への流れが遮断される。圧迫以外でも病的血管は色々な刺激に弱いと

  いう特徴があるので、普段と違う刺激を受けることで、速やかに減る性質がある。 
 ・筋力トレーニング:筋力トレーニングは痛みを治すというよりも再発予防に効果的である。まず

  は病的血管を減らして痛みの原因を除去したのちに、再発を防ぐために筋トレを行うのが良い方

  法であると考える。    

         
4.運動器カテーテル治療とは
 ・ターゲットの血管は「盗み取り血管」である。これは医学的には動静脈短絡と呼ばれるが、
これ

  があることで正常な血液の流れが奪われ、本来送り届けられるはずの酸素や栄養は供給され

  ず、病的血管が作られ続けるという悪循環を生む。この「盗み取り血管」は非常に細くて直径

  50μm(0.05mm)程と考えられる。薬剤の滞在時間は数時間、長くて1日くらいである。

  これは異常な血管はすぐに退縮する性質があるためである。つまり、このような短期間の塞栓で

  も、異常な血管は減少していく。体内の異物を貪食するマクロファージに食べられてしまうと考

  えられている。これにより悪循環が改善され、病的血管は徐々に減少してく。痛みが十分に取

  れるタイミングは人によって様々である。その場で良くなった患者は25%である。最も多いの

  は治療してから約1ヶ月後に痛みが改善するというパターンである。          
              
「痛みをとろう.COM」で、運動器カテーテル治療の外来予約や問い合わせができます。

期待される鍼灸治療の効果

1.病的血管が作られる前の段階

 ・自律神経を整え、硬くなった筋肉を緩め、血液の流れを正常化することにより、病的血管の発現

  を抑制することが可能と思います。

2.病的血管が作られてしまった段階

 ・鍼の刺激や灸の熱刺激は普段の生活では受けない刺激であるので、これらの刺激が病的血管の消

  退につながる可能性があると思います。

誤嚥性肺炎の予防

誤嚥性肺炎で最も問題となっているのは、高齢者に多くみられる睡眠中に起こる不顕性誤嚥を原因とするものです。
これは物を食べたり飲んだりする時に起こる嚥下反射と、誤って唾液などが気管に入りそうになった時に、それを防ぐために起こる咳反射が正しく機能しないことが大きな原因となります。
この2つの反射は脳の奥、中央部にある大脳基底核が関与するため、脳梗塞や脳血管障害などによりこの部位が障害されると、さらに誤嚥性肺炎のリスクは高まります。
誤嚥性肺炎には優れた薬が出ていますが、ここでは日常生活で可能な予防法として、嚥下・咳反射の向上を促す葉酸を含む食材を取ることと、口腔ケアを行うことについて、嚥下と咳の反射が起こるメカニズムに続き、ご紹介します。


1.2つの反射が起こるメカニズム
 嚥下反射と咳反射は迷走神経知覚枝の頚部神経節で合成されるサブスタンスPという神経伝達物質

 が咽頭・喉頭や気管に放出されることにより起きます。そしてこのサブスタンスPの合成は大脳基

 底核に受容体を持つ上位のドーパミン神経系により調節されています。

 ※サブスタンスPのPはペプチド(2個以上のアミノ酸の結合によってできた化合物)を指します。

 

サブスタンスPが合成されるとする部位の頚部神経節は、左図ほぼ中央の淡いピンク色で膨らみがある部分、「交感神経上頚神経節」にあたります。

2.葉酸の摂取
 葉酸はドーパミンを始めとする脳内の神経伝達物質の合成に重要な役割を果たしてます。一方、高
 齢者は消化吸収能の生理的低下や摂取量不足などにより、葉酸欠乏の傾向が多くみられます。
 これは葉酸は元々体内の貯蔵量が少ないことが原因の一つになっています。
 このように重要でありながら、欠乏傾向が強い葉酸を意図的に摂取することは、日常的にできる効
 果的な予防になります。
 下記の「栄養と食品」はネット検索で見つけたサイトです。食材、効果的な摂り方、注意点などが
 詳しく解説されています。ご参考にして頂ければと思います。

左をクリックしてください。葉酸について書かれたページに移動します。

3.口腔ケア
 口腔ケアとは、機械的に口腔内の知覚神経を刺激するということを意味しています。毎食後に時間

 をかけて、丁寧にブラッシングするということです。
 また、食事については、認知症予防として、よく噛んで食べることで感覚野の約3割が活性化さ

 れ、さらに自分の手で口に運んで食べることより、運動野の約7割を使うということが報告されて

 います。

こちらは【口腔ケア】というサイトです。同じく詳しく説明されています。

 

付記)

サブスタンスPという神経伝達物質が「軸索反射」に関わっているということは、鍼灸師の世界では一般的な知識ですが、そのサブスタンスPが嚥下反射・咳反射に深く関係しているということを知り驚きました。

さらに、アルツハイマー病の原因であるβアミロイド蛋白を分解する作用を持っているということも発見し、サブスタンスPの強者ぶりに本当に驚きました。


ちなみに「軸索反射」とは、置鍼した時にうっすらと赤みが出る現象でフレアと呼ばれています。これは刺鍼時の刺激によって分泌される、サブスタンスPの血管透過性亢進作用と、同じくペプチド系神経伝達物質のCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド) の血管拡張作用による働きで、刺鍼周辺部の血行が亢進していること示しています。血行改善、これは科学的に証明できる鍼灸治療の効果といえるものです。

「軸索反射」の説明は、こちらを参考にさせて頂きました。

 http://physioapproach.com/blog-entry-92.html 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SPがサブスタンスPになります。

画像出展:「ペインリハビリテーション」三輪書店

筋肉と加齢

これは、「月刊トレーニングジャーナル 2016 12 No.446」の「筋肉の質」に関するブログになります。寄稿されたのは帝京大学医療技術部講師 川田茂雄氏です。今までこのような情報に出会ったことがないため、アップさせて頂きました。

加齢によって筋肉はどのように変化するか(変化しないか)について論じられています。

1.加齢に伴って最大筋力は減少する。
2.筋収縮速度(骨格筋そのものが備えている収縮速度)は年齢による影響を受けない。

 

筋収縮のメカニズムの概要についてご説明します。

下図は筋肉の内部構造の全体像です。右図の大きな円柱は骨格筋で内部は、筋束筋線維筋細線維筋フィラメント(Fアクチンフィラメント・ミオシンフィラメント)に細分化されていきます。筋細線維の周りを囲むように覆っているのが、筋小胞体で内部には筋収縮に必要なカルシウムイオンが濃縮されています。また、紫色のプレートの形をしているのが、ミトコンドリアであり、筋の収縮エネルギーであるATPを供給します。筋の収縮に直接関与しているのは、赤色のFアクチンフィラメントと並行して存在する水色のミオシンフィラメントです。これら2つの相互作用により収縮が起きます。


画像出展:「細胞と組織の地図帳」 講談社

 

 

左の3つの表は(A)体重当たりの最大筋力、(B)脚長あたりの無負荷最大収縮処理速度、(C)最大パワー です。

横軸は年齢になっており、(A)(C)の最大筋力、最大パワーは年齢が進むにつれ低下していますが、(B)の最大収縮速度はフラットになっています。

 

 

 

画像出展:「月刊トレーニングジャーナル 2016 12 No.446」

まとめ

1.加齢に伴う筋萎縮に関し、筋の量的変化は生じるが、分子レベルでの質的変化は生じない。
2.上記表(B)の測定は無負荷の状態で実施したものである。現実的には加齢に伴い、筋が萎縮し脂肪

  が増加するということが起きるため無負荷とはいかなくなる。これは足首にアンクルウェイトを

  巻いて運動するようなもので、負荷が加われば動きに影響が出る(遅くなる)。

3.食事(栄養)と筋肉への負荷トレーニングを継続し、脂肪を増やすことがないように十分な体調

  管理を徹底し、筋委縮と脂肪増加を防ぐことで、最大筋力および最大パワーの低下を最小限に抑

  えることができる。

 

致命的な怪我がないことが前提になりますが、厳しい節制と妥協しない日々のトレーニングの積み重ね、そして、最大筋力や最大パワー以上に、高いスキル(技術、戦術、経験等の総合力)が要求されるスポーツであれば、40歳を超えて第一線で活躍することは特殊なことではないと思います。

前庭系と筋緊張

このテーマを取り上げた理由は2つあります。

1つは前庭系には頚部と背部などの抗重力筋(姿勢維持に関与している筋群)を緊張させるメカニズムがあることです。これは筋肉の硬結に対して施術を行なう鍼灸治療にとって非常に重要です。
そして、もう1つは前庭系が触覚系や体性系とともに小児の脳性麻痺に大きく関わっているためです。後者については、週2日勤務で現場に入っている「訪問鍼灸・マッサージ」のプラナ治療院が小児障害児マッサージのサービスを提供することになり、そのための講習を受けているという背景があります。

左をクリックすると、「日本小児障がいマッサージ普及協会」に移動します。

なお、ブログは前庭系を理解するために自己学習した内容のご紹介という感じで、ほとんどは「新・感覚統合法の理論と実践」と「人体の正常構造と機能」に基づいています。


前庭系の最大の仕事は、頭の位置や動きに合わせて抗重力筋の緊張を調節し、適切な姿勢とバランスを維持することですが、ほとんど無意識で行われるため、回転動作や激しい加速を受けるような状況以外は意識に上がるようなことはありません。以下、添付された図の番号に沿ってご説明します。

     「新・感覚統合法の理論と実践」の図を一部加筆させて頂きました。

①前庭神経核
前庭神経核は外側核、内側核、上核、下核に区分けされていますが、前庭器の種類と明確に対応しているわけではありません。内側核と上核は主に半規管からの入力が強く眼球運動核へ出力を送ります。また、内側核は更に頚髄に出力しています。外側核と下核は半規管と耳石器からの入力を受け、主に脊髄へ出力を送ります。


②抗重力筋の緊張の調節
前庭系の第一の働きは、頭の位置や動きに合わせて抗重力筋の緊張を調節し、適切な姿勢とバランスを維持する土台を作ることです。この働きには、前庭神経核から脊髄に下行する前庭脊髄路が関与しています。これには外側と内側の二つの経路があり、外側前庭脊髄路は主に伸筋(抗重力筋)を収縮させ、屈筋を弛緩させるように作用します。一方、内側前庭脊髄路は頚の筋肉のコントロールに関係しています。

筋緊張の調節は自動的に行われ、前庭脊髄反射と呼ばれています。また、前庭系は全身の筋に一定の緊張を与えるように作用しています。


③姿勢・平衡・運動の自動調節
我々は日常生活において、特に意識することなく体のバランスをとり、思ったように運動を行っています。これは大脳皮質の運動野から出発し、意図的な運動を指令する「錐体路系」と、錐体路系以外の領域で、それぞれが関係性をもち、意図的運動をスムーズに行うために細かな調節を行う「錐体外路系」があります。前庭系も小脳を介して関係性をもっており、姿勢と平衡、運動の自動的な調節に寄与しています。なお、錐体外路系は解剖学的に特定の部位を指すものではなく、近年では「錐体外路系」という呼び方に疑問が投げかけられています。


④眼球の動きの自動調節
前庭系の第三の働きは、頭の傾きや動きに合わせて、目の動きを自動的にコントロールすることです。歩きながらビデオ撮影すると画面がブレてしまいますが、我々が歩いたり、頭を回したりしても景色がブレたり流れたりすることはありません。これは、前庭受容器と首の固有受容器からの情報が視運動系に送られ、頭の動きに応じて目の動きを補正しているからです。前庭系は、いわばビデオカメラの手ブレ防止装置のような役割を果たしているといえます。


⑤覚醒への影響
大脳皮質の覚醒をコントロールする脳幹網様体には、あらゆる感覚情報が流れ込んでいます。流入する感覚刺激の質と量によって網様体の活動は変化し、その変化は大脳皮質に伝えられて意識水準が調整されます。前庭感覚の情報は興奮性にも、抑制性にも強く働き覚醒に影響を与えます。前者の興奮性は遊園地の回転性の乗り物であり、後者の抑制性は暖かく気持ちの良い日に電車の座席で揺られているような場合です。


⑥自律神経系への影響
前庭神経核から網様体を経由して自律神経核群にも情報を送っています。前庭系と自律神経系の密接な関連は、乗り物酔いからも明らかです。前庭受容器からの刺激は心拍数の増加、冷汗、吐き気、嘔吐などの自律神経症状をもたらします。これらは前庭自律神経反射と呼ばれています。

 

鍼灸治療における局所治療のポイント

抗重力筋を収縮させ、頚の筋肉をコントロールし、全身の筋に一定の緊張を与えるということは、前庭系に起こった異常は不必要な筋緊張の原因になると考えられます。また、前庭神経核は自律神経系にも影響を及ぼしており、非常に重要な治療ポイントです。ツボは翳風(えいふう)を第一選択と考えます。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほぼ中央、耳たぶの下にあるのが翳風(えいふう)になります。

画像出展:「経絡マップ」医歯薬出版

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらも中央付近のツボが翳風です。近くに副交感性の迷走神経、舌咽神経が通っています。

画像出展:「経絡マップ」医歯薬出版

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「経絡マップ」医歯薬出版

 

上記の表は左から「神経の名称」ー「支配の領域」-「相関の経穴」になっており、中段下方に「内耳神経」があります。(知)とは知覚性をさしています。内耳神経は前庭神経と蝸牛神経から構成されています。そしてピンク色にマーカーされているのが、前庭神経と「相関の経穴」欄にある5つの翳風ですが、この5つの中で顔面神経、舌咽神経、迷走神経は、(混)混合神経であり、知覚性・運動性・自律神経の副交感性をもった神経です。このように翳風というツボは、自律神経の副交感神経に対しても広く効果を及ぼすことが可能であり、自律神経を意識した施術を行う場合に特に重要なツボとなります。

サウジアラビアに勝利し、2位浮上!

テレビ観戦となった大事なサウジアラビアとの一戦は、選手個々の集中力が非常に高く、積極的で隙のない戦い方ができた素晴らしい試合でした。
チームに流動性をもたらす優れたパサーの清武選手、手を抜かない戦う姿勢でチームを盛り上げる原口選手、そしてドイツで活躍中の新戦力、大迫選手は確かなボールキープ力を活かしたポストプレーでもチームを助けていました。そして、イラク戦でヒローとなった山口選手の中盤での積極果敢なディフェンスも、これらの選手に負けない貢献だったと思います。

また、2点目の原口選手の得点をアシストしたシーンは、守備に重点を置いていた長友選手が、勝負とみて、本田選手との抜群のコンビネーションで作った最高のワンプレーだったと思います。

今回の最大の収穫は勝点3ですが、ベテランを脅かす新しい力の台頭はもう一つの大きな収穫です。来年3月のUAE戦に向け、欧州組がそれぞれのチームでレギュラーポジションを奪取し、召集された全ての選手が良いコンディションで、ポジション争いが激化すれば、それが勝利に結びつく原動力になると思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【GATAフリー絵画・版画素材集】よりお借りしました。

膝痛にはまず荷重X線撮影

これはエムスリー(https://www.m3.com)という医療情報等を提供されているサイトの医療ニュースになります。

『40代以上の患者の膝の痛みの初期診断にはMRIよりも荷重X線撮影が最も良いとのだとの研究結果が明らかになった。整形外科医の診察前に撮影されたMRIのうち、実際に変形性関節炎の診断治療に役立ったのは半数程度だったとも指摘されている。米国整形外科学会(AAOS)が9月8日、Journal of American Academy of Orthopaedic Surgeons誌9月号の掲載論文を紹介した。
 研究グループは、40歳以上の患者の膝のMRI 100件を検証した。最も多い診断は変形性関節炎で39%、次いで半月板損傷が29%だった、MRIのほぼ4件に1件が荷重X線撮影の前に実施されていた。整形外科医による診察前に撮影されたMRIのうち、実際に変形性関節炎の診断と治療に役立ったのは半数にとどまっていた。
 その上で、多くの場合は単純X線撮影が最善の診断ツールであり、時間とコストを抑えることができると結論。「関節炎が疑われる場合は、荷重X線撮影のみで診断と治療計画の決定を行えるケースがほとんどであり、適時に整形外科の診察を受けることが、まずMRI撮影を行うよりもコスト効率が高いと考えられる。」などと述べている。
 

左をクリック頂くと、原文が表示されます。

このニュースの要点は、変形性膝関節炎の画像検査は、時間とコストの両面から荷重X線撮影がMRIより優れているというものです。
私自身は「荷重X線撮影」というものを知らなかったので、ネットで検索したところ、奈良県立医科大学附属病院  安藤英次氏から発信された詳しい情報を発見しましたのでご紹介します。

 

 

要点は以下になります。

・撮影技師は、変形性膝関節症の病態解剖を理解し、病態に適切した撮影肢位とX線解剖について熟

 知が必要となる。
・変形性膝関節症による関節軟骨の退行変性は加齢だけでなく機械的負荷などで変性が進行する。
・変形性膝関節症の関節軟骨の変性や関節間隙を評価するには、臥位(あお向け又はうつ伏せ)画像

 でなく立位(荷重)撮影による荷重画像が有用となる。

速さを鍛える

パフォーマンス向上を支えるスポーツ医科学専門誌として「月刊トレーニングジャーナル」があります。今回のブログは、この「月刊トレーニングジャーナル  2016 11  No.445」の特集を題材にしています。

この専門誌の創刊は1979年であり、私が大学1年生の時になりますが当時、時々購入していました。まさか再び「トレーニングジャーナル」を購読することになるとは、びっくりです。

特集の『速さを鍛える』は次の4つの記事から構成されています。

1.「はやさ」は鍛えられるか? 

2.運動と知覚の関係を考える-速さを構成する要素として 

3.トレーニング指導で知っておくべく概念-速さを鍛える上で必要な要素 

4.ゴルフスイングをよくするために
今回は3番目の、桂良太郎氏(日体協公認ATなど)が「トレーニング指導で知っておくべく概念-速さを鍛える上で必要な要素」の中で紹介している、「パフォーマンスピラミッド」について理解をしたいと思います。

土台となる1段目が「ファンクショナルムーブメント」、2段目が「ファンクショナルパフォーマンス」、そして3段目が「ファンクショナルスキル」となっています。「速さ」は2段目に関係しており、その「速さ」を生みだすためには、まず土台がしっかりしていることが重要です。
2段目を構成する要素としては、筋力、スピード、パワー、敏捷性などが複合的に関係しています。そして、これらの指標としては運動制御、姿勢の統合性、パワー、パワー効率性の4つがあります。以上がパフォーマンスピラミッドの概要です。

 

この図の2段目に含まれる「プライオメトリック」はブログ『止まれる体をつくる』にも登場したもので、そこでは「瞬発力強化、走るときではなく止まるときに重要である」という説明がされていました。
一方、「プロプリオセプション」とは固有受容感覚、いわゆるセンサーです。このセンサーによって筋肉や腱の状態を把握し正しく脳に伝え、3次元空間での体の位置などを正しく認識します。背骨は四角い骨がいくつも積み上がって、柱(脊柱)となっていますが、プロプリオセプションが働くことにより、小さな傾きも検知し脊柱を安定させます。そして脊柱を力強く支えるのは、インナーマッスルと呼ばれる腹横筋、腸腰筋、多裂筋などです。
なお、プロプリオセプションについて詳しく説明されているサイトがありましたのでご紹介します。
これは『コアスタビライゼーション 世界レベルのパフォーマンスのために』という、米国NATA公認アスレティックトレーナーの稲葉晃子氏の一連の記事の中にあります。

http://mywellnessia.com/?page_id=1395 

なお、「コアスタビライゼーション」については、“上肢と下肢を繋ぐ体幹を鍛える事により、上肢から下肢まで一本化して体を使う。”と解説されています。

スタビライゼーションについては、日本タビライゼーション協会があり、その説明を引用したものが下記になります。

 

 

 

『スタビライゼーションとは、主働筋だけのトレーニングではなく、主働筋・協働筋・拮抗筋や補助筋群(スタビライザー)を刺激するトレーニングメソッドです。動作中、常にアライメントを意識することによりアイソメトリクスを生じさせて体幹(コア)をはじめとする体軸の安定強化が行えます。』

 

一通りの確認ができたので、「パフォーマンスピラミッド」を自分流に整理し、理解を深めたいと思います。
モビリティ/スタビリティ」は「関節運動の可動性と安定性」とします。

次に「プロプリオセプション」は「体幹の強さ」とします。これが速さを支える土台になります。
この上にのる要件は「スピード」、「敏捷性」、「瞬発力」、そして「ストレングス」ですが、NSCA(National Strength and Conditioning Association)ジャパンではストレングスを「神経-筋系全体の能力」と定義しています。そして、これは拡大解釈して「適応力」とします。なお、以下のサイトに「ストレングス」についての詳しい説明が出ています。

1番上のSkillは特に「速さ」に関わる要件として、ここでは技術・戦術・予測力にしたいと思います。

完成した自己流パフォーマンスピラミッドを眺めて気づくことは、これらの要件を兼ね備えたモデルとなるサッカー選手は、インテルの長友選手だろうということです。実際、体幹トレーニングを積極的に取り入れている話は有名です。
そして、速さの追求は「止まれる体」と表裏一体となっており、特に土台となる体幹の強さ・体の柔軟性が十分に鍛えられていないと、怪我のリスクが高まります。

最後に、「スポーツ傷害調査支援システム SIRIUS(シリウス)」という非常に興味深いサイトを発見しましたのでご紹介します。

特に優れているのは「コンディショニングセルフチェックシート」という機能です。これはチームごとに専用URLを発行し、コンディショニングを選手自身で記入・送信し、セルフチェックシートをつくることができます。
更に、送信された情報を集計し、表計算ソフトでグラフ化することができるというもので、チームメンバーのコンディショニングの管理に有効です。

選手自身が客観的に自分のコンディションを定期的に意識し、スタッフが公開されたその情報を把握したうえで、トレーニングの内容を検討できることは画期的だと思います。

慢性腎臓病(CKD)の予防と治療

10月23日(日)埼玉県腎臓病患者友の会(NPO埼腎友)主催の講座に参加してきました。大変勉強になりましたのでブログにアップしたいと思います。
タイトルは、NPO埼腎友主催 第10回市民講座 透析にならないためのポイント 
~慢性腎臓病(CKD)の予防と治療~ 講師は木全直樹先生です。
一般社団法人日本腎臓学会のホームページから、「CKD治療ガイドライン2012」をダウンロードすることができます。下記の写真をクリックするとページに移動します。

次に重要と思った点を列挙します。
1.慢性腎臓病(CKD)は他の臓器に悪い影響を及ぼす
 腎臓は体の中の老廃物を尿として作り出す臓器です。従って腎臓の機能が働かなくなると、尿とし

 て排泄されるはずだった老廃物や水分が体の中に溜まるため健康を害す可能性が高まります。


2.慢性腎臓病(CKD)の定義
 腎の働きが60%未満に低下した状態。CKDの1~5のstageではstage3に相当します。
 本来、腎の働きを測定するためには、腎臓の糸球体から速やかに排泄される特徴をもつクレ
アチ

 ンやイヌリンという物質を使って、排泄されずに残る量により濾過機能の性能を評価します。本来

 の検査には24時間の尿を溜める必要があります。このため、時間と手間の問題を解決する簡便な

 法として開発されたのが、eGFR(推算糸球体濾過値)というものです。これは、血清クレアチニ

 値、年齢、性別から数値を計算します
 なお、クレアチニンは筋肉で作られる老廃物のため、筋肉が多い人は高めに、筋肉が少ない人は低

 めに出る傾向があり、クレアチニン値だけでCKDの診断を下すことは適切ではありません。
 また、クレアチニン値は年齢を考慮する必要があります。特に数値は2.0を過ぎると急激に悪化する

 という傾向があるため、2.0を超えたら十分な注意が必要です。
 講座の最後に、先生が「CKDは患者さんの危機意識こそが最も重要な治療といえるかもしれな

 い。」とお話されていたことが印象的でした。


3.透析導入
 GFR15、stage5が透析導入の目安になっています。患者数は約32万人(2014年末)、予備群は国民

 成人の約8人に1人ですが75歳以上に限定すると、その数は半分が予備軍とみられています。


4.慢性腎臓病(CKD)になりやすい体質
 ①糖尿病性腎症
 一般的には糖尿病発症後から10~15年で発症するといわれています。

 多くの場合、高血圧→網膜症→腎症という経過をたどります。2011年の日本透析医学会統計調査に

 よると、糖尿病性腎症が原因の透析患者数は全体の44.3%を占めています。
 なお、糖尿病を抱えることになると、食事療法、運動療法が腎臓病とは大きく異なるため、非常に

 難しいものとなります。
 ②虚血性心疾患・心不全
 「心・腎連関」という考え方があります。これは慢性腎臓病と慢性心不全と貧血の3つの病態は相

 互に悪化させる悪循環を作ってしまうというものです。心不全により心臓のポンプ機能が低下すれ

 ば血液循環の問題を発生させます。
 下の図では、血液を運ぶゴミ回収車に問題が発生することになりますので、尿を作る工場である腎

 臓も影響を受けることになります。
 一方、腎臓自身が機能するためには臓器として健康でなければならず、それには血液によって運ば

 れるる酸素と栄養素が必須となります。貧血はその供給面で問題を発生させるということになりま

 す。いわゆる、「兵糧攻め」にあっているようなものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「よくわかる生理学の基本としくみ」秀和システム

5.75歳以上の注意点
 75歳以上の方の食事制限に関し、現在はタンパク制限を勧めていないとのことです。これはタンパ

 ク制限により、食事全体も落ちてしまう危険があるためです。


6.自分の腎臓は自分で守る
 テキストでは最後のページになる項目です。ここでは10項目をテキストより引用させて頂きます。
 ①自身の腎機能(eGFR)を知る
 ②血圧、体重を測定・記録する…適正な体重の維持
 ③血圧高値とならないように注意する
 ④貧血、腎機能データが大丈夫か確認
 ⑤不必要な食事(タンパク等)を取らない
 ⑥こまめに水分補給…口渇中枢の感受性低下を自覚
 ⑦鎮痛薬を勧められたら、大丈夫か確認(ロキソニンなどの非ステロイド系鎮痛薬)

 ⑧造影検査を進められたら、大丈夫か確認
 ⑨大きな手術を勧められたら、大丈夫か確認
 ⑩腎排泄型薬剤、利尿剤を処方されたら、確認

(⑥~⑨の「大丈夫か確認」とは、いずれも腎臓への負担が大きいので確認するという意味です)

 

以上が受講した講座の概要になりますが、食事制限を考えるうえで考慮すべき、タンパク質と糖分について補足させて頂きます。
タンパク質は代謝によって血中に窒素化合物ができます。腎臓はそれを排泄するために一生懸命働きます。これが腎臓に負担がかかる理由です。ただし、腎臓を含め体のあらゆる器官はタンパク質で作られていますので、タンパク質が必要量に満たないと健康を害するということになります。従って、タンパク質は過剰に摂取しないということが大切です。
一方、糖分は腎臓に負担をかけるような代謝産物は作りませんので、特に腎臓に負担をかけるということはありません。しかし、高血糖→糖尿病→糖尿病性腎症という危険な流れを生み出す可能性があるため取り過ぎには注意が必要です。

 

最後に鍼灸治療について触れると、本治法は免疫力を高めることに主眼をおき、脈診、腹診により最適なツボを選択します。また、慢性腎臓病(CKD)は厳しい食事制限が求められるため、過度なストレスにより自律神経が乱れやすくなっています。そのため、標治法では頚肩部、特に脊柱に沿って現れる線状の硬結を改善し、全身調整穴により自律神経の乱れを防ぎます。これにより、本来の自然治癒力をととのえ、貧血や高血圧にも備えます。

人工知能と鍼灸

野村総合研究所が2015年12月に発表された、「人工知能やロボット等による代替可能性が低い100種の職業」には柔道整復師とともにはり師・きゅう師が含まれています。

https://www.nri.com/jp/news/2015/151202_1.aspx

ロボットであれ、機器であれハードウェアが必要となれば、大規模な投資が必要となりますので、開発コストと回収できる規模のマーケットが必要になります。これらはいずれもすごい難問です。

それでも挑戦するとすれば、まずは鍼灸の効果が科学的に広く認められる必要があると思います。

下記の2つのグラフはいずれも学術論文の数を示すもので、急激に多くなっているのは中国発の論文が増えているためです。
ヒトの基礎研究においては「脳の機能画像解析に関する研究」(右図)が急増しています。また、下段の図は鍼刺激による脳の反応部位を示しています。棒グラフは淡いピンクが活性化、グレーが不活性化で、これを見ると体性感覚や運動領域では活性化が多く、情動に関する辺縁系や大脳基底核では不活性化の方が優位になっています。

このように、画像検査の著しい進歩により、今まで不明確だった事象が科学的に説明できるようになる可能性があります。


上記の3つのグラフは「鍼灸臨床最新科学」からの引用です。

しかしながら、臨床現場ではその成果は鍼灸師の実力(現状と問題を把握する力、最適な治療方針を立てる力、プランに従って最適な手技を選択し実践する力など)に左右されますので、このような現実を加えると、21世紀中には鍼灸治療を行うペッパー君のようなロボットはもちろん、治療まで行う装置が現れることはないと思います。

 

ただし、少し見方を変えて、鍼灸治療を問診-触診(脈診を含む)-検討(治療方針など)-施術の4つの段階に分けて考えるならば「問診」と「検討」において、鍼灸師を支援するAIアプリケーションが出てくることは考えられます。

理由はハードウエアをPCやスマホと考え、 GooglのTensorFlowのようなオープンソースで開発すれば、人件費以外は費用を抑えられるためです。こう考えると、ソフトウェア開発に精通した優秀な鍼灸師であれば開発は難しくないように思いますが、大元の臨床データの質と量が適切かつ十分でないと、そのアプリケーションがデモバージョンの域を超え、商用になることは容易ではないと思います。ただし、実使用に関しては利用する鍼灸師が便利かつ有効と判断し、その鍼灸師が患者さまから十分に信頼されていれば、利用するうえで大きな問題はないように思います。

余談になりますが、AI(人工知能)とは厳密には「人間の知能そのものを持つ機械(ハードウェア)」であり、 GooglのTensorFlowやIBMのWatsonはAIではなく、 ディープラーニング(機械学習)というもので、人と同じように成長するコンピュータソフトだそうです。

脳脊髄液とめまい(メニエール病)

めまいが1番つらい症状であり、メニエール病と診断された患者さまの治療について、治療の要点をブログに残しておきたいと思います。
患者さまは高齢に属しますが、締め切りのある仕事もされており、忙しい時は深夜まで頑張っているという方です。
治療方針は3点。

①ストレス低減→自律神経を整えること 

②頚部および耳周辺の硬さを取り除くこと

③腰仙骨部の硬さを取り除くこと
結果は4回目の治療の際に、めまいはほぼ無くなり体調が良くなったことを確認しました。顔色や表情も戻ったと思います。治療効果については薬も服用されていたため、薬と鍼治療がそれぞれどれ程改善に寄与したのかは不明です。
自律神経の改善についてはストレス軽減が一つの指標になると思います。また、頚と腰仙骨部の硬さが改善されたことが、めまいの改善に貢献したと考えることは問題ないと思います。

 

1.耳の構造
耳は外耳、中耳、内耳の3つ分けられます。めまいで問題となるのは内耳ですが、内耳はさらに蝸牛と半規管と前庭に分けられます。半規管は体の回転運動を感じ体のバランスをとる役目をしています。前庭は体の直線運動を感じ、こちらも体のバランスをとります。めまいと関係が深いのは蝸牛であり、内部は成分の異なるリンパ液に満たされた内リンパと外リンパがあります。

骨迷路は緻密骨で囲まれた複雑な形の管腔で、蝸牛、前庭、半器官から構成されています。一方、膜迷路は骨迷路の中にある軟らかい膜性の閉鎖管で、その中に内リンパを満たしています。

 

 

 

 

 

 

画像出展:「人体の正常構造と機能」(日本医事新報)

蝸牛の内部、断面図です。これを見ると膜性の閉鎖管にある内リンパは外リンパに挟まれており、影響を受けやすいことが想像されます。

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「人体の正常構造と機能」(日本医事新報)

2.内リンパ水腫とめまい
メニエール病は内リンパ水腫が原因と考えられています。ただし、内リンパ水腫があっても症状が出ない場合もあります。また、なぜ内リンパ水腫が起こるのかは解明されていません。
一方、特発性脳脊髄液減少症による耳症状の内容とその頻度は,めまい30%,耳閉感20%,耳鳴20%,難聴3%となっています。
特発性脳脊髄液減少症では、脳脊髄液の減少により脳脊髄圧が低下し、くも膜下腔と交通をもつ外リンパ圧の低下をひきおこし,内リンパ圧と外リンパ圧の不均衡が生じて、相対的な内リンパ水腫をおこすと考えられています。
以上のことから、内リンパ水腫がめまいに関係していること、そして内リンパ水腫の原因には脳脊髄圧の低下による内リンパ圧と外リンパ圧の不均衡によるものがあることが分かります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:メニエール病と薬物療法 内リンパ水腫とは(予防から治療まで見つかる Eisai.jp) 

3.脳脊髄液の影響
解剖学の見地から、膜迷路と骨迷路の間は外リンパで満たされており、蝸牛小管を介して脳脊髄液が満ちているクモ膜下腔と交通していることが分かっています。

左上に蝸牛小管がクモ膜下腔に開口していることを示しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「イラスト解剖学」(中外医学社)

4.脳脊髄液に関する新見解(従来の説を否定)

左のロゴをクリックすると、「流れない脳脊髄液 ─Time-SLIP法 CSF dynamics imagingからの観察─」という論文を確認することができます。

上記の論文の中で特に重要と思う点は次の通りです。
・脳脊髄液の動態が可視化され詳細が解明されつつある。すでに脳脊髄液の動態は、従来の脳脊髄液

 循環の概念とは全く異なるものである。   
・脳脊髄液は心拍動だけでなく、深呼吸、体位や姿勢の変化によっても動く。
・脳脊髄液は川のようには流れず循環してもおらず、ただ上下に拍動(心臓の拍動によって脳脊髄液

 の圧力が変動することから生じる)しているだけと考えられる。
・脳脊髄液の排液ルートは、従来考えられてきたクモ膜顆粒にあるのではなく、深頚部リンパ節へ通

 じるリンパ系あるいは脊髄根周辺からのリンパ系などのルートが考えられる。

深頚リンパ節とは上深頚リンパ節、下深頚リンパ節、鎖骨上リンパ節の3つがあり、いずれも内頚静脈に沿うように存在しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「イラスト解剖学」(中外医学社)

脊髄根は延髄根の下方にあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「イラスト解剖学」(中外医学社)

5.頚および腰仙骨部と脳脊髄液の関係
まず、頚部は脳脊髄液の排液ルートの可能性があり、頚の硬さが深頚部リンパ節や脊髄根周辺部に影響を及ぼすとすれば、頚の硬さは脳脊髄液の動きの悪さにつながると思います。
また、頭蓋オステオパシー(クラニオセイクラルセラピー、クラニアル)とよばれる治療法では、頭蓋骨に動きの制限があると脳脊髄液に影響すること。また頭蓋の動きは脊柱全体に影響を及ぼすこと が指摘されています。
下記は「アプライドキネシオロジーシノプス」という本とp15の「椎間孔5つの因子」の引用です。

AKの検査と治療のテクニックの多くは、頭蓋一次性呼吸運動による脳脊髄液との関連と共に神経、リンパ、血管、経絡システムに関与している。George J.Goodheartはこの5つをAKの検査と治療に使用し、“椎間孔5つの因子”として脊柱の椎間孔に関連付けました。

その下の図はロベットリアクター(ロベットブラザー)を説明したものです。以上のように頭頚部と脊柱全体および脳脊髄液の関連性を指摘するものは存在しています。

アプライドキネシオロジーの中で、脊椎の運動の関係について、歩行時に環椎(第1頚椎)とL5(第5腰椎)の同側への回旋が起こることを示している。この関係はC2(第2頚椎)とL4(第4腰椎)、C3(第3頚椎)とL3(第3腰椎)の同側への回旋のように脊柱全域に続く。
しかし、回旋はC4(第4頚椎)とL2(第2腰椎)、C5(第5頚椎)とL1(第1腰椎)の間で反対に起こることになる(ちなみに、これは頚には常に捻れの力が発生することを意味する)。
この逆方向への回旋は、上部脊柱と下部脊柱の移行部であるT5(第5胸椎)とT6(第6胸椎)に至るまで続く。そして、ロベットリアクターとしての関連性は後頭骨と仙骨、尾骨と蝶形骨にも及ぶものである。

結語
めまいの原因の1つに内耳の内リンパ水腫があげられます。そしてこの原因の1つに、外リンパに影響を与える脳脊髄液の問題があると考えられます。
脳脊髄液は、最新の研究においては循環はせず、部位によって髄液の状態は一様ではなく、その動きは拍動に伴って上下しているものとみられています。
そしてまた、拍動以外に深呼吸や体位変換などにより、脳脊髄液の状態は影響を受けやすいということが分かっています。つまり、脳脊髄液の状態には良い悪いが存在し、後者の場合に表れる症状の1つにめまいがあって、脳脊髄液の状態の改善がめまいの改善になるということは確かであると考えます。

 

補足
メニエール病の検査では、これまでの2倍の解像度の高解像度MRIにより、内リンパ水腫が画像で確認できるようになりました。メニエール病の検査には保険が適用され、1万円前後の費用で受診が可能です。

介護のイライラを少なくするコツ

いつから介護が始まったのかと考えると、なかなか難しいところですが、ケアマネージャさんとのお付き合いからとすると8年目に入ったことになります。また、きっかけは回転性めまいを伴った突発性難聴による救急搬送でした。
100歳の大台がわずかに見えてきた母親ですが、現在も何とか要介護2を維持しており、世間で介護にご苦労されている人に比べれば、まだまだ楽なほうだと思います。
それでも、大きな声で話すこと自体がイライラの始まりで、お腹の底に隠れているストレスが隙あらば心を占領しようと狙っている様子です。
「このままではマズイぞ。何とかしないといけないなぁ。」と思うことが度々あり、そこで考え出したアイデア(心のもちかた)が次のものでした。
『母親も好きでよく聴こえないわけではない。好きでノロノロ歩いているわけではない。何度も同じことを聞くのは他に話すことが見つからないからだろう。愚痴や泣き言も心のバランスには良い薬になるだろう。そして、これらは全て【老化という化け物の仕業で本人も闘っている!』
という一文を、カリカリしはじめた脳ミソに放り込むという一手を加えました。

これにより、動き始めたストレスは大火事には至らず、ストレス指数も30%以上減っているという気がします。ご参考まで。

 

20年以上未改装の室内撮影は禁忌ですが、大変重宝しているポールをご紹介します。玄関に2本、トイレに2本、洗面所に2本、台所に5本、母親の部屋に1本、計12本のポールのおかげで母親は室内を移動することができます。

そしてこのポールは介護保険適用で1割負担のため、レンタル料は1本300円、12本でも月3,600円です。これは我が家にはなくてはならない必需品です。

 

追記)

コツというより本質ですが、「心をととのえること」と「大人化」が重要であると再認識しました。

鎌倉アルプス、天園ハイキングコース散策

 

 

 

 

 

鎌倉は北部の山の尾根を中心に、6つのハイキングコースがあり、その中で最も長いのが「天園ハイキングコース」とのことです。

先週2年ぶりに鎌倉に行ってきました。江ノ電だけでも魅力的ですが、高台で海も見えるという絶好の場所にサッカーとは無関係の幼なじみが暮らしています。会社勤めの頃はもっぱら年賀状のやり取り程度だったのですが、退職してからは、隔年でおじゃましている感じです。
湘南はやはり夏が一番なのですが、今年は8月が雨、9月も雨と二度に渡って空振りとなっていました。10月22日もどんよりとした曇りで決して良い天気ではなかったのですが、さすがに決行となりました。
鎌倉駅八幡宮出口から、建長寺~瑞泉寺、そして報国寺まで足を延ばす約2時間のハイキングコースが今回のテーマです。建長寺は一言でいえば質実剛健、瑞泉寺は清楚なお寺で花や木々との一体感が見事であり、報国寺は雄々しくまっすぐ天に向かう竹林の力強さに威圧されます。ハイキングコースとはいうものの、時に勾配も厳しく足腰が鍛えられます。
最高のロケーションの鎌倉カントリーコースを過ぎると、鎌倉アルプス最高地点159.2mのある大平山があり、ここを越えると概ね下りになります。22日は土曜日でしたが、天候のためかそれほど人は多くないものの、総勢50人くらいのややお疲れな親子の集団とすれ違いました。
鎌倉駅からの歩いた距離はざっと15km。しっかり歩いたおかげで、普通の生ビールが特別のビールのように思われました。帰りは鎌倉から浦和まで乗り換えなし。すばらしい!

鍼通電療法を検討する(後編)

鎮痛効果のメカニズム
添付した図は「鍼通電療法テクニック 運動器系疾患へのアプローチ」のp29図4-1(鍼の鎮痛メカニズム)に一部加筆したものです。①~⑦まで番号をつけていますので、この番号に沿ってご説明をします。なお、この鎮痛メカニズムは通常の通電を用いない鍼治療についても同様です。

①ポリモーダル受容器
受容器とは外部からの刺激を受け、その感覚を脳に伝える受付係のような役割をもったものです。
マッサージでは皮膚を撫でたり、押したりします。怪我した時などは氷で冷やします。また、足が冷たくて寝つかれない時は湯たんぽなどで温めます。
このように外部からの刺激には色々な種類があり、それに反応する受容器の多くは皮膚や筋肉内にあります。そして、刺激によってタイプの異なる受容器が存在しています。
図に出ている「ポリモーダル受容器」の特徴は皮膚、筋はもちろんですが、それ以外に腱、靭帯、骨膜などにも存在しています。また、刺すような刺激(機械刺激といいます)の他、熱の刺激にも反応する受容器で、機能的にも非常に汎用性の高い受容器です。つまり、鍼の機械刺激にも灸の熱刺激にも反応するため、鍼灸にとって最も重要であると言われています。


②感覚神経から脊髄へ
刺激を受けた受容器は刺激を電気信号に変換します。そして、脳へと繋がる道である感覚神経に渡されます。この後、電気信号は脊柱(背骨)の中で手厚く守られている脊髄に渡されるのですが、そこまでの道である感覚神経は末梢神経の仲間です。なお、脳から筋肉などに向う運動神経や血圧調整など人が意識することなく機能している自律神経も末梢神経に含まれます。


③脊髄から脳へ
電気信号は脊髄の後根を入口とし脊髄内部に入っていきます。脊髄は脳と同じ仲間の中枢神経ですが、脳の作りとは異なり、内部に灰白質と呼ばれる神経細胞群があり、周りを白質と呼ばれる神経線維が存在しています。そして、周りの神経線維群は電気信号を伝えるための道になっています。「鍼刺激」が変換された電気信号は、前側索エリアを通る脊髄網様体路の中を通って脳に向います。


④脳で起きていること
脳側の入口は脳幹です。脳幹は延髄・橋・中脳を含んでいますが、上方には大脳があり背側には小脳があります。脳幹には生命の維持に重要な呼吸、循環、排尿などの自律神経を調節する自律神経中枢が存在しています。また体性神経(感覚神経+運動神経)および内臓からの求心性情報がインプットされ、さらに大脳からの下行性情報もインプットされます。そして、脳幹の自律神経中枢はこれらの情報を統合し、様々な器官の機能に影響を及ぼします。
脳幹は間脳と共にホメオスタシス(生体の恒常性維持)調節の中核といえます。体表に現われた不調や問題個所を鍼灸で刺激することは、脳幹・間脳のホメオスタシス調節に働きかけます。そして身体を偏りのない健康状態に整えます。このことは鍼灸治療の狙いである「自然治癒力を本来のあるべき姿に戻す」ということに通じるものではないかと思います。


⑤下行性痛覚抑制系
中脳中心灰白質は第3脳室と第4脳室を結ぶ中脳水道(脳脊髄液の通路)を取り囲む神経細胞の集まりで、延髄の大縫線核や傍巨大細胞網様核とともに下行性疼痛抑制系の起始部です。また、体性神経や自律神経系、視床下部などの上位中枢と機能的に密接な連絡をしています。


⑥視床下部
視床と視床下部を合わせて間脳といいます。間脳は中脳の前方に続く部分で左右の大脳半球に挟まれた形になっています。機能的には体温・血糖・体内水分・下垂体ホルモン分泌調整の他、本能および情動行動の中枢が存在します。視床下部-下垂体系はβ-エンドルフィンによる鎮痛作用に関与しますが、内分泌系の中枢でもあるため、鎮痛だけでなく副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)によるコルチゾール(副腎皮質ホルモン)の分泌促進にも関係していると考えられています。


⑦脊髄後角(遠心路)
鍼刺激による情報は、脳内での情報処理を経て様々な器官に向けて発信されます。神経の終末には化学伝達物質と呼ばれる化学物質が蓄えられており、これらの物質が放出されることで情報が伝達されます。例えば、⑤の下行性痛覚抑制系でセロトニン神経とノルアドレナリン神経は鎮痛系の遠心路であり、脊髄後角に投射し痛覚の伝達を抑制します。

 

麻痺した筋肉への治療効果
今回の1番の検討目的は、片麻痺患者さまの麻痺足の浮腫みを改善する手段として低周波鍼通電療法はどうか。というものでした。鍼通電療法では電気刺激を筋肉へ誘導するものとして鍼が存在しており、刺激量を電流、周波数、時間の3点から客観的、持続的、安定的に刺激を供給できることは大きな利点です。
また、筑波大学の理療科教員養成施設が展開している「筑波大学式低周波鍼通電療法」に関する紹介文章には、筋肉のこわばり(脳卒中後遺症、脳性麻痺)とあり、鍼通電療法の有効性を公に示すものとなっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

筑波大学理療科教員養成施設(筑波大学大塚キャンパスは東京都文京区大塚にあります)

注)2017年11月14日:ホームページのアドレスが変更になっていることを知り、新しいものに変更しましたが、ご紹介したかった【「筑波大学式低周波鍼通電療法」に関する文書】を見つけることができませんでした。一方、J-Stageにて以下の論文がありましたのでアップさせて頂きます。 

ダウンロード
鍼麻酔から低周波鍼通電療法まで.pdf
PDFファイル 2.2 MB

結語
繰り返しになりますが、低周波鍼通電療法の利点は「刺激量を電流、周波数、時間の3点から客観的、持続的、安定的に供給できること」と考えます。
これは従来の手法である置鍼、単刺、雀啄などと異なるものではなく、特に短い時間で筋肉を緩める手段として有効な手法だと考えますので、注意点、特にペースメーカーの有無の確認を忘れず、状態、状況に応じて利用することを考えたいと思います。

ドーパミンの鎮痛作用

NHKの「総合診療医ドクターG」という番組は、臨床例を説明する総合診療医のドクターに対し、3名の研修医とゲストが原因や病名を考えるという番組です。
10月12日放送のテーマは「3ヶ月前から原因不明の腰痛で痛みが増している」というものでした。

骨でなく、筋肉でもなく、体重減少や食欲低下もないことから内臓痛も否定されました。

この時点で私は結合組織の慢性炎症疾患である膠原病の部類なのかなぁと思っていました。ドクターからは「体を動かすと痛いということは、イコール整形外科疾患である!」と強い口調で断言されたのが印象的でした(あらためて勉強になりました)。
結論は、病名はパーキンソン病で、痛みの原因はドーパミンの減少に伴い痛みの閾値が下がったことにより、結果的に痛みを強く感じるようになってしまったというものでした。
また、最初の映像の中で患者さんが右手で帽子を手渡す際、無意識となった左手にほんのわずかですが、振るえが見られました(これは「振戦」というパーキンソン病の特徴です)。
特にゲストからは、「あの時点であのわずかな映像から気づくのは無理!!」との声がいっせいに沸き起こりましたが、ドクターは「患者さんが部屋に入ってきた瞬間から診察は始まっている。特に緊張や意識をしていない時の状態や様子を診ることが非常に重要なんだ。」とのコメントがあり、「なるほど」と思いました。
前置きが長くなってしまったのですが、ブログに載せたいと思った理由は、ドーパミンの減少が鎮痛作用に影響するということを今まで考えたことがなく、ここまではっきりと痛みの原因に直結するという事実は意外なものであり、この機会にしっかりと理解したいと考えたためです。

 

調べた結果
下行性痛覚抑制系のメカニズムの説明でよく出てくるのは、縫線核系を経て脊髄を下行するセロトニン系と傍巨大神経細胞核を通るノルアドレナリン系の2つですが、実はそれらのメカニズムの上位に、視床下部の弓状核後部(A12)から放出されるドーパミンが起点となっているということが分かりました。
つまり、パーキンソン病によってドーパミンが減少していくにつれて、下行性痛覚抑制系による鎮痛作用が低下し、痛みに敏感になっていったということだったと理解できました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下行性痛覚抑制系は視床下部の弓状核後部から始まり、ドーパミンニューロンを介して視床下部腹内側核に至り、ここから2つの経路に分かれます。1つは縫線核系を経て脊髄を下行するセロトニン系で、もう1つは傍巨大神経細胞核を通るノルアドレナリン系の下行性抑制系です。両抑制系は脊髄後側索を下行し、脊髄後角で末梢から入力された痛覚情報を脊髄全体にわたって遮断することにより痛みを抑制します。

画像出展:「はり理論」 東洋療法学校協会編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは視床下部に存在する核を表した図です。左下の下垂体の直上に弓状核があります。

画像出展:「人体の正常構造と機能」 日本医事新報社

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは外部刺激が末梢神経(感覚神経)から脊髄-脳幹-大脳へと伝わることを示した図です。

画像出展:「痛みのマネジメントupdate」 日本医師会

さらに、ドーパミンの特徴と働きを知る上で、神経と神経伝達物質について理解する必要があると考え、情報を収集し整理しました。
1.ドーパミンとは
運動調節、ホルモン調節、快の感情、意欲、学習などに関わる神経伝達物質です。

(引用:「痛みと鎮痛の基礎知識(上)」技術評論社)

2.神経とは
脳や脊髄も神経ですがこれは中枢神経とよばれています。働きは何かを考えたり、あるいはすっぱい物を見ると自然に唾液が出たり、誤って水分が気管に入ると激しく咳きこんだりといった反射といわれる作用に関与しています。
一方、足や手はもちろん体全体に張りめぐらされている神経は末梢神経とよばれています。皮膚をつねると痛いのは末梢神経の中の感覚神経が働いています。


下の図(上から順に①②③)に従って説明させて頂きます。

 画像出展:「細胞と組織の地図帳」(講談社)
①これはニューロンの全体イメージです。枝のようなものは1つ(黄色)は樹状突起であり刺激に反応します。もう1つ(オレンジ色)の枝は軸索であり刺激による興奮を他のニューロンや細胞に伝えます。左端にシナプスとありますが、これはリレーのバトンゾーンのようなもので、ここで興奮が伝達されます。
②左の木の幹のようなものが、ここでは脊柱(背骨)に守られている中身の脊髄です。そこから出てきているものが末梢神経で右側の図は神経の内部構造を拡大したものです。
③これは中枢神経になります。右下に拡大された図がバトンゾーンの「軸索-樹状突起シナプス」です。右端に非常に小さく、Boxで囲まれた「シナプス前膜」「シナプス後膜」があり、その上下に「シナプス小胞」、「シナプス間隙」と書かれています。
興奮が軸索終末(軸索のおしり)に伝わるとシナプス小胞という袋がシナプス前膜と融合し、袋の中から神経伝達物質がシナプス間隙という狭い空間にばらまかれます。一方、シナプス後膜には神経伝達物質を取り込む、受容体(レセプター)というものがあります。この一連のやり取りによって興奮は継続されます。

3.神経伝達物質とは
ニューロンで生産され、シナプス小胞の中にあり情報の伝達に関わる物質です。神経伝達物質には神経細胞を興奮させるタイプだけでなく抑制させるタイプもあります。
ホルモンなども「細胞間伝達物質」ですが、血流などに乗り全身の広い範囲に作用します。それに比べ、神経伝達物質は神経間あるいは神経と筋肉間での情報伝達に限定して作用します。

4.ドーパミンの特徴
ドーパミンはノルアドレナリンやアドレナリンになる前段階の物質(前駆物質)です。
ドーパミンを作る神経細胞(ドーパミンニューロン)は中脳と間脳(視床・視床下部)にあります。中脳にあるA9という番号がついた「黒質緻密部」とA10の「腹側被蓋野」が重要とされていますが、A8からA15まで計8個のドーパミンニューロンがあり、今回のテーマである痛みの抑制に関係するドーパミンニューロンはA12という視床下部弓状核によるものです。
なお、ドーパミンニューロンは大脳基底核とそれに指令を与える大脳皮質(とくに前頭前野や帯状回など)に枝を伸ばしてドーパミンを放出します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下行性痛覚抑制系に関わるセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンは延髄・橋・中脳という脳幹部に神経核が存在してます。

画像出展:「痛みと鎮痛の基礎知識(上)」技術評論社

5.ドーパミンの働きとパーキンソン病に見られる症状
行動をどのような順番に組み合わせて起こすかということを企画したり、戦略を練ったりする働きをしています。

従って、パーキンソン病のようにドーパミンが少なくなると立ち上がって歩こうと思っても、身体がすくんでしまって、どういう順番に筋肉を動かしていいかわからなくなったり、身体が震えたり、運動そのものができなくなってきます。
また、物覚えが悪くなったり、忘れっぽくなったり、万事がゆっくりになって反応が鈍くなり、集中力や注意力も失われ、無力感、無気力になったりします。ドーパミンが逆に多くなるのも良いことではありません。幻覚やパラノイア(精神分裂病の陽性症状)が起こったり、話や運動をコントロールできなくなったり、同じ行動を反復する強迫神経症になったりします。

小野田寛郎

昭和49年、1974年3月にテレビは1人の兵士を映し出していました。直立不動で目力などという生易しいものではない、その凄まじい眼光に完全に圧倒されました。
それが、ルバング島から帰還された最後の軍人 小野田寛郎少尉でした。

しかしながら、部活に没頭していた学生時代に小野田さんの本を手にすることはありませんでした。
そうして、40年後の1月、小野田さんの訃報が世間に流れたとき、「小野田さんの本を読まねば」という使命感のような思いが40年前の驚きと共に去来し、時を経ず1冊の本を購入しました。
小野田さんに対する評価は、必ずしも良いものだけではなく、ルバング島での行動を否定的にみる人もいます。私自身も一方的に敬服するというものではなかったのですが、少なくとも、その強靭な信念を連想させる眼光の鋭さは真実であり、否定することは不可能でした。その「不撓不屈」の精神にあやかりたいという子供のような気持ちもあり、手に入れた本は、40年前の強烈な写真が写っている「たった一人の30年戦争(東京出版新聞局)」という本で、直筆のサインが入った貴重なものでした。

小野田さんが昭和59年、1984年に設立された「小野田自然塾」は現在も継続されており、累計20,000人以上が日常では体験できないような事をこの塾で学ばれています。
これは本当に素晴らしい功績だと思います。(人数は「小野田自然塾」に確認させて頂きました)

最後に、この本を締めくくる「こぼれ酒」という一文をご紹介させて頂きます。私はこの本を読み終えたときに、小野田さんは真実の軍人であり、そして想像していた通りの素晴らしい人であるということを実感しました。


『大正11年3月19日生まれの私はいま、73歳の人生を懸命に生きている。21年前、祖国に生還し、すぐブラジルへ移住して牧場開拓、やっと牧場経営が起動に乗ったのを機に、10年ほど前から子供たちのキャンプ「小野田自然塾」に残りの人生に賭けている。私は少し遅れたが、幸運にも帰還した。しかし“終戦”はなかった。
私はときどき、自分がいま生きていることが不思議に思えることがある。まず、あの戦争で生き残ったのが不思議である。次に、二人の戦友が死に、たった一人の戦争を続けていた昭和47年11月、ルバング島に最後の捜索にきていた政府調査団団長の柏井秋久氏(当時厚生省引揚援護局審査課長)はフィリピン空軍ランクード中将に、急きょ、マニラ司令部への出頭を命じられたという。
「速やかに小野田捜索に決着をつけられよ。比空軍兵士300名を貴下の指揮下に入れる。直ちに威力捜索を実施せよ」
威力捜索とは、集中砲火で敵をおびき出す強行作戦だ。柏井団長は「彼我に死傷者を出す危険性が高い」と合意文書へのサインを拒否し、決断はマルコス大統領にゆだねられた。大統領は柏井団長に「団長のお考え通りやりなさい。比側は可能な限り援助する」と告げた。
“投降”時にも危機があった。私に対する住民の報復を恐れ、西ミンドロ州知事が村々を説いて回った。案の定、険悪な雰囲気だった。そのとき、若い小学校女性教師が立ち上がり、涙ながらにこう訴えたという。「私の父はオノダに殺されました。でも、オノダの中では、まだ戦争は続いていたのです。」
私は無事に山を下り、いまこうして祖国で生きている。
戦後五十年のことし、阪神大震災に続き、日本中を震撼させた地下鉄サリン事件、子供たちのイジメ自殺まで、「生と死」を考えさせられる事件が頻発している。
私は戦場での三十年、「生きる」意味を真剣に考えた。戦前、人々は「命を惜しむな」と教えられ、死を覚悟して生きた。戦後、日本人は「命を惜しまなければいけない」時代になった。何かを“命がけ”でやることを否定してしまった。覚悟しないで生きられる時代は、いい時代である。だが、死を意識しないことで、日本人は「生きる」ことをおろそかにしてしまってはいないだろうか。
酒飲みの話によると、一番うまい酒はコップから受け皿にあふれた“こぼれ酒”だそうだ。いまの私の人生は、こぼれ酒のようなものである。しかし、下戸の私にはこぼれ酒のうまさはわからないし、余禄の人生を楽しむ余裕もない。
拾った命に感謝し、二人の戦友を“戦後”になって戦死させたという負い目を背負って、私は残りの人生を生きていく。平成七年、戦後五十年の夏 小野田寛郎』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2016年1月27日 朝日新聞夕刊

筋連結

「骨格筋の形と触察法」という本があります。これは筋肉を深く知り、施術力を向上させるために有効な本です。特にこの中の「筋連結」という考え方は重要であると思うのですが、私が知る限り解剖学系の本などでも見かけたことがことがないため、ここに焦点を当てたいと思います。
下記はこの本の筋連結について説明されたものです。そしてその下方の図は、特に頻度が高いと思う筋肉を中心に私が再構成して作ったものです。

 

『筋の起始や停止を詳しく観察すると、筋線維の初まりや終わりが骨(骨膜)のみではなく、隣接する筋の筋膜や腱にもあることが多い、例えば、前腕筋膜や下腿筋膜を近位方へたどると、筋腹中央付近の筋膜に比べて丈夫で厚い膜に移行する。この厚い膜の内面を観察すると、その膜から始まる筋束が確認できる。すなわち、筋膜は徐々に筋束が始まる起始腱膜に移行しており、この腱膜が集まって骨膜と融合し骨につながっている。この起始腱膜は隣接する筋と筋との間にも、筋間中隔のように存在し、その両面から異なる筋の筋束が始まる。

このように、隣接する2つの骨格筋において、それぞれの筋線維の先端同士が、腱、各種の筋膜、筋間中隔、骨間膜、関節包、靭帯を介して接続することを、我々は筋連結と呼んでいる。
筋連結は、このようにほぼ並列に隣り合う筋間以外に、ほぼ直列に位置する筋間にも存在する。例えば大殿筋の停止は腸脛靭帯や殿筋粗面以外に大腿四頭筋の外面を覆う起始腱膜にも終わる。我々は、大殿筋の収縮がこの筋連結を介して大腿四頭筋を牽引することを報告した。

この中で大殿筋が膝伸展の作用に多少なりとも関与していること。またこの連結部に付く大殿筋の筋束を伸張させるためには、大腿四頭筋の伸張も同時に加える必要があることを示した。よって、筋連結は我々にとって重要な解剖学的情報となる。

このように筋連結は、ごく一般的に全身の筋の至る所で観察できる。そこで本書は、現在までに我々が確認した全ての筋連結を本文中に列挙し、可能な限りその写真も掲載する。』

 

これは大変興味深い内容であり、実際の治療の中で注目していきたいと考えますが、やはり「筋連結」という考え方がこの著者を含めた一部のものなのか、一般的に使われている用語なのかを確認する必要があるだろうと思い調べてみました。

その結果、最も多く使っているのは理学療法士(PT)であることが分かりました。J-Stageには筋連結で検索するといくつかの論文が検索できます。


鍼通電療法を検討する(前編)

経緯
現在、私は自宅近くにある訪問鍼灸・マッサージのプラナ治療院で週2回、仕事をしています。
患者は高齢者がほとんどですが、中には脳卒中後遺症による麻痺の患者さまやパーキンソン病などの中枢神経系の障害をもった患者さまもいます。
30分という治療時間を考慮し、標治に重きをおいています。また、硬くなった筋肉を緩めるには、置鍼時間を長くとったり、雀啄などの鍼の手技を加えたりするのが一般的なのですが、麻痺により動かないという状態の筋肉でも効果をだすため、さらに良い方法を探していました。
そこで、候補に上がったのが「低周波鍼通電療法」です。専門学校時代にこの手法の授業を受講しており、復習の目的で学校で使っていたものと同じ装置も購入していました。また、プラナ治療院には携帯できる小型の通電装置を使っている仲間もおり、その評判も聞いていました。
しかしながら、専門学校卒業後は経絡治療という東洋医学に基づく手技だけに取り組んでおり、鍼通電療法からは完全に離れていたため、まずは学校で使っていた「鍼通電療法テクニック 運動器系疾患へのアプローチ」を復習することから始めることとしました。


電気刺激法の起源
電気を使った痛みの治療の起源は古代エジプト(紀元前3000年)といわれています。これは墓石に電気ナマズの彫刻が残されたことが由来となっています。また、古代ギリシャの哲学者のアリストテレスも電気エイが痛みを和らげることを伝えています。
興味深いのは、電気エイの電圧は40~50Vで現在の低周波装置に近いということです。なお、電気魚の活用はヨーロッパでは18世紀まで続きます。
1744年には約100年前に発明された静電気装置をベースに人工的な電気が医学に応用されました。そして19世紀になると、アメリカで歯痛に電気刺激が有効であることが知られ、多数の臨床試験が行なわれました。こうして1858年にはアメリカの外科医によって最初の電気刺激装置の特許が取得され、その技術はヨーロッパへ伝えられました。


鍼通電療法の起源
初めて鍼に電気を通して治療を行ったのは、1825年にフランスの医師が日本や中国から貿易によってもたらされた鍼に通電を行ったのが最初であるといわれています。


鍼通電療法の始まり
1965年に東京教育大学附属理療科教員養成施設(1978年から筑波大学理療科教員養成施設)の芹澤氏らがパルスジェネレーターを開発し、運動機能に及ぼす影響について報告しています。
また、1966年にはペインクリニックにおいて安全な鎮痛方法として直流による鍼通電療法が既に紹介されています。
一方、鍼麻酔ではある程度強い刺激を20分間程加える必要があり、そのための手段として電気を使って鍼刺激を継続的、安定的に行う装置が開発されました。
1972年にはアメリカのニクソン大統領が訪中した際に、中国の鍼麻酔が「ニューヨークタイムズ」に報じられ、大統領の専属医師により鍼麻酔の驚くべきエピソードが欧米に衝撃を与えました。
報道の直後から、「サイエンス」などの世界の科学雑誌には、多数の鍼麻酔の効果に関する報告が掲載され、効果の是非に関する議論が巻き起こりました。そして、その議論の決着に大きな指針を与えたのが、1973年のオピオイド受容体の発見であったといえます。
オピオイド受容体は中枢神経に存在し、麻薬様物質と特異的に結合するもので、研究者たちは鍼刺激で痛みが和らぐ仕組みも、この受容体を通して生じるのではないかと考え研究を進めていましたが、ついにその仮説は科学的に証明されるに至りました。
この科学的発見は、その後、鍼治療を世界的に普及させることに大いに貢献しました。
1980年代になると鍼通電刺激は外科手術で使われる鍼麻酔としてよりも、むしろ運動器系や循環系、神経系、婦人科系、泌尿器系、精神領域などの様々な症状に効果があることが知られ、その結果広い分野で鍼通電刺激が利用されるようになっていきました。
筑波大学理療科教員養成施設では1980年代に入って多くの患者に対して鍼通電療法を行い、多数の臨床例を発表しています(「医道の日本」49巻12号~54巻6号に掲載)。

 

メリットとデメリット
従来の鍼治療は、手技操作によって行われるため、客観的に刺激量を測ることは困難でしたが、鍼通電療法は時間、周波数、電流量を変えることで定量的に刺激量を変化させることができます。
刺鍼ポイントや深さ、刺鍼方向については、鍼灸師のスキルに依存しますが、鍼による刺激については客観的に把握できるため、治療法の平準化やエビデンスの作成という点においてメリットがあります。
また、雀啄のように鍼に刺激を加えながら、置鍼のように長い時間持続させることができるため、筋肉への刺激という意味では、安定的、効率的に行えるという点もメリットです。
鍼通電療法では鍼は筋肉まで電気を誘導する役割をはたしています。「まるで小人がハンマーでコツコツ叩いているようだ」と表現された人がいるようですが、従来の鍼治療にはない心地よい感覚を得ることができるのも特徴です。
なお、筋肉の刺激による効果は、一般の鍼治療も同様ですが、筋肉の血行を改善し硬くなった筋肉を軟らかくします。また、筋肉を刺激することで筋肉を支配している神経に含まれている求心性神経を興奮させ、中枢神経に信号を送りますが、この信号は鎮痛系を活発化させたり、反射によってホルモンの分泌や自律神経を調節したりします。

一方、デメリットとしては装置が必要であるということです。また、下記の「安全確保のために理解しておく事」に書かれた内容ですが、ペースメーカーを使っている患者さまには使えないなどの、鍼通電療法ゆえの守るべき注意事項があるということです。

 

安全確保のために理解しておく事
鍼通電療法は電気を用いるため、電気による過誤の可能性を考慮して安全管理を行わなければなりません。
ペースメーカー
ペースメーカーを付けられている患者さまは、鍼通電療法は絶対禁忌であり、仮に依頼されたとしても絶対に行ってはなりません。それは、ペースメーカーを使用している場合、鍼通電療法を行うとペースメーカーの動作に影響が現われることが報告されているためです。
漏れ電流
漏れ電流とは、電子機器から通常の電源ラインを通らずに外部に漏れ出す電流です。この漏れた電流が人体を通過するとショックを起こす原因になります。
漏れ電流が発生する可能性は、他の電子機器と組み合わせて使う場合が考えられるので、心電図などの電子機器がつながっている状態では鍼通電療法は避けなければなりません。
しかしながら、どうしても電子機器と一緒に使用しなければならない場合は、乾電池式の装置の方が安全性が高まります。これは装置から生体への電流の流れを独立させることができるため、電流の漏れを少なくすることができるためです。

浦和レッズ、13年ぶりJリーグカップ優勝!

試合後、多くの選手が話していたように、日本に来て好チームを育成しながら、優勝に無縁だったペトロビッチ監督を優勝監督にできて本当に良かったと思います。
後半31分途中出場の李選手が、最初のプレーで同点ゴールをものにしたのは間違いなくMVPですが、PK合戦でガンバの新人プレーヤー呉屋選手のPKを、キックの瞬間まで動かず、冷静に右足で防いだプレーもひかりました。

埼スタで決勝戦を落とすのは最悪の気分なので、浦和レッズの選手、スタッフの皆さんに感謝です。

聖地、駒場サッカー場の初代の姿です。正面に長イス型の座席が数段。それ以外は芝生席でした。グランドができる前はは沼地のような土地だったように記憶しています。1965、6年の話です。

なお、2つの写真は埼玉県サッカー協会所有のものです。

駒場サッカー場は1967年の第22回埼玉国体のために作られました。この写真は浦和南vs韮崎の決勝戦です。私が見た試合も雨で多くの観客がいたので、この試合だったのではないか思います。記録によると、2対0で浦和南校が全国制覇を成し遂げていました。

メルボルンで勝点1、次は正念場のサウジ戦

選手は意図と意志をもって確実にファイトした。アウェイのオーストラリアに勝点1は今のチーム状態を考えれば悪くない。個人的には後半10分、香川→清武、小林→斉藤の2枚替えで、両サイドからの積極果敢なアタックによる2点目を見たかった。それにしても、オーストラリアの快速サイドアタッカー、マシュー・レッキ―は何故スタメンでなかったのか? 助かった。

次は絶対勝利のサウジ戦。まずはチケットの神様、よろしくお願いします。

ドックランズ・スタジアム (Docklands Stadium)

止まれる体を作る

10月1日に放送された「やべっち F.C.」には、しゃべりが得意とは思えない原口選手の独占インタビューがありました。
タイ戦では狙いすましたようなダイビングヘッドが見事に決まり、劇的な勝利だったイラク戦でも技ありゴール、そして何といっても積極的な守備でチームを鼓舞する姿は、レギュラーポジション取りに向けて視界良好という感じです。
その独占インタビューの中で、語られた「止まれる体を作る」という内容は、新鮮かつ印象的で放送後さっそくネットで調べてみました。
そして、「Sports Graphic Numberweb」 にほぼ同様の記事が出ていました。

この中で、フィジカルコーチとして紹介されていた「谷川先生」とは、アテネオリンピックで110mハードル日本代表の経験をもつ、谷川聡氏のことでした。
「止まれる体」について書かれた本は無いかと探してみましたが、残念ながらそのような本はありませんでした。

 

実はこのWebサイトを見つける途中で、同じくらい興味深いサイトを発見しましたのでこちらもご紹介します。それは、ジャーナリストの片野道郎さんのTIFOSISSIMO!!!というアーカイブで、記事の見出しは「ローマのフィジカルコーチが語る中田英寿(2001.04)」というものでした。

そこには、

『…“フィジカル”という側面に焦点を当ててみたい。フランス戦の日本代表の中で、中田ひとりだけが、濡れた芝に過剰に悩まされることも、激しい当たりに吹き飛ばされることもなく、言ってみれば“フランス人と同じように”プレーできたのは一体なぜなのか…』

とは、まさに当時の試合映像から感じた私の疑問そのものでした。そして、「止まれる体」のトレーニング方法について、簡潔ですが次のように記述されていました。
『瞬発力強化のメニューとしては、プライオメトリクス(伸展性筋収縮を伴うトレーニング)や上り坂のダッシュなどがあります。伸展性筋収縮、つまり筋肉が伸びきった状態でのパワーというのは、走るときではなく止まるときに重要になります。同じくらい足が速い2人の選手がボールを追ったとき、早くボールに追いつくのは止まる能力の高い方ですから、ブレーキングは重要です。ヒデのブレーキはABSつきですよ。スリップしないで短距離で止まれる』
さらに、

『“倒れない”ためのバランス能力の強化。“怪我や故障をしない”ための筋力バランスの取れた脚づくり、“ボールを奪われない”ため、あるいは“スリップせず短距離で止まる”ためのパワーアップ——。中田が取り組んできたひとつひとつのトレーニングメニューが、プレーの個々の局面に即して、それに対応する身体/運動能力を高めるという、明確かつ具体的な目標を持っていることに、改めて驚かされる。』

ということがコメントされていました。
この記事は15年前の2001年の話です。今までフィジカルコーチという仕事には興味がなかった私でしたが、一気にフィジカルコーチの存在に関心を持ちました。
そして、日本選手に求められる「決定力不足」はメンタル面に着目するより、実戦から生まれた欧州型の強いフィジカルを身につけることが早道になるかもしれないと直感しました。

 

最後にASローマのフィジカルコーチ、マッシモ・ネーリ氏が中田選手に行ってきたフィジカルトレーニングについて書き出したいと思います。
①中田選手自身がフィジカルの強化を不可欠と考えていた。
②ペルージャ時代から、チームの練習の前後に「独自のメニュー」によるトレーニングを積極的に

 こなしていた。
③イタリアではフィジカル・トレーニングの2〜3割は個人別に作られた特別メニューである。
④主な強化のターゲットにしていたのは、「動的・静的なバランス能力」、「下半身の筋力」、そ

 して「有酸素・無酸素の持久力」であった。
⑤下半身は脚全体の筋肉のバランスを高めることが重要である。(中田選手の場合、ふくらはぎの

 筋肉が非常に発達しておりパワーもあるので、大腿部の筋肉を中心に強化した)
⑥瞬発力強化のメニューとしては、プライオメトリクス(伸展性筋収縮を伴うトレーニング)や上

 り坂のダッシュなどがある。
⑦伸展性筋収縮、つまり筋肉が伸びきった状態でのパワーというのは、走るときではなく止まると

 きに重要になる。

 

 

サッカーの足首損傷、予防プログラムで40%減

これはエムスリー(https://www.m3.com)という医療情報等を提供されているサイトの医療ニュースになります。

4121人の男女サッカー選手を含む10件のランダム化比較試験(RCT)のレビューから、足関節損傷の予防プログラムにより同リスクが40%軽減するとの結果が明らかになった。サッカー選手の足関節損傷に対する予防的介入の有効性を示した研究は初めて。米国では年間22万7700人がサッカー関連外傷で治療を受け、このうち足関節損傷患者は3万6300人を超えると見られている。米国整形外科学会(AAOS)が9月7日、Journal of Bone and Joint Surgery誌の掲載論文を紹介した。
今回の検討では、足関節損傷予防プログラムを検討した10件のRCTから、男女サッカー選手4121例のデータを解析。予防プログラム導入により、足関節損傷リスクが40%減少することが判明した。評価対象となったRCTは、足関節損傷を予防するための運動として、神経筋運動、固有受容性運動(バランス)、筋力強化運動、ストレッチ運動の有効性を検討したもので。装具やテーピングなどの外部サポーターについては検討していない。
研究グループは「今回の新たな知見が医師による患者へのエビデンスに基づく指導の裏付けとなる他、選手の負傷リスク低減を目指すコーチや選手の意思決定にも役立つだろう」とコメントしている。』

発信元(http://newsroom.aaos.org/media-resources/news/prevention-programs-significantly-reduce-ankle-injuries-in-soccer-athletes.htm)

 

この記事に書かれた内容を詳しく知りたいと思い、たどりついたサイトが下記になります。

左側の種目の中からSoccerをクリックすると、「予防法(HOW CAN SOCCER INJURIES BE PREVENTED?)」として11項目あり、例えば「使い過ぎ(Avoid overuse injuries)」では5つのポイントが指摘されています。
・練習量が多いということは必ずしも良いことではない。
・スポーツ医療関係者は毎年、オフ期間を取ることを推奨している。
・若いアスリートは「練習しすぎ」という誘惑に負けないようにする。
・自分の体調変化を意識し、もし痛みや嫌な感じがあるようなら、練習時間や強度を下げる。
・これらのことにより、怪我のリスクを下げ、そして燃え尽き症候群やオーバートレーニング症候

 群といった問題を避けることができる。

 

英語のサイトではありますが、日本では見かけない情報サイトのためご紹介させて頂きました。

 

 

イラクに勝点3!次はオーストラリア戦

19:00、埼玉スタジアムに到着。

試合直前のアップです。

興奮状態で取った写真です。

開始早々のコーナーキック、観てる我々もまだ集中が甘い。イラクのヘディングシュートはポストに弾かれゴールキックになったが、失点してても不思議ではない場面だった。今のJapanはセットプレーからの失点が多い。もっと深く研究し、もっと激しく練習すべきだ。
日本の1点目は清武選手のランニングが素晴らしかった。特に本田選手の外側を回りパスを受けたことが最高のプレーである。
そして、ゴール前にいたのが100%のファイティングスピリットで幸運をよんでいる原口選手だった。踵で流し込んだシュートがゴールキーパーの股間を通り抜けたのは、やはり彼のファイティングスピリットからくる気迫によるものだろう。
後半のイラクの同点ゴールは、残念ながらセットプレーからだった。残り7試合、セットプレーからの失点0をチーム目標に掲げよう!
今日もイージーミスは少なくなかったが、勝利への強い気持ちは前回のUAE戦より優っていた。だから勝てると思った。しかし、残り10分の本田選手のヘディングシュートが、立ち上がりのイラクのヘディングシュートと同じようにポストに嫌われた瞬間は、今日は引き分け、勝点1で終わるかもしれないと感じた。

終盤、つまらないイラクの時間稼ぎによるロスタイムは6分あった。日本が空中戦を仕掛け始めると
周りの観客は総立ちで、私の角度からは右側のコーナーフラッグ付近は全く見えなくなった。

決勝ゴールを生んだフリーキックが清武選手だったというのは自宅でのスポーツニュースを見て知った。フワッとはね返ってきたボールを山口選手がうまくボレーでとらえ、弾道の低いシュート
が放たれた瞬間は目でとらえることはできた。しかし、残念ながらゴールネットを揺らす最高の瞬間、感動、映像に接することはできなかった。
次は来週11日の強豪オーストラリア戦、相手をのみこむ程の強いファイティングスピリットとチームの団結があれば勝てると思う。日本がんばれ!

オートファジーとパーキンソン病

大隅良典栄誉教授がノーベル生理学・医学賞の栄誉に輝きました。特に単独受賞は1987年の利根川進博士以来ということで快挙とのことです。
私がオートファジーの話を出すのは、明らかに無理があるのですが、オートファジーが特に家族性パーキンソン病の原因に関係しているということだけは知っていました。
かなり乱暴ですが、私が理解しているパーキンソン病との関係は次の2点です。
①細胞の中でエネルギーを作り出す、工場のようなミトコンドリアが鍵を握っている。
②不良なミトコンドリアを掃除し、品質維持を担っているのがオートファジーである。

この内容は、「医学のあゆみ」という雑誌のバックナンバーを読んで知りました。
その雑誌には、大隅教授の受賞について感想を語る姿が、度々テレビに映し出されていた水島昇教授が、その冒頭の「はじめに」を書かれていましたので、ご参考として、その内容を引用させて頂きたいと思います。

 

『オートファジーによるミトコンドリア分解、すなわちマイトファジーの研究がこれほどまでに活発になるとは10年前にはとうてい予想できなかった。もはやオートファジー研究とミトコンドリア研究にまたがる融合的研究領域というレベルをはるかに超え、それぞれの領域の主要研究テーマに成長した。
大きなきっかけは、2008年にアメリカNIH(アメリカ国立衛生研究所)のYoule研究室によって家族性パーキンソン病原因遺伝子であるPARK2/ParkinおよびPARK6/PINK1が不良ミトコンドリアの分解に関与することを示したことである。それ以前にもオートファジーがミトコンドリアを比較的好んで分解すること、パーキンソン病とミトコンドリア異常が関係することは知られていたが、ついに分子レベルでの実体が急浮上したのである。

以降、日本を含めて世界的にParkinとPINK1の詳細な分子機能の研究が怒涛のごとく推進され、本特集で紹介するようなモデルに到達している。しかし、マイトファジーに関する多くの研究は培養細胞で行われており、マイトファジーの異常が真にパーキンソン病の病態を説明できるかどうかはまだ十分とはいえない。

これは実際の脳でのマイトファジーを評価することが困難であることや、Parkinのマイトファジー以外の機能(ミトコンドリア外膜蛋白質分解など)の貢献が十分解析されていないことなどが理由である。
一方、パーキンソン病と関連しない分野でもマイトファジーの研究の進捗は著しい。出芽酵母では、ミトコンドリア認識に関するレセプター分子Atg32が発見された。しかし、これは哺乳類には保存されておらず、哺乳類ではp62などのアダプター分子や他のレセプターによる認識に加え、オートファジー因子に依存しない認識機構も提唱されている。

一方、ミトコンドリアの母性遺伝という生物学の大問題についても、少なくても線虫ではマイトファジーの関与が明らかになっている。
さらに、ミトコンドリアの品質管理は上述したパーキンソン病のような神経変性疾患だけでなく、がんをはじめとする多くのヒト疾患とも密接に関連することが予想される。基礎から応用に至る幅広い分野でマイトファジーから目が離せない状況はまだ続くと考えられる。本特集がその一助となることを期待したい。』

こちらは、目次になります。

新しい自転車を買ったわけ

新しい自転車を9月2日に購入しました。自転車愛好家というわけではないのですが、坂道も自転車から降りることなくスイスイと走っていたいため、2002年から前3段、前後合わせて15段以上の変速機がついたクロスバイクに乗っています。

ちなみに、2002年というのは日韓サッカーワールドカップが開催された年ですが、埼玉スタジアムで行われる「日本対ベルギー戦」観戦のため、圧倒的に便利な自転車を買い求めました。
今回の自転車は3台目ですが、購入日が9月2日だと分かるのは、ちょっとした事件があったためです。

前日9月1日はサッカーワールドカップ最終予選のUAE戦が埼玉スタジアムで行われた日ですが、運よくチケットを入手できた私は、天気も良かったため、機嫌よく自転車で埼スタ登場という段取りでした。

ところが試合結果は散々、「さっさと帰って、風呂にでも入ろう。」などとブツブツ考えながら、ややスピードを上げ帰り道を急いでいました。残り1、2kmのところにコンビ二があるのですが、数日前から移転のため店は閉められ、明かりのない周辺はかなり暗い状況でした。
初めて通る道ではないので、明かりさえついていれば、あるいは気分よくノンビリ走っていれば、こんなことにはならなかっただろうと後悔するわけですが、、、
「ガツン!」という衝撃後、体は宙を舞い、そしてアスファルトにたたきつけられました。お恥ずかしい限りの転倒です。それは、走っていた車道が信号待ちの車列のため道がふさがれており、歩道に入ろうとしてハンドルを左にきった瞬間のできごとでした。

それなりに派手にとんでいたようで、停車中の車から一人の親切なおじさんが、「大丈夫ですか?」と声をかけてくれました。幸い、頭も首も問題なく、骨折するようなこともなかったのですが、「おかげさまで、大丈夫です。」と言いおえる寸前に、左肘の厚皮がムケて血がタラタラと落ちているのに気がつきました。とはいえ、大きな怪我もなく、まさに不幸中の幸いというところでした。

余計なお世話と思いますが、自転車に乗るときは縁石にはご注意ください。原因は左の写真に写っている、微妙にカーブがついた縁石です。右の写真のバックは埼玉スタジアムです。

補足)今回の出来事に巻き込まれた2台目は、もともとお疲れ気味だったこともあり、また修理も必

   要となるため、引退となりました。


【YHP】

ホームページの「その他」→「参考図書」のページにガレージらしき写真を、何の説明もつけずにポンと置いていますが、それについてお話したいと思います。
この写真のタイトルは「Rules of the Garage」といい、1999年当時、米国ヒューレット・パッカード社(HP社)の新CEOであったカーリー・フィオリナが、創業者のビル・ヒューレットとデイブ・パッカードが築いたHP Wayの精神を再考し、あらためて行動規範としてまとめたものです。

原点であるHP Wayはビル・ヒューレットが語った次の言葉が象徴的であるといわれています。
それは、「信頼と尊厳。社員は男女を問わず誰でも良い仕事、創造的な仕事をしたいと思っている。それに相応しい環境におかれれば、誰でもそうする。会社は本当に社員が働きやすい環境・制度を整備する。社員はそうした会社の姿勢に応えるべく責任と義務を要する。」
というものです。なお、二人が使った創業当時のガレージは米国ITの象徴ともいえる、シリコンバレー発祥の地として「史跡」に指定されています。
HP WayはHP社で働く者にとっては、DNAともいうべき考え方ですが、私が最も印象に残り、判断や行動の拠り所として、心に置いていたのはHP Wayではありません。

それは会社説明会で渡された会社案内のトップページに書かれていた、「One for all, all for one」でした。今でこそ有名ですが、34年前の自分にはとても新鮮で、何故かハッとさせられたという記憶があります。
ラグビーでよく使われる言葉だということを知り、その意味するイメージを深く理解できたと思います。仕事が楽しく、前向きに取り組むことができたのは、この言葉を大切にしてきたからではないかと思っています。
そして、この言葉は入社当時の人事部長で、56歳という若さで他界された木本建治さん、早稲田大学ラグビー部OBで1987年の日本選手権では、監督として社会人の強豪東芝府中を撃破し、大学最後の優勝監督となった木本監督を思い出します。

ずいぶんと日焼けしてしまいましたが、貴重な1冊です。

写真はtownphoto.netさまより拝借。2010年5月撮影のようですが、この「HPストリート」の風景は1980年代当時と変わらないように思います。

スポーツ医について

スポーツ医とは、日本整形外科学会発行の「スポーツ医へのかかわり方」によると、
「スポーツが好きで、スポーツをする方々の気持ちを理解し、そのサポートをすることに喜びを持って、スポーツ外傷・障害の治療、予防、競技力向上などに医学的な面から取り組んでいる医師です。」と説明されています。

また、日本には、「日本整形外科学会認定スポーツ医」、「日本医師会認定健康スポーツ医」、「日本体育協会公認スポーツドクター」という3つの資格があります。
これらの3つの資格に共通しているのは、25単位(25時間)の基礎講習を受講するということですが、それぞれには特色がありますのでご紹介させて頂きます。

日本医師会認定健康スポーツ医
応募資格 : 医師経験年数は問わない
講習科目 : 25単位
健康スポーツ医とは 
 国民の健康増進に対する要望が高まるにつれて、発育期の幼児、青少年、成人、老人等に対する 運動指導を含めて地域保健の中でのスポーツ指導、運動指導について、医師の果たす役割はきわめて大きい。地域社会において運動への関心が高まってきていることや、特定健診後の保健指導における運動指導が重要であることから、運動を行う人に対して医学的診療のみならず、メディカルチェック、運動処方を行い、さらに各種運動指導者等に指導助言を行い得る医師として日本医師会が養成した医師。
特徴
 ・内科、眼科、耳鼻科、脳外科などの各専門科の医師がいる。
健康スポーツの紹介

ホームページでは紹介されていないため、各都道府県の医師会に問い合わせする必要があります。


日本整形外科学会認定スポーツドクター 
応募資格 : 整形外科専門医取得が前提条件
講習科目 : 25単位
特徴
 ・整形外科専門医になるには、整形外科の研修認定施設で一定期間の仕事を行い、その後、症例

  レポート、試験、面接などをへて合格することが前提条件。
 ・認定スポーツ医以外の分野がある。(日整会認定リウマチ医、日整会認定脊椎脊髄病医、日整

  会脊椎内視鏡

認定スポーツドクターの紹介

都道府県検索では責任者(院長等)と施設名(病院等)。「詳細」をクリックすると、住所、連絡先、ホームページ、診療上得意とする分野・身体部

                     位、スポーツ種目等が表示されます。


日本体育協会公認スポーツドクター 
応募資格 : 医師経験年数問わず。但し、医師経験年数5年を満たしている必要がある。
講習科目 : 基礎(25単位)の他、日本体育協会が独自に行っている、応用(27単位)がある。
スポーツドクターの役割
 スポーツ関係臨床医として、スポーツ医・科学に関する知識を有し、スポーツマンの健康管理と競技力向上の援助、スポーツ障害・外傷の診断、治療、予防などにあたる。また、競技会等における医事運営やチームドクターとしてのサポートなど、スポーツ活動を医学的な立場からサポートする。
特徴
 ・メディカルコンディショニング資格の中の1つである。他に「アスレティックトレーナー」、

  「スポーツ栄養士」、「スポーツデンティスト」がある。
 ・基礎講習に加え、応用講習が用意されており育成プログラムが充実している。

 ・下記がホームページに掲載されている講習内容です。上段の「基礎」は3団体共通です。

公認スポーツドクターの紹介

地図(都道府県)・種目・科目・キーワードで探せるので非常に使い勝手に優れています。

怪我の連鎖を考える

小学6年生の夏までは怪我知らずでした。

怪我がサッカーの邪魔をし始めた最初の出来事は、膝下の脛骨粗面の軟骨が過度な運動等により炎症し隆起する、オスグッド・シュラッテル病でした。これは成長期によくみられるものです。


それ以降、特に大学の4年間は練習できたのは半分以下だったように思います。選手として全く情けないものでした。

何故、これほど怪我をすることになってしまったのか、この悪しき経験は同じような境遇の選手には参考になることもあるだろうと考え、自分なりに背景や原因などを考え整理してみました。

 

抽象的ではありますが、下記がまとめた内容です。
問題点は、「怪我に対する意識の低さ」、「精神のアンバランス」、「肉体のアンバランス」の3つです。対策は青色で囲ったなかに、それぞれ3点ずつ書いていますが、要約すると「客観的に自分の体と心を把握」し、「客観的にチーム内で今、自分は何をすべきか」を理解し、納得し、そして行動することだと思っています。

なお、参考までに主な怪我の既往歴をご紹介させて頂きます。
1.1970年:12歳(小学6年生)
 ・オスグッド・シュラッテル病

  ・整形外科にて、先生に「何か効果のある治療法はないですか?」と質問したところ、

   「問題の軟骨にドリルで穴を開ける手術があるが。。。」
   とのお話があったため、特に迷うこともなく、その手術を行いました。

   当然、麻酔はかけられたのですが、その痛みは大変なもので、激痛にランクされる痛みだっ

   たと思います。

   手術後の状態はあまり変わらず、筋力低下が1番の原因と思いますが、中学1年の50m走では

   身長が5cm程伸びたにも関わらず、1年前より0.4秒遅くなってしまいました。

   また、その後の怪我との関連性は不明ですが、怪我の連鎖に足を踏み入れてしまったことを
   考えると、この手術は良い選択ではなかったかも知れません。
  ・ちなみに、オスグッド・シュラッテル病は大腿四頭筋の筋疲労の状態が長く続くことが原因

   となるので、鍼灸治療で大腿四頭筋中心に、裏面のハムストリングスや腰殿部の緊張を緩め

   ることにより予防ができます。

 

2.1975年:17歳(高校2年生)
 ・足首のくるぶし(内果)の骨折(ヒビ) ※多分左足(通常左足着地なので)

  ・サッカーの試合中、ヘディングで着地したときに、「バキッ」と音がしてプレー続行不能に

   なりました。
   捻挫の経験はあったため、「この痛みはヒビだな。」と恐れつつ、近所の整形外科でレン

   トゲン写真を取ったところ、「捻挫だね。」と一言。心の中で「それはないだろう!」と

   意外な診断にびっくりし、翌日、電車で15分程離れた少し有名な病院(多分、西川口だった

   と思います)で診て頂いたところ、「骨折」とのことでした。
   この時、「お医者さんも絶対ではないのだ。」ということを知りました。

 

3.1975年:17歳(高校2年生)
 ・右足大腿二頭筋(太ももの裏面外側)筋断裂

  ・数々の肉離れを経験しましたが、音を感じたものはこれだけです。
  ・この怪我はおよそ縦横2x1cm程のしこりとして長い間、思い出のように存在していました

   が、代々木の研修生時代に仲間に運動鍼(数本刺鍼した状態で、他動で数回筋を動かすとい

   う手技。他動とは施術者が行うもので、患者は脱力し筋肉に力を入れることはしません)を

   やってもらい、ほぼ、なくなりました。このように肉離れ等の古傷はかなり改善できます。

 

4.1979年:21歳(大学2年生)
 ・右肩関節脱臼

  ・高難度の筋トレを1度成功させ、調子にのって2回目を行ったところ、何と脱臼!

   「肩がねぇ」と大笑いしているチームメートに連れられ、自分の左手で右肘を固定しながら

   近くの整形外科に歩いて来院。麻酔注射を打たれ、無事元におさまりました。

   愚かな行為を深く反省しました。

 

5.1980年:22歳(大学3年生)
 ・左膝前十字靭帯断裂

  ・左サイドからカーブをかけて低い軌道のセンターリングの練習中に、キック直前でボールが

   イレギュラーバウンドし、左足にわずかに当たるもほぼ空振り状態となり、負傷、あまりの

   痛さにグランドを転げまわってしまいました(痛みには自信があったのですが)。
   1、2年前の膝の内側側副靭帯損傷の時と異なり、3日、4日と日がたっていくと腫れも徐々に

   引いていき、痛みも大したことがなく「これは軽症だったのでは?」と期待してしまい、

   確か2週間程度で練習を再開しました。しかし、激しくクイックな上体の動きに足がついてい

   けず、膝をひねってはグラウンにうずくまるという情けない事態を繰り返す結果となってし

   まいました。

   このことにより、前十字靭帯が切れているのだろうということを覚悟しました。
   当時は十字靭帯断裂の場合、復帰はできて1年という状況であり、この怪我が大学3年の夏の

   終わりだったため手術するという選択肢はなく、また、将来医学が進歩すれば、優れた手術

   方法で、それ程入院することなく完治できる日が来るだろうという思いも少しありました。
   ちなみに、手術は13年後の1993年、原因は半月板損傷でまともな歩行ができなくなったた

   め、膝の権威であった横浜港湾病院の高沢先生に半月板の部分切除と問題の前十字靭帯の再

   建手術を実施して頂きました。

   入院は3週間で13年前に比べ、手術による切開の大きさは1/3程度で済んだと思います

   (友人比較)。
   なお、靭帯断裂後もテーピングをして、都リーグに加盟している自分の会社のチームでサッ

   カーを続けていました。
  ・トレーナーなどが充実した現在では、このようなお粗末な話はないと思いますが、受傷時は

   激痛だがその後は比較的順調と感じた時は、靭帯にしろ腱にしろ完全に切れていると考えた

   方が良いと思います。 

大昔の1993年5月でしたが、既に35歳になっていました。横浜港湾病院は有名なスポーツ選手が数多くお世話になっており、私が入院していたときは、プロスキーヤーの木村公宣選手がいて、術後のリハビリ期間にもかかわらず、相当な重量のバーベルをかついでスクワットをガンガンやっていました。

また、部屋にはサーファー、プロスキーヤー、バレーおよびバスケの実業団選手、そして中学生(体操)がいて、不思議な雰囲気の楽しい入院生活でした。

ホームページ作り

「最低限ホームページは必要だよな。」

と思い、業者に発注することも考えましたが、費用面に加え自分自身で編集したいという気持ちが強かったため、まずは自前で作る案を検討しました。

下記はその進め方や気づいた点を書き出したものです。

 

1.コンピュータに対する知識や習熟度

  コンピュータという意味では、数年前までは仕事でExcel、Word、Powerpointを標準機能の範

  囲で使っていましたが、技術的な知識は全くありませんでした。

 

2.ネットで判断材料を情報収集

  事例や各種ツール、ご意見などネット上にある様々な情報にアクセスし、何とか自分自身で作

  れそうだという判断をしました。

 

3.「ホームページ作成サービス」のJimdoを選択

  Wixという特にデザイン面に優れた「ホームページ作成サービス」にしようか迷いましたが、

  基本機能等、全体的な印象が自分にとって親しみやすい印象だったためJimdoを選びました。

  (Word、Excel的な感じが自分にとっては安心材料になったのだろうと思います)

 

4.本を購入

  本は必須ではありません。

  私の場合、本を購入した1番の理由は完成後に大きな変更をしようとしたとき、空白期間にもよ

  りますが、おそらく、その時はほとんど忘れてしまっているだろうと想像したためです。

  つまり、本があれば本を見返すという行為により、記憶が戻りやすく、少しでも効率よく対処

  できるのではないかと考えました。

 

5.コンテンツ(文章など)は事前に準備

  内容を吟味しながら作っていくのは効率的とは思えず、また、自分には難しいと考えコンテン

  ツ(文章)を事前に検討し準備しました。

  なお、Excelなどで作るとデータに属性がついているため、コーピーしたときに思ったように表

  示されないことがあります。

  そのため、「メモ帳」を使って文書を準備しました。なお、これはお伝えしたい第1のポイント

  です。

 

6.ブログ作成時の注意

  2015年9月にホームぺージをリリースし、その後、先月の8月15日に改訂しました。

  そして今回、新たにブログを開始すべく取り組んだのですが、Jimdoでブログを作る場合、

  大きな注意点があることを知りました。これが第2のポイントです。

  Jimdoには多くのレイアウト(テンプレート)が用意されており、簡単に変更することが可能で

  す(変更後に内容確認と多少の調整がある程度です)。

  一方、ブログでは時系列や内容による分類を行い、それをメニューとして常時表示させた

  方が見やすく親切な作りといえるのですが、そのような作りができるレイアウトと標準機能で

  は出来ないレイアウトがあります。

  細かい話ですが、8月15日に改訂したレイアウトはJimdoでいう「マイアミ」というレイアウト

  だったのですが、ブログ作成には適していないことが完成後に分かり、今回、改めてレイアウ

  トを「サンフランシスコ」というものに変更することとなりました。

  実は「シカゴ」が第1候補だったのですが、ロゴのサイズと配置が「マイアミ」とは異なってい

  たため、この点について問題のない「サンフランシスコ」に決定しました。

 

7.課題

  現在のホームページは圧倒的に文章が多くなっています。

  これは私自身が「お絵かきツール」を使いこなせないのが最大の理由です。ツールとしては

  PhotoshopやIllustratorなどが有名ですが、必要十分な機能のソフトを学習し、図や絵を活用し

  て内容を分かりやすくできることが課題です。

 

8.まとめ

  1)文書を事前に準備するときは「メモ帳」を利用するのがお勧めです。

  2)ブログを行う場合は、ブログを作りやすい「レイアウト」を選択することが重要です。

  

スタディオ・サン・パオロでの偶然

1990年7月3日、サッカーワールドカップイタリア大会の準決勝、イタリア対アルゼンチンの試合がナポリのサンパウロスタジアムで行われた。


急遽決まった大学時代の友人とのイタリアワールドカップ観戦は、行き帰りのローマ泊以外は宿泊できる保証もないままの決行であった。

ちなみに、ローマに着いて早々、つたない英語で電話をかけまくり、当時の日本円で1泊約1,300円の民泊らしき宿をナポリで確保することができたのだが、実際に行ってみると、ひとりはイタリ人のお爺さんとの相部屋ということだった。

無頓着タイプの私が立候補し、明るいお爺さんのさっぱりわからないイタリア語攻撃にあいながら、笑顔で対応したのは正解だった。


サンパウロスタジアムまでは、電車を使ったが、乗り遅れそうなアブナイ状態だったため、大通りをかなりの勢いで走っていたら「カメルーン!、カメルーン!」という、どうやら声援らしき声が巻き起こっていた。

「何?さすがに、カメルーンには見えないだろう」と思ったが、

開幕戦でロジェ・ミラ率いるカメルーンがアルゼンチンを撃破、イングランドとの準々決勝でも延長にもつれこむ好ゲームでカメルーンの大健闘は光っていた。

必死の形相でナポリの町中をダッシュしていた日本人は、まるで「不屈のライオン(カメルーンチームの愛称)」に見えたのか、いずれにしても陽気なイタリア人の餌食になっていた。


サンパウロスタジアムは、収容人数約83,000人の大きなスタジアムで、当時セリアA(イタリアサッカーリーグ)のナポリのホームスタジアムであった。

本日の敵国はアルゼンチンではあったが、斜め前に座っていたイタリア人サポータ達からは「マラドーナ、マラドーナの大合唱が試合前には起きていた。「やっぱりマラドーナは特別な英雄なんだ。」と感心した。

横に座っていたアンナさんというイタリア美女からはアイスキャンディーを頂くこととなり、イタリアが勝利したら声をかけてみるのはいかがなものかと、脳ミソを発火させる場面もあった。


ところで、スタジアムに着いた時は、まだまだ人は少なかった。まずはトイレで用をたすかと思い、入ったトイレは大きかったという印象である。

既に日本人らしき人が正しい姿勢をとっていた。「おっ、日本人?」と思った次の瞬間、なんと、その人は近くの高校の1年先輩の人だった。


実はその人は現FIFA理事兼日本サッカー協会会長の田嶋幸三さんであった。

田嶋さんは1975年の三重国体で埼玉県選抜のキャプテンであり、国体少年サッカー開催地の上野市の宿では私は「部屋っこ」であった。

消燈後、1分前後でただちに爆睡に入る田嶋さんをもの凄い人だなとリスペクトしていた。


初イタリア、初ワールドカップ、イタリアチームの準決勝敗退、ローマでの出来事、ナポリでの出来事、色々な思い出を作ることができたが、サンパウロスタジアムのトイレ事件は、「驚き」という意味でNo1のニュースであった。


 

敗戦翌日のナポリの街。


18歳、マラドーナの世界デビュー

記憶ではその日の試合は夜だった。雨は降っていなかった。接戦ではなく少々退屈だった。

調べた結果、大宮サッカー場東側ゴール裏から観戦したその日の試合は、1979年8月26日(日)19:00キックオフのアルゼンチンvsインドネシア戦だったことがはっきりした。

第2回FIFAワールドユースサッカー大会は東京を中心に大宮、横浜、神戸で8月25日から2週間の日程で行われた。決勝は9月7日、国立霞ヶ関陸上競技場でアルゼンチンとソビエト連邦(現ロシア)の戦いとなり、3対1でアルゼンチンが勝利し優勝カップを手にした。

一方的な試合となった大宮でのインドネシア戦は、まだBigスターとはいえない小柄なマラドーナのテクニックと、1993年のJリーグ発足時に横浜マリノスに入団したラモンディアスの爆発的スピードが印象に残っている。調べたところ、マラドーナが2点、ディアスが3点を取っていた。

ブログに載せたかった理由は、何といっても、18歳の初々しく、好青年、イケメンといってもよい程のかっこいい、マラドーナの若き勇姿である。このお宝級の写真は、[輝く埼玉サッカー七十五年の歩み]で見つけたものだが、「そういえば、俺は大宮でマラドーナの試合を生で見たよな。」との記憶が復活し、まじめにその時の試合を調べたというわけである。

1986年ワールドカップメキシコ大会の優勝を導き、SSCナポリの英雄となり、そして数々のスキャンダルで世間を騒がせ、2010年の南アフリカ大会では、監督でありながらド派手なアクションで選手以上に目立ったマラドーナの世界デビューが日本だったというのは、驚きであり、そして何だか誇らしい気持ちにさせてくれる。