長野式-結合組織活性化処置法

今回のブログは、標治に長野式の「結合組織活性化処置法」を取り入れるため、あらためて勉強したというものです。なお、それぞれの講習会で入手した資料を勝手に使うことは不適切であり、一方、まだ熟読していない本を使って学びたいという気持ちから、長野先生の本を使って進めています。そして、最後に「自序」、「あとがき」、「著者略歴」をご紹介しています。

 

初版は平成5年12月です。

長野先生には、この本とは別に「鍼灸臨床 新治療法の探求 -心に残る診療カルテから-」という著書もありますが、こちらは長野先生曰く「本書は、私がこの道に入って二十五年目から三十五年目まで、十年間に書き留めた断片的な臨床論文である」とのことです。

出版:医道の日本社

長野式とは長野潔先生が確立された鍼灸治療で、鍼灸師の間では「知る人ぞ知る」評価の高い治療方法です。

私は八丁堀の専門学校に通っていた3年間のうち、2年目に「長野式臨床研究会」の基礎セミナーを、3年目に「長野式研究会」の基礎講座を受講させて頂きました。長野式を研修できる現場を求めて、栃木県まで足を運んだこともありましたが、現実のものにすることはできませんでした。このような経緯を経て、卒業後、代々木の日本伝統医学研修センターで知識と臨床力を付けるという道を選びました。

しかしながら、頭をリフレッシュさせる目的で、長野式だったらどのような選択をするのかといったことを考えてみることは有意義だと思っています。
【混ぜるな危険】とは、「色々な治療法を明確な狙いもなく、苦しまぎれにミックスしてしまうこと」ということだと思います。私はこの【混ぜるな危険】を守りながら、長野式の可能性を「標治」の幅を広げる目的で活用したいと考えました。これは、筋肉や結合組織に対するトリガーポイントと同じような位置づけであり、新たな武器を身につけるという狙いです。
日本伝統医学の経絡治療には「本治」と「標治」という考え方があります。本治は治療法の根幹であり、まさに【混ぜるな危険】を守るべき領域です。
一方、標治は患者さまが抱える問題、痛みや凝りなどに対して即効性を優先した治療であり、一般的には筋肉などの軟部組織に刺鍼して改善を図ろうとするアプローチです。そして、標治の基本は徹底した触診により、硬結やスジ、突っ張りや緊張といった変化部位を発見し、そこに鍼を当てにいくというものです。例えば、経絡治療には「阿是穴(あぜけつ)」という、触診で見つける「あっ、それ!」というツボも定義されています。これなども標治の幅を広げるためと考えられます。
以上のことから、「標治」に関しては施術の質を高めるために、トリガーポイントと同様に長野式を有効な武器として加えることは問題ないと判断します。
ただし、長野式の根幹は次のように10個(運動器疾患処置法は4個)の処置法に分かれており、この中で標治に加えて何も問題ないと思うのは「結合組織活性化処置法」です。

1.気流促進処理法
2.水分代謝促進処理法
3.血流促進処理法
4.粘膜消炎処置法
5.自律神経・内分泌系調整処置法
6.免疫機能強化処置法
7.運動器疾患処置法
 1)結合組織活性化処置法
 2)筋緊張緩和処置法
 3)血糖値調整処置法
 4)血管運動神経活性化処置法

「結合組織活性化処置法」は、本の中では126~137ページに説明がされています。今回は現場で使えるものにしたいと思い、表形式にまとめました。なお、項目になっている[刺入(鍼)]の中で、鍼の長さ・太さと刺入の深さについては色をグレーに変えています。これらは個々の体格等を優先して判断すべきものだと考え、明記された数値を参考値という位置づけにしたためです。

表の内容を直感的に把握する目的で、「絵」を載せていますが、ふられている数字は上記の表、左端に出ている連番を指しています。ただし、すべてを網羅できていません。

9・16

17


19

20


21

24


表の中には経穴(ツボ)によって、部位を説明しているものもあります。これに関しては、「イトリズム事典」で、該当する経穴(ツボ)を確認できるようにしました。

イアトリズム事典は、「日本東洋医学協会」監修のもと、人体に数百とある経穴(ツボ)に関する詳しい情報を画像とともに分かりやすく掲載しています。

なお、利用についてはホームページ開設時に使用許可を頂いています。

9  尺沢(シャクタク)
12 風池(フウチ)
12 完骨(カンコツ)
12 天牖(テンユウ)
14 中府(チュウフ)
14 雲門(ウンモン)
15 少海(ショウカイ)
17 四瀆(シトク)
18 承扶(ショウフ)
19 委陽(イヨウ)
20 陰陵泉(インリョウセン)
20 曲泉(キョクセン)
20 陰谷(インコク)
23 風市(フウシ)
24 足三里(アシサンリ)

自序
『私にとって青年時代よりの中心課題は、東西両医学融合体系構築が目標であり、これらのエッセーは、それへのアプローチであった。
その目標に向かって、デカルトによる、身体と心は別々であると云う二元論の理性的・合理主義を基盤とする西洋医学と、人間も自然の一部とする一元論的存在論とする東洋医学を融合させることは、無謀なことと知りながら可能な限りの融合点を見い出し、近代医学で見放された患者を治癒せしめた事実が少なからずある。
この事実を集積することにより、東西両医学の体系構築への確信を持つようになった。この確信なくして私の文章は一行も書き得なかったであろう。
臨床家にとって本を書くということは、至難の技である。先づ、臨床の状況を詳細にカルテに記録しなければならない。数多いカルテの中から特記すべき症例を拾い上げ、症例別に分類を行いまとめてゆくのであるが、一日の診療を終え極度の疲労に達した状態での作業は、身体に大きな支障を来たすものである。
しかし、それを克服しなければ、これまでの治療行為が遠い記憶となり、やがて虚しく消えてしまうものである。従って、余程の診療体制の確立と自分自身の体力の充実という条件がなければ書けるものではない。
過去30年間、そのような恵まれた時間は決して多くはなかった。そのような状況の中で、この本を書かしめたものは、私にとって両医学の融合の成果を、鍼灸臨床に携わる方々に何らかの参考にしてもらえばという思いと、一人でも多くの病人を救うという使命感にも似たようなものであった。
印度仏典を中国語に900巻も翻訳した鳩摩羅什(クマラジュウ)(344-409)の業績や、印度仏教における思弁哲学体系を構築した天台智顗(チギ)(538-597)の偉大な業績を思う時、私の著作は誠に細やかなものであるが、治癒事実の記録という実証主義的エッセイは、私が確信を持って書いたものであり、永遠の過去と、永遠の未来の接点である現在、即ち、今の事実は残すに値するものであるという自負を持っている。
当初本を書き始める頃は、東西両医学融合の治療体系構築のアプローチへの一片の資料になればと夢を持っていたが、振り返ってみれば、私ごとき一介の鍼灸師が個人レベルでは、大それた意図であるということがしみじみと解ってきた。しかし、その夢を忘れることはできなく、私の可能な限りの処置法を構築したいという思いで書き始めた。
臨床においては学理的解明よりも、治癒事実の方が優先されなければならない。いかに学理的解明がなされても、生命が終わってしまえば、もうそれは医療ではない。今日、このような状況が現実として我々の身辺に起こっているということは、近代医学にとって、また、人類にとって大きな不幸ではないだろうか。全身的な、全人格的な回復ということは、何よりも優先されなければならないのである。
局所の病的細胞の修復と改造を目標とする近代医学と、全身的気血の和合を目的とする東洋医学は、基本的に病理概念や或は生命感が違うのであるが、人間の生命が全体と局所、局所と全体が有機的且つ合目的的に、また包括的に生かされているということは、大自然の調和ということと同一のものではなかろうか。
鍼灸臨床拾遺は、ある時期の二年間の臨床の中で特記すべきもののうち、500治験症例をまとめたものであるが、この統計を作りあげるのには並々ならぬ労力を要した。これは鍼や灸の治療対象がどこまで可能か、またどこまでが限界なのかを探求したという気持があってまとめたものである。
治験症例報告は、日常のありふれた一般的な症例(例えばギックリ腰や変形性膝関節症等)は割愛した。しかし、日常的に多く出合う疾病で、西洋医学的方法では難治でも、鍼灸治療では治ったという症例(前立腺肥大や慢性膀胱炎等)、又特殊な経穴を組み合わせて、特殊な疾病を治す事に成功した症例も取り挙げて報告することにした。
私は、私なりに外来臨床に携わっている。西洋医学と東洋医学を複眼として、西洋医学的な一つの暗示を受けて東洋医学的治療法を行い有効であったことが多い。例えば慢性膵炎による痛みは、X線による間接照射、副腎皮質ホルモンでしか痛みが取れないということに対して、足の腎経の「照海」と同じく「兪府」に鍼をすることによって痛みを消失させることができた。
このように両医学の視点から考え、治療を試みて成功したのであるが、何故痛みが消失したかという作用機序の理論的解明は、推論の域を脱し得ないのが残念である。臨床家は病人を治すということが目標であるので、理論的解明は二次的にならざるを得ないのは、止むを得ない事である。
今後、鍼灸医学の進歩発展のためには、公的な東西医学の共有する場を持ち、共通する学術用語とその意味づけが早急に検討・統合されることが必要な時機に来ているものと考える。なおこのエッセーは未完不備なものであり、独断と偏見に満ちているかも知れないが、少なくとも私の臨床経験というフィルターを通してのものであり、決して虚構と偽証のものではないことだけは明記しておきたい。
また、このエッセーが、鍼灸家の臨床研究の資料として、いささかのお役に立ち、高齢者人口の増加する今日的状況の中で、近代医学的治療の補足補完的な真価を発揮し、慢性的に苦しみ迷う患者層の、道しるべの布石のひとつともなれば望外の幸である。』

あとがき
本書は一口に言って私の45年にわたる鍼灸臨床生活の総集編とまではいかないが、その要諦であり大半である。
1980年迄の10年間、医道の日本誌に「更年期障害の臨床」「心に残る診療カルテから」「鍼灸臨床備忘録」「鍼灸治療室」など10年間にわたって寄稿させて頂いた。
それから文字を書けないまでに視力を喪失してペンを置く事7年、1988年、幸いにも有能なアシスタントとの出会いを得て私の最終的な目標である東西医学融合大系構築へのアプローチとしての成果を書こうと決心したのである。
1988年10月から今日迄、即ち1992年12月まで、4年間に亘って脳裡にたたみこんで来た「処置法」の大系を口述筆記で24万字にわたって書き綴ったのが本書である。
文字が書けなく分文脈がなかなかおもうにまかせず、前後したり、重複したり、或いは書き落としたり、書き足りなかったり、様々な困難に遭遇してきたものの、なんとか鍼灸臨床体験を通して貯えて来た治療大系を私なりに構築し得たと思っている。もちろんこれは広汎な医療のジャンルでその一部にすぎないのであるが、私にとっては全生命を絞りきった思いである。

振り返って1955年、杉靖三郎教授の「ストレス学説」の講義を拝聴し、それが何故か私の心奥にとどまり、加えて藤田六朗博士の「筋主因性流体波動通路膜系理論」等を習得した。
1974年、耳鼻咽喉科院長の岩下博士との出会いや、札幌医科大学耳鼻咽喉学科の形浦昭克教授の「扁桃とその臨床」という著作に出逢い、扁桃の機構とそのもつ機能と中国の「気」の医学説とが私の中で渾然となり、東西両医学構築大系への夢を現実的なものへと芽生えさせてくれた。
とかく「気」を本質とした経絡学説は、形而上学的思想そのものや或いは思弁哲学的思想そのものと誤認されたりして来たが、これは決してその様な思想そのものではなく、思想化されやすい傾向をもっているにすぎないものであって普遍的に誰もが感得しうる実在的、具象的なものである。
「気」の実在は主客の相対的次元を超えた万人誰もがもつ生命そのものの本質である。
二千数百年の歴史をもつ「気」を中心にした存在論をもつ中国医学は、連綿と伝承されてきたそして多大な成果を挙げたという歴史は私をも含めて厳然たる真実である。
東西両医学の融合という事は近代医学と東洋医学は、ホリスティック医学のカテゴリーの中に包括的に位置づけられこれからの医療にたずさわるものの常識的なものとなってゆくであろう。
東西両医学の融合はただ単に我が国だけのものではなく、世界に共通する医療として志向されなければならないと思う。』

著者略歴
1925年 大分県大分市鶴崎に生まれる。
1948~1952年 大分県立病院理学療法室勤務
1952~1957年 東京教育大学に学び後、大分県立盲学校理療専攻科にて教鞭をとる。
1957年 鍼灸院を開院。大分県鍼灸師会学術部長。同鍼灸・柔整等試験委員・同審議委員等を歴任。
1979年 日本赤十字社金色有効賞受賞。
1982年 大分市より優良技能賞受賞。
1988年 ㈳大分県鍼灸師会会長を3期6年間務む。
1988年 厚生大臣賞受賞
1989年 日本赤十字社社長賞受賞
2001年6月 死去

エコーガイド下fasciaリリース

8月に「運動器エコー」というタイトルのブログをアップしました。これは「エコーガイド下筋膜リリース」に関するものでしたが、今回、その理解を深めるために「解剖・動作・エコーで導くFasciaリリースの基本と臨床 筋膜リリースからFasciaリリースへ」という本と、「運動器リハビリテーションのための超音波画像描出テクニック①②」というDVDを自己学習の教材にしました。

注)当院ではエコー(超音波診断装置)を利用した治療は行っておりません。

 

編集・執筆に関係された方は14名で、その内訳は医師9名、鍼灸師5名となっています。

編集主幹:木村裕明

出版:文光堂

イントロダクション

・正確な長軸画像を得るための基本技術
・きれいな画像を描出するための基本技術
に続いて、①②合わせて16の部位についての画像抽出テクニックが解説されています。

福島県立医科大学附属病院痛み緩和医療センター の小幡英章先生が書かれた「推薦のことば」が分かりやすいので、そのまま掲載させて頂きます。


『痛みの治療において革新的な方法が導入されつつあります。それがfasciaリリースであり、このたび、初めての成書が出版されることになりました。
fasciaとは筋膜、靭帯、支帯、腱膜、関節包、傍神経鞘などの線維性結合組織を包括する概念です。fasciaに異常があると痛みを感じたり、関節の可動域が制限されたりします。痛みの原因として推察される部位を超音波診断装置で観察すると、fasciaの重積像を認めることが多く、そこに生理食塩水を注入すると、症状が軽減します。神経障害性疼痛のような慢性痛にも、この治療法が著効することがあります。慢性痛の治療は基礎研究の発展に伴って中枢機序ばかり注目され、薬物療法が主体となっています。しかし、fasciaリリースの発展によって、末梢性の機序も依然として慢性痛に大きく関与していることが明らかになってきました。本書はエコーガイド下fasciaリリースを開発・発展させてきた医師らによって書かれたものであり、総論から各論まで多くの図表を用いて詳細にわかりやすく解説されています。この治療法が真に有効であることを客観的に示すには、もうしばらくの時間を要すると思われますが、新しい痛みの治療として認識され、多くの医療従事者に広まっていくことを期待します。』

 「痛み緩和医療センター」の概要が確認できます。

さまざまな組織間の癒着

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 例えば、凍結肩(四十肩・五十肩)は関節包周囲での癒着は可動域に制限をもたらしますが、それは上図のように筋膜どうし、筋膜と骨膜、筋膜と浅筋膜(皮下組織)、腱と骨膜など様々な組織間で癒着が生じる可能性があります。

画像出展:「Fasciaリリースの基本と臨床」

筋膜リリースによる重積の剥離(僧帽筋・棘上筋間)

 

これは治療前の写真です。▼マークの白い線が筋膜の重積であり、肥厚して高輝度で写しだされています。

 

治療後です。筋膜リリースによって太くはっきりとしていた白線は数層に剥がされ肥厚は解消されています。

 

画像出展:「Fasciaリリースの基本と臨床」

上記の写真は上層の僧帽筋と下層の棘上筋の筋膜をリリースしたというものですが、これらの癒着が改善されることによって問題となる痛みや可動域制限は改善されることになります。
なお、Fasciaの用語の定義はまだ確立されていないようですが、本書の中では次のように説明されています。
『いわゆる筋膜はfasciaの一形態に過ぎない。fasciaは線維性結合組織の総称であり。皮膚、皮下組織、筋膜、腱、靭帯、脂肪体、腹膜、髄膜、骨膜すべてが含まれる。』

fasciaリリース治療概論
異常なfasciaを含む結合組織の治療は、原因となっている癒着部位を直接的に剥離する直接法としてのfasciaリリースと、癒着部位周囲の結合組織の伸張性や柔軟性を改善させることで癒着部(発痛源)へのストレスを減らす間接法としての手技があります。
下記の図は可動域制限と癒着の強さという2つの病態を0~4の5つのグレードに分類し、それに対する適した治療法を当てはめたものです。

 

画像出展:「Fasciaリリースの基本と臨床」

上記の図では、「鍼」は5段階の3番目(Grade2)の治療として位置付けられています。また、「鍼」について解説されていますので、その内容をご紹介します(引用)。
1.刺鍼時の痛み(切皮痛)が少ない、あるいは無痛
鍼管(鍼を入れる筒)を用いて刺鍼すると、鍼管の接触刺激と指先による皮膚の緊張増加により切皮痛をなくすことができる。チクっとしたいわゆる注射針の痛みがないため、患者はリラックスして施術を受けられる。
2.深部への直接的なアプローチが可能
鍼は体表からピンポイントに深部の病変部にアプローチできる。そのため、医師が深部病変の圧痛確認のために触診の代わりとして鍼を使用することもある。
3.鍼が細く鍼先が鈍のため組織侵襲性が注射針よりも小さい
注射針は鍼先がカットされた刃物構造であるが、鍼の先端は鈍なペンシル型の形状である。そのため、鍼は組織を切らずに、押し分けて深部へ進むことができるため組織侵襲性が低いと推察されている。また、細い鍼は、刺鍼しても動脈や神経を避けるという経験則が知られている。我々は、エコーガイド下刺鍼により検証を進めている。
4.局所血流改善
鍼という異物に対する局所反応(ヒスタミン遊離など)、軸索反射による影響が考察されている。
5.物理刺激によるfasciaの治療
エコーを用いると、鍼の物理的な刺激によってfasciaの重積した部分がリリースされる様子が観察される。
6.下行抑制系の賦活化
鍼刺激が下行抑制系などの内因性オピオイドに関与することが報告されている。

また、「医師が鍼を使う意義」というコラムがあり、4つの写真は左からabcdとなっています。
a 鍼で対象物を捕捉
b 鍼をガイドにして注射している様子
c エコーガイド下に鍼先端をを確認しながら注射している様子
d cの手技のエコー画像

『日本では、法律上、医師も鍼治療が実施可能である。鍼治療は置鍼などで長い治療時間を要するという先入観があり、臨床で鍼を利用している医師は少ない。利用している場合でも、経絡・経穴としての使用がほとんどである。fasciaを対象として鍼を利用する意義は、治療目的だけでなく、治療的診断・判断のための局所病変の評価にある。
深部病変の場合、触診では圧痛点を的確に探し当てるのは難しい。しかし鍼を用いると深部にある圧痛点(発痛源)も正確に探すことができる。鍼先を指先と考えることができる。さらに、その鍼先をガイドとして注射を行うこともできる。
鍼はその細さ・先端の形状などの特徴から、注射針に比べて侵襲性が低い。そのため、鍼先で病変部位を探る(抜き刺しする)行為でも組織内の出血などの損傷行為になりにくい。このように、鍼は、深部病変の検出のための診察の補完ツールとして有効活用できる。また、注射刺激に敏感な患者に対する軽刺激の治療としても有用である。』

画像出展:「Fasciaリリースの基本と臨床」

治療部位検索
こちらは発痛源の検索方法の手順を示した図です。特に注目すべきは2番目の「動作分析・可動域評価」ではないかと思います。以下がその説明です。
『動作分析・可動域評価は煩雑で時間がかかるため圧痛で治療部位を探す治療者も多い。しかし、多くの圧痛点がある場合はどれを治療すべきかの判断が難しい。また、関連痛の場合にはそもそも痛みを訴える部位に圧痛がない可能性がある。このような場合でも動作分析と可動域検査により確実に発痛源を見つけることができる。』

 画像出展:「Fasciaリリースの基本と臨床」

腰方形筋付着部の「エコーガイド下fasciaリリース」
下の2つの写真は腰方形筋付着部への治療の様子です。画像が悪く見えずらいのですが、患者さまは横向きの姿勢です。医師は左手でプローブ(画像を取り込むセンサー)を操作し、見やすい画像でプローブの位置、角度を固定。その状態で右手を使って注射しています。
なお、腰方形筋は背中側からは上層の腸肋筋と下層の大腰筋の間に挟まれた所に位置しています。

最後に、トリガーポイントをどう位置付け、認識しているかという点についてご紹介させて頂きます。
『トリガーポイントはあくまで生理学的に定義された用語(過敏となった侵害受容器)であり、治療“部位”検索としての解剖学的な位置を示す用語としては適切ではない。トリガーポイントが存在する場所は基本的にfasciaであると想定しているため、治療部位検索の上でトリガーポイントという用語は本書では用いていない。さらに、fasciaの異常(例:炎症性、mechanically-insensitive afferentsによる機械的痛覚過敏、滑走性・伸張性障害)による症状を包括するための概念としてもトリガーポイントだけでは不十分である。』

鍼治療における神経損傷を考える

このテーマは巨人軍、澤村投手の鍼治療による長胸神経損傷の報道と、それに対する鍼灸業界からの質問状という一連の騒動がきっかけです。なお、本件は医道の日本11月号で特集が組まれました。そして回答は11月9日、巨人軍から提示され、一件落着となりそうな状況です。

写真は月刊誌の医道の日本と特集の表紙です。また、サンケイスポーツさまの記事を3つリンクさせて頂きました。

ブログでは、長胸神経に関係の深い筋肉である前鋸筋と、その前鋸筋上にあるとされている経穴(ツボ)の「淵腋(エンエキ)」と「輒筋(チョウキン)」についても少し調べてみました。


私が鍼灸の専門学校に在籍していたのは2011年4月からの3年間でしたが、施術で最も注意することは気胸(刺鍼により肺を損傷させること)でした。肺に次いで注意する臓器は腎臓であり、動脈などの太い血管も当然注意しなければならないものです。また、乱暴な手技も事故につながる行為です。

施術では解剖学の知識をベースに、患者さまの体格やその時の状態から、刺鍼ポイントの安全な方向と深さを判断したうえで鍼を刺入します。これを守って手技を行えば、刺鍼による事故を防ぐことができます。

一方、鍼通電療法という授業の中では、筋肉だけではなく「神経パルス」という、顔面神経や脛骨神経などに対する施術方法を習っていました。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上記は教科書からの転載です。脛骨神経に対する施術目的(適応)を見ると、『腰部神経根症の放散痛、坐骨神経痛に対して治療対象となる』となっています。
上段右図の右上の★★マークは、3段階の2番目の難易度であるという意味ですので、脛骨神経への施術は中程度ということです。また、下段は膝下部の断面図です。腓腹筋(ふくらはぎ)と深部にある膝窩筋の間に脛骨神経がありますので、ある程度の深さに鍼を刺入する必要があります。

鍼通電療法で最も一般的なものは、「筑波大学式低周波鍼通電療法」です。Wikipediaで調べたところ、種類について、以下のような分類が出ていました。

・皮下パルス(皮下結合組織を対象とする)
・筋パルス(筋組織を対象とする)
神経パルス(末梢神経組織を対象とする)
・反応点パルス(対象を厳格には定めず経穴部、圧痛点などを対象とする)

問題となっている長胸神経は前鋸筋を走行している神経であり、筋肉に鍼を刺入する以上、絶対に神経に当たらないということは言えません。また、当たるとすれば、絶対に傷つけないということも言えないと思います。
「実態はどうなんだろう?」と思い、鍼治療による神経損傷(長胸神経以外を含む)の情報をつかむため、試しに、自由に投稿できる質問サイトを検索してみることにしました。具体的には
Yahoo知恵袋」で【】を検索ワードにして、過去3年間(2014年11月11日-2017年11月11日)について調べてみました。

「質問内容のタイプ」は「方法・やり方」と「理由・原因」で、それぞれ検索したところ、合計で1,041件が抽出されました(ただし、「方法・やり方」と「理由・原因」両方で抽出されたものがあるため、実際の数は1,041より少ない数です)。

そして、この総数に対し、ある条件で整理したところ、5件が浮かび上がりました。重複は1つあり、また注射による採血原因の神経損傷を除外した残りの数が5件ということです。
なお、「ある条件」とは、刺鍼における激痛もしくは電撃痛」、および施術後のしびれ」が含まれていることです。

 分かりずらい表なので文章にて補足させて頂きます。

5件のうち、治療目的は「不明」の1件を除き、全て腰痛を含んでいました。また、刺鍼時の痛み3件で、目立った刺鍼ポイントは膝の裏腰部でした。一方、施術後の問題4件で主に腰下肢になります。また、5件のうち電気バリ(鍼通電療法と思われる2件でした。
全体的な印象としては、腰神経叢から出て、大腿後面、膝裏を通り足に達する坐骨神経(膝よりやや高い位置で外側へ向かう総腓骨神経と内側に向かう脛骨神経に分岐)が、特に注意を要する末梢神経ということがわかりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらは実際の解剖写真です。これを見ると坐骨神経は1本ではなく、2本になっていることが分かります。膝よりやや高い位置で、1本は外側へ向かう総腓骨神経に、もう1本は内側に向かう脛骨神経に分岐することになります。


次に病院で医師が行っている「筋肉注射」について調べてみました。
以下に書かれた手順は「臀部上方外側中臀筋部:片側臀部上外1/4の部位」であり、『看護技術wiki』さまから引用させて頂いたものです。

 

臀部上方外側中臀筋部:片側臀部上外1/4の部位の場合 
①患者さんに説明を行う
②うつ伏せになってもらいズボン・下着を下げる
③穿刺部位を消毒をする
④利き手で注射器を鉛筆を持つように持ち反対の手で穿刺部位が張るように引っ張る
※穿刺部位に到達後張っている手を離してもよい
⑤90度の角度で穿刺する
血管や神経に入っていないことを確認する
 ※患者さんの訴え(足のしびれ)+内筒を引いて血液の逆流がないか確認
  血管または神経損傷の疑いがあるときは一度抜きやりなおす
⑦薬液を注入する
⑧穿刺部位をもむ(薬剤によってもまないこともあり)
 ※自分でもむのは困難な部位であるため、看護師にてもむ
  理由 薬剤を早く吸収させる為・硬結を防ぐため・痛みを和らげるためにマッサージする

注射針と鍼灸の鍼は目的も特徴も全く異なりますので、その違いを明確にしなければなりません

下記の表は「注射針」と「鍼」を比較したものです。太く、硬く、切るための機能をもった注射針に比べ、鍼灸の鍼で神経を損傷させることは簡単なことではないと思います

前鋸筋について

 画像出展:「肉単」

淵腋(エンエキ)と輒筋(チョウキン)について

 

画像出展:「新版経絡経穴概論」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この2つの経穴(ツボ)をどんな時に使うのかは様々です。

現代鍼灸では上段の図(「肉単」)に説明されているように、前鋸筋の別名は「ボクサー筋」とのことなので、ボクシングあるいは野球、バレーボールの選手などでは、この前鋸筋の疲労をとって軟らかい筋肉にすることが求められると思います。

一方、東洋医学に基づく鍼灸治療の本をみると、胸脇苦満(肋骨の下部が膨満し、圧迫感があって苦しい状態)や肋間神経痛、呼吸器疾患(肋膜炎、肺炎、気管支炎)などが主治にあがっていました。

まとめ

鍼治療における神経損傷のリスクを回避するために行うことは次の3つだと思います

1.刺鍼ポイントの近辺に太い神経が走行している場合、その走行を把握する。

2.乱暴な手技は絶対に行わない。

3.万一、電撃痛あるいは激痛が起きた場合、神経損傷のリスクを考え刺入を止め、一度抜く。

小児鍼

最近、小児鍼についてのお話を頂くことがあるため、代々木の日本伝統医学研修センターで学んだことに加え、専門学校時代の教科書や小児鍼について書かれた本も、一度読んでみようという気持ちになりました。

 

これは、懐かしい教科書です。

小児鍼は鍼灸の世界では「特殊鍼法」という分類に入っています。以下、教科書からの引用です。
『小児鍼とは、普通の毫鍼を刺入する刺鍼法と異なって、軽度の皮膚刺激を主とした鍼法である。対象は、生後20日から5、6歳ぐらいまでの乳幼児である。小児鍼は、術式から接触鍼法、摩擦鍼法、刺入鍼法に大別されている。刺激量は、施術部位が発赤や発汗する程度を基準として行う。』


接触鍼法
『一般に毫鍼が用いられるが、集毛鍼、振子鍼、バネ式小児鍼等も使用される。毫鍼によるものは、下の図のように鍼体を母指と示指でつまみ、鍼尖を少し出し、手首で加減しながら直角に皮膚にわずかに接触されるように行う。刺激の度合いは、鍼尖の「出し方」の長短、「当て方」の強弱等で調整する。この方法の大切なことは、手首を振るようにして、鍼尖が皮膚に触れたら、弾くようにリズミカルに移動させることである。鍼尖を皮膚に接したまま移動させると、皮膚に損傷を与えやすくなるので注意する。』

 

当院の鍼は1番(0.16mm)が大部分ですが、腰殿部では3番(0.20mm)や5番(0.25mm)も必要に応じて使います。

 

画像出展:「はりきゅう実技基礎編」(医道の日本社)

摩擦鍼法
『下図のような形の鍼を用いて、皮膚を軽い力で触れるように摩擦する方法である。施術時に、皮膚を軽く引っ張って皮膚を緊張させて行う方法もとられる。』


刺入鍼法
『きわめて細い毫鍼を浅く速刺速抜する方法で、刺入深度は1~3分(3~9mm)程度である。』

代々木での小児への治療は、特別な小児鍼は使わず、年齢に関係なく使用する鍉鍼(ていしん)という刺さない鍼を用い、「摩擦鍼法」を主に時にツボを軽く圧迫するような手技等を組み合わせて使っていました。

アトピーなども鍉鍼を使うと赤みが軽減されます。患者さまにも自宅で鍉鍼することをお勧めしていました。
素材はチタン。太さは筋の大きさで使い分けます。また、両端の大小は大は筋を押し、小はツボを押す時に使います。       

滑りが悪い場合は、日本手拭を置いてその上から行います。 

大師流小児鍼

小児鍼で全国展開している団体に「大師流小児鍼」があります。創案者は谷岡捨蔵という大阪の先生で、129年の歴史をもつ代表的な小児鍼です。
図書館の蔵書検索で、「わかりやすい小児鍼の実際」という本があったので、さっそく借りて読んでみました。その中で、特に重要であると思ったことをご紹介させて頂きます。

 

著者:谷岡賢徳氏

出版会社:源草社

『鍼治療の作用は、生体の持っている自然治癒力を助長することにあるわけであるから、小児鍼においてはほとんどの疾病にその効果が認められる。特に小児は生命力が旺盛であるから、ほんの微細な鍼刺激で驚くほどの効果が得られる。』
小児鍼は「気持ちよい」が第1条件である。気持ちがよければ、子供の方からすすんで来院してくれる。気持ちよい鍼をするには、子供の皮膚を読めなければならない。「柔らかい皮膚には弱刺激、硬い皮膚には強刺激」が原則である。硬い皮膚の子供は、年齢相応の刺激でも、くすぐったく感じたり、ものたりなかったりする。逆に柔らかい皮膚の子供は、年齢相応の刺激でも痛く感じてしまうものである。同じ年齢の子供でも、柔らかい皮膚には弱い鍼をし、硬い皮膚には強い鍼をする。』
『大人に気持ちよくても、子供にも気持ちがいいとはかぎらず、たいていの場合は子供は大人より十倍以上弱い刺激が適するものである。
治療効果の判定
・治療中に眠くなる。
・治療後にもっと治療してほしいという。
・治療後の帰宅途中に寝てしまう。
・治療後にお腹が空く。
・翌日の表情が明るい。

当院の小児鍼
小児鍼の対象
・基本は小学校就学前までです。(「おすわり」が可能となる生後8ヶ月位からを想定しています)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「ビジュアルノート」(医療情報科学研究所)

治療概要
・鍼は鍉鍼を用います。手技は「摩擦鍼法」が中心です。
・ツボはまだ曖昧なため、経絡の流れを整えることが治療の目的になります。実際には動いてしま

 うので難しい面はありますが、狙いは明確にします。
・経絡は腎経(足少陰)、脾経(足太陰)、肺経(手太陰)になります。腎経、脾経は足部から膝

 へ、肺経は肘から手首の部位に鍉鍼を行います。

お腹背中も重要な部位です。お腹は鍉鍼の重さを利用して、「の」の字を描くように、背中は

 上下両方向に鍉鍼を使います。

・特にストレスが強い場合は、頭部も加えます。手技は頭頂部と側頭部に対し、前(顔)から後頭に

 向かって行います。

※鍉鍼について詳しく説明された資料とサイトをご紹介します。

左をクリックすると「てい鍼の使い方マニュアル」が表示されますが、

これは 『手づくりてい鍼どっとこむ』というサイトを立ち上げられている、

小越建二先生の資料です。

YNSA(山元式新頭鍼療法)

患者さまのお家族が、月刊誌「壮快 2012.4(マキノ出版)」の記事の切り抜きを持ってこられ、「この、YNSAって知ってますか?」と聞かれました。
加藤直哉先生が書かれた「慢性疼痛・脳神経疾患からの回復 YNSA山元式新頭鍼療法入門」は持っており、ざっとですが一読したことがあったため、「本は持っているのですが、よく理解できていません。もし、ご興味あれば1ヵ月程お時間を頂ければ、熟読し治療に使うことを考えてみたいと思いますが。。」とお伝えしました。

 

著者の加藤直哉先生はYNSA学会の副会長です。

ところで、「壮快 2012.4」の記事に書かれていたことは以下の通りです。
特長
・古来のツボとは関係なく、山元氏が30年以上かけて発見し検証を重ねてきた治療点を使って全身

 の機能を調整する。
・高い確率で即効性が期待できる。
・効果は1日~1週間で減退するが治療を繰り返すことで、従来以上の回復が期待できる。
・十二脳神経、十二内臓点、脳点、三感覚点などがある。
何故、YNSAか
・中国式の頭針療法では納得できる効果が得られなかった。
・突破口は触診中、ツボに関係ない部位を触ったときに「左腕に何かを感じる」といい、わずかに

 マヒの左手が動いたのがきっかけ。その後、丁寧な触診と患者の反応によって見出していった。

一方、ネット検索で興味深いサイトを見つけました。

 

 

 

 

YNSAを解説したPDF資料がダウンロードできるのですが、そのダウンロード数は210ヵ国、計17,414で、その国別内訳のTop10は以下のようになっています。ご覧の通り米国が圧倒的に多く、約27.5%を占めています。
 1.アメリカ合衆国 4803
 2.インド 1036
 3.オーストラリア 529
 4.スペイン 429
 5.カナダ 413
 6.イスラエル 406
 7.ブラジル 393
 8.イタリア 367
 9.インドネシア 366
 10.イギリス 323
 ちなみに、中国は11位の287、日本は14位の212です

YNSA概要

YNSAは初級と中・上級の2段階があり、後者は首診をベースに診断と確認を行ないながら治療を進めるというもので、初級をマスターすることが中・上級に進む前提となっています。

下記の図は、その概要をまとめたものです。そして、その下の3つの図は【初級】で必須となる、「基本点」、「感覚点」、「脳点」になります。

 

「F」は耳の後ろにあるため見えません。


今回、頭鍼に対する理解不足を補うため、近所の図書館から以下の本を借りて、興味ある部分だけを拾い読みしました。個人的には、頭鍼・頭皮鍼が1970年に出てきた新しいもので、まだ50年も経っていないことを知り、意外に思いました。

 

著者は淺野周氏、出版会社は三和書籍です。

内容は高度なため、鍼灸師でないと難しいと思います。

『一般的に頭鍼は、脳卒中や脳障害者を治療する鍼法と思われている。日本では田中角栄が、最初に頭鍼治療を受けた有名人だからだ。しかし方氏は、最初から頭鍼を脳卒中治療には使ってはいなかった。頭鍼に限らず、中国には眼鍼、耳鍼、鼻鍼、口鍼など、さまざまな流派があり、韓国の高麗手指鍼も手を人体の縮図と考えるため、現在では全息療法と一まとめにされている。』


頭鍼は中国で1970年から徐々に使われ始め、その後、国家臨床医師が常用する治療方法になりました。上記に登場する方氏とは方雲鵬氏になります。そして方氏と並んで頭鍼の権威であるのが、焦順発氏になります。また、焦氏の頭鍼は西洋医学の脳機能局在に基づいた頭鍼のため、伝統的穴位とは関係がありません。そこで1984年の世界保健機構西太平洋地区-鍼灸穴名標準化会議にて、頭鍼穴名国際標準化方案が検討されることになりましたが、これは焦順発氏の頭鍼療法を伝統的中医理論に適合させるというものでした。こうして1989年11月、国際標準鍼灸穴名科学組会議で正式に承認され、国際標準頭穴が世界の鍼灸界に推薦されるに至りました。
 この3つの頭鍼以外にも、林学倹(上海)、湯頌延(上海)、朱明清(北京)などの頭鍼がありますが、いずれも焦氏と方氏の系統を引き継ぐものとされています。

今回は、3つのうち焦氏と国際標準の2つについて、その概要をご紹介します。

焦氏の頭鍼です。

国際標準の頭鍼です。

下記の図は、経絡治療の経穴(ツボ)です。このように頭部にも多くの経穴があるのが分かります。また、中国の古い文献には、「十二経脈、三百六十五絡、その血気はすべて顔に上がり、空竅へ走る(霊枢・邪気臓腑病形篇)」や「頭は諸陽の会であり、百脈の竅である(鍼灸大成)」など、人体の経気は経脈などによって頭面部に集中していることが指摘されており、頭鍼という治療法が生まれたことは不自然なことではないと思います。

注)「空竅」は頭の中という意味です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

首から顎にかけての、天突、廉泉、承漿は「任脈」に含まれるものです。これに「督脈」、「膀胱経」、「小腸経」、「三焦経」、「胆経」、「大腸経」、「胃経」の計8つが頭にツボを持っています。

前庭系と筋緊張

このテーマを取り上げた理由は2つあります。

1つは前庭系には頚部と背部などの抗重力筋(姿勢維持に関与している筋群)を緊張させるメカニズムがあることです。これは筋肉の硬結に対して施術を行なう鍼灸治療にとって非常に重要です。
そして、もう1つは前庭系が触覚系や体性系とともに小児の脳性麻痺に大きく関わっているためです。後者については、週2日勤務で現場に入っている「訪問鍼灸・マッサージ」のプラナ治療院が小児障害児マッサージのサービスを提供することになり、そのための講習を受けているという背景があります。

左をクリックすると、「日本小児障がいマッサージ普及協会」に移動します。

なお、ブログは前庭系を理解するために自己学習した内容のご紹介という感じで、ほとんどは「新・感覚統合法の理論と実践」と「人体の正常構造と機能」に基づいています。


前庭系の最大の仕事は、頭の位置や動きに合わせて抗重力筋の緊張を調節し、適切な姿勢とバランスを維持することですが、ほとんど無意識で行われるため、回転動作や激しい加速を受けるような状況以外は意識に上がるようなことはありません。以下、添付された図の番号に沿ってご説明します。

     「新・感覚統合法の理論と実践」の図を一部加筆させて頂きました。

①前庭神経核
前庭神経核は外側核、内側核、上核、下核に区分けされていますが、前庭器の種類と明確に対応しているわけではありません。内側核と上核は主に半規管からの入力が強く眼球運動核へ出力を送ります。また、内側核は更に頚髄に出力しています。外側核と下核は半規管と耳石器からの入力を受け、主に脊髄へ出力を送ります。


②抗重力筋の緊張の調節
前庭系の第一の働きは、頭の位置や動きに合わせて抗重力筋の緊張を調節し、適切な姿勢とバランスを維持する土台を作ることです。この働きには、前庭神経核から脊髄に下行する前庭脊髄路が関与しています。これには外側と内側の二つの経路があり、外側前庭脊髄路は主に伸筋(抗重力筋)を収縮させ、屈筋を弛緩させるように作用します。一方、内側前庭脊髄路は頚の筋肉のコントロールに関係しています。

筋緊張の調節は自動的に行われ、前庭脊髄反射と呼ばれています。また、前庭系は全身の筋に一定の緊張を与えるように作用しています。


③姿勢・平衡・運動の自動調節
我々は日常生活において、特に意識することなく体のバランスをとり、思ったように運動を行っています。これは大脳皮質の運動野から出発し、意図的な運動を指令する「錐体路系」と、錐体路系以外の領域で、それぞれが関係性をもち、意図的運動をスムーズに行うために細かな調節を行う「錐体外路系」があります。前庭系も小脳を介して関係性をもっており、姿勢と平衡、運動の自動的な調節に寄与しています。なお、錐体外路系は解剖学的に特定の部位を指すものではなく、近年では「錐体外路系」という呼び方に疑問が投げかけられています。


④眼球の動きの自動調節
前庭系の第三の働きは、頭の傾きや動きに合わせて、目の動きを自動的にコントロールすることです。歩きながらビデオ撮影すると画面がブレてしまいますが、我々が歩いたり、頭を回したりしても景色がブレたり流れたりすることはありません。これは、前庭受容器と首の固有受容器からの情報が視運動系に送られ、頭の動きに応じて目の動きを補正しているからです。前庭系は、いわばビデオカメラの手ブレ防止装置のような役割を果たしているといえます。


⑤覚醒への影響
大脳皮質の覚醒をコントロールする脳幹網様体には、あらゆる感覚情報が流れ込んでいます。流入する感覚刺激の質と量によって網様体の活動は変化し、その変化は大脳皮質に伝えられて意識水準が調整されます。前庭感覚の情報は興奮性にも、抑制性にも強く働き覚醒に影響を与えます。前者の興奮性は遊園地の回転性の乗り物であり、後者の抑制性は暖かく気持ちの良い日に電車の座席で揺られているような場合です。


⑥自律神経系への影響
前庭神経核から網様体を経由して自律神経核群にも情報を送っています。前庭系と自律神経系の密接な関連は、乗り物酔いからも明らかです。前庭受容器からの刺激は心拍数の増加、冷汗、吐き気、嘔吐などの自律神経症状をもたらします。これらは前庭自律神経反射と呼ばれています。

 

鍼灸治療における局所治療のポイント

抗重力筋を収縮させ、頚の筋肉をコントロールし、全身の筋に一定の緊張を与えるということは、前庭系に起こった異常は不必要な筋緊張の原因になると考えられます。また、前庭神経核は自律神経系にも影響を及ぼしており、非常に重要な治療ポイントです。ツボは翳風(えいふう)を第一選択と考えます。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほぼ中央、耳たぶの下にあるのが翳風(えいふう)になります。

画像出展:「経絡マップ」医歯薬出版

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらも中央付近のツボが翳風です。近くに副交感性の迷走神経、舌咽神経が通っています。

画像出展:「経絡マップ」医歯薬出版

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「経絡マップ」医歯薬出版

 

上記の表は左から「神経の名称」ー「支配の領域」-「相関の経穴」になっており、中段下方に「内耳神経」があります。(知)とは知覚性をさしています。内耳神経は前庭神経と蝸牛神経から構成されています。そしてピンク色にマーカーされているのが、前庭神経と「相関の経穴」欄にある5つの翳風ですが、この5つの中で顔面神経、舌咽神経、迷走神経は、(混)混合神経であり、知覚性・運動性・自律神経の副交感性をもった神経です。このように翳風というツボは、自律神経の副交感神経に対しても広く効果を及ぼすことが可能であり、自律神経を意識した施術を行う場合に特に重要なツボとなります。

鍼通電療法を検討する(後編)

鎮痛効果のメカニズム
添付した図は「鍼通電療法テクニック 運動器系疾患へのアプローチ」のp29図4-1(鍼の鎮痛メカニズム)に一部加筆したものです。①~⑦まで番号をつけていますので、この番号に沿ってご説明をします。なお、この鎮痛メカニズムは通常の通電を用いない鍼治療についても同様です。

①ポリモーダル受容器
受容器とは外部からの刺激を受け、その感覚を脳に伝える受付係のような役割をもったものです。
マッサージでは皮膚を撫でたり、押したりします。怪我した時などは氷で冷やします。また、足が冷たくて寝つかれない時は湯たんぽなどで温めます。
このように外部からの刺激には色々な種類があり、それに反応する受容器の多くは皮膚や筋肉内にあります。そして、刺激によってタイプの異なる受容器が存在しています。
図に出ている「ポリモーダル受容器」の特徴は皮膚、筋はもちろんですが、それ以外に腱、靭帯、骨膜などにも存在しています。また、刺すような刺激(機械刺激といいます)の他、熱の刺激にも反応する受容器で、機能的にも非常に汎用性の高い受容器です。つまり、鍼の機械刺激にも灸の熱刺激にも反応するため、鍼灸にとって最も重要であると言われています。


②感覚神経から脊髄へ
刺激を受けた受容器は刺激を電気信号に変換します。そして、脳へと繋がる道である感覚神経に渡されます。この後、電気信号は脊柱(背骨)の中で手厚く守られている脊髄に渡されるのですが、そこまでの道である感覚神経は末梢神経の仲間です。なお、脳から筋肉などに向う運動神経や血圧調整など人が意識することなく機能している自律神経も末梢神経に含まれます。


③脊髄から脳へ
電気信号は脊髄の後根を入口とし脊髄内部に入っていきます。脊髄は脳と同じ仲間の中枢神経ですが、脳の作りとは異なり、内部に灰白質と呼ばれる神経細胞群があり、周りを白質と呼ばれる神経線維が存在しています。そして、周りの神経線維群は電気信号を伝えるための道になっています。「鍼刺激」が変換された電気信号は、前側索エリアを通る脊髄網様体路の中を通って脳に向います。


④脳で起きていること
脳側の入口は脳幹です。脳幹は延髄・橋・中脳を含んでいますが、上方には大脳があり背側には小脳があります。脳幹には生命の維持に重要な呼吸、循環、排尿などの自律神経を調節する自律神経中枢が存在しています。また体性神経(感覚神経+運動神経)および内臓からの求心性情報がインプットされ、さらに大脳からの下行性情報もインプットされます。そして、脳幹の自律神経中枢はこれらの情報を統合し、様々な器官の機能に影響を及ぼします。
脳幹は間脳と共にホメオスタシス(生体の恒常性維持)調節の中核といえます。体表に現われた不調や問題個所を鍼灸で刺激することは、脳幹・間脳のホメオスタシス調節に働きかけます。そして身体を偏りのない健康状態に整えます。このことは鍼灸治療の狙いである「自然治癒力を本来のあるべき姿に戻す」ということに通じるものではないかと思います。


⑤下行性痛覚抑制系
中脳中心灰白質は第3脳室と第4脳室を結ぶ中脳水道(脳脊髄液の通路)を取り囲む神経細胞の集まりで、延髄の大縫線核や傍巨大細胞網様核とともに下行性疼痛抑制系の起始部です。また、体性神経や自律神経系、視床下部などの上位中枢と機能的に密接な連絡をしています。


⑥視床下部
視床と視床下部を合わせて間脳といいます。間脳は中脳の前方に続く部分で左右の大脳半球に挟まれた形になっています。機能的には体温・血糖・体内水分・下垂体ホルモン分泌調整の他、本能および情動行動の中枢が存在します。視床下部-下垂体系はβ-エンドルフィンによる鎮痛作用に関与しますが、内分泌系の中枢でもあるため、鎮痛だけでなく副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)によるコルチゾール(副腎皮質ホルモン)の分泌促進にも関係していると考えられています。


⑦脊髄後角(遠心路)
鍼刺激による情報は、脳内での情報処理を経て様々な器官に向けて発信されます。神経の終末には化学伝達物質と呼ばれる化学物質が蓄えられており、これらの物質が放出されることで情報が伝達されます。例えば、⑤の下行性痛覚抑制系でセロトニン神経とノルアドレナリン神経は鎮痛系の遠心路であり、脊髄後角に投射し痛覚の伝達を抑制します。

 

麻痺した筋肉への治療効果
今回の1番の検討目的は、片麻痺患者さまの麻痺足の浮腫みを改善する手段として低周波鍼通電療法はどうか。というものでした。鍼通電療法では電気刺激を筋肉へ誘導するものとして鍼が存在しており、刺激量を電流、周波数、時間の3点から客観的、持続的、安定的に刺激を供給できることは大きな利点です。
また、筑波大学の理療科教員養成施設が展開している「筑波大学式低周波鍼通電療法」に関する紹介文章には、筋肉のこわばり(脳卒中後遺症、脳性麻痺)とあり、鍼通電療法の有効性を公に示すものとなっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

筑波大学理療科教員養成施設(筑波大学大塚キャンパスは東京都文京区大塚にあります)

注)2017年11月14日:ホームページのアドレスが変更になっていることを知り、新しいものに変更しましたが、ご紹介したかった【「筑波大学式低周波鍼通電療法」に関する文書】を見つけることができませんでした。一方、J-Stageにて以下の論文がありましたのでアップさせて頂きます。 

ダウンロード
鍼麻酔から低周波鍼通電療法まで.pdf
PDFファイル 2.2 MB

結語
繰り返しになりますが、低周波鍼通電療法の利点は「刺激量を電流、周波数、時間の3点から客観的、持続的、安定的に供給できること」と考えます。
これは従来の手法である置鍼、単刺、雀啄などと異なるものではなく、特に短い時間で筋肉を緩める手段として有効な手法だと考えますので、注意点、特にペースメーカーの有無の確認を忘れず、状態、状況に応じて利用することを考えたいと思います。

鍼通電療法を検討する(前編)

経緯
現在、私は自宅近くにある訪問鍼灸・マッサージのプラナ治療院で週2回、仕事をしています。
患者は高齢者がほとんどですが、中には脳卒中後遺症による麻痺の患者さまやパーキンソン病などの中枢神経系の障害をもった患者さまもいます。
30分という治療時間を考慮し、標治に重きをおいています。また、硬くなった筋肉を緩めるには、置鍼時間を長くとったり、雀啄などの鍼の手技を加えたりするのが一般的なのですが、麻痺により動かないという状態の筋肉でも効果をだすため、さらに良い方法を探していました。
そこで、候補に上がったのが「低周波鍼通電療法」です。専門学校時代にこの手法の授業を受講しており、復習の目的で学校で使っていたものと同じ装置も購入していました。また、プラナ治療院には携帯できる小型の通電装置を使っている仲間もおり、その評判も聞いていました。
しかしながら、専門学校卒業後は経絡治療という東洋医学に基づく手技だけに取り組んでおり、鍼通電療法からは完全に離れていたため、まずは学校で使っていた「鍼通電療法テクニック 運動器系疾患へのアプローチ」を復習することから始めることとしました。


電気刺激法の起源
電気を使った痛みの治療の起源は古代エジプト(紀元前3000年)といわれています。これは墓石に電気ナマズの彫刻が残されたことが由来となっています。また、古代ギリシャの哲学者のアリストテレスも電気エイが痛みを和らげることを伝えています。
興味深いのは、電気エイの電圧は40~50Vで現在の低周波装置に近いということです。なお、電気魚の活用はヨーロッパでは18世紀まで続きます。
1744年には約100年前に発明された静電気装置をベースに人工的な電気が医学に応用されました。そして19世紀になると、アメリカで歯痛に電気刺激が有効であることが知られ、多数の臨床試験が行なわれました。こうして1858年にはアメリカの外科医によって最初の電気刺激装置の特許が取得され、その技術はヨーロッパへ伝えられました。


鍼通電療法の起源
初めて鍼に電気を通して治療を行ったのは、1825年にフランスの医師が日本や中国から貿易によってもたらされた鍼に通電を行ったのが最初であるといわれています。


鍼通電療法の始まり
1965年に東京教育大学附属理療科教員養成施設(1978年から筑波大学理療科教員養成施設)の芹澤氏らがパルスジェネレーターを開発し、運動機能に及ぼす影響について報告しています。
また、1966年にはペインクリニックにおいて安全な鎮痛方法として直流による鍼通電療法が既に紹介されています。
一方、鍼麻酔ではある程度強い刺激を20分間程加える必要があり、そのための手段として電気を使って鍼刺激を継続的、安定的に行う装置が開発されました。
1972年にはアメリカのニクソン大統領が訪中した際に、中国の鍼麻酔が「ニューヨークタイムズ」に報じられ、大統領の専属医師により鍼麻酔の驚くべきエピソードが欧米に衝撃を与えました。
報道の直後から、「サイエンス」などの世界の科学雑誌には、多数の鍼麻酔の効果に関する報告が掲載され、効果の是非に関する議論が巻き起こりました。そして、その議論の決着に大きな指針を与えたのが、1973年のオピオイド受容体の発見であったといえます。
オピオイド受容体は中枢神経に存在し、麻薬様物質と特異的に結合するもので、研究者たちは鍼刺激で痛みが和らぐ仕組みも、この受容体を通して生じるのではないかと考え研究を進めていましたが、ついにその仮説は科学的に証明されるに至りました。
この科学的発見は、その後、鍼治療を世界的に普及させることに大いに貢献しました。
1980年代になると鍼通電刺激は外科手術で使われる鍼麻酔としてよりも、むしろ運動器系や循環系、神経系、婦人科系、泌尿器系、精神領域などの様々な症状に効果があることが知られ、その結果広い分野で鍼通電刺激が利用されるようになっていきました。
筑波大学理療科教員養成施設では1980年代に入って多くの患者に対して鍼通電療法を行い、多数の臨床例を発表しています(「医道の日本」49巻12号~54巻6号に掲載)。

 

メリットとデメリット
従来の鍼治療は、手技操作によって行われるため、客観的に刺激量を測ることは困難でしたが、鍼通電療法は時間、周波数、電流量を変えることで定量的に刺激量を変化させることができます。
刺鍼ポイントや深さ、刺鍼方向については、鍼灸師のスキルに依存しますが、鍼による刺激については客観的に把握できるため、治療法の平準化やエビデンスの作成という点においてメリットがあります。
また、雀啄のように鍼に刺激を加えながら、置鍼のように長い時間持続させることができるため、筋肉への刺激という意味では、安定的、効率的に行えるという点もメリットです。
鍼通電療法では鍼は筋肉まで電気を誘導する役割をはたしています。「まるで小人がハンマーでコツコツ叩いているようだ」と表現された人がいるようですが、従来の鍼治療にはない心地よい感覚を得ることができるのも特徴です。
なお、筋肉の刺激による効果は、一般の鍼治療も同様ですが、筋肉の血行を改善し硬くなった筋肉を軟らかくします。また、筋肉を刺激することで筋肉を支配している神経に含まれている求心性神経を興奮させ、中枢神経に信号を送りますが、この信号は鎮痛系を活発化させたり、反射によってホルモンの分泌や自律神経を調節したりします。

一方、デメリットとしては装置が必要であるということです。また、下記の「安全確保のために理解しておく事」に書かれた内容ですが、ペースメーカーを使っている患者さまには使えないなどの、鍼通電療法ゆえの守るべき注意事項があるということです。

 

安全確保のために理解しておく事
鍼通電療法は電気を用いるため、電気による過誤の可能性を考慮して安全管理を行わなければなりません。
ペースメーカー
ペースメーカーを付けられている患者さまは、鍼通電療法は絶対禁忌であり、仮に依頼されたとしても絶対に行ってはなりません。それは、ペースメーカーを使用している場合、鍼通電療法を行うとペースメーカーの動作に影響が現われることが報告されているためです。
漏れ電流
漏れ電流とは、電子機器から通常の電源ラインを通らずに外部に漏れ出す電流です。この漏れた電流が人体を通過するとショックを起こす原因になります。
漏れ電流が発生する可能性は、他の電子機器と組み合わせて使う場合が考えられるので、心電図などの電子機器がつながっている状態では鍼通電療法は避けなければなりません。
しかしながら、どうしても電子機器と一緒に使用しなければならない場合は、乾電池式の装置の方が安全性が高まります。これは装置から生体への電流の流れを独立させることができるため、電流の漏れを少なくすることができるためです。