発達障害児の言語獲得

ありがとう、ヘンリー」というブログは、発達障害児と介助犬の実話に基づくものですが、その本から「自信」、「自尊心」とともに言語に問題を抱えた子供にとって、「言語」が非常に重要であることを知りました。
言語といえば、言語聴覚士が専門とされている分野ですが、言語障害、特に言語獲得ということについては、ある程度の知識を持っていた方が良いと思い、主に実践的な内容が書かれた本を探すことにしました。

 

左が今回、勉強させて頂いた本です。

著者:石原幸子・佐久間 徹

出版:二瓶社

 

 

 

応用行動分析学について解説されています。

 

 

 

ABA専門用語の説明がされています。


まず、本書の趣旨を知っていただくのが良いと思いますので、著者のお一人である石原先生が書かれた「はじめに」を掲載させて頂きます。
『今から14年前、三歳直前のあいちゃん(仮名)は、さくま先生の指導する障害児の相談室に来ました。自閉症と診断された他の多くの子どもたち同様に、あいちゃんも重度の言語発達遅滞を示していて、お父さん、お母さんはとても心配されていました。さくま先生は、以前からずっと、応用行動分析を柱とするフリーオペラント法での指導を実践し、今も続けています。
フリーオペラント法は、ロバース[O. Ivar Lovaas]のオペラント条件づけの原理を応用した、自閉症児の言語獲得のための行動療法を出発点にしたものです。コスト面の改善、般化の貧弱さの改善、脳障害説へのこだわりからの脱却、などを目指して辿り着いたセラピーです。

さくま先生は、多くの論文、翻訳本などを出していますが、フリーオペラント法については、“広汎性発達障害児への応用行動分析(フリーオペラント法)”(2013、二瓶社)がはじめてのものです。
「障害児に関する本は、読み手が誤解しても、書き手が誤解を生むような記述をしても、障害児がその愚かさの犠牲になる。それを考えると、本の執筆は、どうしても慎重になる。しかし、障害児からたくさんのことを教えてもらいながら、それをそのまま墓場まで持っていっては、子どもたちに申し訳ない。もっと勉強して、誤解されない記述が身に付いてから本にまとめるべきなのだが、すでに日本人男性の平均寿命を超える年齢になってしまった。折りに触れ、認知症のキザシを自覚するまでになっている。本を書くのはいまでしょう!」との思いで書いたものだそうです。

さくま先生は、この本がどのように読まれるか、とても心配していました。応用行動分析の行動変容力は結構強力なのです。今後さらに技術の改善が進むでしょう。それに引き替え、現在の私たちは、それを間違いなく正しく使う哲学を持ち合わせていない。本を読み、自分勝手に都合よくつまみ食いしたのでは、子どもたちは応用行動分析の犠牲者になってしまう。先生はいささか考えすぎと思われるほどの悩みようです。しかし私は、この本で一人でも多くの障害児に言語獲得してほしいと思っています。
相談室に来られたお父さん、お母さんに、さくま先生はことばの指導法だけでなく、子育ての知恵についてもいろいろなお話をします。たくさんの方に知ってもらえれば、障害児だけでなく、多くの子どもたちの子育てや成長に、きっと役立つはずです。さくま先生のたくさんのことばを、きちんとした形で残すことが、あいちゃんをはじめ、相談室に通ってくれた子どもたち、保護者の方々、これから子育てをされる世代への贈り物になると思います。

フリーオペラント法によるあいちゃんの言語獲得指導の要所要所で、さくま先生のお話を挿入しながら事例報告を書きました。本書は“広汎性発達障害児への応用行動分析(フリーオペラント法)”の実践編でもあります。言語獲得指導に取り組んでおられる皆さまのお役に立つことを心から願っています。』

 

ブログでは、目次のご紹介に続き、「フリーオペラント法」の1、2。続いて、あいちゃんへの2回目と69回目のセッションの様子。さらに、「あいちゃんの指導のまとめ」と「現在のあいちゃん」の前半部をご紹介しています。
また、最後に復習のような感じで、印象に残った個所をつまみ食い的に列挙させて頂きました。

目次
第一章 あいちゃんの言語指導のはじまり
 上手に教えてもらうのではなく、自分の経験から学ぶ
 あなたの声を聞いているよ
 よくわからないけど、こうしたほうがよさそうだ(知恵)
 人と同じことをすれば楽しい
 ことばの発達が最優先
 がまんする子どもは親や指導者が楽なだけ
 成長日記をつける
 療育は化学か?
 遊んで育つ、後片付けは遊びにブレーキ
 発達に大きく影響するものを優先
 静かな抱っこ20分
 社会性は実体験から身に付く
 教えなくてもできること
 親は見ているだけの方がいい


第二章 ことばの出現/発声模倣の拡大/遊びの発達
 ことばの訂正は御法度
 皮膚感覚の成長
 「手で食べる」は指先の運動発達に効果大
 集中とこだわり
 「叩く」は楽しく遊びたい気持ちの表れ
 不安の緩和

 

第三章 ことばの増加/人との関わり/自発的遊び
 社会への適応
 人の気持ちを理解する
 がまんできたらえらい?
 不適応行動の大半は好奇心から
 五感のアンバランス
 自力で学ぶ力を育てる
 「オカアチャ」と呼びました
 語彙数は増加速度より変化率に注目
 お兄ちゃんと遊びたい
 活発な喃語が発話に続く
 「オハヨウ」と入室

 

第四章 自発後の増大/認知的遊び/人とのやりとりへの発展
 不適応行動への対処
 子どもは自分の気持ちを伝えたい
 集団行動への参加
 お口もぐもぐで自主トレ
 パニックへの対処
 「親ばか」はそんなに悪くない

 

第五章 安定したことばの使用 ― 現在のあいちゃん
 好きなことを増やしていく
 食べ物の変化
 多彩な反応
 就学について
 あいちゃんの指導のまとめ
 現在のあいちゃん

フリーオペラント法―その1 
『無言語の自閉症児に言語獲得の道を開いたのは、1970年頃のロバースです。カルフォルニア大学の教授で、当時、世界中から注目を浴びました。しかし、子どもは連日、ロバースのセラピールームに親子で通い、週に30時間も訓練を受けるものでした。
若い頃、ロバースの本を読んでいて、訓練時間の長さにびっくりし、指導の人件費の概算をしてさらに驚き、日本でこんな事はできないと思いました。それが、フリーオペラント法を思いつくきっかけになりました。そして、この訓練時間の長さには基礎理論の応用の仕方に欠陥があるはずだと考えました。どんなに障害が重症でも、自分の経験から学ぶということをするはずです。野生の動物はみな、指導者なしで、生きる術を学んでいます。そんなに長時間の指導は明らかに非能率的です。
家庭でも強化随伴性が維持され、模倣行動の自発性を高める操作を加えると、1週間に1時間の指導で、遜色のない成果を出し得ることがわかったのです。
セラピー関係では、能率について議論されることはほとんどないようですが、セラピーは趣味や道楽の類ではなく、仕事です。能率を考えるべきです。
学ぶ力の弱い動物に教えるには、コツや技術が必要です。私たちの指導の拠り所は、動物実験の成果である行動分析です。指導のポイントを動物から教えてもらったのです。そのために、初期の頃には、障害児を動物扱いしているとの批判がひどかった。しかし、ことばの発達指導が絶望的だった頃、ちゃんと言語を獲得させることと、獲得できないままにしているのと、どちらが人間的か、議論の余地はないはずです。』

 

画像出展:「Alchetron

 

フリーオペラント法―その2 

『フリーオペラント法の大きな特徴は、言語理解に関して完全手抜きで進めることです。
これまでの言語に関する基礎研究では、言語能力は言語理解と言語表出の二面からできているとされています。しかも、言語理解が先行し、その後追いで、言語表出が発達するといわれてきました。
しかし、言語発達遅滞児たちは、逆を示しています。言語理解はかなりいいのに言語表出がゼロ、あるいは、かなり悪い子が大勢いる。それに引き替え、言語表出が良好な子どもたちに言語理解が悪い子どもは一人もいない。言語表出レベルに相当する言語理解を持ち合わせている。
この目の前の事実に注目するならば、言語発達促進の指導は、言語表出の方に注目すべきであり、言語理解は手抜きでいいことになる。事実、30歳代半ば頃、フリーオペラント法で音声模倣を形成しただけで、家庭で自発的に単語が出だす子どもを幾人も経験し、以来、言語理解を完全手抜きでやっています。その方が経過がいいのです。
障害児指導に模倣行動を取り入れる研究が内外に少しずつ出はじめています。モデルを示し模倣を誘導して強化子を随伴させるという手続きです。
1970年代はじめに模倣を取り入れたわれわれとしては嬉しい限りですが、それよりも、ここで紹介しているように、子どもの発声、子どもの動作をセラピストが模倣して子どもの模倣行動の自発を待つ方が、手間はかかりますが、はるかに良好な自発的模倣行動が出てきます。
あいちゃんも、ことばの意味に関しては一切教えるということなしです。化粧品会社のホームページを見て漢字をお母さんにたくさん聞きましたが、誰も積極的に教えていません」』

 

あいちゃんへの2回目のセッション(あなたの声を聞いているよ)
『お正月が明けて、二週間ぶりにあいちゃんがやってきました。布をかじっています。汽車のおもちゃを動かし、汽笛のボタンを押しました。おもちゃに全く興味がないわけではありません。アンパンマンの電話を鳴らすと、受話器を持って、「アイ」と小さな声が聞こえました。はじめて聞いた声です。セラピストもすぐに「あい」と繰り返します。

次にあいちゃんは滑り台に向います。滑り台を滑ったときに、くすぐりますが、なかなか声は出ません。抱っこしてジャンプしてみます。目が合って、ニコッとしますが、発声はありません。お母さんが座っている椅子によじ登ろうとするので、セラピストが抱っこで乗せてあげると、次は手を広げて待っています。座っているあいちゃんから見えないように隠れ、「あいちゃん」と呼んで、いないいないばぁのように顔を出すと、「アハハ」とはじめて大きな声を出して笑いました。顔を出したときにくすぐることを何度も繰り返すと、自分から出てきて、顔を押し付けたり、体をねじったりします。この間、かじっていた布が落ちましたが、全く気にしません。セラピストはあいちゃんからの要求にすぐに応じます。

ー お父さんとお母さんはさくま先生とお話です。
「ことばについて、もう少し詳しくお話しします。ことばは自分の声に対して相手から反応が返ってくるから発達します。その時、子どもを理解しようとする気持ちがマイナスに働いてしまいます。つまり、子どもの顔を見たり、目の動きを見て、“嬉しいのかな”“これが欲しいのかな”と考えていると、子どもの発声を聞き逃してしまう。子どもにとっては、声が無視されていることになる。ことばに敏感になって、“あなたの声を聞いてるよ”ということを子どもに伝えるにはどうしたらいいでしょうか。子どもが「アアア」と言ったら、「あああ」と答えれば、自分の声が相手に伝わっていることが、子どもにわかる。これが、音声フィードバックです。音声模倣ともいいます。これをここだけでなく、生活の中でもしてもらえたらと思います。

理由はよくわからないのですが、子どもは自分の発声と同じ発声が相手から返ってくると、楽しい気分になります。軽い躁状態を示します。何度も繰り返すと、楽しくなるために、次に、自分の方から大人と同じ声を出すようになります。動作に関しても同じです。動作模倣と呼んでいます。

自発的に発声模倣をするようになると、ことばの発達がはじまります。これを絵カードなどで発声を強要すると、必要以上に力のいった声になることがあります。余分な力の入っていない声はコントロールしやすい声になり、発話獲得の重要条件です」

このお話の途中で、あいちゃんの笑い声が聞こえ、お父さんたちもあいちゃんの様子をじっと見ています。プレイルームには水場があります。水を出して、スポンジを絞ってみるとあいちゃんも触ります。セラピストもすぐに水を出します。この後ずっと、水を出す、スポンジを絞る、を繰り返しました。セラピストは一切指示を出しません。
さくま先生のお話が続きます。
「ここでは叱ることはほとんどありません。お家でもできるだけ叱らないで、好きなことをさせてください。叱らないとわがままな子になると思われていますが、わがままは、後でいくらでも修正できます。ことばの発達を最優先にしましょう
さくま先生のことばにお父さんとお母さんはうなずかれました。ただ、このことは思ったより大変です。それをお父さんとお母さんはこの後ずっと守って下さいました。』

 

あいちゃんへの69回目のセッション(多彩な反応)
『11月の下旬になりました。69セッション目になりました。走って、あいちゃんがやってきました。ニコニコして、机の上の洗面器を見て「コエ」「アッタ」と言いながら、手で中の水を混ぜます。すぐに「イタ、イタ」「イコカ」と言いながら、キティちゃんを持ち、お母さんの手を引きます。おもちゃのレンジを触るので、「冷蔵庫もあるよ」とセラピストが見せると「ウィ、キティチャン」「アコ」と言いながら、マットの上に置きました。

セラピストがベビーカーも持って来ると、あいちゃんがキティちゃんを乗せました。「キティちゃん、行ってきます」とセラピストが声をかけ、押しはじめると「バイバイ」と言ってくれました。

お母さんに掃除機を持たせ「スースー」と掃除をするように要求します。あいちゃんもベビーカーに乗り「バイバイ、バイバイ」と繰り返します。「バイバイやね」とセラピストはすぐに答えます。「アイチャン、キティチャン」と言っています。「あいちゃん、キティちゃん、乗ってます」と返事をします。

セラピストがキティちゃんのスティック糊を持ってくるとそれを持って「アーイ、アーイ」と机に向います。「キティちゃん、猫こか」とセラピストが言うと「アーイ」と返事をしてから、お母さんの手を引いて、机に来るよう要求します。お母さんの手を紙に持っていき、ペンも置き「キティチャン、コエ、コリキ」と発語します。黒ペンを持って、お母さんの手を持って「ハーイ」と言います。お母さんがキティちゃんの輪郭と目を描いてくれます。黄色のペンを持ち、お母さんの手を持って「ハーイ」と発語すると、お母さんがリボンや口を描いてくれました。「イーシャ」とニコニコします、「ヨイショ」と言いながら、平均台を持ってこようとするので、セラピストも「よいしょ、よいしょ」と手伝います。

あいちゃんは平均台に座って「デキタ、キティチャン」「カキカキ、ヤッテ」「ハーイ、カキヤッテ」と発語が続き、セラピストもすぐに模倣します。平均台に立つと「タカーイ、ハイーネ」「デキター」「オカアサンガコッチと言いながら、お母さんを呼びます。セラピストの顔も見て「アーイ、デキタ」と手をあげてくれます。

次の紙をお母さんに渡します。黄色のペンも渡します。「オーアイチャ、ハイ、オカーシャン」とずっと喋っています。セラピストがキティちゃんの輪郭に切った紙をあいちゃんに渡すと、あいちゃんが目と豚の鼻と口を描きました。「あいちゃん、ぶたさん、上手、上手」と褒めました。

もじもじするので、お母さんが着替えを出すと、おしっこをして、トランポリンに行きました。「ウアイヤー、ピョンピョン」と言っています。セラピストもあいちゃんと一緒に「ぴょん、ぴょん、うまい、うまい」と飛んでみます。着替えが途中だったので、お母さんがボタンに手をかけると、外して全部自分でやり直します。10分前でしたが、「バイバイ、バイバイ」とずっと言いながら、帰りました。
あいちゃんは、お家でも何でも自分でやりたがること、ことばをいろいろなリズムで言ったり、いろいろな声で言ったりして、楽しんでいるとお母さんからお話がありました。』

 

あいちゃんの指導のまとめ
あいちゃんが相談室に来所して、二年が経ちました。この間の発語は経過記録でお伝えしましたが、一度口から出たことばは完全に定着し、再三、遊びの場面、生活場面で使用されています。
第四章以降の相談室での指導と家庭での様子についてまとめると、あいちゃんの要求行動の増加に対し、セラピストは可能な限りそれに応じ、無意味発声に対しては無視、無反応で対応し、動作や行動の言語化、有意味語と思われる発声に対しては拡充模倣で応じました。
また、いわゆる声掛けなどの行動指示(先行刺激操作)を少しずつ増やしていきました。これはフリーオペラント技法の基本方針からずれるのですが、あいちゃんの行動変容(例えば、声掛けによく反応するようになっていた)に合わせたものでした。
発語頻度の増加に伴い、発語の反応トポグラフィーが正確でなくても、その場の文脈に適合していれば、強化操作を続けました。例えばあいちゃんの発語「ハーデー」(混ぜて)に対して、発音の修正、訂正は一切していません。発語頻度の方を重視したからです。発語が高頻度で続けば、構音の明瞭度は自動的に改善が進むためです。
さらに、ことばが社会的行動である以上、遊戯室だけでの発声では意味がありません。家族も来所当初から、発語を強化するメディエーターとしての役割を担えるように、遊戯室での指導者の指導を観察し、スーパーバイザーのさくま先生から、日常でのさまざまな助言を受けました。
あいちゃんは、遊戯室で感覚的な遊びからお母さんの家事行動そのままに、お料理、お掃除、お洗濯の遊びが続きました。ご両親はそれを可能な限り受容し、冷蔵庫はあいちゃんに全面解放の状態だったそうです。
指導場面での強化随伴性はそのまま家庭でも維持されました。つまり、人の応答が発語の強化子となるためには、日常場面でも強制・指示をできるだけ控えてもらう必要がありました。記録を拝見すると、実に忍耐強くやっていただいたことがうかがえます。』

 

現在のあいちゃん
『あいちゃんは、その後も継続して相談室に来ています。小学校、中学校といろいろな問題がありましたが、その都度さくま先生にご相談をされて対処しました。そして現在、特別支援学校の高等部に在籍し、隔週で相談室に来ています。それは、問題があるからではなく、あいちゃんが相談室に来るのを楽しみにしているからです。

出かける前には、お父さんの用意が遅いと「オトウサン、ネテイルバアイジャナイデショ」と言ったり、「オカアサン、ワスレモノナイノ?」と声をかけたりします。
あいちゃんの言語発達は、お母さんのことばをお借りすれば、「こんな口の悪い自閉症児は知りません」と言われるほどにおしゃべりになっています。ケンカになると「クソババー、アイチャンハ、イエヲデテイキマス」と言ったり、一般の中学生・高校生となんら変わらないレベルのやりとりをするほどになっています。

お母さんと一緒に買い物に行けば、一人で「〇〇ハドコデスカ?」と店員に聞く社会性もあり、欲しいものがあると、お母さんがレジに来るのを待っていて、直前にレジカゴにすっと商品を滑り込ませるのだそうです。「物を買ってもらう策略には困ります」とお母さんはおっしゃいます。
相談室では、持ってきたカレーせんべいを皆に配って一緒に食べたり、遊びの邪魔をする小さな子にもことばで注意します。実習の大学生やスタッフを相手のゲームでは、負けしらずです。ところが最近、彼女ばかり勝つと、三度に一度の割合でわざと負けるようになった、とスタッフの一人が言うのです。意識してのことかどうかを確認する方策を、スタッフ間で頭を悩ませているところです。ゲームが苦手な私には「右ボタン、赤押して」と厳しく(?)教えてくれながら、グループで勝ち負けを競い、「あなたは第三回スターアタック決定戦に優勝したことを表彰します」という自分で書いた表彰状を作りました。また勝負の結果。負けたチームに罰ゲームでものまねをさせ、それをビデオカメラに記録して自分で編集します。DVDや動画サイトを見たり、スマホでAKB48の新曲の検索もします。絵を描くのも好きで、女の子を沢山描いて、難しい漢字の名前(例えば愛羅)をつけ(漢字は自分で調べて覚えました)、人形の服を手縫いで縫って遊びます。
特別支援学校高等部では役員に立候補し、行事で挨拶ができるほどですが、欠席することも多いようです。現在、不登校が続いています。好きなことへの集中力は療育園の頃から変わらないため、学校で、とても細かい刺繍に集中している時など、「時間だよ。終わりにして」と言われると今でも嫌なようです。ただ、集団が全て嫌いなわけではなく、デイサービスには喜んで行き、好きなDVDに時間制限を加えられてもがまんできるようになりました。』

特に印象に残ったこと
第一章 
●子どもの声に敏感に反応する→子どもは声が相手を動かすものだとわかる。
●大人が子どもと同じ声を出す→「あなたの声を聞いているよ」ということを子どもに知らせる。
●ことばは自分の主張なので、わがまま、甘えが大事である。「しつけが大事」は順調に育つ強靭な力の健常児に対してである。
●障害児の難しさは、自分で何かをしようとする力や、何かをしたいと人に訴える力が弱いこと。
●ことばは自分の声に対して相手から反応が返ってくるから発達する。
●叱らない。わがままは後でいくらでも修正できるので、ことばの発達を最優先させる。
●物より人に興味をもつようになることが大事。気に入った物で遊んでいる状況に大人が加わると一人で遊ぶより面白くなる。それが繰り返されると好きな物よりも好きな人の方が重要になり、物よりも人を優先させることになる。
●社会性は、人と楽しく交わりたいというモチベーションが大切。
●社会性は年齢とともに変わる。従って、自分の社会的体験から自力で学べるようにしなければ問題の解決にならない。(相槌が1秒と0.5秒では意味は異なる。これは教えて身につくものではない)

第二章 

●人の様子を見てまねをする、それが蓄積されて社会性の発達につながる。
●子どもの発達の過程は依存と自立が揺れ動いている。自立は催促せず、邪魔せず、子どものペースでつきあうのがベスト。
●ことばの訂正は言語発達を妨げる。
●自立を促す必要はない。発達すれば必ず自立するものである。
●依存と自立は対立関係のものではなく、依存の延長線状に自立があるという認識をもつ
第三章 
●しつけは幼い方が楽なことは確かだが、ことばの発達は年齢が後になるほど困難、不可能になる
●適応性が未熟な障害児にとって、禁止と強制がいきすぎると、無気力状態にしてしまう。
重度の自閉症の子どもは、きょうだい、親にも無関心なことが多い。それが改善されてくると今度は一緒に遊びたい。けれど、遊び方がわかっていない。さしあたり、叩いてみる。それには憎しみや、嫌悪、憎悪などの感情は含まれない。重度の自閉症で人を叩いたというエピソードを聞くと、改善の徴候なので嬉しくなる。

第四章 

●子どもの話は、子どものことばのわかった部分を反唱しながら聴くのがコツ。お母さんにわかってもらえるように子どもが努力する。親に分かるように話せるまでゆっくり待ってあげる。

 

乾布摩擦について
私は発達障害児へのマッサージが仕事になりますので、「乾布摩擦」については特に関心がありますが、これは佐久間先生が考える、「感覚統合訓練法的な五感のバランス改善のための手段」いうことではないかと想像します。

『「遅れてことばが発達する子どもに共通して、感覚器官のダイナミズムに大きな変化があります。赤ちゃん時代からずっと口は飲む、食べるだけしかしていません。それ以外は泣き声だけで、自分の声を意識していません。少しことばが出はじめると、口の中の感覚が大きく変わりはじめます。同時に、聴覚や視覚にも変化が生じ、耳ふさぎや眼球擦りなどが生じることがあります。赤ちゃんはだれでも、五感の感受性にアンバランスがあり、たくさんの皮膚刺激で、五歳までにバランスがよくなります。

通常、聴覚優位なので、人の話を聞くだけでことばの学習が進みます。優位性がさらに過剰だと、耳ふさぎを示します。皮膚刺激の過敏、鈍感、味覚や嗅覚にこだわりや偏りを示す子もいます。

五感のバランスのために、乾布摩擦をして下さい。全身、朝、晩、服の着換えの時に、擦ってやってください。健康増進のためではなく、五感のバランスのための乾布摩擦なので子どもの顔を見ながら気持ちよさそうな表情を手がかりに、最適な擦り方を見つけてください。頭から足の裏まで、指の一本一本まで、嫌がる所はアンタッチャブルゾーンとして擦らないように、その境界線は特に丁寧に擦っていると、ゾーンは縮小していくはずです。消えるまで朝晩続けていると、ゆっくりと五感のバランスがよくなるはずです」』


付記
本の出版が2015年のため、本の中で紹介されている「キリスト教ミード会舘」に問い合わせたところ、現在は下記の「西宮たんぽぽ」にて行われているとのことでした。特に右の写真をクリックして頂くと詳しい内容が確認できます。


療育

『もしタイムマシンを使えたら、あなたは過去に戻ってみたいですか?未来に進んでみたいですか?
ある女の子は言いました「赤ちゃんからやり直したい」と。ある男の子は言いました「先生、時間を戻して!最初からやるから」と。二人とも小学校1年生でした。過去に戻りたいと願っていました。うまくいかない自分を抱えて、その理由もわからず、苦しんでいました。
私たちがその子たちにできることは、その子のありのままを慈しみ、発達を支えることなのです。「苦手があっても、かけがえのない存在」、そう子どもに感じてもらえる関わりを用意することなのです。子どもたちには、未来を見つめていてほしい。そう思います。自分のありのままを大切に、歩んでいってほしいと。』これは、著者である藤原先生の「あとがき」の前半部分です。

 

著者:藤原里美

出版:学研

そして、療育とは特別なスキルを要するものではないということを伝えています。

「療育」とは特別な場所や特別の人がするだけのものではなく、お母さん、お父さん、保育士さん、学校の先生など誰にもできる子供の発達と支援の方法論です。
例えば、よい行動をしたら褒めて子供のよい行動を増やすということや、集中できない場合は静かな環境の中で勉強させる、不安になったら好きなぬいぐるみに触れて落ち着かせるなど、その場に応じた適した方法を使って子供を指導することです。』

なお、この本は以下の6つのパートから構成されています。
漫画:発達障害のある子どもたちのエピソードを紹介する。
対応:エピソードで紹介した子どもの行動の理由や対応を紹介する。
子ども発達相談室:お母さんがよく抱えている子どもの悩みに対してアドバイスをする。
解説:発達特性についてより専門的に解説する。
大切なあなたへのメッセージ:子どもに読み聞かせして、子ども自身の特性を共通理解する。
コラム:子どもを理解し、よりよい療育のために知ってほしいことなど。

 

そして、目次は次の通りです。
第1章 完璧な子どもはいない
 どの子も発達の凸凹がある
 発達の凸凹をその子の特性と捉える
 その特性により生活に大きく支障をきたす場合、発達障害と診断される

第2章 多動と不注意
1.じっとしていられない
2.やるべきことを忘れる
3.先に考えずに行動する
4.忘れ物が多い
5.突然、怒りだす
6.イライラしやすい
7.小さな失敗で過度に落ち込む

第3章 こだわり・コミュニケーション・社会性
8.自分勝手にふるまう
9.相手の気持ちになれない
10.こだわりが強い その①
11.こだわりが強い その②
12.こだわりが強い その③
13.考えが極端にせまい
14.言葉の意味は一つだけ
15.二つのことが同時にできない
16.いじめられているのに気づかない

第4章 感覚と身体運動
17.自分の体はどこ?
18.力の入れ方がわからない
19.見えているけど正しく見えない

第5章 特性を生かす
20.ぼくはダメな子?
21.みんなと違っている
22.1番じゃなきゃやだ!

コラム
 診断は大切?
 立派な大人も小さいころは…
 理想の子ども
 子どもへ伝えるときのコツ
 お父さんも理解者になるために
 おじいちゃん・おばあちゃんを味方にするには

大切なあなたへのメッセージ
 失敗は成功のもと
 おなじということ
 いじめからあなたを守るために
 大人に伝えて相談しよう
 自分について

わたしのきょうだいへのメッセージ
 好きなところ・きらいなところ

 

私の発達障害児との関わりはマッサージと動作法になりますので、ブログでは子どもとの信頼関係づくりに関わる「コミュニケーション」と今までのブログで度々登場してきた「ボディイメージ」を、療育の視点から考えてみました。

コミュニケーション
1.シングルフォーカス(参照ページ:p42-p45)
シングルフォーカスとは興味あるものだけが頭を占領し、くぎ付けになってしまうことです。
本文では次のような「解説」が書かれています。
『子どもは少なからず、興味あるものを目の前にすると他が見えなくなる傾向があります。大人でも、恋愛すると「あなたしか見えない」などといいますが、シングルフォーカスを象徴した言い回しですね。
年齢や体験を重ねることで、やるべきことは意識して、順を追って行動できるようになります。いくつかのやるべきことが多画面のようになって、意識できるようになります。しかし、浩太くんのように、小学生になっても、興味のあることに出くわすとそのことが全画面表示になり、「今を生きる」状態にスイッチが入る子には、まだまだ大人のマネジメントが必要です。
まずは、自分のクセを理解させましょう。興味のあることに夢中になりやすいということを理解させます。そのうえで、複数の画面にする工夫をします。やるべき二つのスケジュールを同時に映像として提示するのです。ランドセルと学校、帰宅と手洗い・うがい、宿題というように。これも、習慣になると行動がつながるようになるでしょう。』

 

2.ストレスと怒り(参照ページ:p60-p63)
怒りとは、瞬間湯沸かし器のように急に怒りだすようにみえる場合でも、徐々にたまったストレスがコップからあふれ出す瞬間に起こるものとされています。また、怒りだすとなかなか止まらない、一度怒りが収まったと思ったらまた急にぶり返すなど、怒りのコント―ルができないところにも大きな問題があります。ストレスは個々の特性によって異なりますので、その子の傾向を知り、日常生活の中で注意深く観察して、生活の工夫を試みることが大切になります。
「解説」の内容は次のようなものです。
『私たちは誰でも「怒り」の感情をもちます。この感情はもってはいけないものではなく、もったうえでマネジメントするものと考えましょう。つまり、「アンガー(怒り)マネジメント(管理する)ということです。アンガーマネジメントでは、「怒り」は第二次感情といわれます。怒りの感情に至る前には第一次感情が影響しているのです。第一次感情とは負の感情で、不安や、ストレス、悲しみ、ねたみなどです。
私たちは日常生活の中で、さまざまな負の感情を抱きます。この感情が、コップの水のようにたまります。この水をじょうずに抜いていかないとコップの水はあふれ出します。このあふれ出した感情が、「怒り」として表現されます。
感覚の過敏さ、ネガティブな思考のクセ、こだわりを強くもつ、シングルフォーカスなどの発達特性をもつ場合、コップの水はたまりやすくなります。この水をためない、また、たまった水を抜くための工夫をしていくことが必要なのです。

 

3.言葉どおりにしか受け取らない(参照ページ:p106-p111)


「言葉どおりにしか受け取らない」ということは上記の漫画に出てくるような出来事です。
会話は前後の状況や場の雰囲気を理解して、言葉の裏の意味を直感的に解釈すること、「暗黙の了解」が求められますが、この抽象的な概念は発達障害児にとって非常に厄介なものです。「1を知って10を知る」は望ましいものとされていますが、発達障害児においては、まさに「1は1でしかない」というのが特性です。
これらは自然に身につくものではないので、まずは正確に伝えるという配慮が必要です。例えば、「お風呂見てきてね」→「お風呂にお湯がたまったかどうか見てきてね」。「お昼は何にする?」→「お昼ご飯は何を食べる?」という具合です。そして、その都度その言葉の背景を教えていくことが必要です。このフォローを地道に行うことにより、言葉の背景や暗黙の了解をつかむコツが分かってきます。

4.シングルタスク(参照ページ:p114-p118)
先生の話を聞きながらメモを取れない。テーブル上のお皿を持ち上げてテーブルを拭けない。このようなことは発達障害児の特性の一つです。お母さんからは「右手と左手がまるで別の生き物のように、協調して動かない。目と耳と口も同じです。一人の人間が操作していると思えない。そんな感じです。」といった思いを抱くことも多いようです。

これらは子どもたちの心の問題でも、意思の問題でもなく、脳の処理の問題です。子ども自身もそうしたくても、できないもどかしさを強く感じています。
私たちの脳は同時に複数のことができるものですが(マルチタスク)、1つのことしかできない(シングルタスク)という特性が発達障害児には見受けられます。この難しい問題に対し、著者の藤原先生は「解説」の中でこの問題に対しどのように向き合うのが良いのかについて語られています。
『私たちは、いくつかの作業を映像に描いて行動します。でも、その作業が1つしか描けない子どももいます。いくつかの作業を描いて行動できるには、作業を同時に処理していく能力が必要です。たとえば下の絵のように、朝のしたくでは「コップと、タオルとノートと……を入れて」というように進めます。

 

画像出展:「はじめての療育」

しかし、一つの作業しか浮かばないと、下の絵のような作業になります。

 

画像出展:「はじめての療育」

 

前者を「同時処理」、後者を「継次処理」といいます。
継次処理の方が効率が悪いのは否定できませんが、丁寧で着実であるという利点もあります。早くないけれど確実、そこがよさです。丁寧に一つずつこなしていけるようにします。こうした日ごろの支援が、一つから二つと同時にできる作業を増やすことにつながります。欲張らず、あせらず、子どもの情報処理の発達特性に合わせて、支援を考えましょう。』

 

5.「子どもへ伝えるときのコツ」(参照ページ:p170-p171)
こちらは「コラム」として掲載されているものです。発達障害の子どもと接するうえで、とても有効だと思いますのでそのまま掲載させて頂きます。
①脅かさない
『「〇〇しないと〇〇できない」、たとえば「勉強しないとおやつが食べられないよ」だと、おやつが食べられない状況のみが強調されて伝わります。否定的な言い回しの繰り返しではなく、肯定的にやるべきことを伝えましょう。「勉強したら、おやつです」と。』

②叱らずにアドバイスする
『「〇〇するとうまくいくよ」、たとえば「失敗は成功のもとと考えると、気持ちが楽になるよ」というようにしましょう。うまくいかないとき、イライラする場面なども「イライラしない」「もうあきらめなさい」などと叱らずに、「深呼吸してみよう」「楽しいことを考えて」など、肯定的に今やってほしい行動を伝えましょう。』

③よかったところを強調する
『「〇〇は失敗したけど、〇〇はよかったよ」のように言います。大人も子どももうまくいかなかったところに目を向けがちです。そんな考え方を切り替えるためにも、よかったところ、できたところを確認して伝えましょう。』

④共感する
『「なるほど、そういうふうに考えるんだ。おもしろいね。」「その感じ方は、苦しいよね。よくわかったよ」といったように、どんな考え方でも、たとえそれが間違っていると感じても、まずは共感しましょう。なぜなら、その考え方は本人にとって「大切な考え方」であるからです。そのうえで、ほかの意見を受け入れられるように導きましょう。』

⑤希望をもたせる
『「次はうまくいくと思うよ」、「きみを理解してくれる人にこれから出会えるよ」、「きみは成長しているよ」など。子どもが自分を信じて、頑張るためには将来に希望がもてなければなりません。今、つらい状況であっても、身近にいる大人が希望をもてるようなメッセージを伝え続けることが必要です。』

⑥味方だと伝える
『「いつでもあなたの味方だからね」「身近なサポーターだから忘れないでね」「きみのファンだよ」というように、一人じゃないということを感じられるようにします。心の支えになれるように、伝えたいですね。』

ボディイメージ
1.じっとしていられない(参照ページ:p32-p39)
「子ども発達相談室」の母と先生のやりとりは次のような内容で始まっています。
:うちの子は、とにかくじっとしていられません。
先生:そうですね。体の内側から動きたい欲求が出ているので、注意してもおさまらないですね。
:体の内側から……それはどういうことですか?
先生私たちは、体の中に感じる感覚を二つもっています。その一つが「固有覚」といって、筋肉や関節に感じる感覚です。鉄棒にぶら下がると手首が引っ張られる、物を持つときに重さを感じる…そんな感覚です。この感覚を頼りに、私たちは動作や運動をするときに適切な力の入れ方、自分の体の部位の動かし方を調整しています。この感覚をうまく受けとめないと力を入れすぎて、バナナやおにぎりを食べるときに握りつぶしてしまったり、体の動きがぎこちなく見えたりします。
また、「対応」では、子どもの欲求を満たす方法として、子どもの体に触れて筋肉や関節に感覚刺激を入れる関わりや遊びを取り入れることを推奨しています。
具体的には以下の事柄が紹介されています。
①座りながら感覚を満たす
手や腕など、ギュッギュッと握ってみよう
肩や背中、ひざなどトントンとたたいてみよう
頭を指でマッサージしてみよう
②運動遊びで感覚を満たす
・指相撲や腕相撲、鉄棒にぶら下がる、前回りをする、マットででんぐりがえし、木登り、ジャングルジム、うんてい
③道具を使った工夫
・バランスボールを座ってピョンピョン
・一人用のトランポリンで繰り返しジャンプ
・マッサージチェアで筋肉や関節をモミモミ
・回転いすに座ってくるくる回る
そして、「解説」では詳しい説明がされています。
『多動といわれる状態は、動きたいという身体の内側にある感覚的な欲求が働いていることが原因の一つといわれています。「お腹がすいてご飯を食べたい」という生理的な欲求と似ていて、「体の内側に入る感覚刺激が足りないから、感覚を入れたい」という行動です。私たちが、窮屈な乗り物に長い時間乗っていると動きたいという気持ちにかられますが、それに似ています。
体の内側に感じる感覚は「固有覚」(筋肉や関節に感じる感覚)と「前庭感覚」(体の傾きや動いているスピードを感じる感覚)があります。どちらも感じにくいと跳びたくなったり、走りたくなったり、回転したくなったりします。ですから、我慢させすぎることのないように、内的な感覚欲求を満たしてあげることを考えましょう。
外遊びで、跳びはねたり、回ったりするといった遊びが少ない現代、この内的な感覚が足りないことと、子どもたちの行動に落ち着きがないと感じることは関係が深いと考えられます。』

 

2.自分の体はどこ?(参照ページ:p128-p133)


「自分の体はどこ?」というものは、問題を持っていない人にとってはとても理解しずらいものです。本の中では「子ども発達相談室」の母と先生のやり取りがとても分かりやすいので、前半部分を引用させて頂きます。
:着替えはとにかく時間がかかります。そでにうまく腕が通せなかったり、かかとの位置を合わせられなかったりで、私の方がイライラしてつい怒る。本人はさらに体が動かなくなる……そんな繰り返しで。
先生:私たちはそでを通す時も、かかとの位置を合わす時も、最初はその部分を見ますが、その後は見ないで身体の感覚を使って着替えをします。見ないでできると、早いんですね。ところが、自分の体の位置や動かし方がわからないといちいち見ないといけない、そして見ても服のその部分に体を合わせるのに時間がかかるという二重苦です。自然に理解するのは難しいので、どうしてうまくいかないのか、お母さんがなんで怒っているのかもわからないということになります。
:見ないとできない? なるほど、私たちは見ないでそでを通したり、ボタンをはめたりしていますね。それができないのですね。
先生:ボディイメージを持てないということが大きいですね。自分の体の実感がうまくもてないということだと思います。体に意識が向きにくいのです。


そして、「解説」では支援の方法などについても言及されています。
『子どもは、3、4か月のころになると、自分の手を眺めながら動かすようになります。これは「ハンド・リガード」という行動で、自分の手を見つめることで自分に体があるということを知り、体が動く時の感覚をつかむのです。つまり「手を動かす」のを見ながら確認して、体の感覚と一致させ、その感覚を利用して、見ないでも体を動かせるようになっていきます。
しかし、この体の感覚、固有覚などの内的な感覚が育ちにくいと、見ないで体を動かすことが難しくなります。また、見えない部分を想像する力も弱いのでさらに動かすのは大変です。ですから、「ハンド・リガード」と同じ視点で、見て自分の体を知ることと、動く時の体の感覚をつかめるように、大人が支援します。その時は手取り足取りになることもありますが、繰り返すうちに体の感覚をつかめるようになります

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

乳児は「ハンドリガード」で身体感覚を学びます。そのプロセスは以下の通りです。
①脳が「指をしゃぶれ」という「動作信号」を発信する。
②指の動きが「体性感覚」として脳にフィードバックされる。

③指の動きを見たり、口に含んだり時の味覚などが「特殊感覚」として脳にフィードバックされる。
④動作信号・体性感覚・特殊感覚が脳の中で統合されて、身体感覚が学習される。

画像出展:「立命館大学映像学部

3.力の入れ方がわからない(参照ページ:p134-p139)


力の加減が分からないとどんな事が起きるのでしょうか。これについて、「対応」にいくつかの例や役立つ遊びが紹介されています。
ドアをバタンと閉める、物をドンッと置く、人を力強くたたく、どたどたと歩くなど、力を入れすぎる行動は、落ち着かない子、乱暴な子と誤解されやすく、本人も損をします。これは、力を緩める感覚をつかみにくいことが原因となっています。
力を緩める感覚を練習するための「紙風船」を使った遊びを紹介しましょう。「紙風船」を下からたたいて繰り返し飛ばします。力を入れてたたくとつぶれてしまうので、力のコントロールが必要です。いきなり「紙風船」が難しい場合は、「ゴム風船」でもよいです。なるべく数多くポンポンと手でついて繰り返せるようになるといいですね。
「風船」でのキャッチボールも楽しい遊びです。力強くキャッチすると、風船が弾んで逃げていくので、そっと捕るという感覚がわかります。
力を抜いて操作するのがわかったら、ドアを閉める時や物を置く時は「風船をつかむ力で」と伝えると、体験が生活にいきるようになりますね。』


また、「解説」でも、力を緩める感覚は言葉だけの説明では身につかないということが書かれています。
『力が入りすぎて、体の動かし方が不器用というのは、体の中に感じる固有覚の鈍感さがやはり原因だと思います。この感覚の中でも、物の重さや固さを感じる感覚がうまく働かないと無駄な力が入りすぎたり、逆に入らなかったりして、不器用な働きになります。
重さや固さが感じにくく、物をつかむ時や持つ時に指の関節や手首にどのくらい力を入れるのか、どれくらいの角度を保つのかがわかりません。また、筋肉の使い方の加減もうまく調整できません。「ゆっくり持つ」「そっと置く」など、言葉だけで説明するだけでは、いくら繰り返し練習してもできないということになります。
ですから、見て、感じて、具体的な力の入れ方を練習するということで、子どもが少しずつ変化していきます。ここでも、根気よくというのがキーワードになりますね。』

 

今回、「はじめての療育」を勉強させて頂き、特にボディイメージの理解(「じっとしていられない」、「自分のからだはどこ?」、「力の入れ方がわからない」)を深めることができたことは、とても良かったと思います。

「ありがとう、ヘンリー」

今回のきっかけもテレビの番組でした。それは、海外では自閉症を支援する介助犬が活躍しているという内容です。興味をもった私は、さっそくネットで調べましたが、検索の仕方が悪かったためか、その時はこれといったサイトを見つけることはできませんでした。
そのような状況で、何とか見つけたのが「ありがとう、ヘンリー 自閉症の息子とともに育った犬の物語」というスコットランドの母親が書いた実話でした。
以下はamazonの商品説明です。
『重度の自閉症にとらわれた息子デールをかかえ、途方にくれていた一家のもとに、1匹の子犬、ヘンリーがやってきた。それまで誰とのコミュニケーションも拒んでいるかのように見えたデールは、ヘンリーとだけは奇跡的に心を通わせはじめる。母親のヌアラは、その無邪気な子犬にすべての希望を託し、デールを世界へ導きだす試みに乗り出した―絶え間ない努力で自閉症に挑み続け、息子の成長を支えてきた母親が、その18年間を振り返って綴る感動のノンフィクション。』 

 

ヘンリーという犬にだけ心を通わせることができたのは何故か、何がヒトと違うのか、この事に強い関心をもった私はこの本が格安だったということもあり、躊躇なく購入することにしました。

 

者:ヌアラ・ガードナー

訳者:入江真佐子

出版:早川書房

※下段の4枚の写真は本からの転載です。


 

 

 

 

 

 

 

 

デールが描いたヘンリーの絵ですが、ヘンリーと出会う前は、模様やシミのような絵しか描いていなかったとのことです。

 

こちらは青年となったデールが描いたヘンリーの絵です。


 

こちらは原版です。

 

映画化されDVDも出ていました。Thomasとは、「機関車トーマス」のことだと思います。


デールは20歳のあるインタビューで次にように語っています。
『自分はまだ自閉症を抱えていることはわかっています。それからは決して逃れられないけれど、なんとか克服することはできると思います。』
つまり、自閉症はなくなるものではなく、受けいれ、共存するもの、コントロールするものなんだと思います。
下の図は自閉症にのみ込まれていたデールが、それを克服し、自分の一部として受け入れるために何が必要だったのかを考えてみたものです。以下にその説明を付けました。

①愛情と成長のための教育
この主役は母親のヌアラ父親のジェイミーです。デールは早産であり、逆子のため頭部に変形がありました。はじめての言葉は「木!(Tree)」で生後26ヵ月の時でした。
2歳4ヶ月の時には、聴力検査を受け正常と判定されましたが、自閉症ではないかというヌアラの懸念はデールの成長とともに強くなっていきました。
ヌアラの最初の苦闘は、医学的に「自閉症」の診断を勝ち取るというものでした。これは自閉症と診断されることによって、デールがその時に必要だったサポートや教育を受けることができるようになるという理由からでした。
その判定はデールが3歳11ヶ月(最初の診察から16ヵ月後)の時でした。13人の各専門家によるデールの最終診断は、典型的な自閉症であり、1番の問題はボディランゲージを含む全般的な種類の言語障害という結果でした。
物語の根底にあるのは、「自閉症に対する配慮、サポート、教育」のように思いますが、それは、時には自閉症児に対する特別な教育、支援を受けるものであり、時には健常者が通う学校の中に身を置き、学習すること、経験することでした。特にヌアラが卓越していたのは、「今」と「近い将来」において、デールが必要とするものは何かを見極める洞察力と、それを実現させる行動力だったと思います。ヌアラがデールに対して行ったことは、デールの成長のためであり、常に教育という開かれた、客観性、多様性を兼ね備えた場を求めていました。 
一方、父親のジェイミーはデールを理解し、ヌアラを支えることに迷いはなく、二人にとって素晴らしい父親でした。そのジェイミーの覚悟が一線を超えたのはデールが4歳の時の交通博物館の出来事だったように思います。それは次のような出来事でした。


『ある夜のこと、わたしたちはみんなでフィッシュ・アンド・チップスの夕食のテーブルを囲んでいた。デールはおとなしいモードに入っているようだった。ジェイミーはイースト・キルブライドの職場から帰ってきたばかりで、わたしたちは二人とも疲れていた。わたしがデールの食事を切り分けはじめると、彼が突然「蒸気機関車、蒸気機関車、蒸気機関車」と歌うようにいいはじめた。ジェイミーの心はがくんと沈んだ。彼にはこれが何を意味するかわかっていたからだ。交通博物館は閉まっていると彼は説明しようとしたが、デールは「蒸気機関車」とますますしつこく繰り返した。「この子には[閉まっている]という概念がわからないのよ」とわたしはやさしくジェイミーに思い出させた。

ジェイミーはこの問題を解決するためには何をしなければならないかをすぐに悟った。「これから2時間ほど、この子をグラスゴーまで車で連れていってもどってくるほうがよさそうだな。行かなかったらまたすごいかんしゃくと格闘しなきゃならないだろうからな」とジェイミーがいった。そんなわけで、彼はデールに往復100km近いドライブに行く準備をさせた。わたしは手を振って二人を見送り、「グッバイ、ダーリン」とデールにいった。彼はすぐにオウム返しに「グッバイ、ダーリン」といって、わたしのほうを一度も振り返らずに車のほうに歩いていった。

自分だけの時間が2時間あることに気づいて、わたしはバスルームに走った。今回だけは平和に静かに入浴を楽しめるのだ。

ジェイミーから後で聞いたところによると、デールはグラスゴーに行く途中はいつものように何もいわずおとなしかったが、ときどき無表情な顔のままジェイミーの手を握ったそうだ。いま思えば、これはジェイミーが自分のやりたいことをしてくれていることへの彼なりの感謝を示していたのだろう。

彼らが空っぽの駐車場に車を止めたときには、暗くなっていた。交通博物館への階段を登っていき、デールがドアを引っ張ったが、ドアは開かなかった。ジェイミーはデールの目の高さになるようにしゃがみこみ、こう説明した。「わかるだろ、デール、入れないんだよ。博物館は閉まってるんだ」デールがだまったままなので、ジェイミーは話しつづけた。「いまは暗くて、夜なんだよ、デール。だれもここにはいない」デールはそれでも黙っていたが、また博物館のドアを開けようとした。ジェイミーは、「博物館は閉まっているんだよ。蒸気機関車は休んでるんだ。また明日働くためにね」ジェイミーがデールを車のほうに向かせたとき、彼の説明に満足したのか、デールが「明日働く」と繰り返した。「そうなんだよ、デール。だからおうちに帰って、ぼくたちも休もう。汽車みたいにね」ジェイミーはこのままこの場をうまく切り抜けられるだろうかと思いながら、ぴりぴりしていった。デールがまたオウム返しにいった。「汽車みたいに」それから、二人がちょうど車までもどってきたとき、ジェイミーをほっと安心させる一言がデールから発せられた。「閉まってる」この言葉と共に、二人は帰途についたのだった。

二人が家に帰ってきたとき、わたしはバスローブに身を包み、お気に入りの赤ワインのグラス片手にくつろいでいた。「どうだった?」とわたしはきいた。「だいじょうぶだよ」とジェイミーは疲れきってはいるがうれしそうにいった。

「あの子はほんとうに意味がわかったと思うよ」うれしくなってわたしは彼を励ました。「こういうふうにやればできるのよ。これからもすごくたいへんだろうけど、でもやれるわよ―一緒にがんばりましょう」「そうだな、できるよね」とジェイミーは答えた。「でも、ぼくたちに他の生活はなくなるけど」もちろん彼のいうとおりだった。デールの世話をしていると他の何をする時間も残らなかった。それでも、ジェイミーがこんな突破口を開いてくれてわたしはすごくうれしかった。ジェイミーはほんとうに疲れていたし、この解決策には時間も距離も労力もかかった。だがこれ以来「閉まっている」という概念が定着したのだ。デールはこの言葉がきらいになったが、わたしたちは大好きだった。いつでも必要なときにはわたしたちに有利なようにこれを使うことができたからだ。

その夜、ジェイミーがソファに寝転がっていると、デールがジェイミーの胸の上に乗った。彼はときどきこういうことをする。ジェイミーはわたしのほうを見てこういった。「この子が新しい言葉を覚えたのはすごいことだよ。だけど、ぼくたちがこの子に名前をきいて、この子がちゃんと答えてくれたらすばらしいと思わないか?」

この説を証明するようにジェイミーはデールのほうに顔を向け、デールにこうたずねた。「きみの名前はなんていうの?」わたしたちの息子が生まれて初めて「デール」と答えたときの、ジェイミーの仰天した顔をわたしは決して忘れないだろう。それはまるで、彼らの交通博物館までの突拍子もないドライブを通じて、デールがすばらしい父親との特別の絆をつくったかのようだった。

 

②自閉症は脳幹部での各感覚信号が混線したような状態
・これはこの本に書かれているものではありません、ブログ「感覚統合の理論と実践」で学んだことで、それは次のようなものです。
『エアーズ(Anna Jean Ayres:アメリカの作業療法士)は感覚の中でも、前庭覚、固有覚、触覚の三つが子どもの運動、情緒、認知、および言語発達の上で最も重要な初期の刺激であるとし、そのためには脳幹レベルの統合が重要であり、脳幹を感覚統合の中枢として位置付けています。』
ここで、あえてこの事を引っ張り出してきた理由は、自閉症は脳を原発とする問題であり、脳の機能改善、混線した感覚の信号が整理整頓されるイメージを頭に入れておくことは大切ではないかと考えたためです。
添付した図は網様体の働きと脳の中の場所をお伝えするためのものです。

 

画像出展:「感覚統合の理論と実践」

 

画像出展:「人体の正常構造と機能」

③言葉の習熟
デールは、1番の問題はボディランゲージを含む全般的な種類の言語障害と診断されました。
言語障害はコミュニケーションや社会性の問題に関わるのは当然ですが、イライラなど情緒や健康面にも影響してくる最重要課題の一つであると思います。これは、私が訪問させて頂いている小さな障害児センターの言語障害をもつ子どもたちと接して感じるものでもあります。

物語では、デールがかんしゃくを爆発させたある日、父、ジェイミーの咄嗟な機転から、デールとの会話の間にヘンリーという存在を挟むことで、デールが抱える会話に対する恐れや緊張感などの高いハードルを下げる、不思議な三者方式の会話が展開されるようになりました。(一言でいうと話者がヘンリーになりすますという方法です)
たいへん長文にはなりますが、この説明だけではどんなものかをイメージするのは困難なため、その経緯や何が行われたのかについてご紹介させて頂きます。


『1995年の春ごろには、デールはヘンリーと同じようにわたしたちを彼の人生に立ち入らせてくれる気になるまでにはまだ何年もかかるだろう、とわたしたちも冷静に受け入れられるようになっていた。スピーチ・セラピー、学校での特別プログラム、わたしたちも家族の努力にもかかわらず、デールが社会にうまくなじんでやっていくまでにはまだまだ時間がかかりそうだった。デールはまだ顔の表情と、言葉以外のコミュニケーション全般の解釈が大の苦手で、語調にも問題があった。まちがった調子で話したり、不適切なところで笑ったりするだけではなく、ある特定の言葉を耳にすると際立った苦痛を感じるのだった。わたしたちが「オーケー」とか「学校」のように彼が聞きたくない言葉を口にすると、突然激怒することがあった。
わたしたちは注意していたが、しょっちゅう使う言葉だったので、ときどきふと漏らしてしまうのはしかたのないことだった。わたしたちのうっかりミスでデールがかんしゃくを起こしてしまわないように、口にする言葉をいちいち気にしなければならないのは容易なことではなかった。だが、まさにこの問題ゆえに、デールとヘンリーと一緒のわたしたちの人生にとんでもないねじれが生じることになろうとは、とても予想できなかった。
ある一見ごくふつうの日のこと、デールがヘンリーを脇に従えてうれしそうにダイニング・ルームにいるあいだに、わたしは宿題に関してなにか先生からのお知らせがあるかどうかを見るために彼の通学かばんを調べていた。連絡帳を見つけ、彼の字がずいぶん上達したのに気づいたので、わたしはデールのところに行き、わたしが見てうれしかったページを見せた。
「デール、字がすごく上手になったわね。あなたのこと、すごく誇りに思うわ」とわたしは彼にいった。
とたんにデールがこの言葉にすごく腹を立てたので、「誇りに思う」という言葉が彼が聞くに堪えない言葉のひとつだったことを思い出したが、もう遅すぎた。彼は荒れて部屋を走り回り、「[誇りに思う]っていうな」と叫びながら、自分の頭をつかもうとした。
わたしは彼を安心させようとしてこういった。「あなたのことを誇りに思うっていうのは、いいことなのよ。オーケーなのよ」
こんなにあわてている時でなかったら、わたしも「オーケー」という言葉を避けたはずだった。だが、またしても気づくのが遅すぎたために、デールの苦悩はさらに大きくなった。
「[オーケー]っていうな!」と叫ぶと、デールが怒り狂って頭を壁に打ちつけはじめたので、彼が最大級のかんしゃくに突入したのがわかった。こうなると、過去にわたしがいつもしなければならなかった方法を使って、彼を抑制するしか他になかった。
わたしは彼の上に馬乗りになり、頭を保護して手で包みこみながら、彼を安心させようとした。ヘンリーはそのころにはこんなデールを見るのには慣れていて、ただ彼の横にねそべって見守っていた。デールの怒りはたいへんなものだったので、わたしはこうして40分以上もすわっていなければならなかった。その間にわたしはブラウスの袖をデールに引きちぎられた。仕事から帰ってきたジェイミーを待っていたのは、こういう光景だった。ジェイミーを見てほっとしたわたしは、まだ暴れ、泣き叫んでいる息子に向かってこういった。「デール、誰だか見てごらんなさい。パパよ」
同じように彼を安心させようとして、ジェイミーがいった。「デール、パパは庭を走ろうかなと思っていたんだけどな。走るかい?」だが、この言葉も役には立たず、デールは怒りで顔を真っ赤にし、目は飛び出さんばかりだった。
わたしはジェイミーにこうぼそぼそいったのを覚えている。「まったくひどいわ。犬でさえいまでは心配そうにしている」どういうわけか、この言葉がジェイミーの中に一瞬の霊感を生み出した。

彼は突然低い、気どった声で息子に話しかけた。

「デール、ヘンリーだよ。ぼく、きみが泣いているのはいやだよ。すごく心配だもの。お願いだから泣き止んでくれないかな?」(青字はヘンリーになりすましての会話)
これを聞くと、デールはすぐに落ち着きをとりもどし、犬に向かっていった。「わかったよ、ヘンリー、ごめんね」
ジェイミーとわたしはほっとしながらもわずかに戸惑ったように顔を見合わせた。やがてジェイミーがまた同じ低い声でいった。「じゃあ、デール、外に出て駆けっこするかい?」
この言葉に、息子は起き上がり、ほとんどわたしを押しどけるようにしてこういった。「いいよ、ヘンリー。行こう。」デールはヘンリーの首輪をひっぱって、庭に出て行った。
その夜になり、わたしたちは二人とも、さっき起こったことをよく考える間もないまま、来るべきベッドタイム・バトルにそなえて気持ちを引き締めていた。
ジェイミーが「デール、パジャマ。寝る時間だよ」と、先に用件を切り出した。ヘンリーは暖炉の前に寝そべって、気持ちよさそうに眠っていた。デールは自分の犬を見て、それからジェイミーのほうに行くと、顔を見ずに彼のジャンパーを揺すってこういった。「ちがうよ、パパ。ヘンリーみたいにしゃべって」
再び、ジェイミーとわたしは顔を見合わせた。それからわたしは犬のほうを向いてうなずき、デールがいうとおりにするべきだとジェイミーに身振りで示した。彼は了解し、これ以後ひじょうに馴染み深いものとなる声でいった。 「デール、ヘンリーだよ。お願いだからパジャマを持ってきて。もう寝る時間だよ。ぼく、疲れちゃったから、ぼくも自分のベッドに行くよ」
これを聞いて、デールは満足げに答えた。「わかったよ、ヘンリー」そして急いで自分の部屋に走っていった。
わたしたちは困惑してすわりながら、これからまだバトルが待ち構えていると考えていた。だが、デールは実際にパジャマに着替えてもどってきた。こんなことはそれまで一度もしたことはなかったのに。ボタンまで自分でかけようと努力していた。もっとも、ボタンはかわいらしくかけちがえてあったが。

彼(デール)は一瞬ヘンリーを見て、それから断固とした調子でいった。「ヘンリー、寝る時間だよ。ベッドへお行き」

ジェイミーとわたしは唖然としてそこにすわっていたが、やがてジェイミーがようやく声を―彼本来の声をとりもどしていった。「おやすみ、デール」またもや前代未聞のことが起こった。デールが「おやすみ、パパ」といって、ついにわたしたちの言葉に反応したのだ。
これがあまりにも耳に心地よかったので、わたしも思い切っていってみた。「おやすみ、デール」
その結果返ってきた「おやすみ、ママ」という言葉は、わたしがそれまで聞いた中で最高に甘い音楽だった。


ヘンリーがしゃべりはじめたあの記念すべき日から、その効き目はほとんど奇跡といってもいいほどのものになった。デールは彼の犬が「頼んだ」ことならほとんどなんでもやるようになった。
わたしたちがあの声を発見したまさに翌日の朝、わたしがその声を使ってもデールが反応してくれるかどうか不安を感じながらも、その機会をつかまえた。いつものように、デールはぐずぐずしていて、もうすぐスクール・タクシーがやってきそうだった。ふつうならわたしがあいだに入って急がせると、彼は腹を立ててしまう。だから、その朝はかわりにヘンリーがデールにこう頼んだ。

「デール、靴をはいて、コートを着て。タクシーがやってくる音が聞こえるよ」わたしはジェイミーが使った低くて気どった声をできるだけ真似しようとした。すると驚いたことに、デールはすぐに準備をして、タクシーがやってきて止まるまでに、もうヘンリーをつれて玄関ドアのところで待っていた。
デールが帰ってくると、わたしはいつものように学校日誌をチェックした。わたしがこうするのは、彼自身の口から何があったのかを話してくれるよう励まそうとしてのことだったが、たいていの場合、ひとことで片付けられるか、あるいはすごく腹を立てて「[学校]っていわないで!」と不機嫌に怒鳴られるかのどちらかだった。
だが、きょうは、デールがヘンリーをそばにおいて遊ぼうかと落ち着いたところで、わたしは手に日誌を持って用心深く近づいていき、ヘンリーの声できいた。「デール、きょうは学校で何をやったの?」
間髪をおかず、デールはきっぱりと答えた。「劇だよ、ヘンリー」
「デール、劇ってなに?」ヘンリーが気をよくしてつづけてきいた。「おもしろい?」
「うん、ヘンリー、すごくおもしろいよ。ボートに乗って島に行くんだ」
「デール、濡れなかった?」
「ううん、ばかだなあ、ヘンリー。ふりをしただけだよ。劇ではふりをしてお芝居するんだよ」
デールと話すときのいつものルール ―たとえば、ものごとを単純にする、など― に従っているかぎり、ヘンリーの助けを借りればこういうふうなごく初歩的な三者会話ができるということがわかった。こんなふうに会話ができることにわくわくしたが、これがデールとのコミュニケーションのやり方として適切なのかどうか心配になってきた。帰宅したジェイミーに、わたしはデールがあの声だとどれほどうまく反応するかを話したが、この方法を使い続ける前にアドバイスを得たほうがいいだろうということでわたしたちの意見は一致した。


さいわい、セント・アンソニー校でデールを担当しているクリスティン・カスバートというスピーチ・セラピストが家庭訪問に来ることになっていた。彼女は優秀なスピーチ・セラピストで、学校でオデッセイ・ドラマ・プログラムを実践しており、子どもたちに人気があった。彼女はまたソシアル・ユース・ランゲージ・プログラム(SULP)というスピーチ・セラピー・プログラムも使っていたが、これはとくに自閉症児向けにつくられたもので、社会言語のルールを説明するために音声と絵で描いたキャラクターが使われていた。リスニング・リジー、バッティング・イン・ベティ、ルッキング・ルークなどのキャラクター・ネームを使ったこのプログラムは、デールや他の子どもたちにほんとうによく役立ったが、皮肉なことにこのテクニックはわたしたちがずっと昔にトーマスの仲間たちを使って考案したのと同じようなものだった。
クリスティンが学校でデールと一緒にやっているすばらしい仕事にけちはつけたくなかったので、彼女が家に来てくれたときには、ヘンリーに関する状況を説明するだけにした。そして彼女のアドバイスを聞いてほっとした。

わたしがデールの自閉症にひじょうに理解を示していることを知っているので、彼女は「このテクニックを建設的に、かつ責任をもって使うかぎりは、このままやってだいじょうぶです」といってくれたのだ。わたしたちがやっとデールに心地よいコミュニケーションの手段をみつけだしたこと、やがて時間がたってデールが進歩したときには、もちろんヘンリーの声を使うのをやめることを目指していることを、クリスティンはわかってくれていた。当然それがわたしたちの最終的な目標だし、それまでの過程でもヘンリーの声をどのように使うかについては細心の注意を払うつもりだといって、わたしは彼女を安心させた。


この家庭訪問直後の1995年の夏に、ジェイミーとわたしはジム・テイラーが発表者の一人となっている自閉症に関する会議に出席した。なんとか彼と話す機会をつくって、わたしたちのこの珍しい発見をどう思うかときいてみると、「不思議なことではないですよ。第三者は面と向かった会話に伴う不安を軽減させますからね」といった。
ジムは犬がしゃべるという例には出会ったことはなかったが、ストルーアン・ハウス校で、不安感の強い男の子がジムに背を向けて電話をとりあげ、受話器に向かっているときにだけ何で困っているかをジムに話すことができた、ということがあった。彼らは二人とも同じ部屋にいたのだが、この間接的なコミュニケーション手段が、面と向かった会話のときにはどうしても現れてくる言葉以外のプレッシャーをまったく感じずに、自分を表現することを可能にしたのだった。
わたしたちにはジムがいわんとすることがよくわかった。ヘンリーがデールの電話になったのだった。ヘンリーの穏やかな顔と目は、人間だったら強要してしまうある種の社会的要求をデールに求めないのだった。ヘンリーはまた、人間の友達にはつきもののプレッシャーをまったく感じさせずに、デールにいかにすれば関係がうまくいくかを教えてくれ、デールの初めてのほんとうの友達になったのだった。
家に帰ると、いかにジムが正しいかがわかった。わたしたちがヘンリーの声を使うと、デールはヘンリーの顔を見るのだった。まっすぐ目をみつめ、ヘンリーのそばに寄っていった。わたしたちが普通の声でしゃべるときには、彼はわたしたちの顔を見るのを避けるか、前やったように、わたしたちの顔の間近まで顔を近づけてくるかのどっちかだったのに。
この声を使い始めた最初のころ、とっさに何かを伝えなければならないときから、三人での会話を続けるときまで、わたしはヘンリーの声を出しどおしで声がしゃがれてしまった。デールと一緒に宿題をやるときも、彼と遊ぶときも、夜寝る前に本を読んであげるときもそうだった。ヘンリーはまるで「自分の」声に興味津々とでもいうように首をかしげながら、その間ずっと注意を払っていた。わたしの側からすれば、ヘンリーがそんなふうに熱心に参加してくれるので、まるで彼がほんとうにわたしの二番目の子どものような気になってきた。デールはまだかんしゃくを起こしていたが、回数も少なくなり、一回の長さも短くなってきた。彼が動転しているときにヘンリーが話しかけると、わたしやジェイミーがやるよりずっと早く彼が安心するようになったからだ。

デールがもうすぐ七歳になるというころ、彼自身がヘンリーをどれほど大切に思っているかを痛切にわたしに語ってくれることがあった。「ぼく、あの柔らかくてかわいい犬が大好きだよ。ヘンリーはすばらしい。もし、ヘンリーがいなくなったら、ぼく、いつまでも泣いて悲しむと思う」と。
このころ、デールの絵にも励みになるような変化が起こった。以前からトーマスと仲間の機関車の絵ばかりを描いていたのだが、いまではそこに明らかにそれぞれちがう、楽しそうだったり、悲しそうだったりする顔の表情がつくようになった。さらにわたしたちを驚かせたのは、デールはまだわたしたちと目を合わせることに苦労していたのだが、機関車がお互いしっかりと目を見合っている絵を描くようになったことだ。それに続けて、デールは機関車だけでなく、おそらく彼とヘンリーだと思われる人や動物の姿も描くようになってきた。これは彼の想像力が進歩しはじめたことを示すものだろう。

 

この本の最後の章は「デール自身の言葉」として25の事柄について語られています。その冒頭に上記のデールとヌアラ・ジェイミーが取り組んできた特別な言語習得法について、ヌアラがデールの言葉を次のように紹介しています。

『子どもたちがコミュニケーションをとっていないとき、ついつい彼らは何もわかっていないと思ってしまいがちだ。だが、デールが10歳のとき、彼はわたしにこう話した。「もしぼくたちがヘンリーを通じて話していなかったら、ぼくはママたちとは絶対に話さないことを選んでいたよ」』

 

④手にしなければならないものは“自信・自尊心”
「言葉」は生きていくうえで必要な武器、手段といえると思いますが、デール自身が自閉症を乗り越え、コントロールしていくために最も重要だったものは、この自信と自尊心だったようです。それは本の中で度々出てくることで分かります。断片的に書き出すだけでは不十分なのは明らかですが、ご参考として列挙させて頂きます。
.p198:ヌアラ曰く、『「5分、5年反応」(5分間、ヘンリーをひとりで家にほっておくと、その後は5年ぶりに会ったようにお喜びすること)はデールの自信自尊心を高める上で驚異的な働きをした。』
.p350:ヌアラ曰く、『目前の困難を前に、あらゆる機会をとらえてはデールが自信を持てるように励まし、普通の子どもたちの中でやっていく経験をさせるようにした。』
.p351:ヌアラ曰く、『彼の自尊心を高めるこのようなこと(最優秀作品に選ばれたこと)がなかったら、デールはグーロック・ハイスクールでどうやっていけただろうかと思う。』
.p452:デール曰く、『プロスペクツの協力はなくてはならないものだった。彼らの協力がなかったら、カレッジに関して自分の目の前の問題すべてに対処できなかったはずだ。ワークショップや彼らがぼくと一緒にやってくれた個々の作業がすごく役立ち、おかげでリラックスでき、カレッジでの勉強にも自信が持てた。』

 

⑤助けてくれるのは“友”の存在
言うまでもなく、ひとつはヘンリーの存在です。ヘンリーについては「デール自身の言葉」の中で「ヘンリーが特別な理由」として次のように解説しています。(これが私の疑問の回答です)

『ヘンリーはとにかくやさしく、人なつっこく、社交的だった。かしこそうな顔をしているところが好きだったし、ぼくはいつも彼を信頼していた。だから、彼といるととても居心地がよかった。目を見ればすべてがわかる。かわいい目や顔の表情によって、彼の気持ちが理解できた。ヘンリーの表情は単純だったので、それもぼくにはわかりやすかった。それがぼくの自信につながり、彼といると安心できた。ヘンリーがいつもみんなの注目を求めたがっていたところがすごく好きだった。みんなが彼のことを褒めてくれて、ぼくにあれこれ話しかけてくるのは気分がよかった。』
また、下記はヘンリーがガードナー家に来た時のヌアラの感想です。
『1994年5歳8ヶ月ヘンリーが我が家にやってきた瞬間からデールにほんとうの変化が出てきたのを目にしていた。彼は迷子のひとりぼっちの子どもから幸せな少年にとつぜん変身してしまった。ついに彼に目的を与えてくれる友達ができたのだ。ヘンリーが我が家の敷居をまたぎ、彼の特別の魔法を発揮しはじめる前には考えられなかったほど我が家は活気づいてきた。ヘンリーが来て二日の終わりには、彼なしではやっていけないとみんなが感じていた。』


そして、もうひとつ非常に重要だったことは、ヘンリーだけでは十分でないと考えたことです。
『いまではデールも進歩をつづけ、わたしたちと会話ができるようになってきたが、ほんとうの友達がいないために生活に物足りないところがあるのは否定しようがなかった。もちろん彼には特別大切な犬の友達はいたが、それ以外には生活を分かち合う人がだれもいなかった。彼がずっとひとりぼっちなのだとしたら、どれだけ勉強しても、あまりに悲しく目的がないように思われた。』
この課題を解決してくれたのが、セント・アンソニー校の同じユニット入ってきて、デールが相談係となったライアンとテレビゲーム(ソニック・ザ・ヘッジホッグ)を通じて友になった健常者のロバートの二人でした。そして、これをきっかけにデールの社交性は徐々に広がっていくことになります。

 

画像出展:「SEGA

今回、あらためてネット検索したところ、いくつか興味深いサイトを見つけましたのでお伝えします。

付記

先月22日の日曜日は驚きの解散による総選挙の投票日でした。野党の突貫工事による成果は凸凹があり、既存政権の大勝という結果で終わりました。

ところで、同じ日、注目されていた村田諒太選手の世界タイトルマッチの再選が行われました。試合は村田選手の7回TKOにより、念願の世界チャンピオンベルトは村田選手の手に渡りました。
『自信とは努力と結果が結びついた時に生まれるもの』これは村田選手の言葉です。そして、「自信」とは安泰なものではなく、常に掴み取るものであると言っていました。

私は、何となく、「自信」は一つのゴールという認識をもっていたので、この言葉はとても新鮮でした。そして、「結果」とは「努力」による小さな変化であっても良いのではないかと思いました。

 

カザフスタンのゲンナジー・ゴロフキン選手が、ミドル級では世界最強といわれているチャンピオンです。今後、村田選手の目標となる選手のようです。

写真:USA TODAY Sports

「おこだでませんように」

「発達ナビ」という発達障害について様々な情報提供をされている優れたサイトがあります。
その中に、「大人の一方的な注意は、子どもにどんな影響を与えるのだろう」というコラムを目にする機会がありました。下記『』はその一部です。

『クラスではいつも1人で過ごし、授業中に脱走しても放置され、校庭の片隅に座っているところを、よく見かけました。ボランティアの帰りに体育館を覗くと、「〇〇君は悪い子です」と名指しで先生から怒られているのを、見たこともありました。
娘は彼のことが好きだったそうです。「だって〇〇君は、私がいじめられているとき助けてくれた」「あの子はいい子だ」と、私に教えてくれました。
ある日の読み聞かせの時でした。読み始めたとき、最初はいつものように、落ち着きなさそうにゴソゴソし、顔もそっぽを向いていた彼。話が進むにつれ、いつの間にか食い入るような目をし、聞いていました。

なかなか関心を示さない子が、興味を持った絵本とはどんなものだろうか?という疑問がわき、この絵本を購入してみることにしました。
今回のブログでは作者である、くすのき しげのり先生の「あとがき」の全文をご紹介し、その後に石井聖岳先生の5枚の絵を掲載させて頂きます。

あとがき
おこだでませんように
『そう書かれた小さな短冊を見たとき、私は涙が出そうになりました。短冊を書いた男の子は、いつも怒られているのでしょう。この子が、楽しいと思ってしたことや、いいと思ってしたことも、やりすぎてしまったり、その場にそぐわなかったり、あるいは大人の都合に合わないからと、結果として怒られることになってしまうのかもしれません。
でも、この子は、だれよりもよくわかっているのです。自分は怒られてばかりいることを。そして、思っているのです。自分が怒られるようなことをしなければ、そこには、きっとお母さんの笑顔があり、ほめてくれる先生や、仲間に入れてくれる友だちがいるのだと。
そんな思いをもちながら、それをお母さんや先生や友だちに言うのではなく、七夕さまの短冊に、一文字一文字けんめいに書いた「おこだでませんように」。この子にとって、それは、まさに天に向けての祈りの言葉なのです。
子どもたちひとりひとりに、その時々でゆれうごく心があります。そして、どの子の心の中にも、このお話の「ぼく」のような思いがあるのです。どうか、私たち大人こそが、とらわれのない素直なまなざしをもち、子どもたちの心の中にある祈りのような思いに気づくことができますように。』   

くすのき しげのり

 

作:くすのき しげのり

絵:石井聖岳

出版:小学館

ページ数は32ページ、上の文章は抜粋です。

 

ぼくは いつも おこられる。

いえでも がっこうでも……。

 

 

きのうも おこられたし……。

きょうも おこられてる……。

きっと あしたも おこられるやろ……。

 

 

ぼくは どないしたら おこられへんのやろ。

ぼくは どないしたら ほめてもらえるのやろ。

ぼくは……「わるいこ」なんやろか……。

 

ぼくは、しょうがっこうに にゅうがくしてから おしえてもらった ひらがなで、 たなばたさまに おねがいをかいた ひらがなで ひとつずつ こころを こめて……。

くすのき先生からのメッセージであるとらわれのない素直なまなざしをもち、子どもたちの心の中にある祈りのような思いに気づくことができますように」 

このことを大切にしたいと思いました。

感覚統合法の理論と実践

今回は『新・感覚統合法の理論と実践』の再チャレンジです。前回(2016年11月)は「前庭系と筋緊張」というタイトルで、前庭系を説明する時に参考としましたが、この本に対する全体の理解は低く、明らかに消化不良状態でした。 全編の理解度を高めるため、そして発達障害児へのマッサージを行ううえでの基礎知識を増やすため、あらためて読み直しました。

 

著者:坂本龍生・花熊 暁
出版:学習研究社
 
※掲載されている図、イラストに関し、「画像出展」の明記がないものは、全て『新・感覚統合法の理論と実践』からの出展になります。

目次

1.子どもの発達と感覚運動 (第1章の概要です)
2.感覚統合法理解の基礎 (第2章、3章より感覚統合理論を支える神経生理学について。他の本からも図などをもってきました)
3.触覚のしくみとその働き (第4章~6章については、触覚と固有覚を取り上げました)

4.固有覚のしくみとその働き
5.神経生理学を意識したマッサージ 
(脳幹、固有覚、触覚、前庭覚の視点からマッサージをどのように行えばよいか考えました)

ちなみに、この本の見出しは次の通りです。
理論編 
第1章 子どもの発達と感覚運動の指導 
 感覚運動指導の意義

 障害児の感覚運動課題
 生物としてのヒトの発達
 ヒトの運動系の発達と感覚統合
 ヒトの認知系の発達と感覚統合
第2章 感覚統合法理解の基礎 
 感覚統合法の背景
 感覚統合とは何か
 感覚統合過程
 感覚統合障害
 感覚統合指導の原理と方法

第3章 神経系のしくみとその働き 
 神経系の概要
 感覚統合の中枢としての脳幹
 感覚統合理論を支える神経生理学
第4章 前庭系のしくみとその働き 
 前庭系のしくみ
 前庭系の働き
 前庭系の特徴と指導上の意義
 前庭機能の評価
 前庭刺激指導の留意点

第5章 触覚系のしくみとその働き 
 日常生活を支える触覚情報
 体性感覚系のしくみと働き
 触覚系の発達
 触覚の異常と評価
 触覚系の異常への指導
第6章 固有感覚系のしくみとその働き 
 固有感覚系の働き
 固有感覚系の神経学的理解
 固有感覚系の臨床観察
 固有感覚系の指導

 

実践編 
第7章 発達の遅れた子どもへのアプローチ 
 精神遅滞児の感覚運動の特徴
 症例別に見た指導の実際

第8章 体の不自由な子どもへのアプローチ 
 臨床観察のポイント
 臨床像の理解と指導プログラム
 症例別に見た指導の実際

第9章 自閉的な子どもへのアプローチ 
 感覚の調整の障害とその評価
 症例別に見た指導の実際
第10章 感覚運動指導における認知とコミュニケーション 
 遅れの重い子どもへの配慮点
 認知面への配慮
 コミュニケーション面への配慮
終章 感覚統合法の研究動向とこれからの課題 
 感覚統合法の動向
 米国での論争
  害児教育における意義と課題

1.子どもの発達と感覚運動       
 子宮の中は羊水の中に漂う無重力の世界。単調な母体の心音、腸音などの音の世界も、ほの暗くぼんやりとした光の世界も、劇的に変化します。羊水の感触は、温覚や触覚など種々の皮膚感覚が刺激される世界へと変わります。

 赤ちゃんは当初は生まれつき持っている反射や反応が助けてくれますが、徐々に感覚運動体験を積み、この多様性に富む複雑な世界に対し、柔軟に行動できるよう、自らの反応を複雑化していきます。 赤ちゃんの学習は感覚刺激への反応に始まり、動きの形で反応し、母親やその他の人々も含めた広い意味での環境との相互作用で成長します。基盤となる感覚運動発達は、姿勢、手指の巧緻運動と各部位(首、肩、肘など)の固定、感覚-運動-感覚間の統合(話を聞きながらノートに正しく書き取る等の総合的動作)などです。

 脳の研究やリハビリテーション学の進歩により、視覚や聴覚に加え、基本的な感覚ともいうべき触覚、固有覚、前庭覚の働きと様々な感覚間の情報統合が、子どもたちの発達の基礎となることが分かってきました。     

 動物が運動する場合、運動に関連して常に二つの感覚が必要です。一つは環境と自分との関係、一つは自分の中心と体の他の各部分との関係を教える感覚です。前者が前庭覚、後者が固有覚であり、これにより空間の中での運動が可能になります。

 50cm幅の溝を跳び越すとき、大げさに身構えて、1mも2mも跳ぶということはしません。視覚は溝の幅と接地点の状況を教え、足底は今踏んでいる地面の硬さを教えます。私たちは前庭覚や固有覚などから得た記録に基づき運動の計画を立て実行します。もし、この溝が2mであれば、運動はもっと慎重に計画されます。接地したときに、倒れないのは重力空間に対する頭部の位置関係、その位置を支える足の頭部に対する位置と運動の関係が入力により絶えずコントロールされているからです。

 

2.感覚統合法理解の基礎       
感覚統合法の背景
 感覚統合理論を支える神経生理学 
エアーズ(Anna Jean Ayres)は感覚の中でも、前庭覚、固有覚、触覚の三つが子どもの運動、情緒、認知、および言語発達の上で最も重要な初期の刺激であり、そのためには脳幹レベルの統合が重要であるとして、脳幹を感覚統合の中枢と位置付けています。

 

脳幹は下位の中枢神経で延髄・橋・中脳を含んでいます。また、脳幹網様体は脳幹の背中側にあり、白質でも灰白質でもなく、神経細胞体と神経線維が入り 交じって網目状をなしています。

脳幹は感覚の情報を受け、運動系、意識状態、情緒、自律調節に関わる、生命維持に不可欠な機能に関わっています。     

 

この絵では、青線は脳幹網様体に入ってくる情報、赤線は主な働きを示しています。そして、●は「神経核」を表しています。

網様体に存在している神経核から発する指令のうち、下行する橋網様体脊髄路(内側網様体脊髄路)伸筋の活動を高めます。同じく、下行する、外側の延髄網様体脊髄路(背側網様体脊髄路)屈筋の活動を高めます。

これらの指令は、γ運動ニューロンに接続し、筋肉の活動を調節することで歩行リズムの調節などを含む随意運動を円滑にさせます。

画像出展:「人体の正常構造と機能」 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上記3つの絵についてご説明します。

左上の図は、ブログ「前庭系と筋緊張」で使用したもので、『新・感覚統合法の理論と実践』の図を一部加筆したものです。また、他の2つは『人体の正常構造と機能』からの画像です。ここでは、前庭神経核についてご説明します。

この前庭神経核は脳幹の橋~延髄にまたがっており、対になっています。核は上核・下核・外側核・内側核と4つあり、内側核は頚髄から頚部の筋に、外側核は頚髄から腰髄の抗重力筋(脊柱起立筋など)に働きます。

耳にある前庭器官(半規管・耳石器)からの重力に関わる情報は、前庭神経核に伝わり、前庭脊髄路を興奮させ脊髄の反射回路を活性化させます。これにより、わずかな姿勢の崩れなどを認識し、抗重力筋に働きかけることで、姿勢を保持してくれています。

また、前庭神経核は眼球運動核(外転神経核・滑車神経核・動眼神経核)にもつながっています。これらの神経は眼を動かす筋肉、外眼筋(上斜筋・下斜筋・上直筋・下直筋・内側直筋・外側直筋)に作用します。

前庭覚・触覚・固有覚刺激の意義     
 前庭覚・触覚・固有覚の感覚系は、発達の初期段階で重要な役割を果たし、視覚と聴覚の発達や学習能力の発達の基礎を形成します。感覚統合法で問題とする脳幹の働きの改善にあたっては、これらの三つの感覚系からの入力は特に重要になります。
   
感覚統合指導      
 ヒトは、通常、運動したり遊んだりしているうちに刺激を感覚として入力しながら脳神経系が成熟していくので、そのための訓練を必要としているわけではありません。しかし、感覚と運動の不統合性が生じたときは、乳幼児であればあるほど適応反応がうまくいきませんし、発達が総じて遅れがちになります。したがって、そういう子どもたちの発達を支援するために、特別に構造化された環境を提供することが求められます。

     
感覚統合法の指導の中心原理     
 感覚統合の指導の基本的な原理は、感覚の入力、特に前庭覚や筋肉、関節などに存在する固有覚、あるいは触覚からの入力をできるだけ統合し、自発的な適応反応に高めるよう配慮し、それを制することを学ばせていくものです。指導していくための手掛かりとして、少なくとも次の6つの系列が重視されてきました。  
 ①触覚系と前庭系の健常化をはかること。    
 ②原始的姿勢反射(無意識に出る赤ちゃんの反応や姿勢)の統合を進めること。    
 ③平衡反応を発達させること。    
 ④視運動を正常化すること。    
 ⑤身体両側の感覚運動機能の協調性を高めること。    
 ⑥視覚的形態と空間知覚を発達させること。    
 感覚統合の指導は、ともすると遊戯療法と間違えられますし、学校では体育の授業ではないかという批判をよく受けます。しかし、感覚統合の指導は、活動のしかたや運動の技術を教えようとするものではありませんし、いわゆる教科的にいう体育でもありません。その根幹は、感覚入力のよりよい統合をはかるという目的的な治療行為であり、そのための観察、診断、指導プログラムが確立されています。

3.触覚系のしくみとその働き
日常生活を支える触覚情報                  
 私たちは周りの環境を知るためだけではなく、姿勢、情緒、覚醒状態などを調節するためにも、日常生活の中で触刺激をむしろ積極的に使っています。触覚は人が社会生活を維持するための基礎として働き、日常生活全般に影響を及ぼしています。

            

感覚の種類と感覚器                 
 「体性感覚」は、皮膚の表面で感じられる表在感覚と、もう少し深いところで感じる深部感覚を含めたものです。一方、「痛み」は痛みという刺激があるのではなく、圧迫や熱さなどの刺激が皮膚や深部の組織を損傷し、その時に出る発痛物質が痛みの感覚器に作用して痛みとして感じられます。

主な内因性発痛物質には、カリウムイオン、ブラジキニン、ヒスタミン、アセチルコリンなどがあります。カプサイシンは外因性発痛物質、PG(プロスタグランジン)は発痛増強物質となり、内因性発痛物質とは異なる物質です。

 

この表は、「触覚線維」と2つの「痛覚線維」を説明したものです。

触覚線維の特徴は、痛覚線維に比べ太くて(有髄Aβ線維)、速いというものです。

痛覚を伝える線維には鋭い痛みの一次痛を伝える高速タイプ(有髄Aα線維)と、鈍い痛みの二次痛を伝える低速タイプ(無髄C線維)の2種類があります。

これらの痛覚線維は、触覚線維と異なり、興奮性または抑制性に作用する神経伝達物質を伴います。表で紹介されている、Glu、SP、CGRPの3つはいずれも興奮性神経伝達物質です。抑制性伝達物質には、GABAやグリシンなどがあります。なかには受容体が興奮性か抑制性かを決める神経伝達物質もあり、これにはセロトニンやノルアドレナリンなどが該当します。

画像出展:「痛みと鎮痛の基礎知識[上]基礎編」

深部感覚に関係する筋肉からの情報は意識されにくく、圧迫、振動、運動覚、位置覚などは、筋肉の伸張状態を感知する筋紡錘や関節の感覚器(固有受容器)からの情報と皮膚の感覚の複合産物といえます。この他、触るだけでなく、指先を動かすことによって初めてわかる手触りや、物の形の弁別なども、指先の皮膚と指が動くときの筋肉および関節からの情報が、脳で統合されたことにより生じた感覚です。  

              
体性感覚の経路
意識できる体性感覚の経路-脊髄視床路と後索毛帯路                
意識できない体性感覚の経路                
原始感覚系と識別感覚系   

             
触覚系の発達

 胎生期の神経発達                 
 神経系の形成と組織化                
 受精後、四肢の出現に先立って、数週で神経系が形成され始め、3カ月目で口腔周辺への触刺激に対して、頭や体を後ろにのけ反らせる回避反射が出現します。反射は最も単純な感覚の処理のされ方ですが、この反射の出現は感覚入力と運動が結びつく回路ができていることを指しています。

回避反射はやがて吸啜・嚥下反射に変化し、生後の哺乳行動を準備します。この反射の防衛的なパターンから適応的なものへの変化は、神経系のフィードバック機構にその説明を求めることができます。刺激の入力によって引き起こされた運動反応は、最初の刺激に加え、筋肉からの新たな刺激を加えます。この繰り返しが神経線維の樹状突起の数を増やし、神経線維の髄鞘化を促進し、近隣のニューロンとの結びつきを密にします。その結果、反射の内容が変化していきます。    

 触覚と固有受容覚との統合                
 胎児は子宮内で、羊水、脂肪の膜などで何重にも保護されています。生後、これらの保護は突然取り外され、新生児にとって過剰な重力と刺激の溢れる世界で活動することになります。

して、まず体の内外の境界となる皮膚に保護機制が強く働くことになりますが、保護機制だけではうまく環境に適応していけません。反射の中には環境に積極的にかかわっていく運動パターンもいくつか身につけています。モロー反射や非対称性緊張性頚反射、緊張性迷路反射は屈曲優位な新生児期の姿勢を是正していくのに役立つと言われています。      

 触覚と運動企画                 
 新生児にも四肢の動きはありますが、頭や体全体の動きに影響されて、意図した動きになっていません。固有覚は触覚と統合されることによって身体感覚を明確にします。このようにして自分の体の全体のイメージ(ボディイメージ)とそれぞれの部分の位置関係の理解を生み、その効率的な動かし方の基礎を作りあげます。                
 触覚と情緒の発達                 
 多くの動物の子育ての研究は、出生直後の子なめ行動が免疫機能をはじめとする生体の生命維持活動を高めることを報告しています。そして、人間の長い分娩時間中に受ける多量の触圧刺激が子なめに相当するものではないかと類推されています。

人間は誕生の瞬間だけでなく、その後の発達においても成人とは比べようもないほど、多くの触圧刺激を受けます。子宮内で多くの保護のもとにいた胎児がその保護を突然解かれるならば、生後もそれに替わりうる保護が必要だからです。乳幼児の自我や情緒の発達の研究家たちは、こぞってそれに相当するものを養育者との肌の接触を通した情緒的交流であるとしています。身体の境界に子宮環境を想起させる心地よい刺激を感じることは、子ども自身に安心をもたらし、この安心感が自・他を同時に感じさせ、自我を育てるとともに、人に向う愛着を育てるといわれています。      

          
触覚系の異常への指導 
 抑制的効果

 口腔周辺への触圧刺激、腹部への触圧刺激、手掌、足底への持続的圧刺激、背中への軽擦(少し圧を加えながらこする)、35℃から37℃の温度

 促通(興奮)的効果

 口腔周辺への動きのある触刺激、皮膚知覚体節T10への動きのある触刺激、ブラッシング、氷

 

 

「皮膚知覚体節T10」とは左図、体の中央、お臍付近の高さの周りになります。

画像出展:「人体の正常構造と機能」

 

 刺激する体の部位 
 触覚に対する過敏さが目立つ子どもに対しては、比較的弱い刺激を耐えやすい背中、手足の外側部などに加え、それが耐えられるようになったら刺激を強くし、その後、徐々に敏感な部分に移行していくのが良い方法です。こする方向は遠心性(毛に逆らわない)の方が刺激が弱いものになります。                
 遊びの中への触刺激の導入                 
 筋緊張の低下(低緊張)には促通的な刺激が、多動に対しては抑制的な刺激が必要になります。しかし、低緊張で多動を示す子どもも少なからずいます。このように刺激の与え方は機械的には決定できません。あくまで刺激を与えた結果をみながら、与えるべき刺激を調整する必要があります。
人は最も大きな刺激源であり、人に対する感情によって、刺激の感じ方もずいぶん違ってきます。子どもとの信頼関係ができあがっていない段階では、抱いたり、近づいたりすることが子どもの不安を高めかねません。他人への不安は触覚への過敏性の結果であると同時に、その原因ともなります。

 重症心身障害児など触刺激に低反応を示す子どもには、筋肉や関節からの刺激を同時に入れて、より識別的な触覚を発達させる必要があります。そのためには、手足を他動的に動かすだけではなく、体を起こし、首、体幹、手に支持性をつけていくことも大切な点です。

4.固有感覚系のしくみとその働き                   
固有感覚系の働き                  
 私たちが運動するとき、固有感覚と呼ばれる筋肉や腱、関節からの情報が、絶えず脳に流れ込んでいます。私たちが目をつむっていても、体位はどうなっているのか、自分の体がどのように動いているのかが分かるのは、この感覚の働きのおかげです。

 固有感覚系は、体の動きに関する情報を脳に送り、脳はその情報に基づいて体の動きを軌道修正します。私たちがなめらかに、そして意識的努力なしに、あるいは、動きのプロセスを考えたり一つひとつの動きを学習したりすることなしに、一連の運動を繰り返すことができるのは、固有感覚系の働きがあるからです。さらに、この感覚系の働きは、視空間認知や身体像(ボディイメージ)の発達にとっても必要不可欠です。

 固有感覚は、運動感覚(意識的な感覚)と呼ばれることもありますが、この二つを区別せずに用いることが多くなっています。この感覚系からの情報は、ふつう無意識的に処理されますが、新しい運動をするときや大きな努力を必要とする運動の場合は、意識に上ります。この感覚を刺激する活動は、一般的に体幹部の筋肉活動で、少なくとも体重の移動を伴うようなものです。

 固有感覚情報をうまく処理し、関節の安定と姿勢の安定をはかるためには、骨格筋の「同時収縮(屈筋群と伸筋群の同期的収縮)」の発達が重要です。同時収縮とは関節の周囲の屈筋群と伸筋群を同時に収縮させ、関節を一定の位置で固定する働きをさします。同時収縮は協調運動のような巧緻動作の発達にも深い関係をもっています。筋の同時収縮が発達するためには、その前段階として、屈曲と伸展の繰り返し運動である「相反性運動(屈曲と伸展の繰り返し)」が発達する必要があります。

 屈曲のパターンは人生の早期に発達するもので、腹側の筋肉の機能と考えられています。たとえば、仰向けにした状態から起き上がるときに使うパターンなどです。屈曲は姿勢の安定の発達の土台であり、運動スキルが発達するうえでも重要です。このパターンを育てるには、ボルスターやフレクサースイングなどにしっかりとしがみついて乗る活動がよく使われます。こうした屈曲活動には、たいてい触覚活動が先行しており、活動から得られる触覚や固有感覚の刺激は、適切な運動の協調的活動の基礎となります。

 屈曲と同様に伸展パターンも、人生早期に発達する背中側にある筋肉の機能です。子どもは、ジャンプのように興奮したときの動きに伸展パターンをよく使います。この伸展パターンは、姿勢の安定のもう一つの土台です。伸展パターンによる活動には、他の感覚刺激、特に前庭刺激が先行します。伸展パターンを引き出す活動として非常によく用いられるのは、スクターボードやハンモックに腹ばいで乗る活動です。


 同時収縮は、自発的な関節の伸展を伴う運動の際に最も強力に現われます。トランポリンの上での意図的なジャンプ、腹ばいでスクーターボードに乗って壁をけって進んだり、両手で床をこいで進んだりする遊び、スクーターボードに乗って手に持ったリングを引っ張ってもらう遊びなどは、いずれも同時収縮する活動です。



 同時収縮の発達には一定の順序があり、首や腰など体幹の関節からまず発達します。体幹の筋の同時収縮の発達は、四肢の関節の同時収縮の土台となりますので、指導もこの順序で行います。

 また、固有感覚系は触覚系と深い関係を持っています。固有感覚と触覚は組み合わさって、体の空間内での動きについてより正確な情報をもたらします。たとえば、空間理解のよくない子どもに対しては、触覚的な手がかりを与えると、よりうまく行動できます。新しい不慣れな運動課題の計画と遂行の能力(運動企画能力)がうまく発揮されない場合には、運動感覚に加えて触覚を経験させるといった、身体意識を増大させる働きかけが有効です。寝返り、ジャンプ、歩行、ボール遊び、スクーターボード遊びなどは、難易度の調節が簡単で、たいへん利用しやすい活動といえます。  

               
固有感覚系の神経学的理解                  
 固有感覚入力は姿勢調節と関連して、視覚、前庭覚とともに中枢神経系の小脳に伝達され、脳幹(延髄、橋、中脳)からさらに大脳の感覚野に伝えられます。小脳に伝達される固有感覚入力が意識に上がることなく処理されるのに対して、大脳皮質に伝えられる情報は意識化されて四肢や姿勢の認知にかかわり、意図的行動と深く関係しています。大脳に伝えられた固有感覚情報は、錐体路という運動神経路を通して四肢躯幹を自発的に動かしたり、動きを微妙に修正したりします。これは、子どもの具体的遊び活動そのものです。

 大脳からの指令による自発的・目的的な遊び活動が自動的に円滑に、また正確に行われるためには、一定の筋緊張が必要とされます。これには網様体-脊髄系と呼ばれる運動経路が重要な役割を果たしています。この経路が働くためには、大脳、小脳、脳幹が互いに関連し合って情報を統合することが必要です。この情報の統合がうまくいかないと、姿勢調節、バランス、ボディイメージ(主に身体の自発的動きによって作られる)の形成に問題が生じます。

 

固有感覚系の臨床観察

 筋緊張と目的的運動の遂行 

 固有感覚の処理が最も関係しているのは運動の遂行です。触覚と関連して現われる体性感覚の統合の障害は、体性感覚性障害として著しい不器用さをもたらします。この障害では、運動の背景となる適切な筋緊張の障害と、それに伴うボディイメージの形成の問題がみられます。運動企画能力(運動概念の形成と相互に作用する)の障害は、このボディイメージの障害に起因しています。感覚運動指導では、目的的運動の遂行を強調した遊び活動を通して指導を行いますが、筋緊張、ボディイメージ、運動企画の三つは、子どもの行動を理解するためのキーワードです。

固有感覚系の指導

 運動活動を通して経験される固有感覚は、触覚とも関連しながら、子どもの筋緊張を適正にするとともに、興奮を鎮め、触覚の敏感性を低減します。したがって、固有感覚刺激は、覚醒水準が高く多動性を示す子どもに対しても、反対に注意機能が低下して寡動な子どもに対しても、必須な感覚刺激といえます。

 発達障害児では、感覚の基本的な調節作用がうまく働いていないことが多く、感覚入力に非常に敏感であったり、逆に鈍感であったりします。その結果、覚醒水準の障害や注意の障害、あるいは多動や寡動などの動きの問題が目立ちます。

 ※上記は熊谷高幸先生説(自閉症スペクトラムには感覚過敏が関与している)に通じるものであり、「心理的問題以前の、外からの刺激という接点の問題を考えるべき」という事につながると思います。

 固有感覚(および触覚)の抑制的な使用法は、ゆっくりとしたリズミカルな動きと、全体に均一の深い圧刺激です。一方、促通的な使用法は、速い不規則な動きと、断続的な軽い触刺激です。原則として、前者は子どもの状態が多動で転導性(注意があっちにこっちに次々に移る様子)の強い場合、後者は寡動(動きが少ない)で覚醒水準の低い場合に用います。

 下記の表(固有感覚を取り入れた遊び活動の内容)は、発達障害児に適切と思われる固有感覚を主とした遊び活動についてまとめたものです。どんな遊び活動にも固有感覚経験が含まれていますが、四つの活動(動かす、押す、引っ張る、持ち上げる)パターンは、とりわけ同時収縮を必要とします。したがって、活動の対象は「重さ」のあるものを利用することが多くなります。また、抵抗を用いるのも、これと同じ考えです。また、この表の主たる目標は、固有感覚の処理の改善です。具体的には、伸筋緊張の改善や体幹の安定、姿勢の発達と、それに伴う身体像の形成や身体の動きの改善などです。さらに、視空間認知や動作・行動の改善、四肢の協調運動の改善も目標となります。これらの目標を達成する過程で、ことばによる指示の理解の高まりや、自分の動作を言語化する能力の発達もみられます。活動を行う中で、子どもの活動状態から固有感覚の処理過程を評価しますが、感覚の処理に無理な努力を必要とするほど、子どもから不平や疲労の訴えが出てきます。反対に感覚の統合がうまく行われていると、子どもは活動に興味を持ち、積極的に参加するようすがみられます。 

5.神経生理学を意識したマッサージ
 感覚統合理論を世に発表したエアーズ(Anna Jean Ayres)は、前庭覚、固有覚、触覚の三つが子どもの運動、情緒、認知、および言語発達の上で最も重要な初期の刺激であるとし、そのためには脳幹レベルの統合が必要であると考えました。
発達障害児へのマッサージにおいても、この3つの感覚と脳幹という下位中枢神経に働きかけることが施術の柱になります。

施術を行う前提として発達障害者への理解が第一ですが、基礎知識が欠けていては目的意識を持つことは難しく、漠然とした施術になりがちです。次の3つはまさに基礎知識です。
①前庭覚に対する反応
②触覚防衛反応
③筋緊張(高い筋緊張と低い筋緊張)

 

前庭覚に対する反応                 
 前庭刺激を怖がる子ども                
すべり台で手をブレーキにスピードを落としたり、不安定な姿勢ではすべれません。ブランコも地面に足をつけて止めてしまうなど、リズミカルなゆれ刺激を楽しめません。ただし、これらの背景には運動経験が少ないということも関係していると思われます。

 

  重力不安を示す子ども

前庭刺激を怖がる状態がさらに強くなると、情緒的な拒否反応が現われてきます。ラージボールやスクーターボードのように両足が地面から離れることを嫌がります。重力不安の子どもは、バランスが崩れそうになったり、普段とは違った姿勢をとらなくてはならない場面ではパニックになることもあります。

 

重力不安により、頭の位置を維持するために、首、肩、体幹の筋肉は緊張し、つねに硬くなった状態。(強い緊張とも関係している)

 強い前庭刺激を求める子ども                

より強い前庭刺激を求める児童もいます。この場合、トランポリンで遊ぶと平気で30分くらい跳んでいます。ハンモックに乗せて勢いよく回転させ、急に止めたあとでも目が回りません。普段の傾向は活動量が多く、じっとしていないタイプに多く、前庭刺激が十分入力されていないのではないかと思われます。前庭刺激が不足し抑制された状態で過ごしていると、自分の身体のイメージがまとまりにくくなると考えられています。

 

触覚防衛反応
「触覚防衛反応」とは特定の触覚を嫌い、避けようとする行動です。 触覚は発達の早期には母子関係を形成する主要な感覚だといわれています。 また、運動を行ううえでガイドとなる働きあります。                
 触覚防衛反応を示す子どもは、触角刺激に対して敏感なタイプの子どもだといえます。このような反応が幼稚園や保育所の年長組から学校に入っても強く見られる場合、生活面や学習面、運動面、対人関係の面にさまざまな問題を残すことが考えられます。一方、
触刺激に鈍感な場合、自分が触られた場所を指せないというケースもあります。触知覚が混乱していると、身体のイメージがばらばらになり、運動するうえで制約が出てきます。

筋緊張(高い筋緊張と低い筋緊張)

 目覚めているとき、骨格筋は適切な姿勢を保ち、いつでも運動ができるように、一定の緊張状態を保っています。これを筋緊張といいます。また、屈筋と伸筋を同時に緊張させて関節を固定する働きを同時収縮と呼びます。筋緊張の異常や同時収縮に問題があると次のような問題が生じます。

 

 静的な姿勢での全身の筋緊張

 筋緊張が高い子どもは関節の可動域が狭く、各関節をゆっくり牽引、屈曲、伸展したときに強い抵抗が感じられます。反対に緊張の低い子どもは関節の可動域が普通以上に大きく、抵抗が少なくて、ぐにゃぐにゃした感じがします。また、筋緊張に異常があると、体性感覚の処理がうまくできず、適応反応の獲得が妨げらやすくなります。

 

 動作時の筋緊張                
 筋緊張が高いと動作に柔軟性がなく、過緊張が見られます。一方、緊張が低いと頭がついてこなかったり、頭を無理に起こそうとして全身に過度の緊張が生じます。寝返り動作では、筋緊張の高い子どもは、全身を1本の丸太のように動かしたり、過度に体を反らせて反りを利用した回転をしようとしますが、緊張の低い子どもの場合は、体を過度に反らせたり、反対に屈曲させたりして寝返ろうと試みます。

 

 筋の同時収縮                
 両肘を軽く曲げた状態を子どもにとらせ、大人の母指を両手で握らせて、軽く押したり、引っ張たりしてみると同時収縮が上手にできる子どもは首や肘がしっかり固定されて、頭がぐらついたり、肘が動いたりしません。筋緊張が低い場合は首や肘の固定ができず、筋緊張が高い場合は動きに柔軟性がなく、関節の拘縮が見られることも少なくありません。筋の同時収縮がうまくできないと、適切な固有覚情報が得られず、誤った運動パターンを学習してしまったり、運動企画性の発達が妨げられます。

 

 緊張が高い場合の主な問題点

1.一人で座れなかったり移動できなかったりする。
2.手を使って探索したり、首を回して外界を認知できない場合、重い精神発達の遅れにつながりやすい。
3.筋肉の柔軟性の欠如は運動の固定化を生み、さらに、固定から逃れようとして代償的な運動パターンを引き起こし、それが反復活動によって習慣化されると異常な姿勢筋の緊張を作り出す。

 

 緊張が低い場合の主な問題点
1.椅子からずり落ちてしまったり、手で床を支えていないと上体を起こしていられない子もいる(体を支える補助に使われると手の機能の発達が遅れる原因になる)。
2.腹筋、背筋が弱いとまっすぐな立位の姿勢が難しい。(腹筋、背筋の筋トレは大切)
3.姿勢を維持するために常に力を入れているため、とても疲れやすくなる。長時間学習に集中することができない。
4.筋緊張が低い子どもは、表出反応が鈍くなり、覚醒レベルも低いことが多く、「意欲がない、やる気がない、不真面目だ」と誤解されることがよくある。
5.各関節の可動域が過度であったり、逆に拘縮の進行、骨のもろさ、筋肉全体の異常な柔らかさなどがみられる。

さらに、姿勢や目の動きの状態についても確認する必要があります。
姿勢と運動

 どのような姿勢が取れるか、どの運動ができるかだけでなく、どのように姿勢を取っているか、どのように体を動かしているかをよく観察することが大事です。

 寝返り

 両側になめらかに寝返ることができるか。まっすぐに回転できるか。体幹の過伸展、屈曲を利用して回転していないか。

 腹ばい

 頭を持ち上げて保持できるか 。手で上体を支えられるか。支えられる場合、手のひらで支えているか、それとも肘で支えているか。

 四つばい

 四つばいの姿勢が保持できるか。四つばいの姿勢で前後左右に体重移動ができるか。背中の過伸展や背中を丸めた円背はないか。なめらかな四つばい移動ができるか。

 座位

 骨盤を起こして座位がとれるか。手をつかずに座っていられるか。股関節の外転、外旋方向への柔軟性はあるか。椅子に座って両足をつき、股関節が中間位で保持できるか。               

 ひざ立ち                
 両膝で床を踏みしめることができるか。首から下肢にかけて抗重力反応があるか。股関節の屈曲、背中の過伸展などは見られないか。

 立位                
 両足で床を踏みしめることができるか。体のゆれぐあいぐあいはどうか。首から下肢にかけて抗重力反応があるか。               
 姿勢背景運動                
 体のゆれが見られないか。一方の手が動くと、使っていない反対側の手も同じように動く連合反応が見られないか。   

            
眼球運動                 
 姿勢や運動の機能に問題があったり、前庭系や固有覚系の情報処理がうまくできないと、眼球運動の問題が起こりやすくなります。

マッサージは、皮膚、筋膜などの結合組織、筋肉に対して、指や手などを使って、触る、さする(軽擦)、圧迫する、叩くという手技と、関節の可動域確保や筋力維持などを目的に、関節を動かす手技が基本です。関節に対する施術では、関節の力を抜いた状態で行う運動を「他動運動」、自分自身で動かすことを「自動運動」、施術者が動かす筋肉に抵抗を加えることを「抵抗運動」といいます。

ここでは「新・感覚統合の理論と実践」に出てくる「触圧の刺激」という言葉に焦点を当て、そこに記載された内容をご紹介し、その上で感覚統合法を補完するマッサージについて考えたいと思います。

 

感覚調整の障害
 『新・感覚統合法の理論と実践』の中では触覚防衛反応は、自閉的な子どもたちが持っている感覚調整の障害によって発生するものと考えられています。そして、感覚調整の障害について、神経生理学的および感覚統合法の立場から次のような説明がされています。

 自閉的な子どもたちは、対人関係や言語、認知の発達の遅れに加えて、こだわりやパニック、多動性、自己刺激行動など、さまざまな行動上の問題を示します。感覚統合理論では、このような特徴を示す自閉性障害の原因について、脳幹部や大脳辺縁系、小脳などを含む広汎な中枢神経系の機能不全によるものと考えています。特に、皮質下の脳幹や間脳における感覚の調整の障害は、外界からのいろいろな感覚情報の処理の偏りやひずみの原因となります。それはさらに、皮質を中心とした高次神経系での情報処理に影響を与え、その結果として、前述した様々な問題が現われてくると考えられています。

 感覚統合法の立場から自閉症を解釈すると、自閉症とは、感覚情報の登録や調整機能の障害のために、人や物を含む周囲の環境との相互交渉に問題を生じている子どもといえます。したがって、自閉症児に対する感覚統合法の指導では、まず、感覚刺激に対する反応の様相を評価し、個々の子どもの感覚調整の障害に対応していきます。なお、評価は感覚歴、臨床観察、そして心理検査の結果が求められます。

 過反応タイプの子ども(触覚防衛反応)                 
 触覚防衛反応を示す自閉症児は、ふつう私たちが心地よく感じる感触に過敏に反応し、その刺激を嫌って逃避したり、興奮したりします。身体部位では、首筋、顔面、口周辺、そして手のひらなどへの触覚刺激に対して過敏症を示しやすいようです。触覚防衛は、覚醒レベル、情緒的な不安定性、対人関係の問題、音やにおいに対する過敏性、多動性、固執性、注意転導性などにも関連しているため、自閉症児の発達を援助するうえで、早期からの改善の取り組みが必要です。   

 低反応タイプの子ども(前庭-固有系の感覚登録障害)                 

 私たちが知覚できる刺激をわずかしか感じることができないため、結果として多くの強い刺激を求めることになります。そのため、トランポリンやぶらんこ、グローブジャングルなどの遊びに夢中になります。一方、いったんそれらに入り込むと、今度は特定の感覚刺激や遊びに固執しがちになります。

 

 感覚歴

 感覚調整の障害は、触覚系と前庭-固有覚系に生じやすく、過反応(過剰反応)や低反応(過少反応)といった両極端な反応となって現われます。前者には、触覚防衛や重力不安などの状態があります。また、後者は、感覚刺激の登録が低下しているために、刺激に反応しにくい状態です。                
感覚調整機能に関する質問では、現在の様子だけでなく、過去(通常は幼児期)も確認します。これは現在改善されている場合でも、ストレスが生じる過剰な刺激状況に出会ったとき、一時的にせよ再び感覚調整の問題が現れて、不適応行動を生じる可能性があるからです。

 臨床観察                 
観察項目                
1.神経学的徴症状:原始反射の統合状態や筋緊張など                
2.粗大運動と微細運動:姿勢や歩行状態の特徴、運動企画力、手指機能など                
3.対人関係:アイコンタクト、やりとり行動、指示行動、模倣、象徴遊びなど                
4.言語:ことばの理解と発話(反響言語、トーン、構音、会話)のようす                
5.行動の偏り:固執性、パニック、自己刺激行動、注意転動性、多動(寡動)性など                
 以上の観察項目のうち、対人関係、言語、行動の偏りについては、特別な検査場面や指導場面における周囲の人や物とのかかわりの中で把握するようにします。

 

 心理検査

 自閉症児の場合、その場の状況や課題によって観察結果が変動しやため、1回で判定するのではなく、色々な場面で観察を繰り返し、総合的に評価するようにします。

 

  筋緊張の強い子ども(1)-重度の運動機能障害の場合                 
 触圧の刺激などによって緊張部位のリラクセーションをはかり、屈筋群と伸筋群の拮抗をバランスよく保ち、柔軟な筋肉の活動を促します。

 ねらい
 軽い触圧の刺激を持続的に入れることで、反り返りを抑制したり、動かしにくい筋群の活性化をはかります。

 活動の展開と留意点
 重度の子どもたちへの「抑制的な触覚刺激」は、中枢あるいは末梢神経障害に起因する皮膚の過敏症、長期にわたる異常な筋緊張から柔軟性の欠如を改善するために利用されます。また、「促通的な触覚刺激」は、原始反射は統合されているが平衡反応が十分に発達していないので、それを強化する場合や、触覚刺激への反応が弱い場合に利用します。

 抑制的な触覚刺激

 反り返りが強く自力で頚部を動かせない子どもに対しては、以下のような方法が考えられます。

 頚部を左または右に回旋し、後弓反射(脊柱の伸展、肩甲帯の後退、下肢内転筋の痙性、過度の伸展)の強い子どもに対しては、前斜角筋中央部に軽く指を当て、軽い触圧の刺激(ソフトタッチ)を入れます。そして、中斜角筋、後斜角筋、後頚筋、上僧帽筋、胸鎖乳突筋あたりへの軽い触圧の刺激(ソフトタッチ)をくり返すことで過敏性をとります。

自分で体を動かせない、触覚刺激への反応が弱い子どもへの部分的な技法には、促通的な触覚刺激として下右図のようなものがあります。                                      


筋緊張の強い子ども(2)-異常な運動パターンを示す場合                 
 子どもたちの異常な運動パターンは、異常な姿勢筋の緊張と姿勢反射の統合不全によって生じた姿勢変換の誤学習が蓄積したものといえます。最初は正常からわずかに偏位したものだったのが、そのわずかな偏りの上に学習を積み重ね、ますます偏りが強化されてしまったということです。こうした障害が形成されていく過程は、筋肉の柔軟性のなさからくる運動の固定化に始まります。さらに、固定から逃れようとして代償的な運動パターンを引き起こし、それが反復活動によって習慣化されます。触圧の刺激によって緊張部位のリラクセーションをはかったり、ボディイメージを育てたりして、柔軟な筋肉の活動を促します。

 ねらい

 軽い触圧の刺激を持続的に入れることで、緊張部位のリラクセーションをはかったり、ボディーイメージを育てたりして、柔軟な筋活動を促します。

 活動の展開と留意点

 ボディーイメージが育っていなかったり、異常な運動パターンを示す子どもたちにとって、持続的な触圧の刺激は、身体部位の無視を軽減させたり、触覚の閾値を正常化したりするのに有効です。また、ブラッシングによって筋紡錘を刺激し、筋活動全体の活性化をはかります。

 軽い圧の刺激

 身体各部への持続的な圧刺激は、異常な運動パターンを鎮静する効果があります。

 腹部中央へ手を当て、軽い圧を加えます。これは、全体の異常緊張を抑制し、全身のリラクセーションをもたらします。

 横隔膜に沿って両手を当て、呼吸パターンに合わせて軽い圧を加えます。これは、呼吸のリズムを整え、大胸筋から頚部のリラクセーションに役立ちます。

 あぐら位をとらせ、後から脊柱のゆがみを観察し、動きの悪い筋肉の上に手を当て、子どもの動きに合わせて軽い圧を加えます。これは脊柱起立筋や腰方形筋の活性化をうながし、縦方向への緊張の手助けとなります。

 手を中心としたマッサージをし、末梢を意識させます。

筋緊張の低い子ども-重度の運動機能障害の場合

 全身の筋緊張が低く、首が座っていなかったり、同じ姿勢を維持できなかったり、姿勢変換ができない子どもは、一定の緊張が維持できないため、各関節の可動域が過度であったり、逆に拘縮の進行、骨のもろさ、筋肉全体の異常な柔らかさなどがみられます。このような子どもたちは、自分で身体を動かしたり探索したりできないために、情報をうまく受けとめることができず、表出反応も鈍くなり、覚醒レベルも低いことが多いようです。こうした状態は、特に脳性まひの低緊張タイプや先天性筋ジストロフィー症、難治性てんかんなどによくみられます。

 促通活動を中心とした触圧の刺激などによって屈筋群の活性化をはかり、柔軟な筋肉の活動を促します。

 基本姿勢パターンと触圧刺激

 ねらい

 固有感覚系に適切な感覚を入力することで、基本姿勢パターンの改善をはかります。同時に触圧刺激を利用して、覚醒レベルを高めたり、弁別機能を高めたりします。

 活動の展開と留意点

 伸長、牽引、タッピング、抵抗などを固有感覚の入力として行ったり、温度刺激や触覚刺激を促通的に使うことで、姿勢パターンの改善をはかったり、ボディーイメージを高めたりして、覚醒レベルを上げるようにします。

 うつぶせ

 子どもを肘たて位にし、頚周囲筋群を同時収縮させ、肘を90度屈曲位に保ち、肩の真上から垂直圧を加えます。ゆっくりと10数え、肩から手が離れないようにゆっくり力を抜きます。

 椅坐位

 頭を正中位に置き、肩の真上から力を加え、関節圧縮を利用して躯幹筋群の縦方向への促通をうながします。

 座位

 あぐら座位をとらせ、脊柱のゆがみを観察しながら、両手を凸側の起立筋および広背筋に当て、まっすぐ下に負荷をかけ、ゆっくり手を離します。

 三角座りからそんきょの姿勢をとらせ、両足の踵から前方に体重移動させます。これらの持続的緊張が加えられると、足関節周囲の同時収縮が促通されます。             

 四つばい

 四つばい位をとらせ、肩から真下に負荷をかけます。股関節に対しても同様に負荷をかけます。前後左右、対角線方向に体重移動を行い、各関節に圧迫を加えます。

マッサージのポイント  
1.人は最も大きな刺激源であり、人に対する感情によって、刺激の感じ方もずいぶん違ってくると言われています。従って、子どもとの信頼関係を築くことが最初の課題です。  
2.触覚防衛反応などの感覚調整の障害については、「感覚調整機能評価表」を利用し、触覚系と前庭-固有覚系の過反応と低反応の実態を把握します。
3.筋緊張の強い子には、抑制的な触圧の刺激などにより、緊張部位のリラクセーションをはかり、屈筋群と伸筋群の拮抗をバランスよく保ち、筋肉の柔軟性を高めます。
4.筋緊張の低い子には、促通的な触圧の刺激などにより、屈筋群の活性化をはかります。また、関節への抵抗運動により筋緊張を高めるとともに拘縮を予防します。              
5.ボディイメージが弱い子には、関節の抵抗運動により、それぞれの筋肉の動かし方を繰り返し学習します。 
             
全体のまとめ
1.マッサージは感覚統合法を補完します。
2.マッサージは筋緊張、感覚調整、ボディイメージの状況を改善します。
3.マッサージを行うにあたり、子どもとの信頼関係を築くことが大前提になります。 

付記

左は、奈良県立教育研究所内の特別支援教育ガイドのページです。クリックすると「感覚運動指導の実際」というスライド154ページ(PDF 1.3M)の資料をダウンロードできます。

なお、この資料は中尾繁樹先生が作られたものです。

 

こちらは、コラムで「音楽療法」の有効性などを紹介されています。

その中で、次のようなコメントがありました。

 

『何よりも大切なのは、音楽を通して、セラピストと子どもがコミュニケーションを取ることです。これこそが、音楽療法のなかで一番大切な部分であると言っても過言ではありません。

音楽療法士のピアノに合わせて楽器を鳴らす、音楽療法士と順番に楽器を鳴らす、出来たら音楽療法士とハイタッチをする…子どもたちは、このように音楽を通してコミュニケーションを学び、社会性を獲得していくのです。』

子どもと施術者とのコミュニケーションは、マッサージにおいても、同様に重要なものであると思います。

自閉症と感覚過敏

「自閉症と感覚過敏」の著者である熊谷高幸先生は、著書の「はじめに」の中で、障害の発生源には「感覚過敏」があるとのことを指摘されています。
マッサージは、主に直接的な触感覚・固有感覚と間接的な聴覚・視覚、そして1対1のコミュニケーションの中で、これらの感覚が刺激されます。「感覚過敏」が熊谷先生のお考えの通り、障害の発生源であるとすれば、4つの感覚を接点とするマッサージは活躍の場を広げる可能性があると思います。そして、「感覚過敏」に対するマッサージで心がけるべきは何なのか。この難題を考えるために「自閉症と感覚過敏」を拝読させて頂きました。

 

出版:新曜社

『はじめに』の中で説明されている自閉症に関する実状
・自閉症が報告(1943年)されてから70年以上たつが、障害の定義や、原因や、該当する人々の範囲についての考えは次々に変わってきている。

・自閉症と見なされる人の数が年々増えている。40年ほど前には2,000人に1人ほどといわれていたのが、今では100人に1人とまでいわれるようになった。

・自閉症は、それに当てはまる人々の数についても、それが含む症状の範囲についても、さらには関連する障害についても、大きな広がりを見せるようになっている。

・自閉症は、その原因と結果を1対1に対応できない障害である。脳の特性によって生じるところまではわかっているが、より深い所では原因をひとつに絞ることができない。だから、症状の集まりとして診断されている障害である。つまり、社会性が乏しい、こだわりがある、ことばが遅れる場合がある、パニックになりやすい、記憶力がよい場合が多い、感覚過敏が現われやすい、などの症状の集まりとして理解されている。だが、これらの症状のあいだにどのような関係があるのか、また、それらはどのような経路をたどって現われるか、についてはほとんど答えが出されていない。
感覚過敏とは、最近になって自閉症に一般に認められるものとなった症状である。感覚が非常に敏感になっている状態で、刺激を恐れる場合と求める場合がある。たとえば、嫌な音を恐れて耳をふさいだり、音のする部屋に入らなかったりする。また、水路を見つめ小石を落とす行為をいつまでも続けたり、ビデオの同じ箇所を何度も見続けたりする。感覚過敏は視覚や聴覚など、あらゆる感覚に現れ、また、敏感性としてだけでなく鈍感性としても現れる、非常に多様な側面をもつ症状である。

 

自閉症スペクトラム
『自閉症スペクトラム障害は、2013年に出版されたアメリカ精神医学会の「DSM-5」(「精神疾患の診断・統計マニュアル」第5版)において、これまでアスペルガー症候群、高機能自閉症、早期幼児自閉症、小児自閉症、カナー型自閉症など様々な診断カテゴリーで記述されていたものを、「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」の診断名のもとに統合されました。「DSM-5」以前の診断カテゴリーである自閉症やアスペルガー症候群などは、それぞれの症状に違いがあるとされ、それに伴って診断基準も異なるため、独立した障害として考えられてきました。』

上記は「発達障害ポータルサイト」のコラムからの引用です。詳しくはこちらをご覧ください。

スペクトラムとは、分光器によって分けられた様々な波長の色の連続体を示すことばで、共通性の中に、多様性を示す自閉症という障害を表すために用いられました。「自閉症スペクトラム」という捉え方では、自閉症の人と通常の人の境目も以前のように明確なものではなくなっています。一方、自閉症の人々の感覚や行動の特性は通常とはかなり異なるように見えますが、通常の人々に全く現れないものではありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「自閉症と感覚過敏」

自閉症スペクトラムは、自閉症(言葉の遅れがある自閉症)、アスペルガー症候群(言葉の遅れのない自閉症)、高機能自閉症(発達初期には言葉の遅れがあったが、その後、急速に知能が発達した自閉症)を包含したものとして位置づけています。また、ADHD(注意欠陥・多動性障害)とLD(学習障害)は自閉症スペクトラムとは異なる障害ですが、それぞれが重なり合うことが認められており、熊谷先生は、その重なりには感覚過敏が含まれていると考えられていますなお、ADHDは5%の子どもに、LDは3%の子どもに現れるといわれています。 

感覚過敏が自閉症の発生源とされる理由
・感覚過敏があると、刺激に対する反応が大きくなり、好きな物は非常に好んで求め、嫌いな物は恐れて避けるようになります。そのため、外界の捉え方が通常とは異なり、行動の仕方も通常と異なってくると考えらえます。このため、人々と共に生活することや学ぶことが難しくなってきます。ことばを学び、人々とコミュニケーションができないと、社会に参加することができなくなります。このように、感覚過敏は発達全体に影響を及ぼす可能性をもっています。
・自閉症の人が自らのことを語ったのは、テンプル・グランディンが発表した「我、自閉症に生まれて」(原著“Emergence:Labeled Autistic”1986)と、ドナ・ウィリアムズが発表した「自閉症だったわたしへ(原著“Nobody Nowhere”1992)でした。日本人でも2007年に東田直樹さんが14歳のときに「自閉症の僕が跳びはねる理由」を世に出しました。その後もニキ・リンコさんなど自閉症の当事者たちによる自伝が次々に出版され、いまでは自閉症に関する出版物の半数ほどを占めるまでになっています。そして注目すべきことは、これらの著書のほとんどすべての中で感覚過敏の経験が語られているという点です。


例えば、下記は東田直樹さんが11歳のときに書いた「誰もいなくなった」という詩の冒頭です。
みんながいる所は 嫌い
音が大きい所は 嫌い
物が多い所は 嫌い
どこに行ってもうるさくて
僕はいつでもがまん出来ない

 

また、ニキ・リンコさんと藤家寛子さんの対談本「自閉っ子、こういう風にできてます!」では、
+雨が痛い。
+扇風機の風が痛い。
+カメラのフラッシュのあと何も見えなくなる。
+コタツに入ると脚が消える。(視覚と身体感覚が両立しにくく、一方が優勢になると他方はほとんど無視されてしまうことを意味しています)


などの経験が語られています。そして、この対談の司会者であり、この本の発行人でもある浅見淳子さんは同書の中で次のように述べています。
『ひと口に自閉所スペクトラムの方と言っても、性格は皆さんそれぞれです。定型発達の人と同じようにバラエティに富んでいます。でも一人残らず、身体機能の不具合を抱えていました。自閉症というと心の内側、つまりその心理がまず問題にされやすい。しかし、その前に外部との接点のところにもっと注意を向けなければならないことがわかってきたといえるだろう。』

 

自閉所者は外部からの刺激をいちどに大量に取り入れてしまうという特性をもっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自閉症者の場合、ある刺激が入り込むと、感覚の枠いっぱいに広がり、そのまま停留します。すると後続の刺激は、感覚の枠に入り込めない状態で通過し、見落とされてしまいます。この見落としのために時間や空間の関係を捉えることが難しく、コマ送りのような映像は動画にはならず、全体像を理解しずらいという事態に直面します。つまり、外部からの刺激の取り込みという行動初期から、自閉症者はコミュニケーションを阻害する困難さに立ち向かわなければなりません。

画像出展:「自閉症と感覚過敏」

自閉症者の心と体のかみ合いにくさの特性
・自閉症者は時間、空間など外部の世界を統合するのが難しいだけでなく、自分自身の身体各部も統合しにくいという問題が起こります。例えば、書くこと(指)に集中すると、体が傾いているのに気づかず、椅子から落ちてしまう等です。
・身体各部が統合しにくい理由として、触覚や筋肉感覚(体性感覚)は目や鼻(特殊感覚)と違って、特別の受容器をもたず、集中管理もしていません。また、受容器は全身に分布し脳の中の別々の皮膚領域で受容されます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視覚は「目」、聴覚は「耳」という特殊な受容器がそれぞれ2つずつ顔に存在しており、必ずそこからの情報であると限定してくれますが、体性感覚の受容器は全身に分布しており、分かりずらさの原因になります。

画像出展:「自閉症と感覚過敏」

運動を起こす時は、身体各部の筋肉に対応した脳部位の指令の下で動きが生じます。人の脳は、それらの動きを前頭前野で統一する働きをもっていますが、感覚過敏があると前頭前野での接続がむずかしくなると考えられます。つまり、身体や運動の感覚は視覚や聴覚よりも一般化しにくい特性をもっており、一方、自閉症者のように感覚過敏があり、身体の特定部位からの感覚に強い影響を受けやすい状態であると、さらに全体的な統一感は保ちにくく、自分のものとして感じにくくなります。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「自閉症と感覚過敏」

自閉症者が苦手とする代表的なものが縄跳びです。縄跳びは全身を一体化させ、一定のリズムで跳躍しなければならないうえに、更に縄の回転の動きに合わせなければならないためです。

自閉症者が跳びはねる理由は、一つは飛んでいるときは足を感じ、手を叩けば手を感じる。つまり、バラバラになっている感覚の一体感を取り戻すためにやっていると考えられています。もう一つの理由は、意識が外部のわずらわしい刺激から解放されて自分自身に向き、自分を取り戻すことができるからです。(ドナ・ウィリアムスは自宅にブランコがあり、ブランコの規則正しいリズムに自分を溶け込ませて気持ちを和らげるために使ってとのことです)。

アンケート結果にみる感覚過敏の実態
自閉症者は自分の状態を細かく語れない人の方が多いため、熊谷先生は、より多くの自閉症者を対象に感覚過敏との関連性を調べるため、自閉症児の親へのアンケートを実施されました。
アンケートは特別支援学校に通う30名の自閉症児、男児25名、女児5名で、年齢は10歳から18歳までです。言語をもたない自閉症児は4名でした。ただし、「会話が可能」の中には一語文レベルにとどまる者が7名いました。
なお、以下の表は30名の言語状況を示す一覧表です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「自閉症と感覚過敏」

下記の表は掲載されていた表を1枚のシートにまとめたものです。

「人に触れられるのを嫌がる」という質問に、「よくある」と回答したのは5名です。これは全体の約16.6%になります。

まとめ

「マッサージは、主に直接的な触感覚・固有感覚と間接的な聴覚・視覚、そして1対1のコミュニケーションの中で、これらの感覚が刺激されます。」と紹介させて頂きましたが、実際に発達障害児へのマッサージを行おうとすると、落ち着いて横になっていない児童も少なくというのが現実です。このため、マッサージの効果を実感することは困難な道のように感じていますが、児童への理解を柱に、実践に知識をプラスし、その理解・知識・実践を1サイクルとして、それを回しながら前進していくことがあるべき姿に近づける方法だろうと思っています。

付記:ADHD(注意欠陥・多動性障害)と感覚過敏についての記事

タイトル:「ADHD(注意欠陥・多動性障害)の治療法・療育法は?治療薬は効果的なの?」 

この記事の中に、次のような説明がありました。

『ADHDの原因は、現在の医学ではまだはっきりと分かっていません。一番有力なのは、脳の前頭前野部分の機能異常だと言われています。前頭葉は脳の前部分にあり、物事を整理整頓したり、論理的に考えたりする働きをします。ADHDの人はこの部分の働きに何らかの偏りや異常があり、思考よりも五感からの刺激を敏感に感じ取ってしまいます。そのため論理的に考えたり集中するのが苦手となるのです。 』

これは、熊谷先生の説を後押しするような記事だと思います。

発達障害児へのマッサージを考える#5

前回は中尾繁樹先生のDVDに関する内容でしたが、中尾先生の本も1冊は読んでおきたいと考え、『みんなの「自立活動」特別支援学校編』を拝読させて頂きました。

 

出版:明治図書

そして、以下の3つの章の中から自分にとって特に重要と思うポイントを洗い出してみました。
第3章 「コミュニケーション」と「人間関係の形成」 

第4章 「環境の把握」と「身体の動き」 

第5章 「身体の動き」と「人間関係の形成」「コミュニケーション」と「環境の認知」 

 

第3章 「コミュニケーション」と「人間関係の形成」

 様々な補助的手段の活用とコミュニケーション指導
1.自立の第一歩は自己決定すること
 ・欧米は障害のある子どもが自立していくための第一歩は、自己決定することであるとい

  う考え方で、何を選ぶ・どれに決めるといった自己決定する力を向上させることが重要

  です。
 ・自己決定する力に加え、決定したことを相手に伝える力が必要であり、コミュニケーシ

  ョンにとっても大切なことです。

 

2.障害があっても〇〇デキルという視点
 ・自己決定するためには、自分で決めたいという意欲が必要です。子どもの意欲を育てて

  いくには、外界(人や物、状況など)に対して自ら能動的にかかわり、その活動の中で

  成就感や満足感を味わうことが重要だと考えられています。
 ・「障害があっても〇〇デキルという視点」は「何でも良いからできることを探してみよう

  「部分的にでもデキルことからやっていこう」という考え方です。


3.コミュニケーションを阻害する学習性無力感
 ・いつも感謝・依頼する立場が、感謝・依頼される立場に逆転したとき、その子の心の中に

  は喜び以上の心の躍動が芽生えます。


4.学習性無力感を獲得させないために
 ・人は、ほめられる・認められる・感謝される・依頼されると、誰しも「次もがんばるぞ」

  といった意欲が湧いてくるものです。どんなに重要な障害があっても、能動的にオモチャ

  にかかわって遊んだり、毎日責任をもって役割を担えたりすることは素晴らしいことです

  し、彼らの意欲を育てる上でたいへん重要なことです。


5.コミュニケーションの力を育てる
 ・Beukelman&Mirenda(David Beukelman and Pat Mirenda)は、どんなに障害が重度

  な子どもでも三つのサインを発信しており、それぞれのサインに対して支援者が適切に

  応答することが重要であると紹介しています。

  三つのサインのうちの一つ目は、注意探索と呼ばれるサインで、赤ん坊が泣いてお母さ

  んの注意を引く行動のように、他者に何かを訴えたいときに使われるものです。

  二つ目は、受容のサインで、オモチャが動くことや大人からの働きかけといった外界の変

  化に対して、「満足だ、嬉しい」等の表現として、笑う・声を出すといった行動で示され

  ます。

  三つ目は、拒否のサインであり、生理的に不快な状況や大人からの不適切な働きかけなど

  に対して、「イヤだ、不快だ」等の表現として、顔をしかめる・泣く・体をよじらせる等

  の行動で示されます。発信したサインに対して必ず応答があることを子どもに気づかせ、

  理解させるための練習が必要となります。
 ・Beukelman&Mirenda(David Beukelman and Pat Mirenda)は、日常生活の様々な場面

  の中に、次のようなルールでコミュニケーションしていくという指導方法を紹介していま

  す。
  ①何らかの活動をする際に、必ず子どもの同意を求めるための働きかけまたは問いかけを

  する。その際、言語的な働きかけだけでなく、子どもが受容できる感覚器すべて(触覚的

  、視覚的あるいは聴覚的など)に働きかけるようにする。
  ②働きかけまたは問いかけに対する子どもの発信サインを待つ・観察する。
  ③子どもが発信したサインに応じて適切な応答行動をフィードバックする。
 ・能動的な活動を通して子どもの意欲を育てていくことと並行して、自分の意志を外に向け

  て発信する力を育てていくことはコミュニケーションの第一歩であり、大変重要なことで

  す。
 ・子どもが受容のサインを発信しやすいのは、楽しかったり喜びが大きかったりする活動、

  すなわち遊びの場面だと思います。そこで、子どもの知的発達の段階に応じた様々な遊び

  を準備しておいて子どもたちと遊ぶようにすると良いと思います。
 ・選択による自己決定力を育てる
  ・返事を待ちましょう(最低でも10秒程度)。
  ・子どもを信頼し、子どもの自己決定を尊重しましょう。
  ・選択できる情報をすべて提示し(子どもによっては多く提示できない場合もあり)、

   その後で選択を求めていきましょう。
  ・何に対してもYesの反応をする子どももいます。一見、自己決定できているように見

   えますが、必ずしもそうではないこともあります。Yesの答えが得られる質問だけでな

   く、Noの答えを求めるような尋ね方も必要となります。
 ・音声を使ったコミュニケーション
  ・知的障害のある子どもの中にはことばを使う意味が理解できていない子どもに対し、私

   たちはことばや文字を身に付けさせようと一生懸命になりがちです。そのこと自体はと

   ても大切なことなのですが、ことばは教え込まれて身に付けるものではありません。赤

   ん坊はいつの間にかことばを覚えて、いつの間にか使うようになっていませんか?その

   際、親は四六時中「さあ、このことばを覚えなさい。覚えるまで遊ばせませんよ」と言

   っていないはずです。したがって、ことばを使う意味が理解できていない場合には、ま

   ず、音声を使う楽しさや便利さを経験させる必要があります。例えば、命令語を録音し

   ておいてやりとり遊びをしたり、じゃんけんことばを録音しておいてじゃんけん遊びを

   したり、との応用はいくつでも考えられると思います。


6.自立と社会参加を進めるために    
事例

ミネソタ州で出会ったKさん(41歳)は、脳性まひによる運動障害があり、頭を動かすこと以外は随意的に動かせる部位はありませんでした。そのために、食事や排泄、更衣、入力といった日常の生活に必要な行為すべてに全面的な介護を必要としており、州政府から24時間体制で派遣されるヘルパーにその介護を委ねています。また、発語はなく、質問されたことに対して、[頭をたてに振る=うなずき]-[頭を横に振る=いやいや]の動作によってYES/NOを相手に伝えるというコミュニケーションの状況です。

ところが、Kさんは安定した収入を得ることのできる仕事に就き、コンサートに出かけて音楽を楽しむことを趣味とし、自分で購入した家で一人暮らしをしているのです。彼女の仕事は、パソコンとインターネット技術を利用した電話オペレーターで、自宅にいながらその仕事をこなしていました。

写真は、姿勢を保持する機能をもった電動車椅子に乗ったKさんが自宅で友人と談笑している様子です。Kさんの頭に注目してください。彼女は支援機器を操作するために、ヘッドスティックとよばれる棒付きの帽子をかぶっています。話すことのできない彼女は、電動車椅子のテーブルに取り付けられたコミュニケーションエイドのキーをヘッドスティックで押しながら、友人と会話をします。このコミュニケーションエイドは、あらかじめ録音してあることばを出力する機能をもっているだけでなく、テレビやエアコンなどのリモコン機能と併せて、パソコン用のキーボードとしての機能の付加されている機器なのです。このコミュニケーションエイドとパソコンを利用して、彼女は電話オペレーターの仕事に携わっているのです。
彼女は生まれて間もない頃に重度・重複障害と診断され、10年以上もの長い期間にわたって入院を余儀なくされたそうです。その上、「無能力者(本人段)」と評価され教育からも見放されていたそうです。

そんな彼女のもとに、一人の大学生がボランティアとして本の読み聞かせをしにくるようになりました。何か月もベッドの横で読み聞かせをしているうちに、その大学生はKさんの表情の違いやほんの少し頭を動かす能力があることに気づきました。そこで、大学生は頭で押せるスイッチとブザーを作り、KさんにYES/NOで返事をしてもらう練習をはじめたそうです。すると、それまで「何もわからないし、何もできない」と評価されていたKさんが、実は簡単なことばを理解しており、頭を動かすことで返事ができるということがわかったのです。その後、彼女は病院を退院して家庭教師に勉強を教えてもらいながら様々な知識を身に付けていったそうです。

今では、電動車椅子やコミュニケーションエイドといった支援技術を駆使して収入を得ながら自立した生活を送っています。ボランティア学生が「Kさんはデキルんじゃないだろうか」と信じて、彼女の生活環境を工夫しなければ今の彼女はなかったと言っても過言はないでしょう。
Kさんの自立生活は支援技術の効果とともに、周囲の人々が「この人はデキルんだ」と評価したからこそ現実のものになったと思います。重複障害のある人への支援を考えるとき、「障害があっても〇〇デキル」という視点が今後ますます重要になってくるのではないかと思います。
 

 

画像出展:みんなの「自立活動」特別支援学校編

 

 

AAC(Augmentative and Alternative Communication;拡大代替コミュニケーション)

・話すこと・聞くこと・読むこと・書くことなどのコミュニケーションに障害のある人が、残存能力

(言語・非言語問わず)とテクノロジーの活用によって、自分の意思を相手に伝える技法のことです。

 AACの技法の種類には、大きく分けてノンテク、ローテク、ハイテクの3つがあります。
・機能訓練だけでなく、コミュニケーション能力の向上も考慮してします。
・コミュニケーションには、コミュニケーションしようとする者同士の間に、共通して理解し合える

 手掛かりやルールの存在が必要です。

 

 

2017年は9月27日(水)~9月29日(金)、会場は東京ビッグサイト東展示ホールで開催されます。 


上記の2つのサイトは、発達障害児向けの商品やアプリを扱っています。

 

これは、お母さんが息子さんのために、文房具や学用品を使いやすいように改造したお話です。すばらしいです。

第4章 「環境の把握」と「身体の動き」 

 知的障害のための感覚運動遊びを中心とした自立活動の実際
1.知的障害のある子どもたちの感覚運動の特徴
 ・子どもたちは自分なりに一生懸命取り組むのですが、なかなか思うようにできません。記

  憶したり、理解したり、理解したり、問題解決をする、考える、自分の意見を述べるとい

  ったことが苦手であるために意欲が高まらない原因となっていることがよくあります。こ

  れらの原因と同じように感覚運動面の問題が課題を行ううえで大きな影響を与えているこ

  とがあります。感覚運動学習とは、身体に入ってくるたくさんの感覚を適切に処理したり

  、姿勢・運動をコントロールすることです。感覚運動は遊びや学習に必要なレディネスで

  あると言えます。ここでは、知的障害がある子どもたちが苦手な動きをまとめてみました。
  ・力を入れる運動、リズミカルな運動、巧緻運動、道具を使った動作、空間での運動
  ・低緊張では腕や脚で自分の体を支える筋力の動きづくりにポイントをおいた運動も大切。


第5章 「身体の動き」と「人間関係の形成」「コミュニケーション」と「環境の認知」 

 発達障害の子どもの運動や人間関係を高める自立活動の実際
1.発達障害について
 ・自閉症の乳幼児は、触覚・聴覚・視覚などの過敏傾向が強く、抱っこをしようとしても、

  体をのけぞらせて嫌がったりすることがよくあります。そのため、抱っこから育っていく

  愛着行動の形成に大きな遅れが起こってきます。
 ・反復的な自己刺激行動(手をひらひらさせる・クルクル回る・ピョンピョン跳ぶ等)は自

  閉症特有の「情報の中の雑音を除去できない」という特性も影響しています。そして、自

  閉症の幼児はやむを得ず「自分で一定した刺激を作り出して感覚の遮断を行い、情報の洪

  水に対するバリアをはる」という戦略をとります。
 ・「情報の洪水」の中にいた自閉症の幼児も、徐々にですが認知の焦点を合わせることがで

  きるようになります。しかし、それは一般の子どものような「自然、広く開かれた柔軟な

  認知」ではなく、彼ら特有の「意識的な焦点の絞込み」だと思われます。その結果、強い

  「過剰選択性・興味の限局(認識しやすい特定のマークや蛇口、窓などにこだわる)」を

  抱えやすくなります。

 

画像出展:みんなの「自立活動」特別支援学校編

(上下の絵も同様)

2.広汎性発達障害への対応例
 ・同時に複数の情報を出さない。つまり、刺激を整理し、落ち着いて認知対象に集中できる

  環境を設定する。(構造化)
 ・ゆっくりと短いことばで話しかける。
 ・結論を先、理由を後にするとわかりやすい。
 ・具体的なことばで伝える。抽象的なことばは、ジェスチャーやカードなどの視覚的情報

  併用して伝える。
 ・スケジュールカードなどによって、活動の流れや終わりを視覚的に伝え、予測可能な生活

  環境を整える。
 ・予定の変更については慎重に行う。変更する際には、子どもが認識できるように、必ず予

  告を行う。


3.注意欠陥多動性障害(ADHD)への対応例
 ・常にひと呼吸おいて、焦らないで対応する(互いの感情のコントロールが大切)
 ・気が散りやすいので、学習のときは刺激を少なくして、集中しやすい環境を整える。
 ・「部屋を片付けて!」ではなく、「オモチャは箱にしまおう!」「脱いだ服はハンガーに

  かけてね!」など、より具体的な伝え方を工夫する。
 ・スモールステップで、少しずつ課題に取り組めるように工夫する。
 ・スケジュールやこれからやることを、見通しがもてるように工夫して伝える。
 ・「〇〇なときは、〇〇しようね!」など、事前に想定される混乱を避ける配慮をする。
 ・ことばだけで伝わりにくいときは、視覚に訴える支援を行う。


4.コミュニケーション・人間関係の形成について
 ・コミュニケーションとは「伝え手と受け手の間で、ある観念や思考が共有されている」

  という意味合いがあり、全体として見ると「伝達のコミュニケーション」の背後には常に

  「共有のコミュニケーション」が存在しています。そして、「共有のコミュニケーション

  」は「感情の発達・分化」「他者理解力」「ともにありたいという欲求」などの力に支え

  られています。


 ・「他者理解」には子ども実態に合わせて表情をデフォルメしてあげる方法があります

  (例えば、怒った表情を顕わにしたり、少し大袈裟に喜んだり)。また、目の見えない

  人や車椅子の人を介助する体験が役に立ちます。


 ・豊かで多様な感情を育むには「いろいろな人との密度の濃い交流」や「水や木、川や山や

  海、木や草や虫や動物、暑さや寒さ、息苦しさやにおい、眩しさや暗闇、土や風、といっ

  た自然との五感や身体に手ごたえのある触れ合いやかかわり」が重要で、様々な「からだ

  体験(においや手ごたえ、肌触りなどの身体全体で感じる体験)」に挑戦することが大切

  です。

知的障害について

前週のブログで、発達障害児の中には知的障害の全くない児童もいれば、重度な知的障害をもつ児童もいること、つまり混在していることを認識しました。
このため、知的障害に関しても最低限の知識、認識を持つ必要があると考え、ネットのサイトで基本的な事を学習しました。今回はそのご紹介になりますが、勉強させて頂いたサイトは「みんなで作る 発達障害ポータルサイト」になります。
ブログは知的障害の概要、知的障害の考えられる原因、そして「接し方で大きく変わる!知的障害の子どもへの接し方のポイント」に関しては、サイトの内容をそのまま掲載させて頂きました。
なお、乱暴な言い方になりますが、発達障害児の知的障害の有無を考える上で、指標の一つとなるのは「知的機能(IQ)」の数値です。

 

 

 

 

 

知的障害とは?程度別・年齢別の特徴と症状
 目次
 知的障害とは?
 知的障害の程度別の特徴・症状
 年齢別に見た知的障害の症状の現れ方
 知的障害の診断基準・方法
 知的障害の疑いを感じたらどうすればいい?
 まとめ

 

 

 

 

 

知的障害の治療法・療育法はあるの?子どもの力を伸ばす接し方のポイントまとめ
 目次
 知的障害とは?
 知的障害の原因は?
 知的障害って治療できるの?
 知的障害の治療・療育の判断基準は?
 いつから始めるべきなの?
 知的障害の治療法・療育法は?
 接し方で大きく変わる!知的障害の子どもへの接し方のポイント
 まずは「知的障害」をよく理解することから始めましょう

知的障害とは
知的障害とは、発達期までに生じた知的機能障害により、認知能力の発達が全般的に遅れた水準にとどまっている状態を指します。単に物事を理解し考えるといった知的機能(IQ)の低下だけではなく、社会生活に関わる適応機能にも障害があることで、自立して生活していくことに困難が生じる状態です。
知的障害は発達期の間に発症すると定義され、発達期以降に後天的な事故や認知症などの病気で知能が低下した場合は含みません。この発達期とはおおむね18歳までを指しますが、知的障害は障害の状態を指すため、障害が現れる道筋は人によってさまざまで、具体的な発現時期も人により異なります。

 

知的障害の等級と考えられる原因
知的障害の原因は十分には解明されていない状況ですが、主な要因は病理的要因・生理的要因・環境要因の3つの面から分類できると考えられています。

接し方で大きく変わる!知的障害の子どもへの接し方のポイント
伝え方を工夫する
知的障害のある子どもは話や言葉を理解するのに時間がかかったり、記憶するのが苦手ですぐに忘れてしまう子どももいます。絵や文字を紙に書いて伝えることで理解しやすくなることがあります。また、ルールを書いた紙を目に付くところに貼ることで常に意識できるような状態を作ると効果的な場合があります。まねをするのが得意な子どもも多いので、その場合、実際にやって見せるとよいでしょう。これを、「モデリング」と言います。


具体的に説明する
自分で判断して動くことも苦手な場合があるため、できるだけ曖昧な表現は避けて具体的な指示をすることも大切です。どういう手順にすると良いのか、どんなことが悪いかなど、わかりやすい言葉で簡潔にはっきりと伝えるようにしましょう。その際の伝え方は上記のように、手順を絵や文字にしたり、図表で説明します。


よいところを褒めて伸ばす
悪いことは悪いと伝えるだけでなく、よいことはよいと褒めることも大切です。知的障害のある子どもはできないことが多いために叱られることも多くなってしまいます。ちょっとしたことでもよい面を見つけて褒めるようにし、子どもの長所を伸ばすよう心がけてみてください。できることをお願いして「ありがとう」とお礼を言うのもおすすめです。


得意分野を見つける
自分は何でできないんだろうと自信をなくす子どもも多くいます。自信をなくすと、うつ病や不登校などのいわゆる二次障害にも繋がってしまいます。好きなものはなにか、何が得意分野なのかを見つけたり、できることを増やすことで、子どもに自信をつけさせることも大切です。


周りに相談する
不安や心配でストレスを抱え、心に余裕がなくなる保護者の方もいらっしゃるかと思います。心に余裕がないと、子どもに接する時にもイライラしてしまって八つ当たりしてしまうこともあります。家族に協力してもらったり、周りに相談することで少しでもストレスを解消することも大切です。


まずは「知的障害」をよく理解することから始めましょう
知的障害の原因は不明なことも多く、根本的な治療方法もありません。しかしながら、知的障害であることに気づき、子どもへの接し方を変えることで、うつ病やひきこもりなどの二次障害を予防することは可能です。うちの子は他の子に比べて言葉の発達が遅いな、周りと上手く遊ぶことができていないなと感じたら、まずは保健センターや子育て支援センターなどの専門機関に相談してみてください。

 

早期発見・早期療育は子どもにとっても保護者にとっても心のケアに繋がります。同じ悩みを抱える親同士で相談したり、子どもが友達を作れる環境を整えることも大切です。子どもがよりよい生活ができるよう、知的障害と向き合っていきましょう。

発達障害児へのマッサージを考える#4

今まで、本やネットにある情報に頼って自己学習してきましたが今回の題材はDVDです。中尾繁樹先生のセミナーをDVD化したもので、タイトルは「発達障害を感覚と運動の視点から捉える①②③」です。また、内容は次の通りです。
 ①最近の子どもたちの様子とその背景(84分)
 ・イントロダクション
 ・特別支援教育の視点
 ・最近の子どもたちの様子
 ・子どもたちの問題を捉える視点
 ・発達障害と学習の問題
 ②感覚と運動の機能(58分)
 ・発達障害によく見られる感覚運動機能の問題
 ・感覚とは
 ・感覚統合とは
 ③感覚・運動機能の臨床観察法(86分)
 ・日常に見られる感覚運動の問題
 ・ソフトサインとは
 ・利き側の検査
 ・チェックの仕方
 ・教室でできる臨床観察
 ・反応様式の評価

 

「発達障害を"感覚"と"運動"の視点から捉える」

発行:ジャパンライム(株)

 

 

赤ちゃんにはバギーという快適な乗り物ができました。その結果、抱っこする機会は減りました。保育所などの数が足りないのは大きな社会問題ですが、理想の育児環境は1対1の環境だそうです。つまり、お母さんによる育児が無理であれば1対1のベビーシッターの方が望ましいようです。ここで具体的に問題となるのは「愛着行動の形成」です。これは、赤ちゃんの様々なサインに対して、お母さんがどういった受け止め方をするかで、愛着行動の形成が決まっていきます。そして、愛着行動は情緒の安定と関係していると言われています。
発達障害児には「触覚の混乱」のため、触れられることを嫌う子、苦手な子が少なくありません。マッサージは皮膚に触れ、擦ったり圧迫したり、あるいは関節を動かしたりして、触覚と固有覚に働きかける施術とも言えますので、必然的にこの問題と向き合わなければなりません。そして、この「触覚の混乱」という状態を改善することができれば、発達障害児の情緒の安定にも貢献できると考えます。

なお、今回のブログではDVDの中に出てきた、「触感覚」、「固有感覚」に関することと、それ以外の内容で覚えておきたいと思ったことを列挙しています。

 

触感覚に関すること
触覚の混乱
・触られるのがイヤ~な子(触覚防衛)
・人に触られるのを嫌がったり、あるいは同じ感触を好んで触り続けたりする。これは「触覚

 の混乱」、強迫観念が強く安心のため触り続ける行為である。
楽しい雰囲気の時、好きな活動をしている時など、触られていることが気にならない場面を

 探し、苦にならない場面から慣れる。
触感覚の働き
情緒と関係している。嫌いなもの(人)に対し、触感覚はまずは防衛的、本能的に働く。

 方、それが背景にあって無意識の判断が育ってくる。触感覚が安定していないと情緒的な安

 定が図れない。
・環境の状況(気温、湿度などの環境状況を把握する)や他者の働きかけ(抱っこ、身体を触

 るなど)を知る。
情緒の安定と発達を促す。
・ボディイメージを形成することで自分の身体の姿勢や運動を知る。
・外界に働きかけ、認知系と連動してものを識別する。

触られるのを嫌がる
・触れられるのを極端に嫌がる子どもがいる
・単に人と人との触れ合いということだけでなく、着衣の肌触りとか洗髪とか、特定のものを

 握るのに強い拒否反応を示す場合もある。
・触られるのを嫌がる状態や不注意・注意散漫などの特徴が同時に見られると、感覚運動機能

 上の問題があることが多い。
・特に過敏な子は人が近くに来ただけでビクビクしている場合もある。
さっと触られるのが嫌いな子は「圧」をかけると良い。

触感覚の問題
・特定の触覚(特定の服、毛皮、芝生等)を嫌がったり、逆に触ることにこだわったりする

・人から触られることを嫌がる。触られることに敏感な部位は身体の前部(顔、胸、腹など)

 だが、本人に見えないところ(背部)から触られると強い抵抗感を示すことが多い。
・痛みに関しては過反応(極度に痛がる)と低反応(全く痛がらない)に分かれる。極端なケ

 ースでは指が折れているのに全く痛がらない子どももいる。
・触れられた身体の部位がわからないこともある(ボディイメージの問題も関係している)。
・触られることに非常に敏感であるか、反対にくすぐられても平気な顔をしていることもあ

 る。
人が近くにいると落ち着かない。
・わずかな痛みにとても痛そうにするか、反対に自分の打撲やけがに気づかない。
・着ている物が少しでも濡れると非常に嫌がる。
・手や足が少しでも汚れるとすぐに洗いたがる。
・砂遊び、粘土遊び、糊等を嫌がるか、反対に他の子どもよりも過度に好む。
・温度に関係なく厚着、または薄着のままでいる。


固有感覚に関すること
固有感覚の働き
・身体各部の位置や運動を知覚する。
・筋緊張を調節し、姿勢の維持と制御を自動的に行う。
・視空間認知や身体イメージを形成する
ボディイメージが付いていないと通れないところを通ろうとしてしまう。距離感がつかめないため、相手と話す適度な距離感がつかめない(ボディイメージが適切に働くと、腕を伸ばして届くか届かないかの位置関係を無意識に取る)

筋緊張
安定姿勢状態で各関節の可動域を調べ、仰臥位、腹臥位、坐位等へ姿勢変換した時に、動的

 緊張がどこに入るかを観察する。
・立位、対面、児童に術者の母指を五指で強く握ってもらう。術者は児童の握った五指を包む

 ように母指と小指で挟む感覚で掴む。この状態で全身が1本の棒になったように体を硬くし

 てもらう(緊張を入れてもらう)。この状態で前後の揺すった時に低緊張の箇所があれば、

 そこがグラグラしてしまう。応用で手押し相撲やその練習でもある程度わかる。

固有感覚と前庭感覚の問題
・転びやすかったり、簡単にバランスを崩したりしやすい
・車に酔いやすい
・ブランコなどの揺れるものを怖がる
・床の上にごろごろと寝転んでいることが多い
・動きが激しく、活発すぎる
・回転するものにどれだけ長くのっても、目が回らない
・身体全体をよく揺する、動かす
・理由もなく周囲をうろうろしたり、動き回ったりする
・椅子からずり落ちそうな座り方をする


覚えておこうと思ったこと
感覚統合とは
・人間の発達過程で、脳が内外からの刺激を有効に利用できるよう、効率的に組み合わせる

 ことを「感覚統合」といいます。脳に届く多くの感覚情報を「必要なもの」と「不要なも

 の」に分け、整理したり関連づけたりします。この機能により、私たちは外界の状況に対

 して適切に反応することができます。
・感覚統合療法をまとめた作業療法士のエアーズ(Ayers,A.J.)は、「もし脳が感覚統合して

 くれなかったら神経の交通渋滞で身動きできなくなる」といっています。
感覚統合とは感覚情報を整理整頓すること」と考えても差し支えないと思います。


気になる言動の要因・背景を考える
・「なぜ気になる行動が起きるのか」その理由を考えてみる。
・「なぜできないのか」「どうしたらできるのか」を考える。
・背景になにがあるのかを知る。


体がシャキッとしない子(低緊張)
・揺れ(回転、直線加速)の感覚は前庭感覚、踏ん張る感覚は固有感覚がそれぞれ担う。
・支持が弱い子は「踏ん張り感」を獲得する。


画像出展:「自閉っ子の心身をラクにしよう!」

 ・不規則な強い揺れで体のシャキッと感を感じる(ブランコやスクーターボード、遊園地

  なら、ジェットコースター)

 

 

 

画像出展:みんなの「自立活動」特別支援学校編

動きが止めれない子
・自分の体をじっくり感じることのできる活動。固定点をつくる(鉄棒のぶら下がり等)。

 

 

 

 

 

画像出展:みんなの「自立活動」特別支援学校編

 

歩くのが不安定な子(バランスが苦手)
・体の動きを調整する感覚と小脳。
・片足ずつに体重をかけてバランスをとる。(バランスの悪さの原因には筋肉の使い方によ

 場合もあるので、必ず筋肉もチェックする)


人とのかかわりが上手にとれない子
・コミュニケーションがうまく取れないためにトラブルが多い
・子ども相手の仕事では子どもの顔をみて、よく話を聞く。目を見るのは一瞬でよい。
・なぜ聞けないのかの視点を持つことが必要
 ・聞く側が別のことを考えている。
 ・頭が寝ている(覚醒が下がっている)。
 ・相手が話している内容が難しく理解できない。
 ・聞きたくない(こころの問題)。
わかりやすい場面を用意する。活動の反復やゆっくりとした動きを人とのやり取りに結び

 つける。相手に合わせることがコミュニケーションの基礎になる。

重力(高さ)の過敏
・重力(高さ)の過敏を持っている子どもの中には5cmでも怖がる。抱っこを嫌がる子の中に

 は、触感覚ではなく前庭感覚が問題のときもあるので注意が必要。


姿勢の維持やバランス保持の困難
・最近の子どもたちの中には、同じ姿勢を一定期間保持できない行動がよくみられ、その原因

 の一つに、体幹の筋緊張の低さ(低緊張)が挙げられる。このような場合、学習中安定して

 椅子に座ることが難しくなるため、授業に集中できず、学習が理解しにくくなることもある

 。さらに、粗大運動に影響したり、指の巧緻運動にも課題が出たりする。これらの背景には

 前庭感覚、固有感覚等の統合がうまくいっていないことが考えられる。
背面や側面からの姿勢を見たときに、肩辺りの過度の緊張や背中の後彎、骨盤の傾き等がよ

 く見られ、特に頭の後ろから肩甲帯にかけてある僧帽筋の動きが悪く首の動きが悪い場合が

 よくみられる。
・衝動的なタイプの姿勢として、骨盤が後方に倒れ、足を投げ出して座っているケースが多く

 、長時間の姿勢維持が難しい場合もある。比較的授業に集中しているけれども、衝動的で自

 分勝手な意見を多く言う場合もよくみられる。
普段の家庭での生活も畳やソファに寝転ぶ時間が長いことも考えられる。(骨盤後傾、体幹

 維持機能低下させる)
・不注意や不器用なタイプは、骨盤から首にかけての筋の同時収縮が弱く、長時間の姿勢維持

 が難しくなる。
・バランス保持の困難はよく観察される。身体がバランスを崩して倒れそうになっても立ち直

 れない様子(立ち直り反応の困難)や、つまずいて転倒しても、頭を保護するために手が出

 ない様子(保護伸展反応の困難)が観察されることがよくある。
・片足立ちをさせるとすぐにバランスを崩す場合は、前庭覚・固有覚・視覚の統合が十分でな

 いと考えられる。
・静止した状態の「姿勢」と動きのある「動作」の両側面から子どもの実態を見極めることも

 大切である。


姿勢運動
・四つ這い 膝立ち
・片足立ち
・タンデム歩行(上半身が動かなければ分離できている)

 

運動企画(協調)
・スローモーション:手を水平から両肩にゆっくり付け、その後ゆっくり開く。(我慢できな

 いケースでは、多動、衝動だけでなく、筋の低緊張が原因の時もある)

 

マッサージの課題と期待される効果
1.マッサージが楽しい、気持ちいいと思ってもらうことが第一歩!
2.関節への抵抗運動で固有感覚を感じることできる(ボディイメージ獲得にプラス)。
3.気を合わせる1対1のコミュニケーションを育成する場として利用できる。

4.後頚部、背部、骨盤部の硬さや緊張を緩めることができる。

発達障害児へのマッサージを考える#3

発達障害をもった児童に向き合い、心を通わせることを心がけ、理解を進めていく、そして信頼関係をつくるということが基本であると思います。
一方、机上の学習、知識を増やすことも必要なことです。今回は、以前にもご紹介させて頂いた、杉山登志郎先生の著書、「発達障害の子どもたち」の中から、“発達障害の概観”、“発達障害の新たな分類”、そして“自閉症という文化”の中からいくつか引用させて頂き、知識を広げたいと思います。

著者:杉山登志郎

出版会社:講談社

発達障害の概観
『発達障害を分けていくと、いくつかの領域に分けることができる。おのおのについて国際的な診断基準によって診断名が確定されている。
ところがこれまでわが国の施策の中で、発達障害として公認されていた問題は、きわめて狭い領域に限られていた。つまり発達障害を抱えていても、社会的に公認されないものが多数存在した。2005年に施行された発達障害者支援法は、これらを発達障害と認定した点で画期的な法律である。
発達の領域と、その内容、その発達障害の診断名、以前から公認されていたか否かについてのまとめを表に示す。診断名は現在もっともよく使われている診断基準である、アメリカ精神医学会の診断と統計のためのマニュアル第四版(DSM-Ⅳ)に従う。』

最新となる、マニュアル第五版(DSM-Ⅴ)については、こちらの「発達障害ポータルサイト」に詳しい説明が出ていました。

発達障害の新たな分野
『筆者は現在、発達障害は四つのタイプに大別されると考えている(下段の表参照)。第一のグループは認知の全般的遅れを示す精神遅滞と境界知能、第二グループは社会性の障害である広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)、第三のグループはいわゆる軽度発達障害で、行動のコントロールなど、脳のある領域の働きと他の領域の働きとの連動に際して障害を生じるタイプであり、注意欠陥多動性障害(ADHD)や学習障害(LD)、発達性協調運動障害が含まれる。第四のグループは子ども虐待にもとづく発達障害症候群である。』

自閉症の三つの症状
『自閉症とは生来の社会性のハンディキャップを持つ発達障害である。今日、自閉症は次の三つの症状によって診断される。第一は、社会性の障害である。第二は、コミュニケーションの障害である。第三は想像力の障害とそれに基づく行動の障害で、一般的にはこだわり行動と呼ばれている。
この三つが国際的診断基準を示す基本症状で、言い出した人間の名前を取って「ウィングの三症状」と呼ばれることもある。それ以外の重要な問題として、知覚過敏症の問題がある。また、多動な子どもがいたり、学習障害を呈する子どもがいたり、不器用な子どもがいたりする。このような広い発達領域に一度に障害を生じるので、広汎性発達障害と呼称されているのである。
ここで注意を要するのは、知的なハンディキャップに関して、この三つの症状は何も語っていないということだ。自閉症と診断される子どもには、最重度の知的障害を持つものから、まったくの正常知能のものまでいる。
この三つの基本症状のおのおのについて説明を行うが、それぞれ「自閉症の」社会性の障害、「自閉症の」コミュニケーションの障害という具合に、自閉症独自の形を持つのである。』

逆転バイバイ
自閉症の社会性の障害とは、人と人との基本的なつながりに生まれつきの苦手さがあるということに他ならない。
赤ちゃんのそばに近づくと、ぱっと赤ちゃんの目が飛んできて、じっとこちらを見つめるのを経験した方も多いのではないかと思う。特にお父さんお母さんに対しては、目が合えば必ずにっこりとほほえむのであるが、見ず知らずの人に対しては、じっと見つめるところまでは同じであるが、わーと泣き出してしまう。またお母さんやお父さんが、赤ちゃんを置いたまま行ってしまおうとすれば、追いかけ、泣き出して追いすがろうとする。
自閉症の場合には、このような一連の愛着行動に、大きな遅れが認められる。まず目が合わない。後追いをしない。それどころか歩けるようになると、平気で親の元を離れて突進してしまい、親のほうが後を追いかけていかないと迷子になってしまう。人見知りもほとんど見られない。
自閉症の社会性の障害とは、筆者なりに圧縮すると「自分の体験と人の体験とが重なり合うという前提が成り立たないこと」と、まとめることができる。
普通の赤ちゃんは一歳前ぐらいになると、何か新しいものを見つけたときに、お母さんの目をまず見る。お母さんがそれを見ていなければ、手で示し、声を上げてお母さんの注意を引きつけ、お母さんが一緒に見つめていることを確認して、笑ったり喜んだりする。つまりこの行動は、注意と感情とを赤ちゃんとお母さんが共有している姿に他ならない。
自閉症児の場合は、この一緒に見る、一緒に喜ぶといった行動が著しく遅れる。それだけではない。健常な子どもは、すでに乳児期の後半からバイバイの真似をして手を振る。自閉症児も、真似ができるようになると「バイバイ」をするが、手のひらを自分の方に向けて「バイバイ」と手を振るのである。これは「逆転バイバイ」と呼ばれる現象である。
ところがよく考えてみると、大人が赤ちゃんに向かって「バイバイ」とするときには、手のひらは赤ちゃんの方に向いている。機械的にそれを真似れば、実は自閉症児の「逆転バイバイ」が正解なのだ!むしろ問題は、なぜ普通の零歳児が、手のひらは自分のほうを向いているのに、相手に手のひらを向けてバイバイができるのかということである。普通の赤ちゃんでは、すでに乳児のうちに、自分の体験と人の体験が重なり合うという前提があるからに他ならない。自閉症の場合には、この段階ですでに問題があるのである

「認定NPO法人にいがた・オーティズム」は、新潟県新潟市を中心に自閉症児・者とその家族、関係者及び地域社会に対して、自閉症に関する適切な療育と正しい知識の啓発及び地域生活を支援する事業等を行い、もって自閉症児・者の人権擁護及び教育と福祉の充実に寄与することを目的とした特定非営利活動団体です。

左のマークは幼少期のごく短い期間に自閉症児が見せる行動=逆転したバイバイ=をモチーフにした、自閉症啓発のためのシンボルキャラクターです。

言葉の遅れ、こだわり行動
自閉症の二番目の特徴的な障害は言葉の遅れである。普通は一歳を過ぎると出てくる始語の開始が遅れ、またオウム返しが続くこともある。注目して頂きたいのは、自閉症の言葉の遅れとは単なる遅れではなく、自閉症の社会性の障害の上に、言葉が発達をした形を取っているということである。自閉症の子どもは、言葉が出てくると、オウム返しが長く続くという特徴がある。またミルクが欲しいときに、「ミルクが欲しいの?」と、疑問文によって要求を表すこともよく知られている。なぜこのような疑問文による要求が出るのかと言えば、自分がミルクをもらえるときに、周りから「ミルクが欲しいの?」と聞かれるからに他ならない。つまり、この疑問文で要求するというパターンは、手のひらを自分に向けてバイバイするのと同じ構造である。
このような社会性の障害の上で言葉を発達させているので、言葉が伸びてきた子どもでも、会話を通して体験を共有するといった言葉の活用が著しく苦手といった特徴を持っている。
自閉症の三番目の特徴が想像力の障害である。子どもは遊ぶ存在である。健常な子どもはいろいろなものを別のものに見立て、あるいは何もなくてもそこにあると想像をして、活発なごっこ遊びを展開する。砂の固まりがプリンになり、ご飯になり、お団子になる。また新聞紙を丸めたものが、鉄砲になり、刀になる。このような見立て遊びは、自閉症の子どもの場合極めて苦手なのである。
そのかわり自閉症の子どもが示すのは、こだわり行動である。まず、手のひらを目の前でひらひらさせる、手をぱたぱたと振る、コマのようにくるくる回るといった反復自己刺激行動、それから特定の記号やマーク、また換気扇にだけ注目して突進をするといった興味の限局、さらに道順にこだわる、ものの位置にこだわる、同じやり方にこだわる、順番にこだわるといった順序固執に展開していく。筆者は、一人の自閉症児の幼児期からこだわり行動が何種類出たか調べたことがあるが、なんと800以上あった。そのくらい自閉症にはこだわりがついて回るのである。』

自閉症の体験世界
自閉症の精神病理の基本は、対話の際に雑多な情報の中から目の前の人間が出す情報に自動的に注意が絞り込まれる機能がきちんと働かないこと、一度に処理できる情報が非常に限られていることの二点である。
これを認知の特徴という点で説明すると次の三つとなる。一つは情報の中の雑音の除去ができないことである。第二には、一般化や概念化という作業ができないことである。三番目は、認知対象との間に、事物、表象を問わず、認知における心理的距離が持てないことである。
普通の幼児は、すでに生後二か月には人の出す情報と、機械音とを識別している。人は人が好きなのだ。我々の注意は強い選択性を持っていて、特に目の前にいる人の出す情報に注意が固定される。
ところが、自閉症の幼児は、このような対人的な情報への選択的注意という機能が十分に働いていない。その結果、お母さんの出す情報も、機械から出る雑音も同じように流れ込んでしまう。いわば情報の洪水の中で立ち往生している状態である。テンプル・グランディンは、自分の幼児期の耳は調整の効かないマイクロフォンのようだったと述べている。

テンプル・グランディンの著書である、「自閉症の脳を読み解く」について書いたブログがあります。クリックすると表示されます。

画像出展:茅ヶ崎市

このような不安定で、怖い世界から自分を守るために、自閉症の幼児がとる戦略は何かというと、自分で、一定の安定した刺激を作り出して感覚遮断を行うという方策である。幼児期の自閉症でよく見られる自己刺激への没頭に他ならない。一定のリズムでぴょんぴょんしたり、目の前で手のひらをひらひらさせたりして、彼らは言わば押し寄せる情報へのバリアーを作り出しているのである。
このような幼児期の混沌とした状態から、徐々に彼らは認知の焦点を合わせることが可能になる。しかし普通の子どもの認知が広く開かれたものであるのとは異なって、おそらくは意識的な焦点の絞り込みによって初めて成り立つために、自閉症の注意は、あるものに注意が向いているときには、他の情報が無視されてしまうという強い過剰選択性を抱えやすい。
喩えれば、木を見て森を見ずということは、我々もしばしば体験することではあるが、自閉症の場合には、木を見ても、一枚一枚の葉が見えてしまう。あの葉は葉脈がきれいだ、あの葉は端っこが虫に食われている、あの葉は半分黄色くなっているなど、一枚一枚の葉が個別に識別されてしまうと、森どころか木の全体像も見えているかどうか分からない状況となる。
このうような世界の見え方は次のような喩えのほうが分かりやすいかもしれない。ロシアの街角を当て所なく歩いているとしよう。看板は全部ロシア語で書かれているから何も分からない。すると遠くに日本レストランの日本語で書かれた看板が見える。どんなに距離があっても、皆さんはそこに向かって突進をするのではないだろうか。混沌とした世界の中に、ある分かりやすいもの、たとえば換気扇が見えるとする。するとデパートに行っても、スーパーに行っても、体育館の中でも、換気扇に向かって突進する。これが世界が見えてきたばかりの自閉症の世界である。
自閉症の体験世界の特徴について、もう少し続ける。注意の障害があるために、知覚情報の雑音の除去ができないという困った問題が残る。この結果、大きな声が聞こえずに、小さな機械音(たとえばエアコンの音など)が強烈に聞こえるといった現象が生じることもある。
また、自閉症的な認知の仕方では、我々が一般的に行っている名付けや概念化に基づく慣れが生じないという傾向が生まれる。たとえば我々が目の前のコップに目を留めたとする。特に特徴のないコップであれば、「コップ」という概念で我々は目の前の物体をとらえ、瞬時にしてその認知に慣れが生じてしまう。ところが自閉症の場合には、そのコップを見たときに、どこに目を留めているのか解らない。コップの上に描かれている花の模様に目を留めているかもしれないし、場合によってはコップに映っている光に目を留めているかもしれない。このように言葉による概念化が動かないために、言葉を通して認知したものとの心理的な距離を取るという機能が働かない。コップに注意を留めたとき、自閉症者はいわば自分自身の一部がコップになるのである。
このような、認知対象との心理的距離がまったく取れない認知の仕方をしているため、いくつかの対象を同時に視野に入れて処理することや、さらに視点を変えるということが非常に難しくなる。見通しを立てるためには、心理的な距離が必要である。正常知能の者でも、見通しを立てることや終点から逆算してスケジュールを組み立てるといったことが、苦手というよりほとんどできない。このような一般化、概念化、そして見通しを立てる機能の障害は、自閉症の社会的な障害の中核に位置するものである。』

自閉症児の発達の道筋
『非高機能、高機能を問わず広汎性発達障害に共通の対人関係の発達について触れておきたいが、その前に、自閉症の対人関係の持ち方によるタイプについて解説を加える必要がある。同じ自閉症という診断でも、ずいぶん様子が異なる。少しでもその特徴に沿った対応が出来るようにという目的によって筆者は、対人関係で自閉症を孤立型、受動型、積極奇異型の三つに分けている。これもオリジナルは三症状の言い出しっぺであるウィングである。
孤立型の自閉症とは、人との関りを避けてしまうタイプの自閉症である。先に触れた知覚過敏が強くあり、また比較的重度の知的障害を伴っているものが多い。受動型とは、受け身であれば人と関わることが出来るタイプの自閉症である。知的障害を持つものも持たないものもいる。一般に、早期療育を行うと孤立型であった子どもも、徐々に受動型にタイプが変わっていくのが認められる。実は知的障害が若干あるくらいの受動型の自閉症は、一番よく仕事が出来るタイプでもあるのだ。積極奇異型とは人に積極的に、しかし奇異なやり方で接する自閉症である。知的な障害は軽い者が多いが、マイペースで、基盤に注意の障害を持っていて、多動であることが大きな特徴である。このグループも、小学校高学年になると多動は治まってきて、人との関わりが進んでいくと徐々に受動型に近いタイプに変化していく。
自閉症グループの幼児は、知覚過敏症などの問題に妨げられて愛着の形成が著しく遅れる。特に孤立型と積極奇異型である。積極奇異型の高機能児であっても本格的な愛着の形成が小学校年代に入ってからという児童は少なくない。したがって、小学校年代においてはきちんと子どもの甘えを両親に受け入れてもらうことがとても大事な課題となる。一般に4歳前後までの幼児期が最も大変で、5歳ごろにコミュニケーションが目覚ましく伸びる時期があり、小学校では指示の通りも良くなり、状況理解も向上し、問題行動も軽減し、黄金時代となる。小学校高学年は一生の間でも一番良く伸びる時期となる。この5歳代と10歳から12歳という二つの時期はコミュニケーション能力が飛躍的に向上する時期となることが多く、対人関係においてもまた成長が認められる。
青年期はかつてパニックの頻発が問題となっていたが、そのような児童が著しく減った今日から振り返ってみると、自閉症の認知特性を無視した強引な指導によって、青年期を迎えた自閉症者が二次的に大混乱をおこしただけということが明らかである。性的行動や、興奮しやすいといった問題が生じやすい時期ではあるが、今日において青年期は、小学校高学年に次ぐ、よく発達する時期となっているのが普通である。』


自閉症への治療教育
『さて、発達障害の治療教育については、後にまとめて述べるが、自閉症への対応のコツについて、ここで触れておきたい。先に自閉症の認知特徴を三つに絞って述べた。第一に、情報の中の雑音の除去ができないこと。第二に、一般化や概念化という作業ができないこと。第三に、認知対象との間に、事物、表象を問わず、認知における心理的距離が持てないことである。このそれぞれに対して工夫することが治療教育のコツとなる。
まず第一の問題であるが、この対応のための工夫が、できるだけ情報を減らし、特に同時に二つの情報を出さないことであり、一般にこれを構造化と呼ぶ。とりわけ知的障害を伴った自閉症の場合、情報の雑音の除去はきわめて困難で、雑多な情報があふれるところではしばしば立ち往生してしまう。教室のような比較的構造がしっかりとした場所でも、同時に二つの情報を出されると一つは無視されてしまう。たとえば、手を握りながら話しかければ、握られた手の知覚入力だけであふれてしまい、言われたことはまったく入らなくなるといった現象である。そのために一度に複数の情報を提示しないことが求められる。言うときは言うだけ、見せるときは見せるだけ、触れるときは触れるだけ。
付言すれば小学校低学年までのまだ生理的な不安定さを持つ重度の自閉症の子どもには、みだりに触らないほうが無難である。これに関連し、特に過敏性に対する配慮が常に必要とされる。高機能者グランディンによれば、印刷物にしても白紙に黒いインクではコントラストが強すぎて著しく読みにくいのであるという。これが紙に薄い青なりピンクな色がのっている場合には、はるかに読みやすくなるという。また、一部の児童は蛍光灯の微細な点滅を非常に嫌うこともある。ちょうどディスコの中に居るように感じられるのだという。
このような問題の上に、第二の認知の特性が重なる。自閉症児の場合、何度も体験したからといって徐々に慣れてくるということが期待できないところがある。また、一般化ができないこともあって、変化に対しては常に強い抵抗が生じる。要するに混乱してしまうのである。この点に関しては、特に知的障害を伴った自閉症においては、ある程度のこだわりの尊重と活用が現実的である。予定を変更せず、どうしても変更が必要なときには必ず予告を行うようにする。
さらに第三の問題は、見通しを立てることが困難につながる。知的に高いグループにおいてもきわめて苦手な、予測に基づく行動修正や予定の変更などの困難を克服する方法がある。現在広く用いられるようになったのは、スケジュールカードなどによって、見通しの立てにくさをカバーし、行うことを直線上に並べるという対応方法である。
このように見ると、特に小学校低学年において、広汎性発達障害への教育は個別教育が基本であり、基本を固めた後に初めて集団への参加を行うということがやはり好ましいのではないだろうか。早期療育を受けてきて集団での活動をすでに獲得した児童の場合には、必ずしもこの原則どおりではないが、高機能児でも集団参加が非常に難しい事例がけっして少なくない。
わが国の学校教育は行事が多すぎる。準備なしに行事に駆り立てることは、児童を混乱させるだけである。さらに通常教育、特別支援教育を問わず担任が毎年変わる状況では、自閉症グループの児童への十全な教育は不可能であろう。児童と教師との擦りあわせが可能となるのは11月を過ぎたあたりであり、三学期になるとやっと相互に信頼が取れた活動が可能となるが、また新学年に大混乱となるのである。
自閉症グループの発達障害は、社会的な行動を一つ一つ積み上げることが適応を向上される唯一の道である。したがって、他の発達障害と同様、彼らへのもっとも誤った対応はといえば放置に他ならない。』

 

まとめ

今回、学んだことの中で、特に次の4つは常に意識したいと思います。
1.自閉症に対しては、「情報の洪水に立ち往生している姿」を想像すること。

 

画像出展:MAG2 NEWS

2.自閉症の中には、知的障害を持つ者も、まったくの正常知能の者もいること。
3.何度も体験したからといって、慣れてくるということをあまり期待できないこと。
4.特に知的障害を伴った自閉症の場合、できるだけ情報を減らし同時に二つの情報を出さない

  こと。「言うときは言うだけ」、「見せるときは見せるだけ」、「触れるときは触れるだ

  け」を意識する)。

発達障害児へのマッサージを考える#2

発達障害児のマッサージを始めていますが、早速、通常のマッサージとの違いに直面しました。それは以下の3つです。個人個人により抱えている課題も異なり、程度も様々ですが、少なくともこの3点に対しては対応が必須と考えました。なお、内容については「障害者のための絵でわかる動作法 はじめの一歩」に順じています。

 

著者:長田 実、 渡辺 涼、 宮崎 昭

イラスト:田丸 秋穂

出版会社:福村出版

絵を見ながら実践できる解説書です。プログに載せている表、イラストもすべて本書のものです。

課題1マッサージを受けることに対して不安がある。
課題2発語(会話)、聴覚の問題を含め、痛み、こり、違和感を意思表示できないことが多い。
課題3仰向け、うつ伏せ、横向きの姿勢を数十秒もじっとしていられない児童もいる。

 

それぞれの課題に対して考えた対策をご説明します。

 

対策1
本の中に「訓練の進め方」が書かれています。本の対象は「動作法による訓練」なので、マッサージの施術とは同じではありませんが、たいへん参考になります。下記がマッサージ用に考えた手順とポイントになります。
準備状態を整える
 ・施術は自然な位置関係と無理のない姿勢が大切です。施術者自身の姿勢と気持ちを
安定

  させることも必要です。
 ・施術を始める前に、部位や方向、強さをわかりやすく伝えることが大切です。特に関節を

  動かす場合は、施術者自身が動かせて見せることも有効です。また、動かしていく時も戻

  す時も「ゆっくりそっと」が原則です
施術の開始を明確にする
 ・施術を始める時には「さぁ、やるよ」と声をかけます。なお、児童が落ち着かない場合は、

  あわてず、受け入れてくれるまで待って、気持ちを合わせて始めます
児童の抵抗や緊張を感じる
 ・施術者に伝わってくる児童の微妙な抵抗感に「気づく」ことが大切で、緊張があると
いう

  ことを察知します。この場合、急がないこと、施術者自身が緊張しないことが基本す。

  施術中は、日常よりもアイコンタクトしやすいので、なるべく心がけるようにしますが、

  じっと見るのではなく、短く軽いアイコンタクトを心がけます
動作の終わりを明確にする
 ・施術によりますが、関節の他動運動などでは回数を伝えることが必要です。また、気持ち

  良い感覚をもって施術を終えることができるように意識します

 

対策2a
児童自からが意思表示することが困難であるとすれば、まず必要なことは、児童の心身の特徴や
題をよく知ることだと思います。本には「フェイスシート」と呼ぶフォームが掲載されています。また、特に「からだ」の状態は「状態像をみる姿勢」として、イラストが示されています。
これらは現場で大いに役に立つと考え、パソコンでデータ入力をできるようにするため、ファイルを作成しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青字は本に書かれていた各項目の記述ポイントです。フォームの情報は高度な個人情報になりますので、パスワード管理をはじめ、必要な対策を取ります。

対策2b
児童の状態を把握するため4つの姿勢をとってもらい、不自然な箇所、緊張の強いところ、緊張の弱いところなどを確認します。ここで確認できた箇所は施術の重点ポイントと考え検討します。

すみません。薄くてほとんど読めませんが、下段の図に同じ内容を書き出しています。

対策3 
座ればじっとしていられる場合は座位にて施術を行いますが、マットの上、椅子、年少者であれば施術者の足の上に腰掛けさせるなど、安定した姿勢を取ります。

児童は床にあぐらで座ります。術者はその背後から頚、肩、頭にマッサージを行います。

児童の大腿部を固定し、躯幹を捻ります。これは体幹と股間をリラックスさせます。

足首の軟らかさは立位の安定に関係する重要な個所です。この図では椅子を使っています。

この図も足首を緩めています。年少者であれば施術者の足の上に座らせる方法もあります。

手や手指へのマッサージは脳を活性化します。向い合って行う際、短いアイコンタクトを心がけます。

施術は、「緊張から解放されリラックスできること、リラックスした心と体の状態を感じてもらうこと、そして共有すること」を一つの目標にしていきます。

地に足を着ける

長い予約待ちだった本ですが、忘れたころに図書館から連絡が入りました。発達障害児へのマッサージについては、中締めも終わり、次は実践という感じだったため、「読む?」と迷ったのですが、
著者の栗本先生は整体や各種手技療法のプロで、この1、2ヶ月で読んだ本とは傾向が異なっていたため熟読させて頂きました。

 

本先生は「からだ指導室 あんじん」というホームページを立ち上げられています。

「整っている身体」とは睡眠や休息によって、疲れを回復できる身体

「いい姿勢」は一人一人違う、息が深くできるのがいい姿勢

 

 

 

 

左の図は中央に置かれた5感(触覚・視覚・聴覚・味覚・嗅覚)と2覚(前庭感覚・固有受容覚)が「感覚調整」と「運動行為」という2つの問題に関わっているという図で、感覚統合を理解するうえで、たいへん分かりやすいものであると思います。

 

 

 

 

 

画像出展:「もっと笑顔が見たいから」(花風社)

今回の本は上の図でいえば、右側の破線で囲まれたボックスに示された「姿勢」や「運動行為」に焦点を当てた内容になっています。

 その中からここでは、『4.腰は使えているか?』と『8.大事なのは「土台」』、からだの部位で言えば「」と「」について取り上げたいと思います。
「腰が使えている」とは「腰の力を入れたり抜いたりが自在にできること」という意味です。例えば、タオルを使って二人で綱引きすると、腰が使えていない人は腰がへっぴり腰になります。普通の人でも腰痛があると思うように力を入れることができず、へっぴり腰のようになるのではないでしょうか。

注)下記の図は、「固有受容覚」以外、すべて「自閉っ子の心身をラクにしよう!」(花風社)から引用させて頂いたものです。


腰が使えるようになるトレーニング

 

和式トイレを使うように腰を下ろして、両脚を交互に動かし、座ったままの状態で歩きます。

 

お尻を後ろに突き出さずに、まっすぐ下すようにします。下せるところまででOK]です。

土台がしっかりしていないと、本来入るべき所に力が入らず、逆にリラックスすべき所に力が入りっぱなし等ということがおきるため、疲れやすくなります。
土台をしっかりさせるということは、まさに「地に足を着ける」ことです。このことは「整った身体」を作るコツです。そして、情緒の安定や集中力の向上、意欲の増進につながります。
「地に足を着ける」には足首の柔軟性と調整力が必要です。足首が使えていないと、つま先立ちとなり、首が緊張し前傾しやすくなり、その結果、姿勢が悪くなります。

 

 

足首は蝶番関節といって、ドアのようにパタパタと上下させることができるのですが、うまく使えていないと、動く必要のない筋肉まで緊張して、全体が動くような感じになってしまいます。

また、つま先立ちになりがちなのも足首の問題です。これにより、首が前傾し姿勢が悪くなります。

自閉症は周りの刺激にずっと反応し続けるために、頭が休まらず疲れやすいという傾向もあります。また、多動といわれる症状は、落ち着きのなさだけでなく、不注意や衝動的なふるまいが見られるものです。
姿勢の悪さは不安を生み、それをカバーするために、からだを動かしているという指摘もあります。従って、地に足を着け、土台をつくり、姿勢が良くなればこのような問題は改善が期待できます。


地に足を着けるためのトレーニング
・足に触れたり、足関節や個々の足指の関節を動かしたりして、触覚と固有受容覚を刺激します。

・つま先立ちなど、足関節の緊張や硬さなどを軽減するため、収縮する筋肉のフクラハギ(腓腹筋・ヒラメ筋)と反対に伸びる、前側にある前脛骨筋へのマッサージを行います。また、太ももの裏側(ハムストリングス)などをストレッチしてあげるもの有効です。

 

 

 

「固有受容覚」とは関節の曲げ伸ばしや筋肉の動きを脳に伝える感覚です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「もっと笑顔が見たいから」(花風社)

 

腰から頭まで揺れが伝わるようにして、からだ全体の力みを取り、心地よい感覚を作ります。

術者も手だけではなく、腰を使って動かすイメージです。


 

これらは、仰向けで行うのでアイコタクトを意識すると、さらに良いと思います。

発達障害児へのマッサージを考える

昨年12月16日のブログからスタートした、「小児障害・発達障害」に関する突貫工事も、中締め的に一度整理し、実践に向けて準備したいと思います。まとめ方は、サラリーマン時代に使っていた課題検討のやり方で、ちょっとマニアックな印象を持たれるかも知れません。

なお、新たに勉強した本は以下になります。

「続 自閉っ子、こういう風にできてます!―自立のための身体づくり 」も岩永先生の著書です。

Goal
1.個人としての自立、就職、そして将来に渡って生活していく基盤を獲得する。

Objective
1.施術により個人が抱えている問題が改善され、自立に向けて前進する。
Strategy
1.障害児の個性と現状を理解し、明確な目的を持ち最適な手技を選択する。
2.感覚統合療法を補完し、総合的な改善の促進を図る。
Action1(準備)
1.感覚統合療法を理解する

 

この図は「自閉症スペクトラム」を対象として描かれたものですが、左右の破線で囲まれたBoxにある「感覚調整の問題」および「運動行為の問題」に記載された各問題点は、他の病態にも適応可能な共通性の高いものと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「もっと笑顔が見たいから」(花風社)

 1)五感と二覚の中からマッサージでは「固有受容覚」と「触覚」をターゲットとする。
 2)「感覚調整の問題」7項目と「運動行為の問題」4項目を問診により把握する。
  A)計11項目のうち、該当した項目については施術効果の判断指標とする。
2.マッサージの対象を絞り込む
 1)社会性の発達障害…広汎用性発達障害(自閉症スペクトラム)
 2)注意力、行動コントロールの発達障害…注意欠陥性障害(ADHD)
 3)運動の発達障害…肢体不自由、動作不自由
3.筋緊張を確認する
 1)緊張、不安が強い
 2)低緊張
  A)低緊張の判断ポイント
   ・口元:よだれがよく出る
   ・姿勢:うつぶせの姿勢から手だけで体を起こそうとする。 
移動するときにおしりを床

       につけてずりばいする等。
4.健康の基本を確認する
 1)睡眠
 2)食欲
 3)便通
5.気になる部位等を確認する
 1)皮膚
 2)筋肉
 3)関節
 4)消化器
6.理解を深めるために知っておくこと
 1)生まれつきの障害であり、統合失調症などとは決定的に違う。つまりその世界に生きてい

   る者にとって、その世界は奇異でも何でもなく、ごくごく当たり前である。
 2)自閉症の精神病理の基本は、対話の際に雑多な情報の中から、目の前の人が発する情報に

   注意が集中できないこと、一度に処理できる情報が非常限られていることの二点であ

   る
 3)不安定で、怖い世界から自分を守るために、自閉症の幼児がとる戦略は、自分で、一定の

   安定した刺激を作り出して感覚遮断を行うという方策である。幼児期の自閉症でよく見ら

   れる自己刺激への没頭に他ならない。一定のリズムでぴょんぴょんしたり、目の前で手の

   ひらをひらひらさせたりして、彼らは押し寄せる情報へのバリアーを作り出しているので

   ある。
 4)大まかで曖昧な認知がとても苦手である
 5)一般的に4歳前後までの幼児期が最も大変で、5歳ごろにコミュニケーションが目覚しく伸

   びる時期がある。また、10歳~12歳の小学校高学年はさらによく伸びる時期である。
 6)何度も体験したからといって徐々に慣れてくるということが期待できないところがある。
 7)現在では脳科学の進展によって、注意欠陥性障害(ADHD)の症状の背後にはドーパミン

   系およびノルアドレナリン系神経機能の失調があることが明らかになっている。
 8)現在の感覚統合理論では、感覚統合障害は大きく二つの障害、すなわち「行為機能の障

   害」と「感覚調整障害」に分けられる。行為機能の障害は、触覚、固有受容感覚(筋肉に

   ある受容器で感じる身体の位置や動きの感覚)、前庭感覚(耳の奥の三半規管や耳石器な

   どで感じる回転やスピード、傾きの感覚)などの感覚情報の処理過程に問題があり、それ

   によって身体の位置や動きがわかりづらいなどの問題が生じ、不器用さや姿勢運動の問題

   など運動行為面に困難が出る。
 9)ボディイメージを育てるためには触覚と固有受容覚が特に重要になる。マッサージなどで

   他動的に触覚や固有受容覚を刺激することは効果的と思うが、ボディイメージを高めるた

   めには、能動的体験の中で触覚、固有受容覚を体験することが必要である

 

以前にもご紹介させて頂いたことのある図です。この絵のように関節を動かすことは、屈筋を収縮させ、拮抗する伸筋を弛緩させるので、固有受容覚に刺激を入れることができます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「もっと笑顔が見たいから」(花風社)

Action2(施術)
1.マッサージのガイドライン
 1)働きかける神経
  A)知覚神経
   ・鎮痛、鎮静
  B)運動神経
   ・機能亢進(マヒ性疾患)、機能抑制(筋痙攣)
  C)自律神経
   ・交感神経と副交感神経のバランスを整える
   ・自律神経反射
    ・胃、腸管への刺激による血管運動や消化液の分泌調節
    ・内分泌系、特にストレスに関係する副腎皮質に働きかける
 2)部位に対する効果
  A)皮膚におよぼす作用(触覚)
   ・新陳代謝を活性化する
   ・皮脂腺、汗腺の働きが活発になり分泌が亢進する
  B)筋におよぼす作用(触覚、固有受容覚)
   ・血行を良くする
   ・筋疲労を早く取り除く
   ・筋萎縮の予防
   ・筋痙攣の抑制
  C)関節におよぼす作用(固有受容覚)
   ・関節内の血行を良くする
   ・可動域を広げる
   ・滑液の分泌を促す
   ・関節の拘縮を軽減する
  D)消化器におよぼす作用(触覚→神経反射)
   ・背部、胃部の施術で胃液の分泌亢進、消化機能亢進、食用増進
   ・腹部施術で腸の吸収力増加、蠕動運動の亢進と便通が良くなる
 3)手技による効果
  A)興奮作用:主に軽擦法
   ・興奮作用とは病的に機能が低下している神経、筋に対してその機能を回復させる作用。

    手技は弱い刺激で時間は短く行う。
    運動麻痺、知覚鈍麻、知覚脱失などに対して治療効果がある。
  B)鎮静作用:主に軽擦法、揉捏法、圧迫法、叩打法
   ・鎮静作用とは病的に機能が亢進している神経や筋に対してその機能亢進を抑え、鎮静さ

    せる作用。手技は強い刺激で時間も長く行う。しかし病的に機能亢進をきたしているよ

    うな場合には感受性がたかまっているため、実際的には強い刺激を与えずに、患者が強

    いと感じる刺激を選んで施術する必要がある。
    神経痛、筋痙攣、筋緊張、知覚過敏、筋肉痛などに対して治療効果がある。
  C)反射作用:主に軽擦法、圧迫法
   ・反射作用とは疾病部位から離れた部位に施術をして反射機転を介して、神経や筋、内臓

    などに刺激を与え調整を図る。生体は内臓に異常がある場合に、皮膚、結合組織、筋肉

    などの表在組織に反射されて異常が現われる。その部の過敏、圧痛、緊張、硬結などを

    取り除くことにより、内臓の状態は改善される。
 4)運動法による効果

  A)他動運動法
   ・術者が患者の関節を可動する範囲で動かす方法
   ・関節拘縮、変形の予防
   ・可動域の維持・改善
   ・筋短縮の予防
   ・固有感覚受容器への刺激
  B)自動運動法
   ・患者が自分で行う運動法
   ・筋力の維持・増強
   ・可動域の維持・増強
   ・関節・筋肉内循環の促進
  C)抵抗運動法
   ・患者に自動運動を行わせながら、術者がその運動に対して抵抗する方法
   ・筋力の増強
   ・筋持久力の増強
 5)効果を上げるためのコミュニケーション 
  A)安心感を与える手の当て方をする
   ・まず、子供は自分の体に触れられることに対して大きな不安を感じている。
   ・不安を感じない程度の力を使う。
   ・手のひら全体を使う感じ。
  B)体の感じを子供と共有する
   ・子供が感じているだろう感覚を、施術者も同じように感覚を感じるようにする。
  C)言葉かけを大切にする
   ・子供の気持ちをリラックスさせ、その気にさせる。
   ・施術者も言葉かけと施術を重ねることで良いリズムで楽しく取り組むことが大事。
  D)主体的な取り組みを大切にする   
   ・子供は気が散って、集中できないことが多い。特に自閉や多動の子供たちは、訓練を自

    分が主体的に行っているという実感を欠いている。したがって、子供が自分の体の感じ

    に気づき、自分で体を緩めたり動かしているという感じをつかめるようにする主体的な

    動きを行わせる必要がある。
   ・まず、優しく、ゆっくりと何をどうしようとしているのかを部位に軽く触れながら「こ

    ういう動きをするよ。」と説明する。
   ・どこがどう感じているかを聞きながらゆっくり進め、自分で緩む感じや動く感じを認知

    する。
   ・さらに、自分自身が主体的に動かす感じをつかめるように、動かしている方向、スピー

    ド、可動域などを細かく伝えながら、二人三脚で理解するという課題に取り組んでい

    く
  E)仰臥位の運動法の時にアイコンタクトを行うようにする

 

一般的にアイコンタクトを避ける障害児も、刺激が入っている時はアイコンタクトの回数が増えるようです(感覚統合療法で行われている工夫)。これはマッサージの施術中でも意識すれば可能なので実践します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「もっと笑顔が見たいから」(花風社)

「自閉症の脳を読み解く」

著者のテンプル・グランディン氏はコロラド州立大学の動物学博士であり、自閉症の当事者です。また、自閉症啓蒙活動において世界的に影響のある学者のひとりとされています。
『本書では、自閉症の脳をさぐる旅にみなさんをご案内しよう。私は、自閉症をもっているが、この2、30年に、つねに最先端の技術を使った脳スキャンを数多く受け、さまざまな知見を得てきた。そのため、この知見と自閉症の体験の両方について語ることができる特異な立場にある。1980年代の後半にMRIが実用化されてまもなく、生まれて初めて「自分の脳をさぐる旅」に出かけるチャンスに飛びついた。当時、MRIはまだめずらしく、自分の脳の構造を細かく見るのは、すばらしいことだった。それ以来、新型のスキャン装置が導入されるたびに、かならず、まっ先にためしている。私は子どものころに言葉の遅れがあり、パニックの発作を起こし、人の顔をおぼえるのに苦労したが、そうしたことが、脳画像の解析によりいくらか説明できるようになった。』
これは「自閉症の脳を読み解く(The Autistic Brain)」という本の「まえがき」の書き出しの文章です。

このブログでは、自閉症の脳の特徴感覚処理の問題について考えてみたいと思います。

NHK出版

自閉症の脳とは
・解剖学的には正常である。
自閉症の脳は壊れているのではなく、順調に発達しなかったというものである
・ユタ大学の研究では健常者との同質性は約95%であり、これは健常者同士に見られる同質性の

 比率と大差はない。
・自閉症の一部で見られる共通的な特徴は、大きい扁桃体と大きい頭である。
・大脳皮質の領域間の接続不足と接続過剰が見られる。(大脳内は白質と呼ばれる神経線維が高速

 道路のようにつながっており、このつながりに接続不足や接続過剰が見られるということです)

 

自閉症に多く見られる対人反応
自閉症の人の大脳皮質は、人の顔を見ても物を見たときほど活発に反応しない
自閉症の人は目を合わせない。これは視線を合わせるアイコンクトに対して正反対の反応をする

 のである。右脳の側頭頭頂接合部が、普通の人の脳では相手の凝視に対して活性化したのに対し

 て、高機能自閉症の被験者では相手が視線をそらしたときに活性化した。側頭頭頂接合部は、相

 手の心の状態を察するなどの対人関係の課題にかかわると考えられている。さらに、左脳の背外

 側前頭前野で正反対のパターンが見つかった。普通の人ではそらした視線に対して活性化が見ら

 れ、自閉症の人では相手の凝視に対して活性化が見られた。つまり、自閉症の人はアイコンタク

 トに反応しないのではなく、普通の人と反対の反応をするということになる。これは、普通の人

 が出す好意・嫌悪のサインと逆ということになる。(つまり、自閉症の人にとっては、無視や冷

 たい態度というものが、好ましい態度に感じられるということになります)

 

テンプル・グランディン氏の脳画像
小脳が標準より20%も小さい:『小脳は運動協調性をつかさどっているから、この異常のせい

 で、たぶん私はバランス感覚がお粗末なのだろう。』
脳をつなぐ連合線維に関して、下前頭後頭束と下縦束の接続が非常に多い:『「(以前)私

 の脳には視覚野につながるインターネットの基幹回線、直通の回線があるに違いない。だから記

 憶がいいのだ」。たとえのつもりだったが、この描写は、私の頭の中で実際に起こっていること

 をずばりと言い当てている。』
左側脳室が右側脳室より50%以上も長い(通常は15%以内) 『私の左側脳室はとても長く、

 頭頂葉にまで伸びている。頭頂葉は作業記憶(ワーキングメモリ)にかかわっている。なるほど

 、頭頂葉が妨害されているから、私はいくつかの指令に迅速に従って作業をこなすのが苦手なの

 だ。頭頂葉は、また、数学的能力にもかかわっているらしい-だから私は代数で苦労するのだろ

 う。』
頭蓋内容積、頭蓋骨の容量と脳の大きさが、どちらも15%ほど大きい:『これもまた、何らかの

 発達異常から生じたと考えられる。損傷した部分を補うために、神経細胞が速く成長したのかも

 しれない』
大脳左半球の白質がほぼ15%大きい:『またもや、この異常が生じたのは、左脳で発達初期に異

 常があったためと、脳が新しい接続を生みだすことによって補おうとしたためと考えられる。』
扁桃体がおよそ22%大きい:『扁桃体は恐怖などの情動を処理するときに重要な役割を果たす。

 扁桃体がこんなに大きいから、私は生まれてからずっと不安にさいなまれているのだろう。1970

 年代の大半で私に襲いかかってきたパニックは、新たな視点で考えてみると、つじつまが合う。

 私には何もかもが怖い、私の恐怖心自体も怖いのだと扁桃体が語っていたのだ。』
左右の嗅内野が左は12%、右は23%も厚い:『カリフォルニア大学ロサンゼルス校デヴィッド・

 ゲッフェン医科大学院のイツハク・フリード神経外科教授によると「嗅内野は脳の記憶装置本体

 に通じる黄金の門だ。』
『当然ながら、この結果はすばらしいと思った。私を私たらしめている奇妙なことが脳で起こっていて、その奇妙な点のいくつかを浮き彫りにしているからだ。』

 

 

 

 

 

 

 

下はテンプル・グランディン氏の画像。

連合線維に関して、下前頭後頭束と下縦束の接続が非常に多い。

右がテンプル・グランディン氏の画像。

左側脳室が右側脳室に比べ非常に長い。

 

左の絵は2つの神経細胞。左は運動ニューロンで右は感覚ニューロン。運動ニューロンは樹状突起をもつ細胞体から筋肉に向かって遠心性に伝わる。一方、感覚ニューロンは皮膚などにある受容器から求心性に伝わる。

ここでは水色の髄鞘の下に軸索(有髄神経線維)が見える。灰白質とは、神経細胞の細胞体が存在している部位であり、これに対し、有髄神経線維だけの部位を白質と呼ぶ。大脳半球の内側には、有髄線維の集合体となっている白質が存在し、交連線維、連合線維、投射線維に分類される。なお、テンプル・グランディン氏が指摘されている下前頭後頭束と下縦束は、同側の大脳半球の異なる領域を繋ぐ連合線維に含まれる。

 

 

 

 

 

 

画像出展:「人体の正常構造と機能」(日本医事新報社) 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上記は連合線維の表層と深層、交連線維の前頭断と水平断で表した絵である。

画像出展:「人体の正常構造と機能」(日本医事新報社)

自閉症の感覚処理問題を分類する方法(テンプル・グラディン氏は重視されていません)
1.感覚刺激を求めるタイプ…自閉症の中に感覚刺激を求める傾向があるのは、自分が求めている

  ほど感覚刺激が十分に得られないためである。その感覚刺激には音を求める人もいれば、筆者

  のようにじわじわと感じる圧力の刺激を求める人もおり様々である。また、自閉症の人が体を

  揺らしたり、ぐるぐる回ったり、手をひらひらさせたり、音をたてたりするのは自分で感覚を

  刺激しているのである
2.感覚刺激に対する反応が過剰なタイプ…このタイプは、感覚刺激に対して過剰に敏感である。

  何かの匂いが我慢できないとか、騒がしいレストレンで座っていられない、ある種の服を着る

  ことができない、ある種の食べ物が食べられないといった反応を見せる。
3.感覚刺激に対する反応が過少なタイプ…このタイプは、普通の刺激に対して反応が乏しかった

  り、まったく反応しなかったりする。例えば、聴覚に問題がなくても、名前を呼ばれて振り向

  かないことや、痛みに反応を示さないことがある。


2010年に発表された「自閉症の感覚処理のサブタイプ-適応的行動との関連」による分類。この分類は特に理学療法士にとって、特に重要とされています。

1.感覚刺激を求め、不注意あるいは過剰集中の行動を招く
2.運動敏感性と低い筋緊張をともなう(反応不足あるいは反応過剰による)感覚調整
3.極端な味覚・嗅覚敏感性をともなう(反応不足あるいは反応過剰による)感覚調整

 

筆者はいずれの分類法も妥当であるとしながらも、同じようなデータが二つの異なる方法で体系化できることに疑問をもち、問題なのは解釈ではなく、データ自体にあると考えました。そして、自己申告による情報の重要性に着目すると共に、軽度な高機能自閉症だけでなく意思表示が困難な重度な自閉症患者についても考えなければならないとしました。ティムとカーリーはその例として紹介されています。
 
ティト・ラジャルシ・ムコパディヤイ
『(ティトは)著書、「唇が動かないなら、どうやって話せばいいのか-自閉症の僕の心の中」で、閉じ込められた生活から解放された話をしている。解放は、お絵かきボードに数字と文字を書き込むことによって実現した。ボードは、1990年代初め、ティトが4歳になる前に母親が与え、ティトは母親の助けを借りて数字とつづりをおぼえた。やがて母親は、ティトの手にペンをしばりつけて、書くことでコミュニケーションをはかれるようにした。

ティトは、ここ数年のあいだに本を何冊か出版し、その中で、現実をどんなふうに体験するのか、「行動する自分」と「考える自分」の二つに分けて説明している。最近、本を読み返して、初めて会ったときのことを思い出した。あのときは気づかなかったが、行動するティトと考えるティトをたて続けに見ていたのだ。
ティトと会ったのは、サンフランシスコの医療センターの図書室。照明は薄暗かった。蛍光灯がそなえられていたが、私たちの訪問を考慮して消されていた。部屋は静かで、雰囲気は落ち着いていた-気をそらすものはない。話をしたのは、ティトと私とティトのキーボードだ。私は、馬に乗っている宇宙飛行士の絵を見せた。ティトが見たことのないはずの絵をことさら選んだ-近くの本棚にあった「サイエンティフィック・アメリカン」誌のバックナンバーで見つけたテクノロジー関連企業の広告。ティトが自分の考えを言葉でどんなふうに述べるのか知りたかったのだ。

ティトは絵をよく見て、キーボードに向かった。「馬に乗ったアポロ11号」とすばやくタイプを打った。それから、羽ばたくように腕を上下させながら図書館を走りまわる。ティトがキーボードにもどってくると、牛の写真を見せた。「インドでは食べない」とティトはタイプを打った。それから、羽ばたくように腕を上下させながら図書館を走りまわる。私はもう一つ質問したが、それがどんな質問だったのか、今では思い出せない。それでも、次に何が起こったのかは、おぼえている。ティトは答え、それから、羽ばたくように腕を上下させながら図書室を走りまわったのだ。対談はそれで終わり。ティトは1回の面会で書けるだけのことを書いていた。休む必要があった。三つの短い質問に答えるだけでも、かなりの労力が必要だったのだ。
ティトは著書の中で、行動する自分を「奇妙で、じつによく動きまわる」と説明する。自分自身を「手とか脚とか」のように一つひとつの部分と考えていて、ぐるぐるまわるのは、「ばらばらの部分を一つにまとめる」ためだという。~中略~ 行動する自分は、腕を翼のように上下させて図書室を走りまわる。考える自分は、そうやって走りまわる自分を観察する。』

 

カーリー・フライシュマン:著書「カーリーの声-自閉症を打ち破る」
『カーリーはきわめて低機能だった。テイトと同様に、行動する自分はつねに動きまわったり、座って体を揺らしたり、叫んだり、手あたりしだいに何でも壊そうとした。そしてテイトと同様に、考える自分は、だれもが考える以上に多くの情報を取り入れていた。心の働きは、ある面では驚くほどふつうだった。

十代になると、いかにも年ごろの女の子らしい関心をもった。シンガー・ソングライターのジャスティン・ティンバーレークと映画俳優のブラッド・ピットに熱を上げ、テレビ番組に出演したときには、イケメンのカメラマンに夢中になったのだ。けれども、べつの点では、心の働きは複雑で、理解できるのは自分だけだった。

「カーリーの声」でとりわけ衝撃的な場面がある。カーリーは、自分が喫茶店で会話をするところ想像してみようと読者に語りかける。たいていの人なら、だれかとテーブルをはさんで座っていて、だれかが自分に話しかけ、自分は真剣に耳を傾けているところを想像するだろう。

カーリーは違う。私の場合、まったくちがう。テーブルのそばを通った女の人が香水の強烈な匂いをまき散らして、私の注意はそっちに移る。それから、後ろのテーブルから左の肩越しに聞こえてくるおしゃべりが耳につきはじめる。左の袖口で織りの粗い布地が腕をこする。それが気になりはじめると、今度は、コーヒーメーカーの立てるシューシューという音が、まわりのほかの音に混ざって聞こえてくる。店の入り口の扉が開いたり閉じたりするのが目に入り、疲れきってしまう。おしゃべりについていけなくなり、目の前にいる人の話をほとんど聞きのがす。…奇妙な言葉が聞こえるだけだ。 おしゃべりを続けるのが絶望的になったこの時点で、二つの行動のうちの一つをとるとカーリーは言う。心を閉ざして反応を示さなくなるか、癇癪を起すかだ
これは興味深いと、この一節を読んだときに思った。カーリーの前に座っていて、行動を知覚の特徴から説明するとしよう。カーリーが心を閉ざしてしまったら-私が目の前に座って話しかけているのに、うわの空のように見えるなら-反応不足と分類するだろう。ところが、癇癪を起こしたなら-カーリーが言うように、これといった理由もなく笑いだしたり、泣きだしたり、怒りだしたりして、悲鳴まであげるなら-反応過剰と分類するだろう。
二つの異なる行動、感覚処理の二つの異なるサブタイプ-少なくともカーリーと向かい合わせに座って、外から眺めていたら、そんなふうに見えるだろう。ところが、自分がカーリーで、心の声を聞いていたら、二つの反応の原因は同じと考える。感覚刺激の過剰。情報過多だ。』

 

反応不足と反応過剰は別のものではなく、一つの状態から生じる二つの異なる反応である。このように考えるようになり、テンプル・グランディン氏は感覚処理問題を従来の分類で考えるのではなく、人間の五感から捉えるべきであるという考えに至りました。


以下は各問題について列挙された内容です。

感覚処理問題の傾向と対策
視覚処理問題
 <視覚処理問題がある人の行動と症状>
 ・目の近くで指をはじく
 ・読むときに首を傾ける。あるいは横目で見る。
 ・蛍光灯をいやがる(特に周波数が50Hzから60Hzの蛍光灯でよく生じる)
 ・エスカレータを怖がる。乗り降りするときの足の出し方がわからない。
 ・初めて訪れた家の階段をのぼるような、なじみのない状況を切り抜けるときに、やみくもに行

  動する。
 ・印刷物を読んでいるときに字が揺れて見える。
 ・夜間視力が劣る。夜間の運転をいやがる。
 ・速い動きを嫌う。スーパーマーケットの自動ドアなど、速く(あるいは、いきなり)動くもの

  を避ける。
 ・明暗の強いコントラストを嫌う。明るいコントラストの配色を避ける。
 ・多色のタイルの床や、格子状のものを嫌う。
 <視覚処理問題の対策>
 ・蛍光灯のあるところなら、つばつきの帽子をかぶるか、窓のそばに座る。あるいは、旧式の白

  熱電球の照明器具をもってきて、自分専用にする。
 ・アーレン症候群用のアーレン眼鏡を手に入れるか、さまざまな淡い色のサングラスをかけて

  みる。
 ・読むものは、ベージュ色や水色、グレー、薄緑などのパステルカラーの紙に印刷してコントラ

  ストを弱くするか、色つきの透明なカバーを使う。
 ・コンピュータは、画面がちらつく旧式のデスクトップではなく、ノートパソコンかタブレット

  にする。背景を色つきにしてみる。


聴覚処理問題
 <聴覚処理問題がある人の行動と症状>
 ・聴覚は正常か正常に近いのに、聞こえていないように見えることがある。
 ・まわりが騒がしいとよく聞こえない。
 ・無声子音がよく聞こえない。母音のほうが簡単に聞こえる。
 ・大きな音がすると耳をふさぐ。
 ・駅や競技場、音の大きい映画館など、騒がしい場所でたびたび癇癪を起こす。
 ・煙感知器や爆竹、風船の割れる音、火災報知機など、ある種の音を聞くと耳が痛くなる。
 ・とくに刺激が過剰な場所にいるときに、音がまったく聞こえなくなったり、聞こえる音量が

  変わったりする。騒音は接続不良の携帯電話のような音がするのかもしれない。
 ・音の発生源をうまく見つけられない。
 <聴覚処理問題の対策>
 ・騒がしい場所では耳栓をする(少なくとも1日の半分はずして、聴覚がますます敏感にならな

  いようにする)
 ・耳が痛くなる音を録音し、音量を下げて再生してみる。
 ・大きな音は、くつろいでいて疲れていないときのほうが我慢しやすい。
 ・大きな音は、自分で音を出せるときや、音が出るとわかっているときのほうが、我慢できる。


触覚敏感性
 <触覚敏感性がある人の行動と症状>
 ・親しい人からでも、ハグされると身を引く。
 ・服を全部脱ぐ。あるいは、特定の素材の服しか着ない(ウールなどちくちくする素材は、たいて

  いの問題の原因)
 ・特定の素材や感触が我慢できない。
 ・重い枕や絨毯の下にもぐりこんだり、体に毛布を巻きつけたり、せまい場所(例えば、ベッド

  とマットレスと台のあいだ)に入りこんだりして、じわじわと圧力を感じる刺激を求める。
 ・軽く触れられただけで、キレたり、癇癪を起こしたりする。
 <触覚敏感性問題の対策>
 ・じわじわと圧力をかけると触角が鈍くなることがある。マッサージは、思いやりを教える役に

  も立つ。自閉症の人のほとんどが、加重ベストを着たり、重いクッションの下にもぐりこんだ

  り、しっかりマッサージを受けたりして、触覚を鈍らせると、ハグされることに耐えられるよ

  うになる。
 ・ちくちく、ヒリヒリする衣類に対する感受性を鈍くするのは困難だが、新しい衣類はすべて、

  肌に触れる前に何回か洗濯する。タグは全部取り除く。下着を裏返しに着る(継ぎ目が肌に触

  れないように)。
 ・診察に対する敏感性は、ときには、診察で触れられる部分にじわじわと圧力をかけると、鈍く

  することができる。


嗅覚と味覚の敏感性
 <嗅覚の感受性が鋭い人の行動>
 ・特定の物質やにおいを避ける。
 ・特定の強烈なにおいに惹かれる。
 ・何らかのにおいをかぐと癇癪を起こす。
 <味覚の感受性が鋭い人の行動>
 ・特定の食べ物しか食べない。
 ・特定の舌触りの食べ物を避ける。
 <嗅覚・味覚の敏感性問題の対策>
 ・こんな笑い話がある。男が診察室に入ってきて、手を頭の上にあげて言った。「先生、こうす

  ると痛いんです」。すると医者は言った。「だったら、そんなことするな」この話は、嗅覚と

  味覚の問題について私が言いたいことをよく言い表している。いやだったら、やめよう。惹き

  つけられているにおいが、人のいやがるような、たとえば排泄物なんかのにおいだったら、

  心地よくて強いにおいを出すものに替えて試してみよう。ペパーミントなどアロマセラピーで

  使われるような香りがよい。

緊張とリラックス(「リラクセーション」)

冒頭の「はしがき」から骨子ともいうべきものをご紹介します。

・『こころの問題といえばすぐさまストレスという言葉が思い浮かぶほど、ストレスは日常化して

 います。そのストレスはあたかも私たちのまわりに満ちあれているかのように思われています

 が、そんなものが客観的に存在して、私たちに外部から襲いかかってくるわけではありません。

 ストレスというものは、自分自身が主観的にこしらえている幻影にすぎないのです。』
・『このようなストレスの存在を前提として、それなりの緊張があった場合に、それになるべく早

 く気づき、その緊張を弛め、そんな緊張をしないですむような努力ができるようになれば、生活

 の仕方、人生の生き方までが大きく変化することになるでしょう。』
・『こういえばもはや明らかなように、本書のリラクセーションは、巷間おこなわれている筋の生

 理的な弛みを目的にするものではありません。自分のからだの「緊張を自分で弛める」という本

 人自身の心理的な努力活動を目指しているのです。』
以上のことから、今回は「緊張」と「リラックス」に焦点を当てます。

 

「姿勢のふしぎ」に続く、成田悟策先生の本です。

緊張の現われ方
準備緊張

 「いくぞ」、「やるぞ」と本気になってくると、脳波に加え筋電図にも変化が現れ、筋群の緊張

 が確認できます。また、はじめての動作や難しい作業、まだ自分のものになっていない課題など

 では、その動作のための緊張の程度がよくわからず、力が足りなかったり、逆に力を入れすぎた

 りしてしまいます。しかし、これらは特に意図するものではないため、意識下の活動です。ただ

 し、「準備緊張」も普段の生活上の動作においては、特に力むことはなく、必要な力だけを適度

 な緊張のもとに行っています。


恒常緊張

 難しかった動作や作業なども、熟達するにつれて緊張も適度なものになります。ところが、必要

 十分な力だけを入れ、済んだ後は不要な力を完全に抜くということは容易ではありません。これ

 は特に意識することなく、習慣的にやっているからです。つまり、緊張が多少残ったままになっ

 ているのが普通です。これらの残留した緊張は、からだのあちこちの部位や関節にだんだん蓄積

 され、習慣化し、ついには慢性化して動作を妨げたりする原因になります。このように影響を与

 える緊張を「恒常緊張」といいます。


場面緊張

 普段なら特に緊張することのないことでも、人前で発言するとか、試験や面接を受ける、競技に

 臨むなどという場面では、緊張が過剰になることがあります。ある動作をするとき、その人が置

 かれた状況によって左右される緊張を「場面緊張」と呼びます。このような緊張は現われる部

 位、現われ方、動作に及ぼす影響など人によって様々です。


イメージ緊張

 現実にはその場にいないのに、それを予期して頭のなかでその場面をイメージして緊張する場合

 もあります。このイメージの緊張は、現実の場面の緊張よりはるかに強烈であることも珍しく

 ありません。特に神経質な人、完全主義者あるいは鬱気分などに目立ちます。

 ストレスは外部からではなく、自分自身でつくり、それに悩んだり、脅かされたりするものな

 ので、「イメージ緊張」といえます。


不当な緊張

 不当な緊張は不安やこだわり、困難や悩みなど、当人自身の弱さや問題の表現であり、それがま

 た自らへの反省や警告でもあるという複雑な構造をもっています。それを確かめるには、自分自

 身をも見つめ、その由来や自分のあり方などにも気づいたり、明確化していくことであり簡単で

 はありません。しかし、落ち着いて自分のからだに注意を向け、自分のからだを弛めながら、実

 体にそってしっかり明確化してみようという気持ちになると、緊張や痛みは変化してきます

ストレスへの対処
人は精神的に疲れを感じた時や、体が緊張でこわばっている時などにリラックスしたいと思うので

はないでしょうか。
無理したり過剰緊張するのは、多くは個人の生活に由来しています。日常のストレス、不安定な気
持ちや悩み、無理や困難などに対して正面から受け止めて解決しようとせず、逃避することは自分自身の問題点を何事もなかったかのように、自分の体の中へゴミのように投棄することだと思います。
その結果、一時的に気持ちの安定は得られる一方で、過剰な緊張や偏った姿勢などによる問題が体に現われます。筋の突っ張りや凝り、痛みなどに悩むのはそのためです。
従って、まずは自分の体を犠牲にするようなやり方を改めなければなりません。それには、これまで省みることのなかった自分の体に注意を向けることから始めます
自分の体の様々な部位・局部など、隅々の体の感じ、気持ちによって変化するデリケートな筋の緊張状態、自分が体を動かし・動くプロセス全体の感覚、自体軸や姿勢などに気を配って立ったり歩いたりする感じなどを、まず体験し直すことが必要です
こうして自分の体に注意を向け、緊張や動きの感じが実感として体験できるようになるにつれて、それまで分からなかった自分の体の不当な緊張の状態や無理な動き、偏った姿勢などにも気づくようになってきます。さらに、日常生活における悩みや困難をそうした緊張や動きに無理矢理転化してきた状況も理解でき始めるようになります。

上記の「ストレスへの対処」の中で、過剰な緊張や偏った姿勢について言及されている箇所があります。一方、トリガーポイント(過度な緊張状態が続き、しこりのようになった硬結で離れた部位に関連痛を起こす原因になるもの)が姿勢に影響するという指摘があります。ここでは、本題から外れますが、3例程ご紹介したいと思います。

今回ご紹介する例は、こちらの本に掲載されている内容です。

1.腸腰筋のトリガーポイントと特徴的な姿勢

 インナーマッスルとして有名な腸腰筋(腸骨筋+大腰筋)です。無意識にこの筋肉を伸張させるような

 姿勢を取ります。


2.脊柱起立筋のトリガーポイントと特徴的な姿勢

 無意識に背筋を伸ばすような姿勢をよく取ります。


2.中殿筋のトリガーポイントと特徴的な姿勢

 足を組むことにより、中殿筋を伸張させています。

 


リラックス・イメージ体験の方法
『本当はまだまったくリラックスしていないからだなのに、いきいなり自分のからだをリラックスしているとイメージしようとしても、なかなかそんなことはできないものです。そんな概念とか観念のようなものは、頭のなかで思うことはできても、リラックスする感じを伴うことのない空疎な言葉だけに終わってしまうでしょう。
ところが、しばらくその思いを繰り返したり、いくらか疲れたか飽きたりしてぼんやりしてきたり、課題実現はあきらめて楽な気分になったり、頑張りはやめて何も考えないでいたり、現実を忘れて豊かな雰囲気に包まれていたり、春風駘蕩の夢心地という状況に近づいてくると、自然にからだも緊張からかけ離れたものになってきます
緊張はしていないにしても、まだリラックスという感じではないという状況がしばらく続くと、緊張と弛緩の中間にあった気分は徐々に変化してくるものです。それをとくに自分のからだの弛緩した感じとしてからだに注意を向けてみると、なんだかそのとおりの感じがしてくるということになるかもしれません。さらに、それにこころを向けていると、この感じがいよいよはっきりしてきて、身も心もリラックスしたような感じになってくるものです。
このあたりから、リラックスのイメージと呼んでいいでしょうか。この感じはさらに続けていればだんだん明瞭になって、本当にからだがリラックスしてきたという実感的なものになってきます
こうしてあまりはっきりしないイメージから、現実にリラックスしているという実感が伴うようなものまで、イメージにはその体験の仕方にさまざまな程度の差があるのです。
しかも、ただ単にこころにそう思っただけのものを、その段階で止めてしまったら、からだには具体的にほとんどなんの変化も現われないでしょう。しかし、それなりにリラックスというイメージをこころにとどめたままでいると、少しずつそれがからだに影響を及ぼし始め、そのからだの感じがこころにリラックスの体験を明らかにし始めます。それがリラックスの感じやイメージをいっそう実感的にし、それがさらにからだの緊張を弛め、これがさらにリラックスの感じとイメージを明確化していくという、循環的な強化を生み出していくことになります。』

動作法(「姿勢のふしぎ」)

前回の「脳性麻痺 vs 脳性マヒ」に続き、今回は成瀬悟策先生の「姿勢のふしぎ」より、どのようにして動作法が生まれ、広がっていったのか、何故、動作法が心理療法なのか等についてお伝えします。
まずは、印象的な「まえがき」とそれに続く「世界初の成功例」に動作法の経緯や概要が語られています。

 

「姿勢のふしぎ」(講談社)

まえがき

脳性マヒで動かないはずの腕が、催眠中に挙がったという事実に直面したのがことの始まりで、それ以来30年を経て今もなお、人の「動作」というもののおもしろさに取りつかれっぱなしの状態です。
脳性マヒによるからだの強烈な緊張を、脳・神経系から筋・骨格系への生理過程によって弛めるという当初の考えは、現実には役に立ちませんでした。そのからだの持ち主の心理的な活動によって自らのからだを弛めることで、初めて治療効果が上がり始めたのです。自己弛緩さえできるようになればと努めるうちに10年ほどが過ぎました。そして、自己弛緩だけでは不充分で、自らの意図どおりにからだを動かす要領を身につけることが必要とわかり、そのための訓練を続けるうち、また10年がすぎていきました。
それからの後の10年でさらにわかったのは、重力にそってからだを大地上にタテに立てることが必要であることでした。それは、からだを立てるための心棒、すなわち体軸をまっすぐに立てて自然に無理のない姿勢がとれるということです。そしてその状態から体軸のどの部位でもそれを柔軟に屈げたり伸ばしたり、反らしたり捻ったりしながら、上体部、手腕、脚足を前後左右に使いこなせるようになることが課題となりました
こうして、脳性マヒで肢体が不自由な人のための動作訓練がいちおうまとまりかけた頃、同じ方法が自閉症や多動の子にも有効であることがわかり、この「動作法」が心理療法として大展開することになりました。精神分裂病を始め、さまざまな症状を示すクライエントの治療で予想外の効果を得られることが確かめられたのです。現在では「動作療法」として全国規模の学会まで開かれるようになりました。
肩や腰などに起こる強い緊張は、肢体の不自由な人特有のものではなく、一般の人にみられる猫背や側弯、腰痛や肩凝り、四十肩、五十肩、外反母趾などの原因でもあることがわかり、また新たな展開が始まりました。そうした悩みを解消する健康法として「動作法」がきわめて有効だからです。また、これといって特に悪いところもないのに立つのがつらい、歩けないなどと訴える高齢者にも、このうえない援助ができるようになりました。』

 

世界初の成功例

『今からちょうど34年前(1964年)のこと、埼玉県の身体障害者厚生指導所という施設に勤務していた小林茂さんからすばらしい報告が届きました。脳性マヒで動かなかった16歳の男の子の右腕が、催眠暗示による訓練で真上まで独りで挙げられるようになったというのです。これは脳性マヒの分野でも、催眠の分野でも共に有史以来初めての試みで、しかも世界初のすばらしい成功例になりました。
脳性マヒというのは出産時、ないしその前後の時期に発達中の脳に生じた病変のため、随意筋のコントロールが失われたり、肢体が不自由になったりするような、運動能力の永続的な障害とされています。出産前後というのは受胎から新生児期、すなわち生後4週までの間に生じた脳の病変が原因ですから遺伝によるものではありません。死滅した脳細胞が再び蘇ることはないので、この病変が元通りに治癒されることはありません。この病変はそのまま残りますが、それ以上に悪化しないため、非進行性といわれています。
この脳の病変のため、手足やからだの動きが自由にはできないことを肢体不自由といい、脳性マヒの人にみられる運動障害の代表的なものですその当時までは、脳の病変が治らないのだから、その結果からくるマヒも運動を司る神経系の障害からくる麻痺と同じように、もはやよくなることはないものとされていました
この子たちの処置は、これまでもっぱら整形外科で扱ってきました。脳性マヒの子は随意筋のコントロールが悪く、ことに関節を動かすため相拮抗して働く伸筋と屈筋がアンバランスで、伸筋が強すぎれば伸びて突っ張るし、屈筋が強ければ屈曲して伸ばせなくなるのです。この強すぎるほうの筋や腱を切ったり延長したりする手術が整形外科学での処置法です。手術直後はいくらか動きやすくなることもありますが、手術の傷が治ればまた元の突っ張りや屈曲に戻る傾向があります。
神経生理学では脳性マヒの不自由がそうした拮抗筋の障害ではなく、それを支配する脳・神経系からの命令が不適切なためだから、その命令の出し方を変えないかぎり、いくら筋や腱を手術しても元に戻るのは当然とみます。むしろ、中枢神経系内の原始反射運動の異常反射のパターンを抑制もしくは除去して、正常反射パターンを促進させ、さらに強化する神経活動のパターン・トレーニングが必要だというのが神経生理学的な機能訓練の考え方です。でも、反射運動の正常化だけで、日常生活における複雑な動作までできるようになるとするのは無理でしょう。』

 

肢体不自由
肢体不自由については次のような説明がされています。

『脳性マヒの子がからだを自由に動かせないのは、そのからだの持ち主である主体が、自分のからだを動かす心理活動をうまくできないためであることがこれまでにはっきりしてきました。彼らの直面している難しさは、握手しようと思い、それができるように懸命に頑張るにも関わらず、その結果として現実に現れてくるからだの動きは、どんなに頑張っても握手とは違った動きになってしまうことでした。例えば主体が「握手しよう」と思い、あるいはそうしたいと欲するとき、その動きについての「意図」が生じたといいます。その意図を実現できるように身体部位を特定し、実現しようと「努力」するのですが、どんなに努力しても、結果としての「身体運動」の現れ方、すなわち動きのパターンは、最初に意図し、心にイメージとして描いた握手という動きのパターンとはどうしても食い違ってしまいます。だからこそ「肢体不自由」ということになるのです。からだを動かすプロセスをこれまで脳性マヒの子でみてきましたが、プロセスそのものは彼らとふつうの私たちとの間にちがいがあるわけではありません。』

さらに、例を出し分かりやすく説明されています。

肢体不自由は自動車の運転になぞらえれば、車そのものはよく走るのに、運転手が未熟なので車が思ったように走れないのに似ていますこれは脳性マヒの子たちが、意図を実現しようとする努力の仕方がうまくないためで、彼らにその適切な努力の仕方をいかに身につけられるように援助できるかが私たちの課題になってきます。』

つまり、肢体不自由とは、「動く。けれども、思うように動かせない、コントロールできない」という状態であると理解しました。

 

心理療法
以下に4つの文章を引用しています。ここには、心理療法といえども、からだに起きている不調に目を向け、安直に心理面だけを取り上げたり、病名に頼るべきではないことが指摘されています。そして、多くの場合「緊張」が存在し、その「緊張」が心身両面に大きく関わっていること、そして自らが緊張している心身を取り除けるようになることが重要であると説明されています。

 

心理療法を求めてくるクライアントのほとんどが、自分の主たる問題として訴えてくるのがからだの不調のあれこれで、その多くは自分のからだの緊張や動きに関わるものです。からだが重たい、だるい、突っ張る、かたい、痛い、やる気がしない、動きが鈍くなった、動かせない、力が入らない、疲れやすい、足元が定まらない、からだが宙に浮いているようだ、自分のからだでないような感じ、自分がやっているという気がしない、操られている等々、動作とそれについての体験に問題のあることを訴えているのです。したがって、何はともあれそれらを、日常生活における主体の動作にかかわる努力と体験の問題として取り扱わなければならないはずなのに、実際にはそれを詳しく調べもせず、動作から目をそらそうとするのが普通のようです。その訴えを聞きながら、セラピストはそれ自体の重要性を無視して、それをそのまま直接の対象とせず、そうなった本当の問題はその背後にあるとし、別の問題にすり替えて解釈しようとしますそれには二通りあって、一つはそれらの訴えを生理的、病理的なものとして受け取り、身体疾患の症状探しに取り掛かり、それが原因であろうとなかろうと病気の治療に結びつけようとします他の一つは、その背景に何らかの心理的な問題があるものと受け取り、セラピスト各自のよって立つ治療理論や学派の教えに従って、無理矢理に心の古傷やいやな体験を探したり、親子関係や家庭環境、人間関係をその原因に仕立て上げようとします。その結果、治療者からの暗示や当人の思いすごしで本物の病気になってしまったり、いやおうでも過去のエピソードや家庭環境、社会関係を原因にさせられてしまいかねません。もちろん、からだの病気が原因のこともあれば、心理的な外傷体験が無視できないこともなくはないでしょう。しかし、あまりに型通りの安易なすり替えによって、ほんとうの問題がおそろかにされてはなりません。』


心理療法を求めてくる人は、そのほとんどがからだのどこかに習慣的ないし慢性的な緊張がみられます。心の不安、不調や悩み、無理や努力のしそこないなどが緊張となって現れているのです。それは肩や背中、腰など全体にわたるものから、肩だけ、腰だけというもの、指圧でツボといっているようなある小筋群だけに局部限定的にみられるものまで様々です。緊張はほとんど意識に上らない努力によるものですから、当人自身はそこが緊張しているとは気づいていません。意識的な体験としては、力が入らない、動かせない、きつい、凝る、重い、痛い、自分の身体でない、空洞のようだなどと感じています。そうした緊張を他者による物理的、化学的な処置で弛緩する方法は従来からたくさんありますが、大切なものはそうしたものでなく、自分で自分のからだを弛めるという自己弛緩です。それにはまず自分のからだの緊張に気づくこと、そこへ意識努力で力が入られること、入れた力を抜いていくこと、その部位が動かせること、力を抜いたり動かしたりする感じがわかること、それに伴って自体を弛めながら、弛んでいく感じ、弛めていく感じ、その弛緩の感じをじっくり味わいながら、局部からその周囲、他の緊張部位、さらには全身を弛緩させる感じ、全身がリラックスしている感じなどがわかるように進めていきます。』


不当な緊張が現れやすい部位:自体軸をタテ直へ立てようとする意識努力のしそこないとして生じやすい随伴緊張は、姿勢の歪みとしてさまざまな身体部位に現れますが、最も一般的に広くみられるのは肩と腰、およびその両者を連結する背中です。それらを含む躯幹部が中核となって、それの接続する頚、手腕、脚足などへと随伴緊張が波及します。そうした不当緊張の結果として、からだに現れる不調や悩みの中には肩凝り、腰痛、側弯、四十肩、五十肩、背中の痛み、頭痛、脚足痛、尖足、外反母趾などがよくみられます。これらの痛みや不調、悩みなどの主たる原因が特定部位の不当な随伴緊張であり、そこに居座る無意識努力による随伴緊張を意識努力に変換して、それらの部位の緊張を自分でリラックスできるようになり、あるいはそれまで思うように動かせなったその部位が自由に動かせるようになるにつれて、急速に減退し消滅するということは、私たちの経験から明確に証明されてきました。そうしたからだの痛みや不調が自分のからだを自分で弛め、自分で動かせるようになることで快癒するという事実から結論すれば、それらはこれまで生理的な不調として誤解されやすかったのですが、実はそれが無意識努力という主体の心理的なそれであることをあらためてここに強調しておかねばなりません。』


『「弛んだ筋群」よりも「弛めようとする自己活動」が重要:他者による弛緩は、そのとき限りの筋弛緩には役立つとしても、その刺激がなくなれば元に戻るだけでなく、その刺激に対する生体としての耐性が高まるので、繰り返しによって弛緩効果はだんだん低下してしまうのです。他者に頼っていては駄目で、結局自分で自分を弛める自己弛緩でなくてはならないことがわかってきたのです。自己弛緩は繰り返せば繰り返すほど自分の弛め方が上手になるからです。緊張が減少した後者では、自分で弛めていく感じ、そのための努力の仕方、それに伴うからだの感じ、それらをコントロールしていく自分自身の感じなど、自己弛緩の体験を中心に進めたのです。こうした経験からわかったのは、「弛んだ筋群」が重要なのではなく、「弛めようとする自己活動」が目的にならなければならないということでした。』

 

マッサージの価値と課題 (「小児障害マッサージ」にリンク:中段以降を参照ください)
・マッサージは主に局所における循環作用と、自律神経や脳脊髄神経の神経反射による作用があ

 り、緊張を和らげること、あるいは弛緩した筋に緊張を与えることが可能です。一方、動作法の

 目標が「自分で弛め、緊張を取る」ところにありますので、施術を行うだけでなく、動作法を理

 解した上で「セルフケア」という視点から、その対応を考える必要があると認識しました。


追記
動作法の具体的な方法については、ブルーバックスシリーズの「リラクセーション―緊張を自分で弛める法」にあるようで、それについても拝読しようと考えています。

脳性麻痺 vs 脳性マヒ

12月30日の「動作法について」でご紹介した、心理学からのアプローチである動作法を理解するには、それを生みだした成瀬悟策先生の書物を読むことが第一だろうと思い、読みやすい本ということから、講談社ブルーバックスシリーズの中の「姿勢のふしぎ」を購入しました。
動作法はどのようにして生まれたのか、心理療法とはどのようなものか等については、次回にお伝えしたいと思います。これは、まず最初に「脳性麻痺」と「脳性マヒ」の違いを理解しなければならないと考えたためです。


初め、「脳性麻痺」ではなく「脳性マヒ」とカタカナが使われていることに、特に意味はないように思っていました。ところがそれは下記にある通り、誤りであることが分かりました。
『脳の病変によって肢体が不自由になる現象を、本書ではここまで「脳性麻痺」ではなく一貫して「脳性マヒ」と表記してきたのは、一般に「麻痺」ということばが「神経や筋の機能が停止する状態」(広辞苑)とされているためでした。これまで述べてきたように、この子たちのからだは病理学的に動かないのではなく、生理的には動く自分のからだを、その主体者が自分の思うように動かせないだけですから、「麻痺」ということばはそぐわないため用いません。』


そして、脳性マヒの特徴は次のようなものだということを理解しました。

「脳性マヒ」は変わらないが「脳性マヒの子」は変わる:脳性マヒというのは肢体不自由の原因になるような脳の病変があることをさし、生理的または病理的学的な診断名のことです。そんな病変を脳にもちながら生をうけ、今ここに生きて生活している子ども、ないしその人は、脳に病変があるため肢体にそれなりに不自由なところはありますが、あくまでもほかの一般的な人と何ら変わるところはありません。』


これを補足するものとして、次のような興味深い事実も書かれていました。

『研究室へやって来る脳性マヒの子たちが疲れないようにと昼寝の時間を設けていました。そこで観察していて驚いたことは、突っ張ったり、引きつったりするため、両手共にうまく動かせないはずのC君やDさんたちが、寝返りをするときにはけっこううまく両腕を動かして寝返っているのです。からだをあちこちへ移動するのに手足を使っているのです。その子たちに目が覚めてから「同じようにやってごらん」といってもできないのがふつうです。』


さらに、次の一文で疑問が大きくなり、調べなければという思いになりました。

『動くが動かせない:脳性マヒの子は脳の病変のため、からだが動かないものと思われやすいのが現状です。しっかりした医学を修めた医師の中にもそう思っている人が少なくありません。しかし実際によく調べてみると、ふつうの脳性マヒだけが原因で、手足がまったく動かないという例はないといってよいでしょう。』


そこで、まずは専門学校で使っていた教科書(「臨床医学各論 第2版」)、図が豊富で分かりやすい「病気がみえるシリーズ」、「病気がみえる」と同じ出版会社(医療情報科学研究所)で、「病気がみえる」の簡易版のような「ビジュアルノート」の3つについて、脳性マヒについてどのような説明がされているのかを調べてみました。

 

「臨床医学各論 第2版」(医歯薬出版)

「神経疾患」の中の「基底核変性疾患」の中に、パーキンソン病、ハンチントン病が出てきます。そして、3番目には「脳性小児麻痺」が載っています。

書かれている主な内容は『受胎から新生児(生後4か月以内)までの間に生じた、脳の非進行性病変に基づく永続的な運動および姿勢の異常。運動障害は屈筋群と伸筋群の協調運動障害で、姿勢の異常、筋トーヌスの異常、反射の異常などの特徴がみられる。また、異常運動として、ジストニア、アテトーゼ様運動、舞踏様運動がみられる。生後6ヶ月以内に診断し、機能訓練をできるかぎり早く開始する。変形の矯正や拘縮の除去には整形外科的療法を要する。約500人の出生に1人の率で発生する。』

説明の中で「麻痺」という言葉は使われておらず、「運動障害」としての姿勢の異常、筋トーヌスの異常、反射の異常、そして異常運動についての説明となっていました。

 

「病気がみえる 脳・神経」(医療情報科学研究所)

「神経・筋の異常」の中の「群発頭痛」に続く2つめの「Supplement」として「脳性麻痺(CP)」が出ています。Supplementとは、この本の中では『主にその章の内容と直接的に関わらない情報で、補足的におさえておいてほしいものを示しました。』という位置づけです。ちなみに1つめのSupplementは「頭痛ダイアリー」というものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「病気がみえる 脳・神経」(医療情報科学研究所)

『「脳性麻痺」とは発育期(受胎から生後4週間まで)に脳の運動系の形成異常や損傷により、運動や姿勢を制御する能力が損なわれた病態の総称である。症状は満2歳までに発症する。』という説明になっています。

個別の疾患ではなく「総称」として位置づけられたため、「Supplement」での登場となったのだろうと思います。従って、上段の「運動麻痺:四肢麻痺、対麻痺、片麻痺」の記述や、下段の錐体路や大脳基底核、小脳の問題についての記述も、「運動や姿勢を制御する能力が損なわれた病態の総称」の立場で考えれば、特に不自然とは言えません。

 

「ビジュアルノート」(医療情報科学研究所)

こちらは、脳・神経や小児科などを含む計18の科、主要252疾患についての説明が図とともにされていますが、「脳性麻痺」の記述はありませんでした

上記は「ビジュアルノート」にあった表です。下段の新生児疾患には「脳性マヒ」は入っていません。小児の成長と発達および疾患に関する情報が盛り込まれた見やすい表と思い載せました。

まとめ

この3冊から、「脳性麻痺」の位置付けは曖昧であり、明確に定義されていないということを確認できました。
私としては、「脳性マヒ」という用語を使い、「脳血管障害の後遺症などの四肢麻痺・対麻痺・片麻痺とは異なるもの。「動くが、思いどおりに動かせない」運動障害で、アテトーゼやジストニアなどの異常運動を伴う場合もある、肢体不自由の病態」として定義したいと思います。

動作法について

「動作法」は1960年代後半に、成瀬悟策先生によって提唱された一つの心理療法および心理学理論です。その後、自閉症・多動症児に効果があることが、筑波大学の今野義孝先生と大野清志先生によって確かめられました。
リハビリテーションが身体の可動域や筋肉の強さなどの生理的側面に重きを置いているのとは対象的に、心理的側面について焦点をあてたものとなっています。

成瀬悟策先生が名誉理事長。

『日本リハビリテイション心理学会はリハビリテイション心理学及びこれに基づく学術の発展をはかり、文化の向上に寄与するとともに、併せて会員相互の親睦をはかることを目的とした全国的な学術団体です。』

心理的側面とはどのようなものか、どのように行うのか等を知るため、「絵でわかる動作法」と「動作法ハンドブック」という2冊の本を読んでみました。

私自身、まだまだ消化しきれていない段階ではありますが、まずはこの2冊の内容から理解や認識すべきと思った事柄を列挙してみました。
※「動作法ハンドブック」と明記されているもの以外は、「絵でわかる動作法」からの引用です。


・動作という言葉は日常でも使いますが、動作法においては特別に定義された言葉です。

「身体運動」は文字どおり身体が動くことです。身体としての骨格や筋肉があり、それを動かす神経があり、その神経に命令を伝える大脳があります。こうした、生理的に身体が動くことを指して「身体運動」と呼んでいます。

一方、「動作」は、身体運動をコントロールしている主体の活動です。自分で、動かそうと「意図」して、意図どおりになるように「努力」するという心理的なプロセスがあって、その結果として身体運動が生起する時に「動作」といいます。 (動作=意図→努力→身体運動)


・動作の基本 「動作法ハンドブック」
 ・意図

  ・人が自分の体をどのように動かそうとするかという、動きについて計画する段階
 ・努力

  ・意図を実現するため、自分の体に注意を向け、意図した動きに必要な体の諸条件を整えた

   り、操作したりする感じも出さなければならない。それを出すための主体的な自己活動
 ・身体運動

  ・この段階で発生する心的なエネルギーが、生理学的な段階の活動を刺激して生起する。

 

・動作不自由 「動作法ハンドブック」
 ・脳性マヒの子供の不自由は、動作学的な研究の結果、脳の神経学的な障害に基づいた、中枢

  性の運動機能障害であるという理解の仕方では不十分であることが分かってきました。むし

  ろ、人が、自分の身体運動を操作する、主体的な自己の活動が十分に行われていないため

  に、発達の経過で、不自由な動かし方を学習したためであると考えた方が適切なのです。運

  動の発達が遅れて、Gパターンと呼ばれる、乳幼児の固い姿勢を自分の力で乗り越えられな

  いのも、これに関係があります。このように、人の主体的な活動である動作の問題が非常に

  大きいことから、脳性マによる不自由は、単なる肢体不自由と区別して、動作の不自由と

  言った方が適切です。同じような動作不自由をもっている者には、知恵遅れの子供、自閉や

  多動の子供などがいます。動作不自由は、自己活動が不十分なために発生します。


動作法が対象としているのは心理的な活動です。身体をどのように動かしたらよいかという「身体の動かし方」と、それをどのように実行するかという「意図」と「努力」の仕方が動作法の対象です。


・医療においては、脳性マヒの肢体不自由に対して、生理学の観点から運動機能の改善をはかるリハビリテーションが行われています。

動作法も、脳性マヒ児の身体の動きを改善するので、医学的なリハビリテーションと同様に身体を訓練するものと誤解される場合がみられます。実際に、動作法の様子を外から見ていると、腕や脚などの身体を動かしています。けれども、動作法では、身体がどれだけ曲がったり伸びたりしたかという、力の強さや動いた量を問題としているわけではありません。動作法が肢体不自由の子供だけでなく、自閉症や多動の子供、あるいは神経症などにも効果があるのは、人間の「意図」や「努力」という活動を対象として扱っているからなのです。


・人は、動作という心理的プロセスを様々な形で感じます。その中で、人が確かに自分で身体を動かしているという実感を「主動感」と呼んでいます。動作法は、この主動感を大切にしています。

一方、自分以外の力によって身体を動かされているという他動的な実感のことを「被動感」と呼びます。また、自分の身体が勝手に動いてしまうという実感のことを「自動感」といいます。


・「緊張」というのは、人が身体のある部分をある方向に動かしていった時に、生理学的に異常がなければ動く範囲にもかかわらず、抵抗感を感じて動かしにくくなることです。指導者が相手の身体をある方向に動かしていくと抵抗感を感じる時、その部位のその方向に緊張があるといいます。抵抗感が強いほど緊張も強いといいます。この緊張は、楽に身体を動かすことを妨げる要素となります。骨や筋肉に生理学的な変化がないのであれば、本人が何らかの形で力を入れているものと考えられます。そして、実際に動作法によって入れている力を緩める練習をすると、緊張が少なくなります。


・行動変容をねらう訓練のコツ 「動作法ハンドブック」
 ・安心感を与える手の当て方をする
  ・まず、子供は自分の体に触れられることに対して大きな不安を感じている。
   ・不安を感じない程度の力を使う。
   ・手のひら全体を使う感じ。
 ・体の感じを子供と共有する
  ・子供が感じているだろう感覚を、施術者も同じように感覚を感じるようにする。
 ・言葉かけを大切にする
  ・子供の気持ちをリラックスさせ、その気にさせる。
  ・施術者も言葉かけと施術を重ねることで良いリズムで楽しく取り組むことが大事です。
 ・主体的な取り組みを大切にする   
  ・子供は気が散って、集中できないことが多い。特自閉や多動の子供たちは、訓練を自分が

   主体的に行っているという実感を欠いています。したがって、子供が自分の体の感じに気

   づき、自分で体を緩めたり動かしているという感じをつかめるようにする主体的な動きを

   行わせる必要があります。
   ・まず、優しく、ゆっくりと何をどうしようとしているのかを部位に軽く触れながら
「こ

    ういう動きをするよ。」と説明する。
   ・どこがどう感じているかを聞きながらゆっくり進め、自分で緩む感じや動く感じを認知

    する。
   ・さらに、自分自身が主体的に動かす感じをつかめるように、動かしている方向、スピー

    ド、可動域などを細かく伝えながら、二人三脚で理解するという課題に取り組んでい

    く。


・動作法は「立位・歩行」、「書字」、「発声・発語」の3つの基本動作に分類しています。

・動作法は、特定の訓練姿勢で行います。これを課題動作(モデルパターン)といいます。その訓練姿勢で行うことは「緊張の緩め方」と「単位動作(身体の動かし方)」です。そして、動作の要素として、部位、方向。強さ(速さ)があげられます。

・課題動作(モデルパターン)
 1.立位・歩行動作 
   ・あぐら座動作 
   ・膝立ち動作(片膝立ち動作)
   ・立位動作
   ・歩行動作
 2.書字動作
   ・腕動作(腕上げ動作と肘曲げ動作)
   ・手動作(手のひらと指の動作)
   ・作業動作(字を書く、道具を使う動作)
 3.発声・発語動作
   ・呼吸動作  
   ・口動作(あご動作、口唇動作、舌動作)
   ・発声動作
   ・食べる動作


補助はしっかり強く補助するところから、次第に弱く少なくして、自分でコントロールできるようにしていきます。そのためには、「はなすよ!はなすよ!」と声をかけて、相手が自分で努力する心構えをつくります。

 
訓練の終わり方では、「できた!」という形で終わることが大切です。そのためには、計画段階で、どの段階で、どの課題を最後に持ってくるか、それを何回やって終わるか考えておくことが必要です。「あと、もう1回」と欲を出すと、えてして最後の訓練がうまくいかなかったりするので、回数を決めてできたら終わりにすることが重要です。


・動作のコミュニケーション
 ・動作法は子供の「意図」や「努力」あるいは「身体の動かし方」という心理的活動を対象と

  しています。そこで指導者が子供に伝えていることは、身体を動かす「力」を加えていると

  いうよりも「情報」を伝えているのです。その意味で、動作法は子供と身体を間に挟んでコ

  ミュニケーションしているという側面を持っています


訓練に誘うにあたっては、指導者は穏やかな心でのぞみ、こどもの反応や感情を感じ取れることが大切です。そのためには、うまくやろう、早く訓練しようと気負わないことです。子供の動きや活動に沿いながらペースを合わせます。そして、子供が訓練に取り組めるタイミングを待つことが大切です。


・動作法の初心者は訓練姿勢を決めるところで苦労している。どんな訓練をするか、そのための訓練姿勢がどうかを、言葉だけでなく、指導者がその姿勢を実演してみせたりすることも大切。そこで子供が感じる困難点や感情を補助している指導者の身体を通して感じ取ることが必要です。そのためには、指導者自身が安定した姿勢を取り、無理なく安全に、子供の姿勢を援助できるようにしなければなりません。また、あせって訓練姿勢を取らず、子供のペースを確かめながら、訓練姿勢を少しずつ整える援助をしていきます。強い補助が必要な場合には、子供と指導者の身体をより近づけます。

付記

12月23日のブログ「発達障害」の中で、感覚統合療法の体験談として、『大丈夫! すくすくのびたよ自閉っ子』という本をご紹介していました。

下記は、感覚統合療法を分かりやすく説明されていた箇所です。また、実践内容については、目次の内容を一部抜粋させて頂きました。

脳への刺激
支援センターからいただいた個別支援計画を見ると、桃子の重点取り組み事項は、「前庭系・固有系をしっかり入れていく」となっている。何のことだかさっぱりわからない。

先生からのお話によると、桃子は、「感覚統合療法を必要とする子ども」なのだそうだ。感覚には、次の三つがあるらしい。
一つ目は、前庭覚である。これに何らかの問題があると、揺れ動く遊具や高いところを非常に怖がったり、誰かに動かされると恐れや不安、苦痛などを感じたりするようだ。いくら回転しても目が回らない、高いところや不安定なところを好む、などの特徴もあるらしい。公園の遊具なども三つ年下の妹は平気で登っているのに、桃子は怖がってできないものがある。桃子は怖がりだなあと思っていたが、原因は前庭覚なのか。また、桃子が椅子に持続して座っていられないのもこのためか。
二つ目は、固有覚である。これに問題があると、すぐ疲れてしまったり、力加減のコントロールが難しかったりするらしい。物をどのように操作してよいかわからず、衣服の着脱がうまくできないこともあるようだ。桃子が不器用なのは、この固有覚のせいなのか。
三つ目は、触覚である。べたべたした感覚が苦手だったり、手をつなぐ、抱きしめられたりするのが苦手だったり、裸足で園庭を歩けなかったりするらしい。散髪や爪きり、耳かきを極端に嫌がる子どももいるようである。以前、桃子はスライムが苦手で、触るのを嫌がっていたが、この触覚に問題があったせいか。そういえば、爪きりも苦手であった。
「もし、感覚統合がうまく働かないと、感覚が洪水のように入ってきたり、逆に必要な情報が入ってこなくなったりして、脳が混乱している状態になるのです」と、先生はおっしゃった。
我が家は旅行好きだ。旅行中、桃子は楽しそうにしているが、帰宅後、彼女は決まってパニックを起こす。これも、感覚統合と関係があるのだろうか。旅行中、いろいろなものを見聞きして、脳が混乱状態になっているのか。
桃子はパニックで済んでいるが、同じ障がいのお友だちの中には、旅行後や何か行事があるたびに、熱を出す、倒れる、など体を壊してしまうお子さんもいると聞く。
療育で桃子がしているのは、「感覚運動遊び」である。先ほどの前庭覚、固有覚、触覚を刺激する遊具で遊ぶのだ。ブランコのようなもの、はしご、ボールプールまどで、ただ楽しく遊んでいるだけのように見えるが、これが感覚統合療法らしい。脳へ刺激を与えているのだ。
桃子が感覚統合療法を始めて、もう二年以上たつ。結果が目に見えて出てきているのは、この本を読んでいただければよくわかっていただけると思う。


以下は目次からの抜粋になります
一人でできたほうがいいぞ 身辺自立へのスモールステップ
・ボタン編(2歳8か月~3歳9か月)
・服たたみ編(3歳0か月~5歳2か月)
・歯磨き編(0歳~4歳0か月)
・トイレ編(2歳8か月~4歳5か月)
子どもには、遊びだって大切!「遊べるようになる」までの道
・じゃんけん編(2歳11か月~5歳1か月)
・鉛筆・お絵描き編(2歳8か月~5歳2か月)
・三輪車編(2歳8か月~4歳4か月)
・ハサミ編(2歳8か月~4歳5か月)
きちんと食べよう!お食事タイムが楽しくなってきた
・偏食編(2歳10か月~4歳10か月)
・箸編(2歳8か月~4歳5か月)
・おやつ編(3歳4か月~3歳8か月)
友だちできるかな?(2歳11か月~5歳2か月)
パニック・こだわり これぞ自閉っ子!という場面で工夫したこと
・こだわり編
・パニック編
・クリスマスツリー大作戦(3歳2か月~4歳2か月)
・男性恐怖症(1歳~4歳10か月)
変化が苦手な自閉っ子 でも少しずつ世界を広げてみた
・病院編(3歳1か月~4歳9か月)
・クラス替え編(3歳0か月~4歳6か月)


発達障害について

小児障害マッサージは当院ではなく、地元のプラナ治療院が「訪問鍼灸・マッサージ」で展開しているサービスで、私は週2回、こちらの治療院で仕事をしています。

そして、小児障害マッサージに関しては、セラピストとしての講習を受けている段階です。

 

ところで、今まで「発達障害」というものについては無知に等しい状態でした。発達障害は症状によって分類されていますが、運動や動きに関するものもあり、小児障害マッサージの対象です。

先週、さいたま市内で発達障害のデイサポートを行っている施設に見学に行ってきたのですが、その時にいたのは、年齢は10歳前後が多く、障害が軽度な子供たちでした。これから、この子供たちに接していくためは、まずは発達障害についての基礎知識が必須であると認識し、ネットを検索したり、中古本を買ったり、図書館から本を借りたりと突貫工事をスタートさせました。

左をクリックすると、「ちょっと気になる子(発達障害)を理解するために」という資料をダウンロードできるページが表示されます。

 

 

『アスペ・エルデの会は、発達障害をもつ子どもたちの支援の場、自助会、専門家養成、発達支援についての啓発、発信点、研究機関を統合的に目指していく「生涯発達援助システム」です。』

最初に手にした本は、発達障害について多くの著書を出されている、杉山登志郎先生の「発達障害の子どもたち」でした。ブログの前半は、ほとんどこの本からの引用になっています。

この本は、冒頭に「世間に広がる誤解」という読者への投げかけで始まっているのですが、いかに何も知らないかということを痛感しました。
『以下に挙げたのは、発達障害に関して特に学校進学をひかえた子どもを抱えるご家族から聞くことが多い意見である。読者のみなさんは、おのおのについての是非をどのように思われるだろうか。』
・発達障害は一生治らないし、治療方法はない
・発達障害児も普通の教育を受けるほうが幸福であり、また発達にも良い影響がある
・通常学級から特殊学級(特別支援教室)に変わることはできるが、その逆はできない
・養護学校(特別支援学校)に一度入れば、通常学校には戻れない
・通常学級の中で周りの子どもたちから助けられながら生活することは、本人にも良い影響がある
・発達障害児が不登校になったときは一般の不登校と同じに扱い登校刺激はしないほうが良い
・養護学校卒業というキャリアは、就労に際しては著しく不利に働く
・通常の高校や大学に進学ができれば成人後の社会生活はより良好になる
『次は、幼児期の発達障害のお子さんのご両親からしばしば伺う意見である。』
・発達障害は病気だから、医療機関に行かないと治療はできない
・病院に行き、言語療法、作業療法などを受けることは発達を非常に促進する
・なるべく早く集団に入れて普通の子どもに接するほうがよく発達する
・偏食で死ぬ人はいないから偏食は特に矯正をしなくて良い
・幼児期から子どもの自主性を重んじることが子どもの発達をより促進する
『これらはすべて、私から見たときに誤った見解か、あるいは条件付きでのみ正しい見解であって一般的にはとても正しいとはいえない。おのおのについて、なぜこれが誤っているのか、と驚かれたとしたら、そして発達障害と診断を受けたお子さんに関わっているとしたら、この本はあなたにとって読む価値のある本である。』

 

著者の杉山先生のご指摘の通り、理解不足は明白であり読み進むこととなりました。
以下、箇条書き形式になってしまいますが、目に止まった、特に重要と感じたことを書き出しています。一部、かなり専門的な内容になっています。

・人間の子どもは「生理的早産」原因は大きく進化した脳。これ以上大きくなると産道を傷つけ出産

 できない。これは、人間は他の動物に比べ、本来お腹にいるべき段階で出産せざるをえない事態に

 なっている。例えば、独歩まで出産から1年を要するような動物は人間だけである。という意味で

 す。
・子育ては集団よりも個人の方がよい。特に生後早期から数年において個別のそだちが必要であるこ

 とは、乳児院でそだった子どもたちが後年、心の発達の問題を抱えやすいことからも明らかであ

 る。
ゴールは「自立」である。自立の3つの目標
 1.自分で生活できる
 2.人に迷惑をかけない
 3.人の役に立つ
・人として生まれた子どもが、受精した瞬間から社会の中で生き、自立するまでの過程全体が「発

 達」である。
・発達の過程は、子どもが元々持っている力に対し、周囲が働きかけを行い、その両方が互いに働き

 かけ合って子どものそだちを作ることが知られている。発達を支えるものは子どもが持つ遺伝子と

 環境である。発達障害臨床の言葉に言い換えれば、生物学的な素因と環境因ということになる。
・環境の影響を受ける遺伝子:分子レベルの遺伝子研究が進展し、それによって遺伝子が体の青写真

 や設計図というよりも、料理のレシピのようなものであることが明らかになってきた。つまり、遺

 伝子に蓄えられた情報は、環境によって発現の仕方が異なることが示されたのである。遺伝情報の

 発現の過程は、遺伝子そのものであるDNAの情報が、メッセンジャーRNAによって転写され、タン

 パク質の合成が行われることによって生じる。この過程が実は問題で、ここで環境の影響を受け

 る。多くの状況依存的なスイッチが存在し、環境との相互作用の中で、合成されるタンパク質や酵

 素レベルで差異が生じることが徐々に明らかとなってきた。
・遺伝的素因の解明は、障害を決定づけるのではなく、高リスク児に対する早期療育の可能性を開く

 ものとなる。
・心因であることが最も明確な疾患である外傷後ストレス障害(PTSD。トラウマを負った後、数ヵ月

 経ても不眠やフラッシュバックなどの精神科的異常が生じるという病態)において、扁桃体や海馬

 という想起記憶の中枢と考えられている部位に萎縮や機能障害など、明確な器質的な脳の変化が認

 められることがまず明らかになった。しかしその後の研究によって、強いトラウマ反応を生じる個

 人はもともと扁桃体が小さいらしいということが明らかになった。
子どもは発達をしていく存在であり、発達障害の子どもたちも当然、日々発達していく。その過程

 で、凸凹や失調は全体としては改善していくのが普通である。むしろ、改善をしていかなければ何

 かおかしなことが起きたと考えるべきであり、二次的な問題の派生を疑う必要がある。
・子どもを正常か異常かという二群分けを行い、発達障害を持つ児童は異常と考えるのは今や完全な

 誤りである。発達障害とは、個別の配慮を必要とするか否かという判断において、個別の配慮をし

 た方がより良い発達が期待できることを意味しているのである。
・発達障害の定義:「発達障害とは、子どもの発達の途上において、なんらかの理由により、発達の

 特定の領域に、社会的な適応上の問題を引き起こす可能性がある凸凹を生じたもの」
・知的障害を示す児童の89%までがIQ50~69の範疇に入る軽症の知的障害者である。IQ50とは成人

 に達したときに知的能力は健常発達の9歳前後と同等である。
発達障害の概観
 ・認知の発達…精神遅滞
 ・学習能力の発達…学習障害
 ・言語能力の発達…発達性言語障害
 ・社会性の発達…広汎用性発達障害(自閉症スペクトラム)
 ・運動の発達…筋ジスなどの筋肉病、脳性麻痺など
 ・手先の細かな動きの発達…発達性協調運動障害
 ・注意力、行動コントロールの発達…注意欠陥性障害(ADHD)
・境界知能はIQ70~IQ84前後
・自閉症の3つの症状
 ・社会性の障害…人と人との基本的なつながりに生まれつきの苦手さがあるということ。
 ・コミュニケーションの障害…オウム返しが長く続く。疑問文によって要求を表す。
 ・想像力の障害とそれに基づく行動の障害(こだわり行動)…見立て遊びは極めて苦手である。

  一方、こだわり行動は顕著で中には800以上のこだわり行動をもった障害児もいた。自己刺激

  に没頭する理由は「まわり中が一定のリズムで動いていると幸福感がある」。
 ・上記の3項目以外で重要なものに、知覚過敏性の問題がある。
・最重度の知的障害を持つものから、まったくの正常知能のものまでいる。
 ・高機能広汎性発達障害とは、知的障害をもたない自閉症のことである。
生まれつきの障害であり、統合失調症などとは決定的に違う。つまりその世界に生きている者に

 とって、その世界は奇異でも何でもなく、ごくごく当たり前なのである。
・自閉症は語ることは困難であるが、書かせるとより容易になる。
「なぜ人を避けてしまうのか?」→「人に近寄られるのは好きではなかった。…「触られるなど

  論外で、触られるとどんな触られ方であれ痛いし、とても恐かった」 ドナ・ウィリアムズ
「なぜ目を合わさず目をそらしてしまうのか?」→「人の目を見ると話が解らなくなってしま

  う。…「自分は45歳を過ぎて目がものを言うことを学んだ」 テンプル・グランディン
「なぜくるくる回ったり、ぴょんぴょん跳ねたり自己刺激に没頭するのか?」→「まわり中が一

  定のリズムで動いていると幸福感がある」ドナ・ウィリアムズ 「砂の一粒一粒が見飽きず面白

  い」テンプル・グランディン
「なぜコミュニケーションがとれず、言葉があるものでも会話が苦手なのか?」→「一度に一つ

  のことしかできないので、自分の語ったことすら自分に向かってもう一度言い直さなくては理解

  ができない。」 ドナ・ウィリアムズ
・自閉症の精神病理の基本は、対話の際に雑多な情報の中から目の前の人間が出す情報に自動的に

 注意が絞り込まれる機能がきちんと働かないこと、一度に処理できる情報が非常に限られている

 ことの二点である。これを認知の特徴という点で説明すると次の3つになる。
 ・情報の中の雑音の除去ができないこと。
 ・一般化や概念化という作業ができないこと
 ・認知対象との間に、事物、表象を問わず、認知における心理的距離が持てないこと。
・自閉症の幼児は、対人的な情報への選択的注意という機能が十分に働いていない。その結果、お母

 さんの出す情報も、機械から出る雑音も同じように流れ込んでしまう。いわば情報の洪水の中で立

 ち往生している状態である。テンプル・グランディンは、自分の幼児期の耳は調整の効かないマイ

 クロフォンのようだったと述べている。
不安定で、怖い世界から自分を守るために、自閉症の幼児がとる戦略は、自分で、一定の安定した

 刺激を作り出して感覚遮断を行うという方策である。幼児期の自閉症でよく見られる自己刺激への

 没頭に他ならない。一定のリズムでぴょんぴょんしたり、目の前で手のひらをひらひらさせたりし

 て、彼らは言わば押し寄せる情報へのバリアーを作り出しているのである。
・現在と過去とのモザイクこそが自閉症体験世界の特徴の一つである。
・広汎性発達障害の罹病率は2.1%である。(2007年)
・大まかで曖昧な認知がとても苦手である。
筆者は対人関係で自閉症を孤立型、受動型、積極奇異型の3つに分けている。
 ・孤立型…人との関わりを避けてしまうタイプ。知覚過敏が強く一般的に重度の知覚的障害を伴っ

      ている。
 ・受動型…受身であれば人と関わることが出来るタイプで、知的障害を持たないものもいる。
 ・積極奇異型…人に積極的に、しかし奇異なやり方で接するタイプ。知的障害は軽いものが多い

  が、マイペースで、基盤に注意の障害を持っていて、多動であることが大きな特徴である。
・特に孤立型と積極奇異型は、知覚過敏性などの問題に妨げられて愛着の形成が著しく遅れる。本格

 的な愛着が小学校に入ってからという児童も少なくない。したがって、小学校年代において、きち

 んと子どもの甘えを両親に受け入れてもらうことがとても大事な課題となる。
一般的に4歳前後までの幼児期が最も大変で、5歳ごろにコミュニケーションが目覚しく伸びる時期

 がある。また、10歳~12歳の小学校高学年はさらによく伸びる時期である。
青年期も5歳と小学校高学年に次いで、よく発達する時期となることが多い。
・手を握りながら話かければ、握られた手の知覚入力だけであふれてしまい、言われたことは全く入

 らなくなる。言う時は言うだけ、見せる時は見せるだけ、触れるときは触れるだけにする。
・何度も体験したからといって徐々に慣れてくるということが期待できないところがある。
・一般化ができないこともあって、変化に対しては常に強い抵抗が生じる。
・高機能広汎性発達障害(高機能自閉症)とアスペルガー症候群の間に明確な違いは認められない。

 病名にとらわれず、高機能広汎性発達障害と考えるようになった。
・現在では脳科学の進展によって、注意欠陥性障害(ADHD)の症状の背後にはドーパミン系および

 ノルアドレナリン系神経機能の失調があることが明らかになっている。また、物事の予定や予測的

 な行動を組み立てる能力である、実行機能と呼ばれる大脳前頭葉の働きの一部に、弱いところがあ

 ることも示された。
・学習障害
 ・知的な能力に比して読字、書字、計算など、学習の特定の領域に限定した学力の極端な問題を抱

  える児童。
 ・純粋な学習障害は少なく、高機能広汎性発達障害やADHDなど、他の発達障害に併発して見られ

  るものが多い。
 ・学習障害への対応は、特別支援教育である。障害のある脳の領域に繋がる領域を賦活し、バイパ

  スを作る作業である。OT、PTの考え方が非常に有用である。
・児童精神科は膨大な新患待機リストを持っている。あいち小児保健医療総合センター心療科の発達

 外来は3年。

後半は「続 自閉っ子、こういう風にできてます!」(花風社)から、知ることができた事を列挙しています。この本は作家で自閉症の藤家寛子氏と、翻訳家で同じく自閉症のニキリンコ氏に、長崎大学医学部付属病院等で臨床に携わり、その一方で、研究者として、そしてアスペルガーの息子を持つ父親でもある岩永竜一郎先生の3人を中心に、会話形式で書かれています。

・現在の感覚統合理論では、感覚統合障害は大きく二つの障害、すなわち「行為機能の障害」と「

 覚調整障害」に分けられます。

 行為機能の障害は、触覚、固有受容感覚(筋肉にある受容器で感じる身体の位置や動きの感覚)、

 前庭感覚(耳の奥の三半規管や耳石器などで感じる回転やスピード、傾きの感覚)などの感覚情報

 の処理過程に問題があり、それによって身体の位置や動きがわかりづらいなどの問題が生じ、不器

 用さや姿勢運動の問題など運動行為面に困難が出る障害です。


・自閉症の人を定型発達の人の認識の違いは、セントラルコヘレンスの機能に起因するとセントラル

 コヘレンスとはウタ・フリス博士によると「様々な情報を統合して、脈絡の中で高次の意味を構築

 する傾向」とされています。つまり、細部より全体をとらえることが優先される思考傾向です。鮮

 明な写真の表情の読み取りには定型発達の人とアスペルガー症候群の人の間で差が見られなかった

 のに、ぼかした写真になるとアスペルガー症候群の人のほうが表情の読み取りができにくかったこ

 とがわかっています。これからわかるように、定型発達者は細かいところはあまり気にせずに、

 ざっととらえるんですね。だから、多少細かいところが違っていても同じ仲間だと思ってしまいま

 す。一方、自閉症の人はざっととらえようとせずに細部を見てしまうから顔の細部が見えなくなる

 とわからなくなるのでしょう。このような傾向があるから、自閉症の人は耳の形が違う犬同士、色

 が違う犬同士を同じ仲間であると思えないことがあるのかもしれません。


・後天的に「労働に耐えうる体力」を養うことができるかどうか:体力には大きく分けて、「行動体

 力」と「防衛体力」があります。「行動体力」とは体を動かしたり行動を起こすために必要な体力

 です。筋力、バランス機能、巧緻性、柔軟性、持久性などがそれにあたります。一方、「防衛体

 力」というものは様々なストレスに耐え、体を守るための体力です。詳しく言うと、暑さや寒さな

 どの物理的ストレス、スモッグなどの科学的ストレス、細菌・ウィルス・睡眠不足などの生物的ス

 トレス、恐怖・不安などの精神的ストレスに耐える時に発揮される体力です。一人の中でも当然、

 行動体力と防衛体力の格差はあります。そして、この二つの体力は、発熱などで体調が良くなると

 二つの体力は向上します。なお、体調と体力は表裏一体ですので、防衛体力が上がれば体調も良く

 なるとも言えます。

 

自閉症の人はセロトニンなどの神経伝達物質の働きがうまくいっていないことが指摘されています

 が、そうした行動に必要な伝達物質が自閉症の人にもともと少ないと想定すれば、ストレス下で集

 中してがんばると定型発達者よりも早く疲れてしまうことになります。


・姿勢の崩れは感覚と深く関わっている:怠けではなく、脳の機能の違いによって姿勢が崩れやすく

 なること、身体の感覚が上手くつかめないために姿勢コントロールが難しくなることは、多くの人

 には予想できないことです。定型発達の人は姿勢の維持を無意識のうちにやっているのですが、自

 閉症の人は意識的にやらなければならないことがありますので、身体に集中して目の前の課題への

 集中ができなくなる可能性があります。


・成人期には、体力の向上を目指すことも重要ですが、その人が持っている体力で生活や仕事をして

 いく方法を身につけてもらうことも必要だと思います。体力が低い人でも、気分が落ち着いて体調

 が整っているときは活動できることが多いと思います。感覚過敏は気分が不安定だと強くなります

 から。気持ちが安定していることで感覚過敏が緩和されているでしょうし、その結果余力が増えて

 エネルギー源が大きくなっているでしょう。抑うつ状態になると身体の動きが緩慢になったり、自

 発的に何かやろうという気持ちが起こりにくくなりますが、気分が安定していると生活のエネル

 ギーも出てきます。気分の安定が栄養摂取の良さにつながり、脳の中の伝達物質のバランスもよく

 なるでしょう。つまり、気分の安定が防衛体力を整えたり、高めたりする一つの要因となると思い

 ます。そして、それは行動体力にも影響することになるでしょう。


疲れが自分でわからないことを理解しておく:生活に支障が出るほど調子を崩すのは、不安や気分

 の落ち込みがあった時や、がんばりすぎたり、はしゃぎすぎたりして、生活リズムに乱れが生じた

 時などが多いです。そのため、まず心理的ストレスがかかった時にそれを解消する手段を持つこと

 が必要です。具体的に言うと、自閉症の特性をわかっている相談相手を身近に見つけて話をよく聞

 いてもらうことなどが大切ですね。自閉症の方の体調管理に際しては、「自分で自分の疲れがわか

 らない」というのが大きな問題になってきます。だからこそ、規則正しい生活習慣を心がけ、自分

 の身体の感覚を頼りに疲れを判断しないようにすること。疲れていないと思っても決まった時間に

 休んで、一定の睡眠・休息を取るようにすることが必要です。つまり、定型発達者のように自分の

 身体の感覚に基づいて寝る時間を決めたりせずに、体調が良さそうな時であっても、あらかじめ決

 めたスケジュールに従って休んだり寝たりすることが大切です。


・就労に対して:大人になってからの体調・体力を安定させるために早期からやっておくべきことが

 あると思います。それは、①二次障害を作らない(うつなどな体調にも影響します) ②早期から

 運動に関わる神経系の発達を促す訓練(例えば感覚統合療法)を受けておく ③日常生活における

 運動習慣を身につけておく ④体調を崩さない生活習慣を学んでおく 以上4つです。


・自分の身体図式がしっかりしていると、新しい空間に行っても自分の領域をすぐにつかめるんで

 す。自分の身体をよくわかっているから、手が届く範囲や身体を動かしたときに窮屈さを感じない

 広さというものをすぐにつかめるんです。そして、自分の身体図式ができていて、相手を見たとき

 に身体のミラーイメージを持てる人は、相手の身体図式と領域もつかむことができます。定型発達

 の人の多くは自分の身体図式も、相手の身体図式もつかめますので、自分の領域、相手の領域も容

 易にわかり、近くに人がいても自分と他者の領域を無意識のうちに区別して適切な距離を取りなが

 ら作業をすることができるんですね。しかし、身体図式ができあがっていないと自分の領域も他人

 の領域もつかみにくくなるはずです。そして、身体図式の弱さを補うために一生懸命身の周りを見

 て、自分の領域を確かめることになるでしょう。これでは作業どころではないですよね。だから、

 身体図式の弱さを補うために、自分の領域の周りに線を引いてもらったり、パーティションで区切

 りを作ってもらうなどの支援があるといいんです。


・四輪の車に乗るより二輪の方が身体のイメージがわかると言っていた方がいます。バイクって足で

 押さえますよね。車の中に座るより、そのほうが身体の位置がつかみやすいそうです。

 それぞれ、強い感覚と弱い感覚があるんですね。その方は、固有受容覚は強いけど触角が弱いので

 しょう。固有受容覚が強い人は何かに押し付けていると身体の位置がつかみやすいんです。


・感覚統合障害の中でも、静止画像の真似が苦手な人と、動きを真似するのが苦手な方がいるんです

 ね。動きを真似するのが苦手な方は固有受容覚の認識が弱い方が多いです。自分の身体が動いてい

 る感じを連続的に脳でつかみにくいんですね。一方、静止画像の真似が苦手な人は触覚の認識が弱

 い人が多いです。


・息子が自閉症の特性を持つと確実に気づき始めたのは生後五ヶ月頃です。その時は、まず対人的注

 意が低いことが気になっていました。生後四ヶ月までは誰にでもよく笑い、自閉的な印象はなかっ

 たのですが。そして、寝返りの質が違うことも気になりました。筋緊張が低く、屈曲力が弱い寝返

 りをするので、筋肉の使い方の質的問題があると感じていました。そのような特性が生後五ヶ月頃

 から次々と見えるようになってきました。


・体育は他人との比較が入りますし、チームプレイで失敗すると責められることになりますので、自

 閉症の子どもがやる気を起こすはずはありません。ドラムのように個人プレイでできて、成功を自

 分なりに感じられるもののほうが良いと思います。私たちが行う作業療法では、有能感、自尊心を

 育てることを大切にします。それが次のチャレンジを促し、障害によって滞っている発達の部分を

 よりよい方向に導くからです。これは自閉症の子どもの療育の中でも、常に意識していることで

 す。

 

・ボディイメージを育てるためには触覚と固有受容覚が特に重要になります。いわばボディイメージ

 を育てる栄養ですね。もちろん、マッサージなどで他動的に触覚や固有受容覚を刺激することは効

 果的かもしれません。ただし、ボディイメージを高めるためには、能動的体験の中で触覚、固有受

 容覚を体験することも必要です。お風呂の中では、お湯の抵抗がありますので、身体を動かすと触

 覚と固有受容覚のフィードバックがあるために身体を意識しやすくなります。同じ理由からスイミ

 ングもいいと思います。アスレチック遊具とかクライミングウォールにチャレンジすることもお勧

 めです。要は能動的に触覚刺激や固有受容刺激を感じて動きを作り出すことが大切なんです。しか

 も、いつもやらないような未経験の運動をやったほうがボディイメージは育ちやすいと思います。


・自閉症の子どもは集団で行う球技が嫌いだと思われていますが、やり方次第では好きになるんです

 よ。好きになってもらうためのポイントを挙げておきましょう。
 ・不器用でも失敗が起こりにくいように工夫する。
 ・不器用でも不利にならないルールを作る。
 ・必ず全員に出番があり、皆で活躍できるような工夫をする。
 ・必要に応じて大人が参加し、ゲームが円滑に進むように調整する。
 ・暴力を振るわない。
 ・暴言を吐かない。
 ・審判の判定にクレームをつけない(「ゲーム中審判は神様です」と前置きしてから始めます)。


・自閉っ子が大好きなる球技
 ・ポートボール(自閉っ子ルール)
 ・サッカー(自閉っ子ルール)
 ・キックベースボール


五感の他にも人間の行動や情緒に大きな影響を及ぼす感覚が二つあります。それが固有受容覚と前

 庭覚ですね。私やニキさんが、コタツに入ると脚がなくなるのは固有受容覚のつかみ方が弱く

 て、自分の身体が伝えてくる情報を受け取っていないからでした。そして藤家さんやニキさんは

 「自分の身体がどこからどこまでかわからない」とか「コタツに入ると脚がなくなる」とか私たち

 には実感のできない身体感覚を持っています。それは、ボディイメージが弱いからです。そし

 て、ボディイメージが不確かなのは、身体からの情報が脳にきちんと伝わっていないからです。

 ボディイメージが弱いと、いろいろ困ったことが起こりますね。まず、不器用という問題が起こり

 がちです。そしてこの問題に、感覚統合療法は効果があります。その体験談が、『大丈夫! すく

 すくのびたよ自閉っ子』という本に載っています。


・マッサージ:ブラシや素手でマッサージして、だんだんと感覚を受け入れられるようにします。治

 療者との関係を作ってから、「こうやって触れられれば、こういう感覚が入ってくるのだ」と覚え

 ていってもらいます。身体の中では背中が受け入れやすい場所ですので、そこからマッサージを始

 めます。腹部、首、顔などは過敏反応が出やすいので、最初はやりません。マッサージはまず受け

 入れられる部分だけ行ったほうが良いでしょう。

下の図は体を使って遊ぶ時や運動するときに必要とする感覚、固有受容角覚と前庭覚です。これに触覚を加えた3つの感覚が、感覚統合訓練の柱になっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「続 自閉っ子、こういう風にできてます!」(花風社)                               

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「続 自閉っ子、こういう風にできてます!」(花風社)                               

最後に、「自分の体取り戻しマニュアル」をご紹介したいと思います。

これは著者の一人で作家の藤家寛子先生が「体に力が入らないときや身体の実体が感覚できなくなったときに使っているものです。なお、前作『自閉っ子、こういう風にできてます!』に掲載されていたものです。

小児障害マッサージ

12月4日の日曜日、小児障害マッサージの講習(今回は座学)を受講してきました。
疾患は脳性麻痺(CP)、脳室周囲白質軟化症(PVL)、筋ジストロフィー(CMD)などが多く、それらの病気を理解することが第一ですが、施術にあたっては脱臼・亜脱臼の既往とてんかんの有無を最初に確認することが必須となります。また、施術は安全性と効果の両面から適切な手技の習得が求められます。
講習受講後、調べて理解しなければならないと感じたものが、「ボトックス注射(ボツリヌス治療)」です。そこで、ブログは前半にボトックス注射の基礎知識、後半に一般的なマッサージ・指圧の効果についてご紹介したいと思います。

 

ボトックス注射(ボツリヌス治療)
ボトックスとは、ボツリヌス菌のもつ毒素を滅菌された生理食塩水で薄めた薬剤のことです。
ボツリヌス菌は食中毒を起こす菌で、極めて強力な神経毒により胃腸症状に続いて、筋肉の麻痺や呼吸困難などを引き起こします。
これを知ると、恐ろしいものと感じると思いますが、ボトックスは毒素ではなくボツリヌス菌が作り出した「ボツリヌストキシン」という成分で製造されており、問題の毒素は取り除かれています。
なお、このボツリヌストキシンには、筋肉に送られる命令の伝達を弱め、筋肉の収縮を抑える効果があります。つまり、この特性を利用して硬くなった筋肉を弛緩させるわけです。
1970年代後半、アメリカの眼科医が斜視の治療でボツリヌストキシンを臨床で使用したのが最初です。日本では1996年に眼瞼攣縮が認可されて以来、2000年に片側顔面攣縮、2001年に攣縮性斜頸、2009年に小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足、さらに2010年に上肢痙縮・下肢痙縮、2012年に腋窩多汗症へと徐々にその適応症が拡大されてきました。

懸念される副作用の多くは治療対象筋肉の過度な脱力というものですが、薬の量を調整することで回避が可能です。また、重症障害児の場合には、嚥下や呼吸が弱くなるという副作用があるとされていますので十分な注意が必要になります。
治療間隔は5~6ヶ月が目安となり、これに適した投与量を注射することになりますが、量の調整は段階的に増量しながら、最終的に適量を決定します。また、毎日のリハビリテーションが治療効果の持続にとって重要となります。

施術者としては、筋肉は筋膜や腱膜などによって周辺の筋と連結しているため、治療対象周辺の筋肉の状態や、各パート(左右の上肢、下肢などの単位)および全身レベルの筋肉のバランスや状態に注意を払うことが大切だと思います。

 

マッサージ・指圧の現代医学的効果
小児障害マッサージも土台となっているのは一般的なマッサージの基本と同じです。

マッサージには気持ちよいという慰安の側面もありますが、効果のメカニズムは科学的な説明が可能であり、医療においてはそのメカニズムを理解し、患者さまの状態に応じて、適切に施術することが重要になります。
なお、「鍼通電療法」でご紹介した芹澤勝助先生が、著書「マッサージ・指圧法の実際」(創元社)の中で、詳細に説明されていますので、その個所を引用させて頂きます(2箇所、中略あり)。


『マッサージの効果も、指圧の効果も、ともに皮膚の上から加える [触圧](ふれる、おす) 作用で、直接には循環系に働き、間接には神経反射により神経、筋肉系に影響を与える施術である
ところで、触圧感覚とはどういう感覚なのかというと、この感覚は、皮膚や筋膜、筋肉、腱、関節などに機械的なエネルギーをあたえたとき、つまり、さわったり、なでたり、こすったり、もんだり、おしたり、ふるわせたり、たたいたり、ひっぱったりしたときに起こる感覚のすべてをいうのであり、このうち筋肉や筋膜、腱や関節に起こる触圧感覚を深部感覚といっている。 -中略-
いま皮膚が、なでられ、おされ、ひっぱられると、この条件変化により、それぞれに対応する受容器が変形を起こし、受容器が興奮する。この興奮は受容器に入り込んでいる知覚神経線維により、脊髄神経節を介して脊髄に入る。 -中略-
要約すると、皮膚刺激→触圧→触圧の受容器→知覚神経→脊髄(上行する線維、下行する線維、自律神経「交感神経」に連絡する線維、脊髄のそれぞれの高さでの反射弓をつくる線維)→延髄→大脳(間脳の視床→皮質)を伝導路とすることになり、皮膚感覚のすべては、一応間脳の視床に集まり、大脳皮質に達するのである。
マッサージや指圧による治療効果として現れる生体反応の多くは、触圧による機械的な作用もさることながら、神経反射によって起こるものであろう。生体における一連の反射作用は、神経の末梢で起こる軸索反射と、求心性伝導路の脊髄レベルで起こる反射(脊髄反射)とがあり、さらにもっと高位の中枢(間脳の視床と、自律神経の高位中枢である視床下部との間に起こる)の複雑な関連機転によって起こるものとがある。特に中枢神経系の機能の主なものは反射機能であり、脳脊髄神経系の反射自律神経系の反射である。
 神経痛の「いたみ」や「しびれ」、運動神経系の痙攣などにマッサージや指圧が効く理由の主なものは、脳脊髄神経系の反射機転を介するものであろうし、循環系や広汎な内臓系のいろいろな症状や不定愁訴の症状群(たとえば頭痛、めまい、耳鳴り、不眠、肩こり、便秘など)に効く理由は自律神経反射が主役を演じているのであろう。しかし人間の体は有機統一体なのであるから、お互いに絡み合いの機転であろうが、その間には、おのずから主役的あるいは脇役的に働く機転があるはずである。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「あん摩マッサージ指圧理論」 (教科書執筆小委員会)

 これは自律神経支配図です。体表からの刺激は自律神経を通じて各臓器に働きかけます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

              画像出展:「経穴マップ」(医歯薬出版) 
 
下段はホルムクルスと呼ばれる絵で、体のどこを刺激するかによって、脳の体性感覚野にどうように投影されるかを表したものです。四肢末端と顔面(特に口唇)への刺激が体性感覚野の広い領域に影響を及ぼすことを示しています。これを見ると脳のリハビリとして、歩くこと、手を使って食べることが効果的であるということが納得できます。