Muse細胞と慢性腎臓病

今回のブログはこちらの専門誌からです。バックナンバーは販売完了となっていましたが、“医学専門ジャーナル・書籍の電子配信サービス”というサイトから論文単位での購入が可能だったため、2つの論文を入手することができました。

ブログは有償の論文に基づくものになるため、簡潔にお伝えする程度となっています。

画像出展:「医学専門ジャーナル・書籍の電子配信サービス」

『医学、看護、リハビリテーション、薬学などの分野を中心に、主要医学出版社12社の94誌を同一プラットフォームで利用できます。』

購入した論文は以下になります。

Muse細胞研究の最前線

画像出展:「血液フロンティアvol.29 No.2」

画像出展:「血液フロンティアvol.29 No.2」

1.Muse細胞研究の最前線

こちらは、見ずらいのですが1枚の紙にまとめることにしました。上段2つのイラストは“Muse細胞研究の最前線”内のイラストとほぼいっしょですが、いずれもネット上で見つけたものです。左は“327635_1_En_3_Fig2_HTML”でネット検索して頂くと出てきます。右は“Muse細胞の点滴による慢性腎臓病の新しい治療法の可能性 ‐組織修復と機能回復をもたらす修復治療を目指して‐”の中にあったものを拝借しました。PDFの14枚資料の10ページめにあります。

2.腎不全におけるMuse細胞を用いた治療戦略

こちらは、腎臓病に対する幹細胞治療の現状、およびMuse細胞を用いた腎臓病治療の基礎実験と展望が紹介されています。

1)腎臓の構造と発生

・糸球体を形成する足細胞と尿細管の上皮細胞は障害を受けた際の両者の再生能は大きく異なる。尿細管上皮細胞は優れた再生能力があるため、尿細管障害はある程度回復可能である。一方、足細胞は成体ではほぼ再生しないため、足細胞が脱落するような糸球体の障害は回復しがたい。

2)腎臓の働き

・腎臓は、水分・電解質の調整や老廃物の排泄のみならず、ビタミン Dの活性化や造血ホルモンの産生などを行っている。

3)Muse細胞を用いた腎臓病治療

・尿細管は再生可能である。一方、糸球体が再生するためには足細胞の再生が鍵となる。外部からより多くの足細胞の progenitorを供給できれば、腎機能の回復ができる可能性がある。

4)Muse細胞投与による基礎実験

画像出展:「東北大学Press Release」

こちらは先にご紹介した“Muse細胞の点滴による慢性腎臓病の新しい治療法の可能性 ‐組織修復と機能回復をもたらす修復治療を目指して‐”になりますが、基礎実験については同じものです。(PDF14枚の資料です)

一方、“腎不全におけるMuse細胞を用いた治療戦略”の中に、再生できないとされている足細胞について、『足細胞が新生されている可能性』という大変興味深い記述を見つけましたので、そちらをご紹介させて頂きます。

・『近年、ヒト成体においても少数の足細胞が新生されている可能性が報告されている。糖尿病性腎症の患者で一部の壁側上皮細胞が足細胞の progenitorとなっている可能性が、また、性別の異なるドナーから腎移植を受けたレシピエントの腎臓に、レシピエント由来の足細胞が認められることから、腎外由来の progenitorが存在する可能性が示唆されている。ただし、いずれも腎機能を回復するには不十分である。

このうち、前者(糖尿病性腎症)に関する論文は下記になります。なお、語学力的にも、腎臓の知識的にも力不足のためご説明することができません。ご紹介のみとなります。ご容赦ください。 

画像出展:「PubMed Central® (PMC)」 

Kidney Int. 2015 Nov; 88(5): 1099–1107.

The phenotypes of podocytes and parietal epithelial cells may overlap in diabetic nephropathy

 

付記1S1P(スフィンゴシン1-リン酸)

再生、修復を担うMuse細胞には、傷害を知らせてくれる仕組みが必要です。その役目を担っているのが“S1P(スフィンゴシン1-リン酸)”になります。つまり、二人三脚、なくてはならないパートナーです。以下にご紹介させて頂いた北海道大学 生化学研究室(LABOLATORY OF BIOCHEMISTRY)さまのサイトにS1Pに関する詳しい説明が出ていました。  

画像出展:「北海道大学 生化学研究室

 

付記2:“再生医療トッピクス”

NPO法人再生医療推進センターさまのサイトです。ここでは、慢性腎臓病に関する情報とMuse細胞による臨床試験および基礎研究に関する情報が出ています。

No.45 再生医療トッピクス 

慢性腎臓病などに対する再生医療等の取組

画像出展:「NPO法人再生医療推進センター」

 

画像出展:「NPO法人再生医療推進センター」

 

付記3:TBS News

TBSさまのニュースサイトにMuse細胞に関する3分29秒の動画がありました。

血管内皮細胞と慢性腎疾患

血管内皮細胞に興味をもった理由は下記の図です。

この図はブログ「腎臓疾患における活性酸素」でご紹介した『抗酸化の科学』という本の中にあったものですが、ブログ「腎臓のはなし1」でもご紹介しているため、3度目の登場となります。

CKDとは“慢性腎臓病”のことです。初期のステージ1に書かれているのは、“糸球体・尿細管局所での炎症”です。そして、ステージ2は“糸球体内皮細胞障害”となっています。 

画像出展:「抗酸化の科学」

一方、下記は初登場ですが、『病気がみえる vol.8 腎臓・泌尿器』から拝借したものです。このチャートを見る限り中段左側の内皮細胞障害”は“糸球体高血圧”に伴って発生するものとされています。

なお、この図(腎障害の進行)を載せた理由は、右上上段のと下部に書かれている内容が気になったためです。 

画像出展:「病気がみえる vol8 腎臓・泌尿器」

ある程度の腎機能低下に至った後、腎障害の慢性的な進行は、原因疾患にかかわらず共通の機序で不可逆性に進むと考えられており、この機序をfinal common pathwayとよぶ。

「ある程度の腎機能低下」の“ある程度”が不明確だが、この範囲であれば不可逆性ではなく、改善が期待できるということか?

final common pathwayの他に、尿細管周囲毛細血管の喪失などにより尿細管間質が慢性の低酸素状態に陥るために腎障害が進行する(慢性低酸素仮説)とも考えられている。』

糸球体ではなく、尿細管周囲毛細血管の問題でもクレアチニン値やeGFR値は悪化するのか?また、この尿細管周囲毛細血管の問題も糸球体同様、不可逆的と考えられているのか?

画像出展:「病気がみえる vol8 腎臓・泌尿器」

右上の[腎血管の走行]を見ると、糸球体は“第1の毛細血管であるのに対し、尿細管周囲毛細血管は”第2の毛細血管”となっています。

また、下の腎臓の部分拡大図中央に尿細管周囲毛細血管が出ています。

重箱の隅をつつくような粗探しをしている理由は、クレアチニン値がほぼ半減した症例が2例あり(1人は3.64→1.82、もう1人は3.50→1.86)、「本当に不可逆的なのだろうか?」という疑問を払拭できないためです。

このお二人は、生活習慣の改善に努められている以外は、他の治療等はされていないため鍼治療が改善に貢献したのは間違いないと考えています。

著者:島田和幸

出版:真興貿易(株)医書出版部

発行:2007年4月

今回、『血管内皮細胞をめぐる疾患』を拝読したのも、鍼治療の効果を裏づけるヒントが何か見つかるかもしれないという期待からです。

内容は極めて専門性が高く、消化できない内容でした。そこで、ブログは目次に続き、概要だけでも掴みたいため、“”の大部分を書き出しました。そして、一番の関心事の“慢性腎疾患”については、理解のために、内容を吟味しながら箇条書きに整理していくということを行いました。

目次

基礎

1 血管内皮の構造

1.血管内皮細胞の一般的構造

2.様々な血管内皮細胞

2 血管新生と内皮前駆細胞

1.胎生期における血管新生

2.血管内皮前駆細胞の存在

3.血管内皮前駆細胞の動態

4.血管内皮前駆細胞の病態への関与とその治療応用

3 生理活性物質

ⅰ 血管収縮作動性物質

1.エンドセリン

2.アンジオテンシンⅡ

3.プロスタグランディンH₂(PGH₂)とトロンボキサンA₂(TXA₂)

ⅱ 内皮由来血管拡張物質

1.NO

2.内皮由来過分極因子 endothelium-derived hyperpolarizing factor(EDHF)

3.アドレノメデュリン

4.C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)

5.プロスタサイクリン

4 血管内皮細胞の傷害のメカニズム

1.NOとeNOS

2.血管内皮細胞におけるeNOS活性化の障害

3.酸化ストレスの亢進

5 血管内皮機能の測定法

1.血管内皮細胞の機能

2.ヒトにおける血管内皮機能評価法

3.内皮機能計測の今後

臨床

1 高血圧症

1.内皮機能障害と血管病変との関連

2.内皮機能障害とNO

3.内皮機能障害と酸化ストレスの関連

4.降圧薬と血管保護作用

2 高脂血症

1.粥状動脈硬化の病変

2.血管内皮細胞への単球・リンパ球の多段階の接着機構

3.粥状動脈硬化の病変部位に発現する接着分子

4.酸化LDLによる血管内皮細胞の機能障害

5.酸化LDLに対する受容体

6.血管内皮前駆細胞

3 糖尿病

1.プロテインキナーゼCの関与

2.Advanced glycation endproductsの関与

3.酸化ストレスの関与

4.インスリン抵抗性の関与

5.炎症の関与

4 肥満・メタボリック症候群

1.肥満・メタボリック症候群における血管内皮機能障害

2.メタボリック症候群における血管内皮機能障害発症機序

3.メタボリック症候群における血管内皮機能障害の治療

5 冠動脈疾患

1.冠動脈疾患のなりたち

2.冠動脈硬化巣の形成における血管内皮の役割

3.動脈硬化巣の進展

-動脈硬化性狭窄による狭心症の発症と動脈硬化巣の不安定化による急性冠症候群の発症-

4.血管内皮機能を改善することにより冠動脈疾患の発症を予防することはできるか?

6 慢性腎疾患

1.糸球体内皮細胞障害と腎障害機序

2.各種病態と糸球体内皮細胞障害

7 脳血管疾患

1.閉塞性脳血管障害と血管内皮細胞

2.出血性脳血管障害と血管内皮細胞

8 DIC

1.DICの血管内皮

2.DICとNO

3.eNOSの発現調節

4.eNOSからのスーパーオキシド産生

5.DICとCOガス

6.抗DIC薬と内皮細胞

9 膠原病

1.膠原病における止血凝固異常

2.全身性エリテマトーデス(SLE)における血管障害

3.抗リン脂質抗体症候群と血管障害

4.その他の膠原病と血管内皮障害

『血管内皮細胞の本格的な研究は、1970年以前に臍帯静脈の内面にトリプシン処理を施して血管内膜の1層の細胞を遊離し培養することに成功したことから始まる。これを開始したのは日本の研究者である。その後欧米の研究者によって細胞生化学的手法による内皮細胞の同定法が開発されて以降、血管内皮細胞の研究は飛躍的に前進した。内皮細胞の機能は、血液と血管壁を1層の細胞で隔てるのみに留まらないことがこの培養細胞を用いた研究によって次々に明らかになった。すなわち血小板凝集抑制作用や血管弛緩作用をもつプロスタサイクリンの生成、血管弛緩作用を有するNO[一酸化窒素]の遊離に関する発見は、後に両方ともノーベル賞が与えられた[前者は1982年ですが、物質はプロスタグランジン:PG(プロスタサイクリン:PGI2はプロスタグランジンの一つ)での受賞のようです。後者は1998年に受賞されています]。この事実によっても血管内皮細胞が生物科学の分野でいかに重要な位置を占めているかがわかる。その後、トロンボモジュリンが凝固系の抑制因子として、プラスミノーゲン活性因子(t-PA)およびその阻害因子(PAI-1)が線溶系の調節因子として、さらに日本人によってエンドセリンが内皮由来血管収縮因子として発見された。流血中の白血球を補足し結合させる因子として細胞表面付着分子(ELAM)が同定されて以降、様々な血管内皮細胞表面の細胞付着因子と白血球との相互反応の機序が解明された。まさに血管の生理的機能をマスターコントロールしている細胞、それが内皮細胞である。内皮細胞にはそれだけの機能を発揮できる分子機構が備わっている。同時に、毛細血管レベルまで含めると、血管内皮細胞の面積は肝臓などに匹敵する1つの臓器に例えられるくらい膨大なものになり、流血中の因子と血管表面の反応の広範な場を提供していることに今更ながら気づいたのである。

したがって内皮細胞がひとたび機能不全を起こすと、それは様々な疾患に結びつくことは容易に理解できる。最も端的な例は、冠動脈形成術の経験である。カテーテルで血管の内膜を障害してしまうと、血管はたちどころに血栓で覆われ動脈閉塞の危機にさらされることになる。内皮が修復されてはじめてその危機は去る。内膜表面は一見正常だが、もっと微妙な障害が内皮細胞に発生していることが様々な病態で明らかとなった。動脈硬化、それに関連する高脂血症、糖尿病、高血圧、心不全、喫煙、そして加齢が内皮機能不全を惹起する。ここで重要なことは、このような内皮機能不全は、このような病態が出現する前から検出されることである。すなわち動脈硬化性疾患発症のリスク因子はすなわち内皮機能不全のリスク因子でもあり、いかに血管の病態生理に内皮細胞が中心的役割を果たしているのかがわかる。内皮機能不全の原因もしくは促進因子として現在考えられている主要なものは「酸化ストレス」「炎症反応」である。

内皮機能不全の病態生理の中心は、NO代謝の異常と考えられている。NO代謝に異常をきたすものとして、感染、放射線、化学療法などの他に動脈硬化そのものやその関連病態が知られている。現在はいまだ研究段階だが実際の臨床の場で内皮機能不全を評価する方法も種々考案されている。血流依存症の血管弛緩作用がNOによって維持されていることを利用した臨床検査が現在最も一般的である。測定する血管床は冠動脈、上腕動脈や細動脈レベルなど必ずしも病変局所に留まらない。前者は血管造影や超音波によって血管径の変化を測定する。後者は、プレティスモグラフィーなどで血流量の変化を測定する。血管内皮機能不全はびまん性に生じている全身的な現象であると考えられている。冠動脈疾患やハイリスク集団など様々な病態においてこのようにして測定された血管内皮機能が後の血管事故発生の予後と関連することが報告されている。血管内皮機能は、たいへん有益な情報をわれわれに与えてくれるはずであり、より一般的に測定評価できるシステムの開発が喫緊の課題である。

NO代謝を正常に保つ手段としては、運動、体重減少、食事療法などの生活習慣修正以外に種々の薬物療法も試みられている。L-アルギニン、N-アセチルシステイン、スタチン、ビタミンC、葉酸、アスピリン、エストロゲン、レニン-アンジオテンシン系阻害薬などがNO代謝を改善し内皮機能を正常化することにより心血管疾患の予後を改善することが報告されており、大いに期待されている

本書は、現在わが国で最も活発にこの分野を研究している方々による「内皮細胞と疾患」をめぐる総説である。基礎研究者のみならず臨床家にとっても有益な内容になったと信じている。旧くて新しい内皮細胞の研究成果をアップデートすることの一助となれば幸いである。』

6 慢性腎疾患

腎臓における血管内皮細胞としては糸球体内皮細胞が重要である。

●糸球体内皮細胞は糸球体の血管内腔を覆う1層の細胞で有窓構造をなし、糸球体基底膜の形成に関わっている。

●糸球体内皮細胞は血液中の種々のメディエーターや刺激により内皮細胞由来の様々な生理活性物質を放出し、メサンギウム細胞などの他の細胞と相互作用を生み出している。

糸球体内皮細胞は相互作用を通じて、血管透過性、凝固線溶系、免疫機能、腎血行動態など多岐にわたる機能を有している。

画像出展:「血管内皮細胞をめぐる疾患」

1.糸球体内皮細胞障害と腎障害機序

糸球体内皮細胞の障害には、白血球、炎症サイトカインや増殖因子、免疫複合体、血小板などに加えて腎血行動態などが複雑に関与している。

●NO(一酸化窒素)は内皮型NO合成酵素(eNOS:endothelial nitric oxide syntase)により産生される。

NOは血管平滑筋拡張による腎内血行動態の調節作用や腎保護作用を有する。

●血管内皮細胞障害から糸球体障害に至るプロセス

画像出展:「血管内皮細胞をめぐる疾患」

“白血球活性化”(図右上)⇒【内皮細胞障害/活性化】

・細胞接着因子(ICM-1、P-セクレチンなど)が白血球を活性化する。

・炎症性サイトカイン(TNFα、IL-1βなど)が白血球を活性化する。[ILはインターロイキン]

・糸球体内では糸球体上皮細胞が血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を産生して糸球体内皮細胞構造維持に関わっている。

・糸球体内ではメサンギウム細胞が肝細胞増殖因子(HGF)を産生して糸球体内皮細胞構造維持に関わっている。

内皮細胞障害/活性化】⇒“eNOS”(図左中央)

糸球体内皮細胞障害はeNOS(内皮型NO合成酵素)を低下させる。

・低下したeNOSは、凝固因子や血小板の活性化と相まって血栓形成や血管拡張機能不全の原因になる。

2.各種病態と糸球体内皮細胞障害

[1]糸球体腎炎

●内皮細胞障害により糸球体内では、基底膜陰性荷電の低下による蛋白尿が出現する。

血栓形成増加や血管拡張障害による腎内血行不全が多くの腎疾患で惹起される。

慢性腎疾患の進展には、活性酸素種、脂質、AGE(最終糖化蛋白)、サイトカインなどが複雑に関与している。

[2]腎不全

1)急性腎不全(ARF:acute renal failure)

●特に虚血性急性腎不全において血管内皮細胞障害が虚血性腎不全の病態進展に関わっている。

1.虚血性急性腎不全は、腎血流流量低下により初期には腎尿細管上皮細胞障害が生じる。

2.腎皮髄境界部や髄質外層部を中心に伴う低酸素状態および炎症反応持続的進行が起きる。

3.腎内微小循環の鬱滞や凝固系の活性化も伴う。

●虚血性障害は腎内血管内皮細胞の構造および機能障害を助長する。

●『最近では、虚血性ARF[急性腎不全]の治療戦略としてまだ実験段階ではあるが、内皮細胞障害を促進する凝固系因子および活性酸素種や接着因子を抑制する試みが始まっている。』

2)慢性腎不全(CRF:chronic renal failure)

●慢性腎不全は各種慢性腎疾患の進行により糸球体硬化病変増加により進展する。

●慢性腎不全は心血管疾患など、動脈硬化病変の合併リスク要因となる。

慢性腎不全は病態の進展に血管病変が深く関わっている。

●慢性腎不全では慢性的な炎症反応が病変の進行や動脈硬化病変発症に関与する。

●『今後、CRF[慢性腎不全]の血管内皮機能障害を修飾する因子から治療への応用が期待される。』

[3]膠原病関連腎疾患

●『膠原病の合併症として腎病変は比較的多いが、本項ではいくつかの膠原病関連疾患における糸球体内皮機能障害を中心に述べる。』

1)ループス腎炎

●ループス腎炎は免疫複合体が糸球体内皮細胞下腔に沈着し、糸球体基底膜からの剥離をきたす。

●管内増殖性糸球体腎炎像を呈する時は、好中球、単球、リンパ球の内皮細胞への浸潤をきたし、糸球体内皮細胞は腫大や糸球体基底膜からの剥離を生じる。

●糸球体内皮機能障害の機序として、免疫複合体、坑内皮細胞抗体などがある。

2)強皮症腎

●腎臓の弓状動脈や小葉間動脈狭窄をきたし、腎皮質血流低下を生じる。このため、糸球体内も虚血となり糸球体内皮細胞の腫大や糸球体基底膜からの剥離がみられる。

●臨床的には急激に発症する悪性高血圧、腎不全を呈する強皮クリーゼが重要である。

3)ANCA関連腎炎

●ANCA関連腎炎は、病態に抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)が関与する腎病変である。

●ANCA関連腎炎における糸球体内皮細胞障害はANCAにより活性化された好中球が内皮細胞に接着し引き起こされる。さらに活性化された単球は炎症性サイトカインの産生を引き起こし、糸球体内皮細胞や血管内皮細胞障害を進展させる。

●ANCA関連腎炎の進展に血管内皮細胞障害が関連している。

●膜性増殖性糸球体腎炎や紫斑病性腎炎では糸球体内皮細胞下への免疫複合体の沈着による内皮細胞障害がみられる。

[4]糖尿病性腎症

●糖尿病性腎症では腎組織に細胞接着因子やケモカイン発現とマクロファージの浸潤がみられ、炎症性機序による糸球体内皮細胞障害が考えられる。

●糖尿病での内皮細胞での接着分子発現は高血糖による浸透圧上昇、酸化ストレス、AGE、糸球体内血行動態変化(糸球体過剰濾過など)によるshear stress[ずり応力]亢進などが複雑に関与している。

●Ⅱ型糖尿病の腎機能障害の進展に血管内皮細胞機能障害の関与が指摘されている。

[5]血栓性微小血管症(TMA:thrombotic microangiopathy)

●血栓性微小血管症は細動脈の内皮細胞障害により血小板血栓が形成され、赤血球の破砕と循環障害により臓器不全を生じる病態である。

[6]播種性血管内凝固症候群(DIC:disseminated intravascular coagulation syndrome)

●播種性血管内凝固症候群では、悪性腫瘍、各種感染症、産科疾患、熱傷などの基礎疾患を基盤として血小板、血液凝固線溶系、補体系などの活性化が生じる。このため、全身で微小血栓形成を引き起こし多臓器不全や出血傾向をきたす病態である。

●腎臓では糸球体内のフィブリン血栓が重要で、臨床的には急性腎不全を認めることが多い。

●糸球体内皮細胞障害としては、内腔の膨化、空胞化、基底膜剥離などがみられる。

●『最近は、DICの早期診断には凝固止血マーカーのみならず内皮細胞障害(トロンボモジュリンや接着分子)や白血球活性化(エラスターゼ、α1抗トリプシン)を示すマーカーの応用も期待されている。』

[7]妊娠中毒症(特に、子癇前症)

●妊娠中毒症は、妊娠中に高血圧、蛋白尿、浮腫のうち1つまたは2つ以上の症状がみられ、それらが妊娠偶発合併症でないものである。子癇前症は高血圧合併症が主体の病態で母体や胎児の障害、死亡率増悪に関わる病態である。

まとめ

1.血管内皮障害

●血管の内皮機能不全の原因もしくは促進因子として現在考えられている主要なものは酸化ストレス炎症反応である。

内皮機能不全の病態生理の中心は、NO代謝の異常と考えられている。

●糸球体硬化は内皮細胞の剥離が重要な因子となる。

2.慢性腎疾患(腎不全)

慢性腎疾患の進展には、活性酸素種脂質AGE(最終糖化蛋白)サイトカインなどが複雑に関与している。

“慢性腎疾患”の中で特に気になるのは“腎不全”ですが、注目したい点は5つです。

1)腎血流流量の低下

2)低酸素状態

3)血管病変

4)慢性的な炎症反応

5)血管内皮障害

何故、慢性腎臓病に鍼治療が効いたのか」については、いつか核心に迫れるように、地道な勉強を続けていきたいと思います。

ご参考

こちらも『病気がみえる vol.8 腎臓・泌尿器』の図です。題名は「治療の概観」となっています。なお、ESKDとは“末期腎不全”、CVDとは“心血管疾患”のことです。

画像出展:「病気がみえる vol8 腎臓・泌尿器」

「慢性腎臓病(CKD)」の上に「リスクファクター」とあり、その1つに“生活管理”がありますが、その内容は以下になります。 

画像出展:「病気がみえる vol8 腎臓・泌尿器」

肥満の是正”、“禁煙”、“運動”の3つが対策ということですが、運動の効果と鍼治療の効果にについて、お伝えしたいことがあります。(ブログ「がんと自然治癒力9」より)

テロメアは染色体の端に存在し、細胞が分裂するたびに短くなります。そして、テロメアは細胞の老化の速度を決定します。

テロメアの研究でノーベル賞を受賞された、ブラックバーン先生はこの著書の中で”運動が細胞内部にもたらすメリット”というお話をされています。

左がそのページです。書かれている内容は下記の通りです。

運動は細胞の内部にさまざまな良い変化をもたらす。運動は短期的なストレス反応を起こすが、それが引き金になって、大きな回復反応が起きるからだ。運動によって体の分子は損傷を受け、損傷した分子は炎症を引き起こす可能性がある。だが、運動を始めてまもなく、オートファジーという現象が起き、細胞はまるでパックマンのように、細胞内の損傷した分子を食べてしまう。これにより、炎症を防ぐことができる。同じ実験をさらに続け、損傷した分子の数がオートファジーで追いつかないほど多くなると、細胞は速やかに死滅する。これは「アポトーシス」と呼ばれ、炎症や残骸を残すことのないきれいな死に方だ。運動にはまた、エネルギーを生産するミトコンドリアの数や質を向上させる働きもある。このようにして運動は、酸化ストレスを減少させている。運動を終えて体が回復しようとしているとき、体内ではまだ細胞の残骸の掃除が続いている。それによって細胞は、運動をする前よりもっと健康に、もっと丈夫になる。

私は鍼治療でも同様な効果が期待できるのではないかと考えています。それは次のような考えからです。

「筋肉痛は運動によって筋線維が傷つくことが原因とされています。一方、鍼の太さは0.16mm(1番鍼)、刺して多くは無痛でも、分子レベルで考えればたいへんな衝撃です。この運動による筋線維への微細な損傷と鍼による筋線維への微細な損傷は、プロセスも規模も異なりますが、それぞれのダメージに対する体の反応(筋線維修復の過程)は同様ではないかと思っています。つまり、鍼治療は運動と同じように、オートファジーやアポトーシスという重要な機能を呼び起こし、体内を掃除して、結果的に健康状態を良くしているのではないかと思います。

腎臓のはなし3

著者:坂井建雄

出版:中公新書

発行:2013年4月

目次は”腎臓のはなし1”を参照ください。

第七章 腎臓病はやはり恐ろしい ―できるだけ長持ちさせて長生きする方法

腎臓は少しずつ壊れていく

・腎臓は生命の維持に不可欠な体液の量と成分のバランスを、余裕を保ちながら黙々と守っている。

腎臓は年齢とともに“余裕”が少しずつ削り取られていく。腎臓の重量は20歳くらいまでは急速に成長し、その後50歳代までは安定しているが、60歳を過ぎるあたりから急に減り始める。80歳代では40歳ごろに比べて30パーセントほどの重さになる。

高齢になると腎臓の重量が減るのは糸球体が少しずつ壊れ、壊れて硬化した糸球体の数が増えていくからである。122人の腎臓の病理標本を調べたアメリカの研究では、硬化した糸球体の割合は30歳代で1.5パーセント、40歳代で3.0パーセント、50歳代で6.5パーセント、60歳代で7.6パーセント、70歳代で12.3パーセントと、年齢が進むにつれて急速に増えていく。

糸球体の表面を覆っている足細胞は分裂をすることができない。そのため糸球体に無理がかかると足細胞が糸球体から脱落し、残った足細胞が広がって代わりに糸球体の表面を覆うようになる。

・『糸球体の大きさと足細胞の数との間には微妙な関係がある。糸球体に含まれる足細胞の数には上限がある。しかも足細胞は糸球体の表面を覆っているが、その大きさに上限があって、ある程度以上に広がることはできない。そのため、何らかの理由で糸球体が巨大になって濾過のフィルターの面積が増えすぎると、足細胞がその表面を覆い尽くせないことになる。病気の腎臓では実際にそのような状態になり、裸になった糸球体の表面に周りから細胞が進入してくる。こうして、正常のメサンギウム以外の細胞が糸球体の中に増えて瘢痕を作ってしまったのが、糸球体硬化である。

糸球体の数がある限度を超えて減るとどこかで余裕がゼロになり、腎臓の機能が急激に悪くなる。

・1980年代の初めに提唱された過剰濾過説は、腎機能の急速な悪化という経験的に知られていた現象を説明する理論として有名になった。

・過剰濾過説は腎臓の糸球体が減ると糸球体の血圧が上昇し糸球体が肥大して、糸球体は残った糸球体に負担がかかり、さらに障害が進み、糸球体の数が減る。こうして腎機能の障害が加速度的に進むというものである。

・過剰濾過説には疑問もあるが、過剰濾過の背景となる糸球体の血圧上昇や糸球体の肥大は、明らかに糸球体に負担をかける要因であることは間違いない。

慢性腎臓病CKD

・慢性腎臓病と心血管疾患とは、密接な関係があり心腎連関と呼ばれる。

・慢性腎臓病の患者は、腎障害で亡くなりよりも、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患で亡くなる可能性のほうがはるかに高い。

・心血管疾患を持つ患者の多くは、腎機能が低下している。

・慢性腎臓病と心血管疾患ではともに、血管内皮細胞が障害されて動脈硬化を起こしやすく、また、体液のバランスが崩れて高血圧も起こしやすい。また、動脈硬化と高血圧は、慢性腎臓病と心血管疾患をともに悪化させる重要な因子でもある。

・『慢性腎臓病の治療にはいくつかの柱がある。その第一は、生活習慣と食事を改善することである。何よりも肥満を解消すること、喫煙者の場合には禁煙することが大切である。これにより動脈硬化と慢性腎臓病の進展が抑えられる。 

画像出展:「病気がみえる vol.8 腎臓・泌尿器」

こちらの本には、“肥満の是正”、“禁煙”に加え、“運動”も取り上げられています。

 

腎臓とともに生きる

・腎臓は、尿の量と成分を調整することによって内部環境を一定に保つ。細胞の生命にとって不可欠な働きをする。

・腎臓の働きを中心になって担う糸球体は、きわめて繊細で壊れやすく、また再生することができないが、これは糸球体の表面を覆っている足細胞は細胞分裂をすることができないためである。

・『糸球体が大きくなりすぎたり、糸球体に炎症が起こったり、さらに尿タンパクが出たり、さまざまな原因で足細胞に負担がかかり、糸球体の表面から脱落して尿中にこぼれ落ちる。するとそれが糸球体の負担をますます大きくし、周囲の細胞が糸球体に進入して瘢痕を作り、糸球体を壊してしまう。糸球体の数が減ると、高血圧や糸球体の肥大によって残された糸球体にますます大きな負担がかかり、糸球体はますます壊れやすくなる。これが悪循環を起こして、どこかで腎機能の破綻が一気に進み、腎不全となる。

・『腎臓は再生することができない。だから糸球体の負担を軽くしたり、原因を取り除いたりして、腎機能が一定以上に悪くならないようにすることが大切である。要するに無理をしないで残された腎機能を大切に温存しながら生きていくこと、それが腎臓とともに生きる知恵である。

・『身体のさまざまな器官はそれぞれに年老いていずれは機能を失ってしまう。腎臓だけが先んじて機能を失ってしまうと、人工透析という辛い生き方を受けいれざるをえなくなる。本書をここまで読んだ方ならおわかりだと思うが、不幸にして慢性腎疾患になった場合でも、完全に治さなければならないというわけでもないのだ。他の臓器が年老いていくまで、腎臓が働いてくればいいのである。腎臓の機能が五年長持ちしてくれれば、それだけ健康に過ごせる時間が増える。その許された時間をどのように生かすかが、むしろ大切であろう。

腎臓という臓器を大切にする生き方は、限りある人生をよりよく生きる知恵を我々に与えてくれるのではないだろうか。』

ご参考1:腎臓の血管系(「人体の正常構造と機能 全10巻 縮刷版 第1版」より) 

大動脈内に特殊なカテーテルを挿入し、腎動脈分岐部から造影剤を注入してX線撮影したもの。

 

腎臓内の動脈と交感神経

腎臓には動脈に沿って交感神経が豊富に侵入し、主に動脈周囲の間質や糸球体の周辺に終末を作る。動脈周囲から、近辺の尿細管周囲の間質に神経線維が伸び出して作る終末もある。交感神経の刺激は、腎臓内の動脈を収縮させて糸球体濾過量を減少させ、傍糸球体装置の顆粒細胞からレニンを放出させる。また、近位尿細管などによる再吸収を亢進させることも知られている。

ご参考2レニン分泌機構(『病気がみえる vol.8 腎臓・泌尿器』より)

こちらの図はレニンの分泌機構を説明しています。レニンは血圧や循環血漿量の低下が起こると腎臓から分泌されるのですが、上段のボックスがレニン分泌を促す3つの外因です。左から「輸入細動脈の還流圧低下」、続いて「遠位尿細管緻密斑領域の尿流量(Cl⁻濃度)低下」、そして3番目が「交感神経活性化(β1受容体を介する)」となっています。以下はその3番目を拡大した図です。

これを見ると、“ご参考1”で説明されていた「動脈に沿って交感神経が豊富に侵入し、主に動脈周囲の間質や糸球体の周辺に終末を作る」という説明と一致します。

交感神経の刺激は、腎臓内の動脈を収縮させて糸球体濾過量を減少させる」ということですので、あらためて、自律神経系(交感神経)の重要性を再認識できました。

ご参考3:腎不全の症状と合併症(『病気がみえる vol.8 腎臓・泌尿器』より)

クレアチニン値3~7の患者さまについて、今のところ以下のような傾向があるように感じています。

1.太っていて高血圧の人は多い。

2.浮腫の人は思っていたほど多くない。

3.タンパクが出ている人は多くない。

4.カリウムの数値が問題となっている人はやや多い。

5.貧血が問題となっている人は少ない。

クレアチニン値の幅が広いため、症状にバラツキがあることには違和感はありませんでしたが、下記の図から、腎臓病は機能ネフロンという視点で考えることが大切であると感じました。

画像出展:「病気がみえる vol8 腎臓・泌尿器」

左端のネフロンは、尿生成の機能単位であり、原尿を生成する腎小体(糸球体、ボウマン嚢)と原尿の成分を調整する尿細管で構成されます。一方、右端の合併症に目を移すと、高血圧浮腫、および低アルブミン血症(蛋白尿)は“糸球体障害”につながり、高K(カリウム)血症は“尿細管障害”につながっています。また、腎性貧血はエリスロポエチン(EPO)産生低下が原因とされています。このエリスロポエチンは近位尿細管周囲の間質細胞で産生されているため、大元はネフロンということになります。

疑問と考察と仮説

「何故、クレアチニン値が大きく改善される人がいるのだろうか?」という疑問がクリアになったとはとても言えません。また、かなり乱暴なまとめ方にはなりますが整理したいと思います。

 「悪化したクレアチニン値は戻らない」という話は「一度壊れると再生することができない」ということから来ているのだろうと思います。

ブログ“脈診・腹診・クレアチニン”でご紹介した改善ケースは3.64→1.82です。これに続く大きな改善例としては、3.50→1.86という患者さまもおいでです。

ブログ“腎臓病における活性酸素”でもお伝えしていますが、改善された患者さまだけでなく、現状維持や悪化が止まらなかった患者さまもおいでです

中外製薬さまの“腎らいぶらり” にある【eGFR計算機】のボックスに入力すると、3.64→1.82の患者さまの糸球体濾過量(GRF)は、15.5→33.2になり、下の図に照らし合わせると、ギリギリですが、G4→G3とワンランク戻ったということになります。これは想像以上に大きな改善だと思います。また、クレアチニン値の改善のみならず、顔色、皮膚の艶、体がかるく感じるなど、体調の改善を得られることも多く、数値だけでなく実態として改善されているという実感があります。 

画像出展:「腎らいぶらり

「クレアチニン値が改善するのは何故?」という疑問は、今回の『腎臓のはなし』を勉強させて頂き、理解が広がった分さらに難しくなりました。

そこで、まずは再生・改善に対し、“ネガティブ”な部分を抜き出してみました。

●硬化糸球体とは壊れた糸球体には結合組織が進入して、毛細血管がつぶれてしまう状態である。

●腎臓の肥大がある程度以上になったり、肥大したところにさらに糸球体を傷害する因子が加わったりすると、足細胞が脱落して裸になった糸球体の表面がボウマン嚢の壁側上皮と癒着し、そこから糸球体内に線維芽細胞などが進入して糸球体が内部から壊れてしまう。

●病気の腎臓では、裸になった糸球体の表面に周りから細胞が進入してくる。こうして、正常のメサンギウム以外の細胞が糸球体の中に増えて瘢痕を作ってしまったのが、糸球体硬化である。

●腎臓の働きを中心になって担う糸球体は、きわめて繊細で壊れやすく、また再生することができないが、これは糸球体の表面を覆っている足細胞は細胞分裂をすることができないためである。

ポイントは2つです。

1.足細胞は細胞分裂をすることができない。

2.糸球体内に線維芽細胞などが進入し、瘢痕を作り糸球体が壊れ硬化する。

続いて、“ポジティブ”とも取れる部分を抜き出してみました。

●糸球体のどこかに細胞分裂のできる未分化な細胞が混ざっている可能性は完全には否定できない。

●腎臓は腎移植で片側の腎臓を摘出すると、残された腎臓が大きく肥大して糸球体濾過量を増やすことが知られている。

ポイントは2つです。

1.足細胞の細胞分裂を完全否定することはできない。(「あとがき」より:『冗談ごとではなく、第一線の研究者の言っていることが、ある日を境に180度変わってしまうこともありえるのである。糸球体の濾過のフィルターの主役が何かについて、私を含め誰もが糸球体基底膜が主役であると信じていたが、1998年にスリット膜が主役の座に躍り出て糸球体膜は日陰者になってしまった。』とのご指摘あり)

2.糸球体自体が肥大して濾過量を増やすことがある。

また、糸球体濾過が正常に働くための要件は3つです。

十分な数の糸球体が正常に働いてくれる

十分な血液

適切な血圧調整(『糸球体が十分な量の濾過をすることは、体液の量と成分を一定に保って人体の細胞が生きていけるようにするために必要である。糸球体濾過の量を十分に確保するためには、十分な数の糸球体が正常に働いてくれることが大前提である。糸球体濾過のためには、それに加えて大切な要素が二つある。一つは、腎臓に十分な量の血液が流れることである。血液は濾過をして尿を作るための材料になる。もう一つは、糸球体に十分な血圧が加わることである。血圧は濾過するための原動力になる。』)

さらに、次のような指摘もあります。

『哺乳類の糸球体では、毛細血管の直径も厳密に調節されているわけではない。実際に顕微鏡で糸球体を観察しても、毛細血管の太さにかなり不揃いがある。太めの毛細血管では、濾過フィルターに必要とされる張力は大きくなる。このように哺乳類の糸球体では、血圧の変動や毛細血管の径の不揃いといった、濾過フィルターに加わる負荷の大きさを増大させる不確定の要因が存在する。

一方、下記は糸球体濾過に影響する因子です。

ここで注目したいのは、下段の「糸球体濾過係数に影響する因子」に“炎症”が関わっている点です。

画像出展:「人体の正常構造と機能 全10巻 縮刷版 第1版」

下の図は冒頭でご紹介した資料を拡大したものですが、ステージ1の「糸球体・尿細管局所での炎症」と、ステージ2の「腎組織における抗酸化物質の低下」の、それぞれ“炎症”と“抗酸化物質の低下”は非常に重要だと思います。 

画像出展:「腎臓のはなし」

クレアチニン値改善という視点でのエビデンス(実験結果に基づく科学的論拠)はありませんが、現時点で考えられる鍼治療による予想される効果は以下になります。

①自律神経の安定→ストレス低減→活性酸素などの炎症リスクの抑制と抗酸化物質減少の抑制

②自律神経の安定(副交感神経優位)+硬い筋肉が緩む→血流改善→腎臓の血流改善を支援

③自律神経の安定→内分泌系の安定→腎臓の血圧調整機能を支援 

以上のことから、まとめると次のようなものになるのと思われます。

自律神経の安定とストレス低下により抗酸化物質の低下を抑制。加えて、活性酸素の抑制や血流、血圧調整の支援を通して糸球体の炎症を抑制。これらの良い変化が、硬化に至らず黙々と濾過という仕事を続けている糸球体を守り、濾過量を高めている。ということではないかと想像します。

腎臓のはなし2

著者:坂井建雄

出版:中公新書

発行:2013年4月

目次は”腎臓のはなし1”を参照ください。

第四章 進化した腎臓 ―高度に発達した哺乳類の腎臓

哺乳類の糸球体の構造

糸球体の血圧を安定させる仕組みの第一は、動脈の平滑筋細胞(血管平滑筋)が持っている、一定の長さを保とうとする性質である。

糸球体の血圧を安定させる第二の仕組みは、傍糸球体装置による尿細管糸球体フィードバックである。これは糸球体の血圧が上がりすぎないようにするフィードバック機構である。

・尿細管糸球体フィードバックとは、糸球体血管極に接触する遠位尿細管の尿の流量が増加すると、輸入細動脈の平滑筋を収縮させて糸球体の血圧を下げ、それによって糸球体濾過量を低下させるという仕組みである。

糸球体の血圧を安定させる第三の仕組みは、逆に糸球体の血圧が下がりすぎないようにするものである。

・レニンは傍糸球体装置の顆粒細胞から出される。その働きはアンジオテンシンⅠというペプチドを生成する。その後、内皮細胞の持つ変換酵素によって処理されてアンジオテンシンⅡになる。これが短期的に血圧を上昇させるとともに副腎皮質からアルドステロンを分泌させて中長期的に血圧を上昇させる。

・『哺乳類の糸球体では、毛細血管の直径も厳密に調節されているわけではない。実際に顕微鏡で糸球体を観察しても、毛細血管の太さにかなり不揃いがある。太めの毛細血管では、濾過フィルターに必要とされる張力は大きくなる。このように哺乳類の糸球体では、血圧の変動や毛細血管の径の不揃いといった、濾過フィルターに加わる負荷の大きさを増大させる不確定の要因が存在する

第五章 壊れそうで壊れない糸球体 ―繊細な構造、壊れない仕掛け

臓器の隅々に広がる毛細血管

・内皮細胞は、血液に接する血管の内面を覆っている扁平な細胞であり、内皮細胞の細胞膜は、陰性荷電を持つ糖鎖によって覆われている。

・『血液中の血小板などの血球も、表面に陰性荷電を持つ糖鎖があり、電気的な反発力によって内皮細胞の表面に付着しないようになっている。内皮細胞が剥がれて血液が血管周囲のコラーゲンなどに直接触れると、血小板が凝集して内皮細胞の穴を塞ぎ、血液凝固が始まる。内皮細胞と血液凝固系の精妙な働きがなければ、血液の流れによって血管系はたちまち傷つき、壊れてしまう。人体の血管系が100年近い寿命の間、血液を流し続けていられるのは、微小な傷が絶えず修復されているおかげである。

糸球体の毛細血管の特徴

・糸球体の毛細血管は、身体の他の毛細血管とはまったく違う特徴、血液から大量の尿を濾過して作るという特徴を持っている。

・毎分100~150ミリリットルという膨大な糸球体濾過量は、体液の量と成分を一定に保つためである。

糸球体の特徴は毛細血管が密集していることである。糸球体の大きさは直径0.2ミリほどであるが、その中に1000分の8ミリほどの太さの毛細血管がぎっしりと詰め込まれている。左右の腎臓の200万個の糸球体の毛細血管をつなぎ合わせると、その長さは20kmにもなる。

糸球体の内部構造

・糸球体は毛細血管だけでなく、内皮細胞も含めて三種類の細胞が糸球体を作っている。

・第二の細胞は足細胞である。多数の細かな足突起を伸ばして糸球体の表面を覆っている。

・第三の細胞は糸球体の内部にあって毛細血管を結びつけている細胞で、メサンギウム細胞と呼ばれる。

・細胞ではないが糸球体基底膜も糸球体の重要な構成要素である。

画像出展:「人体の正常構造と機能 全10巻 縮刷版 第1版」

こちらの図のタイトルは、[20]糸球体毛細血管、メサンギウム、基底膜3者の関係 となっていますが、このタイトルの下に[17]を横断面で見たところ。との説明があります。この[17](腎小体の構造)とは下記の図になります。

 

画像出展:「人体の正常構造と機能 全10巻 縮刷版 第1版」 

腎小体とは毛細血管の糸玉である糸球体を、ボウマン嚢という袋でつつんだものです。

 

 

 

・糸球体の構造を理解するには、中身と表面とを区別するとわかりやすい。

・糸球体の中身は、毛細血管とメサンギウムである。毛細血管は薄べったい内皮細胞が作る筒で、血液が流れていく。メサンギウムは糸球体に固有の結合組織で、メサンギウム細胞とその周囲を埋める細胞外の物質からできている。

・糸球体の形はかなり複雑であるが、毛細血管とメサンギウムでできた中身が、糸球体基底膜と足細胞の足突起によって覆われたものといえる。

糸球体の三種類の細胞 (「人体の正常構造と機能 全10巻 縮刷版 第1版」より)

足細胞:足細胞は多数の突起を伸ばして糸球体の表面を覆う

画像出展:「人体の正常構造と機能 全10巻 縮刷版 第1版」

『糸球体係蹄[糸球体本体]の表面を覆う足細胞は、多数の足を伸ばしたタコのような形をしている。大型の細胞体から太い一一次突起がいくつも出て、そこから細かな足突起が無数に伸び出している。隣り合う細胞からの足突起は互いにかみ合うように並び、糸球体係蹄の全表面を覆っている。』

 

 

 

内皮細胞:内皮細胞には多数の窓があいている

画像出展:「人体の正常構造と機能 全10巻 縮刷版 第1版」

糸球体毛細血管の内皮細胞は、薄い細胞質のシートを円筒状に伸ばし、毛細血管の本体を作る。毛細血管の内皮細胞の性質は組織によってさまざまであるが、糸球体毛細血管の場合には、細胞質シートに多数の孔があく有窓性で、しかもその孔に隔壁を持たず、透過性が高いという特徴がある。骨格筋や皮膚の毛細血管は細胞質シートに孔がない連続性で、内分泌腺の毛細血管は有窓性だが、孔に隔膜を持つことが知られている。』

 

 

 

 

メサンギウム細胞:メサンギウム細胞は血圧に抗して糸球体構造を保持する

画像出展:「人体の正常構造と機能 全10巻 縮刷版 第1版」

『メサンギウムは、糸球体係蹄の中軸部を占める特殊な結合組織で、血管極で糸球体外メサンギウムにつながり、糸球体の隅々にまで伸びて毛細血管を束ねる役目をする。メサンギウムは、線維芽細胞に似たメサンギウム細胞と、その周りのメサンギウム基質とからなる。』

 

 

 

 

 

糸球体が壊れないで働き続けるために

糸球体での大量の濾過を円滑に行うためには、尿の原材料となる多量の血液を糸球体に送ること、濾過の原動力となる高い血圧を糸球体内部に保持することが必要である。

・糸球体の構造については、長い毛細血管を糸球体の中に折りたたんで濾過フィルターの表面積を十分に広げておくこと、濾過フィルターを薄くして尿を通りやすくしておくことが必要である。

・糸球体は精密機械のようにきっちりと守りながら濾過をし続けているが、これらの条件が少しでも狂うと、糸球体の動きは破綻する。とくに糸球体の血圧はごく狭い範囲で一定に調節されなければならない。

糸球体の血圧が高すぎると糸球体は壊れるし、血圧が低すぎるとたちまち糸球体濾過量が止まってしまう。

腎臓は糸球体の血圧を安定させるためにさまざまな工夫を凝らしている。

糸球体濾過量の調節機構 (「人体の正常構造と機能 全10巻 縮刷版 第1版」より)

・全身の血圧は、運動、感情の変化(怒り)、体位の変化(臥位から立位)による影響を受け容易に変動する。

・体血圧の変動が、腎血流や糸球体濾過量の変動に直接結びつかないように、糸球体には濾過量の変動を最小限にする安定化機構が備わっている。

1.血管平滑筋による調節

・腎臓には、腎血管抵抗を変えることにより血圧の変動に起因する血流変動を最小限に抑える自動能が存在する。

・血管平滑筋は、血管内圧増加に対抗して収縮力を増し内径を小さくしようとする性質を持つ。この筋原性の自動能により、腎血流は体血圧(収縮期血圧)が90~180mmHgの範囲で一定に保たれる。

画像出展:「人体の正常構造と機能 全10巻 縮刷版 第1版」

 

 

 

 

 

 

2.尿細管糸球体フィードバック

・糸球体濾過量は、ネフロン下流からのシグナルによっても調節されている。

・『ヘンレの太い上行脚から遠位曲尿細管への移行部には、緻密斑と呼ばれる一群の上皮細胞があり、この部位で濾液の液量がモニターされている。 

画像出展:「人体の正常構造と機能 全10巻 縮刷版 第1版」

上段水色(遠位尿細管)の内部を取り巻くように緻密斑があり、ここで濾過液量をモニターしています。

 

 

 

 

 

 

濾液の増減は、濾液中のCl⁻濃度の増加/減少を感知すると、輸入細動脈とメサンギウム細胞にシグナルが送られ、糸球体濾過量を減少/増加させる。この働きを尿細管糸球体フィードバックといい、下流(遠位尿細管)の濾液流量を判断して、上流に位置する糸球体の濾過量を調節するという、より高次の調節能である。』

3.レニン-アンジオテンシン系による糸球体濾過量の確保

・腎臓は、体内のすべての細胞の生命活動の結果放出されるさまざまな代謝産物を恒常的に体外に排出する使命を持っている。

・腎血流が何らかの原因で低下した場合においても、一定の糸球体濾過量(GFR)は維持されなければならない。

・レニン-アンジオテンシン系は、全身の動脈を収縮させ血圧を上げるとともに、輸出細動脈を選択的に収縮させ、巧妙にGFRを確保する。 

腎機能が低下している高血圧患者(すでに利尿薬が投与され体液量が減少気味の患者)に降圧薬としてアンジオテンシン阻害薬を処方することは、腎機能の急速な悪化を招く危険がある。

画像出展:「人体の正常構造と機能 全10巻 縮刷版 第1版」

 

 

 

 

 

 

 

レニン・アンとジオテンシン・アルドステロン系

・傍糸球体装置の第一の働きは、全身の血圧を上昇させるレニンという物質を放出することである。

・レニンから始まる血圧上昇システムは、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAA系)と呼ばれている。

・レニンはホルモンと見なされることがあるが、ホルモンではない。ホルモンは、血液や体液中に分泌されて細胞膜や細胞質内の受容体に特異的に結合し、標的の細胞の反応を引き起こす物質のことである。

レニンはきわめて特異性の高いタンパク分解酵素であり、傍糸球体装置の顆粒細胞から血液中に分泌され、血漿に含まれるアンジオテンシノーゲンというタンパク質を分解して、アミノ酸10個からなるアンジオテンシンⅠ(AⅠ)というペプチドを生成する。

・アンジオテンシンⅠは内皮細胞の持つ変換酵素によって処理されてアミノ酸8個のアンジオテンシンⅡになる。このアンジオテンシンⅡにはきわめて強力な血圧上昇作用がある。

・アンジオテンシンⅡの作用は、一つは、全身の動脈の平滑筋に作用して強く収縮させる働きで、血管の抵抗が増して短期的に血圧が上昇する。もう一つは、副腎皮質に働きかけて、アルドステロンというホルモンを分泌させる働きである。

・アルドステロンはステロイドホルモンの一種であり、腎臓の集合管に作用してその性質を変え、ナトリウムの再吸収を強力に促進する。アルドステロンの作用により、身体の中にナトリウムが蓄積し、体液の量が増え、その結果、中長期的に血圧が上昇する。

レニンはアンジオテンシンⅡを生成することにより、短期的および中長期的に全身の血圧を上昇させる。

・顆粒細胞は、糸球体の血圧が下がったときにレニンを分泌する。

・顆粒細胞はもともと平滑筋細胞から生じた細胞で、糸球体の近くで輸入細動脈の周りを取り巻いている。

糸球体の血圧が下がると、輸入細動脈壁の張力が低下し、それを感じて傍糸球体装置の顆粒細胞がレニンを分泌し、全身の血圧を上昇させる。これにより糸球体の血圧を確保する。 

画像出展:「腎臓のはなし」

 

 

 

腎臓のはなし1

下の図は、ブログ「腎臓疾患における活性酸素」でご紹介した『抗酸化の科学』という本の中にあったものです。

タイトルは“CKDの進展と酸化ストレス”となっています。CKDステージ1の糸球体・尿細管局所での炎症に続いて起こるCKDステージ2は、糸球体内皮細胞障害で、「腎機能における抗酸化物質の低下」と書かれています。これは増えすぎた活性酸素を抑制するための物質が減少するということです。 

画像出展:「抗酸化の科学」

この糸球体内皮細胞障害がどんなものか知りたいと思い、“腎臓内血管の構造と機能特性”という寄稿を、『医学のあゆみ 慢性低酸素状態の腎臓』というバックナンバーの中に見つけたのですが、残念ながらこのバックナンバーを販売しているサイトを見つけることはできませんでした。

驚いたのはこの寄稿が、度々お世話になっている『人体の正常構造と機能』という本の総編集をされている坂井建雄先生のものだったという点です。バックナンバーは手に入れることはできませんでしたが、これがきっかけとなって坂井先生の『腎臓のはなし』という本に出合えたのはラッキーでした。

前置きが長くなって申し訳ないのですが、もう少し続けさせて頂きます。

専門学校時代、解剖学(人体の構造)と生理学(人体の機能)が別々の授業(先生も別々)だったことに違和感がありました。「構造と機能を必要に応じ、関連させて説明したもらった方が分かりやすいのに。。。」と思っていました。そのため、坂井先生の、まさに”解剖学+生理学”という人体の正常構造と機能』には何度も何度も助けてもらいました。

本書の「あとがき」には、坂井先生のご専門が腎臓であるということが書かれており、これは、大変興味深いことでした。そこで、ブログは目次に続き、その「あとがき(一部)」から入りたいと思います。なお、目次の黒字がブログで触れている項目ですが、正確にお伝えしたい箇所については引用(『』)させて頂いています。 また、長くなってしまったためブログを3つに分けました。

著者:坂井建雄

出版:中公新書

発行:2013年4月

はじめに

第一章 腎臓とはなにか? ―尿の意味論

・どのような臓器か

・ミクロの構造

・尿の主な成分は水である

・生命を育む水

・細胞にとっての重要度

・人体からの出入り

・腎臓の責任

・尿の生成は二段階方式

・排泄機関としての役割

・尿の色

第二章 尿は血液から作られる ―濾過をする糸球体の働き

・糸球体の形

・濾過フィルター

・無数の足突起を伸ばす足細胞

・糸球体は再生できない

・濾過量の測定

・腎臓と血管の関係

・腎臓の中の動静脈

・濾過の仕組み

・尿の材料となる血液

・濾過フィルターの異常

第三章 尿の調節は全身の調節 ―大量に作り、大量に再吸収

・尿細管の働き

・近位尿細管の特徴

・上皮細胞による輸送

・イオンと水の吸収

・髄質での濃縮

・濃縮の仕組み

・体液の浸透圧を調節

・腎臓による体液量の調節

・成分を調整する集合管

第四章 進化した腎臓 ―高度に発達した哺乳類の腎臓

・脊椎動物のさまざまな腎臓

・地球上での脊椎動物の進化

・高度に進化した哺乳類の身体

・尿を濃縮する腎臓の髄質

・哺乳類の糸球体の構造

・哺乳類の糸球体が機能するための条件

・腎臓の被膜

第五章 壊れそうで壊れない糸球体 ―繊細な構造、壊れない仕掛け

・臓器の隅々に広がる毛細血管

・毛細血管の内皮細胞

・糸球体の毛細血管の特徴

・糸球体の内部構造

・メサンギウムという結合組織

・糸球体にかかる大きな力を支える

・糸球体におけるメサンギウム細胞の役割

・糸球体が壊れないで働き続けるために

・傍糸球体装置

・レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系

・尿細管糸球体フィードバック

第六章 腎臓の謎を解読した歴史 ―医師たちは何に魅せられてきたのか

・腎臓の構造と機能を解き明かす

・古代の人たちは腎臓を知っていたか

・医師の君主ガレノス

・16世紀のヴェサリウスが見た腎臓

・マルピーギによる腎小体の発見

・尿細管の走行が明らかに

・ブライトによる腎臓の発見

・糸球体の研究史

・足細胞とメサンギウム細胞の発見

・濾過フィルターの主役さがし

第七章 腎臓病はやはり恐ろしい ―できるだけ長持ちさせて長生きする方法

・腎臓病は目立たない

・腎臓は少しずつ壊れていく

・壊れても生きていける

・慢性腎臓病CKD

・腎臓とともに生きる

あとがき

あとがき(一部)

『私が腎臓に興味を持つようになったきっかけは、たまたまの出会いのようなものである。私の解剖学での最初の研究テーマは、ハーダー腺というネズミの眼の奥にある脂肪分泌腺に関するもので、これで医学博士の学位を得た。腎臓の研究を始めたのはその後である。私と同じ年代で生理学教室にいた河原克雅君(現北里大学生理学教授)がイモリの尿管の電気生理を研究していて、解剖学的な見地から助言を求められ、それをきっかけにイモリの腎臓の共同研究が始まったのである。その後私は腎臓の解剖学研究の第一人者である、ドイツのハイデルベルク大学のクリッツ教授のもとに留学した。ここで手がけた糸球体についての研究から、私の腎臓研究は本格的に始まった。それ以来30年ほどの間に、腎臓の構造と機能に関する研究は急速に発展し、腎臓病の診断と治療にも大きな進歩があった。この腎臓研究の発展に形態学の面からなにがしかの貢献ができたこと、また腎臓の構造と機能についての理解が深化・変貌してきた様をつぶさに目撃できたことは、私にとって大きな喜びである。

冗談ごとではなく、第一線の研究者の言っていることが、ある日を境に180度変わってしまうこともありえるのである。糸球体の濾過のフィルターの主役が何かについて、私を含め誰もが糸球体基底膜が主役であると信じていたが、1998年にスリット膜が主役の座に躍り出て糸球体膜は日陰者になってしまった。それ以後に腎臓の研究を始めた若い人たちは、そのような紆余曲折の経緯を知るよしもない。』

第一章 腎臓とはなにか? ―尿の意味論

尿の主な成分は水である

・人間が生きるためには、さまざまな物質を外界から取り込む必要がある。

・第一に空気中の酸素、第二に食物、第三にである。

いきなり本題から外れてしまって申し訳ないのですが、上記を書き出したのは、東洋医学でとても重要なことの一つである“気・血・津液(シンエキ)”を、気⇒酸素血⇒食物津液⇒水に置き換えて考えることができるなら、「“気・血・津液”は人間が生きるために必要な、時代を越えて大切なもの」と言っても良いのではないかと思ったためです。 

「中医学アカデミー」さまのサイトにあった“気血津液について”というページをご紹介させて頂きます。

『中医学では、五臓六腑のほかに、人の体は気(き)・血(けつ)・津液(しんえき)の3つで構成されていると考えます。従って、中医学では病気は五臓六腑に多いが、気血津液とも深い関係があると考えています。』 

第二章 尿は血液から作られる ―濾過をする糸球体の働き

糸球体は再生できない

足細胞が細胞分裂をしない理由はよくわからないが、そのため、糸球体は一度壊れると再生することができない。

糸球体のどこかに、細胞分裂のできる未分化な細胞が混ざっている可能性は完全には否定できない。

・糸球体は繊細な構造で壊れやすく、再生することがないため、年齢とともに糸球体の数は少しずつ減っていく。

硬化糸球体とは壊れた糸球体に結合組織が進入て、毛細血管がつぶれてしまう状態である

・硬化糸球体の数は40歳を越えると硬化糸球体の数は急速に増えていき、60歳代になるとその割合は8パーセントになる。

腎臓の病気では、糸球体に炎症が起こって糸球体硬化が進み、正常に働く糸球体の数が大きく減る恐れがある。

糸球体が硬化する原因の多くが、足細胞であることがわかってきている。 

画像出展:「腎臓のはなし」

 

腎臓は腎移植で片側の腎臓を摘出すると、残された腎臓が大きく肥大して糸球体濾過量を増やすことが知られている。

実験動物を用いた詳しい研究によると、肥大した腎臓では、糸球体が大きくなって糸球体濾過量を増すこと、しかし足細胞の数は変わらないことが知られている。足細胞は大きくなり足突起の数を増やして、大きくなった糸球体の表面を覆うのであるが、この足細胞の努力には限界がある。

・腎臓の肥大がある程度以上になったり、肥大したところにさらに糸球体を傷害する因子が加わったりすると、足細胞が脱落して裸になった糸球体の表面がボウマン嚢の壁側上皮と癒着し、そこから糸球体内に線維芽細胞などが進入して糸球体が内部から壊れてしまう。 

画像出展:「人体の正常構造と機能 全10巻 縮刷版 第1版」

この写真は糸球体毛細血管の濾過障壁(3層のフィルター)を写したものです。下の毛細血管腔から[血管内皮細胞]、[糸球体基底膜(内透明版-緻密版-外透明版)]、[足細胞の足突起]となります。また、足細胞の足突起間にある“細隙膜”とは「あとがき」の中で坂井先生がお話しされていた(「私を含め誰もが糸球体基底膜が主役であると信じていたが、1998年にスリット膜が主役の座に躍り出て糸球体膜は日陰者になってしまった」)、スリット膜のことです。 

この細隙膜(スリット膜)について、本の中では次のようなことが書かれています(一つご注意頂きたいのは、私が持っている本は2008年発行の第1版です。最新は改訂第3版[2017年1月発行]になりますので、最新の内容とは異なるかも知れません)。

『足細胞の足突起の間には、濾過細隙が開いている。この細隙は、足突起がGBM[糸球体基底膜]に接するあたりで最も狭く、この部分に足突起をつなぐように細隙膜(スリット膜)が掛かっている。この細隙膜には、規則的な内部構造が報告されている。細隙の中心部を通る1本の糸と、それを両側の足突起の細胞膜につなぐ細糸がはしご状に配列して、その間に長方形の窓が多数あいている。

個体発生の過程をみると、濾過細隙が開く前の足細胞同士は、通常の上皮細胞にみられるのと同様、互いにタイト結合によって連結されている。糸球体の発生が進み、糸球体毛細血管が形成されると、タイト結合が細隙膜に置き換わり、足突起の間が開いて濾過細隙が形成される。病的な状態では、足細胞が足突起を失い扁平な細胞に変化し、濾過細隙も閉じてしまうが、このとき細隙膜に代わってタイト結合が足細胞同士を連結するようになる。細隙膜の基部にあたる足突起の膜の部分には、タイト結合と同じZO-1という蛋白分子が同定されている。』

濾過量の測定

・イヌリン・クリアランスは、糸球体濾過量を調べるための王道であるが、臨床の場ではもう少し簡便な方法が用いられている。それがクレアチニンという物質のクリアランスを調べる方法である。

・イヌリンが王道とされているのは、生体内に存在しない物質であり、正常では糸球体で濾過され、尿細管では再吸収も分泌もされずに排泄される。そのため正確な糸球体濾過量(GFR)が得られるからである。

・イヌリンによる検査(検体採取)には点滴によるイヌリン投与が必要で、患者さまの負担が大きい。

クレアチニンは生体内に存在する物質(内因性物質)であり、正常では糸球体で濾過され、尿細管では再吸収されないものの、わずかに分泌がある。また、正常でも筋肉量の影響を受けるなど、イヌリンに比べると糸球体濾過量の検査としての精度は高くない。 

画像出展:「病気がみえるvol.8 腎臓・泌尿器」

こちらの図の上段左は血清Crの流れです。上段右は、腎機能低下時を説明したもので、濾過されなかった血清Crは循環に戻されます。そしてGFR(糸球体濾過量)が正常の50%を下回ると血清Crが上昇し始めます。

下段は血清Crに異常をきたす要因ですが、高齢者や長期臥床のために筋肉量が顕著に低下している場合や、肝臓に障害がある場合などは、血清Crは低く出るので注意を要します。

 

腎臓と血管の関係

・糸球体による濾過は体液の量と成分を一定に保って人体の細胞が生きていけるようにするために必要である。

糸球体濾の量を十分に確保するためには、十分な数の糸球体が正常に働いてくれることが大前提である。

糸球体濾過のためには大切な要素がさらに二つある。一つは、腎臓に十分な量の血液が流れることであり、もう一つは、糸球体に十分な血圧が加わることである。

・腹部を縦に走る大動脈と大静脈は並んでいて、大動脈が左に、大静脈が右にある。

・腎静脈は左の腎静脈の方が長く、腹大動脈の前面を横切っている。そして腹大動脈から分かれた一本の動脈(上腸間膜動脈)が左の腎静脈の前を下って、腎静脈を挟み込むような形になっている。

左腎静脈の構造は圧迫されてこの周辺のうっ血や静脈瘤、あるいは腹痛や血尿の原因となる。 

先生の本の図2-7は「人体の正常構造と機能 全10巻 縮刷版 改定第2版」からとなっています。左の図は「第1版」ではありますが、カラーであることを優先してこちらの図を貼り付けました。

向かって右側が左腎です。中央水色の太い管は下大静脈、赤色の太い管は腹大動脈です。左腎につながる静脈は確かに長く、上から押さえつけるように走行している少し細い管は上腸間膜動脈です。この構造が、うっ血、静脈瘤、血尿、腰痛の原因になります(クルミ割り症候群)

 

クレメジン®(慢性腎臓病の薬)2

出版:フジメディカル出版

発行:2013年4月

特集 見逃されてきたウレミックトキシン[尿毒症毒素]を再考する

―ウレミックトキシンは、心腎症候群のリスクファクターか

1.“ウレミックトキシンとは” 名古屋大学大学院医学系研究科 尿毒症病態代謝学 丹羽利充

2.“インドキシル硫酸の動脈硬化に及ぼす影響” 東京医科歯科大学大学院 先進倫理医科学 伊藤俊輔、吉田雅幸

3.“インドキシル硫酸による酸素代謝異常への影響” 東京大学大学院医学系研究科 鵜沢 智、大瀬貴元、南学正臣

4.“球形吸着炭:クレメジン®は心血管疾患を制御できるか” 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 器官病態修復医学(循環器内科学) 山口浩司、佐田政隆

今回のブログは、慢性腎臓病に深く関わるインドキシル硫酸の理解を深めるために、上記の4つの寄稿の中から、ブログに残しておきたいと思う個所を抜き出すということをしました。

注)結果的に”2”は入っていません。

1.“ウレミックトキシンとは” 

インドキシル硫酸の代謝

経口的に摂取した蛋白質が大腸内で加水分解され生成したトリプトファンが、大腸菌などによりインドールに代謝される。インドールは腸管から吸収され肝臓で酸化、硫酸抱合されインドキシル硫酸となって血中に放出される。正常では血中のインドキシル硫酸は腎臓から尿中に排泄されるが、腎不全ではインドキシル硫酸のクリアランスが低下し血清インドキシル硫酸濃度は著明に増加する。血中では約95%がアルブミンと結合しており血液透析によって除去されにくく、血液透析による減少率は約30%と低い、経口球形吸着炭(AST-120;クレメジン®)はインドキシル硫酸の前駆体であるインドールを腸内で吸着することにより、血清インドキシル硫酸濃度を低下させる(図1)。

画像出展:「腎・高血圧の最新治療」

インドキシル硫酸によるCKD進行

腎不全ラットにインドキシル硫酸、インドールを投与すると腎不全がより進行することから、インドキシル硫酸は腎不全の進行を促進するウレミックトキシンである。インドキシル硫酸はトランスフォーミング増殖因子(TGF)-β1、メタロプロテアーゼ組織インヒビター(TIMP)-1、プロα1(Ⅰ)コラーゲンの発現を増加させ腎臓の間質線維化や糸球体硬化をきたす。また、有機アニオントランスポーター(OAT1、OAT3)を介して近位尿細管細胞に蓄積し、活性酸素種(ROS)の産生と抗酸化系の障害により尿細管細胞障害をきたし、間質の線維化を促進する(図2)。

画像出展:「腎・高血圧の最新治療」

さらに近位尿細管細胞において、ROS[活性酸素種]の誘導、NF-kB[炎症反応急性期の調節因子]の活性化、p53[がん抑制遺伝子]の発現を介して細胞化と線維化の促進、細胞増殖の抑制をきたし腎不全の進展を促進する(図3)。

画像出展:「腎・高血圧の最新治療」

また、尿細管細胞の上皮‐間葉形質転換(EMT)をきたし腎線維化を促進し、尿細管細胞による単球走化誘導蛋白(MCP-1)発現を促進、近位尿細管細胞においてSTAT3[がん遺伝子]のリン酸化を介してMCP-1、TGF-β1、平滑筋アクチン(SMA)の発現、NF-kBの活性化、細胞老化を促進する。さらに腎臓におけるKlotho[抗老化遺伝子]の発現を減少させ、細胞老化を促進する。その機序としてインドキシル硫酸は、近位尿細管細胞においてROS産生とNF-kBの活性化によりKlothoの発現を低下させる。

3.“インドキシル硫酸による酸素代謝異常への影響”

低酸素が尿細管間質障害をもたらす

近年、慢性腎臓病(CKD:chronic kidney disease)へのfinal common pathwayは尿細管間質領域の低酸素であることが広く知られるようになっている。

尿細管間質領域の低酸素は酸素の供給不足と需要過多の二つの大きな要因による。まずこの領域は、糸球体輸出細動脈の下流の尿細管周囲毛細血管(peritubular capillary)から酸素供給を受けるが、毛細血管の前後に動静脈シャントが存在するために、健常状態でも酸素分圧が低い。加えて、腎臓では酸素需要がもともと非常に高いため、需要と供給のアンバランスが生じやすく、腎臓は低酸素にさらされやすい(図1)。

画像出展:「腎・高血圧の最新治療」

すると腎機能の低下により酸素供給が低下し、さらにアンバランスが進む。尿細管周囲毛細血管網の減少、間質線維化による酸素拡散障害[酸素が血液中に拡散する過程で何らかの障害が生じる状態]、糸球体硬化による血流低下、レニン・アンジオテンシン系活性化などがその原因として報告されている。

尿細管間質領域の低酸素は、尿細管細胞の脱分化[既に分化した細胞が未分化の状態に変化すること]や線維芽細胞の活性化を引き起こし、さらに線維化を進行させることが報告されている。こうして尿細管間質領域の低酸素と線維化はvicious cycle[悪循環]を形成し、腎機能は増悪する。

インドキシル硫酸は酸素代謝異常から尿細管間質障害をもたらす

尿毒素が尿細管間質障害をもたらすメカニズムには不明な点が多いが、その機序の一つとして尿細管細胞における酸素代謝[代謝とは化学反応の二つ側面。一つは体内での物質の変化。もう一つはエネルギー発生と呼吸]が注目されるようになってきている。

前述のように低酸素による酸素代謝異常は、酸素供給不足と酸素消費量の増大という原因に大別される。図2に示すように酸素供給不足の原因としてはエリスロポエチン(EPO)産生抑制、酸素需要を増大させるものとして酸化ストレス、酸素消費量増大などのメカニズムが報告されている。また、酸化ストレスからの小胞体ストレスの誘導も最近報告されている。

画像出展:「腎・高血圧の最新治療」

■ご参考:“「腎臓が寿命を決める」とは”(過去ブログ)

ほぼ中段にある「EPOによる赤血球の増産」では、エリスロポエチン(EPO)の作用をスライドショーでご紹介しています。

1)インドキシル硫酸は酸化ストレスを介して尿細管の酸素消費量を増加させる

Palmらは、我々の研究室との共同研究により、インドキシル硫酸が酸素消費を増大させ尿細管間質障害を引き起こすことを示した。

ヒトおよびラットの尿細管細胞にインドキシル硫酸を投与すると、ベースラインと比べて有意に酸素消費量が増加したが、NADPHオキシダーゼ[活性酸素の産生に関わる酵素]を阻害すると酸素消費量は上昇せず、Na+-K+-ATPアーゼ[ナトリウム-カリウムポンプ]を阻害しても同様の結果であった。したがって、インドキシル硫酸は、Na+-K+-ATPアーゼおよびNADPHオキシダーゼによる酸化ストレスを介して尿細管細胞での酸素消費を増大させることが明らかとなった。

次に、5/6腎摘ラットを用いた実験では、偽手術群に比べ血清インドキシル硫酸濃度が有意に増加し球形吸着炭で改善していた。酸化ストレスマーカーのニトロチロシンの組織染色や低酸素マーカーのピモニダゾール染色もインドキシル硫酸濃度と同様の推移を示した(図3)。このことより、インドキシル硫酸はin vitroでもin vivoでも尿細管細胞で酸素消費量を増加させ、低酸素から尿細管間質障害をもたらしたと言えた。 

画像出展:「腎・高血圧の最新治療」

2)インドキシル硫酸はEPO産生を抑制し酸素供給を低下させる

我々の研究室のChiangらは、インドキシル硫酸がHIF(hypoxia-inducible transcription factor)[低酸素誘導因子:細胞に対する酸素供給が不足状態に陥った際に誘導されてくるタンパク質]依存的にEPO産生を抑制することを示した。

ヒト肝細胞癌細胞であるHepG2に低酸素を誘導するとEPOのmRNA発現が上昇しHIF-αが細胞質内から核内に移行するが、インドキシル硫酸を加えると核内移行が有意に抑制され、転写活性も同様に抑制された。

ラットにHIFを安定させる塩化コバルトを投与するとEPOのmRNA発現、血清濃度が上昇するが、インドール投与により血清インドキシル硫酸濃度が上昇すると両者とも有意に低下した。

したがって、インドキシル硫酸はHIF-αの核内移行を抑制することでEPOの発現を抑制し、酸素の供給不足をもたらすことが示された。なお、末期腎不全患者の腎性貧血では硫酸が関与している可能性も示唆される。

3)インドキシル硫酸は酸化ストレスから小胞体ストレスを惹起する

我々の研究室のKawakamiらは、インドキシル硫酸が小胞体ストレスマーカーのCHOP(C/EBP homologous protein)の発現を上昇させることを示した。

ヒト尿細管上皮細胞であるHK-2にインドキシル硫酸を加えたところ、濃度依存的にCHOPの発現が上昇していた。5/6腎摘ラットを用いた実験では、偽手術群に比べ有意にCHOP発現が上昇し、5/6腎摘+球形吸着炭群では有意に発現が低下した(図4)。 

画像出展:「腎・高血圧の最新治療」

また、HK-2にインドキシル硫酸を加えるとCHOP発現が有意に上昇するが、そこにN-アセチルシステインを投与するとCHOP発現は有意に低下した。

したがって、インドキシル硫酸は酸化ストレス[酸化反応により引き起こされる生体にとって有害な作用]を介して小胞体ストレス[変性タンパク質が蓄積することによって引き起こされる現象]を引き起こす。これは短期的には酸化ストレスに対する応答と考えられるが、長期的には細胞障害をもたらすと考えられている。

まとめ

インドキシル硫酸は、尿細管細胞において酸素消費を増大させること、EPO産生抑制から酸素供給を低下させること、酸化ストレスを介して小胞体ストレスを誘導することなどがわかってきており、インドキシル硫酸による酸素代謝異常が尿細管間質障害をもたらすメカニズムの一つとして重要であることが明らかになってきた。しかし、尿毒素が尿細管間質障害をもたらすメカニズムはまだ不明なことが多く、今後の研究の発展が期待される領域である。

4.“球形吸着炭:クレメジン®は心血管疾患を制御できるか”

はじめに

腎臓障害に伴う心臓障害の発生、いわゆる心腎連関が大きな関心を集めているなかで、慢性腎不全で蓄積する尿毒症毒素(uremic toxin)の存在が注目されている。血管内皮障害や酸化ストレスを介した臓器障害の原因と考えられているインドキシル硫酸(IS終末糖化産物(AGEs)[タンパク質と糖が加熱されてできた物質。強い毒性を持ち老化を進める]非対称ジメチルアルギニン(ADMA)[一酸化窒素生成酵素の内因性阻害物質]の存在が重要と考えられており、そのなかでも血中IS濃度を低下させる球形吸着炭(AST-120;クレメジン®)は、尿毒症症状の軽減や透析導入の遅延が期待できる治療薬として発売された。近年、心血管疾患の抑制にも有効であることを示唆するデータが報告され、腎臓だけでなく心血管に対する作用も注目されている。本稿ではuremic toxinと動脈硬化の関連性、球形吸着炭の作用および動脈硬化に対する球形吸着炭の効果について概説する。

■ご参考:“「閃く経絡」(心と腎)”(過去ブログ)

西洋医学の心臓と腎臓、東洋医学の心と腎について書いています。

クレメジン®(慢性腎臓病の薬)1

患者さまより、「クレメジン」という慢性腎臓病の薬があることを教えて頂きました。

「そんな薬があったんだ!!」という感じです。とても驚きました。

自宅に戻って、調べてみるとこの薬はクレハさまが開発、製造販売され、田辺三菱製薬さまが販売および医療機関への情報提供活動されていることが分かりました。

『クレメジン®は、クレハが開発した高純度の多孔質炭素からなる球形微粒状の経口吸着薬で、慢性腎不全における尿毒症毒素を消化管内で吸着し、生体内に吸収されずに便とともに排泄されることで、慢性腎不全保存期における尿毒症症状の改善や、透析導入に至るまでの期間を延長する世界で初めての慢性腎不全用剤です。』

画像出展:「田辺三菱製薬ニュースリリース

左の写真をクリック頂くと、田辺三菱製薬さまのサイトに移動します。上段メニューバーの左端は“患者さん・ご家族の皆さま”、そしてその右隣は“医療関係者の皆さま”となっています。ここでユーザが限定されてしまうため、全ての方が利用できるわけではないのですが、“医療関係者の皆さま”であれば、登録することで「Medical View Point(医療関係者向け情報)」に入り、色々なコンテンツにアクセスすることができます。

クレメジンについては、「クレメジンの特性・臨床成績などはこちら⇒」や「クレメジンチャンネル」(“クレメジン速崩錠開発物語”、“クイズで押さえる慢性腎不全治療”、“国内外のエキスパートによる座談会集”etc)などがあり、興味深い情報に接することができます。

“医療関係者の皆さま”というユーザ限定されたサイト内の情報をお知らせするのは適切ではないと思いますが、特に、聞きなれない「速崩錠」についてご紹介したいので、“総合製品情報概要”の中の“開発の経緯”についてのみ、触れさせて頂きたいと思います。なお、小文字で書かれた[ ]私が追記したものです。

『クレメジン®は、呉羽化学工業(株)(現株式会社クレハ)により開発された慢性腎不全用剤で、高純度の多孔質炭素からなる球形微粒状の経口吸着剤である。慢性腎不全時の尿毒症毒素(uremic toxins)の除去は、疾患の進行抑制や病態の改善に有効と考えられている。1964年以降いくつかのグループにより、粉末チャコールなど吸着剤の内服で、これらの毒素を消化管内で吸着除去しようとする考え方が提唱された。わが国でも薬用炭や酸化デンプン等吸着剤の投与が試みられたが、結果的には明確な効果が得られなかった。 呉羽化学工業(株)は、1975年より医療用途に適した経口吸着剤の開発を開始し、炭素吸着剤の体内吸収を必要とせずに消化管内に存在する有害物質を吸着して、便とともに排泄させるというメカニズムに着目した。そこで、1)従来の炭末で問題となった服用困難・便秘作用を軽減する 2)生体内毒素の成分と考えられ、炭末では吸着されにくいイオン性有機物に対する吸着力を高める 3)炭末で吸着されやすい消化酵 素に対する吸着力を低下させることなどを目的として、原料・製造方法を含めて検討を重ねた。その結果開発された「クレメジン ® カプセル」は、進行性の慢性腎不全患者の尿毒症症状の改善及び透析導入遅延効果が認められ、1991年10月に承認を得て発売を開始した。その後、1,865例の使用成績調査結果をうけて再審査を申請し、あらためて臨床的有用性が認められた(再審査終了:1998年3月)。 しかし、服用カプセル数が1日30カプセルと多いため、服用コンプライアンスが守られないことが多く、実際、使用成績調査において1日平均30カプセルを服用した症例は全体の約半数であった。このような事実から服用ボリュームの低減等に配慮した製剤開発を行い、2000年2月追加剤型としての散剤(細粒)「クレメジン ® 細粒」の承認を得た。 さらに、2017年8月、独自の製剤技術により服薬ボリュームを大きくすることなく、また、少量の水で速やかに崩壊し口腔内での拡散を抑える追加剤型「クレメジン® 速崩錠」の承認を得た。

続いて、クレメジンに関する本や専門雑誌を探してみました。

そこで見つけたのが、フジメディカル出版さまが発行されている、“腎・高血圧治療の今を伝える専門誌”とされる『腎・高血圧の最新治療』という専門誌です。“2013年4月10日発行”なので新しいとは言えないのですが、内容(“クレメジン®を取り巻く腎保護効果に関する最新エビデンス”)が魅力的であったのと、このような専門誌を見てみたいという思いがあり購入しました。

なお、ブログは思っていたより長くなってしまったため2つに分けました。

出版:フジメディカル出版

発行:2013年4月

クレメジンを取り巻く腎保護効果に関する最新のエビデンス

大阪大学大学院医学系研究科 腎疾患統合医療学寄附講座 椿原美治

はじめに

わが国における慢性腎臓病(CKD)患者数は1,330万人に達し、成人の8人に1人がCKDと考えられる。このうち、慢性透析療法に導入される患者数は年々増加し、2011年には約3.9万人に達し、維持透析患者数が初めて30万人を超え、医療経済的観点からも重要な課題となっている。

透析導入患者の主要原疾患としては、糖尿病性腎症(44%)、慢性糸球体腎炎(20%)、腎硬化症(12%)が挙げられる。またCKDは心・血管合併症(CVD)の大きなリスクファクターであり、ステージが進むほど高リスクとなることから、早期発見、早期治療によるCKD対策が重要な課題となっている。一方近年の様々なエビデンスから、CKDに対する生活習慣の改善や薬物療法による集学的治療の有効性が報告されている。

わが国では、経口剤であるAST-120(クレメジン®、球形吸着炭)は尿毒症症状の抑制、透析導入の遅延効果がランダム化対比試験で証明され、1991年に市販された、以降、腎保護のみならず、CVD抑制効果やその機序に関しても報告され、再注目を集めている。

本稿では、球形吸着炭の腎保護効果を中心に、最近のエビデンスについて概説する。

1.球形吸着炭の特性と作用機序

CKDの進展促進作用を示す尿毒症毒素の代表的な物質として、インドキシル硫酸(ISがある。経口摂取した蛋白質の中で、必須アミノ酸の一種であるトリプトファンは大腸内で、主に大腸菌によるインドールに変換され、腸管で吸収された後、肝臓において硫酸抱合[薬物を異物とみなして排出しようとする薬物代謝の一つ、親水性の分子に付加される反応のこと]を受けISとなって尿中に排泄される。CKDの進行に伴って尿中排泄が減少し、CKDの早期から血中濃度が上昇し、ステージが高くなるほどISの血中濃度が指数関数的に上昇することが知られている。血中ではISの大半がアルブミンと結合しており、糸球体からは濾過されず、尿細管細胞に存在する有機酸トランスポーターによって能動的に尿細管腔に排泄される。ISが尿細管細胞を通過する際に尿細管細胞が傷害されると、TGF-βなどのサイトカインが活性化され、尿細管間質病変を進行させると考えられている。球形吸着炭は、球形微粒多孔質炭素からなる経口剤であり、腸管においてインドールを吸着し、糞便に排泄することで、ISの血中濃度および尿中排泄量を低下させることによって腎保護効果を発揮するとされる(図1)。

画像出展:「腎・高血圧の最新治療」

2.CKDの進展抑制以外の知見

我々が実施したCKDの進展機序およびその抑制に関する基礎・臨床研究において、ISが動脈硬化の進展に及ぼす作用メカニズムや球形吸着炭の臨床的有用性などに関する様々な知見が得られている。

IS投与前後の血管平滑筋細胞(VSMCs)の変化を検討した基礎研究では、ISは血小板由来増殖因子(PDGF)-β受容体を介してVSMCsの遊走・増殖を誘発し、この過程には活性酸素が主要な役割を果たしていることが示された。このようなプロセスを経て、ISは動脈硬化性に作用することが臨床的にも確認されており、球形吸着炭の動脈硬化に伴うCVD発症抑制、さらには急増している動脈硬化性腎硬化症による腎不全の進行抑制効果が期待される。

慢性腎不全病態では様々なアミノ酸代謝異常[アミノ酸代謝に関わる酵素の異常を原因として毒性物質の蓄積あるいは必要なアミノ酸の欠乏をひきおこすこと]が栄養障害の要因であることが知られている。特に血中トリプトファン(TRP)濃度が極めて低下しており、栄養障害の大きな要因と考えられている。我々は、ISが血漿アルブミンとTRPの結合を用量依存性に阻害することをin vitro[試験管内の]研究において示した。この結果を踏まえ、慢性腎不全患者に球形吸着炭を2カ月間投与した結果、投与後アルブミンとTRPとの結合能が改善し血中TRP濃度が有意に上昇することを報告した。球形吸着炭による栄養改善効果が認められているが、単に食欲の改善効果のみならず、必須アミノ酸であるTRP代謝の改善効果を介する機序が明らかとなった。

3.CKDの進展抑制に関する最近の知見

先述したISの尿細管細胞傷害の機序から考えると、ネフロン当たりのIS負荷量が重要である。一方、糸球体濾過量(GFR)とネフロン数は比例せず、片腎を摘出してもGFRが80%に維持されるがために生体腎移植が可能である。5/6腎摘ラットでもGFRは50%を維持されるが、ISのネフロン当たりの負荷量は6倍でありCKD患者ではステージ3ではすでにISの腎障害が加速されていると考えられる。このような事実から、球形吸着炭の臨床治験の対象となったCr値が5mg/dL以上のステージ5より早期に使用する効果の実証が必要である。そこで我々はGFRが20mL/分以上(20~70mL/分)の進行性CKD患者43例を対象に、従来治療に加えて球形吸着炭を併用した群(併用群)としない群(非併用群)に無作為に割り付けGFRの変化をみたところ、1年後における治療開始時からのGFRの低下は球形吸着炭併用時群では有意に遅延したのに対し、非併用群では有意な遅延は見られなかった。またImaiらは、3/4腎摘ラットという軽度の腎不全モデルを用い、球形吸着炭とACE阻害薬および蛋白制限食との併用は、ACE阻害薬と蛋白制限食のみよりも有意に腎保護作用を有することを報告し、従来より早期の使用がより長期の臨床効果をもたらすことが示唆される。

4.球形吸着炭の国内外の臨床エビデンス

球形吸着炭の臨床的有用性に関しては、国内外の臨床研究において数多く報告されている。国内41施設241例のCKD患者を球形吸着炭4.2gで開始し、2週後に6.0gに増量する群(球形吸着炭群、122例)とプラセボ群(119例)に無作為に割り付け、24週間追跡した二重盲検第Ⅲ相試験の結果では、全般改善度、有用度、1/Crの時間変化の改善度、症状改善度のいずれも、プラセボ群に比べ球形吸着炭群では有意な改善が認められた。また、副作用の発現、臨床検査値は両群に差を認めず、慢性腎不全の進展抑制および尿毒症症状の改善に有効で安全性も高く、有用な薬剤であることが示されている。

一方、国内75施設460例の血清クレアチニン(sCr)値5.0mg/dL未満の中等症~重症CKD患者を、低蛋白食+降圧薬投与(従来治療群)または従来治療+球形吸着炭併用(球形吸着炭併用群)の2群に無作為に割り付け、「sCrの倍化、sCr値≧6.0mg/dL、透析導入・腎移植の導入、死亡」の複合エンドポイントを1次評価項目として1年間追跡した結果では、エンドポイントに達する症例が予想以上に少なく、両群間に有意差は認められなかったが、球形吸着炭併用群のeGFRの低下速度は従来治療群に比べ有意に緩徐であり(図2)

画像出展:「腎・高血圧の最新治療」

早期腎不全患者での球形吸着炭の腎保護作用が証明された。

一方、米国29施設においてsCr値3.0~6.0mg/dLの中等症~重症CKD患者を対象に、球形吸着炭の用量別(2.7g、6.3g、9.0g/日)の腎保護効果を検討し多施設無作為割り付け二重盲検プラセボ比較第Ⅱ相試験の結果、球形吸着炭は用量依存性に血清IS値を抑制し(図3)

画像出展:「腎・高血圧の最新治療」

倦怠感を有意に改善するなどの有効性とともに、いずれの用量においても高い忍容性が示された。

2012年の米国腎臓学会で結果が発表され注目を集めるEPPIC1、2 study(a study of AST-120 for evaluating prevention of progression in chronic kidney disease)は、13カ国211施設において、中等症から重症のCKD患者2,035例を対象に球形吸着炭の有効性・安全性を検討したプラセボ対照無作為二重盲検比較試験である。1次評価項目は、「sCr倍化、透析導入、腎移植」の複合、2次評価項目は「1次評価項目+死亡」である。その結果、1次・2次評価項目に有意差は認められなかったが、post-hocサブグループ解析では、尿中蛋白/クレアチニン比≧1.0g/gCr、血尿陽性の進行性患者で、かつ服薬コンプライアンス率が80%以上の患者群では有効性が認められており、従来より軽症慢性腎不全の適応患者の選択やコンプライアンスの向上に工夫を要することが必要である。

まとめ

CKD患者において透析導入遅延、および尿毒症症状改善効果を有する球形吸着炭について、近年の基礎・臨床研究によってその機序が次第に明らかになりつつある。また、臨床成績においても球形吸着炭は、CKDの進行リスクの高い患者に、より高い有用性を発揮する可能性が示唆されており、このような患者群を対象とした今後の検討が期待される。

以上が、“クレメジンを取り巻く腎保護効果に関する最新のエビデンス”です。エビデンスの現状(2013年当時)についてはおおよそ理解できたのですが、消化不良の感が残りました。これは尿毒症毒素の代表的な物質であり、特に原因物質として主役となっているインドキシル硫酸(IS)についての知識がとても薄っぺらいものだからだと思います。

幸い、手に入れた専門誌は上記の“クレメジンを取り巻く腎保護効果に関する最新のエビデンス”以外に4つの寄稿があり、これらは全てインドキシル硫酸(IS)に関する内容を含んでいます。そこでこれらの寄稿を拾い読みし、ブログに残しておきたいと思った個所を抜き出すことにしました。

その内容は次回とさせて頂きますが、4つの寄稿の題名と寄稿された先生は下記のとおりです。

特集 見逃されてきたウレミックトキシン[尿毒症毒素]を再考する

―ウレミックトキシンは、心腎症候群のリスクファクターか

1.“ウレミックトキシンとは” 名古屋大学大学院医学系研究科 尿毒症病態代謝学 丹羽利充

2.“インドキシル硫酸の動脈硬化に及ぼす影響” 東京医科歯科大学大学院 先進倫理医科学 伊藤俊輔、吉田雅幸

3.“インドキシル硫酸による酸素代謝異常への影響” 東京大学大学院医学系研究科 鵜沢 智、大瀬貴元、南学正臣

4.“球形吸着炭:クレメジン®は心血管疾患を制御できるか” 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 器官病態修復医学(循環器内科学) 山口浩司、佐田政隆

腎疾患における活性酸素

ご来院頂いた腎臓病の患者さまの多くは、クレアチニン値が3点台~5点台です。成果は改善される患者さま、ほぼ現状維持の患者さま、数値の悪化が止まらない患者さまと個人差があります。まだまだ、分母(患者数)は多くありませんが、「鍼治療で改善される可能性があります」というのが当院の実績に基づく、実状です。

一方、腎臓病に限りませんが、生活習慣の改善が健康にとって重要であることは明らかです。鍼治療よる効果には個人差があるわけですが、すべての患者さまにとって「鍼治療と生活習慣の改善は両輪である」と考えています。

以下の表を参考にすると、生活習慣の中では、古典的危険因子の中の“喫煙”、“運動不足”と非古典的危険因子“睡眠障害”の3つが最も重要な改善点ということになります。

また、この表は2017年の日本内科学会雑誌 106巻7号に掲載されていた『医学と医療の最前線 酸化ストレス処理機構と腎障害』"1.腎機能が低下すると酸化ストレスが亢進する"の中で紹介されているものです。内容は非常に高度で理解困難なのですが、キーワードの“酸化ストレス”について書かれているため全文をご紹介します。

『腎機能障害はなぜCVDの危険因子なのだろうか。腎機能低下者ではCVD危険因子の保有状態が他のpopulationとは異なっているのではないか、と考えられている。一般に、CKD患者には従来から確立されている古典的危険因子(traditional risk factor)以外の危険因子(非古典的危険因子:nontraditional risk factor)が集積しているとのではないかと提唱されている(表)。Nontraditional risk factorの中でも酸化ストレスNO[一酸化窒素]産生異常は、CKDにおける高いCVD合併率を説明し得るprimary mediatorあるいはmissing linkと目されている。腎不全患者での酸化ストレス亢進、血管内皮機能障害については数多くの報告がある。中等度腎機能障害患者および透析患者において、前腕動脈の内皮依存性血管拡張反応の低下が示されている。腎機能が低下すると内因性NOS(nitric oxide synthase)阻害物質であるasymmetric dimethyl- arginine(ADMA)が増加することが報告されている。ADMAはarginineのメチル化により産生され,細胞内への取り込みやNOSの基質として l-arginineの競合的阻害物質として作用する。腎機能障害患者では血漿ADMA増加、l-arginine低下が報告されている。』

画像出典:「医学と医療の最前線 酸化ストレス処理機構と腎障害」

酸化ストレスに注目するのは、酸化ストレスを多量に発生させる要因に“ストレス”があり、腎臓病では一般的に問題ないとされている飲酒も、“暴飲暴食”の域に入ると多量の酸化ストレスが産生されるため、可能な限り避けて頂きたい行動だからです。 

こちらは、岐阜大学 科学研究基盤センター 共同研究講座 抗酸化研究部門さまのサイトにある“「酸化ストレス」とはどんなものか?”というページです。その中に次のような説明があります。

我々のまわりには、紫外線や喫煙、自動車の排気ガスなど、活性酸素の発生量を増やす因子があふれています。精神的、肉体的なストレスが高まっても、大量のアルコールを摂取しても、糖質を取り過ぎても、活性酸素は増えます。仕事が忙しくて睡眠時間が足りない、やけ酒を飲む、暴飲暴食・・・こうしたストレスが続くと、我々の体に備わった抗酸化システムの処理能力をオーバーしてしまいます。すると、活性酸素の悪い面が表に出てきて、体が酸化ストレスにさらされますこうした状態が続けば、老化を早めたり、さまざまな病気の因子を増やしたりと、あまりいいことはありません。酸化ストレスの影響をできるだけ減らす生活を心がけたいものです。』

そして、酸化ストレス・活性酸素と腎臓の関係を詳しく知りたいと思い、県内の図書館で見つけた本が次の『抗酸化の科学』になります。

編者:河野雅弘、小澤俊彦、大倉一郎

発行:2019年8月

出版:化学同人

目次は大項目と中項目のみのご紹介になります。

目次

Overview 抗酸化物質の歴史と概観

第Ⅰ部 活性酸素種の科学

第1章 活性酸素およびフリーラジカルによる酸化ストレス傷害のしくみ

第2章 酸化ストレス反応を引き起こす無機媒体の役割

第3章 活性酸素およびフリーラジカルを生成させる物理的・化学的な因子

第4章 生体内への酸素の取り込みと排出のしくみ

第5章 酸化ストレス反応を引き起こす活性窒素種の役割

第Ⅱ部 抗酸化反応の測定

第6章 活性酸素およびフリーラジカルの計測方法

第Ⅲ部 活性酸素種および活性窒素種の反応と制御

第7章 活性酸素種および活性窒素種の発生系

第8章 生体内で活性酸素および活性窒素の発生する酵素系

第9章 酸化ストレス傷害を制御する抗酸化酵素の性質と機能

第Ⅳ部 酵素活性種の制御と医療への応用

第10章 活性酸素およびフリーラジカル障害を抑制する医薬品

第11章 活性酸素および活性窒素で引き起こされる病気

第12章 予防医学:酸化ストレス傷害を予防する食事の摂取

第Ⅴ部 天然由来の抗酸化物質

第13章 酸化ストレス反応を抑制する抗酸化物質:必須ビタミンの役割

第14章 青果物のもつ抗酸化能についての考察:活性酸素消去活性

あとがき

ブログは、「第11章 活性酸素および活性窒素で引き起こされる病気」の中の「腎疾患における活性酸素」、そして「第13章 酸化ストレス反応を抑制する抗酸化物質:必須ビタミンの役割」の中の「ビタミンEと老化および疾患」の2つをご紹介したいと思います。

なお、以下の図は“活性酸素種”と“酸化ストレス”、“抗酸化物質”の位置づけを示すもので、例えは良くないのですが、活性酸素種は鉄砲、酸化ストレスは実弾、抗酸化物質は鉄砲を収める(抑制する)ケースというイメージです。 

画像出典:「日本老化制御研究所

こちらは厚生労働省が運営しているe‐ヘルスネットの“活性酸素と酸化ストレス”に関する記事です。『活性酸素とは:私たちが生命活動を営む上で酸素の利用は必須となります。呼吸によって体内に取り込まれた酸素の一部は、通常の状態よりも活性化された活性酸素となります。ヒトを含めた哺乳類では、取り込んだ酸素の数%が活性酸素に変化すると考えられています。活性酸素は、体内の代謝過程において様々な成分と反応し、過剰になると細胞傷害をもたらします。

腎疾患における活性酸素

『慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD)は透析療法を必要とする末期腎不全への大きな危険因子であることは論を待たないが、それだけでなく全身性の心血管疾患(cardiovascular disease;CVD)の大きな危険因子でもある。実際、CKDはCVDの発症、冠動脈疾患、心筋梗塞、心不全、心房細動、脳血管障害、入院、CVDによる死亡の危険因子であることが明らかにされており、さらに原因を問わない全死亡のリスクをも高める。腎機能(糸球体ろ過能)の低下とともにタンパク質尿の存在もリスクを増加させる。CKDは人類の健康福祉に対する大きな脅威であると同時に、医療経済的にも大きな負担となることから、全世界的な対策が求められている。

CKDの特徴として、その進行が長期にわたり経過しかつ不可逆的であることがあげられる。この病態進行過程に酸化ストレスが大きく関与することから、酸化ストレス機構の解明と効果的な抗酸化介入はCKD進展抑制への期待は大きい。 

慢性腎臓病の進展と活性酸素および活性窒素

上述のようにCKDは長期経過を辿り、その各過程には酸化ストレスが強く関与する。その初期は糸球体や尿細管など腎局所のおける炎症が主体であるが、やがて腎全体での抗酸化能の低下、レニン‐アンジオテンシン‐アルドステロン系(renin-angiotensin-aldosteron system;RAAS)の活性化、腎排泄能の蓄積による尿毒症性物質(uremic toxin)の蓄積、などの過程を経てCVDを中心とした全身性疾患に至る。

この図を見ると、最初に起こる問題は「糸球体・尿細管局所での炎症」となっています。

画像出典:「抗酸化の科学」

腎臓は多くの抗酸化物質を内因し、生体内でROSに対する消去還元能が最も高い臓器の一つである。CKDには糖尿病性腎症や慢性糸球体腎炎、腎硬化症などさまざまな原因があり、糸球体や尿細管などにおける炎症細胞浸潤やメサンギウム細胞からのROS産生などにより酸化ストレスが増大するが、初期ではこの豊富な抗酸化能に守られ、酸化ストレス傷害は腎局所に限定される。しかし一定以上のネフロンが傷害されると、CKDは不可逆的な共通過程により進行する。すなわち、一部のネフロンが傷害されると、残存ネフロンに過剰な糸球体ろ過負担による糸球体硬化が引き起こされ、傷害ネフロンが連鎖的に増加し糸球体ろ過能が低下していく(過剰ろ過理論、hyperfiltration theory)。

このような状況になると、糸球体ろ過能の低下と並行して、腎や全身での抗酸化物質の量が低下する。なかでもビタミンEは比較的早期から低下しCKDステージ3では赤血球中含有量は半減する。また、グルタチオンペルオキシダーゼやSODなども透析期では60~80%まで減少する。これらの腎内抗酸化物質の急激な減少は、腎排泄能低下による尿毒症性物質の蓄積とともに、腎局所から全身へ酸化ストレスを拡大させる。とくに心への進展による心血管障害は心腎症候群と称され、最も治療介入を要するCKD病態である。』

ビタミンEと老化および疾患

同様にヒトにおいてもビタミンE投与の研究がさまざま行われている。特に酸化ストレスが病態の発症や亢進に深く関与するとされているアルツハイマー型認知症やパーキンソン病などの脳神経変性疾患に対する大規模臨床試験は、これまでも世界中で行われてきた。しかし、その結果はバラツキがある。その背景には各試験における投与条件の違い、被験者の背景など複雑であり、効果の真意を明確にするにはまだ時間が必要であろう。しかし、試験管や培養細胞、動物実験レベルでは、ビタミンE欠乏マウスで脳内にβアミロイド斑のような凝集タンパク質がみられること、またβアミロイドが活性酸素を放出すること、さらにビタミンEの過剰投与ではこれらの現象はみられないことなどから、ビタミンEが抗酸化的にアルツハイマー型認知症において効果を発揮する可能性は十分に考えられる。

これ以外にも非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease;NAFLD)やがんといった炎症反応を伴い酸化ストレスが亢進しているであろう疾患に対してもビタミンEの投与が有効であるとの報告がある。ビタミンEの場合、過剰摂取による影響は少ないため、加齢に伴う生体内酸化の亢進を防ぐためには積極的な摂取が推奨される。』

こちらは江崎グリコさまのサイトです。ビタミンE摂取の注意点として以下のような説明が出ています。

『過剰症では出血傾向になるという害がみられるのでサプリメントや薬などからの過剰摂取には注意が必要です。日常の食生活ではとり過ぎになる心配はほとんどなく、積極的にとりたい栄養素のひとつです。』

鍼治療と酸化ストレスに関する論文等の情報を検索すると、特に新しいものほとんどありませんでした。その中で、ラットではありますが「埼玉医科大学雑誌 第41巻 第2号 平成27年3月」に書かれていた、”抗ストレス作用は抗酸化力や酸化ストレス度に影響する”という内容に興味を持ちました。 

鍼治療による抗ストレス・抗酸化作用の可能性”:『ラットに対するストレス負荷による影響を検討した結果、拘束ストレスにより血液流動性の低下、血小板凝集能の亢進、血中ATP濃度の増加を認めた。こうした拘束ストレス負荷を加えたラットに対して鍼刺激を行ったところ、先に述べた項目が抑制されたことから鍼刺激による抗ストレス作用が明らかになった。また、拘束ストレスにより抗酸化力の低下と酸化ストレス度の増加を認めたが鍼刺激はこれらの反応を改善させ、鍼刺激による抗酸化作用・赤血球や血小板の細胞膜保護作用がある可能性が示唆された。』

付記1:腎エイジングと個体加齢の悪循環

こちらは「医学と医療の最前線 老化と腎臓病」に掲載されていた図ですが、腎エイジングと個体加齢の悪循環にも酸化ストレスが関与しています。

タイトルの”喫煙と腎・泌尿器疾患”をクリック頂くと、6ページのPDF資料がダウンロードされます。

調べてみると上記の資料は高野先生のクリニックの”禁煙への思い”の中にありました。

尿蛋白クレアチニン比(“尿TP/CRE比”)

先日、患者さまからの腎臓に関する検査値のお話の中で、全くノーマークだった重要な検査値があることを知りました。それは、尿蛋白クレアチニン比(尿TP/CRE比)というものです。

以下はネットで調べた内容になります。

尿蛋白クレアチニン比の利点

●尿検査(尿一般試験紙法)は被検者の健康状態により、尿が希釈あるいは濃縮されている場合には正確な評価が難しくなります。一方、尿蛋白クレアチニン比による計算式では、希釈尿や濃縮尿が補正されるメリットがあり、1日尿蛋白排泄量(g/日)ともよく相関するとされています。また、専門医への紹介基準や “CKD(慢性腎臓病) 重症度分類基準”などにも用いられています。

尿蛋白クレアチニン比の計算式

●尿TP/CRE比  “随時尿の尿蛋白定量結果(mg/dl)” ÷ “尿中クレアチニン濃度(mg/dl)

『内科プライマリ・ケア医の知っておきたい“ミニマム知識” =尿蛋白定量・クレアチニンクリアランスの考え方を身につけよう=』より

こちらは、2007年の日本内科学会雑誌 第96巻 第5号の掲載されていたもので、執筆者は横井内科医院院長の横井 徹先生です。内容は横井先生が内科医の先生方向けに書かれたものになっています。

ブログでは、“1.尿検査は試験紙法だけでとどめないで、尿蛋白持続陽性例では定量検査で「尿蛋白クレアチニン比」をチェック!”だけをご紹介していますが、太字は私の選択であり原文には太字はありません。なお、以下をクリック頂くと資料がダウンロードされます。

1.尿検査は試験紙法だけでとどめないで、尿蛋白持続陽性例では定量検査で「尿蛋白クレアチニン比」をチェック! 

『内科医なら誰でも尿検査、特に試験紙法による検尿は日常的に行っている。しかしこれからは、これだけで終わらないようにしたい。尿蛋白が+だから軽度、3+だから高度、というのは必ずしも正しくない。試験紙法は程度を濃度で分類しているため、蛋白の「尿中含有量」が同じでも希釈尿環境では+、濃縮尿環境では3+になることも多い。ここに、試験紙法で定性反応しかチェックしないことの盲点がある。 

一般に一日尿蛋白排泄 0.3~0.5g以上が数カ月間以上持続する場合、5~10 年単位で徐々に腎機能が低下してゆく慢性糸球体疾患が存在する可能性が高いと考えられる。そしてこのレベルの尿蛋白で一日尿量が2リットルある場合、一日0.5gの蛋白尿は単純計算で25mg/dlとなり試験紙法では±、高度の脱水で尿が 500mlにとどまる場合、100mg/dlとなり2+になり得る(一般に試験紙法において、+は30mg/dl以上、2+は100mg/dl以上、3+は300mg/dl以上が目安である)。すなわち、尿量が多いケースでは試験紙法で尿蛋白±程度であっても軽視できないわけである。 

この盲点を回避するために、尿蛋白定量が必要となる。しかし蓄尿が困難な環境で単に受診時採取した尿で「尿蛋白定量」をオーダーしてもmg/dl、「濃度」の単位でしか報告されない。これでは試験紙法と何らかわりはなく、無駄である。それに対して、随時尿の「尿蛋白クレアチニン比」はその人の一日尿蛋白排泄量(g/day)とほぼ等しいか、等しくなくともよく相関することが知られているのでこれを用いたい。尿蛋白クレアチニン比は、随時尿検体で尿蛋白定量結果(mg/dl)を尿中クレアチニン濃度(mg/dl)で除することで計算できる。これで0.3~0.5であれば、すなわち尿蛋白排泄0.3~0.5g/day程度と推定でき、できれば 1、2年以内には腎専門医へ紹介して欲しい(理由は前述のように進行性の慢性腎疾患の可能性が高いからである)。これよりも尿蛋白が多い場合、腎機能低下スピードはさらに速くなるのでもっと早めの紹介が必要である。さらに高度となるネフローゼ症候群のレベルになれば 1、2カ月以内の専門医紹介が必要なことが多い。蛋白尿が高度であればあるほど、できるだけ早期の治療介入が将来の腎機能低下を予防する一番の手段になるのでこの判断はたいへん重要である。 

なお、一過性に、ある程度以上の蛋白尿が出現することもある。体位性蛋白尿や発熱・感染など可逆性の原因に伴い一時的に出現するものであり、当然これらは腎実質性疾患ではないため、通常腎生検など精査の適応にならない。将来の持続性蛋白尿(すなわち何らかの腎実質性疾患)の前兆という可能性がゼロではないものの、腎疾患診療では蛋白尿が持続的に認められるようになってから精査する、という方針で臨んでも決して治療開始が遅くはならない。以上の理由から、尿蛋白クレアチニン比を計算するのは、ネフローゼ症候群のような高度の蛋白尿例を除き、通常は数カ月以上通常の試験紙法にて蛋白尿が持続している場合に行うとよい。』 

感想

今後、患者さまの血液や尿の検査結果表を拝見させて頂くときは、“CRE(クレアチニン)”、“eGFR(糸球体濾過値)”、“ALB(アルブミン)”に加え、11月に勉強した“尿中微量アルブミン”と今回勉強した“尿TP/CRE比”の5項目をチェックしていこうと思います。

心腎連関(腎交感神経)

先月のブログはいずれも「閃く経絡」という本からの題材でしたが、その中で「心」と「腎」の関係について取り上げたのが “閃く経絡(心と腎)” でした。

一方、現代医学の心臓と腎臓の関係、「心腎連関」とはどのようなものか詳しく知りたいと思い、何か良い本はないかと探してみました。そして見つけたのが医学雑誌『腎と透析vol.69 No.4』の “腎臓と心臓の連関メカニズム” という特集でした。この号は2010年10月発行なので最新ではありませんが、この特集のタイトルがドンピシャだったので、内容の難しさは気にせず思い切って購入しました。

 

出版:東京医学社

発行:2010年10月25日

目次は次の通りです。

特集 腎臓と心臓の連関メカニズム

序説

 慢性腎臓病と心腎連関

[総説]

 心腎連関の疫学

 Cardio-renal anemia症候群

 Cardiorenal syndromeの分類―Roncoの分類―

[心腎連関の発症メカニズム]

 心腎連関における交感神経系の役割

 心腎連関と内皮機能

 心腎連関とRAAS

 心腎連関と脂質代謝異常

 心腎連関と酸化ストレス―慢性腎臓病―

 心腎連関とサイトカイン―炎症との関わり―

[各種病態における心腎連関の病態、治療、診断]

 心疾患における腎機能障害とその治療

 高血圧患者における心腎連関の病態と治療

 腎疾患患者における心腎連関の病態と治療

 腎疾患患者の心不全の病態と治療

 腎疾患患者の冠動脈疾患の診断とその治療―内科的観点から―

 腎疾患患者の心血管外科手術

 腎疾患患者の適切な貧血治療

 糖尿病における心腎連関の病態と治療

[トピックス]

 心腎連関におけるアルブミン尿の意義 

 腎疾患患者の血管病変の診断と治療

目次そのままのまとめ方ですが、心腎連関のキーワードは以下のようなことと考えます。

1.心腎連関の発症

交感神経(交感神経活動亢進)

内皮機能(腎局所での血管内皮機能障害)

RAAS(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系:血圧調整)

酸化ストレス(活性酸素)

サイトカイン(炎症)

2.心腎連関と疾患

●高血圧

●糖尿病(糖尿病性腎症)

●脂質代謝異常

●貧血

RAASと血圧調整についてはこちらをご覧ください。

『昇圧系としてのレニン–アンジオテンシン系は単純、かつin vitro阻害評価系が簡便であったことから、食品機能学研究においても多くのACE阻害物質が評価されてきた。しかしながら、本系は昇圧/降圧代謝物が産生される血圧調節系であることが徐々に判明し、かつ代謝物量も各種の臓器疾病(腎不全や心血管障害など)と連動して変化するようである。

ブログでは、これらのキーワードの中から心腎連関の発症メカニズムとしての「交感神経」を取り上げたいと思います。これは鍼灸治療には自律神経を整えるという直接的な効果があり(後述)、心腎連関という関係性において、鍼灸の効果を考えてみたいと思ったためです。

まずは、特集「心腎連関の発症メカニズム」の最初に掲載されていた“心腎連関における交感神経系の役割”をご紹介させて頂きます。

なお、( )内は私が加筆したものです。

心腎連関における交感神経系の役割

東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科 分子循環代謝病学講座 藤田 恵

はじめに

腎機能障害患者においては、心血管合併症が予後に大きく影響する。一方、交感神経活動が腎機能障害に関与していることが古くからいわれているが、腎機能障害患者における心血管合併症の発症・進展機序にも交感神経活動が関与している可能性が考えられる。腎機能障害・心血管合併症における交感神経活動の役割について、臨床スタディや動物実験の報告を踏まえ概説する。

腎機能障害における交感神経活動亢進

慢性腎臓病において交感神経活動の亢進が最初に示されたのは、1970~1980年代の血中カテコラミン値(カテコラミンとは、副腎や交感神経・脳細胞から分泌されるホルモンで、アドレナリン、ノルアドレナリン[ノルエピネフリン]、ドーパミンなど)の上昇を手がかりとした報告であった。また、腎不全患者において中枢神経抑制薬クロニジン(高血圧症治療剤)投与や自律神経遮断により降圧効果が増強していたという臨床スタディも、腎機能障害における交感神経活動の指標である筋交感神経活動を示した最初の報告は、透析患者において筋交感神経活動亢進を示した成績である。

軽度の腎機能障害患者でも交感神経活動亢進が報告されている。交感神経活動亢進は高血圧や肥満においても認められるが、末期腎不全患者では肥満や高血圧とは独立に交感神経活動亢進が認められるという報告がある。

交感神経活動亢進のメカニズム

上記のように腎機能障害で交感神経活動亢進が認められるが、その詳細なメカニズムについては不明な点が多い。Hausbergらは、交感神経活動亢進は尿毒症の結果起こるのではなく、腎障害初期に腎から中枢へ向かう求心性神経を介して起こる可能性があることを、腎移植患者を用いたスタディで示した。また、Campeseらの報告では、5/6腎摘ラットモデルで求心性神経の重要性が示された。

腎血管性高血圧で筋交感神経活動が亢進しており腎血管形成術(経皮的腎動脈形成術[PTRA]:動脈硬化を予防するため血管を拡張する治療)により、血圧や腎機能とともに交感神経活動が正常化することから、腎虚血は大きな因子と考えられている。また、虚血に伴って生じるアデノシンやレニン-アンジオテンシン系の関与や、末梢に加え中枢でのNOの関与も報告されており、腎機能障害においても関与している可能性が考えられる。いずれにしても、腎機能障害における交感神経活動亢進のメカニズムについては未解明な部分が多く、今後のさらなる研究が必要である。

交感神経活動亢進が及ぼす影響

交感神経活動亢進は高血圧の増悪に加え、腎臓、心血管に悪影響を及ぼす。交感神経活動亢進が動脈硬化を進展させるという報告は多数あり、実際、カテコラミンは血管壁の肥厚をもたらす。動脈硬化は当然、腎機能障害の増悪・進展につながる。また、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)は心筋細胞の肥大にも寄与し、心交感神経活動は左心肥大に関与していると報告されている。さらに、交感神経活動亢進は不整脈の発症にもかかわっている。すなわち、腎機能障害において交感神経活動亢進は、血圧のみならず臓器障害に直接関与し、予後に影響を及ぼすのである。実際、血中ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)値が末期腎不全患者における生存率と心血管イベント発生率の予測因子となるとする報告もある。

交感神経活動抑制をターゲットとした治療

以上のように交感神経活動亢進は、腎機能障害において非常に重要な役割を果たしており、交感神経活動の抑制が予後改善に有効であると考えられる。実際、1型糖尿病患者や本態性高血圧患者で交感神経抑制薬モキソニジン(交感神経遮断抗高血圧薬)がアルブミン尿(後述)を改善した。動物実験でも交感神経抑制薬投与や腎徐神経が、交感神経抑制とともに腎機能改善効果を示した報告が多数認められる。近年、治療抵抗性高血圧に対し、カテーテルによる腎交感神経焼灼術(後述)を行い奏功したスタディが報告されており、今後の発展が期待される。

おわりに

交感神経活動は、腎機能障害、さらに、それに伴う心血管合併症の発症・進展において重要な役割を担っている。今回概説した内容をまとめた図(腎機能障害における交感神経活動の原因と結果)を示す。交感神経抑制により腎機能障害患者の予後改善が期待される。交感神経をターゲットとした新たな治療戦略が有効と考えられ、今後のさらなる発展が期待される。

 

脳の中に明記されている「NOS」とは「一酸化窒素合成酵素」になります。

(参考:”一酸化窒素合成酵素の構造と機能”)

 

画像出展:「腎と透析Vol.69」

整理するとポイントは以下になると思います。

●腎機能障害における交感神経活動亢進のメカニズムについては未解明な部分が多く、今後のさらなる研究が必要である。

●腎機能障害において交感神経活動亢進は、血圧のみならず臓器障害(動脈硬化、心筋肥大、不整脈)に直接関与し、予後に影響を及ぼす。

●交感神経活動亢進は、腎機能障害において非常に重要な役割を果たしており、交感神経活動の抑制が予後改善に有効であると考えられる。

また、交感神経抑制の方法として、「腎交感神経焼灼術」という治療法が出ていました。

そこで、この腎交感神経焼灼術について調べてみると、焼灼術、アブレーション、デナベーションという言葉が引っかかりましたが、アブレーションは「取り除くこと、切除すること」、デナベーションは「徐神経」という意味なので、これらはいずれも「腎交感神経焼灼術」を表すものだと思います。

こちらは、京都府立医科大学附属病院さまの高血圧患者さま向けの治験(腎デナベーション術)のパンフレットで、簡潔で分かりやすい説明に加え、検査項目や治験の方法についても書かれています。

こちらをクリックするとPDF資料が表示されます。

 

こちらは、岩手医科大学 環器医療センターさまのサイトです。すでに平成28年より腎デナベーションの治験を実施されているようです。

世界初「腎-脳-心臓」連関:腎臓から心臓を治療する 2017-08-22

『東北大学大学院医学系研究科循環器内科学分野の下川 宏明教授の研究グループは、冠動脈ステント治療後に治療部分近くに生じる冠攣縮反応に対して、カテーテルで腎動脈交感神経を除去する治療が有効であることを世界で初めて報告しました。

※PDF資料をダウンロードするボタンが記事の下にあります。

 

 

 

以上の資料やサイトを拝見すると、腎デナベーション術は、期待は高いがまだ熟成されたものではなく、これから発展していくものだと思います。

腎神経叢

末梢神経が網状になっている神経叢ですが、腎神経叢は腹大動脈神経叢の一つに位置付けられています。画像はいずれも「人体の正常構造と機能」からになります。


その他の情報

1.“血圧変化に反応する筋交感神経活動は、腎臓・心臓交感神経活動と相似である

この記事は2004年12月と古いものですが、重要な情報だと思います。

『筋交感神経活動は、循環調節の他、重要臓器、特に心臓や腎臓を支配する交感神経活動と相似なのかどうか確かめられていない。これは、ヒトのマイクロニューログラフィー法は四肢末梢神経など、体表浅部の神経にしか適用できないためである。従って、現在までに蓄積された筋交感神経活動に関する多くの知見は、筋交感神経活動に限定されるものか、交感神経活動一般の理解に資するものか、明かではない。』

 2.“延髄C1ニューロンを介する抗炎症作用:急性腎不全を例に

ここでは「急性ストレス」と「慢性ストレス」という考え方が土台になっています。

『我々の生活環境におけるストレスは、急性ストレスと慢性ストレスに大別されます。免疫系において、慢性ストレスは「悪」のイメージが強いのに対し、急性ストレスには「良」の部分があるといわれています。たとえば、日常の運動は心循環器系や呼吸器系に対して急性ストレスとなりますが、定期的に運動をすることで病気になりにくくなるということはよく知られています。急性ストレスに対する生理機能の維持には、自律神経や視床下部-下垂体-副腎系の応答が不可欠です。免疫系では、これらが産生するノルアドレナリン、アセチルコリンや糖質コルチコイドによって過度な炎症の亢進が抑えられることが知られています(図A)。』

『延髄C1ニューロンは拘束ストレスにより活性化し、自律神経や視床下部-下垂体-副腎系の制御の一部を担っています。興味深いことに、延髄C1ニューロンを特異的に除去すると、拘束ストレスによる急性腎不全の軽減効果が消失しました。一方、延髄C1ニューロンを光遺伝学の手法を用いて特異的に刺激すると、拘束ストレスと同様に急性腎不全の軽減作用が認められました。また、延髄C1ニューロン光刺激による急性腎不全の軽減効果は、迷走神経の切断および糖質コルチコイド受容体阻害薬の投与では消失せず、β2アドレナリン受容体阻害薬では消失したことから、交感神経を介していることが示唆されました。』

『自律神経を介する抗炎症作用としてCholinergic Anti-inflammatory Pathway(CAP)が知られています(図B 説明参照)。今回の研究で観察された拘束ストレスによる急性腎不全の軽減作用も、上記の結果からCAPを介していることがわかりました。今後は、この経路の分子メカニズムを明らかにすることで、疾患予防や医療費削減への貢献が期待されます。』

図の説明 (A)(B)

(A) 感染,外傷や虚血によりマクロファージが活性化し,TNF-αやIL-1βなどのサイトカインが放出される。これらサイトカインは,感覚神経の末端に結合し,そのシグナルは中枢へ運ばれる。反射的に,自律神経系(交感神経,迷走神経[副交感神経])や視床下部-下垂体-副腎系が活性化し,それらの系から放出されるノルアドレナリン,アセチルコリンやコルチコステロンが,マクロファージの過活動を抑制する。

(B) 急性拘束ストレスによる,Cholinergic Anti-inflammatory Pathway(CAP)を介した急性腎不全の軽減作用。CAPでは,コリンアセチルトランスフェラーゼ陽性脾臓メモリーT細胞のβ2アドレナリン受容体に脾交感神経からのノルアドレナリンが結合し,放出されたアセチルコリンが近接するマクロファージのα7ニコチン性受容体に結合することで,炎症性サイトカインの放出が制御される。 

画像出展:「日本神経科学学会」

3.”「急性ストレス」と「慢性ストレス」

ストレスケア・コムさまのサイトに2つのストレスの説明が出ていました。

 付記

今回のブログでは血液検査の“クレアチニン”、“eGFR(推定糸球体濾過量)”と同じくらい、尿検査の“微量アルブミン尿が非常に重要な検査項目であることを知りました。

なお、こちらのサイトには”微量アルブミン尿”に関する詳細な説明が出ています。

ページの最後に【科学も認めるはりのチカラ】という冊子(PDF版)が紹介されており、ここに鍼の自律神経に関する効果について説明がされています。

脈診・腹診・クレアチニン

今回のブログは2018年2月23日にアップした「慢性腎臓病が鍼治療で改善!」の続編というべきものです。この患者さまの当時のクレアチニン値は2.38でしたが、その後2.14、2.18と変化しました。そして5月の検査では、ついに2点台を下回り1.82という数値になりました。
患者さまが来院された最大の理由は、2点台前半で安定していたクレアチニン値が2ヵ月で3.64に急速に悪化したことでしたが、5月の検査値の1.82はその安定していた当時の数値をも下回るものでした。

下記はクレアチニン、eGFRの推移をグラフにしたものです。


当院では施術前、仰臥位(あお向け)での施術終了時、そして全ての施術終了時の計3回、脈診を行うと共に血圧と脈拍を計っています。

 

ムロン社製の手首で計測するタイプを使っています。

この患者さまの来院当初の脈の特徴は次の通りでした。
赤くしたところが病脈になっているもので、現在は全て中央の「平脈」に近づきつつあります。「沈」「硬」「実」の3つについては、いずれも脈診を行う鍼灸師の直観的な感じ方による判断のため、評価は主観的であり比較検討は困難です。一方、変化を客観的な数値で評価できるのは「脈拍」です。そこで、計27回の施術を9回ずつ3つのフェーズに分けて、脈拍数の状況をグラフにして、それぞれのフェーズの傾向を比較することにしました。

祖脈診です。

これ以外に緊張が強くピンと張った脈である「緊脈」があります。

 

脈診はこの写真のように、左右3本の指(示指、中指、薬指)を使って行うのが一般的です。なお、手指側から寸・関・尺といいます。

画像出展:「日本鍼灸医学(経絡治療基礎編)」

上記の表は、2017年11月25日の初診から2018年5月27日までの計27回の施術を対象にしており、1~9回(青色)10~18回(小豆色)19~27回(緑色)の3つの段階に分けて比較しています。また、「脈拍数」の数値が入ったボックスのうち、灰色にしたボックスは脈拍数が40台のものを示しています。

10~18回(小豆色)の中に、1回目の脈拍が80以上が2回ありますが、これは患者さま曰く、「遅れそうになったので急いできた。」とのお話でした。これを考慮すると「平均」の脈拍数の順位は逆転するかもしれません。

分かったこと

・脈拍数40台は最初の4回の施術では12回の計測中10回(83%)と顕著に多い。
・遅脉については5~10回程度の施術回数で改善が確認できる。
・この患者さまの平脉の脈拍数は55~60と思われる。
・鍼治療が患者さまの自然治癒力を活性化させたことにより、本来の平脉に戻ったと考えられる。

遅脉とは
代々木の日本伝統医学研修センターでは、遅脉は1分間の脈拍数が50回未満のものとされています。そして、その原因としてまず考えられることは「冷え」です。「冷え」ではない場合、もう一つの原因とされているのが「気不足大」というものです。これは「気」の中に「推動作用」とよばれる、生理的活動や新陳代謝をつかさどる働きがあり、この推動作用の機能低下によって遅脉になると考えます。特に後者の推動作用の低下を原因とする遅脉は注意が必要です。
一方、数脉(サクミャク)は遅脉に相対するもので、1分間の脈拍数が80回以上とされています。こちらの原因は「」、あるいは「気不足小」になります。気不足小の場合、気の不足を補おうとして推動作用が働き、脈が数(脈拍を増やす)になると考えます。つまり、「気不足」が原因と考えられる遅脉および数脉に関しては、推動作用自体に問題を抱えている遅脉の方がより深刻ということになります。

腹診
脈診とともに重視しているのが腹診です。理想は赤ちゃんのような柔らかく、ふっくらしたお腹です。特に注意したいのは硬さの状態や形状、部位などです。
患者さまに関しては、臍周辺および下部の面状の硬さや臍上方の線状の硬さなど、まだ完全には取れていませんが、来院時に比べるとかなり軟らかくなりました。

疑われる瘀血

瘀血は血が内邪により非生理化したもの、熱が血に入り込んで血が固まったものと考えられています。触診は手に角度をつけ、下腹部の奥の面状の硬結を探します。瘀血による硬結の場合、縁が感じられ左右非対称が特徴です。
なお、ウィキペディアさまでは、
瘀血について次のような説明がされていました。

『東洋医学では流れが悪く滞りがちな血液を「瘀血」と呼んでいる。(瘀とは停滞という意味で、文字通り血が滞ったり、血の流れが悪く、よどんだ状態を指す) ~以下省略』
瘀血が疑われる代表的な脈の特徴は「沈細硬」とされています。これは脈が沈み、細く、硬い脈ということです。患者さまに関しては細くはなかったのですが、沈み硬い脈、熱が内攻した陰実な脈でした。そして、腹診でもほぼ「瘀血」の特徴がみられました。以上の事から瘀血による病態と判断し、本治穴を肝と腎の水穴・金穴としました。

まとめ

今回の患者さまの場合、病状の指標となるクレアチニン値・eGFR値と共に脈、腹部が足並みを揃えて改善されています。これは患者さま自身の自然治癒力が強力なものだったからではないかと思われます。

また、患者さまからは食事・飲水と共に、十分な睡眠をとれるよう心掛け、改善されるというイメージをもって生活している。とのお話を頂きました。

糸球体疾患

「一次性ネフローゼ症候群」の患者さまにご来院頂いています。クレアチニン値は約半年間、3点台で安定していたとのことですが、直近2ヵ月で5点台に一気に上昇(悪化)しました。2回の鍼治療後に行われた血液検査ではクレアチニン値の上昇にブレーキをかけることはできませんでしたが、次回の血液検査までの1ヵ月、週1回の治療を継続することになりました。
今後、改善がみられ、患者さまから同意を頂くことができれば、ブログにアップしたいと考えています。

ネフローゼ症候群は、高度の蛋白尿を基本的な病態とし、浮腫、低蛋白血症、高コレステロール血症を呈する疾患群の総称です。また、一次性は原発性ということです。従って組織診断だけで治療方針が決まります。一方、二次性の場合は原因疾患の治療も必要になります。
「病気がみえる vol.8 腎・泌尿器」によると、一次性ネフローゼ症候群の代表的疾患として4つがあげられています。

 

出版:医療情報科学研究所

『腎疾患は、原因が明らかではなく腎臓に限局した病変がみられる一次性(原発性、特発性)と、腎臓以外の原因(全身性疾患、薬剤、妊娠など)に伴って腎障害が生じるに二次性(続発性)に大別できる。』


この中で患者さまの疾患は、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)というもので、難病に指定されています。また、上記の表(円グラフ)を見ると代表的な4つの中では、6.6%と最も少ない疾患と位置づけられています。
腎疾患は病変部に関しては、「糸球体疾患」、「尿細管・間質性疾患」、「腎血管系疾患」の3つに大別できますが、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)は「糸球体疾患」に含まれます。 

 

『糸球体疾患では、糸球体が様々な機序により障害され、蛋白尿や血尿、腎機能障害(糸球体濾過量[GFR]低下)をきたす。』

 

『糸球体疾患の成立には、免疫的機序、血行障害による血行力学的機序や脂質代謝異常、糖代謝異常などが関与する。多くは、免疫学的機序によるものであり、糸球体に免疫複合体(IC)や抗体(免疫グロブリン)、補体の沈着がみられる。

現在、腎臓病でご来院頂いている患者さまは、慢性腎不全であり「糸球体疾患」については、ほとんど知識がありませんでした。そこで今回は、「病気がみえる vol.8 腎・泌尿器」を題材に、「糸球体疾患」の概要を1枚の表にまとめながら、理解を高めるということを行いました。

なお、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)は下から3番目に出ています。

気になったこと
今回作成した表の中で、1つ注目したいものがあります。それが光学顕微鏡による組織診断で、細胞増殖も血管壁(係蹄壁)の肥厚もなく、顕微鏡像が正常とほとんど変わらない「微小糸球体病変」のところに記載されていた「生理的蛋白尿」という病態です。本には次のような解説が出ていました。
『腎臓に器質的な異常を認めないが、一過性あるいは可逆的に蛋白尿がみられることを生理的蛋白尿という。機能性蛋白尿は、激しい運動や発熱、ストレスなどによる蛋白尿で、血行動態の変化によって血漿蛋白の濾過量が増大することで蛋白尿が生じると考えられている。
体位性蛋白尿は、立位(起立性蛋白尿)や前彎位(前彎位蛋白尿)でみられる蛋白尿で、腎静脈の圧迫による腎のうっ血や腎血管の攣縮によるものと考えられている。
また、ネット検索により、以下のような図(「蛋白尿の鑑別診断」)がありました。なお、この図は日本臨床検査医学会にあった、「臨床検査のガイドライン2012」から拝借しました。

こちらの図(上段)にもあるように「生理的蛋白尿」は「病的蛋白尿」とは全く別のものとして位置づけられています。そして、過度な精神的ストレスは定常的に自律神経系および内分泌系に悪影響を及ぼします。

また、体位性蛋白尿の原因とされる腎静脈の圧迫は、腎静脈に流れ込む細静脈や毛細血管までに対象範囲を広げると、体位の問題だけでなく、筋肉の硬結や筋膜の柔軟性の欠如という筋肉・筋膜の問題も血管に物理的ストレスを与える要因になると思います。

病に対する不安はストレスを高め、かつ長期にわたります。運動機会の減少は筋肉、筋膜の状態を劣化させ、血液循環に悪影響を及ぼします。
もし、これらのことが実際に起こるとすれば、糸球体疾患の本態による蛋白尿に加え、生理的蛋白尿による要因も加算されてくる可能性もあると思います。そして、これは鍼刺激による物理的治療が糸球体疾患の蛋白尿の問題改善に寄与できる一つの狙いになるのではないかと考えます。

なお、特に重要となる刺鍼ポイントは腎静脈近位の第12胸椎および第1腰椎下部脊柱際とその周辺の脊柱起立筋になります。

画像出展:「人体の正常構造と機能」


追記

週1回、計6回の施術の後に行った血液検査は、クレアチニン値の上昇が前月の1.18から0.61とほぼ半減されましたが、止めることはできませんでした。ご参考まで。

「腎臓が寿命を決める」とは

現在、NHKでは『神秘の巨大ネットワーク 人体』という全8回のNHKスペシャルが放送されています。その初回となる、第1集は「“腎臓”が寿命を決める」というタイトルでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

NHKスペシャル「人体」取材班

出版:東京書籍


『「なぜ、腎臓を第1集に選んだのか?」
「人体」のメインディレクターとして、最も多く聞かれた質問です。じつは、番組をつくる前、全8回のラインナップを決めた段階から、ずっとこの質問をされていました。NHKスペシャルでもめったにない超大型シリーズ、その第1集は、特別な重要性を持っています。質問の裏には「本当に腎臓で大丈夫?」という意味が隠れていたと思います。脳や心臓といった、誰もが興味をもつスーパースターではなく、腎臓という“ちょっと地味”なキャラクターを主役に抜擢するのは、大きな賭けでした。
しかし、だからこそ、第1集で腎臓をやりたいと思いました。本書を読んでいただけば分かるとおり、腎臓は人体のネットワークの中で要となる存在です。「腎臓はじつは、スーパースターだった」そのことに驚き、納得してもらうことが、そのまま“人体は神秘の巨大ネットワークである”という、このシリーズのメインテーマを深く感じてもらうことに繋がると考えました。ネットワークという視点で人体を捉え直すことで、これまでの常識が大きく覆る、そんな劇的な瞬間を味わってもらいたいと思ったのです。
これは、書籍版第1巻の「あとがき」の冒頭部分です。
第1回のテレビ放送を拝見して、「“腎臓”が寿命を決める」というテーマは、私には今ひとつ消化できるものではありませんでした。「そうなのかなぁ?」という印象が残りました。そして、その時はそれ以上のことを考えることはなかったのですが、慢性腎不全の患者さまへの鍼治療の効果が明らかになったことで、今一度、NHKスペシャルの「“腎臓”が寿命を決める」を勉強しなおしたいという思いが強くなり、調べたところ書籍版が出ていることを知りました。

162ページのこの本は、前半の「プロローグ 神秘の巨大ネットワーク」と後半の「第1集“腎臓”が寿命を決める」に分かれています。目次は下記の通りですが、ブログは酸素をコントロールし、血液を管理し、寿命を決めるとされる腎臓の働きを詳しく知ることを目的にしています。

プロローグ
神秘の巨大ネットワーク 生命を支える「臓器同士の会話」
1.人体がここまで見えてきた! 驚異の技術革新
2.心臓からのメッセージががん治療に革命をもたらす! 
   ANP、発見と進化の物語(サイズ14)
3.“1滴の血液”で13種類のがんを早期診断
4.人体ネットワークの会話が人生を変える

 

番組では、「メッセージ物質」という言葉が使われています。テレビ放送の時は、この言葉が腑に落ちず混乱の原因となっていたように思うのですが、これは書籍版によって解決しました。以下はその説明個所です。
『「臓器同士の会話」がもたらすもの
腸の細胞が発するメッセージは、「臓器同士の会話」のほんの一例に過ぎない。いま、こうしたメッセージを伝える物質が、腸に限らず、全身のあらゆる臓器から放出されていることが明らかになってきた。
体を支えているだけだと思われがちな、「骨」。血液を全身に巡らせるための通路というイメージが強い、「血管」。現代では“やっかいもの”として扱われている「脂肪」までもが、全身に向けたメッセージを発しているという。
そうした、メッセージとなる物質には、古くから知られていた「ホルモン」や、その後に発見が相次いだ「サイトカイン」、さらに近年急速に研究が進む「マイクロRNA」など、非常にたくさんの種類がある。そこでNHKスペシャル「人体」では、これらの物資をまとめて「メッセージ物質」と呼ぶことにした。人体を「ネットワーク」として捉えるに至った背景には、多くの科学者たちによる、長年の研究の積み重ねがある。その全体像を俯瞰して見たいと考えたのだ。
そして、メッセージ物質の役割が明らかになるにつれて、医療の世界に起きた大きな変革にも注目する。メッセージ物質を人工的につくって投与したり、逆に、その作用を抑えたりすることで、これまで治療が困難とされてきた病気にも希望の光が差し込むようになった。
体の中で交わされる臓器たちの会話に、より一層耳を傾けることが重要になっている。メッセージ物質を理解することは、人体の神秘に迫ることであると同時に、病の克服という切実なテーマにも直結しているのだ。

後半部分の目次です。
第1集 “腎臓”が寿命を決める
1.金メダルの獲得を陰で支えた腎臓のメッセージ
   EPO精製への道
   EPO産生細胞の発見
2.腎臓の手術で重症の高血圧が治る! 大注目の最新治療
3.血液の管理者:腎臓
   腎臓の構造と働き
4.老化や寿命のカギを握る腎臓
5.腎臓を守れ! 命の現場

 

酸素をコントロールする
人間にとって生きるために最も必要な物質は酸素です。カーラーの救命曲線によると、心臓停止後3分で死亡率約50%となっています。このように酸素供給の完全停止は直ちに死に直結します。この重要な酸素の供給に関るメッセージ物質がEPO(エリスロポエチン)と呼ばれる物質です。私が専門学校で習ったときは、ホルモンとされていましたが、昨年(平成29年)3月発行の「病気がみえる vol.8 腎・泌尿器 第2版5刷」では、EPO(エリスロポエチン)は赤血球の「造血因子」と書かれています。
このEPOは腎臓から放出され、「酸素が欲しい」というメッセージを伝えますが、その存在は2008年、日本人研究者によって明らかにされました。そして、尿を運ぶ膨大な数の尿細管、その管と管の隙間、「間質」と呼ばれる部分にEPO産生細胞が存在していることが特定されました。

 

1981年にフランスのカーラー(Morley Cara)が作成した曲線。数値は目安とされています。

画像出展:「宇部・山陽・小野田消防局

 

中央に見えるのが糸球体。その糸球体は複雑に絡み合った毛細血管の塊のようです。周囲にあるホースのような管のほとんどは尿細管で、EPO産生細胞が存在する「間質」は管と管の間です。

画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

『全身に酸素を行き渡らせるためのメッセージである、EPO。体内に酸素を取り込む「肺」や、血液を全身に巡らせる「心臓」ではなく、一見、酸素と関わりがなさそうな「腎臓」が、こうしたメッセージを出す役割を担っているのは、一体どうしてなのだろうか。』
これは本書の中で指摘されている疑問ですが、私も全くその通りだと思います。何故、腎臓なのか不思議です。
そして、その答えは次のようなものでした。
『腎臓の間質は、もともと酸素の供給量が高くなく、低酸素の状態にあります。また、隣にいる尿細管の細胞は尿をつくるためにたくさんのエネルギーが必要で、多くの酸素を消費することが分かっています。そのため、EPO産生細胞の周辺では急速に酸素濃度が下がりやすい。腎臓の中の、この場所は、体に酸素が足りなくなったときに、いち早く感知できる環境になっているのです。つまり、EPO産生細胞がいる場所は、全身の中でも最も酸素が不足しやすい場所であり、だからこそ、酸素の“見張り番”として働くのに最適だというわけだ。』

EPO産生細胞の場所(尿細管のすき間で赤・緑に光っているのがEPO産生細胞。赤色の細胞はEPOをつくっていないOFF(オフ)の状態で、緑色の細胞はEPOをつくっているON(オン)の状態を示す。)
画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

『研究グループは、顕微鏡で観察するとEPO産生細胞が光って見えるように、栄光物質を組み込んだEPO遺伝子をマウスに導入した。すると、EPO産生細胞は尿細管と尿細管のすき間を埋める間質という組織で見つかった。EPOをつくっていたのは、糸球体や尿細管といった腎臓の主体をなす細胞ではないという事実は、世界中の研究者を驚かせた。

EPOによる赤血球の増産
腎臓は体内の酸素が不足していると、EPO(エリスロポエチン)を大量に出し始めます。そして、血液の流れに乗って全身に広がっていきます。
本書では貴重な写真だけでなく、CGによる絵が豊富に使われています。ここでは、EPOによる赤血球の増産の流れをCGのスライドショーでご紹介させて頂きます。下に解説が付いています。また、画像中央のマークをクリックすると停止します。

血液を管理する
『人間の血液の量は、体重の約13分の1(約7.7%)といわれる。体重60キログラムの人なら、血液4.6キログラム。血液1リットルの重さは約1キログラムなので、体の中には約4.6リットルの血液が流れている計算だ。
そして驚くべきことに、心臓が送り出す血液のおよそ4分の1は、2つでわずか300グラムほどの小さな腎臓に流れているのである。その血流量は、毎分800~1,200ミリリットルにもなる。なぜ、こんなにも多くの血液が腎臓に集まるのか。それは、誰もが知る腎臓の役割である「尿をつくる」ことの裏に隠されたもう1つの仕事に関係している。
尿は、体を巡る老廃物を含んだ汚れた血液からつくられる。老廃物を含んだ血液は腎臓に流れ込み、腎臓を通過する中できれいな血液と老廃物などを含む尿に分けられ、尿は体外へ出ていく。
この一連の腎臓の働きを見ると、つい尿の生成のほうへ目が行きがちだ。しかし、体にとって尿の生成と同じくらい、もしくはそれ以上に重要なのは、“きれいな血液”をつくることだ。
ここでいう“きれいな血液”とは、老廃物が除去されているということだけではない。血液中の塩分、カルシウム、カリウムといったさまざまな成分が、すべて適正な濃度になっていることが大切である。実は、これらをきめ細かく調節するのが腎臓の大きな役割だ。

 

『腎臓は尿をつくるだけではなく、血液中の成分を調節するという重要な役割を担っている。』

画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

 

『腎臓は塩分やカリウムなど、体に必要な成分を一定の割合に保つように管理・調節している。』

画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

小さくて見ずらいですが、上の絵には番号が①~⑤までふられています。それについて説明します。

汚れた血液は腎動脈から腎臓に入り、輸入細動脈を経て糸球体を形成する毛細血管に流れ込む。
糸球体の毛細血管で、血液はろ過される。
血液中の小さな成分(老廃物や水分、ミネラルなど)は毛細血管の穴をすり抜け、ボーマン嚢の内側に入って尿の元となる。
残りの血液成分(赤血球やたんぱく質など)は輸出細動脈から出ていく。輸出細動脈は再び毛細血管となって尿細管に寄り添うように走行する。
体に必要な成分(水分やミネラルなど)が、尿細管で再吸収され、毛細血管に戻される。その後、尿細管周囲の毛細血管が集まって最終的に太い腎静脈となり、成分調節された“きれいな血液”が腎臓から出ていく。

『こうして行われる血液の成分調節は、実は、腎臓だけの判断で行っているわけではない。腎臓は、体中の臓器からのメッセージをしっかり聞き、情報を集める。例えば、カルシウムを調節する際には、喉の近くにある「副甲状腺」という小さな臓器や「骨」から出されたメッセージを受け取っている。これらの情報を基に、腎臓はポンプを制御して、原尿から再吸収する量を変化させているのだ。全身から情報を集め、体調や周囲の状況に応じて血液の成分を常に調整する。まさに、体の中に広がる巨大な情報ネットワークの要といえるだろう。

『腎臓は体中の臓器からのメッセージを分け隔てなく聞き、情報を集めて血液中の成分調節を行う人体ネットワークの要といえる臓器だ。』

画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

『腎臓がろ過する原尿の量は1日約180リットルにもなる。人間の血液量が4~5リットルなので、腎臓は1日のうちに何度も血液のろ過を繰り返している。一方、1日に排泄される尿の量は1~2リットル。原尿の99%は尿細管で再吸収されていることになる。』

画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

 

腎臓というと、まず「尿」、そして次に思い浮かぶのは、「ろ過」でした。今回、様々な臓器と会話しつつ、命のライフラインともいうべき血液成分をきめ細かく調節する「血液管理者」としての腎臓を認識できたことが、最大の収穫だったように思います。

寿命を決める
『日本人科学者が偶然生み出した不思議なマウスの研究から、私たちの寿命を大きく左右する、「ある物質」が明らかになった。その物質とは、リン。血液中のリン濃度が高すぎると老化が加速してしまう。そして、血液中のリン濃度を絶妙に調節しているのが腎臓だ。腎臓は他の臓器と連携しながらリンを調節し、寿命を決めていることが分かってきたのだ。
リンは生命維持に欠かせない栄養素で、魚介類や肉類、大豆などの食品に豊富に含まれている。リンが足りないと、骨軟化症、くる病などの病気の原因になるほか、呼吸不全、心機能低下を引き起こして生命に関わることもある。ところが、最新の研究では、血液中のリンが過剰になると、老化を加速させてしまうことが分かってきたのだ。』

 

上の図は、寿命と体の大きさの関係性を見たものです。これを見ると、体の大きさだけが寿命を決定しているものではないことが分かります。

 

下の図の横軸は、体の大きさではなく、血液中のリンの量によるものです。これにより寿命の長さに関係しているのは、血液中のリンの量であることが分かります。

画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

血液中のリンの調節には、体を支える「骨」と、「腎臓」の会話が重要な役割を果たしている。骨の主成分は、リン酸カルシウム。リンもカルシウムも、体にとっては重要な栄養素であり、骨にはその貯蔵庫としての働きもある。それも、“ただためこんでいる”だけではない。骨は血液中のリン濃度を監視し、腎臓に報告する役割も果たしている。
そのために骨が出しているメッセージ物質がFGF23(線維芽細胞成長因子23)だ。骨は、血液中のリン濃度が高くなると、FGF23を盛んに放出する。いわば「リン、足りてますよ」というメッセージだ。腎臓にはFGF23を受け取る受容体がある。実は、この受容体をつくるための設計図となっているのが、クロトー遺伝子(老化抑制遺伝子)だったのだ。
「受容体はメッセージを受け取る郵便箱のようなものです。クロトー遺伝子が壊れたマウスの腎臓には郵便箱がないので骨からのメッセージが来ても受け取れない。その結果、腎臓がリンをうまく調節できなくなって、老化が加速してしまうのです」と黒尾博士は説明する。
腎臓が骨からのメッセージを受け取ることができれば、その情報に基づいて尿細管での再吸収量を変化させ、血液中のリン濃度を絶妙に調節することができる。逆に、メッセージを受け取れなくなると、謎の老化加速マウスのように血液中のリンが過剰となり、寿命が一気に縮んでしまうこともあるのだ。骨と腎臓の会話が、リンの濃度を決め、それがそのまま寿命にも大きな影響を与えている―。黒尾博士の研究から明らかになってきた、腎臓の新たな真実だ。』

 

骨からの「リン、足りてます」というメッセージにより、腎臓の尿細管の微絨毛にあるポンプが再吸収を停止すれば、寿命は正常ということです。画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

 

付記1:EPO産生細胞とCKD(慢性腎臓病)
CKD(慢性腎臓病)では5段階あるステージの3(中程度)から、夜間多尿、血圧上昇、むくみ等に加え貧血(腎性貧血)が生じてくる可能性が高くなるとされていますが、これは腎臓の機能低下が進行するとEPOが作れなくなるためであると考えられています。
一方、EPO産生細胞は腎臓でみられる「線維化」という病態に深く関っていることも明らかになりました。さらにEPO産生細胞は善悪2つの顔をもっており、CKDの発症・進行を抑制する治療法の開拓に大きなヒントになると期待されています。下記はその詳細を説明した箇所です。
『腎臓病が慢性化する主な原因として、糖尿病や高血圧、慢性糸球体腎炎などが挙げられるが、原因疾患にかかわりなく、腎臓病が進行すると、線維化が生じ、腎臓の機能が損なわれていく。腎臓の線維化が生じる際、そのもとになる細胞は何なのか。
この研究で先鞭をつけたのは、京都大学大学院医学研究科の柳田素子博士の研究グループだった。柳田博士らは、東北大学で開発した遺伝子改変マウス(EPO産生細胞が蛍光を発するマウス)を用いた研究により、EPO産生細胞が硬い線維状の細胞、いわば「悪玉細胞」に変化することで腎臓の線維化が生じることを突き止めた。
一方、山本博士らは、遺伝子改変マウスを貧血状態にし、さらに尿管を縛って腎臓に炎症を誘発させるという実験を行った。すると、炎症でマウスの腎臓に線維化が起こり、線維成分であるコラーゲンが著明に増加するとともに、炎症性物資がさらに増加するという悪循環をきたした。しかも、高度な貧血で低酸素状態にあるにもかかわらず、EPOの産生力は大きく低下した。そしてこのとき、EPO産生細胞は「悪玉細胞」へと変化していた。
これらの研究により、腎臓に炎症のような有害刺激が加わると、EPO産生細胞が「善玉」から「悪玉」に変わってしまうことが分かった。悪玉化した細胞は「筋線維芽細胞」と呼ばれているが、このように細胞の持つ本来の特徴が大きく変化し、異なる性質を持った細胞になることを「形質転換」という。
EPO産生細胞が形質転換するだけでなく、さらに興味深い事実も判明した。尿管を縛って炎症を誘発させたマウスで、完全に線維化する前に縛りを解除したのである。すると驚いたことに、低下していたEPOの産生力が、正常マウスと同じレベルまで回復した。また、抗炎症薬のステロイドを投与すると、EPO産生細胞の産生力はさらに促進されたのだ。
つまり、炎症によりEPO産生細胞が「悪玉細胞」に変化して腎臓に障害をきたしても、炎症を抑制するとEPO産生細胞は本来の「善玉細胞」に復帰するというのである。
山本博士は、「EPO産生細胞は環境に応じて善悪両方向に変化することが分かりました。さらに、EPO産生細胞は高い回復力を持っており、炎症をコントロールしてEPO産生細胞の『善玉』の性質を維持していくことが、腎臓の線維化を抑えるには重要であることが示されました。これは慢性腎臓病の発症・進行を抑制する治療法を探索するうえで大きなヒントになると思います」と語る。
現在、腎臓病の進行を食い止めるためにEPO産生細胞の機能を回復させる治療法を探索されている。EPO産生細胞の発見から始まった研究は、さらなるステージに進もうとしている。』

『EPO産生細胞は低酸素状態になるとEPOをつくり始め、赤血球が増産される。一方、腎臓が障害されて炎症が起こると、EPO産生細胞は「悪玉細胞」に変化し、線維化が進行する。炎症を抑制すると、EPO産生細胞のEPO産生力は回復する。』

画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

『EPO産生細胞が「悪玉細胞」に変化すると、EPOを産生する力が大きく減少する。同時に、線維化のもとになるコラーゲンやさらなる炎症を引き起こす物質が大量につくられる。』

画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

病気の腎臓ではEPO産生細胞のEPO産生力は著しく衰えるが、炎症を抑えると本来の力が蘇った。

画像出展:「人体 神秘の巨大ネットワーク」

腎臓の炎症と慢性腎臓病の関係性を示す資料などは無いかネット検索したところ、「日本医療研究開発機構」さまのサイトに興味深い研究が発表されていました。

付記2:“腎”とは
経絡治療においては、“腎”は五臓(肝・心・脾・肺・腎)の中でも1、2位を争う最も重要な臓器と考えられています。ここでは、専門学校の教科書、東洋医学概論(東洋療法学校協会編)から、腎の中核ともいえる“腎精”についてご紹介させて頂きます。
“腎は、精を蔵し、生命力の根源である原気をもたらす。”
『父母から受け継いだ先天の精は、腎に内蔵されている。この精は、飲食物から造られる後天の精によって、常に補充されている。精は、生命力と、成長、生殖力の根源である。この精が、腎により活性化されたものが、原気(生命活動の原動力となるもの)である。人間は、腎の働きが盛んになるにつれて成長し、生殖能力を生みだす。腎精が充実していれば、原気も盛んで、活動的で、疾病にもかかりにくく、また、根気がいる細かい作業を、やり抜き通す力もわいてくる。そこで、「作強(サキョウ)の官、伎巧これより出づ」といわれる。腎気が衰えると原気がなくなり、活動が低下し、身体が冷える。また、生殖能力も低下し、疾病にかかりやすく、治りにくくなり、さまざまの老化現象を呈する。』
生命力・成長・生殖力・老化に深くかかわるとする東洋医学の“腎”は、現代医学の“腎臓”とは似て非なるものというイメージを持っていました。ところが、今回の勉強を通して、”腎臓”は尿をつくるだけではなく、酸素をコントロールし、血液を管理し、老化にかかわり寿命を決めるという極めて重要な働きを行っていることが分かりました。この結果、東洋医学の“腎”と現代医学の“腎臓”はかけ離れたものではないという新たな認識を持つことになりました。

腎臓リハビリテーション

過去ブログ、「CKD(慢性腎臓病)治療の最前線」の宿題になっていた「腎臓リハビリテーション」ですが、入手した情報をベースにまとめてみました。
参考とさせて頂いたのは、日本腎臓リハビリテーション学会さまの各種資料(保存期CKD患者に対する腎臓リハビリテーションの手引き、学会広報誌 腎臓リハ NEWS LETTER、施設紹介)と、日本腎臓リハビリテーション学会の理事長である上月正博先生が執筆された「CKDにおけるリハビリテーション(日本内科学会雑誌105巻7号)」になります。ブログはこれらの内容を組み合わせ、はり付けたようなものになっています。なお、上月先生の「CKDにおけるリハビリテーション」はダウンロードできるようにさせて頂きました。

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CKDにおけるリハビリテーション.pdf
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コペルニクス的転換
『腎臓病といえば、かつて安静にすることが治療の1つであった。しかし、CKD(chronic kidney disease)患者においても、身体活動の低下は心血管疾患による死亡のリスクであることや、軽い運動がCKDを悪化させないことが明らかになり、CKD患者にも運動療法が適用されるようになってきた。運動療法は腎臓リハビリテーション(腎臓リハ)の中核として考えられ、最近ではCKD患者における心大血管疾患発生予防効果や透析導入時期遅延効果の役割も期待されている。』
「CKD(慢性腎臓病)治療の最前線」の中では、「運動制限から運動療法へのコペルニクス的転換」との表現があり、「腎臓病=運動制限」が当たり前と思っていた私にも、これは大きな驚きでした。
 

画像出展:「保存期 CKD 患者に対する腎臓リハビリテーションの手引き」

腎臓リハビリテーションとは
『腎疾患や透析医療に基づく身体的・精神的影響を軽減させ、症状を調整し、生命予後を改善し、心理社会的ならびに職業的な状況を改善することを目的として、運動療法、食事療法と水分管理、薬物療法、教育、精神・心理的サポートなどを行う、長期にわたる包括的なプログラムである。腎臓リハの中核的役割を担う運動療法は、透析患者の運動耐容能改善、Protein Energy Wasting改善、たんぱく質異化抑制(「異化」とは分解すること。栄養状態の悪化によりエネルギーを作り出すための分解が進む)、QOL改善などをもたらす。さらに、最近になって、保存期CKD患者が運動療法を行うことで腎機能(糸球体濾過量:GFR)が改善するという報告が相次いでいる。腎臓リハにより、保存期CKD患者の腎機能改善や腎機能低下速度遅延が確実となれば、透析導入を先延ばしすることができ、多くのCKD患者にとって朗報となる可能性がある。2011年に日本腎臓リハビリテーション学会も設立され、CKD患者における腎臓リハのさらなる発展が期待される。』
なお、Protein Energy Wastingに関しては、「透析患者における protein-energy wasting(PEW)の評価」を参照頂ければと思いますが、「PEWは透析患者に対する低栄養状態の呼称として、海外では広く普及してきている。」とのことです。

CKD患者の抱える問題
『CKD発症あるいは腎障害進行のリスクファクターは、高血圧、糖尿病、脂質異常症、高齢などで、超高齢社会の我が国では今後ますますCKD患者数の増加が懸念される。CKDの進行に伴い、心血管疾患の発症率は加速的に高まる。』
心血管疾患との関係は非常に重要で、日本心臓リハビリテーション学会学術集会においては、2013年の第19回のシンポジウムでは「心臓と他臓器のコミュニケーション(臓器連関)を知る」が、続く第20回のシンポジウムでは「リハビリテーションの心腎連関:慢性腎臓病や透析患者への適応を考える」がテーマとなっています。

臓器連関の病態生理
脳を加えた、脳・心・腎の関係について書かれたものがありましたので、ご紹介させて頂きます。
『脳・心・腎の間には密接で、かつ、精巧な機能的連関があります。この連関には、細胞外液、すなわち、内部環境の恒常性と循環の維持が重要な役割を果たしています。しかし、いったん、脳・心・腎のいずれかが障害されると、この臓器連関により単一臓器の機能不全への進展のみならず、互いの臓器を障害していく負の連鎖を形成します。
腎臓は心臓から拍出された多くの血液量を受け、全身の血行動態に応じたさまざまな神経体液性因子に反応して体液量や電解質を調節し、その結果、心血管機能に影響を与えています。近年、心疾患患者の生命予後は腎機能により大きく影響を受ける一方、腎機能障害患者の主要な死因は心血管病であることが明らかにされ、心腎連関という概念で注目を集めています。心不全では交感神経系やレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系、バゾプレッシンなど神経体液性因子が活性化され、糸球体濾過量やナトリウム利尿の低下が生じ、体液が増加します。一方、心臓より分泌されるナトリウム利尿ペプチドは体液増加の阻止に作用します。また、糖・脂質のエネルギー代謝も脳・心・腎などの機能調節に関わっていることが明らかになっています。
このような臓器連関の病態生理を理解するとともに、各患者の主要疾患への検査や治療などが、他の臓器に与える影響を理解することはきわめて重要です。』

脳心腎・糖代謝連関における腎交感神経の役割

『脳・心血管疾患と腎臓病は密接に関連し、「脳 心腎連関」と呼ばれる概念が提唱されている。しかし、そのような臓器連関の臨床症状に頻繁に遭遇するものの、詳細な発症・進展メカニズムについてはほとんど明らかとなっていない。これに対し、交感神経と腎臓内レニン・アンジオテンシン系の活性化が、脳心腎連関の病態に深く関わっていることが、最近明らかとなってきている。例えば、心不全では心拍出量の低下による腎虚血のみならず、遠心性に腎交感神経が活性化されて糸球体輸入細動脈と輸出細動脈に分布する交感神経終末からカテコラミンが分泌され、腎血流の低下を招く。また、腎神経の活性化は、尿細管のα1 受容体、β2受容体の活性化を介し、ナトリウム再吸収を増加させて体内へのナトリウム貯留を生じ、さらに心不全を悪化させる。……』

心臓リハビリテーションと腎臓リハビリテーション
『2つのリハビリテーションの共通の効果として、最大酸素摂取量の増加、左心室収縮能の亢進、心臓副交感神経系の活性化、炎症の改善、不安・うつ・QOLの改善、ADLの改善、死亡率の低下などがあります。また、慢性腎臓病を伴う心筋梗塞患者にリハを行うと腎機能が改善したとの報告や、冠動脈バイパス術を受けた透析患者がリハを行うと全死亡率や心死亡率が大きく減少したとの報告もあります。超高齢社会では、このような心腎連関の病態生理とリハの効果や影響を理解することはきわめて重要です。』
心臓リハビリテーション」については、2017年5月にブログにアップしていましたので、こちらもご紹介させて頂きます。

腎臓リハビリテーションの運動療法
『運動処方の考え方としては、基本的には慢性心不全患者や高血圧患者の運動療法メニューに準じたものである。運動の種類としては、有酸素運動、レジスタンストレーニング、またはそれらを組み合わせたプログラムを推奨する。身体機能やADL 能力が低下している者は、バランストレーニングなどと適宜組み合わせて、個別のプログラムを作成することが望ましい。運動の負荷は、疲労の残らない強度で短時間、少ない回数から導入し、心拍数や自覚症状に基づいて徐々に強度時間、回数を増加させることが望ましい。また、自宅で行うことができるようなプログラムにすることも効果を上げるためには重要である。』

 

こちらの絵はストレッチングを含む準備体操となる「腎臓体操」と呼ばれるものです。

 

画像出展:「保存期CKD患者に対する腎臓リハビリテーションの手引き」

下の表はCKD患者に推奨されている運動処方です。

 

画像出展:「看護roo!(「保存期CKD患者に対する腎臓リハビリテーションの手引き」を一部改変)」
 

こちらは、CKD透析患者に対する運動療法による効果を示したものです。

 

画像出展:「CKDにおけるリハビリテーション」

「保存期CKD患者に対する腎臓リハビリテーションの手引き」には、運動療法の注意点、腎臓保護効果判定指標、更には日常生活での工夫について記述されていました。
運動療法の注意点
・関節痛など運動器障害や息切れ、胸痛など循環器障害の症状の出現や進展に注意する。
・尿毒症の症状の出現や進展に注意する。
・運動することで腎機能が低下していないかをチェックする。

腎臓保護効果判定指標
運動療法の介入前と介入後3ヵ月程度の成果としては、
1.血清クレアチニン又はシスタチンCの不変・低下
2.尿蛋白排泄量の軽減(20%以上)
3.血清クレアチニン推定GFR(eGFRcr)又は血清シスタチンC推定GFR(eGFRcys)の低下率の軽減(30%以上)(3では介入3 ヵ月前、介入開始時、介入後3ヵ月の3回の採血検査が必要)を目標とするため、これらの検査を必須とすることが望ましい。
日常生活での工夫

平成28年度診療報酬改定 「腎不全期患者指導加算」認定と今後の対応
平成28年度は、一定水準以上の成果を出している保険医療機関に対して糖尿病透析予防指導管理料に「腎不全期患者指導加算(月1回100点)」が設けられましたが、あくまで限定的なものであり、対象範囲を保存期CKD一般や透析患者に拡げていく必要があるとされています。以下は『腎臓リハ NEWS LETTER No5』(最下段がNo5になります)の内容の一部をご紹介させて頂きます。


『本年度、腎不全期の糖尿病性腎症の患者に運動指導を行い、一定水準以上の成果を出している保険医療機関に対して糖尿病透析予防指導管理料に「腎不全期患者指導加算(月1回100点)」が設けられました。算定要件として、腎不全期(eGFR 30mL/分/1.73m2 未満)の患者に対し、専任の医師が、当該患者が腎機能を維持する観点から必要と考えられる運動について、その種類、頻度、強度、時間、留意すべき点などについて指導し、また既に運動を開始している患者についてはその状況を確認し、必要に応じてさらなる指導を行います。施設基準の条件として、運動療法の介入前と介入後3ヵ月程度のアウトカムとして、1)血清クレアチニンもしくはシスタチンCの不変・低下、2)尿蛋白排泄量の軽減、3)血清クレアチニンもしくは血清シスタチンCによる推定GFRの低下率の軽減を確認する、の3条件のうちいずれか1つを満たす症例が5割を超えていることが必要です。

さらに、糖尿病透析予防指導管理料の算定要件に、保険者による保健指導への協力に関する事項を追加する。すなわち、保険者から保健指導を行う目的で情報提供などの協力の求めがある場合に、患者の同意を得て、必要な協力を行います。具体的な運動内容、禁忌、中止基準などに関しては、本学会ホームページの「保存期CKD患者に対する腎臓リハビリテーションの手引き」を参考にしてください。

本学会が要求してきた「慢性腎臓病運動療法料」は、本来は保存期糖尿病性腎症のみならず、保存期CKD一般や透析患者をも含む出来高のリハ料・運動療法料です。今回認定された腎不全期患者指導加算は、わずか4年の交渉で獲得に成功した成果であるとはいえ、認定された対象は糖尿病性腎症で腎不全期にあくまで限定的なものであり、対象範囲を早急に拡げていく必要があります。腎不全期患者指導加算を本来めざしていた慢性腎臓病運動療法料に今後発展させるべく、CKD2期以上や透析患者でも運動療法のエビデンスをさらに強固にして、適応拡大、増点になるように活動を継続します。

最後に、日本腎臓リハビリテーション学会さまのホームページにある「施設紹介」の中から、東京都にある2つの施設について表にしましたのでご覧ください。また、こちらの2つの病院は、腎臓リハビリテーションを積極的に推進されており、大変興味深い内容となっています。

 

 

 

「つばさクリニック」の透析患者さんが元気な理由
 理由その1「ひとりひとりに適切な透析」
 理由その2「解り易い患者指導」
 理由その3「運動療法」
 透析中のミュージックエクササイズ(運動療法)※こちらは動画です。

 

 

 

 

 

当院リハビリテーションの特色
『運動器疾患、脳血管疾患、心血管疾患、呼吸器疾患などの各種疾患別リハビリテーションを幅広く展開しています。また、当院は透析専門施設であり、透析患者さんの運動機能の維持・向上に加え、心血管疾患や腎性貧血などをはじめとする合併症予防を目的とした腎臓リハビリテーションを実施しています。入院でのリハビリテーションでは、脳血管障害による麻痺や、整形外科疾患により日常生活機能が低下した透析患者さんの在宅復帰支援に力を入れています。』

付記

中医学(中国伝統医学)に【肝腎同源】という用語があります。

これは、『肝血は腎精の滋養を受けており、腎精もたえず肝血による補充を受けている。このように精と血とは相互に資源となり滋養しあっていることから、「肝腎同源」あるいは「精血同源」といわれている、病理的な変化のうえでも肝血と腎精とは常に影響しあっており、肝血の不足は腎精の不足を、腎精の不足は肝血の不足を引き起こす。』というものです。

今回のブログでネット上の資料を調べていたところ、内科医の先生が書かれた興味深い資料がありましたので、ダウンロードできるようにさせて頂きました。

なお、その冒頭には次のようなことが書かれています。『太古から物事の要の意味で「肝腎」と言う言葉が使用されてきたように、肝臓と腎臓は、体内の恒常性維持・代謝調節の要である。エネルギー、蛋白、脂質代謝の主役は肝臓、水・電解質・酸塩基平衡調節の主役は腎臓という大まかな役割分担があるが、一部の生理的調節において相互補完関係にある。』

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内科医が知っておくべき腎臓と全身臓器とのインターラクション (肝臓と腎臓).pd
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CKD(慢性腎臓病)治療の最前線

CKDはChronic Kidney Diseaseの略称です。また、日本腎臓学会編として「CKD診療ガイド」が2007年、2009年、2012年と発行され、「CKD診療ガイド2018年」の発行準備が進んでいるようです。
ここでは、2009年版の“CKD診療ガイドの改訂に寄せて”の内容の一部をご紹介させて頂きます。
CKD(慢性腎臓病)は2002年にアメリカで提唱された全く新しい概念です。慢性に進行する腎臓の疾患は数多くあり、腎臓の疾患名はわかり難いとの批判がありました。そこで、さまざまの腎疾患を主に蛋白尿と腎機能の面より新たにCKDと定義しました。CKDという病名は腎臓専門医のためではなく、一般かかりつけ医のための病名です。日本腎臓学会では2004年に慢性腎臓病対策委員会を設置して、疫学調査研究、診療システム構築、社会への働きかけ、国際協調・貢献を4つの柱として、総合的にCKD対策を行ってきました。その中の一つの事業として、かかりつけ医と腎臓専門医の連携を深めて病診連携を行うためのツールとして2007年9月に「CKD診療ガイド」初版を発行しました。・・・』

2月23日のブログでは、慢性腎不全と診断された患者さまへの鍼治療において、改善がみられた症例をお伝えしました。そして、この症例をきっかけとして、腎・腎臓への理解を深め、より効果の高い施術を目指したいという思いが強くなりました。そこで、先月「パーキンソン病 -進化する診断と治療-」でお世話になった最新医學のバックナンバーを調べ、2016年12月号の「特集:慢性腎臓病(CKD)治療の最前線 -生活習慣病への新たなアプローチ-」で知識アップを図ることにしました。

 

出版:最新医学社

この特集は序論に続き次のような内容になっています。
【座談会】
生活習慣病治療のパラダイムシフトがCKD研究に与えるインパクト

CKDにおける生活習慣病治療のパラダイムシフト
CKDと高血圧 -レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の最新知見-
CKDと脂質異常症 -脂肪毒性の役割-
CKDと糖尿病 -細胞内栄養シグナルを標的とした病態解明と治療-
CKDと肥満 -アディポサイトカイン調節機構と腎保護-
CKDと高尿酸血症

生活習慣とCKD進展とのクロストーク
新たなCKDリスクファクター -サルコペニア、フレイル-
CKDと骨代謝異常とのクロストーク
CKDと栄養とのクロストーク
CKDと睡眠障害とのクロストーク

CKD発症阻止のための母子環境へのアプローチ
母体環境がCKD進展に及ぼす影響
小児期の成育環境および生活習慣の変化とCKD発症・進展

CKD診断・治療のUp-to-Date
最新のCKDのバイオマーカー
CKD新規治療薬の開発-PHD阻害薬、Nrf2刺激薬、インクレチン関連薬、SGLT2阻害薬-

ブログに取り上げたのは【CKDにおける生活習慣病治療のパラダイムシフト】と【生活習慣とCKD進展とのクロストーク】です。
まず、要点と思ったものをそれぞれ表形式にまとめました。そして、前者は「レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAA系)」に関して、後者は、「サルコペニアとフレイル」について補足しました。
また、今回のブログを書くにあたり、ネット上にあった優れたサイトや資料もご紹介しています。特に「サルコペニア」「フレイル」の意味については『健康長寿ネット』がおすすめです。

なお、運動療法を中核とする「腎臓リハビリテーション」については次回のブログでご紹介させて頂きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「病気がみえる 腎・泌尿器

レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAA系)
血圧や有効循環血漿量の低下が起こると腎臓はレニンを分泌し、アンジオテンシノゲンがアンジオテンシンⅠを経てアンジオテンシンⅡに変換され、アルドステロンが分泌されます。これにより、血圧、循環血漿量が調節されます。なお、血圧上昇・循環血漿量増加がネガティブフィードバック(抑制的な指示)となりレニンの分泌が抑制されます。

腎臓の傍糸球体細胞は腎血流量の変化を感知し、減少すればレニンの分泌を促進し、増加すれば抑制するという仕組みをもっています。このレニンは発見当初は活性化の仕組みがわからずホルモンかキナーゼ(リン酸化酵素)の一種ではないかと考えられていましたが、現在ではタンパク質分解酵素の一種とされています。
ACE(アンギオテンシン転換酵素)も酵素です。肺などの血管内皮細胞によって産生・放出される血圧調節に関与しており、種々の呼吸器疾患、肝、腎、甲状腺疾患、糖尿病などで変動することが知られています。アンジオテンシンとアルドステロンは尿生成に関するホルモンです。双方、血圧上昇の働きがありますが、後者は体液量増加の働きももっています。アンジオテンシンは肝臓で合成されたアンジオテンシノゲンが元になっています。一方、アルドステロンは副腎皮質から分泌されます。

 

中央の2つがアンジオテンシンⅡとアルドステロンです。他に尿生成に関するホルモンとして、バゾプレシン、ANPがあります。

画像出展:「病気がみえる 腎・泌尿器」

横道にそれますが、「神秘の巨大ネットワーク」と題するNHKスペシャルが放映されています。これは脳が関与することなく、臓器同士がメッセージのやりとりをしながら様々な働きをするというものです。この中で臓器同士のやりとりは、ホルモンやサイトカインなどの「メッセージ物質」を介して行われますが、番組では、「人体の本当の姿は脳を頂点とするタテ社会と考えられてきたが、臓器同士の会話による巨大ネットワークが人体の真の姿である。」という考え方を紹介しています。
この考えに従って、RAA系(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系)をみてみると、主な臓器は腎臓肝臓副腎です。メッセージ物質は酵素のレニンACEとホルモンのアンジオテンシンⅡアルドステロンということになり、RAA系も「巨大ネットワーク」の1つということになると思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出版:東京書籍


サルコペニアとフレイル
こちらの図は本文に掲載されている「図1 CKD患者におけるフレイルの原因」と「図2 CKD患者におけるフレイルがもたらす結果」ですが、この2つの図を説明した箇所を引用させて頂きます。なお、クリックして頂くと拡大されます。


CKD患者においては、食思不振や食事制限による栄養摂取不足はサルコペニア、フレイルの主要因である。しかし、栄養摂取不足のみならず、尿毒症、全身性の炎症、糖尿病や心血管疾患などの併存疾患、代謝性アシドーシスやインスリン抵抗性などの代謝・内分泌系的異常なども、サルコペニア、フレイルの発症に関与している(左-図1)。さらに、透析患者では、透析による栄養素の喪失(アミノ酸やタンパク質の透析中への流出)や透析治療に関連した因子(透析液中のエンドトキシンや透析膜の生体的合成など)も加わり、サルコペニア、フレイルを非常に来たしやすい。サルコペニア、フレイルは感染症、心血管疾患、虚弱や抑うつなどを引き起こし、さらにこれらの合併症がサルコペニア、フレイルを増悪させる要因となる(右-図2)。
フレイルが要介護状態の前段階とすると、この状態は日本では介護予防の二次対策予防対象者に相当する。したがって要介護状態をできるだけ予防するうえでも、このフレイルの予防・介入は喫緊の課題である。サルコペニア、フレイルに対する包括的かつ積極的な介入が、CKD患者のQOL向上や生命予後改善のために不可欠である。』

 

平成28年9月に一般社団法人となった、日本サルコペニア・フレイル学会さまのサイトには次のような説明がされています。

 『世界的に社会の高齢化は大きな問題となっていますが、高齢者の機能障害や要介護に至ることを予防するためには、疾病の管理とともに老年症候群の管理が重要です。なかでも生活機能障害を招き、健康長寿の妨げになるものとしてフレイルやサルコペニアが非常に注目されています。フレイルは高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、機能障害、要介護状態、死亡などの不幸な転機に陥りやすい状態とされ、生理的な加齢変化と機能障害、要介護状態の間にある状態として理解されており、サルコペニアは、加齢に伴って筋肉が減少し、握力や歩行速度の低下など機能的な側面をも含めて定義されています。サルコペニアが進行すると転倒、活動度低下が生じやすく、フレイルが進行して要介護状態につながる可能性が高くなり、高齢者の運動機能、身体機能を低下させるばかりでなく、生命予後、ADLを低下させてしまう場合が多く、その対策が必要です。すなわち、サルコペニアはフレイルの一つの重要な要因ともいえます。』

 

 

 

「サルコペニア診療ガイドライン2017年版」:サルコペニア診療のためのガイドラインが、国立長寿医療研究センター、日本サルコペニア・フレイル学会、日本老年医学会によって作成されました。

同研究センター副院長の荒井秀典先生が監修された「サルコペニアがいろん」の中に、サルコペニアが起こるメカニズムに関する記述がありましたので、専門的な内容ですがご紹介したいと思います。

出版:ライフサイエンス出版


●加齢による神経筋シナプスの形態変性
『筋の運動機能を維持するためには、筋組織と運動神経が連携して運動時に必要な代謝産物、エネルギー量や酸素消費量の需要増大に対応する必要があります。脊髄にある運動神経細胞の細胞体から伸びた神経線維の終末部は、筋細胞と接して神経筋シナプス(接合部)を形成しています。加齢に伴ってこの神経筋シナプスの断片化、構造の単純化、神経終末の分枝化が起こります。このような神経筋シナプスの形態変性は、運動神経終末から分泌される神経伝達分子(アセチルコリン)の作用効率を下げ、サルコペニアにおける筋力低下や筋萎縮の原因となります。さらに、ビタミンDが神経筋シナプスの構造の維持に有効との報告もあります。』

左は神経筋接合部の構造です。

画像出展:「人体の正常構造と機能」


●筋幹細胞の老化との関係
サルコペニアの筋では、筋線維の数と断面積が減少しています。発生期の筋線維の形成や筋が損傷したときの修復には、再生・分化能をもつ筋幹細胞が必要ですが、加齢により筋幹細胞の再生・分化能や修復効率は低下します。しかし、筋の単なる加齢変化では明らかな筋損傷がみられないことや、筋幹細胞が筋線維の維持に必ずしも必要でないとの報告もあり、筋幹細胞の老化とサルコペニアの因果関係は、今後の課題です。』
●代謝バランスの破綻と可塑性の喪失
『筋力や身体能力の低下は認知症を含む老年症候群、要介護や死亡のリスクと相関することが明らかになっています。加齢による全身の変化は、筋量の減少ではなく筋の質的な変化と強く関連していることを示唆しています。筋肉も他の組織と同様に、通常は筋タンパク質の同化(合成)と異化(分解)が平衡状態に保たれています。骨折や脳血管障害などによりベッドレストで筋が不活動状態になると、同化と異化のバランスが急速に崩れ、筋は2週間で萎縮します。この萎縮した筋は通常の生活に戻ればすぐに改善されますが、加齢とともにその回復力は低下し、また加齢に伴う低栄養・低タンパク質は回復をさらに阻害します。
サルコペニアの萎縮した筋では遅筋線維の割合が相対的に増えると考えられます。若い筋では、運動により筋線維が肥大するだけでなく、運動の種類(筋力/耐久トレーニング)によって速筋線維と遅筋線維の割合を変化させることができますが、加齢とともにこのような可塑性は失われます。
免疫細胞の機能制御を担う多くのサイトカインは筋からも分泌されていて、サイトカイン以外の分泌タンパク質を含めてマイオカインと総称します。マイオカインは肝臓、膵臓、脂肪組織、免疫組織、骨、脳などにも血流で運ばれ、マイオカインの分泌制御は筋の運動機能や体内の栄養環境の影響を受けるため、サルコペニアだけでなく認知症など老年症候群の成因と強い関連があると考えられます。』

長寿科学振興財団 健康長寿ネット

 

「高齢者の病気」の先頭の2つに「フレイル」と「サルコペニア」があります。それぞれ、原因・診断・治療・予防などが丁寧に説明されています。

協和発酵キリンさまの運営サイトです。

とても親切なサイトで、マンガによる解説も付いています。

いま,なぜ睡眠と全身性疾患か?? ―全身性疾患を睡眠からとらえる

睡眠との関係を知りたいと思い検索して発見した資料です。

「おわりに」の冒頭は次のような内容です。『睡眠時間の減少や睡眠時の呼吸異常は、全身性炎症や心血管系疾患、代謝性疾患と密接に関連すること、さらに癌の進展リスクにもつながり得ることを示した。とりわけ、肥満に伴う閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)ではIH(間歇的低酸素[Intermittent Hypoxia])やそれに伴う全身性炎症が生活習慣病の発症進展に重要な役割を担っている。……』

慢性腎不全が鍼治療で改善!

慢性腎不全の患者さまへの施術で、クレアチニン値3.64から2.38に改善された症例がありましたのでご紹介させて頂きます。なお、体調も良くなり通常のお仕事に復帰されました。
・施術期間:2017年11月-2018年1月
・施術回数:9回
・クレアチン値:3.643.022.502.38

今回、ブログを書くにあたり患者さまにご相談したところ、検査結果もお見せ頂けることになりました。下記がその検査結果ですが右上に日付が出ています。なお、クリックして頂くと拡大されます。



CKD診療ガイド2012を元に、内臓トレーニング協会さまが作成されたグラフです。これを拝見すると、クレアチニン値が3.5以上になると手術が必要になってきます。

画像出展:「内臓トレーニング協会

 

 

 
腎移植手術を行う場合、医療費助成制度適用には、「腎機能障害の身体障害認定」が必要となります。4級の評価基準は右端にある「クレアチニンクリアランス(Ccr)20以上30未満」もしくは「クレアチニン値3.0以上5.0未満」のいずれかを満たすという条件です。つまり、3.0という数値は日常生活活動の制限を覚悟しなければなりません。

 

画像出展:「腎援隊

疾患-慢性腎臓病」でも触れていますが、「鍼治療が慢性腎臓病(CKD:chronic kidney diseas)に有効ではないか」ということを考えるようになったのは、静岡トレーニングクリニック 廣岡院長の著書、「腎臓病を自分でなおす -私たちはクレアチニン値を自分で下げた-」を拝読させて頂いたことによります。仮説ということではありますが、「クレアチニン値の下がる理由(特に青字箇所)」鍼治療の "可能性" を確信した理由です。

注)静岡トレーニングクリニックさまで行われている「内臓トレーニング療法」は鍼治療ではありません。 低周波通電療法置を使用されています。

 

発行は、2015年4月です。

出版:アイシーアイ出版

クレアチニン値の下がる理由(仮説) 
a 人体を細胞レベルで見ると
『体を細胞レベルで見ると、約60兆個の細胞からできています。全ての細胞は、酸素を取り入れて二酸化炭素を排出し、アミノ酸やブドウ糖などの栄養を取って老廃物を排出しています。細胞に栄養と酸素を届けるのは血液であり、二酸化炭素と老廃物も血液によって回収されます。ですから、細胞は血液が届けば健康ですが、届かなければ衰弱し、もし酸素が届かなくなれば10分ほどで死んでしまいます。つまり、細胞にとって血液は生命線であり、全身の細胞に血液が行き届いていれば人間の体は元気でいることができます。
b 細胞も生き物、その健康状態はさまざま
細胞は生き物です。生き物は単純に生か死に二分することは出来ません。元気な細胞、疲れた細胞、病気の細胞などがあり、徐々に弱って寝込んだり倒れたりして最後に死を迎えます。一般的にクレアチニン値1.00を超え、腎機能に支障があると診断されたときには、その機能の半分が不全に陥っています。しかし、1.00の時、半分の細胞が死滅し、残りの半分の細胞が元気というわけではありません。細胞は活発に活動しているものから、瀕死の状態のものまでさまざまな健康状態で混在しています。腎臓の機能の回復を図ろうとするなら、弱っている細胞に新鮮な酸素と栄養をたっぷり与えれば、人間と同じように元気になるはずです。それには腎臓の血流を活発化すればよいのです。』
c 血液が届けば細胞は元気になれる
全身の血流を活性化し、臓器に血液を送りこめば、元気な細胞は今まで以上に元気になり、疲れた細胞は疲労を回復し、病気の細胞も治癒し、瀕死の細胞も息を吹き返すはずです。そして、疲労しきった腎臓の機能全体が回復してクレアチニンの数値も下がるはずです。現に、内臓トレーニングでクレアチニンを下げたり、数値の上昇を抑えている人は7割を超えています。内臓トレーニングが、クレアチニンは下がらないという医療界の常識に反して効果を挙げている理由は、ここにあると考えています。ただし、この考え方は科学的に証明されたものではありません。あくまでも細胞生理学的な見地からの仮説です。』

 

画像出展:「内臓トレーニング協会

また、次のご指摘も納得のいくものでした。
血液の流れる仕組み
『血液の大循環を考えてみましょう。心臓から押し出された血液は動脈を伝って全身に届けられ、静脈から心臓に戻ります。血液循環で一番難しいのは下半身に降りた血液を引力に逆らって心臓に戻ることです。心臓から足のつま先まで約1メートルの高さがあります。下半身の血液は、主として第2の心臓と呼ばれるふくらはぎの筋肉が動かします。ふくらはぎの筋肉がしっかり動けば、下半身の血液は尺取虫にように押し上げられて、心臓に戻ります。日常生活の中でふくらはぎを動かすには歩くことです。しかし、現在は車社会で歩くことが極端に少なくなっています。このため、下半身に汚れた血液が溜まり、さまざまな病気になりがちです。
次に毛細血管の血液の流れを説明しましょう。毛細血管は筋肉の中にあり、毛細血管の血液も筋肉の収縮によって体の隅々まで流れます。やはり、運動が必要です。ですから、歪んだ姿勢で生活したり、肩こりや腰痛で筋肉を固めてしまうと、筋肉の収縮頻度が少なくなり、毛細血管の血液の流れまで悪くなってしまいます。血液の流れを円滑に保つことは、健康な人でもなかなか大変なことです。ましてや腎臓を患っている人は、当然血液の流れが滞りがちです。』

 

画像出展:「腎臓病を自分でなおす」

 


警告のための名称
廣岡先生は、2012年5月に発行された「腎臓病をなおす-内臓トレーニングでクレアチニン値は下がる-」の中では、次のようなお話もされています。
腎臓の働きが衰えてくると、一般に慢性腎臓病とか慢性腎不全と診断される。しかし、この名称は「腎臓の機能が衰えてきています」と腎臓の働きの状態を表した病名で、いわゆる「警告のための名称」と考えるとわかりやすい。

 

 

 

 

廣岡先生が実施されている治療は「内臓トレーニング」とよばれ、ホームページに紹介されています。

ご参考1

廣岡先生のホームページに紹介されている「田坂定孝教授著[低周波脊髄・頭部通電療法]中外醫學社刊」は、「国立国会図書館デジタルコレクション」の中にありました。資料は「図書館向けデジタル化資料 送信サービス参加館」に登録されていれば、その図書館にある専用端末で閲覧およびコピーが可能です。添付は、「田坂定孝教授著[低周波脊髄通電療法]」です。これは[低周波脊髄・頭部通電療法]の2年前の1958年に発行されたものです。実は、間違ってこちらを閲覧・コピーしてしまいました。なお、『本通電法を一応低周波脊髄通電法(以下低脊通電と略す)と命名して昭和30年8月20日に(日本医事新報,第1634号)に報告したものである。』と記されていました。

右側は「低脊通電の臨床効果」が書かれた最初のページですが、見ずらいため冒頭の一部を書き出しました。

 

『低脊通電は諸種中枢性神経疾患ことに脳卒中後片麻痺にみられる運動障害に有効であるばかりでなく、視覚障害・言語障害・拘攣・自律神経障害および精神障害などにたいしても有効であり、約15%くらいの無効例および15%くらいの微効例はあるが、その他の70%においては効果がはっきり認められ、しかもこのうち約20%においては卓効または劇的な効果がみられた。・・・』


鍼治療の概要
当院の鍼灸治療は経絡治療になりますが、日本伝統医学研修センターにて相澤良先生よりご教授いただいた経絡治療になります。これは、岡部素道先生が昭和20年~39年の第2期に行っていたもので、陰陽論を具体化するものであり、「祖脈診」による脈診は病理を鑑別します。これに問診、腹診などを考慮して総合的に判断します。今回の患者さまは、瘀血が疑われる熱型で、肝経の金穴(中封)・水穴(曲泉)、腎経の金穴(復溜)・水穴(陰谷)を本治としました。なお、腹部の中脘、左右天枢、関元の4穴も本治に加えています。

下図は祖脈診の概要です。右の写真は現場で使うシャーレと寸3-1番の40本の鍼です。殿筋など長い鍼が必要な場合は、寸6-3番や2寸-5番を使っています。 


「内臓トレーニング」では、ふくらはぎ、足裏、背中(脊柱際)を治療ポイントとしています。

今回は足の浮腫みがあったため、腓腹筋ヒラメ筋をターゲットにツボを意識しつつ、触診により刺鍼点を決めました。
また、軟らかい印象があった背中ですが、刺鍼してみると少し深いところに顕著な硬さがあり、曲がってしまう鍼もありました。この硬さは普通ではなく最重要の刺鍼エリアであると判断しました。置鍼時間は20~30分を目安とし、必要に応じて、単刺や抜鍼時の雀啄を行い、硬さをつくっている熱が外に排出されるイメージで鍼を抜きました。

 

夾脊(華佗夾脊)」は、経絡治療、中医学ともに使われる奇穴です。教科書には主治として「胸腹部の慢性疾患」とあります。

画像出展:「新版 経絡経穴概論」

神経リンパ反射療法でご紹介した「チャップマンによる内臓器官反射点」です。この反射点を活性化すると、『自律神経系を通して反射点と連結する内臓に影響を与えることが可能である。反射点の治療を通して交感神経緊張の制御が切り替わり、関係する内臓の血流が良くなり代謝推移が素早く正常化する。』との解説がされています。

Dr. Frank Chapman, DO(Doctor of Osteopathic Medicine) クリック頂くと”Chapman's Reflexes"という63枚の英語のスライド(PDF)がダウンロードされます。

画像出展:「神経リンパ反射療法」

左の写真を参考にすると、左腎の高さはL2-T11、右腎の高さはL3-T12に位置していることが分かります。

画像出展:「人体の正常構造と機能」

整理をすると、今回の標治ヒラメ筋腓腹筋T1(第1胸椎)~L2(第2腰椎)の脊際、さらに、脳への血流を意識し、後頚部を加えたものが刺鍼部位になります。

腎臓の働き
・腎臓の働きは大きく分けると、「尿生成」と「ホルモン産生・調節」の2つですが、臨床的には尿生成を腎機能としています。
。その尿生成に関しては、「よくわかる生理学の基本としくみ」という本の中に、例をあげて分かりやすく説明がされていましたので、こちらをご紹介させて頂きます。(右側の腎機能の図は「病気がみえる vol8 腎・泌尿器」からのものです)

 

出版:秀和システム


 

こちらは、腎動脈に造影剤を注入してX線撮影した腎動脈造影です。「病院の検査の基礎知識」さまより拝借しました。

なお、腎動脈の直径は5~6mmとされています。

『細胞が出す代表的な代謝産物には、酸素の消費の結果出てくる二酸化炭素のほか、タンパク質やアミノ酸を分解することで生じる尿素や硫酸など、それに、DNAやATPなどに使われる核酸を分解して生じる尿酸などがあります。これらの物質は、細胞から血液に出されてきます。したがって、ゴミは、血液によって体中から回収されているわけです。血液は、なんと、ゴミ収集車の役わりをしているのです。

 

尿素や尿酸などのゴミを回収したごみ回収車は血液を通って処理センターの腎臓に向かいます。

画像出展:「よくわかる生理学の基本としくみ」

血液は、あくまで収集をしているだけなので、どこかに捨てなければなりません。一つのごみ処理場は、肺です。ここで二酸化炭素が出されることを、第3章(息をすること[呼吸器系])でお話しました。しかし、他の物質は、気体にならないので、肺からは出ません。気体にならないゴミを除去するのが、腎臓の役割です。つまり腎臓は、ゴミを水に溶かした状態で体外に出します。これがおしっこです。
だから、体が少々水不足の状態であっても、ゴミを溶かすために水が必要で、おしっこはやっぱり出てくることになります。こうして見ると、腎臓が壊れることの恐ろしさが分かると思います。腎不全が進んでしまった患者さんは、腎臓移植をするか、人工血液透析を行って、血液から直接ゴミを取り除く方法をとらなければならなくなります。
血液の中に溶けている“ゴミ”を体の外に出すためには、どうしたらよいでしょうか。一番簡単なのは、血液をそのまま捨てることです。しかし、これは出血ですね! 体の中の血液の量は、体重の約8%ですので、体重60kgの人では約5Lです。おしっこの1日量から考えると、3日で空っぽになってしまいます。また、おしっこに血液が混じるのは血尿といって、病気の兆候です。結局、血液の中から、ゴミを選んで出す必要があるのです。
血液の主な成分といえば、赤血球や白血球や血小板が思いつくことでしょう。この3つは、細胞、あるいはその一部で、血球成分と呼ばれます。血球成分は、もちろんゴミではありません。ですから、血球を出さずにゴミを除去しなければなりません。
ゴミは、血液の液性成分である血漿の中に溶けている分子です。そうすると、血液の中から、血漿だけを取り出せばよさそうです。血球は細胞成分ですから、比較的大きいので、理科の実験などでよく使う濾紙(フィルター)であれば、濾しとることができそうです。腎臓には、この濾紙の役わりをするものがあります。それが糸球体です。糸球体は、両側の腎臓に合わせて、200万個以上もあるといわれています。糸球体は、毛細血管が糸くずのように丸まった状態のものです。つまり血管ですから。この中を血液が流れています。
この血液は、大動脈から直接枝分けれしている腎動脈が、さらに数回枝分かれしてきた輸入細動脈から注がれます。そして、糸球体を通過した血液は、輸出細動脈として出ていきます。こうして、糸球体には、血液が絶えず流れています。

糸球体の壁は、内側から、血管内皮細胞、基底膜、上皮細胞の順で層を成しています。血管内皮細胞と上皮細胞は、それぞれ細胞どうし密着しておらず、ちょうどタイルのように並んでいます。そして、細胞どうしの間はすき間になっています。また、基底膜は、膜とはいっても均一なものではなく、網状の構造をしています。網の上に細胞がバラバラに載っているようすは、網の上でお餅を焼いているようすに似ています。内皮細胞の大きさは赤血球より小さいので、内皮細胞や上皮細胞のすき間を、血球成分は通過できません。では、基底膜はどうでしょう。基底膜の網の目はかなり細かいので、血漿の中の巨大分子であるたんぱく質は、ほとんど通過できません。
こうして、血漿成分からタンパク質を除いた比較的小さな分子と水だけ、糸球体の壁を通過することができ、中に入っている比較的小さな分子であるゴミを血管の外に出すことができるのです。このしくみを糸球体ろ過といいます。こうして糸球体から、いわばしみ出てきた液を原尿と呼びます。原尿はボーマン嚢に受け止められて、次のルートである尿細管に流れてゆきます。

 

画像出展:よくわかる生理学の基本としくみ」

糸球体の壁からしみ出た原尿は、血漿からタンパク質を除いたものです。ところで、そもそも血漿には何が含まれていたでしょうか。
第一はタンパク質です。タンパク質にはアルブミンと呼ばれるグループと、グロブリンと呼ばれるそれより大きな分子のグループがあります。それと、血液内で脂質を輸送する役わりがあるリポタンパクがあります。健康を気にしてる人は、LDLとかHDLとかいう名前を聞いたことがあるでしょう。それがリポタンパクです。こうした血漿に含まれているタンパク質は、しみ出しません。
タンパク質は栄養素でもありますが、第2章(食べること[消化器系])で、他の栄養素も、腸で吸収されて、血液に入ってくることをお話しました。そう、グルコースなどの単糖類とアミノ酸です。これらは比較的小さな分子なので、糸球体の壁からしみ出してしまいます。そのほか、ナトリウムやカリウム、カルシウム、塩素などの電解質も、血漿の中にしみ出します。また、もちろん水もしみ出します。こうした栄養素や電解質、水は、ヒトの体に必要なものです。
これらが、糸球体からどんどん失われたとすると、まったくムダなことをしていることになります。ですから、これらのものは、最終的に、おっしことして出してしまう前に回収しなければなりません。尿細管では、原尿中の必要物質を回収し、血液に戻しています。

 

画像出展:「よくわかる生理学の基本としくみ」

では、どうして、糸球体からいったんだしてしまったものを、また回収するというような、一見ムダに見えることを行っているのでしょうか?それは、“ゴミ”を出すために必要な作業だからなのです。血液中のゴミは小さな分子で、栄養素などと大きさがさほど変わりません。だから、ろ過では、栄養素とゴミの区別をつけることはほぼ不可能です。
ならば、ろ過という方式をとらず、ゴミだけ、血液の中から選択的に取り出す方法も考えられます。これなら、尿素や尿酸といったゴミだけ捨てて、栄養素を捨てなくてすみます。
でも、この方法は、自然界では危険な方法です。なぜなら、体の中には、栄養素とゴミ以外の物質が、いつも入り込んでくる可能性があるからです。典型的なものは毒物です。毒物は、ヒトが持っている物質ではありませんので、ヒトとしては、どんな物質なのか予想がつきません。ですから、血液中から毒物だけを選んでうまく捨てることができるかどうかは、不確実です。おまけに、これを失敗すると、生命の危険にさらされるわけです。具体的な例として、新薬の話があります。新薬は、人工的に合成された化学物質ですから、それまで地球上に存在するはずのない物質です。しかし、新薬がヒトに投与されると、みごとに体の中から除去され、おしっこに出てゆきます。

 

捨てる&回収は、最も安全です。

画像出展:「よくわかる生理学の基本としくみ」

もし、腎臓が、ゴミだけ選んで捨てていたら、新薬はいつまでたっても体の中にとどまって、深刻な副作用を引き起こすでしょう。毒物も新薬もゴミも確実に排出するには、考え方を変えなければなりません。タンパク質より小さな分子は、とりあえず、いったん血管の外に出してしまうのです。そうすれば、どんな毒物も開発したての新薬も、出て行ってしまいます。ゴミももちろんそうです。これが糸球体のろ過のやり方です。
同時に出て行った栄養素や電解質ですが、これは生体がよく知っているもので、その数も限られているので、こちらを選んで回収するほうが、結局、効率がよいわけです。たとえば、ゴミ箱に誤って必要なものを捨ててしまって、ゴミ箱からそれを探し出すときのようなものです。ゴミ箱の中身を、新聞紙か何かにいったん拡げて、必要なものを見つけ出し、残りをまたゴミ箱に捨てる方が、ゴミ箱の中に手をつっ込んで探すより、簡単ですよね!

ご参考1

こちらは糸球体の写真です。

まさに毛細血管の糸くずですが、1つのパーツではありません。ミクロの細胞を1つの部品とすれば、物凄い部品点数の巨大「ろ過装置」です。

もし、この「ろ過装置」が1個のスイッチで操作されるのであれば、その働きは、1(稼働)0(停止)というデジタル的といえます。

しかしながら、実際は常にスイッチはオンです。ただし、その稼働状況は一定とは限りません。取るべき睡眠をとっていなかったり、食べるべき食事を抜いていたり、あるい、喫煙、暴飲暴食などの不摂生を繰り返していると、生み出されるストレスは「ろ過装置」が必要とする燃料(血液が運ぶ酸素と栄養素)の安定的供給に影響を及ぼし、稼働環境を悪化させます。

このように、細胞という無数の部品で組み立てられた巨大な「ろ過装置」を不十分な燃料で長期に渡って稼働させなければならないとすれば、その「ろ過装置」の稼働状況は、絶好調瀕死状態にある糸球体の細胞群に支えられることになります。そして時間の経過とともに各細胞の健康状態は徐々に悪化してゆき、不良部品が増えていき「ろ過装置」の性能は低下していきます。

つまり、「低酸素や虚血という環境は腎臓のろ過機能を低下させるが、その変化はアナログ的であり、酸素と栄養素などが血液によって安定供給されれば、細胞の健康状態も改善され、そして、ろ過機能も改善される。」と考えることは不自然ではないと思います。

画像出展:「人体の正常構造と機能」

再登場の絵です。

上記の「絶好調~~瀕死状態」はこの絵をイメージしたものです。

ご参考2

臓器は血液が運ぶ酸素と栄養素などで健康を維持していますが、特に腎臓にとって低酸素状態は重大な問題です。ネット上にあった第113回日本内科学会講演会の資料によると、糸球体の硬化の問題以上に、尿細管間質の慢性低酸素状態が特に重要と考えられること、腎臓は生体が必要とする酸素の30を消費する非常に酸素需要の高い臓器となっており、低酸素虚血が病態に影響を及ぼすことなどが論じられています。なお、本資料はダウンロードできるようにさせて頂きました。

ダウンロード
腎臓病の新たな視点-低酸素とepigenetics.pdf
PDFファイル 239.6 KB

付記

五行説は『陰陽と並ぶ古代中国の自然哲学の思想。陰陽五行説という捉え方もされる。万物は「木火土金水」という五つの要素により成り立つとする。』とされています。

鍼治療のところでご紹介した、”水穴”や”金穴”などは”五行穴”と呼ばれています。

相撲は日本古来の神事とされていますが、ここには「五行」が存在します。
(土表)
(白ぶさ)
(黒ぶさ)
(青ぶさ)

(赤ぶさ)

画像出展:「ウィキペディア

慢性腎臓病(CKD)の予防と治療

10月23日(日)埼玉県腎臓病患者友の会(NPO埼腎友)主催の講座に参加してきました。大変勉強になりましたのでブログにアップしたいと思います。
タイトルは、NPO埼腎友主催 第10回市民講座 透析にならないためのポイント 
~慢性腎臓病(CKD)の予防と治療~ 講師は木全直樹先生です。
一般社団法人日本腎臓学会のホームページから、「CKD治療ガイドライン2012」をダウンロードすることができます。下記の写真をクリックするとページに移動します。

次に重要と思った点を列挙します。
1.慢性腎臓病(CKD)は他の臓器に悪い影響を及ぼす
 腎臓は体の中の老廃物を尿として作り出す臓器です。従って腎臓の機能が働かなくなると、尿とし

 て排泄されるはずだった老廃物や水分が体の中に溜まるため健康を害す可能性が高まります。


2.慢性腎臓病(CKD)の定義
 腎の働きが60%未満に低下した状態。CKDの1~5のstageではstage3に相当します。
 本来、腎の働きを測定するためには、腎臓の糸球体から速やかに排泄される特徴をもつクレ
アチ

 ンやイヌリンという物質を使って、排泄されずに残る量により濾過機能の性能を評価します。本来

 の検査には24時間の尿を溜める必要があります。このため、時間と手間の問題を解決する簡便な

 法として開発されたのが、eGFR(推算糸球体濾過値)というものです。これは、血清クレアチニ

 値、年齢、性別から数値を計算します
 なお、クレアチニンは筋肉で作られる老廃物のため、筋肉が多い人は高めに、筋肉が少ない人は低

 めに出る傾向があり、クレアチニン値だけでCKDの診断を下すことは適切ではありません。
 また、クレアチニン値は年齢を考慮する必要があります。特に数値は2.0を過ぎると急激に悪化する

 という傾向があるため、2.0を超えたら十分な注意が必要です。
 講座の最後に、先生が「CKDは患者さんの危機意識こそが最も重要な治療といえるかもしれな

 い。」とお話されていたことが印象的でした。


3.透析導入
 GFR15、stage5が透析導入の目安になっています。患者数は約32万人(2014年末)、予備群は国民

 成人の約8人に1人ですが75歳以上に限定すると、その数は半分が予備軍とみられています。


4.慢性腎臓病(CKD)になりやすい体質
 ①糖尿病性腎症
 一般的には糖尿病発症後から10~15年で発症するといわれています。

 多くの場合、高血圧→網膜症→腎症という経過をたどります。2011年の日本透析医学会統計調査に

 よると、糖尿病性腎症が原因の透析患者数は全体の44.3%を占めています。
 なお、糖尿病を抱えることになると、食事療法、運動療法が腎臓病とは大きく異なるため、非常に

 難しいものとなります。
 ②虚血性心疾患・心不全
 「心・腎連関」という考え方があります。これは慢性腎臓病と慢性心不全と貧血の3つの病態は相

 互に悪化させる悪循環を作ってしまうというものです。心不全により心臓のポンプ機能が低下すれ

 ば血液循環の問題を発生させます。
 下の図では、血液を運ぶゴミ回収車に問題が発生することになりますので、尿を作る工場である腎

 臓も影響を受けることになります。
 一方、腎臓自身が機能するためには臓器として健康でなければならず、それには血液によって運ば

 れるる酸素と栄養素が必須となります。貧血はその供給面で問題を発生させるということになりま

 す。いわゆる、「兵糧攻め」にあっているようなものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「よくわかる生理学の基本としくみ」秀和システム

5.75歳以上の注意点
 75歳以上の方の食事制限に関し、現在はタンパク制限を勧めていないとのことです。これはタンパ

 ク制限により、食事全体も落ちてしまう危険があるためです。


6.自分の腎臓は自分で守る
 テキストでは最後のページになる項目です。ここでは10項目をテキストより引用させて頂きます。
 ①自身の腎機能(eGFR)を知る
 ②血圧、体重を測定・記録する…適正な体重の維持
 ③血圧高値とならないように注意する
 ④貧血、腎機能データが大丈夫か確認
 ⑤不必要な食事(タンパク等)を取らない
 ⑥こまめに水分補給…口渇中枢の感受性低下を自覚
 ⑦鎮痛薬を勧められたら、大丈夫か確認(ロキソニンなどの非ステロイド系鎮痛薬)

 ⑧造影検査を進められたら、大丈夫か確認
 ⑨大きな手術を勧められたら、大丈夫か確認
 ⑩腎排泄型薬剤、利尿剤を処方されたら、確認

(⑥~⑨の「大丈夫か確認」とは、いずれも腎臓への負担が大きいので確認するという意味です)

 

以上が受講した講座の概要になりますが、食事制限を考えるうえで考慮すべき、タンパク質と糖分について補足させて頂きます。
タンパク質は代謝によって血中に窒素化合物ができます。腎臓はそれを排泄するために一生懸命働きます。これが腎臓に負担がかかる理由です。ただし、腎臓を含め体のあらゆる器官はタンパク質で作られていますので、タンパク質が必要量に満たないと健康を害するということになります。従って、タンパク質は過剰に摂取しないということが大切です。
一方、糖分は腎臓に負担をかけるような代謝産物は作りませんので、特に腎臓に負担をかけるということはありません。しかし、高血糖→糖尿病→糖尿病性腎症という危険な流れを生み出す可能性があるため取り過ぎには注意が必要です。

 

最後に鍼灸治療について触れると、本治法は免疫力を高めることに主眼をおき、脈診、腹診により最適なツボを選択します。また、慢性腎臓病(CKD)は厳しい食事制限が求められるため、過度なストレスにより自律神経が乱れやすくなっています。そのため、標治法では頚肩部、特に脊柱に沿って現れる線状の硬結を改善し、全身調整穴により自律神経の乱れを防ぎます。これにより、本来の自然治癒力をととのえ、貧血や高血圧にも備えます。